【実施例】
【0029】
本開示の有用性を示すために、実例を示す。基礎パターンを有するサイズ205/60R15のタイヤの接地特性を測定した。荷重は3.64kNで、内圧は230kPaである。転動条件は自由転動である。
【0030】
図7は、検出領域A1が8mm角であるセンサ3が複数配列されたセンサ群3Gを用いて、周方向へセンササイズの8mm毎にシフトし、計測した力を並べ、計測した力をセンサ面積で除算し8mm角の分解能にて接地圧Pzを求めた結果である。
【0031】
図8は、検出領域A1が8mm角であるセンサ3を用い、8mm×1/2
2=2mmづつシフトさせて、一方向あたりの測定数を
図7よりも4倍分実行し、仮想領域(2mm)毎に接地圧Pzを算出した結果である。
図9は、
図8と同様に測定し、仮想領域(2mm)毎に周方向せん断応力Pxを算出した結果である。
図10は、
図8と同様に測定し、仮想領域(2mm)毎に幅方向せん断応力Pyを算出した結果である。
【0032】
図7及び
図8を見て明らかなように、分解能が8mm/ピクセルから2mm/ピクセルに小さくなっているので、詳細な測定が可能となる。
【0033】
[タイヤの接地特定測定方法]
上記装置の動作について
図11を参照しつつ説明する。
【0034】
まず、ステップST1では、分解能を決めるためにnを決定する。nの値が装置に入力される。
図12及び
図8〜10の例では、n=2とし、分解能を4倍に向上させる。
【0035】
次のステップST2において、仮想領域設定部42は、タイヤTのうち測定対象となる領域に、タイヤ走行面1に設けられた力センサ3の検出領域幅W1の1/2
nの大きさを有する仮想領域を設定する。
【0036】
次のステップST3において、タイヤ駆動制御部40は、
図12に示すように、センサ3とタイヤTとが第1の位置関係(1,1)にある状態にて接地測定を実行する。ここでは、タイヤ走行面1とタイヤTの接触位置をセンサ群3Gの配列方向ADに直交する方向に複数回(20回)移動させることで、検出領域を面状に拡大している。
【0037】
次のステップST4において、タイヤ駆動制御部40は、第1の位置関係(1,1)に対して、検出領域幅W1の1/2
nづつタイヤ幅方向yにシフトさせた測定を、2
n回実施する。第1の位置関係(1,1)からW1×1/2
nシフトさせると、位置関係(1,2)になる。さらにシフトさせると、位置関係(1,3)になる。さらにシフトさせると、位置関係(1,4)になる。これは、言い換えれば、一つの仮想領域に対して、センサ3が複数回接触するように、所定方向に沿ってタイヤ走行面1とタイヤTとの接触位置をシフトさせてセンサ3による力の測定を実行することである。
【0038】
次のステップST5において、タイヤ駆動制御部40は、上記位置関係(1,1)、(1,2)、(1,3)、(1,4)に対して、検出領域幅W1の1/2
nづつタイヤ周方向xにシフトさせた測定を、2
n回実施する。位置関係(1,1)からタイヤ周方向xにシフトさせると位置関係(2,1)になる。ステップST2〜4の測定により、(1,1)〜(1,4)、(2,1)〜(2,4)、(3,1)〜(3,4)、(4,1)〜(4,4)、計16の位置関係で測定する。
【0039】
次のステップST6において、マッピングデータ生成部43は、仮想領域とセンサ3との位置関係を、測定時点毎に対応付けたマッピングデータを生成する。
【0040】
次のステップST7において、検出値算出部44は、マッピングデータにより定まるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係と、センサの検出値と、に基づき、仮想領域毎に力の値を算出する。
【0041】
なお、ステップST3〜5において、
図12に示すように、一つの位置関係の面状の計測をライン状センサで行うためには、20回の計測が必要である。16面の計測を行うためには、20×4×4=320回の計測が必要となる。計測回数を低減して、計測時間を短縮するためには、20回の計測後にタイヤの接地領域が特定可能となるので、非接地領域に対する1/2
nシフトの計測を省略すればよい。
【0042】
以上のように、本実施形態のタイヤの接地特性測定方法は、タイヤTのうち測定対象となる領域に、タイヤ走行面1に設けられた力センサ3の検出領域幅W1の1/2
n(nは1以上の自然数)の大きさを有する仮想領域を設定し(ST2)、
一つの仮想領域に対して、力センサ3が複数回接触するように、所定方向に沿ってタイヤ走行面1とタイヤTとの接触位置をシフトさせてセンサ3による力の測定を複数回実行し(ST3〜5)、
仮想領域とセンサ3との位置関係に関するデータを、測定時点毎に対応付けたマッピングデータを生成し(ST6)、
マッピングデータ生成部43により定まるセンサ3と仮想領域との力の釣り合い関係と、センサ3の検出値と、に基づき、仮想領域毎に力の値を算出する(ST7)。
【0043】
本実施形態のタイヤの接地特性測定装置は、
タイヤTのうち測定対象となる領域に、タイヤ走行面1に設けられた力センサ3の検出領域幅W1の1/2
n(nは1以上の自然数)の大きさを有する仮想領域を設定する仮想領域設定部42と、
一つの仮想領域に対して、力センサ3が複数回接触するように、所定方向に沿ってタイヤ走行面1とタイヤTとの接触位置をシフトさせてセンサ3による力の測定を複数回実行するタイヤ駆動制御部40と、
仮想領域とセンサ3との位置関係に関するデータを、測定時点毎に対応付けたマッピングデータを生成するマッピングデータ生成部43と、
マッピングデータ生成部43により定まるセンサ3と仮想領域との力の釣り合い関係と、センサ3の検出値と、に基づき、仮想領域毎に力の値を算出する検出値算出部44と、を備える。
【0044】
このように、一つの仮想領域に対して力センサ3が複数回接触するようにし、仮想領域とセンサ3の位置関係により、一つのセンサ3の検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合が定まるので、力の釣り合い関係を計算で解くことが可能になる。その結果、センサ3の検出領域A1よりも小さな仮想領域を一つの単位として検出が可能になる。
【0045】
本実施形態では、タイヤ走行面1とタイヤTとの接触位置を、センサ3の検出領域幅W1の1/2
nづつシフトさせてセンサ3による力の測定を複数回実行し、一つのセンサ3の検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合が全て等しいとして、仮想領域毎に力の値を算出している。
【0046】
このように、センサ3の検出領域幅W1の1/2
nづつシフトさせるので、一つのセンサに入力される各々の仮想領域の力の割合が等しくなり、力の釣り合い関係を計算で解くことが可能になる。その結果、センサ3の検出領域A1よりも小さな仮想領域を一つの単位として検出が可能になる。
【0047】
本実施形態では、所定方向(タイヤ幅方向y)に沿ってシフトさせる測定に加えて、所定方向に直交する方向(タイヤ周方向x)に沿ってシフトさせる測定を実行し、所定方向(タイヤ幅方向y)及び直交する方向(タイヤ周方向x)の両方向に設定された複数の仮想領域毎に力の値を算出する。
【0048】
この構成によれば、2つの方向に仮想領域が設定されるので、両方向に分解能を向上させることが可能となる。
【0049】
本実施形態では、複数回の測定でセンサが測定する領域よりもタイヤが接触する領域が小さい。
【0050】
このようにすれば、仮想領域以外に接触点が存在するといった誤差が含まれないので、精度を向上させることが可能となる。
【0051】
この一つの態様として、センサ3が所定の配列方向ADに沿って複数配列されたセンサ群3Gを用い、タイヤTの接地面は、センサ群3Gの配列方向ADの長さよりも小さいことが挙げられる。
【0052】
タイヤ走行面1とタイヤTの接触位置をセンサ群3Gの配列方向ADに直交する方向に複数回移動させることで、センサ群3Gによる検出領域をライン状から面状に拡大させており、検出結果に基づきタイヤ走行面1における接地領域を特定し、タイヤ走行面1における非接地領域では、シフトを省略する。
【0053】
このようにすれば、計測値が0であることが判明している箇所の測定を省略して、計測回数を減らし、計測時間を短縮することが可能となる。
【0054】
本実施形態では、タイヤ走行面1は平坦面であり、タイヤ走行面1に対してタイヤTを転動させる。
【0055】
この構成によれば、タイヤをタイヤ走行面1に転動させる度に、タイヤとタイヤ走行面1とを一旦離して、転動開始位置を異ならせるだけで、センサとタイヤの接触位置の制御を行えるため、制御しやすい。勿論、センサとタイヤの接触位置の制御ができるのであれば、文献1のように、走行面をドラム形状にして、連続走行させて計測するのでもよい。
【0056】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0057】
例えば、本実施形態では、センサ3がライン状に配列されたセンサ群3Gを用いて計測しているが、これに限定されない。センサ3がマトリックス状に配置されたセンサ群を用いれば、計測時間を短縮することができる。また、計測時間がかかるが、単一のセンサ3のみを用いた計測も可能である。
【0058】
上記実施形態では、シフト量は、センサ3の検出領域幅W1の1/2
nに設定されているが、変更可能である。
図13の例は、シフト量を、センサ3の検出領域幅W1の1/2に制御しようとしたところ、シフト量が、センサ3の検出領域幅W1の3/4になってしまった例である。このような場合は、仮想領域とセンサ3との位置関係を別途検知する検知部が必要である。例えば、タイヤの回転パルスと、路面板や路面ドラムの駆動パルスにより検知することができる。
【0059】
図13において、測定時点t1におけるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係は次の通りである。センサN1〜N3の検出値は、それぞれFs
N1_t1、Fs
N2_t1、Fs
N3_t1で表される。仮想領域L1〜L5における検出対象の力は、それぞれf
L1、f
L2、f
L3、f
L4、f
L5で表される。測定時点t1におけるセンサN1の検出値に含まれる仮想領域L1の力の割合(重み)は、W
t1_N1_L1で表される。
Fs
N1_t1=W
t1_N1_L1・f
L1
Fs
N2_t1=W
t1_N2_L2・f
L2+W
t1_N2_L3・f
L3
Fs
N3_t1=W
t1_N3_L4・f
L4+W
t1_N3_L5・f
L5
【0060】
測定時点t2における力の釣り合い関係は次の通りである。センサN1〜N3の検出値は、それぞれFs
N1_t2、Fs
N2_t2、Fs
N3_t2で表される。
Fs
N1_t2=W
t2_N1_L1・f
L1+W
t2_N1_L2・f
L2+W
t2_N1_L3・f
L3
Fs
N2_t2=W
t2_N2_L3・f
L3+W
t2_N2_L4・f
L4+W
t2_N2_L5・f
L5
Fs
N3_t2=W
t2_N3_L5・f
L5
ここで、
図13の下部に示すように、センサN1と仮想領域L1〜L3の重なり量は、それぞれ0.25×W1、0.5×W1、0.25×W1であり、W
t2_N1_L1、W
t2_N1_L2、W
t2_N1_L3=0.25、0.5、0.25である。
【0061】
全ての測定時点t1〜t2におけるセンサと仮想領域との力の釣り合い関係は、次の式で表現される。
【数2】
【0062】
このように、一つのセンサの検出値に含まれる複数の仮想領域の力の割合を、仮想領域とセンサとの重なり量に応じて算出し、仮想領域毎に力の値を算出するように構成することも可能である。
【0063】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。