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特開2018-838693Dプリンタ用サポート材除去液、3Dプリンタ用サポート材除去方法、および立体造形物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-83869(P2018-83869A)
(43)【公開日】2018年5月31日
(54)【発明の名称】3Dプリンタ用サポート材除去液、3Dプリンタ用サポート材除去方法、および立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/38 20060101AFI20180427BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20180427BHJP
   B33Y 40/00 20150101ALI20180427BHJP
   B29C 67/00 20170101ALI20180427BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20180427BHJP
   C11D 3/39 20060101ALI20180427BHJP
【FI】
   C11D7/38
   B33Y10/00
   B33Y40/00
   B29C67/00
   C11D17/08
   C11D3/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-226162(P2016-226162)
(22)【出願日】2016年11月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】種村 淳
(72)【発明者】
【氏名】末吉 政智
【テーマコード(参考)】
4F213
4H003
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL15
4F213WL29
4F213WL55
4F213WL62
4F213WL96
4F213WW38
4H003AB19
4H003AC07
4H003BA12
4H003DA20
4H003DB01
4H003DC01
4H003EA15
4H003EA21
4H003EB14
4H003ED02
4H003EE04
4H003EE05
4H003EE08
4H003FA15
(57)【要約】
【課題】立体造形物を黄変させにくい3Dプリンタ用サポート材除去液、立体造形物の黄変が抑えられる3Dプリンタ用サポート材除去方法および立体造形物の製造方法の提供。
【解決手段】水(A)と、酸素系酸化剤およびハロゲン系酸化剤からなる群から選択される少なくとも一種の酸化剤(B)とを含む、3Dプリンタ用サポート材除去液;3Dプリンタを用いて製造された、サポート材で支持されたモデル材からなる立体造形物から、本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液を用いてサポート材を除去する、3Dプリンタ用サポート材除去方法;および、3Dプリンタを用いてサポート材で支持されたモデル材からなる立体造形物を製造した後、本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液を用いてサポート材を除去する、立体造形物の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水(A)と、
酸素系酸化剤およびハロゲン系酸化剤からなる群から選択される少なくとも一種の酸化剤(B)と
を含む、3Dプリンタ用サポート材除去液。
【請求項2】
アルカリ成分(C)をさらに含む、請求項1に記載の3Dプリンタ用サポート材除去液。
【請求項3】
界面活性剤(D)をさらに含む、請求項1または2に記載の3Dプリンタ用サポート材除去液。
【請求項4】
3Dプリンタを用いて製造された、サポート材で支持されたモデル材からなる立体造形物から、請求項1〜3のいずれか一項に記載の3Dプリンタ用サポート材除去液を用いて前記サポート材を除去する、3Dプリンタ用サポート材除去方法。
【請求項5】
3Dプリンタを用いてサポート材で支持されたモデル材からなる立体造形物を製造した後、請求項1〜3のいずれか一項に記載の3Dプリンタ用サポート材除去液を用いて前記サポート材を除去する、立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンタ用サポート材除去液、3Dプリンタ用サポート材除去方法、および立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンタは、各種製造業、建築、医療、教育、航空宇宙等の幅広い分野で利用されている。例えば、3Dプリンタで製造された立体造形物は、各種製造業、航空宇宙等の分野ではデザイン検討、機能検証等のためのモックアップとして、建築分野ではプレゼンテーション用の建築模型として、医療分野では手術前検討用モデルとして、教育分野ではモノづくり教育のツールとして使用されている。3Dプリンタで製造された立体造形物には、今までパーソナルコンピュータの画面上でしか見ることができなかったものが、模型ではあるが実際に手に取ることができるため完成したときのイメージがしやすくなる、という利点がある。
【0003】
3Dプリンタは、ラピッドプロトタイピング(3次元造形機)の一種であり、3D−CAD、3D−CG等のデータを元に、材料を一層ずつ積層して立体造形物を製造する装置である。立体造形物を製造する造形方式には数種類あり、方式ごとに使える材料や製造される立体造形物の特性は異なる。そのため用途に適した造形方式を選択する必要がある。代表的な造形方式としては、熱で溶かした樹脂をノズルから押し出し、積み上げて立体造形物を製造する熱溶解積層方式、インクジェットヘッドから噴射した樹脂を紫外線で固めて立体造形物を製造するマテリアルジェッティング方式、インクジェットヘッドから液体状の結合剤を噴射し粉末を一層ずつ固めて立体造形物を製造するバインダージェッティング方式、粉末状の素材にレーザーを照射して焼結させて立体造形物を製造する粉末焼結方式等が挙げられる。
【0004】
造形方式としては、プラスチック製品とほぼ同等の強度の立体造形物を製造でき、かつカラーバリエーションが多くカラフルな立体造形物を製造できる熱溶解積層方式;複数の素材を混ぜることで多様な硬度の立体造形物やカラフルな立体造形物を製造でき、かつ高精度の立体造形物を製造できるマテリアルジェッティング方式がよく用いられている。しかし、熱溶解積層方式やマテリアルジェッティング方式においては、立体造形物(モデル材)が固化するまで支えておくためのサポート材が必要となる場合があり、その場合、立体造形物が固化した後、サポート材を除去する工程が必要となる。
【0005】
サポート材を除去するためのサポート材除去液としては、例えば、下記のものが提案されている。
(a)水溶性有機溶剤1質量%以上、20質量%以下、(b)アルカリ金属水酸化物0.5質量%以上、20質量%以下、(c)有機アルカリ剤0.2質量%以上、20質量%以下、(d)界面活性剤0.1質量%以上、20質量%以下、及び水を含有し、(b)の含有量と(c)の含有量の質量比(b)/(c)が1/4以上、1/0.4以下である、3Dプリンタ造形物用現像液組成物(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−83744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の3Dプリンタ造形物用現像液組成物でサポート材を除去した場合、得られた立体造形物は何らかの理由により黄変してしまうという問題がある。そのため、黄変防止効果のあるサポート材除去液が望まれている。
【0008】
本発明は、立体造形物を黄変させにくい3Dプリンタ用サポート材除去液、立体造形物の黄変が抑えられる3Dプリンタ用サポート材除去方法および立体造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
<1>水(A)と、酸素系酸化剤およびハロゲン系酸化剤からなる群から選択される少なくとも一種の酸化剤(B)とを含む、3Dプリンタ用サポート材除去液。
<2>アルカリ成分(C)をさらに含む、前記<1>の3Dプリンタ用サポート材除去液。
<3>界面活性剤(D)をさらに含む、前記<1>または<2>の3Dプリンタ用サポート材除去液。
<4>3Dプリンタを用いて製造された、サポート材で支持されたモデル材からなる立体造形物から、前記<1>〜<3>のいずれかの3Dプリンタ用サポート材除去液を用いて前記サポート材を除去する、3Dプリンタ用サポート材除去方法。
<5>3Dプリンタを用いてサポート材で支持されたモデル材からなる立体造形物を製造した後、前記<1>〜<3>のいずれかの3Dプリンタ用サポート材除去液を用いて前記サポート材を除去する、立体造形物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液は、立体造形物を黄変させにくい。
本発明の3Dプリンタ用サポート材除去方法および立体造形物の製造方法によれば、立体造形物の黄変が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】サポート材で支持された立体造形物(被洗物)の写真である。
図2】サポート材を除去し、すすぎを行った後の立体造形物の写真である。
図3】サポート材で支持された立体造形物(被洗物)からサポート材を除去する方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」および「メタクリル酸」の総称である。
【0013】
<3Dプリンタ用サポート材除去液>
本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液は、水(A)(以下、「(A)成分」とも記す。)、酸素系酸化剤およびハロゲン系酸化剤からなる群から選択される少なくとも一種の酸化剤(B)(以下、「(B)成分」とも記す。)を含む。
本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液は、サポート材の除去性の観点から、アルカリ成分(C)(以下、「(C)成分」とも記す。)をさらに含むことが好ましい。
本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液は、サポート材の除去速度の向上の観点から、界面活性剤(D)(以下、「(D)成分」とも記す。)をさらに含むことが好ましい。
本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液は、成分(A)〜(D)をすべて含むことが特に好ましい。
本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
【0014】
(水(A))
(A)成分としては、例えば、水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられ、いずれも好適に用いることができる。
【0015】
(酸化剤(B))
(B)成分は、酸素系酸化剤およびハロゲン系酸化剤からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0016】
酸素系酸化剤は、水中で活性酸素を発生する化合物である。酸素系酸化剤としては、下記の(B1)〜(B8)が挙げられる。酸素系酸化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(B1)過酸化水素。
(B2)過炭酸アンモニウム、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等の過炭酸塩。
(B3)過ホウ酸ナトリム一水塩、過ホウ酸ナトリム四水塩等の過ホウ酸塩。
(B4)過酢酸、ペルオキシ安息香酸、ペルオキシ−α−ナフトエ酸、ペルオキシラウリン酸、ペルオキシステアリン酸等の過カルボン酸。
(B5)1,12−ジペルオキシドデカン二酸、1,9−ジペルオキシアゼライン酸、ジペルオキシセバシン酸、ジペルオキシイソフタル酸等のジ過カルボン酸。
(B6)フタルイミドペルオキシカプロン酸、過酸化ベンゾイル等の(B4)および(B5)以外の有機過酸化物。
(B7)過リン酸塩。
(B8)過硫酸、または過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸水素カリウム、モノ過硫酸水素カリウム複塩等の過硫酸塩。
【0017】
ハロゲン系酸化剤は、水中で活性ハロゲンを発生する化合物である。ハロゲン系酸化剤としては、下記の(B9)〜(B11)が挙げられる。ハロゲン系酸化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(B9)次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、またはこれらのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、もしくはマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩。
(B10)トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、トリブロモシアヌル酸、ジブロモシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジブロモイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウム等のハロゲン化イソシアヌル酸化合物。
(B11)1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、3−ブロモ−1−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロロ−5−エチル−5−メチルヒダントイン等のハロゲン化ヒダントイン化合物。
(B)成分としては、取り扱い時の安全性および排水処理の観点から、酸素系酸化剤が好ましく、(B2)、(B3)、または(B1)がより好ましい。
【0018】
(アルカリ成分(C))
(C)成分は、特に限定されない。(C)成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、セスキケイ酸ナトリウム等の珪酸塩;リン酸三ナトリウム等のリン酸塩;炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸二カリウム等の炭酸塩;ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;アミン類等が挙げられる。(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(C)成分としては、サポート材の除去性およびコストの観点から、アルカリ金属水酸化物、珪酸塩が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましい。
【0019】
(界面活性剤(D))
(D)成分としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0020】
アニオン性界面活性剤としては、公知のものが挙げられる。具体的には、石鹸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキシド付加物の硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
アルキルは、通常炭素数10〜14の直鎖または分岐のアルキルである。高級アルコールは、通常炭素数8〜24の直鎖または分岐の不飽和または飽和の高級アルコールである。脂肪酸は、通常炭素数6〜22の不飽和または飽和の脂肪酸である。α−オレフィンは、通常炭素数14〜16のα−オレフィンである。アルカンは、通常炭素数14〜18の直鎖または分岐のアルカンである。アルキレンオキシド付加物のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基、スチレンオキシ基が挙げられる。アルキレンオキシドが付加した部分は、1種のアルキレンオキシ基からなるものであってもよく、2種以上のアルキレンオキシ基からなるものであってもよい。2種以上のアルキレンオキシ基からなる場合、アルキレンオキシドの付加形態に制限はない。アルキレンオキシドの付加形態としては、ランダム付加、ブロック付加、ランダム付加とブロック付加との組み合わせ等が挙げられる。アルキレンオキシドの付加数は、1〜20モルである。
【0021】
カチオン性界面活性剤としては、公知のものが挙げられる。具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0022】
ノニオン性界面活性剤としては、公知のものが挙げられる。具体的には、高級アルコールアルキレンオキシド付加物、高級アルコールアルキレンオキシド付加物の脂肪酸エステル化物、アルキルまたはアルケニルフェノールアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アルキレンオキシド付加物、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物の高級脂肪酸エステル化物、脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキシド付加物、ポリオキシプロピレンのアルキレンオキシド付加物のポリアルキレングリコール型、グリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルの多価アルコール型が挙げられる。
高級アルコールは、通常炭素数8〜22の直鎖または分岐の不飽和または飽和の高級アルコールである。アルキルまたはアルケニルフェノールは、通常炭素数6〜22の直鎖または分岐の不飽和または飽和のアルキルまたはアルケニルフェノールである。脂肪酸は、通常炭素数10〜22の不飽和または飽和の脂肪酸である。多価アルコールは、通常炭素数3〜12の多価アルコールである。脂肪族アミンは、通常炭素数8〜22の直鎖または分岐の不飽和又は飽和の脂肪族アミンである。アルキレンオキシド付加物のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基、スチレンオキシ基等が挙げられる。アルキレンオキシドが付加した部分は、1種のアルキレンオキシ基からなるものであってもよく、2種以上のアルキレンオキシ基からなるものであってもよい。2種以上のアルキレンオキシ基からなる場合、アルキレンオキシドの付加形態に制限はない。アルキレンオキシドの付加形態としては、ランダム付加、ブロック付加、ランダム付加とブロック付加との組み合わせ等が挙げられる。アルキレンオキシドの付加数は、通常1〜20モルである。
【0023】
(D)成分としては、すすぎ性、経済性の観点から、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキシド付加物の硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩のアニオン性界面活性剤;高級アルコールアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アルキレンオキシド付加物のノニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0024】
(他の成分)
他の成分としては、アルコール、グリコール類等の可溶化剤;エチレンジアミン四酢酸塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩等のビルダー成分;増粘剤;pH調整剤;防腐剤;防錆剤;顔料;着色剤;香料;蛍光着色剤;酵素;殺菌剤等が挙げられる。
【0025】
(各成分の割合)
(B)成分である酸素系酸化剤の割合は、取扱性の観点から、3Dプリンタ用サポート材除去液100質量%のうち、0.01〜35質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.1〜3.5質量%がさらに好ましい。
(B)成分であるハロゲン系酸化剤の割合は、取扱性の観点から、3Dプリンタ用サポート材除去液100質量%のうち、0.01〜15質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.1〜6質量%がさらに好ましい。
【0026】
3Dプリンタ用サポート材除去液が(C)成分を含む場合、(C)成分の量は、3Dプリンタ用サポート材除去液のPアルカリ度が下記の範囲となるような量が好ましい。
3Dプリンタ用サポート材除去液のPアルカリ度は、サポート材の除去性の観点から、0g/L超65g/L以下が好ましく、4g/L以上26g/L以下がより好ましい。
Pアルカリ度は、以下のようにして求める。
3Dプリンタ用サポート材除去液をビーカーに取り、pH計の電極を入れる。3Dプリンタ用サポート材除去液をマグネチックスターラーで緩やかにかき混ぜながら1モル/Lの塩酸でpH8.3になるまで滴定する。得られた滴定量から下記式(I)によって水酸化ナトリウム量に換算したPアルカリ度が算出される。
Pアルカリ度(g/L:NaOH)=1×A×f/1000×40/B×100 (I)
ただし、1は、塩酸の価数であり、Aは、1モル/L塩酸の滴定量(mL)であり、fは、1モル/L塩酸のファクターであり、40は、NaOHの分子量であり、Bは、3Dプリンタ用サポート材除去液の質量(g)である。
【0027】
3Dプリンタ用サポート材除去液が(D)成分を含む場合、(D)成分の割合は、すすぎ性、経済性、および廃棄の際の環境への影響の観点から、3Dプリンタ用サポート材除去液100質量%のうち、0質量%超20質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0028】
(3Dプリンタ用サポート材除去液の調製)
3Dプリンタ用サポート材除去液を調製する際における各成分の添加順序は、特に限定されない。
3Dプリンタ用サポート材除去液は、(A)成分、(B)成分を含む3Dプリンタ用サポート材除去液の濃厚液を調製し、使用直前に(A)成分で希釈して3Dプリンタ用サポート材除去液としてもよい。3Dプリンタ用サポート材除去液の濃厚液は、(C)成分を含む場合は、安定性の観点から、(B)成分と(C)成分とを分けた2液タイプが好ましい。2液タイプにおいては、(A)成分は、(B)成分および(C)成分のどちらに配合しておいてもよく、(D)成分を含む場合は、(D)成分は、(B)成分および(C)成分のどちらに配合しておいてもよい。
【0029】
(作用効果)
以上説明した本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液にあっては、酸化作用のある(B)成分を含むため、3Dプリンタ用サポート材除去液を用いて立体造形物からサポート材を除去する際に、立体造形物を黄変させにくい。
【0030】
<3Dプリンタ用サポート材除去方法>
本発明の3Dプリンタ用サポート材除去方法は、後述する立体造形物の製造方法において3Dプリンタを用いて製造された、サポート材で支持されたモデル材からなる立体造形物から、本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液を用いて前記サポート材を除去する方法である。
3Dプリンタ用サポート材除去液は、あらかじめ各成分を混合して調製してもよく、使用直前に各成分を混合して調製してもよい。
【0031】
3Dプリンタ用サポート材除去液によるサポート材の除去は、3Dプリンタ用サポート材除去液と、サポート材が付着した立体造形物とを接触させることで行われる。接触方法としては、浸漬法、浸漬揺動法、浸漬撹拌法、浸漬バブリング法、液中噴流法、浸漬超音波洗浄法等が挙げられ、接触時間の短縮および簡便性の観点から、浸漬法、浸漬撹拌法、浸漬超音波洗浄法が好ましい。
【0032】
3Dプリンタ用サポート材除去液の温度は、3Dプリンタ用サポート材除去液の性状、立体造形物への影響、水の蒸発等に応じて適宜設定される。3Dプリンタ用サポート材除去液の温度は、サポート材の除去性の観点から、10〜100℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。
【0033】
3Dプリンタ用サポート材除去液と、サポート材が付着した立体造形物との接触時間は、サポート材の残存量等に応じて適宜設定される。接触時間の短縮を図るため、事前に立体造形物からサポート材の一部を除去しておいてもよい。
サポート材の事前の除去方法としては、機械的な方法または化学的な方法が挙げられる。機械的な方法としては、振動等の機械的負荷を加えることによってサポート材を一部除去する方法;ウォータージェットによってサポート材を一部除去する方法;手指によってサポート材を擦り落とす方法等が挙げられる。化学的な方法としては、有機溶媒を用いてサポート材を溶解させる方法等が挙げられる。
【0034】
3Dプリンタ用サポート材除去液によるサポート材の除去は、数回に分けて行ってもよい。数回に分けて行う場合、各回ごとに3Dプリンタ用サポート材除去液を新しいものに入れ替えて行ってもよい。
【0035】
(作用効果)
以上説明した本発明の3Dプリンタ用サポート材除去方法にあっては、酸化作用のある(B)成分を含む3Dプリンタ用サポート材除去液を用いているため、3Dプリンタ用サポート材除去液を用いて立体造形物からサポート材を除去する際に、立体造形物の黄変が抑えられる。
【0036】
<立体造形物の製造方法>
本発明の立体造形物の製造方法は、下記の工程(a)〜(c)を有する方法である。
工程(a):3Dプリンタを用いてサポート材で支持されたモデル材からなる立体造形物を製造する工程。
工程(b):工程(a)の後、本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液を用いてサポート材を除去する工程。
工程(c):必要に応じて、工程(b)の後、立体造形物をすすぎ液で処理する工程。
【0037】
(モデル材)
モデル材は、3Dプリンタで使用されるモデル材であれば、特に限定されない。
【0038】
モデル材としては、熱溶解積層方式の場合、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含むものが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリレート−スチレン−アクリロニトリル(ASA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、PC/ABSアロイ、ポリ乳酸樹脂、疎水性ポリスルホン樹脂、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
可塑剤としては、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
【0039】
モデル材としては、マテリアルジェッティング方式の場合、光硬化性樹脂と光重合開始剤を含むものが挙げられる。
光硬化性樹脂としては、アクリル系モノマー;エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマー等を含む光硬化性樹脂が挙げられる。
【0040】
アクリル系モノマーとしては、光重合性アクリル系モノマーが挙げられる。光重合性アクリル系モノマーとしては、非官能性アクリル系モノマー、一官能性アクリル系モノマー、多官能性アクリル系モノマーが挙げられる。
非官能性アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
一官能性アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等が挙げられる。
多官能性アクリル系モノマーとしては、ジ(メタ)アクリル酸エチレン、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレン、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸アリル、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジ(メタ)アクリル酸デカエチレングリコール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ジ(メタ)アクリル酸ペンタデカエチレングリコール等が挙げられる。
【0041】
エポキシアクリレート系オリゴマーとしては、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL3708等、サートマー社製のCN2003等が挙げられる。
ウレタンアクリレート系オリゴマーとしては、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL210、EBECRYL230、EBECRYL244、EBECRYL270、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL9270、新中村化学工業社製のU−200PA、UA122P、UA160TM、U108A、日本合成化学工業社製のUV2000B、UV3000B、UV3200B、UV3310B、UV3700B、サートマー社製のCN9006、C9007等が挙げられる。
ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL812、EBECRYL853、EBECRYL884等が挙げられる。
【0042】
光重合開始剤としては、紫外線領域から近赤外領域に感光性を有する公知のラジカル系光重合開始剤、380〜780nmの波長域に感光性を有するラジカル系可視光重合開始剤が挙げられる。
ラジカル系光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等の誘導体のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等の誘導体のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン等の誘導体のアントラキノン類;オキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等の誘導体のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン等の誘導体のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
ラジカル系可視光重合開始剤としては、カンファーキノン、ベンジル、トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、メチルチオキサントン、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム−ジペンタフルオロフェニル等が挙げられる。
【0043】
(サポート材)
サポート材は、熱溶解積層方式やマテリアルジェッティング方式に使用されるサポート材であれば、特に限定されない。
【0044】
サポート材としては、熱溶解積層方式の場合、熱可塑性アクリル系樹脂と、ポリビニルアルコールと、可塑剤とを含むものが挙げられる。
熱可塑性アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、メタクリル酸ポリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマー;(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、スチレン、α−メチレン−γ−バレロラクトン、α−ヒドロキシアクリル酸、ビニルアルコールメチルビニルエーテル、スチレンスルホン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メタクリル酸アダマンチル、エチレン、プロピレン等の他のモノマーとのコポリマーを含む熱可塑性アクリル系樹脂が挙げられる。
可塑剤としては、モデル材に含まれる可塑剤と同様のものが挙げられる。
【0045】
サポート材としては、マテリアルジェッティング方式の場合、光硬化性樹脂と、光重合開始剤と、水溶性粘度調整剤と、湿潤剤とを含むものが挙げられる。
光硬化性樹脂としては、モデル材に含まれる光硬化性樹脂と同様のものが挙げられる。サポート材に含まれる光硬化性樹脂とモデル材に含まれる光硬化性樹脂との違いは、モデル材に比べサポート材に含まれる光硬化性樹脂の重合度が低い点が挙げられる。
光重合開始剤としては、モデル材に含まれる光重合開始剤と同様のものが挙げられる。
水溶性粘度調整剤としては、ポリエチレングリコール、多価アルコール等が挙げられる。
湿潤剤としては、グリセリン(水溶性粘度調整剤として機能してもよい。)等が挙げられる。
【0046】
熱溶解積層方式およびマテリアルジェッティング方式のサポート材は、さらにポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)、カルボキシメチルセルロース、澱粉等の水溶性ポリマー;ポリエーテルエステル;ポリエーテルエステルアミド;疎水性のゴムに親水性基を有するポリアクリル酸等のポリマーをグラフトさせたグラフトポリマー;シリコーンにポリオキサゾリンがグラフトしたグラフトポリマー;イオン性エラストマー等の親水性熱可塑性エラストマー;スチレン−ブタジエン共重合体、熱可塑性エラストマー等の水不溶性ポリマーを含んだものであってもよい。
【0047】
(工程(a))
3Dプリンタを用いて立体造形物を製造する造形方式としては、熱溶解積層方式またはマテリアルジェッティング方式が好ましい。
【0048】
(工程(b))
サポート材の除去は、上述した本発明の3Dプリンタ用サポート材除去方法によって行う。
【0049】
(工程(c))
工程(c)は、すすぎ液と立体造形物とを接触させることで行われる。接触方法としては、浸漬法、浸漬揺動法、浸漬撹拌法、浸漬バブリング法、液中噴流法、浸漬超音波洗浄法等が挙げられ、接触時間の短縮および簡便性の観点から、浸漬法、浸漬撹拌法、浸漬超音波洗浄法が好ましい。
すすぎ液としては、水道水、酸の水溶液、アルカリの水溶液、界面活性剤を配合した水溶液等が好適に用いられる。
【0050】
すすぎ液と立体造形物との接触時間は、3Dプリンタ用サポート材除去液やサポート材の残存量等に応じて適宜設定すればよい。
工程(c)は数回に分けて行ってもよい。数回に分けて行う場合、各回ごとにすすぎ液を新しいものに入れ替えて行ってもよい。
【0051】
(作用効果)
以上説明した本発明の立体造形物の製造方法にあっては、サポート材の除去に、酸化作用のある(B)成分を含む3Dプリンタ用サポート材除去液を用いているため、3Dプリンタ用サポート材除去液を用いて立体造形物からサポート材を除去する際に、立体造形物の黄変が抑えられる。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0053】
<3Dプリンタ用サポート材除去液の原料>
3Dプリンタ用サポート材除去液の原料として下記の成分を準備した。
((A)成分)
・イオン交換水。
((B)成分)
・過酸化水素、
・過炭酸ナトリウム、
・次亜塩素酸ナトリウム。
((C)成分)
・水酸化ナトリウム、
・水酸化カリウム、
・オルトケイ酸ナトリウム、
・ジエタノールアミン、
・トリエタノールアミン。
【0054】
((D)成分)
・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:テイカトックスL−121(テイカ社製、アルキルの炭素数:10〜14)のナトリウム中和塩。
・高級アルコールアルキレンオキシド付加物1:炭素数12〜13の高級アルコール混合物のエチレンオキシド8.5モル、プロピレンオキシド2.5モルランダム付加物。
・高級アルコールアルキレンオキシド付加物2:ステアリルアルコールのエチレンオキシド20モル付加物。
・高級アルコールアルキレンオキシド付加物3:炭素数12〜15の高級アルコール混合物のエチレンオキシド6.8モル付加物
【0055】
<3Dプリンタ用サポート材除去液の調製>
(実施例1〜25、比較例1〜13)
サポート材の除去を行う直前に、表1、表2および表3に示す各成分を表1、表2および表3に示す組成で混合して、3Dプリンタ用サポート材除去液を調製した。
【0056】
<評価方法>
本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液の効果を確認するために、サポート材の除去を行った後、立体造形物の黄変およびサポート材の除去性の評価を行った。結果を表1、表2および表3に示す。
【0057】
(立体造形物の製造)
モデル材としては、UV硬化性アクリル樹脂(ストラタシス・ジャパン社製、Object VeroClear RGD810)を用意した。
サポート材としては、水溶性UV硬化性アクリル樹脂:(ストラタシス・ジャパン社製、Object Support SUP707)を用意した。
マテリアルジェッティング方式の3Dプリンタ(ストラタシス・ジャパン社製、Objet Eden260S)を用い、積層ピッチ:16μmにて、サポート材で支持されたモデル材からなる立体造形物(以下、被洗物とも記す。)を製造した。サポート材で支持された立体造形物(被洗物)の写真を図1に示し、サポート材を除去し、すすぎを行った後の立体造形物の写真を図2に示す。
【0058】
(サポート材の除去)
図3に示すように、2Lのビーカー10に3Dプリンタ用サポート材除去液12を1000mL入れ、ビーカー10の底部の撹拌子14を300rpmで回転させた。ポリプロピレン製の樹脂ネット16に入れた被洗物18を、撹拌子14と接触しないようにビーカー10内の3Dプリンタ用サポート材除去液12に浸漬させ、温度:20℃、時間:4時間の条件で処理した。
【0059】
(すすぎ)
3Dプリンタ用サポート材除去液をすすぎ液に変更した以外は、サポート材の除去と同じ装置を用い、下記の条件で処理した。
すすぎ液:イオン交換水、
温度:20℃、
時間:1分間、
回数:3回(回数ごとにすすぎ液を入れ替えた)。
【0060】
(立体造形物の黄変)
すすぎの後、立体造形物を目視にて確認し、下記基準にて評価した。立体造形物の黄変は、3以上であれば合格と判断した。
3:立体造形物に黄変が確認されなかった。
2:立体造形物にわずかに黄変が確認された。
1:立体造形物に黄変が確認された。
【0061】
(サポート材の除去性)
すすぎの後、立体造形物を目視にて確認し、下記基準にて評価した。サポート材の除去性は、3以上であれば合格と判断した。
4:サポート材がすべて除去された。
3:サポート材のほとんどが除去されたが、立体造形物の表面にわずかにサポート材が残留した。
2:サポート材が除去できず、立体造形物の表面および立体造形物の隙間にサポート材が確認できた。
1:サポート材の多くが除去できず、立体造形物の全体にサポート材が残留した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液を用いてサポート材を除去することによって、立体造形物の黄変を抑えることができる。したがって、本発明の3Dプリンタ用サポート材除去液、3Dプリンタ用サポート材除去方法、および立体造形物の製造方法によれば、モデル材の素材の質感を維持したまま、3D−CADや3D−CGのデータ通りの精度が高い立体造形物を得ることができる。
【符号の説明】
【0066】
10 ビーカー、
12 3Dプリンタ用サポート材除去液、
14 撹拌子、
16 樹脂ネット、
18 被洗物。
図1
図2
図3