【解決手段】基板11と基板11の端部に固定されるコネクタ31とを備えた基板とコネクタとの接続構造であって、基板11は、第1の誘電体層14と、第1の誘電体層14の上面に設けられた信号パターン12と、第1の誘電体層14よりも下側に設けられ、信号パターン12と共に信号伝送回路を形成する第1のグランド層15と、基板11の端部の端面において、信号パターン12の直下に位置し、第1のグランド層15の端面を含む領域に形成されためっき膜21とを備えている。コネクタ31は、中心導体32と、外部導体36と、コネクタ31を基板11の端部に固定する固定部45とを備えている。コネクタ31が基板11の端部に固定されたとき、中心導体32が信号パターン12と接触し、めっき膜21が外部導体36に接触する。
前記基板は、前記第1のグランド層よりも下側に設けられた1層以上の層をさらに備えた多層基板であることを特徴とする請求項1に記載の基板とコネクタとの接続構造。
前記端面導電膜は前記基板に部分めっきを施すことにより形成されためっき膜であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の基板とコネクタとの接続構造。
筒状に形成された前記外部導体の前記基板と向かい合う側の端部において、径方向下側に位置する下側端部が径方向上側に位置する上側端部よりも軸方向に後退し、前記下側端部と前記上側端部との間には前記下側端部と前記上側端部との間を接続する段差面が形成され、
前記固定部により前記コネクタが前記基板の前記端部に固定されたときには、前記基板の前記端部の端面が前記下側端部の端面に対向し、前記基板の前記端部の上面が前記段差面に対向することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の基板とコネクタとの接続構造。
前記固定部は、前記外部導体の前記基板と向かい合う側の端部から前記基板の上面上へ突出し、当該固定部は前記基板の上面に締着部材を介して固定されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の基板とコネクタとの接続構造。
前記基板には前記固定部を当該基板の上面に固定するために前記締着部材を通す第1の穴部が形成され、前記固定部には当該固定部を前記基板の上面に固定するために前記締着部材を通す第2の穴部が形成され、前記基板の前記端部の端面から前記第1の穴部までの距離は、前記外部導体の端面において前記基板の前記端部の端面が対向する部分から前記第2の穴部までの距離よりも長いことを特徴とする請求項6に記載の基板とコネクタとの接続構造。
誘電体層、前記誘電体層の上面に設けられた信号パターン、および前記誘電体層よりも下側に設けられ、前記信号パターンと共に信号伝送回路を形成するグランド層を備えた基板と、
中心導体、前記中心導体の外周側に絶縁体を介して設けられた外部導体、および前記外部導体に設けられ、当該コネクタを前記基板の前記端部に固定する固定部を備えたコネクタとを接続する基板とコネクタとの接続方法であって、
前記基板の前記端部の端面において、当該端面と対向する位置から見て前記信号パターンの直下に位置し、かつ前記信号パターンから離れ、前記グランド層の端面を含む領域に端面導電膜を形成し、
前記中心導体を前記信号パターンと接触させ、かつ前記端面導電膜を前記外部導体に接触させつつ、前記コネクタを前記基板の前記端部に前記固定部を介して固定することを特徴とする基板とコネクタとの接続方法。
【背景技術】
【0002】
基板とコネクタとを接続して、高周波信号を伝送する回路を形成する際には、基板とコネクタとの間における信号の反射特性を高めることが求められる。
【0003】
下記の特許文献1には、高周波信号の伝送回路に利用可能な多層配線基板(以下、これを「従来の多層配線基板」という。)が記載されている。従来の多層配線基板は、多層配線基板と多層配線基板に実装されたコネクタとを備えている。コネクタは中心導体および外部導体を備えた同軸コネクタである。一方、多層配線基板は3層以上の多層基板である。具体的には、多層配線基板は、第1の誘電体層を有し、第1の誘電体層の上面には高周波信号経路が形成され、第1の誘電体層の下面にはグランド層が形成され、さらにグランド層の下側には、第2の誘電体層、制御信号層および第3の誘電体層等の複数の層が形成されている。さらに、多層配線基板の上面において、高周波信号線路の両脇にはグランド電極部が設けられており、グランド電極部はスルーホールを介してグランド層に接続されている。
【0004】
また、従来の多層配線基板において、コネクタの中心導体は、多層配線基板の高周波信号経路に接合されており、これにより、中心導体と高周波信号経路とは電気的に接続されている。また、コネクタの外部導体には一対の突出部が設けられ、これら突出部が高周波信号経路の両脇に形成されたグランド電極部にそれぞれ接合されている。これにより、外部導体とグランド電極部とは電気的に接続されている。
【0005】
さらに、従来の多層配線基板において、グランド層の下側に形成された各層、すなわち、第2の誘電体層、制御信号層および第3の誘電体層等が第1の誘電体層の縁部から離間しており、その結果、第1の誘電体層の下面に形成されたグランド層の下面の一部が露出している。そして、そのグランド層の露出した部分(グランド露出部)が、半田等を介してコネクタの外部導体に接合されており、これにより、グランド層は外部導体と電気的に接続されている。
【0006】
従来の多層配線基板において、グランド層と外部導体との電気的接続は、グランド電極部と突出部との接合により図られているが、それに加え、グランド露出部と外部導体の接合によっても図られている。特許文献1には、グランド露出部と外部導体との接合により、グランド層と外部導体とが直接接続されるため、多層配線基板とコネクタとのグランドインダクタンス増大が抑圧され、高速データ信号の波形品質が確保される旨が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の多層配線基板によれば、グランド露出部と外部導体との接合により、グランド層と外部導体とを直接接続する構成を有することで、このような構成を有しない場合と比較して、多層配線基板とコネクタとの間の信号の反射特性を高めることができると考えられる。
【0009】
しかしながら、従来の多層配線基板では、特許文献1に記載されている通り、グランド露出部と外部導体とを半田、銀ペーストまたは導電性接着剤を用いて接合している。このため、基板とコネクタとを接続する際には、グランド露出部と外部導体とを接合するために、半田付け作業、銀ペーストを付ける作業、または導電性接着剤を塗布する作業を行う必要がある。また、基板からコネクタを分離する際には、グランド露出部と外部導体との接合を解くために、半田、銀ペーストまたは導電性接着剤を剥がす作業を行う必要がある。このように、従来の多層配線基板には、多層配線基板とコネクタとの接続、分離に手間がかかるという問題がある。
【0010】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、コネクタと基板との間の信号の反射特性を高めることができ、かつ基板とコネクタとの接続、分離を簡単に行うことができる基板とコネクタとの接続構造、基板および基板とコネクタとの接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の基板とコネクタとの接続構造は、基板と前記基板の端部に固定されるコネクタとを備えた、基板とコネクタとの接続構造であって、前記基板は、誘電体層と、前記誘電体層の上面に設けられた信号パターンと、前記誘電体層よりも下側に設けられ、前記信号パターンと共に信号伝送回路を形成する第1のグランド層と、前記基板の前記端部の端面において、当該端面と対向する位置から見て前記信号パターンの直下に位置し、かつ前記信号パターンから離れ、前記第1のグランド層の端面を含む領域に形成された端面導電膜とを備え、前記コネクタは、中心導体と、前記中心導体の外周側に絶縁体を介して設けられた外部導体と、前記外部導体に設けられ、当該コネクタを前記基板の前記端部に固定する固定部とを備え、前記固定部により前記コネクタが前記基板の前記端部に固定されたとき、前記中心導体が前記信号パターンと接触し、かつ前記端面導電膜が前記外部導体に接触する。
【0012】
本発明の基板とコネクタとの接続構造によれば、基板の端部の端面において、信号パターンの直下に位置し、第1のグランド層の端面を含む領域に端面導電膜を形成する構成としたことにより、信号パターンの直下において第1のグランド層と外部導体とを接続することができる。したがって、基板とコネクタとの間の信号の反射特性を高めることができる。また、端面導電膜と外部導体との接触により、第1のグランド層と外部導体とが接続されるので、第1のグランド層と外部導体との接続に半田、銀ペーストまたは導電性接着剤等は不要である。したがって、基板とコネクタとを接続する際に半田付け等の作業が不要となり、一方、基板からコネクタを分離する際に半田を剥がす作業等が不要になるので、基板とコネクタとの接続、分離を簡単に行うことができる。
【0013】
また、本発明の基板とコネクタとの接続構造において、前記基板は、前記第1のグランド層よりも下側に設けられた1層以上の層をさらに備えた多層基板であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の基板とコネクタとの接続構造において、前記基板は、前記第1のグランド層の下側に当該第1のグランド層と隣接して設けられた第2の誘電体層と、前記第2の誘電体層の下側に当該第2の誘電体層と隣接して設けられた第2のグランド層とを備え、前記端面導電膜は、前記基板の前記端部の端面において、当該端面と対向する位置から見て前記信号パターンの直下であって前記第1のグランド層の端面から前記第2のグランド層の端面にかけての領域に形成されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の基板とコネクタとの接続構造において、前記端面導電膜は前記基板に部分めっきを施すことにより形成されためっき膜であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の基板とコネクタとの接続構造において、筒状に形成された前記外部導体の前記基板と向かい合う側の端部において、径方向下側に位置する下側端部が径方向上側に位置する上側端部よりも軸方向に後退し、前記下側端部と前記上側端部との間には前記下側端部と前記上側端部との間を接続する段差面が形成され、前記固定部により前記コネクタが前記基板の前記端部に固定されたときには、前記基板の前記端部の端面が前記下側端部の端面に対向し、前記基板の前記端部の上面が前記段差面に対向することが好ましい。
【0017】
また、本発明の基板とコネクタとの接続構造において、前記固定部は、前記外部導体の前記基板と向かい合う側の端部から前記基板の上面上へ突出し、当該固定部は前記基板の上面に締着部材を介して固定されることが好ましい。
【0018】
また、本発明の基板とコネクタとの接続構造において、前記基板には前記固定部を当該基板の上面に固定するために前記締着部材を通す第1の穴部が形成され、前記固定部には当該固定部を前記基板の上面に固定するために前記締着部材を通す第2の穴部が形成され、前記基板の前記端部の端面から前記第1の穴部までの距離は、前記外部導体の端面において前記基板の前記端部の端面が対向する部分から前記第2の穴部までの距離よりも長いことが好ましい。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の基板は、信号伝送回路を形成する基板であって、誘電体層と、前記誘電体層の上面に設けられた信号パターンと、前記誘電体層よりも下側に設けられ、前記信号パターンと共に前記信号伝送回路を形成するグランド層と、当該基板の端部の端面において、当該端面と対向する位置から見て前記信号パターンの直下に位置し、かつ前記信号パターンから離れ、前記グランド層の端面を含む領域に形成された端面導電膜とを備え、中心導体および前記中心導体の外周側に絶縁体を介して設けられた外部導体を有する基板端部実装型のコネクタが当該基板の前記端部に固定されたとき、前記中心導体が前記信号パターンと接触し、かつ前記端面導電膜が前記外部導体に接触する。本発明の基板により、上述した本発明の基板とコネクタとの接続構造を実現することができる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の基板とコネクタとの接続方法は、誘電体層、前記誘電体層の上面に設けられた信号パターン、および前記誘電体層よりも下側に設けられ、前記信号パターンと共に信号伝送回路を形成するグランド層を備えた基板と、中心導体、前記中心導体の外周側に絶縁体を介して設けられた外部導体、および前記外部導体に設けられ、当該コネクタを前記基板の前記端部に固定する固定部を備えたコネクタとを接続する基板とコネクタとの接続方法であって、前記基板の前記端部の端面において、当該端面と対向する位置から見て前記信号パターンの直下に位置し、かつ前記信号パターンから離れ、前記グランド層の端面を含む領域に端面導電膜を形成し、前記中心導体を前記信号パターンと接触させ、かつ前記端面導電膜を前記外部導体に接触させつつ、前記コネクタを前記基板の前記端部に前記固定部を介して固定する。本発明の基板とコネクタとの接続方法により、上述した本発明の基板とコネクタとの接続構造を実現することができる。
【0021】
また、本発明の基板とコネクタとの接続方法において、前記端面導電膜の形成は前記基板に部分めっきを施すことにより行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コネクタと基板との間の信号の反射特性を高めることができ、かつ基板とコネクタとの接続、分離を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態の基板とコネクタとの接続構造を示している。以下、説明の便宜上、
図1、
図2等の右下に描いた矢印Fの方向を手前、矢印Bの方向を奥、矢印Lの方向を左、矢印Rの方向を右、矢印Uの方向を上、矢印Dの方向を下とする。
【0025】
図1において、基板とコネクタとの接続構造1(以下、これを「基板−コネクタ接続構造1」という。)は、基板11の端部にコネクタ31を固定し、基板11の信号パターン12とコネクタ31の中心導体32(
図5参照)との間、および基板11のグランド層15、17(
図2参照)とコネクタ31の外部導体36との間をそれぞれ電気的に接続する構造である。
【0026】
図2は基板11を示している。
図3は、基板11の端面11Aにおいてコネクタ31と対向する部分を、端面11Aと対向する位置から
図2中の矢示III方向に見た図である。
図4は
図3中の矢示IV−IV方向から見た基板11の断面を示している。
【0027】
図2において、基板11は例えば3層の多層基板である。具体的には、基板11は、第1の誘電体層14と、第1の誘電体層14の上面に形成された信号パターン12および一対のグランドパターン13と、第1の誘電体層14の下側に設けられた第1のグランド層15と、第1のグランド層15の下側に設けられた第2の誘電体層16と、第2の誘電体層16の下側に設けられた第2のグランド層17とを備えている。
【0028】
第1の誘電体層14および第2の誘電体層16は、例えばガラスエポキシ、フッ素樹脂またはセラミック等の誘電体により形成されている。信号パターン12、グランドパターン13、第1のグランド層15および第2のグランド層17は例えば銅等の導体により形成されている。
【0029】
基板11には、マイクロ波帯またはミリ波帯の高周波信号を伝送する信号伝送回路が形成されている。具体的には、信号パターン12、グランドパターン13、第1のグランド層15および第2のグランド層17により、2層のグランドを有するコプレーナウェーブガイド型およびマイクロストリップライン型の伝送回路が形成されている。グランドパターン13、第1のグランド層15および第2のグランド層17はリファレンス層として機能する。
【0030】
信号パターン12および各グランドパターン13は、第1の誘電体層14上に位置すると共に基板11の上面に位置している。信号パターン12は、手前から奥へ直線状に伸長しており、信号パターン12の一端部は、基板11においてコネクタ31が固定される側の端部に位置している。一方のグランドパターン13は、信号パターン12の左方であって信号パターン12から離れた位置に広範囲に亘って形成されている。他方のグランドパターン13は、信号パターン12の右方であって信号パターン12から離れた位置に広範囲に亘って形成されている。
【0031】
第1のグランド層15は、
図4に示すように、第1の誘電体層14の下側において第1の誘電体層14と隣接して設けられ、第1の誘電体層14の下面全域を覆っている。第2の誘電体層16は、第1のグランド層15の下側において第1のグランド層15と隣接して設けられ、第1のグランド層15の下面全域を覆っている。第2のグランド層17は、第2の誘電体層16の下側において第2の誘電体層と隣接して設けられ、第2の誘電体層16の下面全域を覆っている。
【0032】
また、基板11には、各グランドパターン13と第1のグランド層15と第2のグランド層17とを電気的に接続する複数のスルーホール18が形成されている。各スルーホール18は、信号パターン12の近い位置に、信号パターン12に沿うように配置されている。
【0033】
また、信号パターン12の幅、並びに信号パターン12、グランドパターン13およびそれぞれの層の厚さは、基板11(信号伝送回路)の特性インピーダンスがコネクタ31の特性インピーダンス等と整合するように設定されている。一例をあげれば、信号パターン12の幅は約360μmである。また、信号パターン12および各グランドパターン13のそれぞれの厚さは約34μmであり、第1の誘電体層14の厚さは約200μmであり、第1のグランド層15の厚さは約18μmである。また、第2の誘電体層16の厚さは約200μmであり、第2のグランド層17の厚さは約18μmである。
【0034】
また、第1のグランド層15において信号パターン12の一端側の下方に位置する部分には、基板11の特性インピーダンスを調整するための調整孔19が形成されている。なお、調整孔19は必要に応じて形成すればよいもので、必須のものではない。
【0035】
また、
図2に示すように、基板11のコネクタ31が固定される側の端部の端面11Aにおける所定の領域には端面導体膜としてのめっき膜21が形成されている。めっき膜21は、基板11に部分めっきを施すことにより形成されている。例えば、めっき膜21は、基板11の端面11Aの全域をめっきした後、端面11Aにおいて、信号パターン12の下側の信号パターン12に極近い部分のめっきを剥離し、または溶解させて除去することにより形成されている。
【0036】
めっき膜21は、具体的には、(1)基板11の端面11Aにおいて、信号パターン12の左方であって、左側のグランドパターン13の端面から第2のグランド層17の端面にかけての領域と、(2)基板11の端面11Aにおいて、信号パターン12の右方であって、右側のグランドパターン13の端面から第2のグランド層17の端面にかけての領域と、(3)基板11の端面11Aにおいて、当該端面11Aと対向する位置から見て信号パターン12の直下であって、第1のグランド層15の端面から第2のグランド層17の端面にかけての領域に形成されている。
【0037】
図3に示すように、めっき膜21は、基板11の端面11Aのうち、信号パターン12の下側の信号パターン12に極近い部分を除くすべての領域を覆っている。また、めっき膜21は、基板11の端面11Aにおいて、各グランドパターン13の端面、第1のグランド層15の端面、および第2のグランド層17の端面とそれぞれ接合されている。これにより、各グランドパターン13と、第1のグランド層15と、第2のグランド層17とはめっき膜21を介して電気的に接続されている。また、めっき膜21の厚さは例えば約43μmである。
【0038】
また、
図2に示すように、基板11には、コネクタ31の一対の固定部45をねじ49を用いて固定するための第1の穴部としての一対の挿通孔23が形成されている。一対の挿通孔23は、基板11においてコネクタ31が固定される端側において、信号パターン12の左方および右方にそれぞれ配置されている。また、各挿通孔23は基板11を上下方向に貫通し、グランドパターン13の上面に開口している。
【0039】
図5は、
図1中の矢示V−V方向から見たコネクタ31および基板11の断面を示している。
図6はコネクタ31の基板11が固定される側の端部を示している。
図7は、
図1中の矢示VII−VII方向から見たコネクタ31の断面、および同方向から見た基板11の断面を示している。
【0040】
図5において、コネクタ31は、エンドランチ型(基板端部実装型)の同軸コネクタであり、すなわち、嵌合部が基板の端部から基板の表面と略平行な方向に外向きに延びるように基板の端部に実装するタイプの同軸コネクタである。コネクタ31は、中心導体32と、中心導体32の外周側に絶縁体35を介して設けられた外部導体36と、コネクタ31を基板11の端部に固定する一対の固定部45とを備えている。中心導体32、外部導体36および各固定部45は例えば銅等の導体により形成されている。また、中心導体32および外部導体36の形状等は、コネクタ31の特性インピーダンスが所定の値となるように設定されている。
【0041】
中心導体32の手前側の端部には、相手コネクタの中心導体と接続される接続端子部33が形成されている。本実施形態の接続端子部33は例えば雌型であり、筒状に形成されている。一方、中心導体32の奥側の端部には、信号パターン12と接触する接触端子部34が形成されている。接触端子部34はピン状に形成されている。また、接触端子部34において手前側の部分は絶縁体35または空気に包囲されている。また、接触端子部34の奥側の先端部は絶縁体35から出て奥側の方向へ突出している。また、中心導体32は絶縁体35により外部導体36に支持され、固定されている。
【0042】
外部導体36の手前側の端部の内周側には、相手コネクタが挿入または嵌合され、相手コネクタの外部導体と接続される嵌合部37が形成されている。また、外部導体36の手前側の端部の外周側には、相手コネクタをコネクタ31に固定するねじ部38が形成されている。一方、
図6に示すように、外部導体36の奥側の端部には、外部導体36の他の部分よりも外径が大きくなったフランジ部39が形成されている。
【0043】
また、
図5に示すように、外部導体36の奥側の端部の開口部40の半径は、外部導体36の手前側の端部の開口部(嵌合部37)の半径よりも小さく、かつ外部導体36の中間部であって中心導体32の接続端子部33を収容している内部空間の半径よりも小さい。
【0044】
また、
図6に示すように、外部導体36の基板11と向かい合う奥側の端部において、径方向下側に位置する下側端部41は、径方向上側に位置する上側端部42よりも軸方向に手前へ後退している。そして、下側端部41と上側端部42との間には、下側端部41と上側端部42との間を接続する段差面43が形成されている。
【0045】
一対の固定部45は、外部導体36の上側端部42の端面において、開口部40の左右両側に設けられている。各固定部45は上側端部42の端面から奥側の方向へ突出している。また、各固定部45には、当該固定部45をねじ49を用いて基板11に固定するための第2の穴部としての挿通孔46が形成されている。本実施形態において、挿通孔46は固定部45を上下方向に貫通し、挿通孔46の内面にはねじ溝が形成されている。
【0046】
ここで、
図7に示すように、基板11の端面11Aから基板11に形成された挿通孔23の中心までの距離aは、外部導体36の端面において基板11の端面11Aが対向する部分、すなわち下側端部41の端面から固定部45に形成された挿通孔46の中心までの距離bよりも僅かに長い。
【0047】
図8は、
図5中の基板−コネクタ接続構造1において、基板11の信号パターン12とコネクタ31の中心導体32とが接触し、かつ基板11のめっき膜21とコネクタ31の外部導体36とが接触している箇所を拡大して示している。
【0048】
基板11とコネクタ31とを接続する際には、コネクタ31の各固定部45を基板11の端部の上面に置き、一対の固定部45のそれぞれの挿通孔46と基板11の一対の挿通孔23との位置を合わせる。そして、基板11の下方から、基板11の各挿通孔23に締着部材としてのねじ49を入れ、当該ねじ49を各固定部45の挿通孔46に螺着させ、締め付ける。これにより、コネクタ31が基板11の端部に固定される。すなわち、嵌合部37が基板11の端部から基板11の上面と略平行な方向に外向きに延びるように、コネクタ31が基板11に実装される。
【0049】
このようにコネクタ31が基板11の端部に固定された状態では、
図1または
図5に示すように、コネクタ31の各固定部45の下面が基板11の上面、すなわち各グランドパターン13の上面に接触している。また、
図8に示すように、コネクタ31の中心導体32が基板11の信号パターン12に接触し、かつ、基板11のめっき膜21が外部導体36の下側端部41の端面に接触している。また、基板11の端部の上面、すなわち各グランドパターン13の端部の上面が外部導体36の上側端部42と下側端部41との間に形成された段差面43に接触している。
【0050】
ここで、
図3には、基板11の端面11Aを当該端面11Aと対向した位置から見た図に、コネクタ31が基板11の端部に固定されたときの中心導体32、外部導体36の開口部40および外部導体36の段差面43のそれぞれの位置を重ねて示している。
図3に示すように、コネクタ31が基板11の端部に固定された状態において、基板11の端面11Aに形成されためっき膜21が外部導体36と接触している範囲は、開口部40の外側であって、かつ段差面43の下側の範囲である。この範囲には、基板11の端面11Aにおいて、信号パターン12の左方であって、左側のグランドパターン13の端面から第2のグランド層17の端面にかけての領域に形成されためっき膜21の一部、例えば部分P1が含まれている。また、めっき膜21が外部導体36と接触している上記範囲には、基板11の端面11Aにおいて、信号パターン12の右方であって、右側のグランドパターン13の端面から第2のグランド層17の端面にかけての領域に形成されためっき膜21の一部、例えば部分P2が含まれている。さらに、めっき膜21が外部導体36と接触している上記範囲には、信号パターン12の直下であって、第1のグランド層15の端面から第2のグランド層17の端面にかけての領域に形成されためっき膜21の一部、例えば部分P3が含まれている。
図3を見るとわかる通り、部分P1および部分P2はいずれも、第1のグランド層15において信号パターン12の直下に位置する部分P0から離れている。これに対し、部分P3は部分P0に極めて接近している。したがって、めっき膜21の部分P3が外部導体36に接触していることにより、信号パターン12の直下の位置において、第1のグランド層15と外部導体36とが極めて短い距離で接続されている。
【0051】
一方、基板11に固定されたコネクタ31を基板11から分離させるときには、各ねじ49を緩めて外せばよい。
【0052】
以上説明した通り、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造1によれば、基板の端面11Aにおいて、信号パターン12の直下に位置し、第1のグランド層15の端面を含む領域にめっき膜21を形成する構成としたことにより、信号パターン12の直下において第1のグランド層15と外部導体36とを極めて短い距離で接続することができる。したがって、基板11とコネクタ31との間の信号の反射特性を高めることができる。
【0053】
ここで、
図9のグラフは、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造1の挿入損失(実線)と、比較例の基板−コネクタ接続構造の挿入損失(破線)をそれぞれ示している。比較例の基板−コネクタ接続構造は、基板−コネクタ接続構造1のコネクタ31と
図14に示す基板91とを接続したものである。
図14に示すように、比較例の基板−コネクタ接続構造の基板91において、信号パターン12、各グランドパターン13、第1の誘電体層14、第1のグランド層15、第2の誘電体層16および第2のグランド層17は、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造1の基板11のものと同じである。また、比較例の基板−コネクタ接続構造の基板91において、めっき膜92は、(1)基板91の端面91Aにおいて、信号パターン12の左方であって、左側のグランドパターン13の端面から第2のグランド層17の端面にかけての領域と、(2)基板91の端面91Aにおいて、信号パターン12の右方であって、右側のグランドパターン13の端面から第2のグランド層17の端面にかけての領域に形成されている。しかしながら、基板91の端面91Aにおいて、当該端面91Aと対向する位置から見て信号パターン12の直下であって、第1のグランド層15の端面から第2のグランド層17の端面にかけての領域にはめっき膜が形成されていない。したがって、基板91の端部にコネクタ31を固定したときには、
図14に示すように、めっき膜92の部分P1およびP2が外部導体36に接触することにより、第1のグランド層15が外部導体36と接続されるが、それら接続部分はいずれも、第1のグランド層15において信号パターン12の直下に位置する部分P0から離れている。
【0054】
図9を見るとわかる通り、基板−コネクタ接続構造に流す信号の周波数が概ね25GHzから65GHzまでの範囲において、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造1の方が比較例の基板−コネクタ接続構造よりも挿入損失が小さく、また、周波数が高くなるに連れて挿入損失が増加する程度も、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造1の方が比較例の基板−コネクタ接続構造よりも小さい。また、信号の周波数が65GHzを超えた辺りで、比較例の基板−コネクタ接続構造の挿入損失が急激に増加しているが、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造1の挿入損失の増加の程度は、信号の周波数が65GHzを超えても、それよりも低い周波数帯と同様の程度で緩やかに増加するに止まっている。このように、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造の方が、比較例の基板−コネクタ接続構造よりも反射特性が優れている。
【0055】
また、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造1では、めっき膜21と外部導体36との接触により、第1のグランド層15と外部導体36とが接続されるので、第1のグランド層15と外部導体36との接続に半田、銀ペーストまたは導電性接着剤等は不要である。したがって、基板11とコネクタ31とを接続する際に半田付け等の作業が不要となり、一方、基板11からコネクタ31を分離する際に半田を剥がす作業等が不要になるので、基板11とコネクタ31との接続、分離を容易に行うことができる。基板−コネクタ接続構造1を例えばテスト基板等に適用した場合には、当該テスト基板等を用いた試験や測定を簡単に行うことができる。
【0056】
また、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造1によれば、基板11が
図2に示すように第1のグランド層15の下側に1層以上の層を備えた多層基板である場合でも、信号パターン12の直下の位置で、第1のグランド層15と外部導体36とを極めて短い距離で接続することができる。すなわち、上記特許文献1に記載された従来の多層配線基板では、信号伝送回路を形成するグランド層の下側に存在する各層の端部を除去して当該グランド層の下面の一部を露出させるといった複雑な基板構造を採用することにより、誘電体層の上面に形成された高周波信号経路の直下の位置で、当該グランド層と外部導体とを半田等を用いて接合する構成を実現している。しかしながら、通常の多層基板の場合、各層の端面は揃っている。このため、信号パターンと共に信号伝送回路を形成するグランド層の下側にさらに層が存在する場合には、当該グランド層の下面は露出していない。このため、信号パターンの直下の位置において当該グランド層と外部導体とが対向している箇所に半田等を付けることはできず、それゆえ、信号パターンの直下において当該グランド層と外部導体とを接続することは困難である。これに対し、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造によれば、基板11が第1のグランド層15の下側に1層以上の層を備えた多層基板であり、各層の端面が揃っている場合でも、基板11の端面11Aに形成されためっき膜21とコネクタ31の外部導体36との接触により、信号パターン12の直下の位置で、第1のグランド層15と外部導体36とを接続することができる。
【0057】
また、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造1によれば、基板11の端面11Aにおいて、当該端面11Aと対向する位置から見て信号パターン12の直下であって、第1のグランド層15の端面から第2のグランド層17の端面にかけての領域にめっき膜21を形成する構成としたから、めっき膜21の面積を大きくすることができる。これにより、めっき膜21と外部導体36との接触面積を大きくすることができる。したがって、グランドの安定性を高めることができ、信号の反射特性を一層高めることができる。
【0058】
また、基板−コネクタ接続構造1によれば、基板11の端面11Aに形成する端面導電膜をめっき膜21としたことにより、信号パターン12の直下において第1のグランド層15を外部導体36に接続する構成を容易に実現することができる。また、基板11に部分めっきを施すことにより、このようなめっき膜21を容易に形成することができる。また、第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造1によれば、第1のグランド層15と第2のグランド層17を電極としてめっきを施すことで、めっき膜21を精密に形成することができる。
【0059】
また、基板−コネクタ接続構造1では、コネクタ31の外部導体36の下側端部41を上側端部42よりも手前へ後退させ、コネクタ31が基板11の端部に固定されたときには、基板11の端部の端面11Aが下側端部41の端面に対向し、基板11の端部の上面が、下側端部41と上側端部42との間を接続する段差面43に対向する構成とした。これにより、
図8に示すように、中心導体32と信号パターン12との接触部分を外部導体36の上側端部42と基板11の第1のグランド層15の端部との間に配置することができる。これにより、基板11とコネクタ31との間の信号の反射を抑制する構造を容易に形成することができる。また、基板11の端部を、外部導体36の下側端部41の端面と段差面43とにより形成される隅部に嵌め合わせるようにして基板11とコネクタ31とを結合することができ、基板11とコネクタ31とを安定した状態で固定することができる。
【0060】
また、基板−コネクタ接続構造1によれば、コネクタ31の各固定部45をねじ49を用いて基板11に固定する構成としたから、基板11とコネクタ31とを脱着自在に固定することができ、基板11とコネクタ31との接続、分離を一層容易にすることができる。その一方で、基板11とコネクタ31とをねじ49により強固に固定することができる。
【0061】
また、基板−コネクタ接続構造1では、先に
図7を用いて説明したように、基板11の端面11Aから基板11の挿通孔23の中心までの距離aが、外部導体36の下側端部41の端面から固定部45の挿通孔46の中心までの距離bよりも僅かに長い。したがって、ねじ49を基板11の各挿通孔23に入れ、固定部45の各挿通孔46に締着させたとき、基板11の端面11Aに形成されためっき膜21が外部導体36の下側端部41の端面に押し付けられる。これにより、めっき膜21を外部導体36に確実に接触させることができる。
【0062】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態の基板とコネクタとの接続構造における基板51を
図3と同様の位置から見た図である。
図11は
図10中の矢示XI−XI方向から見た基板51の断面を示している。
図10または
図11に示すように、基板51は、
図3または
図4に示す第1の実施形態の基板11と比較して層数が少ない。基板51は、誘電体層52と、誘電体層52の上面に形成された信号パターン53と、誘電体層52の上面において信号パターン53の左右両側に形成された一対のグランドパターン54と、誘電体層52の下側に誘電体層52を隣接して設けられたグランド層55とを備えている。グランド層55の下側には層が形成されていない。
【0063】
また、基板51において、端面導体膜としてのめっき膜56は、(1)基板51の端面51Aにおいて、信号パターン53の左方であって、左側のグランドパターン54の端面からグランド層55の端面にかけての領域と、(2)基板51の端面51Aにおいて、信号パターン53の右方であって、右側のグランドパターン54の端面からグランド層55の端面にかけての領域と、(3)基板51の端面51Aにおいて、当該端面51Aと対向する位置から見て信号パターン53の直下に位置し、かつ信号パターン53から離れ、グランド層55の端面を含む領域に形成されている。具体的には、めっき膜56において、信号パターン53の直下に位置する部分は、誘電体層52の上下方向略中間位置からグランド層55の端面にかけての領域に形成されている。
【0064】
このような構成を有する基板51を備えた本発明の第2の実施形態の基板−コネクタ接続構造によっても、本発明の第1の実施形態の基板−コネクタ接続構造1と同様に、基板51とコネクタとの間の信号の反射特性を高めることができ、かつ、基板51とコネクタとの接続、分離を容易に行うことができる。
【0065】
なお、第1の実施形態の基板11に代え、
図12に示す基板61を用いてもよい。基板61は、基板11と同様の層構造を有しているが、基板61の端面61Aにおいて左部および右部にはめっき膜が形成されていない。すなわち、基板61の端面61Aにおいて、当該端面61Aと対向する位置から見て信号パターン12の直下であって、第1のグランド層15の端面から第2のグランド層17の端面にかけての領域にのみ、めっき膜62が形成されている。
【0066】
また、上述した第2の実施形態の基板51に代え、
図13に示す基板71を用いてもよい。基板51と同様の層構造を有しているが、基板71の端面71Aにおいて左部および右部にはめっき膜が形成されていない。すなわち、基板71の端面71Aにおいて、当該端面71Aと対向する位置から見て信号パターン53の直下に位置し、かつ信号パターン53から離れ、グランド層55の端面を含む領域にのみ、めっき膜72が形成されている。
【0067】
また、基板11(51、61、71)において、各グランドパターン13(54)を形成せず、基板11(51、61、71)にマイクロストリップライン型の伝送回路を形成してもよい。
【0068】
また、めっき膜21(56、62、72)は、マスキングによってめっき部分と非めっき部分とを形成する方法により形成してもよい。また、端面導電膜をめっきではなく、導電材の塗布や貼り付けにより形成してもよい。
【0069】
また、本発明の基板−コネクタ接続構造における基板の層数は限定されない。例えば、第1の実施形態における基板11を4層以上の多層基板としてもよい。また、第1の実施形態における基板11の第1のグランド層17の下側に第3の誘電体層を設けてもよいし、第2の実施形態における基板51のグランド層55の下側に誘電体層を設けてもよい。また、基板において、信号パターンと共に信号伝送回路を形成するグランド層よりも下側の層に、例えば制御回路や信号処理回路を形成してもよい。
【0070】
また、中心導体と信号パターンとの接続に半田等を用いてもよい。また、コネクタの固定部と基板との固定には、ねじ以外の固定部材を用いてもよい。また、本発明をマイクロ波よりも低い周波数を有する信号の伝送回路に適用してもよい。
【0071】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う基板とコネクタとの接続構造、基板および基板とコネクタとの接続方法もまた本発明の技術思想に含まれる。