特開2018-86742(P2018-86742A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2018086742-タイヤの加硫方法 図000003
  • 特開2018086742-タイヤの加硫方法 図000004
  • 特開2018086742-タイヤの加硫方法 図000005
  • 特開2018086742-タイヤの加硫方法 図000006
  • 特開2018086742-タイヤの加硫方法 図000007
  • 特開2018086742-タイヤの加硫方法 図000008
  • 特開2018086742-タイヤの加硫方法 図000009
  • 特開2018086742-タイヤの加硫方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-86742(P2018-86742A)
(43)【公開日】2018年6月7日
(54)【発明の名称】タイヤの加硫方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20180511BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20180511BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20180511BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-229863(P2016-229863)
(22)【出願日】2016年11月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 彰
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU03
4F202CX10
4F202CZ04
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203AR11
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
4F203DL12
(57)【要約】
【課題】セグメンテッドモールドを用いたタイヤの加硫方法において、加硫後のタイヤを取り出すためにモールドを型開き状態にするときに、ジャケットリングにセグメントを適切に収納できるようにする。
【解決手段】モールド1を型開き状態にする工程が、ジャケットリング22を上昇させることにより、セグメント21を径方向外側に移動させ、ジャケットリング22からセグメント21が下方へ突出した状態にする第1の段階と、ジャケットリング22を更に上昇させ、ジャケットリング22とセグメント21を一緒に上昇させる第2の段階と、ジャケットリング22の上昇を停止して、セグメント21を上昇させることにより、ジャケットリング22の径方向内側にセグメント21を収納する第3の段階とを含み、第1または第2の段階においてブラダー3を膨張させ、第3の段階においてジャケットリング22が上昇を停止するまでにブラダー3を収縮させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド面を成形するための複数のセクターと、前記タイヤのサイド面を成形するための一対のサイドプレートとを備えるモールドを用いたタイヤの加硫方法において、
前記モールドは、前記セクターを保持する複数のセグメントと、前記セグメントのタイヤ径方向外側に配置されたジャケットリングとを有するコンテナに格納されており、
前記セグメントの外側面と、それに係合する前記ジャケットリングの内側面とが、互いに同じ傾斜を有するテーパ面で形成されていて、前記ジャケットリングの昇降に伴って前記セグメントがタイヤ径方向に移動するように構成されており、
加硫後のタイヤを取り出すために前記モールドを型開き状態にする工程が、
前記ジャケットリングを上昇させることにより、前記セグメントをタイヤ径方向外側に移動させ、前記ジャケットリングから前記セグメントが下方へ突出した状態にする第1の段階と、
前記ジャケットリングを更に上昇させ、前記ジャケットリングと前記セグメントを一緒に上昇させる第2の段階と、
前記ジャケットリングの上昇を停止して、前記セグメントを上昇させることにより、前記ジャケットリングのタイヤ径方向内側に前記セグメントを収納する第3の段階とを含み、
前記第1または第2の段階において前記タイヤの内部に配置されているブラダーを膨張させ、前記第3の段階において前記ジャケットリングが上昇を停止するまでに前記ブラダーを収縮させることを特徴とするタイヤの加硫方法。
【請求項2】
前記第1の段階で前記ジャケットリングが上昇を開始する時点では前記ブラダーを収縮させておく請求項1に記載のタイヤの加硫方法。
【請求項3】
前記第1または第2の段階で前記ブラダーを膨張させてから収縮させるまでの間、前記ジャケットリングの上昇を一時停止することなく連続的に行う請求項1または2に記載のタイヤの加硫方法。
【請求項4】
前記第1の段階において、前記セクターが前記タイヤのトレッド面から離れていて且つ一対の前記サイドプレートが前記タイヤのサイド面に接している状態で、前記ブラダーを膨張させる請求項1〜3いずれか1項に記載のタイヤの加硫方法。
【請求項5】
前記第2の段階において、一対の前記サイドプレートのうち上方に位置するサイドプレートが上昇を開始した後で、前記ブラダーを膨張させる請求項1〜3いずれか1項に記載のタイヤの加硫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるセグメンテッドモールドを用いたタイヤの加硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの加硫に用いられるモールドとして、いわゆるセグメンテッドモールドが知られている(例えば、特許文献1〜3)。セグメンテッドモールドは、タイヤのトレッド面を成形するための複数のセクターと、そのタイヤのサイド面を成形するための一対のサイドプレートとを備える。タイヤの加硫時には、環状に連なった複数のセクターが一対のサイドプレートに密着して型閉め状態となる。加硫後は、それらが分離して型開き状態となり、加硫済みタイヤがモールドから取り出される。
【0003】
かかるモールドは、セクターを保持する複数のセグメントと、そのセグメントのタイヤ径方向外側に配置されたジャケットリングとを有するコンテナに格納される。セグメントの外側面と、それに係合するジャケットリングの内側面とは、互いに同じ傾斜を有するテーパ面で形成されており、ジャケットリングの昇降に伴ってセグメントがタイヤ径方向に移動する。上述した型閉め状態と型開き状態との間でのモールドの変位、即ちモールドの開閉は、コンテナの動作に応じて実行される。
【0004】
加硫後のタイヤを取り出すためにモールドを型開き状態にする工程では、ジャケットリングを上昇させることにより、セグメントをタイヤ径方向外側に移動させ、タイヤのトレッド面からセクターを引き離す。このとき、セグメントはジャケットリングから下方へ突出した状態となり、その状態のままジャケットリングと一緒に上昇する。また、これらと一緒に上方のサイドプレートも上昇し、それによってタイヤのサイド面から該サイドプレートが引き離される。
【0005】
ある程度の高さまで上昇したセグメントとジャケットリングは、タイヤの取り出しを妨げないようにタイヤから更に離れた場所へ退去させられる。これらを退去させる動作としては、水平軸の周りで90度回転させる、水平移動させる、あるいは更に上昇させるなど、種々のタイプがある。いずれにしても、ジャケットリングからセグメントが下方へ突出した状態は不安定であるため、そのジャケットリングのタイヤ径方向内側にセグメントを収納したうえで実行される。
【0006】
しかし、ジャケットリングに収納するときのセグメントは、殆ど自重でぶら下がっている状態にあるため、振動によりジャケットリングに対して位置ずれを起こすことがあった。位置ずれを起こしたセグメントはジャケットリングに適正な姿勢で収納されず、その結果、意図しない接触を起こした部位でセクターやセグメントが破損する恐れがあった。かかる観点から、収納前のセグメントの振動を抑える手法が望まれるものの、それに適した具体的な方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−126457号公報
【特許文献2】特開2011−46069号公報
【特許文献3】特開2014−113717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セグメンテッドモールドを用いたタイヤの加硫方法において、加硫後のタイヤを取り出すためにモールドを型開き状態にするときに、ジャケットリングにセグメントを適切に収納できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ジャケットリングに収納するときのセグメントの振動について調査を行い、ジャケットリングの上昇動作、モールドに対するタイヤの密着、特に上方のサイドプレートに対するタイヤの密着、及び、ブラダーの作動(膨張)が、セグメントの振動の原因になりうることを見出した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、下記の如き構成により上記目的を達成できる。
【0010】
本発明に係るタイヤの加硫方法は、タイヤのトレッド面を成形するための複数のセクターと、前記タイヤのサイド面を成形するための一対のサイドプレートとを備えるモールドを用いたタイヤの加硫方法において、前記モールドは、前記セクターを保持する複数のセグメントと、前記セグメントのタイヤ径方向外側に配置されたジャケットリングとを有するコンテナに格納されており、前記セグメントの外側面と、それに係合する前記ジャケットリングの内側面とが、互いに同じ傾斜を有するテーパ面で形成されていて、前記ジャケットリングの昇降に伴って前記セグメントがタイヤ径方向に移動するように構成されており、加硫後のタイヤを取り出すために前記モールドを型開き状態にする工程が、前記ジャケットリングを上昇させることにより、前記セグメントをタイヤ径方向外側に移動させ、前記ジャケットリングから前記セグメントが下方へ突出した状態にする第1の段階と、前記ジャケットリングを更に上昇させ、前記ジャケットリングと前記セグメントを一緒に上昇させる第2の段階と、前記ジャケットリングの上昇を停止して、前記セグメントを上昇させることにより、前記ジャケットリングのタイヤ径方向内側に前記セグメントを収納する第3の段階とを含み、前記第1または第2の段階において前記タイヤの内部に配置されているブラダーを膨張させ、前記第3の段階において前記ジャケットリングが上昇を停止するまでに前記ブラダーを収縮させるものである。
【0011】
この方法では、加硫後のタイヤを取り出すためにモールドを型開き状態にする際に、ジャケットリングの上昇を停止したうえでセグメントを上昇させて収納するため、ジャケットリングの上昇動作に起因したセグメントの振動が抑制される。また、第1または第2の段階でブラダーを膨張させることにより、上方のサイドプレートからタイヤがスムーズに引き離され、タイヤの密着に起因したセグメントの振動も抑制される。更には、第3の段階でジャケットリングが上昇を停止するまでにブラダーを収縮させるので、ブラダーの作動に起因したセグメントの振動も抑制される。したがって、この方法によれば、振動によるセグメントの位置ずれを防いで、ジャケットリングにセグメントを適切に収納することができる。
【0012】
前記第1の段階で前記ジャケットリングが上昇を開始する時点では前記ブラダーを収縮させておくことが好ましい。これによりコンテナの負荷を軽減しうるとともに、安全性が高められる。
【0013】
前記第1または第2の段階で前記ブラダーを膨張させてから収縮させるまでの間、前記ジャケットリングの上昇を一時停止することなく連続的に行うことが好ましい。これによりサイクルタイムの悪化を抑えられるとともに、コンテナの負荷を軽減できる。
【0014】
前記第1の段階において、前記セクターが前記タイヤのトレッド面から離れていて且つ一対の前記サイドプレートが前記タイヤのサイド面に接している状態で、前記ブラダーを膨張させることが好ましい。この場合、比較的早い段階でブラダーを膨張させるため、セグメントに振動を伝達させないうえで都合がよい。尚、サイドプレートがタイヤに接していても、セクターがタイヤから離れているので、膨張させたブラダーによってタイヤに多少の動きや変形を与えて、離型を促すことができる。
【0015】
前記第2の段階において、一対の前記サイドプレートのうち上方に位置するサイドプレートが上昇を開始した後で、前記ブラダーを膨張させるものでもよい。かかる方法によれば、上方のサイドプレートにタイヤが密着した状況において、膨張させたブラダーにより該サイドプレートからタイヤを引き離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】空気入りタイヤの加硫に用いられるタイヤ加硫装置の一例を概略的に示す断面図
図2】タイヤを加硫する状態を示す断面図
図3】ジャケットリングが上昇を開始したときの状態を示す断面図
図4】ジャケットリングが上昇する途中の状態を示す断面図
図5】セグメントをタイヤ径方向外側に移動させた状態を示す断面図
図6】ジャケットリングとセグメントを一緒に上昇させた状態を示す断面図
図7】ジャケットリングにセグメントを収納した状態を示す断面図
図8】モールドの型開き率及びブラダーの内圧の経時的変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、空気入りタイヤの加硫に用いられるタイヤ加硫装置を示す。このタイヤ加硫装置は、いわゆるセグメンテッドモールドとしてのモールド1と、そのモールド1が格納されたコンテナ2と、図1では図示しないゴム袋状のブラダー3とを備えている。タイヤは、後述するようにタイヤ軸方向を上下に向けてセットされ、図1の左方向がタイヤ径方向外側、同じく右方向がタイヤ径方向内側となる。ブラダー3は、加熱加圧媒体が供給されることによって膨張し、加硫時にはタイヤの内面に押し当てられる。
【0019】
モールド1は、タイヤのトレッド面を成形するための複数のセクター11と、そのタイヤのサイド面を成形するための一対のサイドプレート12,13とを備える。図1に示す型締め状態では、タイヤ周方向に分割された複数のセクター11が寄り集まって環状に連なり、サイドプレート12,13に密着している。図示していないが、セクター11には、タイヤのトレッド面に溝を形成するための突起が設けられている。サイドプレート12,13のタイヤ径方向内側には、それぞれタイヤのビード部を嵌合するための一対のビードリング14,15が設けられている。
【0020】
コンテナ2は、セクター11を保持する複数のセグメント21と、そのセグメント21のタイヤ径方向外側に配置されたジャケットリング22とを有する。一般には、1つのセグメント21が1つのセクター11を保持する。ジャケットリング22は、環状に設けられている。セグメント21の外周面と、それに係合するジャケットリング22の内周面とは、それぞれ互いに同じ傾斜を有するテーパ面により形成されていて、ジャケットリング22の昇降に伴ってセグメント21がタイヤ径方向に移動するように構成されている。該テーパ面は、それぞれ下方に向かってタイヤ径方向外側に傾斜している。
【0021】
上プレート23は、昇降可能に構成されており、例えば油圧装置によって駆動される。上プレート23の下面には、一対のサイドプレート12,13のうち上方に位置するサイドプレート12が取り付けられている。また、上プレート23の下面には、セグメント21がタイヤ径方向に沿って摺動可能に支持されている。下プレート24の上面には、下方に位置するサイドプレート13が取り付けられている。アーム25は、上プレート23の上面に立設されたガイド26に昇降可能に取り付けられている。ジャケットリング22は、そのアーム25によって支持され、セグメント21に対して相対的に昇降可能に構成されている。
【0022】
ジャケットリング22は、摺動レール27を介してセグメント21と係合している。本実施形態では、摺動レール27が、ジャケットリング22のテーパ面(内側面)に形成された係合溝と、セグメント21のテーパ面(外側面)に形成された突起により構成されている。摺動レール27の断面形状は特に限定されず、係合溝と突起の位置関係は反対でも構わない。ジャケットリング22を昇降させると、テーパ面同士の摺動を伴ってセグメント21がタイヤ径方向に移動し、そのセグメント21に保持されているセクター11がそれに追従する。
【0023】
モールド1は、セクター11と一対のサイドプレート12,13とが互いに密着した型閉め状態(図1,2参照)と、それらを分離させた型開き状態との間で、開閉自在に構成されている。この型閉め状態と型開き状態との間でのモールド1の変位、即ちモールド1の開閉は、コンテナ2の動作に応じて行われる。図示していないが、タイヤ加硫装置には、コンテナ2を駆動する駆動装置や、セクター11及びサイドプレート12,13を加熱する加熱手段、コンテナ2やブラダー3など各部材の動作を制御する制御部が設けられており、これらには従来公知の構成を適用可能である。
【0024】
このモールド1を用いたタイヤの加硫方法について説明する。まず、型開き状態にあるモールド1に未加硫のタイヤTをセットする(セット工程)。次に、モールド1を型閉め状態とし、図2に示すように、互いに密着させたセクター11と一対のサイドプレート12,13をタイヤTの外面に押し当てるとともに、膨張させたブラダー3をタイヤTの内面に押し当てて、タイヤTの加硫を行う(加硫工程)。加硫においては、従来公知の加硫条件を適用できる。タイヤTの加硫後、セクター11と一対のサイドプレート12,13とを分離し、モールド1を型開き状態にする(型開き工程)。そして、型開き状態にしたモールド1から加硫後のタイヤTを取り出す(脱型工程)。
【0025】
後述するように、上記の型開き工程では、セグメント21がジャケットリング22から下方へ突出した状態となる(図5参照)。また、それらを上昇させた後で、ジャケットリング22のタイヤ径方向内側にセグメント21を収納する。その際、ジャケットリング22からぶら下がっているセグメント21に振動が伝達されると、セグメント21が位置ずれを起こして適正な姿勢で収納されない恐れがある。そこで、本実施形態では、そのようなセグメント21の振動を抑えるために、モールド1を型開き状態にする工程を下記のように実行する。
【0026】
即ち、加硫後のタイヤTを取り出すためにモールド1を型開き状態にする工程では、まず、図2の型閉め状態から、図3〜5に順に示すようにジャケットリング22を上昇させる。これにより、セグメント21をタイヤ径方向外側に移動させ、ジャケットリング22からセグメント21が下方へ突出した状態にする(第1の段階)。この段階では、各セクター11が拡径してタイヤTのトレッド面から引き離される。本実施形態では、コンテナ2の負荷軽減と安全性向上の観点から、第1の段階でジャケットリング22が上昇を開始する時点ではブラダー3を収縮させている(図3参照)。
【0027】
次に、図6に示すように、ジャケットリング22を更に上昇させ、ジャケットリング22とセグメント21を一緒に上昇させる(第2の段階)。この段階では、それらと一緒に上方のサイドプレート12も上昇することにより、そのサイドプレート12がタイヤTのサイド面から引き離される。尚、図6に示したセグメント21は、ジャケットリング22に対して摺動レール27のストッパーを介して留まっており、殆ど自重でぶら下がっている状態にあるため不安定で且つ振動が伝わりやすい。
【0028】
続いて、ジャケットリング22の上昇を停止して、図7に示すようにセグメント21を上昇させることにより、ジャケットリング22のタイヤ径方向内側にセグメント21を収納する(第3の段階)。この動作は、アーム25の上昇動作を停止したうえで、上プレート23を上昇させることにより実行できる。このようにジャケットリング22の上昇を停止したうえでセグメント21を収納することにより、ジャケットリング22の上昇動作に起因したセグメント21の振動が抑制される。
【0029】
図7のモールド1は、タイヤTの出し入れが可能となる型開き状態にあるが、本実施形態では、タイヤTの取り出しを妨げないように、第3の段階によるセグメント21の収納を終えた後で、ジャケットリング22やセグメント21などを水平軸の周りで90度回転させて、タイヤTから更に離れる場所へ退去させる(第4の段階)。したがって、第3の段階におけるジャケットリング22の停止は、一時的な停止となる。かかる退去のための動作は、水平移動させる、あるいは更に上昇させるなど、別の態様でも構わない。
【0030】
モールド1を型開き状態にする工程は、上述のような第1〜第3の段階を含み、そのうえで、図4に示すように、第1または第2の段階において(本実施形態では、第1の段階において)タイヤTの内部に配置されているブラダー3を膨張させる。更には、図5に示すように、第3の段階においてジャケットリング22が上昇を停止するまでにブラダー3を収縮させる。別の言い方をすると、第1の段階でジャケットリング22が上昇を開始してから、第3の段階でジャケットリング22が上昇を停止するまでの間に、ブラダー3の膨張と収縮を行う。ブラダー3は、加熱加圧媒体が排出されることにより収縮する。
【0031】
このようにしてブラダー3を膨張させることにより、タイヤTの離型が促され、サイドプレート12からタイヤTがスムーズに引き離される。そのため、サイドプレート12へのタイヤTの密着に起因したセグメント21の振動が抑制される。更には、第3の段階でジャケットリング22が上昇を停止するまでにブラダー3を収縮させるので、ブラダー3の作動(膨張)に起因したセグメント21の振動も抑制される。したがって、本実施形態によれば、振動によるセグメント21の位置ずれを防いで、ジャケットリング22にセグメント21を適切に収納することができる。
【0032】
本実施形態では、図4のように、第1の段階において、セクター11がタイヤTのトレッド面から離れていて且つ一対のサイドプレート12,13がタイヤTのサイド面に接している状態で、ブラダー3を膨張させる。この場合、比較的早い段階でブラダー3を膨張させるため、セグメント21に振動を伝達させないうえで都合がよい。サイドプレート12,13がタイヤTに接していても、セクター11がタイヤTから離れているので、膨張させたブラダー3によってタイヤTに多少の動きや変形を与えて、離型を促すことができる。
【0033】
図8のグラフは、モールド1の型開き率及びブラダー3の内圧の経時的変化を示している。横軸の時間は、ジャケットリング22が上昇動作を開始する時点を原点とする。縦軸の型開き率は、型閉め状態をゼロとし、ジャケットリング22が退去した型開き状態を100としたときの、ジャケットリング22の動作の進行度合を表す。したがって、ジャケットリング22が動作を停止している間は、この型開き率が変化しない。
【0034】
型開き工程を開始する時点、即ちジャケットリング22が上昇を開始する時点では、ブラダー3の内圧が実質的にゼロであり、ブラダー3は収縮している。モールド1の型開き率は、ジャケットリング22の上昇開始から直線的に変化し、途中で変化しない期間を挟んで、再び直線的に変化している。型開き率が直線的に変化する期間では、ジャケットリング22の動作が連続的に行われている。型開き率が変化しない期間は、ジャケットリング22が上昇を停止する第3の段階に相当し、この段階でセグメント21がジャケットリング22に収納される。
【0035】
図8の通り、ジャケットリング22が上昇を開始してから数秒(例えば1〜2秒)の遅延を経た時点において、ブラダー3の内圧が一時的に高い。この内圧の高いピーク付近ではブラダー3が図4のように膨張し、これによりサイドプレート12からタイヤTが確実に引き離される。このブラダー3の再膨張は短時間でよく、例えば3〜4秒に設定される。型開き率が変化しない期間が始まる時点で、ブラダー3の内圧は十分に低くなっており、これは、第3の段階においてジャケットリング22が上昇を停止するまでにブラダー3が収縮していることを表す。
【0036】
図8のグラフにおいて、ブラダー3の内圧が一時的に高い間、型開き率は直線的に変化している。このように、本実施形態では、第1または第2の段階でブラダー3を膨張させてから収縮させるまでの間、ジャケットリング22の上昇を一時停止することなく連続的に行っている。これにより、サイクルタイムの悪化を抑えられるとともに、コンテナ2の負荷を軽減できる。
【0037】
本実施形態では、図4のように一対のサイドプレート12,13がタイヤTのサイド面に接している状態でブラダー3を膨張させる例を示したが、これに代えて、第2の段階において、一対のサイドプレート12,13のうち上方に位置するサイドプレート12が上昇を開始した後で、ブラダー3を膨張させてもよい。その場合、ブラダー3の膨張と収縮は、図5に示す状態から図6に示す状態に移行する過程で行われる。
【0038】
本発明に係るタイヤの加硫方法は、セグメンテッドモールドを用いてタイヤの加硫を行うに際し、モールドを型開き状態にする工程を上記の如く実施する点を除けば、通常のタイヤの加硫方法と同様であり、従来公知の工程や装置などは何れも本発明に適用できる。
【0039】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 モールド
2 コンテナ
3 ブラダー
11 セクター
12 サイドプレート
13 サイドプレート
14 ビードリング
15 ビードリング
21 セグメント
22 ジャケットリング
23 上プレート
24 下プレート
25 アーム
26 ガイド
27 摺動レール
T タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8