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特開2018-80974タイヤの接地特性測定方法及び測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-80974(P2018-80974A)
(43)【公開日】2018年5月24日
(54)【発明の名称】タイヤの接地特性測定方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20180420BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20180420BHJP
【FI】
   G01M17/02 B
   B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-222632(P2016-222632)
(22)【出願日】2016年11月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 明大
(57)【要約】
【課題】センサの検出領域のサイズよりも小さい領域での検出を可能にした、タイヤの接地特性測定方法を提供する。
【解決手段】タイヤTのうち測定対象となる領域に、タイヤ走行面1に設けられた力センサ3の検出領域幅W1の1/2(nは1以上の自然数)の大きさを有する仮想領域を設定する。一つの仮想領域に対して、力センサ3が複数回接触するように、所定方向に沿ってタイヤ走行面1とタイヤTとの接触位置をシフトさせてセンサ3による力の測定を複数回実行する。仮想領域とセンサ3との位置関係に関するデータを、測定時点毎に対応付けたマッピングデータを生成する。マッピングデータ生成部43により定まるセンサ3と仮想領域との力の釣り合い関係と、センサ3の検出値と、に基づき、仮想領域毎に力の値を算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのうち測定対象となる領域に、タイヤ走行面に設けられた力センサの検出領域幅の1/2(nは1以上の自然数)の大きさを有する仮想領域を設定し、
一つの仮想領域に対して、前記力センサが複数回接触するように、所定方向に沿って前記タイヤ走行面と前記タイヤとの接触位置をシフトさせて前記センサによる力の測定を複数回実行し、
前記仮想領域と前記センサとの位置関係に関するデータを、測定時点毎に対応付けたマッピングデータを生成し、
前記マッピングデータにより定まるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係と、前記センサの検出値と、に基づき、前記仮想領域毎に力の値を算出する、タイヤの接地特性測定方法。
【請求項2】
前記タイヤ走行面と前記タイヤとの接触位置を、前記センサの検出領域幅の1/2づつシフトさせてセンサによる力の測定を複数回実行し、
一つのセンサの検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合が全て等しいとして、仮想領域毎に力の値を算出する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一つのセンサの検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合を、仮想領域とセンサとの重なり量に応じて算出し、仮想領域毎に力の値を算出する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所定方向に沿ってシフトさせる測定に加えて、前記所定方向に直交する方向に沿ってシフトさせる測定を実行し、前記所定方向及び前記直交する方向の両方向に設定された複数の仮想領域毎に力の値を算出する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記複数回の測定でセンサが測定する領域よりもタイヤが接触する領域が小さい、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記センサが所定の配列方向に沿って複数配列されたセンサ群を用い、前記タイヤの接地面は、前記センサ群の配列方向の長さよりも小さい、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記タイヤ走行面とタイヤの接触位置を前記センサ群の配列方向に直交する方向に複数回移動させることで、前記センサ群による検出領域をライン状から面状に拡大させており、検出結果に基づき前記タイヤ走行面における接地領域を特定し、前記タイヤ走行面における非接地領域では、前記シフトを省略する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記タイヤ走行面は平坦面であり、前記タイヤ走行面に対して前記タイヤを転動させる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
タイヤのうち測定対象となる領域に、タイヤ走行面に設けられた力センサの検出領域幅の1/2(nは1以上の自然数)の大きさを有する仮想領域を設定する仮想領域設定部と、
一つの仮想領域に対して、前記力センサが複数回接触するように、所定方向に沿って前記タイヤ走行面と前記タイヤとの接触位置をシフトさせて前記センサによる力の測定を複数回実行するタイヤ駆動制御部と、
前記仮想領域と前記センサとの位置関係に関するデータを、測定時点毎に対応付けたマッピングデータを生成するマッピングデータ生成部と、
前記マッピングデータにより定まるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係と、前記センサの検出値と、に基づき、前記仮想領域毎に力の値を算出する、検出値算出部と、
を備える、タイヤの接地特性の測定装置。
【請求項10】
前記タイヤ駆動制御部は、前記タイヤ走行面と前記タイヤとの接触位置を、前記センサの検出領域幅の1/2づつシフトさせてセンサによる力の測定を複数回実行し、
前記検出値算出部は、一つのセンサの検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合が全て等しいとして、仮想領域毎に力の値を算出する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記検出値算出部は、一つのセンサの検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合を、仮想領域とセンサとの重なり量に応じて算出し、仮想領域毎に力の値を算出する、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記所定方向に沿ってシフトさせる測定に加えて、前記所定方向に直交する方向に沿ってシフトさせる測定を実行し、前記所定方向及び前記直交する方向の両方向に設定された複数の仮想領域毎に力の値を算出する、請求項9〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記複数回の測定でセンサが測定する領域よりもタイヤが接触する領域が小さい、請求項9〜12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記センサが所定の配列方向に沿って複数配列されたセンサ群を用い、前記タイヤの接地面は、前記センサ群の配列方向の長さよりも小さい、請求項9〜13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記タイヤ走行面とタイヤの接触位置を前記センサ群の配列方向に直交する方向に複数回移動させることで、前記センサ群による検出領域をライン状から面状に拡大させており、検出結果に基づき前記タイヤ走行面における接地領域を特定し、前記タイヤ走行面における非接地領域では、前記シフトを省略する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記タイヤ走行面は平坦面であり、前記タイヤ走行面に対して前記タイヤを転動させる、請求項9〜15のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤの接地特性測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転動するタイヤの接地特定を測定する方法として、例えば特許文献1には、力センサを設けた回転ドラムにタイヤを接地させ、回転ドラムとタイヤを共に回転させ、センサとタイヤを接触させて、センサによりタイヤの接地特性を測定する方法が開示されている。力センサとして、3分力センサが用いられ、タイヤの接地圧、タイヤ幅方向のせん断応力、及びタイヤ周方向せん断応力が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−21012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサは、所定サイズの検出領域を有し、当該検出領域における力を測定する。検出領域毎に力を測定するため、検出領域よりも小さい領域での測定は不可能である。例えば、検出領域のサイズが8mmである場合、タイヤの主溝の幅は8mmよりも小さいことが多いので、主溝の境界部分を詳細に評価することができない。得られる力の分布の最小単位は、検出領域のサイズとなってしまう。よって、センサの検出領域よりも小さな領域での検出が望まれる
【0005】
本開示は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、センサの検出領域のサイズよりも小さい領域での検出を可能にした、タイヤの接地特性測定方法及び測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0007】
すなわち、本開示のタイヤの接地特性測定方法は、
タイヤのうち測定対象となる領域に、タイヤ走行面に設けられた力センサの検出領域幅の1/2(nは1以上の自然数)の大きさを有する仮想領域を設定し、
一つの仮想領域に対して、前記力センサが複数回接触するように、所定方向に沿って前記タイヤ走行面と前記タイヤとの接触位置をシフトさせて前記センサによる力の測定を複数回実行し、
前記仮想領域と前記センサとの位置関係に関するデータを、測定時点毎に対応付けたマッピングデータを生成し、
前記マッピングデータにより定まるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係と、前記センサの検出値と、に基づき、前記仮想領域毎に力の値を算出する。
【0008】
このように、一つの仮想領域に対して力センサが複数回接触するようにし、仮想領域とセンサの位置関係により、一つのセンサの検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合が定まるので、力の釣り合い関係を計算で解くことが可能になる。その結果、センサの検出領域よりも小さな仮想領域を一つの単位として検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示におけるタイヤの接地特定測定装置を示す側面図及びブロック図。
図2】タイヤ走行面を示す平面図。
図3】タイヤ走行面に設けられた力センサとタイヤとの接触位置を模式的に示す図。
図4A】タイヤ幅方向に沿ってシフトさせる様子を示す図。
図4B】タイヤ周方向に沿ってシフトさせる様子を示す図。
図5A】センサの検出領域と、設定される仮想領域との関係を示す図。
図5B】センサの検出領域と、設定される仮想領域との関係を示す図。
図6】タイヤの接地面と、センサ群との位置関係を示す図。
図7】検出領域が8mm角であるセンサ群を用いて測定した接地圧Pzの結果を示す図。
図8】検出領域が8mm角であるセンサ群を用い、2mmの仮想領域を設定して測定した接地圧Pzの結果を示す図。
図9】検出領域が8mm角であるセンサ群を用い、2mmの仮想領域を設定して測定した周方向せん断応力Pxの結果を示す図。
図10】検出領域が8mm角であるセンサ群を用い、2mmの仮想領域を設定して測定した幅方向せん断応力Pyの結果を示す図。
図11】タイヤの接地特定測定方法を示すフローチャート。
図12】タイヤとセンサの位置関係を示す図。
図13】タイヤ走行面に設けられた力センサとタイヤとの接触位置を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
<タイヤの接地特定測定装置>
図1及び図2に示すように、タイヤの接地特性測定装置は、タイヤTを走行させるための走行面1と、走行面1にタイヤTを接地させ且つ転動させるタイヤ駆動装置2と、走行面1に設けられる力センサ3と、コンピュータで実現される制御部4と、を有する。
【0012】
走行面1は、平面視で矩形状であり、平坦面である。力センサ3は、矩形状の検出領域A1を有し、検出領域A1にタイヤTが接触したときに、検出領域A1を一単位として力を測定する。本実施形態では、検出領域A1は、幅W1が8mmの正方形であるが、これに限定されない。力センサ3は、3分力センサであり、タイヤと接触した部位の荷重fz、幅方向せん断力fy、及び周方向せん断力fxが測定可能である。力センサ3は所定の配列方向ADに沿って複数配列されてセンサ群3Gを構成している。本実施形態では、走行するタイヤTの幅方向yと、センサ群3Gの配列方向ADとが一致しており、タイヤTの周方向x(転動方向)と、センサ群3Gの配列方向ADに直交する方向とが一致しているが、これに限定されない。例えば、タイヤTの周方向x(転動方向)とセンサ群3Gの配列方向とを一致させてもよい。また、旋回させながら測定する場合には、センサ群3Gの配列方向ADと、タイヤTの周方向又は幅方向が一致しない場合がある。
【0013】
図1に示すように、タイヤ駆動装置2は、タイヤTを走行面1に押圧して接地させ、タイヤ進行方向MDに沿ってスライド移動することで、タイヤTを転動させる。本実施形態では、走行面1を固定としてタイヤ駆動装置2がスライド移動する。走行面1とタイヤ駆動装置2が相対的に移動可能であれば、これに限定されない。例えば、タイヤ駆動装置2を固定とし走行面1を動かしてもよい。力センサ3とタイヤTの接触位置は、タイヤTの転動を開始する位置を異ならせることで調整可能である。
【0014】
制御部4は、タイヤ駆動装置2の駆動を制御するタイヤ駆動制御部40と、力センサ3からの信号を受けて、センサの検出結果を記憶する検出結果記憶部41と、仮想領域設定部42と、マッピングデータ生成部43と、検出値算出部44と、を有する。
【0015】
図3は、タイヤ走行面1に設けられた力センサ3とタイヤTとの接触位置を模式的に示す図である。図中では、説明を容易にするために、センサ3を3つとしているが、センサ3は一つ以上であればよい。図3の例では、タイヤTを一回走行させる毎に、タイヤ幅方向yにタイヤの位置をシフトさせ、2回の測定を実行している。
【0016】
仮想領域設定部42は、図3に示すように、タイヤTのうち測定対象となる領域に、タイヤ走行面1に設けられた力センサ3の検出領域幅W1の1/2(nは1以上の自然数)の大きさを有する仮想領域(図3の例ではL1〜L5)を設定する。仮想領域(図3の例ではL1〜L5)は、力の測定の単位領域となる。
【0017】
タイヤ駆動制御部40は、図3に示すように、一つの仮想領域に対して力センサが複数回接触するように、タイヤ走行面1に設けられた力センサ3とタイヤTとの接触位置を、所定方向(図3ではタイヤ幅方向y)に沿ってシフトさせる。そのときに、センサ3による力の測定が複数回実行され、検出結果記憶部41にセンサ3の検出結果が記憶される。nは1以上の自然数であり、所望の分解能に応じて適宜設定可能である。図3の例ではn=1であり、分解能を2倍に向上させている。本実施形態では、センサ3の検出領域幅W1の1/2づつシフトするように、タイヤ走行面1とタイヤTとを接触させる。
【0018】
マッピングデータ生成部43は、仮想領域とセンサ3との位置関係に関するデータを、測定時点毎に対応付けたマッピングデータを生成する。図3の例では、シフト量がセンサ3の検出領域幅W1の1/2であるので、一つのセンサ3の検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合が全て等しい。よって、マッピングデータ生成部43は、位置関係そのものではなく、センサと位置関係の対応関係のみを対応付けている。測定時点t1において、センサ(N1)と仮想領域(L1)とが対応付けられており、センサ(N2)と仮想領域(L2、L3)とが対応付けられており、センサ(N3)と仮想領域(L4、L5)とが対応付けられている。測定時点t2において、センサ(N1)と仮想領域(L1、L2)とが対応付けられており、センサ(N2)と仮想領域(L3、L4)とが対応付けられており、センサ(N3)と仮想領域(L5)とが対応付けられている。
【0019】
検出値算出部44は、マッピングデータにより定まるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係と、センサ3の検出値と、に基づき仮想領域(図3ではL1〜L5)毎に対応する力(図3ではfL1〜fL5)を算出する。
【0020】
図3の例において、測定時点t1におけるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係は次の通りである。センサN1〜N3の検出値は、それぞれFsN1_t1、FsN2_t1、FsN3_t1で表される。仮想領域L1〜L5における検出対象の力は、それぞれfL1、fL2、fL3、fL4、fL5で表される。
FsN1_t1=fL1
FsN2_t1=fL2+fL3
FsN3_t1=fL4+fL5
【0021】
測定時点t2における力の釣り合い関係は次の通りである。センサN1〜N3の検出値は、それぞれFsN1_t2、FsN2_t2、FsN3_t2で表される。
FsN1_t2=fL1+fL2
FsN2_t2=fL3+fL4
FsN3_t2=fL5
【0022】
全ての測定時点t1〜t2におけるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係は、次の式で表現される。
【数1】
【0023】
上記式における右辺は、センサ3の検出値であるので、未知項である仮想領域L1〜L5毎の力の値[fL1、fL2、fL3、fL4、fL5]を算出すればよい。算出方法は、反復法が望ましい。また、センサ数と仮想領域の数が増えた場合、左式のマトリックスは大規模になるが、計算方法は同一である。
【0024】
図3の例では、図4Aに示すように所定方向(タイヤ幅方向y)に沿ってシフトさせる測定を実行しているが、これに加えて、図4Bに示すように所定方向(タイヤ幅方向y)に直交する方向(タイヤ周方向x)に沿ってシフトさせる測定を実行し、所定方向(タイヤ幅方向y)及び直交する方向(タイヤ周方向x)に設定された複数の仮想領域毎に力の値を算出することが好ましい。シフトさせる測定を両方向(タイヤ幅方向y、タイヤ周方向x)にそれぞれ実行すれば、図5Aに示すように、センサ3の検出領域A1に対して両方向に仮想領域L(点線で示す)が設定できるので、両方向に分解能を向上させることができるからである。なお、タイヤ幅方向yのみにシフトさせた場合には、図5Bに示すように、センサ3の検出領域A1に対してタイヤ幅方向yに沿って複数の仮想領域Lが設定されるので、タイヤ幅方向yのみ分解能を向上させることができる。タイヤ幅方向yに沿った力の検出のみを行うときには、測定回数を減らせて有用である。勿論、シフト方向をタイヤ周方向xのみにしてもよい。
【0025】
精度を高めるためには、複数回の測定でセンサが測定する領域よりもタイヤが接触する領域が小さいことが好ましい。図3に示すように、測定時点t1においてセンサ(N1)には仮想領域L1のみが接触すると仮定し、測定時点t2においてセンサ(N3)には仮想領域L5のみが接触すると仮定している。万一、仮想領域以外にセンサに接触しているものがあれば、数式を解くことは可能であるが、誤差が含まれるからである。
【0026】
本実施形態では、図2に示すように、センサ3が配列方向ADに沿って複数配列されたセンサ群3Gを用いている。タイヤ幅方向yにおいては、タイヤTの接地面は、センサ群3Gの配列方向ADの長さよりも小さい。この条件であれば、センサが測定する領域よりもタイヤが接触する領域が小さいので、誤差を低減又は無くすことができる。
【0027】
図6は、タイヤTの接地面と、センサ群3Gとの位置関係を示す図である。本実施形態では、タイヤの接地面を測定するため、図6に示すように、タイヤ走行面1とタイヤTの接触位置をセンサ群3Gの配列方向ADに直交する方向に複数回移動させることで、センサ群3Gによる検出領域をライン状から面状に拡大させている。本実施形態では、センサ3が8mm角であるので、20回測定することで160mmの検出領域を得ている。
【0028】
この場合、検出結果に基づき、タイヤ走行面1における接地領域(図6で斜線で示す)を特定し、タイヤ走行面1における非接地領域では、1/2シフトさせる測定を省略することが好ましい。測定回数を減らせて有用である。非接触領域では、タイヤTが接地していないために、力が0であり、測定しなくても結果が分かるからである。
【実施例】
【0029】
本開示の有用性を示すために、実例を示す。基礎パターンを有するサイズ205/60R15のタイヤの接地特性を測定した。荷重は3.64kNで、内圧は230kPaである。転動条件は自由転動である。
【0030】
図7は、検出領域A1が8mm角であるセンサ3が複数配列されたセンサ群3Gを用いて、周方向へセンササイズの8mm毎にシフトし、計測した力を並べ、計測した力をセンサ面積で除算し8mm角の分解能にて接地圧Pzを求めた結果である。
【0031】
図8は、検出領域A1が8mm角であるセンサ3を用い、8mm×1/2=2mmづつシフトさせて、一方向あたりの測定数を図7よりも4倍分実行し、仮想領域(2mm)毎に接地圧Pzを算出した結果である。図9は、図8と同様に測定し、仮想領域(2mm)毎に周方向せん断応力Pxを算出した結果である。図10は、図8と同様に測定し、仮想領域(2mm)毎に幅方向せん断応力Pyを算出した結果である。
【0032】
図7及び図8を見て明らかなように、分解能が8mm/ピクセルから2mm/ピクセルに小さくなっているので、詳細な測定が可能となる。
【0033】
[タイヤの接地特定測定方法]
上記装置の動作について図11を参照しつつ説明する。
【0034】
まず、ステップST1では、分解能を決めるためにnを決定する。nの値が装置に入力される。図12及び図8〜10の例では、n=2とし、分解能を4倍に向上させる。
【0035】
次のステップST2において、仮想領域設定部42は、タイヤTのうち測定対象となる領域に、タイヤ走行面1に設けられた力センサ3の検出領域幅W1の1/2の大きさを有する仮想領域を設定する。
【0036】
次のステップST3において、タイヤ駆動制御部40は、図12に示すように、センサ3とタイヤTとが第1の位置関係(1,1)にある状態にて接地測定を実行する。ここでは、タイヤ走行面1とタイヤTの接触位置をセンサ群3Gの配列方向ADに直交する方向に複数回(20回)移動させることで、検出領域を面状に拡大している。
【0037】
次のステップST4において、タイヤ駆動制御部40は、第1の位置関係(1,1)に対して、検出領域幅W1の1/2づつタイヤ幅方向yにシフトさせた測定を、2回実施する。第1の位置関係(1,1)からW1×1/2シフトさせると、位置関係(1,2)になる。さらにシフトさせると、位置関係(1,3)になる。さらにシフトさせると、位置関係(1,4)になる。これは、言い換えれば、一つの仮想領域に対して、センサ3が複数回接触するように、所定方向に沿ってタイヤ走行面1とタイヤTとの接触位置をシフトさせてセンサ3による力の測定を実行することである。
【0038】
次のステップST5において、タイヤ駆動制御部40は、上記位置関係(1,1)、(1,2)、(1,3)、(1,4)に対して、検出領域幅W1の1/2づつタイヤ周方向xにシフトさせた測定を、2回実施する。位置関係(1,1)からタイヤ周方向xにシフトさせると位置関係(2,1)になる。ステップST2〜4の測定により、(1,1)〜(1,4)、(2,1)〜(2,4)、(3,1)〜(3,4)、(4,1)〜(4,4)、計16の位置関係で測定する。
【0039】
次のステップST6において、マッピングデータ生成部43は、仮想領域とセンサ3との位置関係を、測定時点毎に対応付けたマッピングデータを生成する。
【0040】
次のステップST7において、検出値算出部44は、マッピングデータにより定まるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係と、センサの検出値と、に基づき、仮想領域毎に力の値を算出する。
【0041】
なお、ステップST3〜5において、図12に示すように、一つの位置関係の面状の計測をライン状センサで行うためには、20回の計測が必要である。16面の計測を行うためには、20×4×4=320回の計測が必要となる。計測回数を低減して、計測時間を短縮するためには、20回の計測後にタイヤの接地領域が特定可能となるので、非接地領域に対する1/2シフトの計測を省略すればよい。
【0042】
以上のように、本実施形態のタイヤの接地特性測定方法は、タイヤTのうち測定対象となる領域に、タイヤ走行面1に設けられた力センサ3の検出領域幅W1の1/2(nは1以上の自然数)の大きさを有する仮想領域を設定し(ST2)、
一つの仮想領域に対して、力センサ3が複数回接触するように、所定方向に沿ってタイヤ走行面1とタイヤTとの接触位置をシフトさせてセンサ3による力の測定を複数回実行し(ST3〜5)、
仮想領域とセンサ3との位置関係に関するデータを、測定時点毎に対応付けたマッピングデータを生成し(ST6)、
マッピングデータ生成部43により定まるセンサ3と仮想領域との力の釣り合い関係と、センサ3の検出値と、に基づき、仮想領域毎に力の値を算出する(ST7)。
【0043】
本実施形態のタイヤの接地特性測定装置は、
タイヤTのうち測定対象となる領域に、タイヤ走行面1に設けられた力センサ3の検出領域幅W1の1/2(nは1以上の自然数)の大きさを有する仮想領域を設定する仮想領域設定部42と、
一つの仮想領域に対して、力センサ3が複数回接触するように、所定方向に沿ってタイヤ走行面1とタイヤTとの接触位置をシフトさせてセンサ3による力の測定を複数回実行するタイヤ駆動制御部40と、
仮想領域とセンサ3との位置関係に関するデータを、測定時点毎に対応付けたマッピングデータを生成するマッピングデータ生成部43と、
マッピングデータ生成部43により定まるセンサ3と仮想領域との力の釣り合い関係と、センサ3の検出値と、に基づき、仮想領域毎に力の値を算出する検出値算出部44と、を備える。
【0044】
このように、一つの仮想領域に対して力センサ3が複数回接触するようにし、仮想領域とセンサ3の位置関係により、一つのセンサ3の検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合が定まるので、力の釣り合い関係を計算で解くことが可能になる。その結果、センサ3の検出領域A1よりも小さな仮想領域を一つの単位として検出が可能になる。
【0045】
本実施形態では、タイヤ走行面1とタイヤTとの接触位置を、センサ3の検出領域幅W1の1/2づつシフトさせてセンサ3による力の測定を複数回実行し、一つのセンサ3の検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合が全て等しいとして、仮想領域毎に力の値を算出している。
【0046】
このように、センサ3の検出領域幅W1の1/2づつシフトさせるので、一つのセンサに入力される各々の仮想領域の力の割合が等しくなり、力の釣り合い関係を計算で解くことが可能になる。その結果、センサ3の検出領域A1よりも小さな仮想領域を一つの単位として検出が可能になる。
【0047】
本実施形態では、所定方向(タイヤ幅方向y)に沿ってシフトさせる測定に加えて、所定方向に直交する方向(タイヤ周方向x)に沿ってシフトさせる測定を実行し、所定方向(タイヤ幅方向y)及び直交する方向(タイヤ周方向x)の両方向に設定された複数の仮想領域毎に力の値を算出する。
【0048】
この構成によれば、2つの方向に仮想領域が設定されるので、両方向に分解能を向上させることが可能となる。
【0049】
本実施形態では、複数回の測定でセンサが測定する領域よりもタイヤが接触する領域が小さい。
【0050】
このようにすれば、仮想領域以外に接触点が存在するといった誤差が含まれないので、精度を向上させることが可能となる。
【0051】
この一つの態様として、センサ3が所定の配列方向ADに沿って複数配列されたセンサ群3Gを用い、タイヤTの接地面は、センサ群3Gの配列方向ADの長さよりも小さいことが挙げられる。
【0052】
タイヤ走行面1とタイヤTの接触位置をセンサ群3Gの配列方向ADに直交する方向に複数回移動させることで、センサ群3Gによる検出領域をライン状から面状に拡大させており、検出結果に基づきタイヤ走行面1における接地領域を特定し、タイヤ走行面1における非接地領域では、シフトを省略する。
【0053】
このようにすれば、計測値が0であることが判明している箇所の測定を省略して、計測回数を減らし、計測時間を短縮することが可能となる。
【0054】
本実施形態では、タイヤ走行面1は平坦面であり、タイヤ走行面1に対してタイヤTを転動させる。
【0055】
この構成によれば、タイヤをタイヤ走行面1に転動させる度に、タイヤとタイヤ走行面1とを一旦離して、転動開始位置を異ならせるだけで、センサとタイヤの接触位置の制御を行えるため、制御しやすい。勿論、センサとタイヤの接触位置の制御ができるのであれば、文献1のように、走行面をドラム形状にして、連続走行させて計測するのでもよい。
【0056】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0057】
例えば、本実施形態では、センサ3がライン状に配列されたセンサ群3Gを用いて計測しているが、これに限定されない。センサ3がマトリックス状に配置されたセンサ群を用いれば、計測時間を短縮することができる。また、計測時間がかかるが、単一のセンサ3のみを用いた計測も可能である。
【0058】
上記実施形態では、シフト量は、センサ3の検出領域幅W1の1/2に設定されているが、変更可能である。図13の例は、シフト量を、センサ3の検出領域幅W1の1/2に制御しようとしたところ、シフト量が、センサ3の検出領域幅W1の3/4になってしまった例である。このような場合は、仮想領域とセンサ3との位置関係を別途検知する検知部が必要である。例えば、タイヤの回転パルスと、路面板や路面ドラムの駆動パルスにより検知することができる。
【0059】
図13において、測定時点t1におけるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係は次の通りである。センサN1〜N3の検出値は、それぞれFsN1_t1、FsN2_t1、FsN3_t1で表される。仮想領域L1〜L5における検出対象の力は、それぞれfL1、fL2、fL3、fL4、fL5で表される。測定時点t1におけるセンサN1の検出値に含まれる仮想領域L1の力の割合(重み)は、Wt1_N1_L1で表される。
FsN1_t1=Wt1_N1_L1・fL1
FsN2_t1=Wt1_N2_L2・fL2+Wt1_N2_L3・fL3
FsN3_t1=Wt1_N3_L4・fL4+Wt1_N3_L5・fL5
【0060】
測定時点t2における力の釣り合い関係は次の通りである。センサN1〜N3の検出値は、それぞれFsN1_t2、FsN2_t2、FsN3_t2で表される。
FsN1_t2=Wt2_N1_L1・fL1+Wt2_N1_L2・fL2+t2_N1_L3・fL3
FsN2_t2=Wt2_N2_L3・fL3+Wt2_N2_L4・fL4+Wt2_N2_L5・fL5
FsN3_t2=Wt2_N3_L5・fL5
ここで、図13の下部に示すように、センサN1と仮想領域L1〜L3の重なり量は、それぞれ0.25×W1、0.5×W1、0.25×W1であり、Wt2_N1_L1、Wt2_N1_L2、Wt2_N1_L3=0.25、0.5、0.25である。
【0061】
全ての測定時点t1〜t2におけるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係は、次の式で表現される。
【数2】
【0062】
このように、一つのセンサの検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合を、仮想領域とセンサとの重なり量に応じて算出し、仮想領域毎に力の値を算出するように構成することも可能である。
【0063】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…タイヤ走行面
3…センサ
40…タイヤ駆動制御部
42…仮想領域設定部
43…マッピングデータ生成部
44…検出値算出部
T…タイヤ
W1…検出領域幅
L、L1〜L5…仮想領域
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
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図10
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図13