特開2018-85818(P2018-85818A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-85818(P2018-85818A)
(43)【公開日】2018年5月31日
(54)【発明の名称】ステッピングモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 37/14 20060101AFI20180427BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20180427BHJP
【FI】
   H02K37/14 535B
   H02K37/14 535X
   H02K37/14 535F
   H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-226595(P2016-226595)
(22)【出願日】2016年11月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】上松 郁夫
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA08
5H605BB05
5H605CC06
5H605EC07
5H605GG02
(57)【要約】
【課題】端子台を径方向外側に突出させるためにケースに設けた開口部付近でのケースの振動を抑制することのできるステッピングモータを提供することにある。
【解決手段】ステッピングモータ1は、ステータを径方向外側で覆うケース3を有しており、ステータでは、第1端子台57および第2端子台58を備えた絶縁部材5の筒状胴部にコイルが巻回されている。ケース3には、第1端子台57および第2端子台58を径方向外側に突出させる開口部32が形成されている。ケース3とステータコア212、222とは、開口部32の周方向の両側で、開口部32の縁322、323または開口部32の近傍に設けられた溶接個所35で固着されている。このため、開口部32付近でケース3が振動しにくいので、異音の発生を抑制することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸にロータマグネットが保持されたロータと、
前記ロータマグネットに径方向外側で対向するステータと、
前記ステータを径方向外側で覆うケースと、
を有し、
前記ステータは、端子台を備えた絶縁部材の筒状胴部に巻回されたコイルと、前記コイルに対してモータ軸線方向の両側に配置されたステータコアと、を有し、
前記ケースには、前記端子台を径方向外側に突出させる開口部が形成され、
前記ケースと前記ステータコアとは、前記開口部の周方向の両側で、前記開口部の縁または前記開口部の近傍に設けられた溶接個所で固着されていることを特徴とするステッピングモータ。
【請求項2】
前記ケースは、前記ステータコアとは別体の金属部材からなることを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータ。
【請求項3】
前記コイルは、線材が樹脂層でコーティングされた自己融着線からなることを特徴とする請求項1または2に記載のステッピングモータ。
【請求項4】
前記ステータでは、前記コイルおよび前記ステータコアを備えた第1ステータ組と、前記コイルおよび前記ステータコアを備えた第2ステータ組と、を備え、
前記ステータコアのうち、前記第1ステータ組において前記第2ステータ組側に位置するステータコア、および前記第2ステータ組において前記第1ステータ組側に位置するステータコアが前記溶接個所で前記ケースと固着されていることを特徴とする請求項1から3までの何れか一項に記載のステッピングモータ。
【請求項5】
前記ケースには、前記開口部の周方向の両側の縁で前記ステータコアと径方向外側で重なる位置に、周方向の他の部分より板厚が薄い薄板部が形成され、
前記溶接個所は、前記薄板部に設けられていることを特徴とする請求項1から4までの何れか一項に記載のステッピングモータ。
【請求項6】
前記溶接個所は、前記開口部の縁に設けられていることを特徴とする請求項1から4までの何れか一項に記載のステッピングモータ。
【請求項7】
前記ケースには、前記開口部の周方向の両側の縁で前記ステータコアと径方向外側で重なる位置に切り欠きが形成され、
前記溶接個所は、前記切り欠きの縁に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のステッピングモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータケースに端子台が配置される開口部が形成されたステッピングモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータは、回転軸にロータマグネットが保持されたロータと、ロータマグネットに径方向外側で対向するステータと、ステータを径方向外側で覆うケースとを有しており、ステータは、絶縁部材の筒状胴部に巻回されたコイル、およびコイルに対してモータ軸線方向の両側に配置されたステータコアを備えている。また、ステッピングモータでは、コイルおよびステータコアを備えた第1ステータ組と、コイルおよびステータコアを備えた第2ステータ組とがモータ軸線方向で重ねて配置された構造を有する場合もある(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1では、周方向で等角度間隔あるいは略等角度間隔の複数個所でケースとステータコアとを溶接することにより、ケース等の寸法精度にかかわらず、安定した磁気特性を得ることが提案されている。特許文献2では、周方向で等角度間隔あるいは略等角度間隔の複数個所で、第1ステータ組の第2ステータ組側のステーアコアと、第2ステータ組の第1ステータ組側のステーアコアとをケースを介して溶接することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−224146号公報
【特許文献2】特開2014−212686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステッピングモータにおいて、絶縁部材に端子台を設けた場合、ケースには、端子台を径方向外側に突出させる開口部が形成される。しかしながら、プレス加工等によりケースに開口部を設けると、開口部付近でのケースの形状精度が低下し、開口部付近では、ケースとステータコアとの間に隙間が発生しやすい。このため、ステッピングモータを作動させた際、ケースの開口部付近が振動し、異音が発生することがあるという問題点がある。
【0006】
一方、特許文献1、2には、周方向で等角度間隔あるいは略等角度間隔の複数個所でケースとステータコアとを溶接により固着させた構成が記載されているが、かかる構成では、ケースの開口部付近とステータコアとの間に隙間が発生することを防止できないため、ケースの開口部付近での振動によって異音が発生するという問題点を解消することが困難である。なお、ケースがステータコアと一体に構成されている場合でも、開口部付近では、ケースとステータコアとの間に隙間が存在する場合には上記の振動が同様に発生する。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、端子台を径方向外側に突出させるためにケースに設けた開口部付近でのケースの振動を抑制することのできるステッピングモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解消するため、本発明に係るステッピングモータは、回転軸にロータマグネットが保持されたロータと、前記ロータマグネットに径方向外側で対向するステータと、前記ステータを径方向外側で覆うケースと、を有し、前記ステータは、端子台を備えた絶
縁部材の筒状胴部に巻回されたコイルと、前記コイルに対してモータ軸線方向の両側に配置されたステータコアと、を有し、前記ケースには、前記端子台を径方向外側に突出させる開口部が形成され、前記ケースと前記ステータコアとは、前記開口部の周方向の両側で、前記開口部の縁または前記開口部の近傍に設けられた溶接個所で固着されていることを特徴とする。
【0009】
本発明において、ケースとステータコアとは、開口部の周方向の両側で、開口部の縁または開口部の近傍に設けられた溶接個所で固着されている。このため、プレス加工等によりケースに開口部を設けた結果、開口部付近でのケースの形状精度が低下し、開口部付近では、ケースとステータコアとの間に隙間が発生した場合でも、ケースの開口部付近が振動しにくい。それ故、ケースの開口部付近での振動に起因する異音の発生を抑制することができる。
【0010】
本発明において、前記ケースは、前記ステータコアとは別体の金属部材からなる態様を採用することができる。かかる態様によれば、プレス加工等によりケースに開口部を設けた結果、ケースとステータコアとの間に隙間が発生しやすいが、本発明によれば、開口部の周方向の両側で、開口部の縁または開口部の近傍に設けられた溶接個所で固着されているため、ケースの開口部付近が振動しにくい。
【0011】
本発明において、前記コイルは、線材が樹脂層でコーティングされた自己融着線からなる態様を採用することができる。かかる態様によれば、コイルへの給電によって励磁パターンを切り換えた際にコイルが振動しにくい。それ故、コイルの振動に起因する異音の発生を抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記ステータでは、前記コイルおよび前記ステータコアを備えた第1ステータ組と、前記コイルおよび前記ステータコアを備えた第2ステータ組と、を備え、前記ステータコアのうち、前記第1ステータ組において前記第2ステータ組側に位置するステータコア、および前記第2ステータ組において前記第1ステータ組側に位置するステータコアが前記溶接個所で前記ケースと固着されている態様を採用することができる。
【0013】
本発明において、前記ケースには、前記開口部の周方向の両側の縁で前記ステータコアと径方向外側で重なる位置に、周方向の他の部分より板厚が薄い薄板部が形成され、前記溶接個所は、前記薄板部に設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、開口部からステータコアが見えない状態にあっても、ステータコアに径方向外側で重なる位置に薄板部が形成されているので、ステータコアが位置する個所に溶接を行うことができる。また、溶接個所が薄板部に設けられているため、ケースを介して溶接する場合でも、ステータコアを確実に溶融させることができる。それ故、溶接による固着を確実かつ効率よく行うことができる。
【0014】
本発明において、前記溶接個所は、前記開口部の縁に設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、溶接による固着を効率よく行うことができる。この場合、前記ケースには、前記開口部の周方向の両側の縁で前記ステータコアと径方向外側で重なる位置に切り欠きが形成され、前記溶接個所は、前記切り欠きの縁に設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、開口部からステータコアが見えない状態にあっても、切り欠きを介してステータコアを見ることができる。従って、溶接による固着を確実かつ効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明において、ケースとステータコアとは、開口部の周方向の両側で、開口部の縁または開口部の近傍に設けられた溶接個所で固着されている。このため、プレス加工等によ
りケースに開口部を設けた結果、開口部付近でのケースの形状精度が低下し、開口部付近では、ケースとステータコアとの間に隙間が発生した場合でも、ケースの開口部付近が振動しにくい。それ故、ケースの開口部付近での振動に起因する異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係るステッピングモータを出力側からみた斜視図である。
図2図1に示すステッピングモータを出力側からみた分解斜視図である。
図3図1に示すステッピングモータを軸線に沿って切断したときの断面図である。
図4図1に示すステッピングモータに用いた絶縁部材を出力側からみた斜視図である。
図5図1に示すステッピングモータをケースの開口部の側からみた側面図である。
図6】本発明の実施の形態2に係るステッピングモータをケースの開口部の側からみた側面図である。
図7】本発明の実施の形態3に係るステッピングモータをケースの開口部の側からみた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本発明を適用したステッピングモータを説明する。以下に説明するステッピングモータ1では、回転軸12の回転中心軸線を軸線Lとし、回転軸12の回転中心軸線が延在している方向を軸線L方向とする。また、回転軸12の延在方向の一方側を出力側L1とし、他方側を反出力側L2として説明する。
【0018】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係るステッピングモータ1を出力側L1からみた斜視図である。図2は、図1に示すステッピングモータ1を出力側L1からみた分解斜視図である。図3は、図1に示すステッピングモータ1を軸線Lに沿って切断したときの断面図である。
【0019】
図1図2および図3に示すステッピングモータ1である。図2および図3に示すように、ステッピングモータ1は、回転軸12の径方向外側にロータマグネット11を保持したロータ10と、ロータマグネット11の外周面に径方向外側で対向するステータ2とを有している。また、ステッピングモータ1は、ステータ2を径方向外側で覆う円筒状のケース3と、ケース3の反出力側L2の端部に溶接等の方法で固定された底板9とを有しており、底板9は、ステッピングモータ1をモータ機器(図示せず)に固定する際の取り付け板として構成されている。従って、底板9には、ケース3から径方向外側に突出した突出部91、92が形成されており、突出部91、92には、ステッピングモータ1をモータ機器に固定するための穴910、920が形成されている。
【0020】
ロータ10は、回転軸12の外周面に圧入等の方法で固定されたボス15を有しており、ボス15の外周面に円筒状のロータマグネット11が接着等の方法で固定されている。ロータマグネット11の外周面には、N極とS極が周方向において交互に配置されている。
【0021】
(ステータ2等の構成)
図4は、図1に示すステッピングモータ1に用いた絶縁部材5を出力側L1からみた斜視図である。図3に示すステータ2は、以下に説明するように、第1端子台57および第2端子台58を備えた絶縁部材5と、絶縁部材5の筒状胴部51、52に巻回されたコイ
ル213、223と、コイル213、223に対して軸線L方向の両側に配置されたステータコア211、212、221、222とを備えている。本形態において、ステータ2は、第1ステータ組21と、第1ステータ組21に対して軸線L方向に重ねて配置された第2ステータ組22とを有しており、第1ステータ組21および第2ステータ組22の各々が、絶縁部材5の筒状胴部51、52に巻回されたコイル213、223と、コイル213、223に対して軸線L方向の両側に配置されたステータコア211、212、221、222とを備えている。
【0022】
より具体的には、ステータコア211、212、221、222がインサート成形された樹脂製の絶縁部材5(図4参照)を有しており、絶縁部材5には、筒状胴部51、52が軸線L方向に配列されている。絶縁部材5には、筒状胴部51の出力側L1にフランジ部53が形成され、筒状胴部51の反出力側L2にはフランジ部54が形成されている。筒状胴部51の外周側でフランジ部53、54によって挟まれた空間内には、第1ステータ組21のコイル213が巻回されている。また、絶縁部材5には、筒状胴部52の出力側L1にフランジ部55が形成され、筒状胴部52の反出力側L2にはフランジ部56が形成されている。筒状胴部52の外周側でフランジ部55、56によって挟まれた空間内には、第2ステータ組22のコイル223が巻回されている。ここで、フランジ部54、55は繋がっている。
【0023】
第1ステータ組21において、フランジ部53の出力側L1には、フランジ部53によってステータコア211が保持され、フランジ部54の反出力側L2には、フランジ部54によってステータコア212が保持されている。第2ステータ組22において、フランジ部55の出力側L1には、フランジ部55によってステータコア222が保持され、フランジ部56の反出力側L2には、フランジ部56によってステータコア221が保持されている。従って、ステータコア211は、第1ステータ組21の外ステータコアであり、ステータコア212は、第1ステータ組21の内ステータコアである。ステータコア221は、第2ステータ組22の外ステータコアであり、ステータコア222は、第2ステータ組22の内ステータコアである。この状態で、ステータコア212、222(内ステータコア)は接する状態で重なっている。
【0024】
ステータコア211、212、221、222は各々、絶縁部材5の筒状胴部51、52の内周面に沿うように屈曲した複数の極歯217、227を備えている。第1ステータ組21を構成した状態で、ステータコア211に形成された極歯217は、ステータコア212に形成された極歯217の間に入り込み、ステータコア211に形成された極歯217とステータコア212に形成された極歯217とは、周方向に交互に配置された状態となる。また、第2ステータ組22を構成した状態で、ステータコア221に形成された極歯227は、ステータコア222に形成された極歯227の間に入り込み、ステータコア221に形成された極歯227とステータコア222に形成された極歯227とは、周方向に交互に配置された状態となる。
【0025】
このように構成したステータ2において、コイル213、223は、線材が樹脂層でコーティングされた自己融着線からなり、コイル213、223を絶縁部材5に巻回した後の熱処理および冷却によって、線材同士が樹脂層(コーティング層)によって固定された状態にある。
【0026】
絶縁部材5には、フランジ部54、55から径方向外側に突出した第1端子台57と、フランジ部56から径方向外側に突出した第2端子台58とが形成されている。第1端子台57には複数の端子ピン61が保持され、複数の端子ピン61にはコイル213を構成するコイル線(図示せず)の端部が巻回されている。第2端子台58には複数の端子ピン62が保持され、複数の端子ピン61には、コイル223を構成するコイル線(図示せず
)の端部が巻回されている。第1端子台57および第2端子台58は、絶縁部材5の同一の角度位置に形成されており、軸線L方向からみたとき重なっている。
【0027】
絶縁部材5には、出力側L1の端部に端板部50が形成されており、端板部50の中央には、回転軸12を貫通させる穴501が形成されている。端板部50には、穴501の周りから反出力側L2に突出した円筒部59が形成されており、円筒部59の内部には、回転軸12を回転可能に支持する第1軸受7が保持されている。本形態において、第1軸受7とロータ10のボス15との間には、ワッシャ41が配置されている。
【0028】
これに対して、反出力側L2では、底板9に穴93が形成されており、穴93には、回転軸12を回転可能に支持する第2軸受8が保持されている。本形態において、第2軸受8は、穴93に嵌った筒部81と、筒部81に対して反出力側L2で拡径して底板9に当接するフランジ部82とを有している。本形態において、第2軸受8とロータ10のボス15との間には、反出力側L2から出力側L1に向けて、環状のワッシャ42、環状のワッシャ43、環状の皿バネやコイルバネ等からなる付勢部材44、および環状のワッシャ45が配置されており、ロータ10は、付勢部材44によって出力側L1に向けて付勢されている。
【0029】
(ケース3の構成)
図5は、図1に示すステッピングモータ1をケース3の開口部32の側からみた側面図である。図1図2、および図5に示すように、ケース3は、ステータ2を径方向外側で覆う円筒部31と、絶縁部材5の端板部50を出力側L1に露出させた状態で絶縁部材5の外周部分に被さる枠部33とを有している。ケース3の円筒部31には、絶縁部材5の第1端子台57および第2端子台58を径方向外側に突出させる開口部32が形成されている。本形態において、開口部32は、円筒部31の反出力側L2の端部から出力側L1に向けて矩形形状に切り欠かれた部分からなり、開口部32の出力側L1の縁321には、さらに出力側L1に向けて凹んだ切り欠き324が形成されている。ここで、開口部32の周方向の寸法は、第1端子台57および第2端子台58の周方向の寸法と略同一である。このため、開口部32からは、ステータコア212、222(内ステータコア)が見えない状態にある。
【0030】
本形態では、開口部32において周方向の両側の縁322、323には、軸線L方向の途中位置に、周方向の他の部分より板厚が薄い矩形の薄板部326、327が形成されている。ここで、薄板部326、327は、ステータコア212、222に径方向外側で重なる位置に形成されている。
【0031】
(ケース3に対する溶接個所の構成)
このように構成したステッピングモータ1においては、図1および図5に示すように、ケース3とステータコア212、222(内ステータコア)の外周側の端部とは、ケース3の開口部32の周方向の両側で、開口部32の縁322、323または開口部32の近傍に設けられた溶接個所35(斜線を付した個所)で固着されている。本形態では、開口部32の縁322、323に形成した薄板部326、327において、ケース3とステータコア212、222とがレーザ溶接されている。本形態では、ステータコア212、222(内ステータコア)が軸線L方向において重なっていることから、ケース3の薄板部326、327においてステータコア212、222の間に相当する位置に向けてレーザスポットを照射し、ケース3とステータコア212とを溶接するとともに、ケース3とステータコア222とを溶接し、さらに、ステータコア212とステータコア222とを溶接する。ここで、溶接個所35は、薄板部326、327の中央に位置する。このため、溶接個所35は、開口部32の縁322、323ではないが、開口部32の近傍に位置する。
【0032】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のステッピングモータ1において、ケース3の円筒部31には開口部32が形成されているが、ケース3とステータコア212、222とは、開口部32の周方向の両側で、開口部32の近傍に設けられた溶接個所35で固着されている。このため、プレス加工等によりケース3に開口部32を設けた結果、開口部32付近でのケース3の形状精度が低下し、開口部32付近では、ケース3とステータコア212、222との間に隙間が発生した場合でも、ケース3の開口部32付近が振動しにくい。それ故、ケース3の開口部32付近での振動に起因する異音の発生を抑制することができる。
【0033】
また、ケース3には、開口部32の周方向の両側の縁322、323に、周方向の他の部分より板厚が薄い薄板部326、327が形成されている。このため、開口部32からは、ステータコア212、222が見えない状態にあるが、ステータコア212、222に径方向外側で重なる位置に薄板部326、327が形成されているので、レーザ溶接の際、ステータコア212、222が位置する個所にレーザスポットを確実に照射することができる。また、溶接個所35が薄板部326、327に設けられているため、ケース3を介してレーザスポットを照射した場合でも、レーザスポットによってステータコア212、222を確実に溶融させることができる。それ故、溶接による固着を確実かつ効率よく行うことができる。
【0034】
また、コイル213、223は、線材が樹脂層でコーティングされた自己融着線からなり、コイル213、223を巻回した後の熱処理および冷却によって、線材同士が樹脂層(コーティング層)によって固定された状態にある。このため、コイル213、223への給電によって励磁パターンを切り換えた際にコイル213、223が振動しにくい。それ故、コイル213、223の振動に起因する異音の発生を抑制することができる。
【0035】
[実施の形態2]
図6は、本発明の実施の形態2に係るステッピングモータ1をケース3の開口部32の側からみた側面図である。なお、本形態および後述する実施の形態3の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には、同一の符号を付してそれらの詳細な説明を省略する。
【0036】
図6に示すように、本形態のステッピングモータ1でも、実施の形態1と同様、ケース3の円筒部31には、絶縁部材5の第1端子台57および第2端子台58を径方向外側に突出させる開口部32が形成されている。本形態では、開口部32において周方向の両側の縁322、323には、図5を参照して説明した薄板部326、327に代えて、矩形の切り欠き328、329が形成されている。ここで、切り欠き328、329は、ステータコア212、222に径方向外側で重なる位置に形成されている。
【0037】
このように構成したステッピングモータ1においても、実施の形態1と同様、ケース3とステータコア212、222(内ステータコア)の外周側の端部とは、ケース3の開口部32の周方向の両側で、開口部32の縁322、323または開口部32の近傍に設けられた溶接個所35(斜線を付した個所)で固着されている。本形態では、開口部32の縁322、323のうち、切り欠き328、329の縁において、ケース3とステータコア212、222とがレーザ溶接されている。
【0038】
従って、本形態でも、実施の形態1と同様、開口部32付近では、ケース3とステータコア212、222との間に隙間が発生した場合でも、ケース3の開口部32付近が振動しにくい。それ故、ケース3の開口部32付近での振動に起因する異音の発生を抑制する
ことができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0039】
また、ケース3には、開口部32の周方向の両側の縁322、323に切り欠き328、329が形成されており、切り欠き328、329からは、ステータコア212、222が見える。従って、レーザ溶接の際、ステータコア212、222が位置する個所にレーザスポットを確実に照射することができる。また、溶接個所35が切り欠き328、329の縁であるため、レーザスポットによってステータコア212、222を確実に溶融させることができる。それ故、溶接による固着を確実かつ効率よく行うことができる。
【0040】
[実施の形態3]
図7は、本発明の実施の形態3に係るステッピングモータ1をケース3の開口部32の側からみた側面図である。図7に示すように、本形態のステッピングモータ1でも、実施の形態1と同様、ケース3の円筒部31には、絶縁部材5の第1端子台57および第2端子台58を径方向外側に突出させる開口部32が形成されている。本形態では、図5を参照して説明した薄板部326、327や図6を参照して説明した切り欠き328、329が形成されていない。
【0041】
このように構成したステッピングモータ1においても、実施の形態1、2と同様、ケース3とステータコア212、222(内ステータコア)の外周側の端部とは、ケース3の開口部32の周方向の両側で、開口部32の縁322、323または開口部32の近傍に設けられた溶接個所35(斜線を付した個所)で固着されている。本形態では、開口部32の縁322、323から周方向で離間した近傍位置において、ケース3とステータコア212、222とがレーザ溶接されている。
【0042】
従って、本形態でも、実施の形態1と同様、開口部32付近では、ケース3とステータコア212、222との間に隙間が発生した場合でも、ケース3の開口部32付近が振動しにくい。それ故、ケース3の開口部32付近での振動に起因する異音の発生を抑制することができる等、実施の形態1、2と同様な効果を奏する。
【0043】
[他の実施の形態]
上記実施の形態において、ケース3は、ステータコア211、221とは別体の金属部材からなっていたが、ステータコア211、221から軸線Lに沿って延在させた円筒部によってケース3が形成されている場合や、ステータコア211、221の一方から軸線Lに沿って延在させた円筒部によってケース3が形成されている場合に本発明を適用してもよい。上記実施の形態では、レーザ溶接を利用したが、他の溶接方法を採用してもよい。上記実施の形態では、第1ステータ組21および第2ステータ組22に共通の絶縁部材5が用いられていたが、第1ステータ組21および第2ステータ組22の各々に別体の絶縁部材5を用いた場合に本発明を適用してもよい。この場合、第1端子台57および第2端子台58が各々、別の絶縁部材に形成されるが、この場合も、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
L…軸線、L1…出力側、L2…反出力側、1…ステッピングモータ、2…ステータ、3…ケース、5…絶縁部材、10…ロータ、11…ロータマグネット、12…回転軸、21…第1ステータ組、22…第2ステータ組、31…円筒部、32…開口部、33…枠部、35…溶接個所、51、52…筒状胴部、57…第1端子台、58…第2端子台、61、62…端子ピン、211、212、221、222…ステータコア、213、223…コイル、217、227…極歯、322、323…縁、326、327…薄板部、328、329…切り欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7