の複数の第一エンボス2と、第一エンボスより小さい面積の複数の第二エンボス4が配置され、ロール裏面10bに少なくとも複数の第二エンボスが配置され、ロール表面を1cm×1cmの100個の正方形の枡目に区切ったとき第一エンボスを7個以上含む枡目が30〜70個であり、第一エンボスが存在せず第2エンボスが内部に存在する直径14mmの円CRが6〜30個であり、かつロール表面の滑らかさ(TS750f)が11〜35で、ロール裏面の滑らかさ(TS750b)が20〜48であるトイレットロール10である。
前記トイレットペーパーの前記ロール表面側に水を滴下したとき、旧JIS規格S3104に基づく吸水度(滴下量は0.1ml)が0.0〜2.0秒である請求項1〜4のいずれか一項に記載のトイレットロール。
前記トイレットペーパーのうち前記ロール表面側の1プライのシートと、前記ロール裏面側の1プライのシートに対し、それぞれJIS P4501に従うほぐれやすさの平均値が15.0〜90.0秒である請求項1〜5のいずれか一項に記載のトイレットロール。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の好ましい実施形態につき説明するが、これらは例示の目的で掲げたものでこれらにより本発明を限定するものではない。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るトイレットロール10は、2プライ以上に重ねられたトイレットペーパー10xをロール状に巻き取ったトイレットロールであって、ダブルエンボスが施され、強度DGMTが2.6〜4.5N/25mm、比容積が7.0〜10.5cm
3/g、後述する第一エンボス2及び第二エンボス4が配置され、後述する(TS750f)が11〜35で、(TS750b)が20〜48である。
トイレットペーパー10xのロール外側の表面をロール表面10aとし、ロール内側の表面をロール裏面10bとする。
【0011】
トイレットペーパー10xのJIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さをDMDT(Dry Machine Direction Tensile strength)、乾燥時の横方向の引張強さをDCDT(Dry Cross Direction Tensile strength)としたとき、強度DGMT(Dry Geometric Mean Tensile strength)は(DMDT×DCDT)
1/2で表される。なお、DMDT、DCDTは、2プライ以上に重ねられたままのトイレットペーパー10xの製品について測定する。
DGMTが2.6N/25mm未満であるとやぶれ易くて実用に適さず、4.5N/25mmを超えると硬くなって柔らかさが損なわれる。DGMTが2.8〜4.0N/25mmであることが好ましく、3.0〜3.6N/25mmであることがより好ましい。
又、DMDTが好ましくは5.5〜9.5N/25mm、より好ましくは6.0〜8.6N/25mm、最も好ましくは6.5〜7.5N/25mm、DCDTが好ましくは1.2〜2.1N/25mm、より好ましくは1.3〜1.9N/25mm、最も好ましくは1.4〜1.7N/25mmである。
DMDT及びDCDTが上記値未満であると、やぶれ易くて実用に適さないことがある。DMDT及びDCDTが上記値より高いと硬くなり、柔らかさが損なわれることがある。DMDTとDCDT測定時の引張速度は、300mm/minとする。
なお、衛生薄葉紙の抄紙の流れ方向を「縦方向」とし、流れ方向に直角な方向を「横方向」とする。
【0012】
トイレットペーパー10xの比容積が7.0cm
3/g未満であると、柔らかさが劣ったり、紙が滑らか過ぎてしまったり、吸水性が劣る。一方、比容積が10.5cm
3/gを超えると、バルク(嵩高さ)は高くなり柔らかさが向上するが、滑らかさが劣る。上記比容積は、好ましくは7.7〜10.0cm
3/g、より好ましくは8.5〜9.5cm
3/gである。
なお、比容積は、後述するようにそれぞれ測定される紙厚を坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表したものである。
【0013】
図2、
図3は、それぞれロール表面10a、ロール裏面10bに設けられたエンボスを示す。又、
図4は
図2のA−A線に沿う断面図である。
図2に示すように、ロール表面10aには、面積2.5〜7.0mm
2の複数の第一エンボス2と、第一エンボス2より小さい面積(好ましくは2.2mm
2以下)の複数の第二エンボス4が配置されている。ここで、第一エンボス2は大きくて深いマクロエンボスであり、比容積及び美粧性を確保する機能を有する。一方、第二エンボス4は小さくて浅いマイクロエンボスであり、適度な滑らかさを確保する機能を有する。
ロール表面10aの個々の第一エンボス2の面積が2.5mm
2未満であると比容積が7.0cm
3/g未満となり、美粧性も劣る。上記面積が7.0mm
2を超えると比容積が10.5cm
3/gを超え、滑らかさが劣ると共に、第一エンボスが大きくなり過ぎて強度も劣る。個々の第一エンボス2の面積は好ましくは3.3〜6.2mm
2、より好ましくは4.0〜5.5mm
2である。
ロール表面10aの第一エンボス2の深さは、好ましくは0.25〜0.70mm、より好ましくは0.25〜0.60mm、最も好ましくは0.25〜0.50mmである。第一エンボス2の深さが上記範囲より小さいと、比容積が小さくなる場合があり、上記範囲を超えると、比容積が大きくなり過ぎて滑らかさが劣る場合がある。
【0014】
ロール表面10aの個々の第二エンボス4の面積は好ましくは2.2mm
2以下である。上記面積が2.2mm
2を超えると滑らかさが劣る場合がある。なお、第二エンボス4の面積の下限は特に制限されないが、例えば0.5mm
2である。第二エンボス4の面積が下限未満であるものは、製造が困難であると共に、滑らかになり過ぎる場合がある。ロール表面10aの個々の第二エンボス2の面積は好ましくは1.0〜2.2mm
2、より好ましくは1.4〜2.2mm
2である。
ロール表面10aの第二エンボス4の深さは、好ましくは0.05〜0.23mm、より好ましくは0.10〜0.23mm、最も好ましくは0.10〜0.20mmである。第二エンボス4の深さが上記範囲より小さいと、滑らか過ぎる場合があり、上記範囲を超えると、滑らかさが劣る場合がある。
なお、ロール表面10aの第一エンボス2と第二エンボス4は重なっていても良い(つまり、第一エンボス2上に第二エンボス4が形成されている)が、重なっていないことが好ましい。
【0015】
又、エンボスの面積は、形状測定レーザマイクロスコープを用いてエンボスの高低差を測定して求める。形状測定レーザマイクロスコープは、点光源であるレーザ光源を、対物レンズを介して観察視野内のX−Y平面を複数に分割したピクセルにスキャンし、各ピクセル毎の反射光を受光素子で検出する。そして、対物レンズを高さ(Z軸)方向に駆動し、最も反射光量の高いZ軸位置を焦点として、高さ情報と反射光量を検出する。このようにしてスキャンを繰り返すことにより、全体に焦点の合った光量超深度画像と高低画像(情報)が得られる。レーザ光源は、ピンホール共焦点光学系であるので、測定精度が高い。
形状測定レーザマイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR−3100」を使用することができる。レーザマイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR−H1A」を使用することができる。又、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。なお、測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更しても良い。
【0016】
なおエンボスの面積は、
図9に示すように、エンボスの周縁frの最長部の長さaと、長さaに垂直な方向での最長部の長さbを測定し、a×bを面積Sとして求める。
又、
図10に示すように、第一エンボス2と第二エンボス4が重なっている場合は、重なっている部分を含めて、第一エンボス2の周縁の最長部の長さaと、長さaに垂直な方向での最長部の長さbを測定する。さらに、第一エンボス2と重なっていない単独の第二エンボス4の面積S2を
図9と同様にして求める。そして、(a×b)−{1/2×S2×(重なり個数)}を第一エンボス2の面積Sとして求める。なお、
図10では、第一エンボス2と第二エンボス4との重なり個数は2であり、面積S=(a×b)−S2となる。
【0017】
図13、
図14にエンボスの面積(長さa、b)及び深さの具体的な測定方法を示す。
図13(a)は、形状測定レーザマイクロスコープによるX−Y平面上の高さプロファイルを示し、トイレットペーパー表面の高さが濃淡で表されることがわかる。
図13(a)の濃色部位が個々の第一エンボス2を示し、このうち1つの第一エンボス2の最長部を横切る線分A−Bを引くと、
図13(b)に示すように第一エンボス2の高さ(測定断面曲線)プロファイルが得られる。ここで、X−Y平面画像の色の濃淡で、エンボスの凸部と凹部がわかるので、凸部と凹部が隣接している部分を横切るように線分A−Bを決めればよい。もちろん、第一エンボス2の最長部が縦方向の場合、線分A−Bは縦方向とすることができる。
【0018】
ここで、
図13(b)の高さプロファイルは、実際のトイレットペーパーの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(トイレットペーパーの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
そこで、
図14に示すように、高さプロファイルの断面曲線Sから「輪郭曲線」Wを計算し、この輪郭曲線Wのうち、上に凸となる2つの変曲点P1,P2と、変曲点P1,P2で挟まれる最小値を求め、深さの最小値Minとする。さらに、変曲点P1,P2の深さの値の平均値を深さの最大値Maxとする。
このようにして、エンボスの深さ=最大値Max−最小値Minとする。又、変曲点P1,P2のX−Y平面上の距離(長さ)を長さaと規定する。なお、「輪郭曲線」は、断面曲線からλc:250μm(但し、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる曲線である。長さbも同様である。又、長さbを求めたときの高さプロファイルから、上記と同様にエンボスの深さを求め、長さaを求めたときのエンボスの深さと比較し、大きい方の値をエンボスの深さとして採用する。
【0019】
本発明においては、
図11に示すように、トイレットペーパー10xのロール表面のうちミシン目を除いた10cm×10cmの領域Rを、1cm×1cmの100個の正方形の枡目SQ1,SQ2・・・に区切ったとき、第一エンボス2を7個以上含む枡目SQ1(
図11中にグレーで塗り潰した枡目)が30〜70個である。なお、
図11の例では枡目SQ1は50個である。
枡目SQ1は第一エンボス2が密になっている(7個以上/cm2)部位を表し、比容積に影響するため、枡目SQ1の個数を適切に制御する必要がある。枡目SQ1が30個未満の場合、比容積が低くなって滑らか過ぎる場合があると共に、柔らかさが劣る。また、美粧性も劣る。枡目SQ1が70個を超えると、比容積は高くなるが、滑らかさが劣る。
枡目SQ1が35〜65個であることが好ましく、45〜60個であることがより好ましい。なお、ナーリング(エッジエンボス)処理が行われているなど、10cm×10cmの領域Rを確保できない場合は、例えば、ミシン目を介して長さ方向に隣接して連続する2シートについて、それぞれ5cm×10cmの領域について測定し、これら2つの領域の個数を合算して10cm×10cmの領域Rに換算する。
【0020】
又、本発明においては、
図12に示すように、上記した領域Rのうち、第一エンボス2が存在せず、第2エンボス4が内部に存在する直径14mmの円CRが6〜30個である。
円CRは指の先で触れる領域を表し、円CRの個数が滑らかさに影響するため、円CRの個数を適切に制御する必要がある。円CRが6個未満であると滑らかさが劣り、30個を超えると滑らかさは向上するが、比容積が低くなる。
円CRが8〜25個であることが好ましく、10〜20個であることがより好ましい。
【0021】
一方、
図3に示すように、ロール裏面10bには、複数の第二エンボス4が配置されている。ロール裏面10bの第二エンボス4の面積及び深さの範囲は、ロール表面10aの第二エンボス4の面積及び深さの範囲(上述)と同一である。
又、ロール裏面10bの第二エンボス4の個数Yは、好ましくは30〜75個/cm
2、より好ましくは40〜75個/cm
2、最も好ましくは50〜75個/cm
2である。第二エンボス4の個数Yが上記範囲より少ないと、エンボスがほとんど無い状態になってロール裏面10bが平滑に過ぎ、滑らか過ぎる場合があり、上記範囲を超えると、滑らかさが劣る場合がある。また、ロール裏面10bの第二エンボス4の個数Yが上記範囲を外れる場合には、ロール表面との滑らかさの差異(表裏差)が大きくなり、触感に違和感を生じることがある。
第二エンボス4の個数Yの測定は、トイレットペーパーの全幅で、長さ方向に隣接する2つのミシン目の間の全面積について測定する。なお、ナーリング(エッジエンボス)処理が行われているなど、全幅で測定できない場合は、ナーリング(エッジエンボス)処理等で測定できない部分を除いて測定可能な部位についてエンボス個数を測定し、1cm
2当たりのエンボス個数として換算する。
【0022】
又、ロール裏面10bに第二エンボス4以外のエンボス(例えば第一エンボス2)が設けられていてもよいが、滑らかさを確保するためには、(円CRの個数(個))/(ロール裏面10bの第二エンボス4の個数Y(個/cm
2))で表される比が0.05以上であることが好ましい。このようにすると、ロール裏面10bとロール表面10aの表裏で滑らかさの差が小さくなり、触感が良好になる。但し、上記比が0.05未満であると、ロール表面10aの滑らかさが劣り、表裏面の触感の差(滑らかさの表裏差)が大きくなり過ぎる場合がある。
上記比が0.15以上であることがより好ましく、0.20以上であることが最も好ましい。
なお、ロール裏面10bに第二エンボス4以外のエンボスが設けられていないことが好ましい。
【0023】
そして、
図4に示すように、2プライの各トイレットペーパーにそれぞれ加工された第一エンボス2や第二エンボス4の凸面同士を対向させるように2プライに積層される。
【0024】
ティシューソフトネス測定装置TSA(Tissue Softness Analyzer)により、2プライ以上に重ねられたままのトイレットペーパー10xについて、ロール表面側(のシート)を上にして試料台に設置したサンプルに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0(/sec)で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定したとき、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)の値(これを「TS750f」と表記する)が好ましくは11〜35dBV
2rms、より好ましくは15〜31dBV
2rms、最も好ましくは19〜27dBV
2rmsである。
又、2プライ以上に重ねられたままのトイレットペーパー10xについて、ロール裏面側(のシート)を上にして試料台に設置したサンプルにつき、上記TS750の値(これを「TS750b」と表記する)が好ましくは20〜48dBV
2rms、より好ましくは25〜43dBV
2rms、最も好ましくは30〜38dBV
2rmsである。
TS750f(TS750b)の数値が上記範囲より高いと、滑らかさに劣り、上記範囲より低いと、滑らか過ぎて表面がパリパリに感じ、さらに第一エンボス2が小さかったり深さが浅いために美粧性(外観、見栄え)が劣る場合がある。ここで、第一エンボス2が小さすぎたり、その深さが浅すぎると、第一エンボス2の見た目がぼやけて認識し難くなってエンボスの美粧性が低下することになる。
【0025】
ここで、
図5に示すように、ティシューソフトネス測定装置TSA210は、紙試料(サンプル)206の上から、回転したブレード付きロータ204を押付けたときの各種センサで検知した振動データを、振動解析してパラメータ化(TS値)することにより、紙のソフトネス(手触り感)を定量評価するものであり、ドイツのエムテック(Emtec Electronic GmbH、日本代理店は日本ルフト株式会社)社製の商品名である。
TSAを用いた具体的な測定は、(i)円形の試料台205を外側から覆うようサンプル206(emtec社のサンプルパンチを使用して直径が約112.8mmの円形に加工したサンプル)を設置し、サンプル206の外周をサンプル固定リング208で保持し、(ii)ブレード付きロータ204を100mNの押し込み圧力でサンプル206の上から押し込んだ後、ロータ204を回転数2.0(/sec)で回転させ、(iii) 試料台205の振動を、試料台205内部に設置した振動センサ203で測定し、振動周波数を解析する。(iv)次に、押し込み圧力100mNと600mNで、ロータ204を回転させずにそれぞれサンプル206を変形させたときの上下方向の変形変位量(mm/N、剛性D)を計測する。 (i)〜(iv)の手順により、製品の総合的なハンドフィール値の要素(滑らかさ、しなやかさ、ボリューム感)が各々数値化できる。測定は1サンプルについて、5回行い、平均化する。
【0026】
なお、試料台205はベースプレート201上に設置され、試料台205とベースプレート201の間には、力センサ202が配置されている。そして、力センサ202の検出値により、ブレード付きロータ204の押し込み圧力を制御する。又、ブレード付きロータ204はモータ209によって回転する。
又、振動解析してパラメータ化(TS値)するソフトウェアは、emtec measurement systemを用いる。本ソフトウェアには、各種アルゴリズム(例えば、Base Tissue、Facial、TP等)が備えられ、TS7、TS750、D(剛性)をソフトウェア上で自動的に取得し、これらTS7、TS750、Dおよび、坪量、厚さ、Ply数等から各種アルゴリズムの種類によって、HF(ハンドフィール)値が計算される。本発明では、HF値ではなく、TS750のみを規定しており、上記測定条件を満たせば、アルゴリズムは何を使用しても良く、TS750の値はアルゴリズムの種類によって変わることはない。
【0027】
図6は、TSAによる紙試料サンプルの振動周波数の解析結果の一例を示す。低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークAの強度をTS750とし、6500Hzを含む(6500Hzの前後の)スペクトルの極大ピークBの強度をTS7とする。極大ピークBは、通常、約6500Hzに位置する。
TS750の値が低いほど、滑らかさに優れる。TS750を規定することにより、従来は評価者の主観に負っていた滑らかさを定量的に評価できる。
【0028】
トイレットペーパー10xのロール表面側に水を滴下したとき、旧JIS S3104に基づく吸水度(滴下量は0.1ml)は、0.0〜2.0秒が好ましく、0.0〜1.5秒がより好ましく、0.0〜1.0秒が最も好ましい。吸水度は、速い方がよいが、吸水度が1.0秒以下のものを測定することは難しいため、吸水度が1.0秒以下は「1.0秒」とみなすこととする。吸水度が2.0秒を超えると、吸水性に劣る場合がある。
なお、吸水度は、2プライ以上に重ねられたままのトイレットペーパー10xの製品について測定する。
【0029】
トイレットペーパー10xのうちロール表面側の1プライのシートと、ロール裏面側の1プライのシートに対し、それぞれJIS P4501に従うほぐれ易さの平均値は、15.0〜90.0秒が好ましく、20.0〜70.0秒がより好ましく、25.0〜50.0秒が最も好ましい。ほぐれ易さが上記範囲未満であると破れやすくなり、上記範囲を超えるとトイレでの水解性に劣る場合がある。
なお、例えば3プライのトイレットペーパー10xの場合、ロール表面側と裏面側の各シートのほぐれ易さを測定して両者の平均値を求めるが、表裏のシートで挟まれた厚み方向中央のシートは使用しない。
【0030】
トイレットペーパー10xの坪量が25〜45g/m
2、紙厚が0.22〜0.44mmであることが好ましい。
上記坪量が25g/m
2未満であるか、又は紙厚が0.22mm未満であると、強度が低下すると共にボリューム感(嵩高さ)も低下する場合がある。上記坪量が45g/m
2を超えると柔らかさが劣り、紙厚が0.40mmを超えるとロールの巻径が大きくなりすぎる場合がある。
上記坪量がより好ましくは28〜40g/m
2であり、最も好ましくは30〜34g/m
2であ
上記紙厚がより好ましくは0.24〜0.36mm、最も好ましくは0.27〜0.30mmである。
【0031】
トイレットペーパーは木材パルプ100質量%から成っていてもよく、古紙パルプ、非木材パルプを含んでも良い。目標とする品質を得るためには、NBKP(針葉樹クラフトパルプ):LBKP(広葉樹クラフトパルプ)=50〜90:10〜50(質量比)の木材パルプを原料とすることが好ましく、より好ましい範囲はNBKP:LBKP=60〜80:20〜40:50、更に好ましい範囲はNBKP:LBKP=65〜75:25〜35である。
上記LBKPの材種としてユーカリ属グランディス、及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属から製造されるパルプが好ましい。又、このNBKPとLBKPのパルプ100質量部に対して、牛乳パック由来等の古紙パルプを100質量部まで含むことができる。古紙パルプは品質的バラツキが大きく、配合割合が増えると製品の品質、特に柔らかさに大きく影響するので、このNBKPとLBKPのパルプ100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、最も好ましくは0質量部配合するのが望ましい。
なお、トイレットペーパーに適正な強度を確保するために、通常の手段で原料配合し、パルプ繊維の叩解処理にて強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解としては、市販のバージンパルプに対して、JIS-P8121で測定されるカナダ標準ろ水度で50〜350ml、より好ましくは70〜300ml、更に好ましくは100〜250ml濾水度を低減させる。又、湿潤紙力増強剤は使用しないことが好ましい。
【0032】
トイレットペーパーは、紙料にバージン系原料を使用する場合は一定範囲の繊維長及び繊維粗度を有する針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプを特定の範囲で配合して抄紙することができる。紙料への添加剤としては最終製品の要求品質に応じ、デボンダー柔軟剤を含めた柔軟剤、嵩高剤、染料、分散剤、乾燥紙力増強剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、吸収性向上剤、湿潤剤などを用いることができる。
トイレットペーパーとして古紙原料を使用する場合も、上記バージン系の場合と同様の処理を行う。
【0033】
本発明のトイレットペーパーは、例えば以下のようにして製造することができる。
【0034】
(1)抄紙
まず、公知の抄紙機のワイヤーパート上で上記紙料からウェブを抄紙し、フェルトを介して1又は2つのロールプレスニップでヤンキードライヤーに押し付けて脱水し、さらにヤンキードライヤー(シリンダー)に貼り付けて乾燥し、次いでヤンキードライヤーからウェブを剥がす際にクレープ付け(しわ付け)を行う。ワイヤーパートの方式としては、丸網式、長網(フォードリニアー)式、サクションブレスト式、短網式、ツインワイヤー式、クレセントフォーマーなどが挙げられる。
ここで、ロールプレスをフェルトの代わりに凹凸が付いたファブリックのループ内に配置し、湿紙にファブリックの凹凸を付けて嵩高くし、比容積を高める技術がある。しかしながら、この場合には、ファブリックの凹凸に由来する凹凸がトイレットペーパー原紙に付けられ、微小な第二エンボス4を付与し難くなるので、かかるファブリックを使用せず、ロールプレスをフェルトを用いて行うことが好ましい。なお、上記凹凸付けファブリックとしては、トップ面(湿紙とワイヤーが接触する面)の経糸及び緯糸の目数がそれぞれ20〜70本/2.54cm、該経糸及び緯糸の線径が0.21〜0.70mmの経糸及び緯糸を編み込んだ網目状のワイヤからなるものが挙げられる。従って、トップ面(湿紙とワイヤーが接触する面)の経糸及び緯糸の目数がそれぞれ70本以上/2.54cm、該経糸及び緯糸の線径が0.21mm以下の経糸及び緯糸を編み込んだ網目状のワイヤからなるファブリックであれば、目が細かくて凹凸が少ないので、ロールプレスに用いてもよい。なお、トップ面の線径は、ワイヤの本数と線径の加重平均値とする。
【0035】
(2)エンボス処理
図7、
図8は、それぞれエンボス処理を行うエンボス加工装置の一例を示す。
図7のエンボス加工装置においては、第一エンボス2の凸面20x及び第二エンボス4の凸面40xがそれぞれ重ならないように別個に形成された金属製の凸エンボスロール20と、対向するゴム製抑えロールとの間に、ロール表面10a側の1プライのトイレットペーパーを通し、第一エンボス2及び第二エンボス4を同時に付与する。
一方、第二エンボス4の凸面40xが形成された金属製の凸エンボスロール40と、対向するゴム製抑えロールとの間に、ロール裏面10b側の1プライのトイレットペーパーを通し、第二エンボス4を付与する。そして、双方のトイレットペーパーのエンボスの凸面に適宜接着剤(プライボンド)を塗布した後、重ね合せロールにて、各トイレットペーパーのエンボスの凸面同士が対向するようにして2プライに重ねて接着され、適宜巻き取ってトイレットロールを製造する。
ここで、凸エンボスロール20が凸面20x及び凸面40xを別個の位置に有するので、第一エンボス2及び第二エンボス4を同時に付与できると共に、ロール表面10aの第一エンボス2と第二エンボス4を重ならないようにできる。
なお、プライボンドの代わりにナーリング(エッジエンボス)によって2プライに積層してもよいが、プライボンドが好ましい。
【0036】
一方、
図8のエンボス加工装置においては、第二エンボス4の凸面40xが形成された凸エンボスロール40と、対向するゴム製抑えロールとの間に、ロール表面10a側の1プライのトイレットペーパーを通し、第二エンボス4を付与する。その後、第一エンボス2の凸面20xが形成された金属製の凸エンボスロール30と、対向するゴム製抑えロールとの間に、ロール表面10a側の1プライのトイレットペーパーを通し、第一エンボス2を付与する。このため、ロール表面10aの第一エンボス2と第二エンボス4とが重なる場合がある。
【0037】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例】
【0038】
パルプ組成(質量%)をNBKP70%、LBKP30%とし、公知の方法でフェルトを介してロールプレスを行って抄紙した。その後、
図7に示すエンボス加工装置によりエンボス加工してトイレットロールを製造した。
【0039】
以下の評価を行った。
乾燥時の縦方向引張り強さDMDTと乾燥時の横方向引張り強さDCDT:JIS P8113に基づいて、トイレットペーパー10xにつき、破断までの最大荷重をN/25mmの単位で測定した。
坪量:トイレットペーパー10xについて、JIS P8124に基づいて測定した。
紙厚:トイレットペーパー10xについて、シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、トイレットペーパー10xを10枚重ねて測定を行った。又、測定を10回繰り返して測定結果を平均した。そして、得られた1回当りの平均値を枚数で割ってトイレットペーパー10x当りの紙厚とした。
比容積:トイレットペーパー10xの厚さを坪量で割り、単位gあたりの容積cm
3で表した。
吸水度:旧JIS−S3104法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で、トイレットペーパー10xのロール表面側に0.1ml精製水を滴下し、水滴が吸収される時間(秒)を測定した。
ほぐれ易さ:JIS P4501に従い、上述のようにして、ほぐれやすさを測定した。
【0040】
TS750の測定は、上記ティシューソフトネス測定装置TSAを用いて行った。測定条件も上記のとおりである。
官能評価は、モニター20人によって行った。評価基準は5点満点で行った。評価基準が3点以上であれば良好である。
なお、「柔らかさ」は、2プライままのトイレットペーパー10xの表面と裏面の両方を触り、評価した。
「表裏差」は、2プライままのトイレットペーパー10xの表面と裏面の両方を触り、触感が同じように感じられるかを評価した。なお、表裏差の触感は、第二エンボスの付与の表裏差を表し、評価が高いほど、表裏の触感が同じように感じられ、評価が低いと触感の表裏差が大きい。
美粧性は、トイレットペーパー10xの表面の第一エンボス2の外観、見栄えを目視で評価した。第一エンボス2が小さすぎたり、その深さが浅すぎると、第一エンボス2の見た目がぼやけて認識し難くなるので、美粧性が低下する。
「滑らかさのバランス(表面)」は、TS750fが10.0未満が1点、10.0〜10.9が2点、11.0〜14.9が3点、15.0〜18.9が4点、19.0〜27.0が5点、27.1〜31.0が4点、31.1〜35.0が3点、35.1〜37.0が2点、38.1以上が1点とした。
「滑らかさのバランス(裏面)」は、TS750bが19.0未満が1点、19.0〜19.9が2点、20.0〜24.9が3点、25.0〜29.9が4点、30.0〜38.0が5点、38.1〜43.0が4点、43.1〜48.0が3点、48.1〜50.0が2点、50.1以上が1点とした。つまり、「滑らかさのバランス」は、基準のTS750より高くても低くても評価が低いことになる。
吸水性は、吸水度の値が1.0秒以下は評価5点、1.1〜1.5が4点、1.6〜2.0秒が3点、2.1〜2.3秒が2点、2.4秒以上を1点とした。
なお、坪量、引張強さ、厚さ、比容積、及びティシューソフトネス測定装置TSAによる測定は、JIS-P8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0041】
得られた結果を表1〜表4に示す。なお、各表において、ロール表面の第一エンボス及び第二エンボスのデザインが
図2と同一なものを「
図2」と表記し、
図2と異なるものを「変更」と表記した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
表1〜表4から明らかなように、ロール表面に所定の面積と分布を有する第一エンボス及び第二エンボスを設け、DGMT、比容積、及び滑らかさTS750を規定した各実施例の場合、強度を高くしても柔らかさ、滑らかさ、吸水性が向上した。
【0047】
一方、強度DGMTが2.6N/25mm未満である比較例1、10の場合、強度に劣った。なお、比較例1の場合、坪量が25g/m
2未満で紙厚が0.22mm未満であるため、吸水性とボリューム感(嵩高さ)も低下した。また、比較例10の場合、ロール裏面の第二エンボスの個数が75個/cm
2を超え、滑らかさが劣り、表裏差も悪化した。
強度DGMTが4.5N/25mmを超えた比較例2、9の場合、柔らかさが劣った。また、比較例9の場合、ロール裏面の第二エンボスの個数が30個/cm
2未満のため、エンボスがほとんど無い状態になって平滑に過ぎ、滑らか過ぎ、表裏差も悪化した。
【0048】
ロール表面の第一エンボスを7個以上含む枡目が30個未満である比較例3の場合、比容積が7.0cm
3/g未満となり、柔らかさ、美粧性及び吸水性が劣り、滑らか過ぎ、表裏差も悪化した。
ロール表面の第一エンボスを7個以上含む枡目が70個を超えた比較例4の場合、比容積が10.5cm
3/gを超え、バルク(嵩高さ)は高くなり柔らかさが向上したが、滑らかさが劣った。
【0049】
ロール表面の第一エンボスの面積が2.5mm
2未満である比較例5の場合、比容積が7.0cm
3/g未満となって比較例3と同様に柔らかさ、美粧性及び吸水性が劣った。なお、比較例5の場合、第一エンボスの面積=第二エンボスの面積であった。
ロール表面の第一エンボスの面積が7.0mm
2を超えた比較例6の場合、比容積が10.5cm
3/gを超えて比較例4と同様に表面の滑らかさが劣り、さらに強度も劣った。
【0050】
ロール表面の第2エンボスが内部に存在する直径14mmの円が30個を超えた比較例7の場合、比容積が7.0cm
3/g未満となって比較例3と同様に柔らかさ及び吸水性が劣り、滑らか過ぎ、表裏差も悪化した。
ロール表面の第2エンボスが内部に存在する直径14mmの円が6個未満である比較例8の場合、滑らかさが劣ると共に、表裏面の触感の差も大きくなった。
【0051】
ロール表面の第二エンボスの面積が0.5mm
2未満である比較例11の場合、及びロール表面に第二エンボスを設けなかった比較例13の場合、滑らか過ぎ、表裏差も悪化した。なお、比較例11において第二エンボスの面積を極限まで小さくしたものは、第二エンボスが存在しないことを表すので、比較例11もロール表面に第二エンボスが存在しない比較例13に近い状態を表している。
ロール表面の第二エンボスの面積が2.2mm
2を超えた比較例12の場合、滑らかさが劣った。
【0052】
ロール表面とロール裏面のいずれにもエンボスをまったく設けず、その代わりに抄紙後のクレープ付け(しわ付け)を過度に行うことで、上記実施例と同様に比容積を7.0〜10.5cm
3/gの範囲内に調整した比較例14の場合、ロール表面とロール裏面がいずれも滑らかになり過ぎると共に、強度が低下して破れやすくなった。さらに、エンボスが無いために美粧性も劣った。
なお、エンボスを設けない比較例14において、クレープ付けを通常レベルとした場合には、比容積を7.0〜cm
3/g以上にすることが困難である。
【0053】
なお、市販品1、2は、強度DGMTが2.6N/25mm未満であり、強度に劣った。また、市販品2は紙厚が0.22mm未満であるため、ボリューム感(嵩高さ)も低下した。
市販品3はTS750bが高くなり過ぎ、ロール裏面の滑らかさが劣った。市販品3は、エンボスが急峻で尖っており、これが引っ掛かりを生じて滑らかさが劣ったものと考えられる。