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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-8189(P2018-8189A)
(43)【公開日】2018年1月18日
(54)【発明の名称】ガス分離装置、及びガス分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20171215BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20171215BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20171215BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20171215BHJP
【FI】
   B01D53/22
   B01D71/70 500
   B01D71/02 500
   B01D69/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-137296(P2016-137296)
(22)【出願日】2016年7月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】小山 昭洋
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006JA52Z
4D006JA53Z
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA04
4D006MA09
4D006MB04
4D006MB14
4D006MC01
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC65
4D006PA02
4D006PB18
4D006PB19
4D006PB63
4D006PB64
4D006PB66
4D006PB68
4D006PB70
(57)【要約】
【課題】酸性ガスを含む混合ガス(酸性ガス含有ガス)を酸性ガスと非酸性ガスとに効率よく分離することが可能なガス分離装置を提供する。
【解決手段】酸性ガスと親和性を有するガス分離膜10に酸性ガス含有ガスを通過させて当該酸性ガス含有ガスを酸性ガスG1と非酸性ガスG2とに分離するガス分離装置100であって、ガス分離膜10の流入側に設けられるガス供給部20と、ガス分離膜10を通過した酸性ガスG1を回収するガス回収部30と、ガス分離膜10により遮断された非酸性ガスG2が排出されるガス排出部40と、を備え、ガス供給部20が加圧状態にされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性ガスと親和性を有するガス分離膜に酸性ガス含有ガスを通過させて当該酸性ガス含有ガスを酸性ガスと非酸性ガスとに分離するガス分離装置であって、
前記ガス分離膜は、前記酸性ガスと前記非酸性ガスとの競争吸着を利用することにより、前記酸性ガスを透過させるとともに、前記非酸性ガスを遮断するものであり、
前記ガス分離膜の流入側に設けられるガス供給部と、
前記ガス分離膜を通過した前記酸性ガスを回収するガス回収部と、
前記ガス分離膜により遮断された前記非酸性ガスが排出されるガス排出部と、
を備え、
前記ガス供給部が加圧状態にされるガス分離装置。
【請求項2】
前記ガス供給部において、供給圧力が0.1MPa以上に設定される請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項3】
前記ガス分離膜は、炭化水素基含有ポリシロキサン網目構造体を含む請求項1又は2に記載のガス分離装置。
【請求項4】
前記ガス分離膜は、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Ni、Fe、及びAlからなる群から選択される少なくとも一種の金属の酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、又はリン酸塩を含む請求項3に記載のガス分離装置。
【請求項5】
酸性ガスと親和性を有するガス分離膜に酸性ガス含有ガスを通過させて当該酸性ガス含有ガスを酸性ガスと非酸性ガスとに分離するガス分離方法であって、
前記ガス分離膜は、前記酸性ガスと前記非酸性ガスとの競争吸着を利用することにより、前記酸性ガスを透過させるとともに、前記非酸性ガスを遮断するものであり、
前記ガス分離膜の流入側に前記酸性ガス含有ガスを供給するガス供給工程と、
前記ガス分離膜を通過した前記酸性ガスを回収するとともに、前記ガス分離膜により遮断された前記非酸性ガスを排出するガス分離工程と、
を包含し、
前記ガス供給工程において、前記酸性ガス含有ガスの供給を加圧状態で実施するガス分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性ガスと親和性を有するガス分離膜に酸性ガス含有ガスを通過させて当該酸性ガス含有ガスを酸性ガスと非酸性ガスとに分離するガス分離装置、及びガス分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油に代わるエネルギー資源として、メタンガスの利用が従来から検討されている。メタンガスは、主に天然ガスとして得られるが、近年では、深海底に存在するメタンハイドレート、生ごみ等を生物学的処理したときに発生する消化ガス、石油精製において副生するオフガス等をメタンガス源とすることが検討されている。ところが、これらのメタンガス源には、メタンガスの他に酸性ガス(二酸化炭素や硫化水素等)が含まれていることがある。そこで、酸性ガスとメタンガスとを含む混合ガスを都市ガスの原料や燃料電池に使用する水素の原料に利用するためには、混合ガスからメタンガスのみを分離するか、あるいは混合ガス中のメタンガス濃度を高めることが必要となる。
【0003】
また、工場や発電所から排出される排ガスには、窒素ガスと酸性ガスとが含まれている。この窒素ガスと酸性ガスとを含む混合ガスについても適切な処理を行い、夫々のガス成分に分離できれば、ガスの利用価値が高まる。例えば、工場の排ガスから酸性ガスである二酸化炭素を効率よく回収できれば、液化炭酸ガスとして製品化することも可能である。
【0004】
なお、二酸化炭素は、地球温暖化の原因となり得るため、そのまま大気中に放出することは望ましくない。そこで、工場や発電所で発生した二酸化炭素を回収し、例えば、地中深くに貯蔵する技術(Carbon dioxide Capture and Storage:CCS)が様々な分野で検討されている。このCCSを推進するためにも、二酸化炭素を含む排ガスを適切に処理することが望まれている。
【0005】
混合ガスから特定のガスを分離・回収する従来技術として、混合ガスを昇圧した状態でガス分離膜に供給し、ガス分離膜を透過した透過ガスを外部に排出するとともに、未透過のガスをさらに昇圧して回収するガス分離装置があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1のガス分離装置は、ガスの供給側と透過側との間で圧力差を設けることにより、ガスの分離を促進しようとするものである。
【0006】
また、別の従来技術として、混合ガスをガス分離膜に供給して特定のガスを分離・回収するガス分離装置において、透過側のガス流路に減圧部を設けたものがあった(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2のガス分離装置は、ガス分離膜を透過した透過ガス(水素)を水蒸気の駆動力を利用して減圧しながら回収するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−180229号公報
【特許文献2】特開2015−186769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ガス分離膜を用いて混合ガスから特定のガスを分離するにあたっては、特許文献1のようにガス供給側を昇圧したり、特許文献2のようにガス透過側を減圧することが一般的に行われている。吸着材のガスに対する吸着特性の違いを利用して、昇圧及び減圧の操作を交互に繰り返しながら、目的とするガスを連続的に分離する方法は、圧力変動吸着法(PSA:Pressure Swing Adsorption)と呼ばれ、広く普及している。ところが、PSA方式を採用するガス分離装置は、昇圧と減圧とを繰り返し行うため、エネルギー消費量が大きくなり、装置自体も大型化する傾向にある。また、ガス分離性能とガス処理量とは通常トレードオフの関係にあるため、特許文献1及び特許文献2のガス分離装置を含め、既存のガス分離装置によって行われるガス分離では、ガス分離性能とガス処理量とを両立させることが難しく、高濃度のガスを大量に製造するためには、ガス分離装置をさらに大型化するか、ガス分離装置の設置台数を増加することが必要となる。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、酸性ガスを含む混合ガス(酸性ガス含有ガス)を酸性ガスと非酸性ガスとに効率よく分離することが可能なガス分離装置、及びガス分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係るガス分離装置の特徴構成は、
酸性ガスと親和性を有するガス分離膜に酸性ガス含有ガスを通過させて当該酸性ガス含有ガスを酸性ガスと非酸性ガスとに分離するガス分離装置であって、
前記ガス分離膜は、前記酸性ガスと前記非酸性ガスとの競争吸着を利用することにより、前記酸性ガスを透過させるとともに、前記非酸性ガスを遮断するものであり、
前記ガス分離膜の流入側に設けられるガス供給部と、
前記ガス分離膜を通過した前記酸性ガスを回収するガス回収部と、
前記ガス分離膜により遮断された前記非酸性ガスが排出されるガス排出部と、
を備え、
前記ガス供給部が加圧状態にされることにある。
【0011】
本構成のガス分離装置は、酸性ガス含有ガスを、酸性ガスと親和性を有するガス分離膜に通過させて、酸性ガスと非酸性ガスとに分離するにあたり、ガス分離膜に対する酸性ガスと非酸性ガスとの競争吸着を利用するものである。ここで、酸性ガスの吸着力が非酸性ガスの吸着力より大きい場合、酸性ガスは非酸性ガスとの競争の結果、ガス分離膜に優先的に吸着され、やがてガス分離膜を通過してガス回収部に回収される。一方、非酸性ガスは、ガス分離膜に先に吸着されている酸性ガスによって進路が遮断されるため、ガス分離膜を通過することができず、ガス排出部から排出される。この状態で、ガス供給部を加圧状態にすると、ガス分離膜に一旦吸着した酸性ガスの透過が促進され、酸性ガスは迅速にガス回収部に回収される。一方、加圧期間中におけるガス分離膜に対する酸性ガスの吸着状態も連続的に維持されるため、酸性ガスによる非酸性ガスの遮断状態も連続的に維持される。その結果、酸性ガス含有ガスは、酸性ガスと非酸性ガスとに効率よく分離され、高濃度の酸性ガス又は非酸性ガスを製造することが可能となる。
【0012】
本発明に係るガス分離装置において、
前記ガス供給部において、供給圧力が0.1MPa以上に設定されることが好ましい。
【0013】
本構成のガス分離装置によれば、ガス供給部における供給圧力を0.1MPa以上に設定することにより、酸性ガス含有ガスの分離効率及び分離速度が高まる。その結果、高濃度の酸性ガス及び非酸性ガスを工業的に生産することが可能となる。
【0014】
本発明に係るガス分離装置において、
前記ガス分離膜は、炭化水素基含有ポリシロキサン網目構造体を含むことが好ましい。
【0015】
本構成のガス分離装置によれば、ガス分離膜に含まれる炭化水素基含有ポリシロキサン網目構造体において、炭化水素基が酸性ガスを選択的に誘引するため、ガス分離膜の分離性能をさらに向上させることができる。
【0016】
本発明に係るガス分離装置において、
前記ガス分離膜は、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Ni、Fe、及びAlからなる群から選択される少なくとも一種の金属の酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、又はリン酸塩を含むことが好ましい。
【0017】
本構成のガス分離装置によれば、上記の各金属塩は酸性ガスと親和性を有するため、これらの金属塩をガス分離膜に含ませることで、ガス分離膜の分離性能をより一層向上させることができる。
【0018】
上記課題を解決するための本発明に係るガス分離方法の特徴構成は、
酸性ガスと親和性を有するガス分離膜に酸性ガス含有ガスを通過させて当該酸性ガス含有ガスを酸性ガスと非酸性ガスとに分離するガス分離方法であって、
前記ガス分離膜は、前記酸性ガスと前記非酸性ガスとの競争吸着を利用することにより、前記酸性ガスを透過させるとともに、前記非酸性ガスを遮断するものであり、
前記ガス分離膜の流入側に前記酸性ガス含有ガスを供給するガス供給工程と、
前記ガス分離膜を通過した前記酸性ガスを回収するとともに、前記ガス分離膜により遮断された前記非酸性ガスを排出するガス分離工程と、
を包含し、
前記ガス供給工程において、前記酸性ガス含有ガスの供給を加圧状態で実施することにある。
【0019】
本構成のガス分離方法によれば、上述したガス分離装置と同様の優れた作用効果を奏するものとなる。すなわち、ガス供給工程において、ガス分離膜への酸性ガス含有ガスの供給を加圧状態で実施すると、ガス分離膜に一旦吸着した酸性ガスの透過が促進される。一方、加圧期間中におけるガス分離膜に対する酸性ガスの吸着状態も連続的に維持されるため、酸性ガスによる非酸性ガスの遮断状態も連続的に維持される。その結果、酸性ガス含有ガスは、酸性ガスと非酸性ガスとに効率よく分離され、高濃度の酸性ガス又は非酸性ガスを生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のガス分離装置を示すブロック図である。
図2】実施例1によるガス分離試験の結果を示すグラフである。
図3】実施例2によるガス分離試験の結果を示すグラフである。
図4】実施例3によるガス分離試験の結果を示すグラフである。
図5】実施例4によるガス分離試験の結果を示すグラフである。
図6】実施例5によるガス分離試験の結果を示すグラフである。
図7】実施例6によるガス分離試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のガス分離装置は、酸性ガスと非酸性ガスとを含有する混合ガス(以下、「酸性ガス含有ガス」と称する場合がある。)を処理対象とするものである。ここで、酸性ガスとは、水に溶解したときに酸性を示すガスであり、二酸化炭素、硫化水素等が例示される。非酸性ガスは、メタンガス、窒素ガス、水素ガス等が例示される。以下に説明する実施形態では、特に、酸性ガスとして二酸化炭素、非酸性ガスとしてメタンガスを想定したガス分離装置を説明する。なお、本発明のガス分離方法については、ガス分離装置の実施形態の中であわせて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定されることを意図しない。
【0022】
本実施形態のガス分離装置は、二酸化炭素と親和性を有するガス分離膜に酸性ガス含有ガス(二酸化炭素とメタンガスとの混合ガス)を通過させて当該酸性ガス含有ガスを二酸化炭素とメタンガスとに分離するものである。初めに、ガス分離機能を担うガス分離膜について説明する。
【0023】
ガス分離膜は、ベースとなる無機多孔質支持体の表面に中間層を形成し、さらにその上に酸性ガスに対して吸着能を有する分離層を形成したものである。無機多孔質支持体は、例えば、シリカ系セラミックス、シリカ系ガラス、アルミナ系セラミックス、ステンレス、チタン、銀等の材料で構成される。これらのうち、アルミナ系セラミックスは、耐熱性に優れ、加工が容易であり、コスト的にも比較的安価であるため、無機多孔質支持体の材料として適している。無機多孔質支持体には、ガスが流入する流入部と、ガスが流出する流出部とが設けられる。例えば、ガス流入部は無機多孔質支持体に設けられた開口部であり、ガス流出部は無機多孔質支持体の外表面である。無機多孔質支持体の外表面をガス流入部とし、無機多孔質支持体に設けられた開口部をガス流出部とすることも可能である。無機多孔質支持体の外表面には無数の微細孔が形成されているため、外表面全体からガスが通流することができる。無機多孔質支持体の構成例としては、内部にガス流路が設けられた円筒構造、円管構造、チューブラー構造、スパイラル構造、一本のエレメントにレンコンの穴のように多数の流路が設けられたモノリス構造、内部に複雑に入り組んだ連続孔が形成された連通構造、多孔質体を柱形に成形した中実多孔質構造、多孔質体を筒形に成形した中空多孔質構造、ハニカム構造体を管状に並べたハニカム構造などが挙げられる。また、無機多孔質材料で構成される中実の平板体やバルク体を用意し、その一部を刳り抜いてガス流路を形成することで、無機多孔質支持体を構成しても構わない。無機多孔質支持体の微細孔のサイズは、nmオーダーからμmオーダーまで、用途に応じて選択することができる。
【0024】
中間層は、無機多孔質支持体の表面を安定化させ、後述の分離層を形成し易くするために設けられる。例えば、微細孔のサイズが比較的大きい無機多孔質支持体の表面に後述する分離層の形成材料を含む混合液(ゾル)を直接塗布すると、混合液が微細孔の内部に過剰に浸透して無機多孔質支持体の表面に留まらず、分離層の成膜が難しくなることがある。そこで、無機多孔質支持体の表面に中間層を設けておくことで、微細孔の入口が中間層によって狭められ、混合液の塗布が容易になる。また、中間層によって無機多孔質支持体の表面が均等化されるため、分離層の剥離やひび割れを抑制することができる。
【0025】
中間層は、シラン化合物を含むように構成される。本実施形態の中間層は、テトラアルコキシシラン及び炭化水素基含有トリアルコキシシランのゾル−ゲル反応によって得られる。
【0026】
テトラアルコキシシランは、下記の式(1)で表される四官能性アルコキシシランである。
【0027】
【化1】
【0028】
好ましいテトラアルコキシシランは、式(1)において、R〜Rが同一のメチル基であるテトラメトキシシラン(TMOS)又は同一のエチル基であるテトラエトキシシラン(TEOS)である。
【0029】
炭化水素基を含有する炭化水素基含有トリアルコキシシランは、下記の式(2)で表される三官能性アルコキシシランである。
【0030】
【化2】
【0031】
好ましい炭化水素基含有トリアルコキシシランは、式(2)において、R〜Rが同一のメチル基であるトリメトキシシラン又は同一のエチル基であるトリエトキシシランのSi原子に炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基が結合したものである。例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが挙げられる。
【0032】
式(1)のテトラアルコキシシランと、式(2)の炭化水素基含有トリアルコキシシランとをゾル−ゲル反応させると、例えば、下記の式(3)で表される分子構造を有するポリシロキサン網目構造体が得られる。
【0033】
【化3】
【0034】
式(3)のポリシロキサン網目構造体の原材料の一つである式(2)の炭化水素基含有トリアルコキシシランは、Rの違いにより特性が異なる。例えば、メチルトリメトキシシラン又はメチルトリエトキシシラン(炭化水素基の炭素数が1のもの)は主に二酸化炭素に対して親和性を有し、トリメトキシシラン又はトリエトキシシランのSi原子に炭素数2〜6のアルキル基又はフェニル基が結合したもの(炭化水素基の炭素数が2〜6のもの)は主にメタンガスに対して親和性を有する。そして、式(1)のテトラアルコキシシランと、式(2)の炭化水素基含有トリアルコキシシランとの反応から、式(3)のポリシロキサン網目構造体を合成するにあたり、テトラアルコキシシラン(これをAとする)と、炭化水素基含有トリアルコキシシラン(これをBとする)とを最適な配合比率に設定すると、二酸化炭素又はメタンガスの分離性能に優れた分離膜を形成することが可能となる。
【0035】
中間層を形成するにあたっては、テトラアルコキシシラン(A1)と炭化水素基含有トリアルコキシシラン(B1)との配合比率(A1/B1)が重量比で30/70〜99.9/0.1、好ましくは60/40〜99.9/0.1となるように、式(1)のテトラアルコキシシランと、式(2)の炭化水素基含有トリアルコキシシランとを配合する。この場合、中間層は、炭化水素基含有トリアルコキシシランに由来する炭化水素基を含有するため、一般的な網目構造体よりも柔軟性を有するものとなり、テトラアルコキシシランによってある程度の剛性を維持しながら、全体の柔軟性やフレキシブル性を向上させることができる。その結果、中間層が安定化し、後述する分離層の成膜性が良好なものとなる。式(3)のポリシロキサン網目構造体は、ポリシロキサンネットワーク構造中に炭化水素基Rが存在しており、ある種の有機−無機複合体を形成している。
【0036】
なお、分離膜の分離性能をさらに高めるため、上記式(3)のポリシロキサン網目構造体に二酸化炭素と親和性を有する金属塩を添加(ドープ)することが好ましい。金属塩としては、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Ni、Fe、及びAlからなる群から選択される少なくとも一種の金属の酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、又はリン酸塩が挙げられる。これらのうち、硝酸マグネシウム又は酢酸マグネシウムが好ましい。硝酸マグネシウム等を初めとする上記金属塩は、二酸化炭素との親和性が良好であるため、二酸化炭素の分離効率向上に有効となる。金属塩を添加する方法は、例えば、ポリシロキサン網目構造体を、金属塩を含む水溶液に浸漬し、ポリシロキサン網目構造体の内部に金属塩を単独又は他の物質とともに含浸させる含浸法により行われるが、ポリシロキサン網目構造体の原材料に金属塩を予め添加しておいても構わない。
【0037】
分離層は、二酸化炭素とメタンガス及び/又は窒素ガスとを含む酸性ガス含有ガスから、二酸化炭素を選択的に誘引して分離する機能を有する。分離層は、テトラアルコキシシラン及び炭化水素基含有トリアルコキシシランのゾル−ゲル反応によって得られる。
【0038】
テトラアルコキシシラン及び炭化水素基含有トリアルコキシシランは、中間層の形成に使用する上述の式(1)で表されるテトラアルコキシシラン、及び式(2)で表される炭化水素基含有トリアルコキシシランと同様のものを使用できる。好ましいテトラアルコキシシランは、中間層と同様であり、式(1)において、R〜Rが同一のメチル基であるテトラメトキシシラン(TMOS)又は同一のエチル基であるテトラエトキシシラン(TEOS)である。好ましい炭化水素基含有トリアルコキシシランについても、中間層と同様であり、式(2)において、R〜Rが同一のメチル基であるトリメトキシシラン又は同一のエチル基であるトリエトキシシランのSi原子に炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基が結合したものである。
【0039】
分離層においても、式(1)のテトラアルコキシシランと、式(2)の炭化水素基含有トリアルコキシシランとをゾル−ゲル反応させることにより、前述した式(3)で表される分子構造を有するポリシロキサン網目構造体が得られる。分離層を形成するにあたっては、テトラアルコキシシラン(A2)と炭化水素基含有トリアルコキシシラン(B2)との配合比率(A2/B2)が重量比で0/100〜70/30、好ましくは40/60〜70/30となるように、式(1)のテトラアルコキシシランと、式(2)の炭化水素基含有トリアルコキシシランとを配合する。さらに、中間層及び分離層の形成に際しては、中間層形成時の上記配合比率(A1/B1)が分離層形成時の上記配合比率(A2/B2)より大きくなるように、テトラアルコキシシラン及び炭化水素基含有トリアルコキシシランを配合する。この場合、分離層の方が中間層よりも炭化水素基含有トリアルコキシシランに由来する炭化水素基を多く含有するため、酸性ガス含有ガス中の酸性ガスが選択的に分離層に誘引され、酸性ガス含有ガスからの酸性ガスの分離を効率よく行うことができる。
【0040】
なお、分離層においても、分離膜の分離性能をさらに高めるため、上記式(3)のポリシロキサン網目構造体に二酸化炭素と親和性を有する金属塩を添加(ドープ)することが好ましい。分離層に添加可能な金属塩の種類、及び添加方法は、中間層の場合と同様とすることができる。
【0041】
図1は、本発明のガス分離装置100を示すブロック図である。ガス分離装置100は、上述のガス分離膜10、ガス供給部20、ガス回収部30、及びガス排出部40を備えている。なお、図1では、二酸化炭素(酸性ガス)をG1、メタンガス(非酸性ガス)をG2として表してある。
【0042】
ガス分離膜10は、上述のように、炭化水素基を含有するポリシロキサン網目構造体を含む。炭化水素基含有ポリシロキサン網目構造体中の炭化水素基は、酸性ガスである二酸化炭素に対して親和性を有する。従って、ガス分離膜10に二酸化炭素G1とメタンガスG2とを同時に供給すると、二種のガスによる競争の結果、ガス分離膜10には二酸化炭素G1が優先的に吸着される。ただし、この吸着は一時的なものであり、ガス分離膜10に吸着された二酸化炭素G1はやがて脱離し、ガス分離膜10の透過側に進行する。一方、メタンガスG2は、先に吸着された二酸化炭素G1によってガス分離膜10の透過側への進路が遮断される。その結果、メタンガスG2は、ガス分離膜10の排出側に進行する。ガス分離膜10は、このような異種のガスの競争吸着を利用し、酸性ガス含有ガス(二酸化炭素G1とメタンガスG2との混合ガス)を二酸化炭素G1とメタンガスG2とに分離することができる。
【0043】
ガス供給部20は、ガス分離膜10の上流側(ガス流入側)に設けられ、ガス分離膜10に酸性ガス含有ガスを供給する(ガス供給工程)。ガス供給部20は、例えば、天然ガス、メタンハイドレート気化物、消化ガス、オフガス等を充填した容器として構成することができる。あるいは、これらのガスを発生させるガス発生源又はガス発生設備をそのままガス供給部20として利用することも可能である。ガス供給部20には、ガス分離膜10への酸性ガス含有ガスの供給圧を調整する圧力調整手段21が設けられる。ガス供給部20が低圧のガスを取り扱う場合は、圧力調整手段21は圧縮機とすることができる。ガス供給部20が高圧のガスを取り扱う場合は、圧力調整手段21は減圧バルブとすることができる。ガス供給部20における圧力(酸性ガス含有ガスの供給圧力)は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上に設定される。ガス供給部20における供給圧力を0.1MPa以上に設定することにより、混合ガスの分離効率及び分離速度が高まり、二酸化炭素G1又はメタンガスG2の工業的生産が可能となる。
【0044】
ガス分離膜10の下流側には、ガス回収部30及びガス排出部40が設けられる。このような配置により、ガス分離装置100には、ガス供給部20とガス回収部30との間にガス分離膜10が存在し、ガス供給部20とガス排出部40との間にはガス分離膜10が存在しないガス流路が形成される。従って、ガス分離膜10を透過した二酸化炭素G1はガス回収部30により回収され、ガス分離膜10を透過できなかった(すなわち、遮断された)メタンガスG2はガス排出部40に排出される(ガス分離工程)。ガス回収部30は、例えば、二酸化炭素G1が導入される耐圧ガス容器として構成することができる。ガス排出部40は、メタンガスG2の排気ダクトとして構成することができる。なお、メタンガスG2についても回収して利用する場合は、ガス排出部40に回収用の耐圧ガス容器が接続される。
【0045】
ガス回収部30には、ガス分離膜10における二酸化炭素G1の透過を促進するため、必要に応じて、減圧手段31が設けられる。減圧手段31は、例えば、真空ポンプ等で構成することができる。減圧手段31を操作してガス回収部30の圧力を低下させると、ガス分離膜10に吸着された二酸化炭素G1が次々とガス分離膜10から脱離し、ガス回収部30に回収される。このとき、ガス回収部30における圧力は、ガス分離膜10に二酸化炭素G1が吸着する吸着量と、ガス分離膜10から二酸化炭素G1が脱離する脱離量とのバランスが一定範囲に収まるように調整される。ここで、二酸化炭素G1の吸着量と脱離量とのバランスは、ガス分離装置100が定常稼働中にあるときのガス分離膜10の重量変化に反映させることができる。この場合、ガス分離膜10の重量変化は、ガス分離装置100の稼働前のガス分離膜10の重量を基準として、好ましくは±0.1%以内、より好ましくは±0.03%以内に収まるように設定される。さらに、ガス回収部30における圧力(二酸化炭素G1の回収圧力)は、好ましくは−0.02MPa以下、より好ましくは−0.08MPa以下に設定される。ガス回収部30における回収圧力を−0.02MPa以下に設定することにより、混合ガスの分離効率及び分離速度が高まり、二酸化炭素G1又はメタンガスG2の工業的生産が可能となる。
【0046】
ガス分離装置100の稼働中に上記の条件が満たされていると、ガス分離膜10に吸着された二酸化炭素G1は、上述のように、次々とガス分離膜10から脱離してガス回収部30に回収される一方、減圧期間中におけるガス分離膜10に対する二酸化炭素G1の吸着状態は連続的に維持される。このため、ガス供給部20からガス分離膜10に二酸化炭素G1とメタンガスG2との混合ガスを供給し続けても、ガス分離膜10に含まれる炭化水素基含有ポリシロキサン網目構造体中の炭化水素基に二酸化炭素が吸着されている状態が常に維持され、その結果、メタンガスG2の透過側への進路が遮断される。メタンガスG2はガス分離膜10を透過することができないため、ガス排出部40の方に進行し、ガス分離装置100の外部に排出される。このように、本実施形態のガス分離装置100は、二酸化炭素G1とメタンガスG2との競争吸着を利用することにより、酸性ガス含有ガスは二酸化炭素G1とメタンガスG2とに効率よく分離し、高濃度の二酸化炭素G1又はメタンガスG2を工業的に生成することを可能としたものである。
【実施例】
【0047】
本発明のガス分離装置の性能を確認するため、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガス(酸性ガス含有ガス)を処理対象としたガス分離試験を様々な条件の下で実施した。ガス分離装置のガス分離膜には、チューブラータイプのアルミナ系セラミックスからなる多孔質支持体の表面に中間層及び分離層を形成したものを使用した。中間層及び分離層は、いずれも炭化水素基を含有するポリシロキサン網目構造体からなる薄膜であり、分離層に硝酸マグネシウムを添加したものとした。このガス分離膜を150℃に設定したオーブンで1時間高温乾燥し、次いで窒素ガスを1時間通流させたものをガス分離試験に供した。
【0048】
ガス分離試験における各種パラメータを以下に示す。
(1)混合ガス〔CO/CH
:供給量(cc/分)
:供給圧力(MPa)
ρ:混合ガス中のCH濃度(%)
(2)透過ガス〔COリッチガス〕
:透過量(cc/分)
:透過側圧力(MPa)
ρ:透過ガス中のCH濃度(%)
(3)未透過ガス〔CHリッチガス〕
:未透過量(cc/分)
:未透過側圧力(MPa)
ρ:未透過ガス中のCH濃度(%)
(4)ガス分離膜〔チューブラー支持体/中間層/分離層〕
Θ :カット(=V/V
:温度(℃)
【0049】
<実施例1>
ガス分離膜における透過ガスの透過量Vと混合ガスの供給量Vとの比率であるガス分離膜のカットΘを変更し、未透過ガス中のCH濃度ρ及びCH回収率(%)を求めた。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガス中のCH濃度ρを60%、混合ガスの供給圧力Pを0.2MPa、透過ガスの透過側圧力Pを−0.093MPa(減圧)、ガス分離膜の温度Tを20℃に設定し、ガス分離膜のカットΘを0.1〜0.9の間で変更した。試験結果のグラフを図2に示す。
【0050】
図2によれば、ガス分離膜のカットΘを0.1〜0.7の間で変更した場合、CH濃度とCH回収率とのバランスが実用上問題のないレベルとなり、ガス分離膜のカットΘを0.3〜0.5の間で変更した場合、CH濃度とCH回収率とのバランスが良好なものとなり、ガス分離膜のカットΘを0.4に設定した場合、CH濃度とCH回収率とのバランスが最も優れたものとなった。このように、本発明のガス分離装置において、ガス分離膜のカットΘを適切に変更又は設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスを効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例1のガス分離膜は、試験前のガス分離膜の重量を基準とすると、試験中のガス分離膜の重量変化は最大で0.022%であった。ガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていたことから、ガス分離膜に二酸化炭素が吸着する吸着量と、ガス分離膜から二酸化炭素が脱離する脱離量とのバランスが維持されていると考えられる。
【0051】
<実施例2>
透過ガスの透過側圧力Pを大気圧とし、混合ガスの供給圧力Pを変化させ、未透過ガス中のCH濃度ρ及びCH回収率(%)を求めた。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガス中のCH濃度ρを60%、透過ガスの透過側圧力Pを0MPa(大気圧)、ガス分離膜のカットΘを0.4、ガス分離膜の温度Tを20℃に設定し、混合ガスの供給圧力Pを0.1〜0.3MPaの間で変化させた。試験結果のグラフを図3に示す。
【0052】
図3によれば、混合ガスの供給圧力Pを0.1MPaから0.3MPaまで上昇させた場合、CH濃度及びCH回収率はいずれも徐々に上昇し、混合ガスの供給圧力Pが0.15MPa以上であれば、実用上問題のないレベルのCH濃度及びCH回収率を達成することができた。このように、本発明のガス分離装置において、混合ガスの供給圧力Pを適切に設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスを効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例2のガス分離膜は、試験中のガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていた。
【0053】
<実施例3>
透過ガスの透過側圧力Pを変化させ、未透過ガス中のCH濃度ρ及びCH回収率(%)を求めた。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガス中のCH濃度ρを60%、混合ガスの供給圧力Pを0.2MPa、ガス分離膜のカットΘを0.4、ガス分離膜の温度Tを20℃に設定し、透過ガスの透過側圧力Pを−0.02MPaから−0.09MPaに低下させた。試験結果のグラフを図4に示す。
【0054】
図4によれば、透過ガスの透過側圧力Pを−0.02MPaから−0.09MPaまで下降させた場合、CH濃度及びCH回収率はいずれも徐々に上昇し、透過ガスの透過側圧力Pが−0.02MPa以下であれば、実用上問題のないレベルのCH濃度及びCH回収率を達成することができた。また、この結果は、実施例2の混合ガスの供給圧力Pを変化させた場合よりも優れたものであった。このように、本発明のガス分離装置において、透過ガスの透過側圧力Pを適切に設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスを効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例3のガス分離膜は、試験中のガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていた。
【0055】
<実施例4>
透過ガスの透過側圧力Pを減圧し、混合ガスの供給圧力Pを変化させ、未透過ガス中のCH濃度ρ及びCH回収率(%)を求めた。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガス中のCH濃度ρを60%、透過ガスの透過側圧力Pを−0.09MPa(減圧)、ガス分離膜のカットΘを0.4、ガス分離膜の温度Tを20℃に設定し、混合ガスの供給圧力Pを0.1〜0.3MPaの間で変化させた。試験結果のグラフを図5に示す。
【0056】
図5によれば、混合ガスの供給圧力Pを0.1MPaから0.3MPaまで上昇させた場合、CH濃度及びCH回収率に変化は殆ど見られなかったが、いずれも高いレベルを維持することができた。この実施例4の結果は、実施例2の透過ガスの透過側圧力Pを大気圧とした場合よりも優れたものであった。このように、本発明のガス分離装置において、透過ガスの透過側圧力Pを減圧した上で混合ガスの供給圧力Pを適切に設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスをより効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例4のガス分離膜は、試験中のガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていた。
【0057】
<実施例5>
ガス分離膜の温度Tを変化させ、未透過ガス中のCH濃度ρ及びCH回収率(%)を求めた。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガス中のCH濃度ρを60%、混合ガスの供給圧力Pを0.2MPa、透過ガスの透過側圧力Pを−0.093MPa(減圧)、ガス分離膜のカットΘを0.4に設定し、ガス分離膜の温度Tを20〜100℃の間で変化させた。試験結果のグラフを図6に示す。
【0058】
図6によれば、ガス分離膜の温度Tを20℃から100℃まで上昇させた場合、CH濃度及びCH回収率は徐々に低下する傾向か見られたが、いずれも高いレベルを維持することができた。このように、本発明のガス分離装置において、ガス分離膜の温度Tを適切に設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスを効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例5のガス分離膜は、試験中のガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていた。
【0059】
<実施例6>
混合ガス中のCH濃度ρを変化させ、未透過ガス中のCH濃度ρ及びCH回収率(%)を求めた。本実施例では、混合ガス中のCH濃度ρの変化に合わせて、ガス分離膜のカットΘを変更した。ちなみに、ガス分離膜のカットΘと混合ガス中のCH濃度ρとは逆数の関係にあり、ガス分離膜のカットΘが大きいほど混合ガス中のCH濃度ρは低くなる。試験条件は、上記のパラメータにおいて、混合ガスの供給圧力Pを0.2MPa、透過ガスの透過側圧力Pを−0.093MPa(減圧)、ガス分離膜の温度Tを20℃に設定し、混合ガス中のCH濃度ρを10〜90%の間で変化させ、それに合わせてガス分離膜のカットΘを0.1〜0.9の間で変更した。試験結果のグラフを図7に示す。
【0060】
図7によれば、混合ガス中のCH濃度ρを10%から90%まで上昇させた場合、CH濃度及びCH回収率はいずれも高いレベルを維持しながら徐々に上昇した。混合ガス中のCH濃度ρが10%程度であっても、実用上問題のないレベルにCHを濃縮することができた。このように、本発明のガス分離装置において、混合ガス中のCH濃度ρを適切に設定すれば、二酸化炭素とメタンガスとの混合ガスをより効率的に二酸化炭素とメタンガスとに分離することが可能となることが明らかとなった。また、実施例6のガス分離膜は、試験中のガス分離膜の重量変化が±0.1%以内に収まっていた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のガス分離装置、及びガス分離方法は、都市ガスの製造設備、燃料電池への水素供給設備、工場排ガスの浄化設備、及び液化炭酸ガス製造設備等において利用可能である。また、地球温暖化対策として検討されているCCSにおいても利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 ガス分離膜
20 ガス供給部
21 圧力調整手段
30 ガス回収部
31 減圧手段
40 ガス排出部
100 ガス分離装置
G1 二酸化炭素
G2 メタンガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7