(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-83344(P2018-83344A)
(43)【公開日】2018年5月31日
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法および加硫機
(51)【国際特許分類】
B29C 33/04 20060101AFI20180427BHJP
B29C 35/04 20060101ALI20180427BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20180427BHJP
【FI】
B29C33/04
B29C35/04
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-227817(P2016-227817)
(22)【出願日】2016年11月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸堀 博行
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202AR12
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU12
4F202CY02
4F202CY17
4F202CY25
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203AR12
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC02
4F203DL10
4F203DL12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユニフォミティに優れたタイヤを製造可能な方法及び加硫機の提供。
【解決手段】生タイヤにブラダー312を挿入し、ブラダー312に加熱流体を送り込み、タイヤを加硫する方法において、オリフィスを備える内圧付与管315でブラダー312に加熱流体を送り込むようにしたタイヤの製造方法。内圧付与管315の内径を100%とした時、オリフィスの孔径が15〜30%、好ましくは、18〜27%である、タイヤの製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生タイヤにブラダーを挿入する工程と、
前記ブラダーに、オリフィスを備える内圧付与管で加熱流体を送り込み、前記生タイヤを加熱する工程と
を含む、タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記内圧付与管の内径を100%としたとき、前記オリフィスの孔径が15%〜30%である、請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
ブラダーと
生タイヤを加熱するための加熱流体を前記ブラダーに送り込むための内圧付与管とを備え、
前記内圧付与管がオリフィスを備える、
加硫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤの製造方法と加硫機とに関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、ローダー501につるされた生タイヤ51を下降させることによって生タイヤ51にブラダー502を挿入し、ブラダー502を膨張させ、型締めし、ブラダー502にスチームなどを送り込み、生タイヤ51を加硫するという手順が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−93983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5に示すように、このような手順では、生タイヤ51の下ビード部511が、ブラダー502挿入時からビードリング503近くに位置し、放射熱により加温されるものの、生タイヤ51の上ビード部512は、型締め動作で上型50の上ビードリング504と接触するまで、加温されない。
【0005】
このような事情から、上ビード部512が熱を受ける時間は、下ビード部511のそれと比べて短く、上ビード部512におけるカーカスコードの動きは、下ビード部511におけるカーカスコードの動きほど活発ではない。
【0006】
上ビード部512におけるカーカスコードの動きと下ビード部511のそれとの差が大きいと、加硫後のタイヤにおいてベルトプライなどのタイヤ部材のオフセンターが生ずることがある。オフセンターは、寸法・剛性の不釣り合いをまねき、ユニフォミティの悪化をもたらす。
【0007】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユニフォミティに優れたタイヤを製造可能な方法・加硫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示におけるタイヤの製造方法は、生タイヤにブラダーを挿入する工程と、ブラダーに、オリフィスを備える内圧付与管で加熱流体を送り込み、生タイヤを加熱する工程とを含む。
【0009】
本開示の方法は、オリフィスなしの内圧付与管で加熱流体を送り込む方法とくらべて、ユニフォミティに優れたタイヤを製造できる。本開示の方法は、内圧付与管にオリフィスを設けるため、ブラダー内圧力の上昇速度を抑え、最大圧力への到達時間を延ばし、最大圧力到達までに上ビード部が受ける熱量を増加させ、上ビード部におけるカーカスコードの動きを下ビード部のそれに近づけることができるからである。
【0010】
本開示の加硫機は、ブラダーと、生タイヤを加熱するための加熱流体をブラダーに送り込むための内圧付与管とを備える。本開示では、内圧付与管がオリフィスを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1における生タイヤの子午線断面図である。
【
図2】実施形態1における加硫機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態1
生タイヤ11、加硫機、タイヤ製造工程の順に説明する。
【0013】
図1に示すように、生タイヤ11はビード部111を備える。具体的には、生タイヤ11は、環状のビード部111と、ビード部111に対向した環状のビード部112とを備える。生タイヤ11は、ビード部111からタイヤ径方向に沿って延びるサイドウォール部113と、ビード部112からタイヤ径方向に沿って延びるサイドウォール部114とをさらに備える。生タイヤ11は、サイドウォール部113のタイヤ径方向外側端とサイドウォール部114のタイヤ径方向外側端との両者をまたぐトレッド部115をさらに備える。ビード部111は、環状のビードコア118を備える。ビード部112は、環状のビードコア119を備える。
【0014】
生タイヤ11のカーカス層6は、トレッド部115からサイドウォール部113・114を経てビード部111・112に至り、その端部は、ビードコア118・119を包むように折り返されている。カーカス層6は、少なくとも一枚のカーカスプライを含む。
【0015】
生タイヤ11のベルト層8は、トレッド部115においてカーカス層6の外側に位置する。ベルト層8は、複数枚のベルトプライを含む。
【0016】
図2に示すように、加硫機はブラダー312を備える。加硫機は、クランプ311とクランプ313とをさらに備える。クランプ311が、ブラダー312の下部を把持する。クランプ313が、ブラダー312の上部を把持する。
【0017】
加硫機は、ブラダー312に加熱流体を送り込むための内圧付与管315をさらに備える。内圧付与管315における内径の下限は、たとえば12mm、14mmである。内径の上限は、たとえば35mm、39mmである。内圧付与管315はオリフィスを備える。内圧付与管315の内径を100%としたとき、オリフィスの孔径は、好ましくは15%以上、より好ましくは18%以上である。15%未満は、生産性の点で好ましくない。内圧付与管315の内径を100%としたとき、オリフィスにおける孔径の上限は、好ましくは30%、より好ましくは27%である。30%をこえると、ユニフォミティの改善効果が小さい傾向がある。
【0018】
加硫機は金型7をさらに備える。金型7は、下型部71と上型部72とトレッド型部73とを備える。これらは、ブラダー312の周囲に位置する。金型7の下型部71はビードリング711を備える。上型部72は、ビードリング721を備える。
【0019】
図3A〜
図3Bに示すように、実施形態1におけるタイヤの製造方法は、ローダー21につるされた生タイヤ11を下降させ、生タイヤ11にブラダー312を挿入する工程を含む。
【0020】
図3B〜
図3Cに示すように、ブラダー312を膨らませ、生タイヤ11のビード部111をビードリング711に着座させる工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。すなわち、この工程では、ブラダー312に流体を送りこみ、ブラダー312を膨らませ、生タイヤ11を押し広げ、ビード部111をビードリング711に嵌める。ブラダー312に流体を送り込む時点で、生タイヤ11はビードリング711に接触していてもよく、接触していなくてもよい。流体としては気体が好ましい。気体として、たとえば窒素ガスを挙げることができる。
【0021】
図3Dに示すように、金型7を閉じ、ブラダー312に内圧付与管315で加熱流体を送り込み、生タイヤ11を加熱する工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。加熱流体としては気体が好ましい。気体として、たとえばスチーム、窒素ガスなどを挙げることができる。ブラダー内圧力が1.2MPaに到達するまでの時間(以下、「到達時間」という。)は、加熱流体の送り込み開始から、好ましくは30秒以上、より好ましくは45秒以上である。到達時間の上限は、たとえば、加熱流体の送り込み開始から60秒である。ブラダー内の最大圧力は、たとえば1.3MPaに設定することができる。到達時間に基づいて加硫タイマーの作動開始のタイミングを決定することが好ましい。
【0022】
実施形態1の方法は、ビード部112が受ける熱量を増加させ、ビード部112におけるカーカスコードの動きをビード部111のそれに近づけ、ユニフォミティに優れたタイヤを製造できる。以上の方法で得られたタイヤは、空気入りタイヤであることができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。
【0024】
実施例1〜4
オリフィス付きの内圧付与管を用いて空気入りタイヤを製造した。すなわち、生タイヤにブラダーを挿入し、ブラダーを常温ガスで膨らませることによって生タイヤのビード部をビードリングに着座させ、金型を閉じ、ブラダーに高温ガスを内圧付与管を通して送り込み、生タイヤを加硫し、空気入りタイヤを得た。各実施例では、表1に記載された内径・オリフィス絞り孔径を有する内圧付与管を使用した。
【0025】
比較例1
オリフィスなしの内圧付与管を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で空気入りタイヤを製造した。
【0026】
コニシティ(以下、「CON」という。)
CONは、タイヤの直進性を妨げる力の大きさである。空気入りタイヤのCONを測定し、比較例1のCONを100とした指数で、各例のCONを示した。値が高いほど、CONが小さく、良好である。
【0027】
【表1】
【0028】
内圧付与管にオリフィスを設けることでCONを改善できた。たとえば、孔径5.0mmのオリフィスを設けることで、CONを7ポイント改善できた(比較例1・実施例1参照)。孔径7.0mmのオリフィスを設けることで、CONを6ポイント改善できた(比較例1・実施例2参照)。
【0029】
CONの改善は、1.2MPa到達時間を延ばすことができ、1.2MPa到達までに上ビード部が受ける熱量を増加させることができたからだと考えられる。たとえば、孔径5.0mmのオリフィスを設けることで、1.2MPa到達時間を37秒延ばすことができた(比較例1・実施例1参照)。孔径7.0mmのオリフィスを設けることで、1.2MPa到達時間を19秒延ばすことができた(比較例1・実施例2参照)。