【解決手段】ワイヤーパートのオントップ型フォーマとヤンキードライヤーとを備えた抄紙機を用い、原料パルプ及び填料を主原料とした壁紙用裏打ち紙であって、原料パルプ中に、機械パルプが5〜65質量%含有され、原料パルプのフリーネスが400cc以上であり、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤及びサイズ剤を含有し、ヤンキードライヤーへの接触面である乾燥面の平滑度が30〜60秒であり、JAPANTAPPI No.18−2に規定されるインターナルボンドテスタ法により測定した、Z軸方向の層間強度が縦方向及び横方向のいずれにおいても40〜90mJであることを特徴とする、壁紙用裏打ち紙。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂を主素材として用いた壁紙が広く利用されている。合成樹脂を主素材とする壁紙は、壁紙用裏打ち紙と、壁紙用裏打ち紙の表面に設けた被覆樹脂層とから構成される。被覆樹脂層は、例えば、壁紙用裏打ち紙の表面に塩化ビニル樹脂やオレフィン樹脂等からなる合成樹脂層を積層し、この合成樹脂層を加熱して発泡させることにより形成される。
【0003】
壁紙に用いられる壁紙用裏打ち紙に求められる性能としては、リフォーム時等における剥離性(層間剥離のしやすさ)、被覆樹脂層を形成する面の毛羽立ちの少なさ、寸法安定性、隠蔽性、被覆樹脂層となる合成樹脂層の良好な発泡性等がある。
【0004】
壁紙用裏打ち紙の剥離性を向上させる方法として、特許文献1に記載されるように、抄紙工程中のサイズプレスにおいて、澱粉やポリビニルアルコール(PVA)溶解等の互いに異なる塗工液で基紙を被覆することにより、性質の異なる表面層及び裏面層と、塗工液の浸透していない中間層との3層構造を形成し、剥離性をコントロールする方法がある。ただし、特許文献1に記載の方法では、中間層まで塗工液が浸透すると層間強度が高くなる虞がある。
【0005】
合成樹脂層が積層される面に毛羽立ちが存在すると、毛羽立ち箇所において、積層した合成樹脂層が浮き上がってしまい、壁紙の貼合後の外観を損なう場合がある。そこで、壁紙用裏打ち紙には毛羽立ちが少ないことも求められるが、近年、製造の削減のために合成樹脂層が薄膜化される傾向にあり、合成樹脂層を薄膜化した場合、壁紙用裏打ち紙の毛羽立ちの影響が大きくなり、合成樹脂層の浮き上がりが発生しやすい状況となっている。壁紙用裏打ち紙の表面の毛羽立ちを抑制して合成樹脂層の浮き上がりを防止する方法として、特許文献2に記載されるように、木材パルプと融点が50℃以上110℃未満のワックスとを含むスラリーを抄紙する方法がある。ただし、特許文献2に記載の方法では、リフォーム時等における剥離性に問題があり、ワックスを含むことで層間における剥離位置(剥離厚さ)が均一にならず、凹凸が生じやすいという問題がある。
【0006】
壁紙用裏打ち紙の寸法安定性に関しては、例えば壁紙施工時の目開きを防止する方法として、特許文献3に記載されるように、抄紙工程の乾燥部でヤンキードライヤーを用いて乾燥を行うことにより、湿潤引張強度の縦横比率を設定する方法がある。また、特許文献4には、パルプ成分に、塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル共重合体、アクリル、アクリル、オレフィン、ポリエステルなどの合成樹脂繊維を合成樹脂成分として混抄させることで、パルプ成分のみからなる紙と比べて、糊等の影響によりカール性や、水中伸度を良好にする方法が提案されている。しかしながら、サイズ度を特定範囲にコントロールする方法や、合成樹脂繊維を抄紙段階で混抄させる方法によれば、確かに寸法安定性は向上するが、壁紙用裏打ち紙に求められる隠蔽性、合成樹脂層の発泡性、剥離性等の問題を解決できるものではない。また、特許文献4に記載されるような、合成樹脂繊維を抄紙段階で混抄する方法では、壁紙用裏打ち紙の製造コスト増に繋がる。
【0007】
壁紙用裏打ち紙の隠蔽性を高める方法としては、填料の配合を工夫する方法があり、特許文献5では、平均粒径が3μm以下の焼成クレーまたは平均粒径が8μm以下のカオリンを用い、焼成クレー及びカオリンの混合比率を特定の比率とする方法が記載されている。また、特許文献6では、填料として平均粒径が3μm以下のカオリンを紙中に5〜50質量%配合する方法が提案されている。しかしながら、これらは隠蔽性を得る方法としては効果があるものの、壁紙用裏打ち紙に求められる合成樹脂層の発泡性、再剥離性を解決できるものではない。また、填料の配合により、壁紙用裏打ち紙の強度が低下し、施行時に破れ等の問題が発生する可能性がある。
【0008】
壁紙用裏打ち紙の発泡性を向上する方法としては、特許文献7に記載されるように、水酸化アルミニウムの粒子径と無機粉体の含有率とを特定の範囲に設定し、更にマシンカレンダー処理前の難燃紙の密度を特定の範囲とし、壁紙用裏打ち紙の熱伝導率を特定の範囲(0.35〜0.4W/(m・K))とする方法が提案されている。しかしながら、特許文献7に記載の方法では、壁紙用裏打ち紙に水酸化アルミニウムを75〜85質量%含有させる必要があるため、一般的な抄紙機では断紙トラブル、ピッチ・粕トラブル等が発生し、操業性が大きく悪化する。また、壁紙用裏打ち紙中に無機粒子を多量に含有させることから、隠蔽性や寸法安定性には優れるものの、壁紙用裏打ち紙としては必要な剛性や強度、層間強度を得ることは困難であり、施工性やリフォーム時の剥離性が十分でなく、一般的な壁紙用裏打ち紙としては使用できるものではない。すなわち、特許文献7に記載される技術は、難燃紙という特殊な裏打ち紙にのみ適用できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る壁紙用裏打ち紙は、被覆樹脂層(合成樹脂層)を有する壁紙の裏打ち材として用いられるものであり、機械パルプを含むパルプと填料を主原料とし、更に、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤及びサイズ剤を含む原料を用いて製造したものである。尚、本発明において、「主原料とする」とは、原料全量の50質量%以上を構成することをいう。また、以下で記載する各材料の配合量は、特に規定がなければ絶乾パルプに対する割合のことをさす。
【0015】
<原料パルプ>
本発明に係る壁紙用裏打ち紙は、原料パルプとして、機械パルプを含有するものを使用する。機械パルプとしては、GP(グランドウッドパルプ)、PGW(プレッシャライズグランドウッドパルプ)、TMP(サーモメカニカールパルプ)などを使用できる。これらの機械パルプは、壁紙用裏打ち紙の用途によっては、漂白の施されていない未漂白パルプでも良いし、漂白処理がなされたBCTMP(ブリーチドケミ−サーモメカニカールパルプ)等も好適に使用することができる。原料パルプ中の残留異物が少ないという観点から、漂白処理がなされているBCTMPを使用することが好ましい。
【0016】
機械パルプの配合量は、壁紙用裏打ち紙に求められる隠蔽性を得るために、全パルプ(原料パルプ)の質量100質量部のうち、5〜65質量%の割合で含有させる。尚、この割合は、JIS−P8120(1998)に規定される「紙、板紙及びパルプ−繊維組成試験方法」に準じ、C染色法による呈色表に基づいた測定されるものである。この範囲内でも、リフォーム時等における壁紙用裏打ち紙の剥離性を向上させ、塗工した樹脂にブリスターが発生することを防止するため、機械パルプの配合割合を全パルプの20〜50質量%とすることが好ましく、25〜40質量%とすることがより好ましい。
【0017】
機械パルプの配合割合が全パルプの5質量%未満の場合、壁紙用裏打ち紙の不透明性が低下して壁材(下地)が透けてしまうという問題や、壁紙用裏打ち紙の層間強度が高くなり過ぎ、剥離時に樹脂層や壁材として用いられる石膏ボードの表層紙を毀損してしまうという問題が生じる。一般的な印刷用紙や板紙等においては、層間強度が高いことが要求されるのに対し、本発明に係る壁紙用裏打ち紙においては、層間強度が高過ぎると、リフォームなどで壁紙を剥離する際に強い力を必要とし剥離の作業効率が低下するため、剥離時に裏打ち紙の層間で容易に剥れるように層間強度を所定の範囲に調整する必要がある。壁紙用裏打ち紙において層間強度が高過ぎる場合には、リフォームなどで壁紙を剥離する際に強い力を要するばかりでなく、裏打ち紙が部分的は壁側に残り、壁面に残った裏打ち紙の一部によって壁面に凹凸が生じたり、表層の合成樹脂層のみが剥離したりするため、次に貼合する壁紙を綺麗に貼ることができなくなる。一方、機械パルプの配合割合が全パルプの65質量%を超えると、壁紙用裏打ち紙の層間強度が低くなり過ぎ、不本意な剥離を生じる虞がある。また、層間強度を調整するために、紙力増強剤を過剰に添加するなど、強度補助剤の添加が必要となり、コストアップとなるだけでなく、機械パルプに含まれる樹脂分(リグニン)によって系内の汚れを生じ易く、操業性の低下を招くこととなる。また、機械パルプの配合割合が全パルプの65質量%を超える場合、引張強度の低下を招く虞がある。建物の吹き抜け部分などに壁紙を貼る場合には天井方向に長さ4〜5mの壁紙を用いることとなるが、引張強度が不足すると、わずかな外力と壁紙の自重により壁紙が破れる虞がある。
【0018】
また、機械パルプ以外のパルプとしては、クラフトパルプ、セミケミカールパルプなどを使用できる。
【0019】
パルプを得る原料としては、針葉樹や広葉樹などの木材原料のほか、じん皮、麻、ケナフなどの非木材原料も用いることができる。また、機械パルプを含む、または、機械パルプを含まない古紙由来の再生パルプを使用することもできる。
【0020】
機械パルプ及びこれ以外のパルプを含む原料パルプのフリーネスは400cc以上とすることが好ましい。原料パルプのフリーネスが400cc未満の場合、紙厚が薄くなり過ぎるため、隠蔽性が劣り、また層間強度が強くなるため、剥離性が悪化する。
【0021】
また、JIS−P8220に準処して離解された壁紙用裏打ち紙の離解パルプの数平均繊維長を0.8〜2.0mmとする、抄紙機ワイヤーパートでの初期脱水を増やす、針葉樹パルプを増やす等の方法により、繊維間の歪を低減でき高い寸法安定性を得ることができる。
【0022】
<乾燥紙力増強剤>
本発明の壁紙用裏打ち紙に好適に用いられる乾燥紙力増強剤は、アクリルアミド系の乾燥紙力増強剤である。アクリルアミド系の乾燥紙力増強剤としては、例えばアクリルアミドとアミノメチルアクリルアミド共重合体の塩又は第4級アンモニウム塩、アクリルアミドと第4級アンモニウム塩基含有アルキル(メタ)アクリレート共重合体、アクリルアミドとアクリル酸ソーダ共重合体等で分子量が50万〜150万程度のポリアクリルアミド系の乾燥紙力増強剤等が例示できる。
【0023】
尚、乾燥紙力増強剤としては、上記アクリルアミド系の乾燥紙力増強剤の外に生澱粉、加工澱粉、植物性ガム、半合成高分子又は合成高分子等も適宜併用できるが、耐熱性の点でポリアクリルアミド系の乾燥紙力増強剤が特に優れる。
【0024】
乾燥紙力増強剤の添加量は絶乾パルプ100質量部に対して0.2〜1.5質量%とすることが好ましい。乾燥紙力増強剤の添加量が絶乾パルプの0.2質量%未満の場合、壁紙用裏打ち紙に必要な強度を得ることが難しくなる。一方、乾燥紙力増強剤の添加量が絶乾パルプの1.5質量%を越える場合、乾燥紙力増強剤の作用が飽和するため、製造コストの面で望ましくない。
【0025】
アクリルアミド系紙力増強剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、及び両性ポリアクリルアミドのいずれも好適に用いることができる。ポリアクリルアミドの25℃における10%水溶液の粘度が3,000mPa・s以上20,000mPa・s以下であることが好ましい。この粘度が3,000mPa・s未満の場合、ポリアクリルアミドによる微細繊維の凝集効果が不十分となり、抄紙工程において、ろ水性と歩留まりとが低下する。また、この粘度が20,000mPa・sを超える場合、微細繊維の凝集効果が大きくなり過ぎ、紙表面の均一性を低下させる。尚、このポリアクリルアミドの10質量%水溶液の粘度は、25℃においてB型粘度計(ロータNo.4、30rpm)で測定した値である。
【0026】
ポリアクリルアミドのうちアニオン性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドと、アクリル酸やメタクリル酸等のアニオン性モノマーとの共重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物等が挙げられる。カチオン性ポリアクリルアミドとしては、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、ホフマン分解物、アクリルアミドとカチオン性モノマーの共重合物等が挙げられる。カチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド、メタアクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタアクロイルオキシエチルアンモニウムメチルクロライド、メタアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。両性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドと上記のアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの共重合物、アクリルアミドと上記のアニオン性モノマーとの共重合物のマンニッヒ変性物、ホフマン分解物等が挙げられる。これらの中でも、カチオン性ポリアクリルアミド及び両性ポリアクリルアミドが、しなやかな手触り感の向上及び強度低下抑制の観点などから好ましい。
【0027】
本発明者らの知見では、特に両性ポリアクリルアミドが好ましい。両性ポリアクリルアミドは、自己定着機能を有しているため、紙間強度を向上させるべく増添したとしても、カチオン過多になることがなく、抄紙系内の電荷を安定的に維持することができる。したがって、単にカチオン性アクリルアミドやアニオン性アクリルアミドを添加するのみでは実現できない程度まで表面強度や印刷適性を向上させることができる。
【0028】
<湿潤紙力増強剤>
本願発明の壁紙用裏打ち紙に好適に用いられる湿潤紙力増強剤としては、例えば、ポリアミドエポキシ樹脂、アクリル酸エステル、ジアルデヒド澱粉、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドエピクロールピロリン樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン系樹脂、シリコン樹脂からなる群から選択された1種又は複数の樹脂を使用することができる。
【0029】
湿潤紙力増強剤の使用量については、特に限定はないが、絶乾パルプ100質量部に対して0.3〜1.5質量%の範囲とすることが好ましい。湿潤紙力増強剤の使用量が壁紙用裏打ち紙100質量部の0.3質量%未満の場合、壁紙用裏打ち紙に十分な耐水性を付与することはできず、壁紙用裏打ち紙に糊を塗布した後の目開きが大きく寸法安定性が悪化し、また、糊を塗布した後の施工性が低下する。一方、湿潤紙力増強剤の使用量が壁紙用裏打ち紙の1.5質量%を超えると、得られる壁紙用裏打ち紙が硬くなり、湿潤紙力増強剤の使用量に応じた耐水性が得られなくなる。
【0030】
また、乾燥紙力増強剤と湿潤紙力増強剤の配合比は、乾燥紙力増強剤:湿潤紙力増強剤=1:4〜4:1であることが好ましい。乾燥紙力増強剤の割合がこの範囲を超えて多くなると地合いの調整が困難であり、抄紙機系内の汚れが生じる問題が生じる。逆に、湿潤紙力増強剤がこの範囲を超えて多くなると、損紙の再利用が困難になるだけでなく、製造時にヤンキードライヤーの表面に貼りつきやすくなったり、壁紙の剥離時に壁材として使用される石膏ボードを毀損したりするという問題が生じる。
【0031】
<内添サイズ剤>
上記原紙には、内添サイズ剤がさらに含有される。内添サイズ剤が含有されていることで、壁紙施工時の糊付与時において糊の裏打ち紙への浸透を制御でき、十分な接着力が得られるとともに、裏打ち紙のカールを抑制することができる。内添サイズ剤は、特に限定されないが、例えば、ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤、アルキル無水コハク酸(ASA)系サイズ剤を例示することができる。これらの中でも、ロジン系サイズ剤が一般的である絶乾パルプ100質量部に対しての添加量としては、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。また、この内添サイズ剤の含有量としては、5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましい。内添サイズ剤の含有量を上記範囲とすることで、壁紙の施工に必要な接着力とカール制御が可能となる。
【0032】
<填料>
本願発明の壁紙用裏打ち紙は、良好な樹脂の発泡性、強度、壁紙剥離性、寸法安定性、隠蔽性を得るために、JIS−P8251に準じて測定した灰分が5〜18質量%となるように填料を含有させることがより好ましい。灰分が5質量%未満であると、得られる壁紙用裏打ち紙の熱伝導率を所定の範囲に調整することが難しくなり、壁紙へ加工する際に樹脂の発泡不良を招きやすくなる。また、隠蔽性に劣る他、層間強度が高くなりやすく、リフォーム時等の剥離作業の効率低下を招く。さらには、壁紙用裏打ち紙に必要な寸法安定性を得ることが難しくなる。
【0033】
灰分率が5〜18質量%となるように填料を含有させ、ヤンキードライヤーを用いて用紙を乾燥させることにより、JAPAN TAPPI No27−28A法で規定される紙の横方向(抄紙機幅方向)の水中伸度を1.00〜1.50%とすることができ、壁紙を壁に貼合した後の目開きを防止することができる。更には、水中伸度を1.00〜1.30%とすることが好ましい。隠蔽性及び水中伸度を両立する観点から、灰分率は8〜15質量%がより好ましく、9〜12質量%がさらに好ましい。ここでの灰分率は、JIS P8251:2003(525℃)で測定した数値である。また、JIS−P8220に準処して離解された壁紙用裏打ち紙の離解パルプの数平均繊維長を0.8〜2.0mmとする、抄紙機ワイヤーパートでの初期脱水を増やす、針葉樹パルプを増やす等の方法により、高い寸法安定性を得ることができる。なお、紙の横方向の水中伸度が1.5%を超えると、壁紙施工後に目開き等のトラブルが生じるだけでなく、施工時にもカール等の不具合が発生し、作業性の低下を招くという問題を生じる。
【0034】
含有させる填料としては、焼成クレーを主体に、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、ホワイトカーボンなどの公知の無機粒子を使用することができる。この中でも、焼成クレーを用いると、多孔質な無機粒子であるため、樹脂の定着が向上して良好な樹脂発泡性が得られるためより好ましい。コールターカウンター法により測定した填料の平均粒子径は、15μm以下であることが好ましい。填料の平均粒子径が15μmを超えると、不透明性が下がり、所望の隠蔽性を得にくくなる。また、本願で規定する効果を阻害しない限り、前記の填料を1種又は2種以上を併用してすることが可能である。
【0035】
<嵩高剤>
本発明の壁紙用裏打ち紙においては、嵩高剤を含有させても良い。嵩高剤として、例えば、油脂系非イオン界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活性剤、糖系非イオン界面活性剤、多価アルコール型非イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高級アルコール、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、高級アルコールまたは高級脂肪酸のポリオキシアルキレン化合物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物のポリオキシアルキレン付加物、脂肪酸ポリアミドアミン等を使用できる。これらの嵩高剤は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。特に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又は非イオン性界面活性剤を使用することで、原紙の水吸収性が上がり、結果として壁紙用糊剤との相性がよく適度に原紙内に浸透するとともに、壁紙用合成樹脂との貼合性に優れ、且つ再剥離性を向上させることができる。
【0036】
本発明で用紙に含有させる嵩高剤の添加率は原料パルプの絶乾重量に対し、固形分で0.2〜1.0質量%とすることが好ましい。用紙の比容と耐刷力のバランスを保ちやすいという観点から、0.2〜0.7質量%とすることがより好ましい。0.2質量%未満では所望する効果が得られないおそれがある。1.0固形分質量%を超えると耐刷力をはじめとする用紙強度が低下しやすく、また抄紙工程の汚れが発生し実質的に用紙を製造することが困難となる場合がある。
【0037】
また、これら嵩高剤は、パルプ繊維への定着性が比較的乏しいため、その定着率を向上させるために、カチオン性物質を混合して紙料中に添加することが好ましい。特にポリオキシアルキレンアルキルエーテル及び非イオン性界面活性剤は定着性に乏しいためカチオン性物質を混合して紙料中に添加することが望ましい。カチオン性物質としては、カチオン澱粉、硫酸バンド、カチオン性歩留り剤、アルキル4級アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤、等が好ましい。嵩高剤はその種類によってパルプ繊維への定着性が異なり、カチオン性物質を紙料中に混合しない場合のパルプ繊維への定着率は、例えば脂肪酸アミド系の嵩高剤であれば60%程度となることがある。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及び非イオン性界面活性剤であれば30%程度となることがある。パルプ繊維への定着性の高い嵩高剤を用いれば用紙の比容を高めやすいということはないが、個々の嵩高剤の定着率を高めることで、パルプに対する嵩高剤の添加量が比較的少量であっても、嵩高効果が得られやすくなる。
【0038】
<その他の製紙用材料等>
上記原紙には、本発明の効果を損なわない範囲でその他の製紙用材料が添加されていてもよい。その他の製紙用材料としては、例えば、ポリアクリルアミド系紙力増強剤以外の内添紙力増強剤、歩留り向上剤(凝結剤、凝集剤)等、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤が挙げられる。内添紙力増強剤としては、例えばカチオン化澱粉等の天然高分子系紙力剤等が挙げられる。歩留り向上剤としては、例えば硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、アニオン性ポリアクリルアミド、澱粉、カルボキシメチルセルロース、コロイダルシリカ等が挙げられる。
【0039】
本発明に係る壁紙用裏打ち紙は、原料パルプ、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ材及び填料と、必要に応じて配合される嵩高剤等の他の製紙用材料とを含有する原料を、オントップ型フォーマ及びヤンキードライヤーを備えた抄紙機を用いて抄紙することによって得られる。ワイヤーパートにオントップ型フォーマを用いることにより、抄紙された紙基材の中心に均一な剥離層が形成されやすくなり、壁紙用裏打ち紙として必要な剥離性(層間剥離性)が得られる。また、ヤンキードライヤーを用いて乾燥工程を行う場合、一般の多筒式ドライヤーによる乾燥とは異なり、湿紙を金属ドラム表面に貼り付けて乾燥させるため、湿紙に対しテンションをさほど掛けることなく乾燥処理を行うことができ、乾燥時に紙の収縮を少なくすることができる。したがって、ヤンキードライヤーを用いることにより、壁材への貼合時に水系の糊を塗布した場合でも紙の伸びが少なく、寸法安定性に優れた壁紙用裏打ち紙を得ることができる。また、ヤンキードライヤーで乾燥を行った場合、ドライヤーへの貼り付け面が艶面となるため、表面の毛羽立ちが抑制される。したがって、得られた紙の艶面に被覆樹脂層を設けることにより、被覆樹脂層の浮き上がりを抑制することができる。尚、ヤンキードライヤーに加えて、補助的に、通常の多筒式ドライヤー等を併用することも可能である。
【0040】
本発明の壁紙用裏打ち紙においては、JAPAN TAPPI No.18−2に規定されるインターナルボンドテスタ法により測定した、Z軸方向の層間強度が、縦方向(抄紙機流れ方向)及び横方向(抄紙機幅方向)のいずれにおいても、40〜90mJの範囲が好適であり、より好ましくは50〜80mJである。層間強度が40mJ未満の場合、リフォーム時等の剥離作業は容易となるが、壁紙貼合作業時等に意図しない外力が加わると層間剥離が生じるおそれがあり、壁紙としての所望の強度が得にくくなる。層間強度が90mJを超える場合、リフォーム時等に壁紙を剥がす際に強い力を要し、剥離の作業性が低下する。また、壁紙を剥がした際に、裏打ち紙が均一に層間剥離しなかったり、被覆樹脂層のみが剥離したりして、壁面に凹凸が生じ、次に貼合する壁紙を綺麗に貼ることができなくなる。
【0041】
また、本発明の壁紙用裏打ち紙は、ヤンキードライヤーの金属ドラム表面に接していた面(艶面)のJIS−P8119に準じた平滑度が20〜60秒であり、ヤンキードライヤーの金属ドラム表面に接していなかった面(非艶面)のJIS−P8119に準じた平滑度が5〜20秒である。ヤンキードライヤーの金属ドラム表面に接していた面(艶面)の平滑度を30〜60秒、ヤンキードライヤーの金属ドラム表面に接触していなかった面(非艶面)平滑度を11〜15秒とすることが好ましい。ヤンキードライヤーの金属ドラム表面に接していた面(艶面)の平滑度が20秒未満の場合、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂等の樹脂塗工時に塗工面の平坦性が損なわれ、塗工後の見栄えが低下するとともに、紙面の繊維に毛羽立ちが生じて樹脂塗工後における被覆樹脂層の浮き上がりも発生する。また、ヤンキードライヤーの金属ドラム表面に接していた面(艶面)の平滑度が60秒以上の場合、被覆樹脂層と裏打ち紙との密着性が不足するため、施工時に樹脂層が剥がれ易くなる虞がある。また、ヤンキードライヤーの金属ドラム表面に接していなかった面(非艶面)の平滑度が5秒未満の場合、壁紙貼付施工時の糊量が不均一になりやすく、不用意な剥がれや、施工後に壁紙表面にうねりや凹凸が生じる可能性があるため好ましくない。
【0042】
乾燥工程において、ヤンキードライヤーに紙を押圧する部材としては、樹脂ロールを用いることが好ましい。樹脂ロールを用いることで、紙に過度の圧力をかけることなく、表面の平坦性を確保することができる。壁紙用裏打ち紙の表裏面を所望の平滑度に調整するために、好適に使用できる樹脂ロールは、JIS K 6253に準拠した「デュロメータ硬さ」において、90度から95度のゴム硬さを有するものが、ヤンキードライヤーに対し、過度の線圧を付与することなく面で押圧可能であり平坦性確保のため好適である。ゴム硬度が95度より高い場合や金属ロールを用いた場合は、面でなく線による加圧になり、密度が過度に高くなる傾向が生じるため好ましくない。また、90度を下回る場合は、非艶面の平坦性への寄与が低いだけでなく、艶面への押圧力が分散されるため艶の発現性も低くなるため、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂等の合成樹脂による被覆性が低下する。
【0043】
本発明の壁紙用裏打ち紙の坪量は、40〜150g/m
2であることが好ましい。坪量が40g/m
2未満であると、壁紙として必要な剛性、強度、隠蔽性などを得ることが難しくなる。一方、坪量が150g/m
2を超えると、剛性、強度、隠蔽性には優れるものの、壁紙の重量が大きくなり、壁や天井に壁紙を貼合する際の作業性が低下する。また、坪量が150g/m
2を超えると、剛性が高くなり過ぎるため、部屋のコーナー部分などに壁紙を貼る際の貼合適性が低下する。ここでの坪量は、JIS P8124(2011)により、測定した数値である。
【0044】
本発明の壁紙用裏打ち紙の紙厚は、65〜260μmであることが好ましい。紙厚65μm未満であると、壁紙として必要な剛性、隠蔽性などを得ることが難しくなる。一方、紙厚が260μmを超えると、剛性、隠蔽性には優れるものの、壁紙の厚みが大きくなり、壁や天井に壁紙を貼合する際の作業性が低下し、坪量との相関性がみられた。ここでの紙厚は、JIS P8118(2014)により、測定した数値である。
【0045】
本願発明の壁紙用裏打ち紙においては、JAPAN TAPPI No27−28A法に準じて測定した水中伸度(横方向(抄紙機幅方向))が1.00〜1.50%であることが好ましい。水中伸度(横方向)が1.50%を超えると、壁紙施工後に目開き等のトラブルが生じて外観を損なうだけでなく、施工時にもカール等の不具合が発生し、作業性の低下を招くという問題を生じる。
【0046】
本発明の壁紙用裏打ち紙においては、熱伝導率が0.2〜0.5W/(m・K)であることが好ましく、0.3〜0.5W/(m・K)であることがより好ましい。壁紙用裏打ち紙の熱伝導率を0.2〜0.5W/(m・K)とするためには、例えば、無機粒子を填料として、使用することができる。前記の場合、比熱が1.2J/g/deg以下の無機粒子を填料として使用することが好ましく、1.1J/g/deg以下の無機粒子を填料として使用することがより好ましい。使用する填料の比熱が1.2J/g/degより高いと、壁紙用裏打ち紙の熱伝導率を0.2〜0.5W/(m・K)とすることが難しくなり、樹脂を発泡乾燥させるための熱の伝達が裏打ち紙により阻害され、樹脂の温度が上昇しにくくなるため、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂等の合成樹脂の良好な発泡性を得ることができなくなる。
【0047】
以上説明したように、本発明に係る壁紙用裏打ち紙は、5〜65質量%の機械パルプを含有する原料パルプ、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤及びサイズ剤を含む原料を用い、オントップ型フォーマ及びヤンキードライヤーを備えた抄紙機で抄紙し、ヤンキードライヤーへの接触面である艶面の平滑度が30〜60秒であり、JAPAN TAPPI No.18−2に規定されるインターナルボンドテスタ法により測定した、Z軸方向の層間強度が縦方向及び横方向のいずれにおいても40〜90mJである。ワイヤーパートのオントップ型フォーマと、ヤンキードライヤーとを組み合わせて用いることにより、得られた壁紙用剥離紙において、壁紙を剥離する際の剥離性(層間剥離性)を向上させることができると共に、片面に艶面が形成されることにより毛羽立ちを抑制することができる。また、ヤンキードライヤーを用いて乾燥工程を行うことによって、湿紙に対しテンションをさほど掛ける必要がなくなるため、乾燥時における紙の収縮が抑制され、寸法安定性も向上する。更に、本発明に係る壁紙用裏打ち紙においては、湿潤紙力増強剤と乾燥紙力増強剤とを含有することにより、被覆樹脂層となる合成樹脂の塗工時(すなわち、壁紙用裏打ち紙の乾燥時)や、壁材への壁紙貼付施工時(すなわち、壁紙用裏打ち紙の湿潤時)のいずれにおいても、好適な紙質強度を維持することができ、湿潤紙力増強剤と乾燥紙力増強剤とにより繊維間の接合により寸法安定性も兼ね備えることができる。また、本発明の壁紙用裏打ち紙は、機械パルプ及び填料を含有していることによって、壁紙用裏打ち紙に求められる隠蔽性を有し、填料を含有していることによって被覆樹脂層を発泡させる際の発泡性にも優れる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0049】
壁紙用裏打ち紙の原料パルプとして、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と、漂白機械パルプ(BCTMP)とを配合した。このとき、機械パルプの配合割合を表1に示す値とし、表1に示す離解フリーネスの値となるように、他のパルプの配合割合を適宜調整した。次に、原料パルプに、填料(表1に記載の材料)、サイズ剤(ロジン系サイズ剤、商品名:ハーサイズNES−405、ハリマ化成グループ株式会社製)、乾燥紙力増強剤(ポリアクリルアマイド、商品名:DS−4360、星光PMC株式会社製)及び湿潤紙力増強剤(エピクロロヒドリン、商品名:WS4024、星光PMC株式会社製)を、それぞれ原料パルプの絶乾重量に対して表1に記載の配合割合となるように添加した。また、硫酸バンドを、原料スラリーの絶乾重量の1.5質量%となるように配合した。次に、原料スラリーを抄紙し、表1に記載の紙厚を有する壁紙用裏打ち紙を得た。尚、実施例1〜14及び比較例3〜4において、ワイヤーパートが長網ワイヤーとオントップ型フォーマの組み合わせで、乾燥工程にヤンキードライヤーを備えた抄紙機を用いて抄紙した。比較例1においては、ワイヤーパートがオントップ型フォーマであるが、乾燥工程に多筒式ドライヤーを備えた長網抄紙機を用いて抄紙した。比較例2においては、オントップ型フォーマを備えない長網ワイヤーと乾燥工程にヤンキードライヤーを備えた抄紙機を用いて抄紙した。
【0050】
【表1】
【0051】
填料種類:焼成クレー(カオリン、商品名:KAOCAL、白石カルシウム株式会社製)
:軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP-121(タマパールは登録商
標)、奥多摩工業株式会社製)
:タルク(商品名:タルクN70、日本タルク株式会社製)
【0052】
各実施例及び各比較例に係る壁紙用裏打ち紙について、平滑度、層間強度及び水中伸度を測定した。
【0053】
<試験方法>
・「坪量(g/m
2)」は、JIS P8124(2011)に規定する、「紙及び板紙−坪量の測定方法」に従って測定した。
・紙厚(μm)は、JIS P8118(2014)に規定する、「紙及び板紙−厚さ、密度及び比容積の試験方法」に従って測定した。
・「灰分率(%)」は、JIS P8251(2003)に規定する、「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法」に従って測定した。(525℃燃焼法)
・「平滑度(秒)」は、JIS−P8119(1998)に規定する「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度」に従って測定した。
・「層間強度(mJ)」は、JAPAN TAPPI No.18−2に規定されるインターナルボンドテスタ法により測定した。
・「水中伸度(横)」は、JAPAN TAPPI No27−28Aに規定される方法に従って測定した。
【0054】
また、各実施例及び各比較例に係る壁紙用裏打ち紙について、剥離性、毛羽立ち、施工性、壁紙目開き(寸法安定性)、樹脂発泡性及び隠蔽性を以下の評価方法に従って評価した。
【0055】
<評価方法>
・「剥離性」
壁紙用裏打ち紙の一方面(艶面)に塩化ビニルペーストを塗布した試作ビニル壁紙を用意し、裏打ち紙の他方面(非艶面)に澱粉糊を塗布した後、ベニヤ板に貼り付け、3日間、23℃、50%R/Hの条件で静置した。静置後、壁紙をベニヤ板から剥がした際の層間剥離性を、ベニヤ板に残った壁紙用裏打ち紙の残り方の目視観察により評価した。評価基準は次の通りである。
◎:ベニヤ板に残った壁紙用裏打ち紙の厚みがほぼ一定であり、裏打ち紙が均一に層間剥離した。
○:ベニヤ板に残った壁紙用裏打ち紙の厚みが僅かに増減するものの、裏打ち紙が概ね均一に層間剥離した。
△:ベニヤ板に残った壁紙用裏打ち紙の厚みがやや増減するものの、裏打ち紙が実用上問題ない程度に均一に層間剥離した。
×:壁紙用裏打ち紙が均一に層間剥離せず、裏打ち紙の一部がベニヤ板側に残った。
【0056】
・「毛羽立ち」
壁紙用裏打ち紙を23℃、50RH%の環境下で24時間調湿した後、32cm(MD方向)×20cm(CD方向)の大きさに断裁した。このとき、紙面を擦らないように注意して裁断を行った。次に、ガラス板上に、坪量150g/m
2の上質紙を2枚敷き、クリップにてガラス板に固定した。次に、幅250mm×長さ130mm×厚さ15mmの金属直方体(重さ約400g)にガーゼを4重に巻きつけ、上質紙の表面を2回擦ってガーゼの面をならした。
【0057】
別の上質紙表面に、塩化ビニル塗工面となる艶面が上になるように、壁紙用裏打ち紙のサンプルをのせ、ガーゼを巻きつけた金属直方体にて、自重により、MD方向の上から下に向かって1回擦った。壁紙用裏打ち紙の上下方向の向きを変え、同様に上から下に向かって1回擦った。
【0058】
次に、壁紙用裏打ち紙の擦った領域に、塗工厚が200μmとなるアプリケータを用い、塩化ビニルペーストを塗工した後、145℃の乾燥機中に1分間入れ、塩化ビニルペーストをゲル化させた。ゲル化した塩化ビニル層表面の中央部に、15cm×20cmの大きさの窓部を設けた型紙を載置し、窓部によって15cm(CD方向)×20cm(MD方向)の区画を形成した。窓部によって形成された区画内に発生した突起物(欠陥)の数を目視により計測した。同様にして作製したサンプル3枚の計測値を合計して、1サンプル当りの突起物の数(900cm
2当りの個数)の評価値とした。この評価値の評価基準は次の通りである。
◎:計測した突起物の数が10個以下であり、毛羽立ちがない。
○:計測した突起物の数が11〜20個であり、毛羽立ちがほぼない。
△:計測した突起物の数が21〜30個であり、毛羽立ちがややある。
×:計測した突起物の数が31個以上であり、毛羽立ちが多い。
【0059】
・「施工性」
壁紙用裏打ち紙の一方面(艶面)に塩化ビニルペーストをテーブルブレードコーターにより100μmの厚さに塗布し、160℃で予備乾燥を行った後、230℃の加熱炉にて発泡させ、試作ビニル壁紙を得た。得られた試作ビニル壁紙の裏打ち紙の他方面に澱粉糊を塗布した後、ベニヤ板に貼り付け、貼り付け作業のしやすさを官能評価した。評価基準は次の通りである。
◎:手肉感が十分にあり、極めて施行しやすい。
○:手肉感があり、施行しやすい。
△:手肉感がやや弱いが、施工上問題ない程度である。
×:手肉感が悪く、施工しにくい。
【0060】
・「樹脂発泡性」
壁紙用裏打ち紙の一方面(艶面)に塩化ビニルペーストをテーブルブレードコーターにより100μmの厚さに塗布し、160℃で予備乾燥を行った後、230℃の加熱炉にて発泡させ、試作ビニル壁紙を得た。得られた試作ビニル壁紙の被覆樹脂層の発泡性を目視観察により評価した。評価基準は次の通りである。
◎:発泡性が非常に良好である。
○:発泡性が良好である。
△:発泡性がやや悪いが、問題ない程度である。
×:発泡性が悪く、壁紙用裏打ち紙として使用できない。
【0061】
・「壁紙目開き」
壁紙用裏打ち紙の一方面(艶面)に塩化ビニルペーストをテーブルブレードコーターにより100μmの厚さに塗布し、160℃で予備乾燥を行った後、230℃の加熱炉にて発泡させ、試作ビニル壁紙を得た。得られた試作ビニル壁紙の裏打ち紙の他方面に澱粉糊を塗布した後、ベニヤ板に貼り付け、貼り付け後の目開きの有無を目視にて観察した。評価基準は次の通りである。
◎:目開きがなく、寸法安定性が非常に良好である。
○:目開きが僅かにあるが、寸法安定性が良好である。
△:目開きがややあるが、実用上問題ない程度である。
×:目開きが顕著に生じ、壁紙が延びてしまい、寸法安定性が悪い。
【0062】
・「隠蔽性」
壁紙用裏打ち紙の一方面(艶面)に塩化ビニルペーストを塗布した試作ビニル壁紙を用意し、裏打ち紙の他方面(非艶面)に澱粉糊を塗布し、ベニヤ板に貼り付け、3日間、23℃、50%R/Hの条件で静置した。静置後、壁紙の隠蔽性を目視評価した。評価基準は次の通りである。
◎:ベニヤ板が視認できず、隠蔽性に優れる。
○:ベニヤ板がほぼ視認できず、隠蔽性が良好である。
△:ベニヤ板の箇所によっては僅かに視認できるが、実用上問題ない程度である。
×:ベニヤ板が視認でき、隠蔽性が低く商品価値を損なう。
【0063】
表2に、各実施例及び各比較例に係る壁紙用裏打ち紙の測定結果及び評価結果を示す。
【0064】
【表2】
【0065】
本願発明の壁紙用裏打ち紙は、ワイヤーパートがオントップ型フォーマであるヤンキードライヤーを備えた抄紙機を用い、原料としてパルプと填料を主原料とした壁紙用裏打ち紙であって、パルプ中には機械パルプが5〜65質量%含有され、原料パルプのフリーネスが400cc以上であり、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤を含有し、ヤンキードライヤー乾燥面の平滑度が30〜60秒であり、Z軸方向の層間強度(インターナルボンド)が縦、横ともに40〜90mJであるものである。これらの特徴を全て充足する実施例1〜14の壁紙用裏打ち紙は、(層間)剥離性、樹脂発泡性、施工性、壁紙目開き、隠蔽性いずれにおいても○以上の優れた評価結果が得られた。
【0066】
これに対して、比較例1に係る壁紙用裏打ち紙は、ワイヤーパートにオントップ型フォーマ型フォーマを備える長網抄紙機で抄紙したため、実施例と同様に、剥離性は良好であったが、乾燥工程で多筒式ドライヤーを用いているため、表面の毛羽立ちと壁紙貼合時の目開きを抑制できなかった。
【0067】
比較例2に係る壁紙用裏打ち紙は、オントップ型フォーマを用いていないために、壁紙用裏打ち紙の内部に剥離層が十分に形成されず、層間強度が強くなり過ぎ、剥離性が悪かった。
【0068】
比較例3に係る壁紙用裏打ち紙は、機械パルプを含有しないため、層間強度が強くなり過ぎ、剥離性が悪かった。また、機械パルプを含有しないため、隠蔽性も悪かった。
【0069】
比較例4に係る壁紙用裏打ち紙は、機械パルプの含有量が多すぎることによって、層間強度が弱くなり、剥離性が悪かった。
【0070】
比較例5に係る壁紙用裏打ち紙は、填料を含有しないため、隠蔽性が悪く、発泡性もやや悪かった。
【0071】
比較例6に係る壁紙用裏打ち紙は、乾燥紙力増強剤を含有しないため、壁紙用裏打ち紙の強度が不足し、施工性が悪かった。
【0072】
比較例7に係る壁紙用裏打ち紙は、湿潤紙力増強剤を含有しないため、壁紙用裏打ち紙の貼合時に目開きが発生し、寸法安定性が悪かった。
【0073】
比較例8に係る壁紙用裏打ち紙は、原料フリーネスが400cc以下であるため、壁紙用裏打ち紙の剥離性、壁紙目開き、隠蔽性の評価が悪かった。
【0074】
比較例9に係る壁紙用裏打ち紙は、サイズ剤を含有しないため、壁紙目開き、樹脂発泡性の評価が悪かった。