特開2018-8538(P2018-8538A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-8538自動車内装材用通気止め積層体、その製造方法、自動車内装材
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  • 特開2018008538-自動車内装材用通気止め積層体、その製造方法、自動車内装材 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-8538(P2018-8538A)
(43)【公開日】2018年1月18日
(54)【発明の名称】自動車内装材用通気止め積層体、その製造方法、自動車内装材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20171215BHJP
   B32B 5/12 20060101ALI20171215BHJP
   B32B 38/06 20060101ALI20171215BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20171215BHJP
【FI】
   B60R13/02 A
   B32B5/12
   B32B38/06
   B29C65/02
   B60R13/02 B
   B60R13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-136554(P2016-136554)
(22)【出願日】2016年7月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 博志
(72)【発明者】
【氏名】早川 洋
(72)【発明者】
【氏名】西尾 祥
(72)【発明者】
【氏名】小川 高功
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
3D023BA05
3D023BA07
3D023BB03
3D023BB08
3D023BB09
3D023BD01
3D023BD02
3D023BE06
3D023BE31
4F100AK07B
4F100AK46A
4F100AK63A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG15B
4F100EC032
4F100EH23A
4F100EJ192
4F100EJ343
4F100GB33
4F100JD02A
4F100JK02
4F211AD08
4F211AD16
4F211AF01
4F211AG03
4F211AH26
4F211TA13
4F211TC05
4F211TD01
4F211TN01
4F211TQ03
(57)【要約】
【課題】 本発明が解決しようとする課題は、金型により基材や表皮材と共に熱圧成型する際に、通気止めフィルムが裂けたり破れたりすることのない自動車内装材用通気止め積層体を提供することである。
【解決手段】 本発明によると、通気止めフィルムと不織布とが積層された自動車内装材用通気止め積層体であって、前記通気止めフィルムと前記不織布とが同調したエンボス構造を備えることを特徴とする自動車内装材用通気止め積層体が提供される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気止めフィルムと不織布とが積層された自動車内装材用通気止め積層体であって、前記通気止めフィルムと前記不織布とが同調したエンボス構造を備えることを特徴とする自動車内装材用通気止め積層体。
【請求項2】
130℃における20%モジュラス強度が、流れ方向において0.5〜2.5N/15mm、幅方向において0.5〜1.5N/15mmであることを特徴とする請求項1記載の自動車内装材用通気止め積層体。
【請求項3】
通気止めフィルムと不織布とを、エンボスロールとバックアップロールで挟持して熱圧着することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車内装材用通気止め積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の自動車内装材用通気止め積層体と基材と表皮材とを備える自動車内装材であって、
基材の一方の表面側に表皮材が積層されており、
基材の他方の表面側に自動車内装材用通気止め積層体が、通気止めフィルムが基材側となるように積層されていることを特徴とする自動車内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車内装材において、厚さ方向への通気を遮断する通気止め積層体に関する。詳しくは、基材や表皮材と共に自動車内装材を構成する積層体であって、通気止めフィルムと不織布とからなる自動車内装材用の通気止め積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の天井等には、通常、ボディを構成する鋼板の内側に、断熱や緩衝等の機能を得る目的でプレス成型された自動車内装材が取り付けられている。特許文献1は自動車内装材(自動車の室内天井材)に関する発明である。特許文献1では、不織布よりなる裏面層の下面に通気止めフィルム層が積層された自動車内装材用通気止め積層体(第1層)と、上面に熱可塑性樹脂よりなるウェブ層が積層され、下面に接着機能を有する補強材層が積層された基材(第2層)と、不織布よりなる表面層の下面に表皮層が接着された表皮材(第3層)とからなる自動車内装材が提案されている。特許文献1の自動車内装材の製造は、初めに基材(第2層)を熱風加熱し、該基材の表裏面を構成するウェブ層および補強材層を溶融させ、次いで、雄型と雌型よりなる金型間に通気止め積層体(第1層)と基材(第2層)と表皮材(第3層)を配置し、雄型と雌型とを合型加圧することにより行われる。このとき溶融状態にある基材(第2層)の表裏面により各層は接着一体化される。
【0003】
特許文献1において採用されている通気止めフィルムは、自動車内装材の厚さ方向への通気を遮断するフィルムで、金型により成型加工される際に、裂けたり破れたりしない性能が求められている。自動車内装材は、通気止めフィルムを備えることで、使用時に表皮材の表面に埃等が付着することを低減することができるが、該フィルムが裂けたり破れたりすると、自動車内装材内に車内の空気が流れ込み、表皮材の表面に埃等が付着し易くなる。
特許文献1記載の自動車内装材(自動車の室内天井材)は、基材のみが熱風加熱された状態で成型加工される為、通気止めフィルムは、比較的低温の状態で金型により引き伸ばされこととなり、裂けたり破れたりすることがあった。
【0004】
特許文献2は、天井材、ピラートリム、パッケージトリム等の自動車用内装材に関する発明で、自動車内側から順に、表皮材/表面側の面材/基材(芯材)/裏面側の面材/裏材(不織布)を備える自動車用内装材を開示する。特許文献2には通気止めに関する記載はないが、裏面側の面材がこれに相当するものと思われる。
特許文献2の実施例では、表皮材/表面側の面材/基材(芯材)/裏面側の面材/裏材(不織布)の各層を、熱板を用いた平版プレスにより、加熱しながら圧縮して接着一体化する。具体的には、上述した各層を110〜210℃に加熱した上熱板と下熱板との間に挟み、1mm前後厚さが減じるまで圧縮し、0.8〜3分程度この状態を保持し、一体化する。
特許文献2に開示された方法を用いると、通気止めフィルムは十分に加温された状態でプレスされる為、通気止めフィルムの裂けや破れの問題はある程度改善されるが、十分に満足できるものではなかった。自動車内装材が金型により大きく変形させられる場合は、通気止めフィルムが裂けたり破れたりする恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−150005号公報
【特許文献2】特開2009− 29219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、金型により基材や表皮材と共に熱圧成型する際に、通気止めフィルムが裂けたり破れたりすることのない自動車内装材用通気止め積層体(以下、必要に応じ「通気止め積層体」と略称する)を提供することである。
併せて前記通気止め積層体の製造方法の提供、前記通気止め積層体を用いた自動車内装材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、通気止めフィルムの裂けや破れを改善するためには、通気止めフィルムと不織布との積層体(通気止め積層体)の130℃におけるモジュラス強度を低くすればよいことを見出した。通気止め積層体の130℃モジュラス強度が低いと、金型による熱間プレス成型時に、通気止めフィルムが不織布に裏打ちされた状態で均一に伸ばされる為、裂けたり破れたりし難い。加えて、該通気止め積層体のモジュラス強度を低くするためには、通気止めフィルムと不織布とをエンボスロールにより熱圧着し、通気止めフィルムと不織布とに同調したエンボス構造を形成すればよいことを見出した。予め通気止めフィルムのみにエンボス加工を施し、その後不織布と貼合すると、通気止めフィルムが伸びやすいため貼合作業が困難となる。また予め不織布のみにエンボス加工を施し、その後通気止めフィルムと貼合しても、通気止め積層体のモジュラス強度はあまり低下しないのである。
【0008】
すなわち本発明によると上記課題を解決するための手段として、通気止めフィルムと不織布とが積層された自動車内装材用通気止め積層体であって、前記通気止めフィルムと前記不織布とが同調したエンボス構造を備えることを特徴とする自動車内装材用通気止め積層体が提供される。
また130℃における20%モジュラス強度が、流れ方向において0.5〜2.5N/15mm、幅方向において0.5〜1.5N/15mmであることを特徴とする前記自動車内装材用通気止め積層体が提供される。
更に通気止めフィルムと不織布とを、エンボスロールとバックアップロールで挟持して熱圧着することを特徴とする前記自動車内装材用通気止め積層体の製造方法が提供される。
更にまた、前記自動車内装材用通気止め積層体と基材と表皮材とを備える自動車内装材であって、基材の一方の表面側に表皮材が積層されており、基材の他方の表面側に自動車内装材用通気止め積層体が、通気止めフィルムが基材側となるように積層されていることを特徴とする自動車内装材が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動車内装材用通気止め積層体(以下、単に通気止め積層体と略称する)は、通気止めフィルムと不織布とが同調したエンボス構造を備える為、130℃におけるモジュラス強度が低く、金型により基材や表皮材と共に熱間プレス成型される際に、通気止めフィルムが不織布に裏打ちされた状態で均一に伸ばされるため、裂けたり破れたりしにくい。
また本発明の通気止め積層体の製造方法では、通気止めフィルムと不織布とをエンボスロールとバックアップロールにて熱圧着しているので、不織布との貼合時に通気止めフィルムが伸びるという問題は発生しにくく、また得られる通気止め積層体の熱間プレス成型時に伸びやすいという性質は維持される。
更に本発明の自動車内装材は、通気止めフィルムが内装材の厚さ方向への通気を確実に遮断する為、表皮材に埃等が付着することをより確実に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による自動車内装材用通気止め積層体の一実施形態を表す模式的平面図(A)とそのx−x’断面図(B)である。
図2】本発明による自動車内装材の一実施形態を表す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の通気止め積層体は、通気止めフィルムと不織布とからなる。
[通気止めフィルム]
通気止めフィルムは、自動車内装材の厚さ方向への通気を遮断することができればその材質は特に限定されず、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4メチルペンテン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体やそのケン化物、エチレン−4メチルペンテン共重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体等のオレフィン系樹脂やその酸変性樹脂、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10等のアミド系樹脂やそれらの共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のエステル系樹脂等を用いることができる。
【0012】
通気止めフィルムは、不織布や基材との接着性を考慮すると接着性樹脂層を備えることが望ましく、熱間プレス成型時に溶けて穴が開くことを防止するために耐熱性樹脂層を備えることが望ましい。特に好適な通気止めフィルムは、耐熱性樹脂層を芯層とし、接着性樹脂層を両外層とする3層フィルムである。
【0013】
耐熱性樹脂層は、後述する熱間プレス成型時に融解する恐れのない樹脂層であることが好ましく、後述する接着性樹脂層を形成する樹脂よりも、融点の高い樹脂を主成分とすることが望ましい。接着性樹脂層が融点130℃以下の樹脂から成る場合、例えばプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、ホモポリプロピレン等のプロピレン系を用いることができる。特に耐熱性樹脂層は、融点が180℃を超える樹脂を主成分とすることが好ましい。このような樹脂として、本発明ではナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12等のアミド系樹脂や、これらの樹脂の共重合体を例示することができる。特にナイロン6とナイロン6,6の共重合体は、耐熱性と柔軟性を兼ね備え、本発明の耐熱性樹脂層に適する。
接着性樹脂層は、熱間プレス成型時に融解する樹脂から成ることが好ましく、具体的には融点が130℃以下である樹脂から成ることが好ましい。融点が130℃以下の樹脂としては低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体や、その酸変性樹脂を例示することができる。中でも、融点が低く、極性基により接着性が改善されたエチレン−αオレフィン共重合体の酸変性樹脂が、通気止めフィルムの接着性樹脂として適する。
【0014】
通気止めフィルムの膜厚は、強度とコストの兼ね合いから12〜100μm程度が好ましく、特に20〜50μm程度が好ましい。通気止めフィルムが3層フィルムの場合、耐熱性樹脂層は通気を確実に遮断することができるよう2μm以上であることが望ましく、コスト面を考慮すると10μm以下であることが望ましい。接着性樹脂層は、接着性を担保するために5μm以上、特に7μm以上であることが望ましく、コスト面を考慮すると45μm以下、特に20μm以下であることが望ましい。
【0015】
[不織布]
不織布は熱間プレス成型後に自動車内装材が金型から離型することを助ける。該不織布は、熱間プレス成型時に溶融しない不織布であれば特に限定なく用いることができる。プレス温度が低い場合はプロピレン系樹脂から成る不織布、高い場合はポリエチレンテレフタレートから成る不織布等を用いるとよい。
また不織布は製造方法により異なる特性を示すことが知られているが、本発明では、スパンボンド法による不織布、メルトブロー法による不織布、スパンレース法による不織布、或いはこれらの積層体を特に好適に用いることができる。中でもメルトブロー不織布の両外にスパンボンド不織布が積層された多層構成の不織布は、耐久性及び製造コストの面から、本発明の不織布として適する。
尚、不織布の目付は当に限定されないが10〜80g/m程度が好ましく、特に10〜20g/m程度が好ましい。
【0016】
[自動車内装材用通気止め積層体]
図1に本発明の自動車内装材用通気止め積層体1の一実施形態を示す平面図(A)とそのx−x’断面図(B)を記す。本発明の通気止め積層体1は、通気止めフィルム11と不織布12とからなり、これらが同調したエンボス構造を備える。同調したエンボス構造とは、図1(B)に示すように、通気止めフィルム11と不織布12とが、それぞれエンボス構造を有し、各エンボス構造が同調していることを意味する。不織布12が凸状である部分では通気止めフィルム11も概ね凸状であり、不織布12が凹状である部分では通気止めフィルム11も概ね凹状である。
【0017】
本発明の通気止め積層体1は、同調したエンボス構造を備える為、130℃におけるモジュラス強度が低くなっている。熱間プレス成型する場合、130℃における20%モジュラス強度は、流れ方向において0.5〜2.5N/15mmの範囲内で、幅方向において0.5〜1.5N/15mmの範囲内であることが望ましい。30℃における20%モジュラス強度が該範囲未満であると、熱間プレス成型により自動車内装材を成型する際に、通気止め積層体に予定しない皺が入る恐れがある。また該範囲を超えると、熱間プレス成型時に通気性フィルムが局所的に伸ばされて裂けたり破れたりする恐れがある。
【0018】
[通気止め積層体の製造方法]
通気止めフィルム11と不織布12とが同調したエンボス構造を備える通気止め積層体1は、例えば(1)通気止めフィルム11と不織布12とを熱圧着した後、エンボス加工することにより得られる。また(2)通気止めフィルム11と不織布12とを溶融樹脂を用いて押出ラミネートした後、エンボス加工することによっても得られる。更に(3)通気止めフィルム11と不織布12とをエンボスロールとバックアップロールで挟持して熱圧着することにより得ることもできる。
本発明では特に好適な製造方法として、上述した(3)の方法を提供する。(3)の方法によると、予め通気止めフィルム11と不織布とを熱圧着したり押出ラミネートしたりする必要がなく、製造工程が簡略化される。また通気止めフィルム11と不織布12とを重ねて、凹凸を有するエンボスロールとバックアップロールの間を通し熱圧着すると、エンボスロールの凸部分において通気止めフィルム11と不織布12とは優先的に熱圧着され、エンボスロールの凹部分ではあまり熱圧着されない。よって通気止めフィルム11は、比較的自由度が高く伸びやすい状態で不織布12と積層され、モジュラス強度が低く抑えられる。
【0019】
また上述したバックアップロールは、エンボスロールの凹凸に追従する凹凸構造を備えていることが望ましい。バックアップロールも凹凸構造を備えていると、通気止め積層体1の表裏面に深いエンボスを刻むことが可能となり、通気止め積層体は特に伸びやすくなる。
【0020】
通気止め積層体のエンボス加工の柄(形状)は特に限定されないが、自動車の天井材に用いられる場合は、図1に示すような、通気止め積層体の流れ方向αにのびる対角線aの長さが、幅方向βにのびる対角線bの長さよりも長い菱形(換言すればフィルムの流れ方向に細長い菱形)であることが好ましい。流れ方向αに長い菱形であると、必然的に単位長さあたりの凹凸数が、流れ方向αよりも幅方向βが多くなり、得られる通気止め積層体は幅方向βに伸びやすくなる。
通気止め積層体は、通常、自動車の天井材に用いられる場合、フィルムの流れ方向が自動車の長さ方向となるように自動車の天井に組み込まれる。自動車の天井材は長さ方向よりも幅方向の変形率が大きいため、通気止め積層体は幅方向の伸びが大きく改善されたものが適する。
【0021】
[自動車内装材]
図2は、本発明の自動車内装材4の一実施形態を表す模式的断面図である。本発明の自動車内装材4は、上述した通気止め積層体1と、基材2、表皮材3とから成る。
【0022】
<基材>
基材2は、自動車内装材において支持層となる層で、従来の天井材において用いられているものと同様のものを特に限定なく採用することができる。例えば、繊維質多孔材、硬質発泡材、硬質発泡材と不織布との複合材等を用いることができる。尚、これらの基材は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0023】
上述した、上記繊維質多孔材としては、ガラス繊維、PET繊維、植物性繊維等の硬質繊維を熱可塑性樹脂により結着して得られた材料を例示することができる。該繊維質多孔材には、加熱によって硬質繊維間で発泡・膨張することができる熱膨張性カプセル等の発泡材を配合することができる。
また、上記硬質発泡材としては、ポリウレタン(硬質ポリウレタン及び半硬質ポリウレタンを含む)、ポリオレフィン及びその他の樹脂を発泡させた材料が挙げられる。これらのなかでは、ポリウレタンのフォーム材が好ましく、半硬質ポリウレタンのフォーム材が特に好ましい。
更に、上記硬質発泡材と不織布との複合材としては、上述の硬質発泡材の表裏のうちの少なくとも一方の面に、ガラス繊維等の硬質繊維等を用いて形成された不織布を接合した複合材が挙げられる。
【0024】
<表皮材>
表皮材3も、従来、自動車内装材の表皮材として用いられていたものを特に限定なく用いることができる。具体的には、ニット(編物)や不織布等を用いることができる。ニットや不織布は、厚さを薄く形成しながら伸び易い形態を容易に得ることができる。そのため、複雑な形状をなした自動車内装材の表面であっても追従させて外観を損ねることなく張り付けることができる。
【0025】
<他の層>
また本発明の自動車内装材4には、基材層2と表皮層3との間に弾性層を介在させることができる。弾性層を備えることで、表皮層3側からの触感に対して弾力感を与えることができる。更に本発明の自動車内装材には、必要に応じ、接着剤層や補強層など他の層を設けることもできる。
【0026】
[自動車内装材の製造方法]
本発明の自動車内装材4は、通気止め積層体1と基材層2及び表皮層3が積層された積層体を雄型の金型と雌型の金型との間に配置し、熱間プレス成型することにより製造することができる。尚、予め通気止め積層体1と基材2とを予め熱接着しておき、その後、通気止め積層体1/基材2の貼合体と、表皮材3とを熱圧プレス成型することにより製造することもできる。
【0027】
熱間プレス成型後、賦形された積層体の不要部を、必要に応じ切断することにより、自動車内装材を得ることができる。通常、自動車用天井材は、製品サイズよりも大きく粗製され、しかる後、必要な大きさに裁断され、更に必要に応じた各部品の組付や取付に必要な切欠及び開孔等が施されて、製造される。
【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。尚、通気止め積層体の評価は以下の方法で行った。
[130℃20%モジュラス強度]
実施例1、2、比較例1の通気止め積層体を、幅15mmの矩形に切り出して試験片を作成する。このとき試験片の長さ方向が測定方向(フィルムの流れ方向または幅方向)となるようにする。次いで、該試験片を株式会社島津製作所製オートグラフAGS−X500Nを用い、130℃雰囲気下にて、チャック間距離50mm、引張速度5mm/分にて20%引き伸ばし、引き伸ばしに要した荷重を測定する。結果は表1に記す。
【0029】
[実施例1]
直鎖状低密度ポリエチレンの酸変性樹脂(以下、「LL−a」と略称する)と、ナイロン6とナイロン6,6の共重合体(以下、「Ny6−66」と略称する)を、インフレーション共押出法にて製膜し、LL−a(10μm)/Ny6−66(5μm)/LL−a(10μm)の3層構造の通気止めフィルムを製造した。
次いで、該通気止めフィルムとスパンボンド法によるポリプロピレン不織布(目付15g/m)とを重ねて、エンボスロールとバックアップロールの間を通し、通気止めフィルムと不織布とに同調したエンボス構造を形成した。尚、バックアップロールは、エンボスロールの凹凸に追従する凹凸構造を備えるものを使用した。また、エンボスロールに彫刻されたエンボス柄は、フィルムの流れ方向の対角線の長さが5mm、幅方向の対角線の長さが3mmの菱形である。
【0030】
[実施例2]
実施例1で使用したものと同じ通気止めフィルムと不織布を用い、実施例1と同様に、通気止めフィルムと不織布とを重ねて、エンボスロールとバックアップロールの間を通し、通気止めフィルムと不織布とに同調したエンボス構造を形成した。尚、バックアップロールには、凹凸構造を備えない硬質ゴムから成るロールを用いた。また、エンボスロールに彫刻されたエンボス柄は、一辺が1.6mmの亀甲柄であった。
【0031】
[比較例1]
実施例1で使用したものと同じ通気止めフィルムと不織布を用い、熱圧着(熱ラミネート法)にて通気止め積層体を製造した。
【0032】
尚、スパンボンド法による不織布は、堆積された繊維を、エンボス加工が施された熱ロールで点圧着して製造するため、不織布の表面にはエンボス構造(点圧着跡)が形成されている。実施例1、2の通気止め積層体の不織布表面には、通気止めフィルムと不織布とを熱圧着する際に用いたエンボスロールの跡が残るのみで、点圧着跡は残っていなかった。一方、比較例1の通気止め積層体の不織布表面には、点圧着時のエンボス構造(圧着部間距離1.5mm)が残っていた。すなわち、実施例1、2の通気止め積層体における不織布には、通気止めフィルムと同調するエンボス構造が形成されていたが、比較例1の通気止め積層体における不織布には、通気止めフィルムと同調しないエンボス構造(点圧着跡)が形成されていた。尚、比較例1の通気止めフィルム表面はフラット(平ら)であった。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1、2の通気止め積層体は、通気止めフィルムと不織布とが同調したエンボス構造を備えており、不織布のみにエンボス柄(点圧着跡)を備える比較例1の通気止め積層体よりも、130℃における20%モジュラス強度が低かった。特にエンボス柄が流れ方向に細長いダイヤ柄である実施例1の通気止め積層体は、フィルムの幅方向の130℃モジュラス強度が非常に低かった為、自動車の天井材用途に適する。実施例1のフィルムを、基材、表皮材と共に、熱間プレス成型し、自動車天井材を成形したところ、通気止めフィルムに裂けや破れは発生せず、良好に成型できた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の自動車内装材は、天井材、ピラートリム、パッケージトリム等の自動車内装材に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 自動車内装材用通気止め積層体
11 通気止めフィルム
12 不織布
2 基材
3 表皮材
図1
図2