【実施例】
【0051】
本発明のガス分離装置の性能を確認するため、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガス(酸性ガス含有ガス)を処理対象としたガス分離試験を様々な条件の下で実施した。ガス分離装置のガス分離膜には、チューブラータイプのアルミナ系セラミックスからなる多孔質支持体の表面に中間層及び分離層を形成したものを使用した。中間層及び分離層は、いずれも炭化水素基を含有するポリシロキサン網目構造体からなる薄膜であり、分離層に硝酸マグネシウムを添加したものとした。このガス分離膜を150℃に設定したオーブンで1時間高温乾燥し、次いで窒素ガスを1時間通流させたものをガス分離試験に供した。
【0052】
ガス分離試験における各種パラメータを以下に示す。
(1)混合ガス〔CO
2/CH
4〕
V
0:供給量(cc/分)
P
0:供給圧力(MPa)
ρ
0:混合ガス中のCH
4濃度(%)
(2)透過ガス〔CO
2リッチガス〕
V
1:透過量(cc/分)
P
1:透過側圧力(MPa)
ρ
1:透過ガス中のCH
4濃度(%)
(3)未透過ガス〔CH
4リッチガス〕
V
2:未透過量(cc/分)
P
2:未透過側圧力(MPa)
ρ
2:未透過ガス中のCH
4濃度(%)
(4)ガス分離膜〔チューブラー支持体/中間層/分離層〕
Θ
:カット(=V
1/V
0)
T
:温度(℃)
【0053】
<実施例1>
ガス分離膜における透過ガスの透過量V
1と混合ガスの供給量V
0との比率であるガス分離膜のカットΘを変更し、未透過ガス中のCH
4濃度ρ
2及びCH
4回収率(%)を求めた。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガス中のCH
4濃度ρ
0を60%、混合ガスの供給圧力P
0を0.2MPa、透過ガスの透過側圧力P
1を−0.093MPa(減圧)、ガス分離膜の温度Tを20℃に設定し、ガス分離膜のカットΘを0.1〜0.9の間で変更した。試験結果のグラフを
図2に示す。
【0054】
図2によれば、ガス分離膜のカットΘを0.1〜0.7の間で変更した場合、CH
4濃度とCH
4回収率とのバランスが実用上問題のないレベルとなり、ガス分離膜のカットΘを0.3〜0.5の間で変更した場合、CH
4濃度とCH
4回収率とのバランスが良好なものとなり、ガス分離膜のカットΘを0.4に設定した場合、CH
4濃度とCH
4回収率とのバランスが最も優れたものとなった。このように、本発明のガス分離装置において、ガス分離膜のカットΘを適切に変更又は設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスを効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例1のガス分離膜は、試験前のガス分離膜の重量を基準とすると、試験中のガス分離膜の重量変化は最大で0.022%であった。ガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていたことから、ガス分離膜に二酸化炭素が吸着する吸着量と、ガス分離膜から二酸化炭素が脱離する脱離量とのバランスが維持されていると考えられる。
【0055】
<実施例2>
透過ガスの透過側圧力P
1を大気圧とし、混合ガスの供給圧力P
0を変化させ、未透過ガス中のCH
4濃度ρ
2及びCH
4回収率(%)を求めた。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガス中のCH
4濃度ρ
0を60%、透過ガスの透過側圧力P
1を0MPa(大気圧)、ガス分離膜のカットΘを0.4、ガス分離膜の温度Tを20℃に設定し、混合ガスの供給圧力P
0を0.1〜0.3MPaの間で変化させた。試験結果のグラフを
図3に示す。
【0056】
図3によれば、混合ガスの供給圧力P
0を0.1MPaから0.3MPaまで上昇させた場合、CH
4濃度及びCH
4回収率はいずれも徐々に上昇し、混合ガスの供給圧力P
0が0.15MPa以上であれば、実用上問題のないレベルのCH
4濃度及びCH
4回収率を達成することができた。このように、本発明のガス分離装置において、混合ガスの供給圧力P
0を適切に設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスを効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例2のガス分離膜は、試験中のガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていた。
【0057】
<実施例3>
透過ガスの透過側圧力P
1を変化させ、未透過ガス中のCH
4濃度ρ
2及びCH
4回収率(%)を求めた。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガス中のCH
4濃度ρ
0を60%、混合ガスの供給圧力P
0を0.2MPa、ガス分離膜のカットΘを0.4、ガス分離膜の温度Tを20℃に設定し、透過ガスの透過側圧力P
1を−0.02MPaから−0.09MPaに低下させた。試験結果のグラフを
図4に示す。
【0058】
図4によれば、透過ガスの透過側圧力P
1を−0.02MPaから−0.09MPaまで下降させた場合、CH
4濃度及びCH
4回収率はいずれも徐々に上昇し、透過ガスの透過側圧力P
1が−0.02MPa以下であれば、実用上問題のないレベルのCH
4濃度及びCH
4回収率を達成することができた。また、この結果は、実施例2の混合ガスの供給圧力P
0を変化させた場合よりも優れたものであった。このように、本発明のガス分離装置において、透過ガスの透過側圧力P
1を適切に設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスを効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例3のガス分離膜は、試験中のガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていた。
【0059】
<実施例4>
透過ガスの透過側圧力P
1を減圧し、混合ガスの供給圧力P
0を変化させ、未透過ガス中のCH
4濃度ρ
2及びCH
4回収率(%)を求めた。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガス中のCH
4濃度ρ
0を60%、透過ガスの透過側圧力P
1を−0.09MPa(減圧)、ガス分離膜のカットΘを0.4、ガス分離膜の温度Tを20℃に設定し、混合ガスの供給圧力P
0を0.1〜0.3MPaの間で変化させた。試験結果のグラフを
図5に示す。
【0060】
図5によれば、混合ガスの供給圧力P
0を0.1MPaから0.3MPaまで上昇させた場合、CH
4濃度及びCH
4回収率に変化は殆ど見られなかったが、いずれも高いレベルを維持することができた。この実施例4の結果は、実施例2の透過ガスの透過側圧力P
1を大気圧とした場合よりも優れたものであった。このように、本発明のガス分離装置において、透過ガスの透過側圧力P
1を減圧した上で混合ガスの供給圧力P
0を適切に設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスをより効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例4のガス分離膜は、試験中のガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていた。
【0061】
<実施例5>
ガス分離膜の温度Tを変化させ、未透過ガス中のCH
4濃度ρ
2及びCH
4回収率(%)を求めた。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガス中のCH
4濃度ρ
0を60%、混合ガスの供給圧力P
0を0.2MPa、透過ガスの透過側圧力P
1を−0.093MPa(減圧)、ガス分離膜のカットΘを0.4に設定し、ガス分離膜の温度Tを20〜100℃の間で変化させた。試験結果のグラフを
図6に示す。
【0062】
図6によれば、ガス分離膜の温度Tを20℃から100℃まで上昇させた場合、CH
4濃度及びCH
4回収率は徐々に低下する傾向か見られたが、いずれも高いレベルを維持することができた。このように、本発明のガス分離装置において、ガス分離膜の温度Tを適切に設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスを効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例5のガス分離膜は、試験中のガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていた。
【0063】
<実施例6>
混合ガス中のCH
4濃度ρ
0を変化させ、未透過ガス中のCH
4濃度ρ
2及びCH
4回収率(%)を求めた。本実施例では、混合ガス中のCH
4濃度ρ
0の変化に合わせて、ガス分離膜のカットΘを変更した。ちなみに、ガス分離膜のカットΘと混合ガス中のCH
4濃度ρ
0とは逆数の関係にあり、ガス分離膜のカットΘが大きいほど混合ガス中のCH
4濃度ρ
0は低くなる。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガスの供給圧力P
0を0.2MPa、透過ガスの透過側圧力P
1を−0.093MPa(減圧)、ガス分離膜の温度Tを20℃に設定し、混合ガス中のCH
4濃度ρ
0を10〜90%の間で変化させ、それに合わせてガス分離膜のカットΘを0.1〜0.9の間で変更した。試験結果のグラフを
図7に示す。
【0064】
図7によれば、混合ガス中のCH
4濃度ρ
0を10%から90%まで上昇させた場合、CH
4濃度及びCH
4回収率はいずれも高いレベルを維持しながら徐々に上昇した。混合ガス中のCH
4濃度ρ
0が10%程度であっても、実用上問題のないレベルにCH
4を濃縮することができた。このように、本発明のガス分離装置において、混合ガス中のCH
4濃度ρ
0を適切に設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスをより効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例6のガス分離膜は、試験中のガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていた。