【解決手段】筐体用部材10は、マトリクス樹脂42に強化繊維40を混入させた繊維強化樹脂板30の縁部に樹脂製のフレーム体32を設けた構成である。この筐体用部材10は、フレーム体32が繊維強化樹脂板30を構成するマトリクス樹脂42によって形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る筐体用部材について、この部材を利用した電子機器を例示して好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る筐体用部材10を用いた筐体12を備える電子機器14の斜視図である。本実施形態では、筐体用部材10を用いた筐体12をノート型PCである電子機器14の蓋体16として使用した構成を例示する。
【0023】
図1に示すように、電子機器14は、キーボード装置18を有する機器本体(本体筐体)20と、液晶ディスプレイ等からなるディスプレイ装置22を有する矩形平板状の蓋体16とを備える。電子機器14は、蓋体16を左右のヒンジ24により機器本体20に対して開閉可能に連結したクラムシェル型である。
【0024】
機器本体20は扁平箱状の筐体である。機器本体20は、内部に図示しない基板、演算処理装置、ハードディスク装置及びメモリ等の各種電子部品を収納している。キーボード装置18は、機器本体20の上面に配設されている。
【0025】
蓋体16は、背面カバー12aと正面カバー12bとを重ねて連結した筐体12を備える。蓋体16は、ヒンジ24を通過した図示しないケーブルにより機器本体20と電気的に接続されている。背面カバー12aは、蓋体16の側面及び背面を覆うカバー部材であり、本実施形態に係る筐体用部材10によって構成されている。蓋体16は、背面カバー12aにねじ止め固定されたヒンジ24を介して機器本体20と連結されている(
図2も参照)。正面カバー12bは、蓋体16の正面を覆う樹脂製のカバー部材であり、その大部分に例えば液晶ディスプレイからなるディスプレイ装置22を露出させる開口部が設けられている。
【0026】
次に、蓋体16を構成する筐体12の背面カバー12a及びこの背面カバー12aを形成する筐体用部材10の構成について具体的に説明する。
【0027】
先ず、背面カバー12aの全体的な構成を説明する。
図2は、筐体12の背面カバー12aの構成を模式的に示す平面図であり、蓋体16の背面となる背面カバー12aを内面側から見た図である。
【0028】
上記の通り、背面カバー12aは筐体用部材10によって形成されている。
図2に示すように、筐体用部材10は、軽量且つ高強度な繊維強化樹脂板30の外形端面30aに樹脂製のフレーム体32を設けた構成である。背面カバー12aは、フレーム体32によってその周縁部及び4辺の側面となる壁部34が形成され、繊維強化樹脂板30によってディスプレイ装置22の背面を支持する板状部分が形成されている。
【0029】
筐体12(蓋体16)では、背面カバー12aの一縁側(
図2では下縁)のフレーム体32に左右一対設けた幅広部32aに対し、複数(
図2では2本)の固定ねじ36を用いてヒンジ24が固定される。背面カバー12aの他縁側(
図2では上縁)のフレーム体32には左右方向に亘る帯状部32bが設けられ、この部分には無線通信用のアンテナ38が配設される。
【0030】
次に、筐体用部材10の具体的な構成を説明する。
図3は、
図2中のIII−III線に沿う断面形状を模式的に示した断面図であり、筐体用部材10の繊維強化樹脂板30及びフレーム体32を含む部分での厚み方向の断面図である。
【0031】
図3に示すように、筐体用部材10は、繊維強化樹脂板30と、繊維強化樹脂板30の外形端面30aに設けられたフレーム体32とを有する。
【0032】
繊維強化樹脂板30は、強化繊維40にマトリクス樹脂42を含浸させたプリプレグである(
図4A及び
図4B参照)。繊維強化樹脂板30は、2枚又は3枚以上の繊維強化樹脂板30の間に中間層(図示せず)を設けて板厚方向の断面係数を増大させた構造であってもよい。
【0033】
本実施形態の場合、強化繊維40は炭素繊維であり、繊維強化樹脂板30は炭素繊維強化樹脂板(CFRP板)である。強化繊維40は、繊維強化樹脂板30の一方向に並んで或いは網目状に並んで設けられる。強化繊維40は炭素繊維以外であってもよく、アルミニウム繊維、ステンレス繊維等の金属繊維やガラス繊維等の無機繊維等、各種材料を用いてもよい。
【0034】
マトリクス樹脂42には、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が用いられる。マトリクス樹脂42を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール、ユリア・メラミン、ポリイミド等や、これらの共重合体、変性体及びこれらの少なくとも2種のポリマーアロイがあげられる。
【0035】
マトリクス樹脂42を構成する熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)等のスチレン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、熱可塑性フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、さらにはポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体及び2種類以上のブレンド、ポリマーアロイ等が挙げられる。
【0036】
フレーム体32は、繊維強化樹脂板30を形成するマトリクス樹脂42によって形成されている。つまりフレーム体32は、マトリクス樹脂42と同一材料で形成されている。フレーム体32は、強化繊維40を含まない材質であることが好ましい。但し、フレーム体32は、僅かな量の強化繊維40を含んでもよく、例えば繊維強化樹脂板30よりも低密度であれば強化繊維40を含む材質で構成されてもよい。
【0037】
図3に示す構成例の場合、フレーム体32は、その上面及び側面が切削面44a,44bで構成されている。上面側の切削面44aは、繊維強化樹脂板30の表面30bと段差や隙間なく面一に形成されている。切削面44a,44bは、樹脂製のフレーム体32を例えばコンピュータ数値制御(CNC)工作機械で切削加工した平面である。切削面44a,44bは研削加工した研削面で構成されてもよい。
【0038】
筐体用部材10は、このようなフレーム体32を設けることで、曲げや切断等の機械加工の自由度が乏しい繊維強化樹脂板30の周縁部に壁部34や固定ねじ36の締結部等を容易に設けることができる。また、導電性材料である繊維強化樹脂板30から外れた位置で非導電性材料のフレーム体32にアンテナ38を設置する等の設計自由度の向上も可能となる(
図2参照)。
図2ではフレーム体32を繊維強化樹脂板30の外形端面30aの全周に設けた構成を例示しているが、フレーム体32は外形端面30aの一部にのみ設けられていてもよい。
【0039】
次に、筐体用部材10の製造方法の一手順を説明する。
図4A〜
図4Cは、
図3に示す筐体用部材10の製造方法の一手順を示す説明図である。
【0040】
先ず、マトリクス樹脂42に熱硬化性樹脂を用いた場合の製造方法の一手順を説明する。この場合は、
図4Aに示すように、一方の金型部品であるコア46と、他方の金型部品であるキャビティ47とを有する金型48の内部に強化繊維40を配置すると共にマトリクス樹脂42の原料液を注入する。
【0041】
マトリクス樹脂42の原料液は未反応であってもよく、ある程度反応した状態のものであってもよい。この原料液は、金型48内に注入してもよい。又は、マトリクス樹脂42の原料液を層状若しくは薄板状に形成して上下層の強化繊維40の間に中間層として挟み込んだものか、或いは強化繊維40にマトリクス樹脂42の原料液をある程度含浸したものを金型48内に配置してもよい。つまり、強化繊維40とマトリクス樹脂42の原料液とを配合した繊維強化樹脂板30の前駆体を配置してもよい。なお、この原料液は、ある程度反応した状態、例えばスラリー状やゼリー状、ゲル状といった状態にしてもよい。すなわち、熱硬化性樹脂は、例えば完全硬化状態を100%とした場合に10〜20%程度硬化した状態でスラリー状やゼリー状、ゲル状といった状態になる。なお、
図4A〜
図4Bでは、硬化前で固体形状を持たないマトリクス樹脂42を固体板状に図示して繊維強化樹脂板30の成形過程を明示しており、後述する各構成例でも同様である。
【0042】
続いて、
図4Bに示すように、コア46とキャビティ47との間で強化繊維40及びマトリクス樹脂42の原料液、又は上記した繊維強化樹脂板30の前駆体を圧縮すると共に加熱する。そうすると、
図4B中に実線の矢印で示すように硬化前のマトリクス樹脂42の原料液が繊維強化樹脂板30を形成する部分から浸み出して金型48のキャビティ空間48aに流入する。
図4Bに示す例では、キャビティ空間48aは繊維強化樹脂板30を成形する空間よりも上部及び側部に膨らんだ形状を有する。
【0043】
その結果、金型48の内部では、マトリクス樹脂42が強化繊維40に含浸して硬化して繊維強化樹脂板30が形成され、同時にキャビティ空間48aに流入したマトリクス樹脂42が硬化してフレーム体32の原型50が形成される。
【0044】
金型48を型開きすると、
図4Cに示すように
図3に示すフレーム体32よりも大きな外形を持った原型50が繊維強化樹脂板30の縁部に一体的に設けられた筐体用部材10が成形される。そこで、
図4C中に1点鎖線で示すカット線Cに沿って所定の工作機械で原型50の一部を切削又は(及び)研削する。具体的には、繊維強化樹脂板30の表面30bよりも上部に突出した原型50の余剰部50aと、
図3に示すフレーム体32の側面(切削面44b)よりも側部に突出した原型50の余剰部50bとを切削除去する。
【0045】
以上で繊維強化樹脂板30の縁部にフレーム体32が一体的に設けられた筐体用部材10の製造が完了する(
図3参照)。この筐体用部材10では、繊維強化樹脂板30の表面30bに沿った切削面44aがフレーム体32の表面を形成している。このため、繊維強化樹脂板30とフレーム体32との境界部分(外形端面30a)の表面に段差や隙間のない滑らかな平面が形成される。すなわち、壁部34の起立方向で根本側となる繊維強化樹脂板30の表面30b及び切削面44aは、筐体12(背面カバー12a)の外面となるが、当該筐体用部材10ではこの外面が段差や隙間のない平面によって形成される。このため、筐体12の外観品質が確保される。また、フレーム体32の側面も切削面44bで形成されている。このため、筐体用部材10は、その幅寸法、つまり筐体12の対向する壁部34,34間の幅寸法が機械加工によって形成されている。このため、筐体12の寸法精度が確保される。
【0046】
次に、マトリクス樹脂42に熱可塑性樹脂を用いた場合の製造方法の一手順を説明する。この場合は、
図4Aに示すように、金型48の内部に強化繊維40にマトリクス樹脂42を含浸させて硬化させた、或いは強化繊維40にマトリクス樹脂42からなる樹脂フィルム乃至樹脂粉末や樹脂繊維を挟み込んだ形態の繊維強化樹脂板30を配置する。続いて、
図4Bに示すように、コア46とキャビティ47との間で繊維強化樹脂板30を圧縮すると共に加熱する。そうすると、
図4B中に実線の矢印で示すように溶融したマトリクス樹脂42が繊維強化樹脂板30を形成する部分から浸み出して金型48のキャビティ空間48aに流入する。
【0047】
その結果、金型48の内部では、マトリクス樹脂42が強化繊維40に含浸して硬化して繊維強化樹脂板30が形成され、その後の冷却によってキャビティ空間48aに流入したマトリクス樹脂42が硬化してフレーム体32の原型50が形成される。そこで、上記したマトリクス樹脂42に熱硬化性樹脂を用いた場合と同様、
図4Cに示すようにカット線Cに沿って原型50の一部を切削又は(及び)研削する。これにより、繊維強化樹脂板30の縁部にフレーム体32が一体的に設けられた筐体用部材10の製造が完了する(
図3参照)。この場合にも、筐体用部材10は、繊維強化樹脂板30とフレーム体32との境界部分(外形端面30a)の表面に段差や隙間のない滑らかな平面(切削面44a)が形成される。また、筐体用部材10の幅寸法も切削面44bによって高い寸法精度で形成される。
【0048】
次に、筐体用部材の別の構成例を説明する。
図5は、第1変形例に係る筐体用部材10Aの要部を拡大した断面図である。
【0049】
図5に示すように、筐体用部材10Aは、
図3に示す筐体用部材10に別のフレーム体である第2フレーム体60を設けた構成である。第2フレーム体60は、フレーム体32に接合されている。
図5に示す構成例では、第2フレーム体60は、フレーム体32に対して接合されると同時に、繊維強化樹脂板30の表面30bとは反対側の裏面に対して接合されている。第2フレーム体60は、例えばエポキシ等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、アルミニウムやマグネシウム等の金属、セラミックス等によって形成されている。さらに、この第2フレーム体60は、炭素繊維や金属繊維、ガラス繊維等の強化繊維を含む構成であってもよい。第2フレーム体60の接合位置は変更してもよい。
【0050】
図6A〜
図6Cは、
図5に示す筐体用部材10Aの製造方法の一手順を示す説明図である。
【0051】
筐体用部材10Aの製造方法の手順は、第2フレーム体60を用いる以外は上記した筐体用部材10の場合と略同様である。すなわち、先ず、
図6Aに示すように、金型48の内部に強化繊維40と第2フレーム体60を配置すると共に熱硬化性樹脂であるマトリクス樹脂42の原料液を注入する。又は、マトリクス樹脂42の原料液を層状若しくは薄板状に形成して上下層の強化繊維40の間に中間層として挟み込んだものか、或いは強化繊維40にマトリクス樹脂42の原料液をある程度含浸したものを金型48内に配置してもよい。なお、マトリクス樹脂42を熱可塑性樹脂とする場合は、上記した筐体用部材10の場合と同様に金型48の内部に繊維強化樹脂板30を配置すればよい。コア46には第2フレーム体60を配置するための切欠状部分48bが設けられている。
【0052】
続いて、
図6Bに示すように、コア46とキャビティ47との間で強化繊維40及びマトリクス樹脂42の原料液を圧縮すると共に加熱する。そうすると、
図6B中に実線の矢印で示すように硬化前のマトリクス樹脂42の原料液が繊維強化樹脂板30を形成する部分から浸み出して金型48のキャビティ空間48aに流入する。なお、マトリクス樹脂42が熱可塑性樹脂である場合は溶融したマトリクス樹脂42がキャビティ空間48aに流入する。その結果、金型48の内部では、マトリクス樹脂42が強化繊維40に含浸して冷却によって硬化して繊維強化樹脂板30が形成され、同時にキャビティ空間48aに流入したマトリクス樹脂42が同じく冷却によって硬化してフレーム体32の原型50が形成される。この際、第2フレーム体60は、マトリクス樹脂42を介して繊維強化樹脂板30及び原型50と接合される。
【0053】
そこで、
図6Cに示すようにカット線Cによって原型50の一部を切削又は(及び)研削する。これにより、繊維強化樹脂板30の縁部にフレーム体32が一体的に設けられ、さらに第2フレーム体60が接合された筐体用部材10Aの製造が完了する(
図5参照)。その結果、筐体用部材10Aは、繊維強化樹脂板30とフレーム体32との境界部分(外形端面30a)の表面に段差や隙間のない滑らかな平面(切削面44a)が形成される。また、筐体用部材10Aの幅寸法も切削面44bによって高い寸法精度で形成される。
【0054】
図7は、第2変形例に係る筐体用部材10Bの要部を拡大した断面図である。
【0055】
図7に示すように、筐体用部材10Bは、
図3に示す筐体用部材10に別のフレーム体である第2フレーム体62を設けた構成である。第2フレーム体62は、フレーム体32に接合されている。
図7に示す構成例では、第2フレーム体62は、フレーム体32の繊維強化樹脂板30とは反対側の外側面に対して接合されている。筐体用部材10Bは、フレーム体32と第2フレーム体62とで壁部34を形成し、壁部34の外面を第2フレーム体62で構成している。第2フレーム体62は、例えばエポキシ等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、アルミニウムやマグネシウム等の金属によって形成されている。さらに、この第2フレーム体62は、炭素繊維や金属繊維、ガラス繊維等の強化繊維を含む構成であってもよい。第2フレーム体62の接合位置は変更してもよい。
【0056】
第2フレーム体62は、その上面、下面及び側面が切削面44a,44b,44cで構成されている。切削面44cは、切削面44a等と同様に第2フレーム体62を例えばコンピュータ数値制御(CNC)工作機械で切削加工或いは研削加工した平面である。
【0057】
図8A〜
図8Cは、
図7に示す筐体用部材10Bの製造方法の一手順を示す説明図である。
【0058】
筐体用部材10Bの製造方法の手順は、上記した筐体用部材10Aの場合と略同様である。すなわち、先ず、
図8Aに示すように、金型48の内部に強化繊維40を配置すると共に熱硬化性樹脂であるマトリクス樹脂42の原料液を注入する。又は、マトリクス樹脂42の原料液を層状若しくは薄板状に形成して上下層の強化繊維40の間に中間層として挟み込んだものか、或いは強化繊維40にマトリクス樹脂42の原料液をある程度含浸したものを金型48内に配置してもよい。また、キャビティ47に設けた切欠状部分48cに第2フレーム体62の原型64を配置する。第2フレーム体62の原型64は、第2フレーム体62よりも上部及び側部の外形を大きくしたものである。なお、マトリクス樹脂42を熱可塑性樹脂とする場合は、上記した筐体用部材10,10Aの場合と同様に金型48の内部に繊維強化樹脂板30を配置すればよい。
【0059】
続いて、
図8Bに示すように、コア46とキャビティ47との間で強化繊維40及びマトリクス樹脂42の原料液を圧縮すると共に加熱する。そうすると、
図8B中に実線の矢印で示すように硬化前のマトリクス樹脂42の原料液が繊維強化樹脂板30を形成する部分から浸み出して金型48のキャビティ空間48aに流入する。なお、マトリクス樹脂42が熱可塑性樹脂である場合は溶融したマトリクス樹脂42がキャビティ空間48aに流入する。その結果、金型48の内部では、マトリクス樹脂42が強化繊維40に含浸してその後の冷却によって硬化して繊維強化樹脂板30が形成され、同時にキャビティ空間48aに流入したマトリクス樹脂42が同じくその後の冷却によって硬化してフレーム体32の原型50が形成される。この際、第2フレーム体62の原型64は、フレーム体32の原型50を形成するマトリクス樹脂42を介して原型50と接合される。
【0060】
そこで、
図8Cに示すようにカット線Cによって原型50,64の一部を切削又は(及び)研削する。具体的には、繊維強化樹脂板30の表面30bよりも上部に突出した原型50の余剰部50aと、
図7に示すフレーム体32の下部に突出した原型50の余剰部50bとを切削除去する。さらに第2フレーム体62の上部に突出した原型64の余剰部64aと、外側部に突出した原型64の余剰部64bとを切削除去する。これにより、繊維強化樹脂板30の縁部にフレーム体32が一体的に設けられ、さらに第2フレーム体62が接合された筐体用部材10Bの製造が完了する(
図7参照)。その結果、筐体用部材10Bは、繊維強化樹脂板30とフレーム体32との境界部分(外形端面30a)の表面、及びフレーム体32と第2フレーム体62との境界部分の表面に段差や隙間のない滑らかな平面(切削面44a,44b)が形成される。また、筐体用部材10Bの幅寸法も切削面44cによって高い寸法精度で形成される。
【0061】
図9は、第3変形例に係る筐体用部材10Cの要部を拡大した断面図である。
【0062】
図9に示すように、筐体用部材10Cは、
図3に示す筐体用部材10と比べて、繊維強化樹脂板30の縁部に屈曲形状部66を設けた構成である。筐体用部材10Cは、繊維強化樹脂板30とフレーム体32とで壁部34が構成されている。屈曲形状部66は、繊維強化樹脂板30と同一材料で一体的に形成されている。屈曲形状部66及びフレーム体32は、その下面が切削面44dで構成されている。切削面44dは、切削面44a等と同様にフレーム体32及び屈曲形状部66を例えばコンピュータ数値制御(CNC)工作機械で切削加工或いは研削加工した平面である。
【0063】
図10A〜
図10Eは、
図9に示す筐体用部材10Cの製造方法の一手順を示す説明図である。
【0064】
筐体用部材10Cの製造方法の手順は、金型48で強化繊維40を屈曲させて屈曲形状部66を成形する以外は上記した筐体用部材10の場合と略同様である。すなわち、先ず、
図10Aに示すように、金型48の内部に強化繊維40を配置すると共に熱硬化性樹脂であるマトリクス樹脂42の原料液を注入する。又は、マトリクス樹脂42の原料液を層状若しくは薄板状に形成して上下層の強化繊維40の間に中間層として挟み込んだものか、或いは強化繊維40にマトリクス樹脂42の原料液をある程度含浸したものを金型48内に配置してもよい。なお、マトリクス樹脂42を熱可塑性樹脂とする場合は、上記した筐体用部材10の場合と同様に金型48の内部に繊維強化樹脂板30を配置すればよい。
【0065】
続いて、
図10B及び
図10Cに示すように、強化繊維40及びマトリクス樹脂42の原料液を圧縮すると共に加熱し、同時にコア46とキャビティ47とで強化繊維40の縁部を圧縮して屈曲させて屈曲形状部66の原型68を形成する。そうすると、
図10D中に実線の矢印で示すように硬化前のマトリクス樹脂42の原料液が繊維強化樹脂板30や屈曲形状部66を形成する部分から浸み出して金型48のキャビティ空間48aに流入する。なお、マトリクス樹脂42が熱可塑性樹脂である場合は溶融したマトリクス樹脂42がキャビティ空間48aに流入する。その結果、金型48の内部では、マトリクス樹脂42が強化繊維40に含浸し硬化して繊維強化樹脂板30が形成されると共に、繊維強化樹脂板30の縁部で強化繊維40が屈曲されて屈曲形状部66の原型68が形成される。同時にキャビティ空間48aに流入したマトリクス樹脂42が硬化してフレーム体32の原型50が形成される。
【0066】
そこで、
図10Eに示すようにカット線Cによって原型50,68の一部を切削又は(及び)研削する。具体的には、繊維強化樹脂板30の表面30bよりも上部に突出した原型50の余剰部50aと、
図9に示すフレーム体32の側部に突出した原型50の余剰部50bとを切削除去する。さらに屈曲形状部66の下部に突出した原型68の余剰部68aを余剰部50bの下部と共に切削除去する。これにより、繊維強化樹脂板30の縁部に屈曲形状部66及びフレーム体32が一体的に設けられた筐体用部材10Cの製造が完了する(
図9参照)。その結果、筐体用部材10Cは、繊維強化樹脂板30とフレーム体32との境界部分(外形端面30a)の表面、及びフレーム体32と屈曲形状部66との境界部分の表面に段差や隙間のない滑らかな平面(切削面44a,44d)が形成される。また、筐体用部材10Cの幅寸法も切削面44bによって高い寸法精度で形成される。筐体用部材10Cは、壁部34に繊維強化樹脂板30の縁部である屈曲形状部66が配置されるため、壁部34の強度が向上する。
【0067】
図11は、第4変形例に係る筐体用部材10Dの要部を拡大した断面図である。
【0068】
図11に示すように、筐体用部材10Dは、
図9に示す筐体用部材10Cとほとんど同じ構成であるが、その製造方法が異なる。なお、
図11に示す構成例の筐体用部材10Dは、屈曲形状部66の屈曲角度が
図9に示す筐体用部材10Cと異なるが、この屈曲角度は変更してもよい。
【0070】
筐体用部材10Dの製造方法の手順は、別の成形工程で予め縁部を屈曲させて屈曲形状部66を設けた繊維強化樹脂板30を用いる以外は上記した筐体用部材10の場合と略同様である。すなわち、先ず、
図12Aに示すように、金型48の内部に予め縁部に屈曲形状部66の原型となる屈曲形状を形成した強化繊維40を配置すると共に熱硬化性樹脂であるマトリクス樹脂42の原料液を注入する。なお、マトリクス樹脂42を熱可塑性樹脂とする場合は、上記した筐体用部材10の場合と同様に金型48の内部に屈曲形状部66を形成した繊維強化樹脂板30を配置すればよい。
【0071】
続いて、
図12Bに示すように、コア46とキャビティ47との間で強化繊維40及びマトリクス樹脂42の原料液を圧縮すると共に加熱する。そうすると、
図12B中に実線の矢印で示すように硬化前のマトリクス樹脂42の原料液が繊維強化樹脂板30や屈曲形状部66を形成する部分から浸み出して金型48のキャビティ空間48aに流入する。なお、マトリクス樹脂42が熱可塑性樹脂である場合は溶融したマトリクス樹脂42がキャビティ空間48aに流入する。その結果、金型48の内部では、マトリクス樹脂42が強化繊維40に含浸しその後の冷却によって硬化して縁部に屈曲形状部66を持った繊維強化樹脂板30が形成され、同時にキャビティ空間48aに流入したマトリクス樹脂42が硬化してフレーム体32の原型50が形成される。
【0072】
そこで、
図12Cに示すようにカット線Cによって原型50の一部を切削又は(及び)研削する。これにより、繊維強化樹脂板30の縁部にフレーム体32が一体的に設けられた筐体用部材10Dの製造が完了する(
図11参照)。その結果、筐体用部材10Dは、繊維強化樹脂板30とフレーム体32との境界部分(外形端面30a)の表面に段差や隙間のない滑らかな平面(切削面44a)が形成される。また、筐体用部材10Dの幅寸法も切削面44bによって高い寸法精度で形成される。筐体用部材10Dは、壁部34に繊維強化樹脂板30の縁部である屈曲形状部66が配置されるため、壁部34の強度が向上する。
【0073】
なお、上記した各構成例に係る筐体用部材10,10A〜10Dでは、フレーム体32や屈曲形状部66をカット線Cによって切削した構成を例示した。しかしながら、これら筐体用部材10,10A〜10Dは、フレーム体32を繊維強化樹脂板30を構成するマトリクス樹脂42で形成しているため、フレーム体32と繊維強化樹脂板30との間の境界部分には接合部がなく、隙間や段差の発生が抑制される。このため、当該筐体用部材10,10A〜10Dでは、金型48を用いた成形工程で所望の製品寸法を持ったフレーム体32を成形し、後工程である切削工程を省略することも可能である。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る筐体用部材10(10A〜10D)では、マトリクス樹脂42に強化繊維40を混入させた繊維強化樹脂板30の縁部に樹脂製のフレーム体32を設けた構成において、フレーム体32がマトリクス樹脂42によって形成されている。
【0075】
このように、当該筐体用部材10(10A〜10D)は、繊維強化樹脂板30の縁部に設けるフレーム体32を繊維強化樹脂板30を形成するマトリクス樹脂42によって形成している。このため、例えば金型48から取り出した後に温度が低下したとしても、マトリクス樹脂42の熱収縮等によって繊維強化樹脂板30とフレーム体32の境界部分に段差や隙間が生じることを抑制でき、その表面に対して塗装を施す場合はその均一性が確保される。その結果、当該筐体用部材10(10A〜10D)の外観品質が向上する。またフレーム体32を設けたことで、製品の加工自由度が向上し、製品用途も増加する。しかも繊維強化樹脂板30の成形過程でフレーム体32を同時に成形できるため、製造効率が向上する。
【0076】
当該筐体用部材10(10A〜10D)は、フレーム体32の表面に切削面(或いは研削面)44a,44b,44dを有する。つまり筐体用部材10(10A〜10D)は、フレーム体32を繊維強化樹脂板30を形成するマトリクス樹脂42によって形成し、これを切削或いは研削して製品形状を形成している。このため、当該筐体用部材10(10A〜10D)は、その表面形状をより平面化して外観品質を一層向上できる。さらに切削等の機械加工によって製品寸法を一層高精度に形成することができる。
【0077】
当該筐体用部材10(10A〜10D)では、フレーム体32は、強化繊維40を含まないか、又は強化繊維40を繊維強化樹脂板30よりも低密度で含むため、切削等の機械加工を容易に且つ円滑に行うことができる。
【0078】
当該筐体用部材10A(10B)は、フレーム体32に接合された第2フレーム体60(62)を有する。このため、第2フレーム体60(62)に対しても切削等の機械加工を施すことができ、製品の外観品質や加工自由度が一層向上する。この際、第2フレーム体60(62)は、繊維強化樹脂板30及びフレーム体32の成形過程で同時にフレーム体32に対して接合でき、製造効率が低下することもない。
【0079】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0080】
例えば、上記実施形態では、筐体用部材10(10A〜10D)を電子機器14を構成する蓋体16の筐体12として用いた構成を例示したが、筐体用部材10(10A〜10D)は機器本体20に用いてもよい。
【0081】
また、上記した筐体用部材10(10A〜10D)は、ノート型PC以外、例えばタブレット型PC、デスクトップ型PC、スマートフォン又は携帯電話等、各種電子機器の筐体用部材として利用可能である。
発明に係る筐体用部材の製造方法は、熱可塑性樹脂を含むマトリクス樹脂に強化繊維を混入させた繊維強化樹脂板の縁部に樹脂製のフレーム体を設けた筐体用部材の製造方法であって、金型の内部に前記繊維強化樹脂板を配置して加圧及び加熱
入させた後に冷却によって硬化させることで前記フレーム体を形成し、これにより前記繊維強化樹脂板の縁部に前記フレーム体を設けた筐体用部材を製造することを特徴とする。