特開2018-87140(P2018-87140A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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2018-871401−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの新規結晶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-87140(P2018-87140A)
(43)【公開日】2018年6月7日
(54)【発明の名称】1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの新規結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 409/10 20060101AFI20180511BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20180511BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180511BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20180511BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20180511BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20180511BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20180511BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20180511BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20180511BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20180511BHJP
【FI】
   C07D409/10CSP
   A61K31/381
   A61P3/10
   A61P27/02
   A61P9/10
   A61P13/12
   A61P17/02
   A61P3/06
   A61P3/04
   A61P9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-38074(P2015-38074)
(22)【出願日】2015年2月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(72)【発明者】
【氏名】上田 啓太
(72)【発明者】
【氏名】升田 明孝
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕生
(72)【発明者】
【氏名】南條 豪宏
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB06
4C063CC92
4C063DD78
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA03
4C086AA04
4C086BB02
4C086GA02
4C086GA04
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZC33
4C086ZC35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安定性に優れているため、医薬品原薬及びその中間体として有用である1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの新規結晶の提供。
【解決手段】1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を良溶媒中、又は貧溶媒中、水又は水と良溶媒の混合物中で撹拌する、加温条件下に減圧条件にて乾燥する工程などを含む方法で製造される結晶。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶。
【請求項2】
粉末X線結晶回折パターンが以下の2θを含む、請求項1に記載の結晶:5.82°±0.2°、6.78°±0.2°、10.54°±0.2°、12.56°±0.2°、17.56°±0.2°、19.16°±0.2°、21.34°±0.2°、23.80°±0.2°、27.84°±0.2°及び31.90°±0.2°。
【請求項3】
粉末X線結晶回折パターンが実質的に図1と同一である、請求項1に記載の結晶。
【請求項4】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶。
【請求項5】
粉末X線結晶回折パターンが以下の2θを含む、請求項4に記載の結晶:4.16°±0.2°、8.38°±0.2°、12.10°±0.2°、17.50°±0.2°、19.30°±0.2°、20.46°±0.2°、22.26°±0.2°、24.70°±0.2°、29.10°±0.2°及び30.84°±0.2°。
【請求項6】
粉末X線結晶回折パターンが実質的に図2と同一である、請求項4に記載の結晶。
【請求項7】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体の結晶。
【請求項8】
粉末X線結晶回折パターンが以下の2θを含む、請求項7に記載の結晶:4.04°±0.2°、9.86°±0.2°、12.76°±0.2°、15.02°±0.2°、15.68°±0.2°、17.58°±0.2°、19.08°±0.2°、19.94°±0.2°、20.32°±0.2°及び25.86°±0.2°。
【請求項9】
粉末X線結晶回折パターンが実質的に図3と同一である、請求項7に記載の結晶。
【請求項10】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体の結晶。
【請求項11】
粉末X線結晶回折パターンが以下の2θを含む、請求項10に記載の結晶:4.06°±0.2°、8.20°±0.2°、9.86°±0.2°、15.68°±0.2°、18.72°±0.2°、19.92°±0.2°、20.32°±0.2°、21.42°±0.2°、27.54°±0.2°及び32.94°±0.2°。
【請求項12】
粉末X線結晶回折パターンが実質的に図4と同一である、請求項10に記載の結晶。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の結晶及び薬理的に許容し得る担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を良溶媒中、又は貧溶媒中で撹拌する工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の結晶を製造する方法。
【請求項15】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を、水又は水と良溶媒の混合物中で撹拌する工程を含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の結晶を製造する方法。
【請求項16】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を加温条件下に減圧条件にて乾燥する工程を含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の結晶を製造する方法。
【請求項17】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物を加温条件下に減圧条件にて乾燥する工程を含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の結晶を製造する方法。
【請求項18】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物を、水と良溶媒の混合物中、又は水と貧溶媒の混合物中で撹拌する工程を含む、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の結晶を製造する方法。
【請求項19】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物を、良溶媒中、又は貧溶媒中で撹拌する工程を含む、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の結晶を製造する方法。
【請求項20】
糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、食後高血糖症、遅延創傷治癒、インスリン抵抗性、高血糖症、高インスリン血症、高脂肪酸血症、高グリセロール血症、高脂血症、肥満症、高トリグリセリド血症、X症候群、アテローム硬化症または高血圧症の処置又は進行もしくは発症を遅延させるための方法であって、薬効量の請求項1〜12のいずれか一項に記載の結晶を投与する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの新規な結晶及びそれらを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンはナトリウム依存性グルコース輸送担体(SGLT)の阻害剤として有用な、カナグリフロジンとしても知られる化合物である。SGLT阻害剤は、2型糖尿病やその合併症の処置又は進行もしくは発症の遅延に有効である。
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの構造は下式[I]:
【化1】

で示され、その製法及び薬効と共に特許文献1に開示されている。
【0003】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの半水和物は結晶として存在することが特許文献2及び3に開示されている。また、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンはアミノ酸との共結晶を形成することも特許文献4に開示されている。
さらに、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの不定比水和物の結晶も特許文献5に開示されている。
しかし、依然として新たな安定した1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの結晶は望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2005/012326
【特許文献2】WO2008/069327
【特許文献3】WO2009/035969
【特許文献4】WO2012/154812
【特許文献5】WO2014/180872
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの新規な結晶に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンについて種々検討した結果、これまでには見出されていなかった4種の新たな結晶形が存在することを見出した。これら4種の新規な結晶を、既存の1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物から水分値を調整する簡便な操作によって得る方法を併せて見出した。さらに、これら4種の新規な結晶から1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物へ簡便な操作により変換する方法も見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のいずれかに関する。
(1)1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶;
(2)粉末X線結晶回折パターンが以下の2θを含む、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶:5.82°±0.2°、6.78°±0.2°、10.54°±0.2°、12.56°±0.2°、17.56°±0.2°、19.16°±0.2°、21.34°±0.2°、23.80°±0.2°、27.84°±0.2°及び31.90°±0.2°;
(3)粉末X線結晶回折パターンが実質的に図1と同一である、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶;
(4)1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶;
(5)粉末X線結晶回折パターンが以下の2θを含む、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶:4.16°±0.2°、8.38°±0.2°、12.10°±0.2°、17.50°±0.2°、19.30°±0.2°、20.46°±0.2°、22.26°±0.2°、24.70°±0.2°、29.10°±0.2°及び30.84°±0.2°;
(6)粉末X線結晶回折パターンが実質的に図2と同一である、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶;
(7)1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体の結晶;
(8)粉末X線結晶回折パターンが以下の2θを含む、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体の結晶:4.04°±0.2°、9.86°±0.2°、12.76°±0.2°、15.02°±0.2°、15.68°±0.2°、17.58°±0.2°、19.08°±0.2°、19.94°±0.2°、20.32°±0.2°及び25.86°±0.2°;
(9)粉末X線結晶回折パターンが実質的に図3と同一である、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体の結晶;
(10)1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体の結晶;
(11)粉末X線結晶回折パターンが以下の2θを含む、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体の結晶:4.06°±0.2°、8.20°±0.2°、9.86°±0.2°、15.68°±0.2°、18.72°±0.2°、19.92°±0.2°、20.32°±0.2°、21.42°±0.2°、27.54°±0.2°及び32.94°±0.2°;
(12)粉末X線結晶回折パターンが実質的に図4と同一である、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体の結晶;
(13)上記(1)〜(12)のいずれか一項に記載の結晶及び薬理的に許容し得る担体を含む医薬組成物;
(14)1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を良溶媒中、又は貧溶媒中で撹拌する工程を含む、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の結晶を製造する方法;
(15)1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を、水又は水と良溶媒の混合物中で撹拌する工程を含む、上記(4)〜(6)のいずれか一項に記載の結晶を製造する方法;
(16)1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を加温条件下に減圧条件にて乾燥する工程を含む、上記(7)〜(9)のいずれか一項に記載の結晶を製造する方法;
(17)1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物を加温条件下に減圧条件にて乾燥する工程を含む、上記(10)〜(12)のいずれか一項に記載の結晶を製造する方法;
(18)1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物を、水と良溶媒の混合物中、又は水と貧溶媒の混合物中で撹拌する工程を含む、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の結晶を製造する方法;
(19)1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物を、良溶媒中、又は貧溶媒中で撹拌する工程を含む、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の結晶を製造する方法;
(20)糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、食後高血糖症、遅延創傷治癒、インスリン抵抗性、高血糖症、高インスリン血症、高脂肪酸血症、高グリセロール血症、高脂血症、肥満症、高トリグリセリド血症、X症候群、アテローム硬化症または高血圧症の処置又は進行もしくは発症を遅延させるための方法であって、薬効量の上記(1)〜(12)のいずれか一項に記載の結晶を投与する工程を含む方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の結晶は、医薬として有用なカナグリフロジンの新規な結晶形である。いずれの結晶も、操作性の良い、医薬品原薬として有用な結晶形である。また、いずれの結晶も、商業的スケールにて再現可能な簡便な操作により、単一の結晶形として製造することができる。とりわけ、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶及び1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶は、通常の保存条件下で安定に長期間保存することができ、簡便な操作により1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の結晶へ変換できることから、医薬品原薬としてのみならず、医薬中間体としても有用な結晶形である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物結晶の粉末X線結晶回折パターンを示す図である。
図2】1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物結晶の粉末X線結晶回折パターンを示す図である。
図3】1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体結晶の粉末X線結晶回折パターンを示す図である。
図4】1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体結晶の粉末X線結晶回折パターンを示す図である。
図5】1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物結晶の示差走査熱分析(DSC)曲線を示す図である。
図6】1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物結晶の示差走査熱分析(DSC)曲線を示す図である。
図7】1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体結晶の示差走査熱分析(DSC)曲線を示す図である。
図8】1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体結晶の示差走査熱分析(DSC)曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、操作性が良い結晶とは、濾過が容易であり、乾燥しやすい結晶を意味する。
本発明において、医薬品原薬として有用な結晶とは、生体又はそれに近い条件で十分な溶解度や吸収性を示す結晶を意味する。
本発明において、通常の保存条件下で安定に長期間保存できるとは、温度が25℃、40℃又は60℃であり、湿度が75%RHである条件において、3ヶ月まで結晶形の変化や類縁物質の増加等が起こらないか又は極めて少ないことを意味する。
本発明において、脱水とは、半水和物結晶または1水和物結晶の結晶格子から水分子が脱離することを意味し、脱水体とは脱水の結果生じた生成物を意味する。
【0011】
結晶形を特徴づけるための方法はいくつか存在するが、例えば、粉末X線結晶回折パターン、示差走査熱分析(DSC)曲線、単結晶X線解析などによる方法が挙げられる。本発明の結晶の結晶形は、以下の条件にて測定した。
【0012】
粉末X線結晶回折パターン
測定機器:RINT−TTRIII(リガク)
走査速度:4°/分
X線:CuKα
電圧:50kV
電流:300mA
走査範囲:3〜40°
サンプリング幅:0.02°
【0013】
DSC曲線
測定機器:DSC822e(メトラートレド)
加熱速度:10℃/分
【0014】
単結晶X線回折
測定機器:R−AXIS RAPID/R(リガク)
X線:CuKα
格子定数の決定及び回折ピーク強度の測定後、直接法による位相決定、フルマトリクス最小二乗法による結晶構造精密化を行った。
【0015】
水分値
測定機器:CA−200(三菱化学)
測定方式:電量滴定方式
陽極液:アクアミクロン(登録商標)AX
陰極液:アクアミクロン(登録商標)CXU
【0016】
本発明における好ましい貧溶媒の例としては、ケトン(例えば、アセトン、2−ブタノン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル)及びこれらの溶媒の混合物が挙げられる。特にエステルが好ましい。また良溶媒の例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン)及びこれらの溶媒の混合物が挙げられる。特にアルコールが好ましい。
また、本発明の方法により生成した結晶は、溶媒との混合物からろ過により取得し、要すれば乾燥することにより単離することができる。乾燥は常法に従って、脱水が起こらない程度に実施すればよく、例えば、室温〜加温下に常圧〜減圧下で乾燥させる。
【0017】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶は、図1に示される粉末X線結晶回折パターンにより特徴づけられる。粉末X線結晶回折パターンにおける特徴的なピークとしては、2θ値として5.82°±0.2°、6.78°±0.2°、10.54°±0.2°、12.56°±0.2°、17.56°±0.2°、19.16°±0.2°、21.34°±0.2°、23.80°±0.2°、27.84°±0.2°及び31.90°±0.2°が挙げられる。
【0018】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶は、図5に示されるDSC曲線により特徴づけられる。DSCにおいて123℃〜140℃に融解に伴う吸熱を観測しており、ピーク温度は134℃、吸熱開始温度は130℃、融解熱は−140mJである。
【0019】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶の単結晶X線回折による結晶パラメータは次に示す通りである。
格子定数 a=14.063(6)Å
b=4.924(3)Å
c=16.427(8)Å
α=γ=90°、β=113.11(3)°
V=1046.3(9)Å
晶系 Monoclinic
空間群 P2
z値 2
密度Dcalc 1.411g/cm
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶は、晶系はMonoclinic、空間群はP21、z値は2で、非対称単位中に1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1分子のみが存在する結晶である。また本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶の理論含水量は0%に対し、水分値は0%を示した。これらのことから、該結晶が無水物の結晶であると判明した。
【0020】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を良溶媒又は貧溶媒中で撹拌することにより得ることができる。
ここにおいて、良溶媒の好ましい例としてはアルコールが挙げられる。特にメタノールが好ましい。貧溶媒の好ましい例としてはエステルが挙げられる。特に酢酸イソプロピルが好ましい。良溶媒は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gあたり0.30〜0.50mL用いることが好ましく、特に0.35〜0.40mLが好ましい。貧溶媒は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gあたり3.4〜6.0mL用いることが好ましい。特に4.5〜5.0mLが好ましい。
また、ここにおいて、良溶媒中での撹拌温度は0℃〜30℃が好ましく、特に25℃〜30℃が好ましい。一方、貧溶媒中での撹拌温度は38℃〜80℃が好ましく、特に45℃〜70℃が好ましい。
【0021】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を良溶媒又は貧溶媒に溶解させた後、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の種晶を接種することにより製造することもできる。
とりわけ、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を良溶媒又は貧溶媒に加温下溶解させた後、該溶液を冷却し、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の種晶を接種する方法が好ましい。
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の溶解液の調製においては、貧溶媒を用いる場合には、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gあたり4.0〜6.0mL用いることが好ましく、特に4.5〜5mLが好ましい。また溶解温度は65℃〜90℃が好適であり、特に65℃〜72℃が好ましい。良溶媒を用いる場合には、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gあたり0.30〜0.50mL用いることが好ましく、特に0.35〜0.40mLが好ましい。また溶解温度は40℃〜50℃が好適であり、特に40℃〜45℃が好ましい。
良溶媒の好ましい例としてはアルコールが挙げられる。特にメタノールが好ましい。貧溶媒の好ましい例としてはエステルが挙げられる。特に酢酸イソプロピルが好ましい。
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の種晶の接種においては、貧溶媒を用いる場合、45℃〜65℃が好適であり、特に50℃〜60℃が好ましい。良溶媒を用いる場合、20℃〜35℃が好適であり、特に25℃〜30℃が好ましい。
【0022】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶は、通常の保存条件下にて安定に長期間保存でき、他の結晶形へと転移することなく存在することが確認された。
【0023】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶は、図2に示される粉末X線結晶回折パターンにより特徴づけられる。粉末X線結晶回折パターンにおける特徴的なピークとしては、2θ値として4.16°±0.2°、8.38°±0.2°、12.10°±0.2°、17.50°±0.2°、19.30°±0.2°、20.46°±0.2°、22.26°±0.2°、24.70°±0.2°、29.10°±0.2°及び30.84°±0.2°が挙げられる。
【0024】
また、本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶は、図6に示されるDSC曲線により特徴づけられる。DSCにおいて80℃〜98℃に融解に伴う吸熱を観測しており、ピーク温度は90℃、吸熱開始温度は87℃、融解熱は−183mJである。
【0025】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶の単結晶X線回折による結晶パラメータは次に示す通りである。
格子定数 a=5.181(1)Å
b=10.128(2)Å
c=21.142(4)Å
α=γ=90°、β=94.94(1)°
V=1105.2(4)Å
晶系 Monoclinic
空間群 P2
z値 2
密度Dcalc 1.390g/cm
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶は、晶系はMonoclinic、空間群はP2、z値は2であり、非対称単位中に1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1分子と結晶水1分子が存在する結晶である。さらに本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶の理論含水量は4%に対し、水分値は4%を示した。これらのことから、該結晶が1水和物の結晶であると判明した。
【0026】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を、水又は水と良溶媒の混合物中で撹拌することにより得ることができる。
ここにおいて、水中で撹拌する場合には、水の量としては、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gあたり3.1〜10.0mLが好ましく、特に好ましくは4.0〜4.5mLである。水と良溶媒の混合物中で撹拌する場合には、水の量としては、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gあたり3.1〜5.0mLが好ましく、特に好ましくは4.0〜4.5mLである。
ここにおいて、好ましい良溶媒の例としてはアルコール、エーテル及びこれらの溶媒の混合物が挙げられ、特にアルコールが好ましい。具体的にはメタノール又はテトラヒドロフランが好ましく、特にメタノールが好ましい。良溶媒は、好ましくは1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gあたり0.10〜0.60mLで使用する。
また、ここにおいて、撹拌温度は0℃〜34℃が好ましく、5℃〜20℃が特に好ましい。
【0027】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を、水と良溶媒の混合物に溶解させた後、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の種晶を接種する方法によって製造することもできる。
とりわけ、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物を、水と良溶媒の混合物に加温下溶解させた後、該溶液を冷却し、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の種晶を接種する方法が好ましい。
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の溶解液の調製においては、水の量としては、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gあたり1.0〜3.5mLが好ましく、特に1.0〜3.0mLが好ましい。
良溶媒は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gあたり1.0〜4.0mL用いることが好ましく、特に1.5〜3.0mLが好ましい。また溶解温度は40℃〜60℃が好適であり、特に40℃〜45℃が好ましい。
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の種晶の接種においては、20℃〜35℃が好適であり、特に25℃〜30℃が好ましい。
ここにおいて、好ましい良溶媒の例としてはアルコール、エーテル及びこれらの溶媒の混合物が挙げられ、特にアルコールが好ましい。具体的にはメタノール又はテトラヒドロフランが好ましく、特にメタノールが好ましい。
【0028】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶は、通常の保存条件下にて安定に長期間保存でき、他の結晶形へと転移することなく存在することが確認された。
【0029】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶を、水と良溶媒の混合物中又は水と貧溶媒の混合物中で撹拌することにより、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の結晶を得ることができる。
ここにおいて、貧溶媒に混合する水の量としては、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gに対して0.02〜0.07mLが好ましく、とりわけ0.02〜0.05mLが好ましい。一方、良溶媒に混合する水の量としては、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gに対して0.029〜0.035mLが好ましく、とりわけ0.030mLが好ましい。
ここにおいて、良溶媒の好ましい例としてはアルコール、エーテル及びこれらの溶媒の混合物が挙げられる。特にアルコールが好ましく、具体的にはメタノールが好ましい。貧溶媒の好ましい例としてはエステル、ケトン及びこれらの溶媒の混合物が挙げられる。特にエステルが好ましく、具体的には酢酸イソプロピルが好ましい。良溶媒は、好ましくは1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gに対して0.33〜0.60mLで使用する。一方、貧溶媒は、好ましくは1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gに対して3.0〜4.5mLで使用する。
ここにおいて、水と良溶媒の混合物中での撹拌温度としては0℃〜35℃が好ましく、特に、5℃〜30℃が好ましい。水と貧溶媒の混合物中での撹拌温度としては35℃〜45℃が好ましい。特に、38℃〜43℃が好ましい。
【0030】
また、本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶を良溶媒又は貧溶媒中で、撹拌することにより、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の結晶を得ることができる。
ここにおいて、良溶媒の好ましい例としてはアルコール、エーテル及びこれらの溶媒の混合物が挙げられる。特にアルコールが好ましく、具体的にはメタノールが好ましい。貧溶媒の好ましい例としてはエステル、ケトン及びこれらの溶媒の混合物が挙げられる。特にエステルが好ましく、具体的には酢酸イソプロピルが好ましい。良溶媒は、好ましくは1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gあたり0.30〜0.40mLで使用する。貧溶媒は、好ましくは1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン(無水物として)1gあたり4.0〜6.0mLで使用する。
ここにおいて、良溶媒中での撹拌温度としては0℃〜30℃が好ましく、特に、20℃〜30℃が好ましい。貧溶媒中での撹拌温度としては45℃〜70℃が好ましく、特に、45℃〜60℃が好ましい。
【0031】
このように、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶も、また、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶も、それぞれ簡便な操作で1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の結晶へ変換することができることから、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶、及び1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物結晶の製造中間体として利用することもできる。
【0032】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体の結晶は、図3に示される粉末X線結晶回折パターンにより特徴づけられる。粉末X線結晶回折パターンにおける特徴的なピークとしては、2θ値として4.04°±0.2°、9.86°±0.2°、12.76°±0.2°、15.02°±0.2°、15.68°±0.2°、17.58°±0.2°、19.08°±0.2°、19.94°±0.2°、20.32°±0.2°及び25.86°±0.2°が挙げられる。
【0033】
また、本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体の結晶は、図7に示されるDSC曲線により特徴づけられる。DSCにおいて86℃〜110℃に融解に伴う吸熱を観測しており、ピーク温度は97℃、吸熱開始温度は89℃、融解熱は−240mJである。
【0034】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体の結晶の単結晶X線回折による結晶パラメータは次に示す通りである。
格子定数 a=8.872(5)Å
b=11.299(4)Å
c=43.388(19)Å
α=β=γ=90°
V=4350(4)Å
晶系 Orthorhombic
空間群 P2
z値 8
密度Dcalc 1.358g/cm
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体結晶は、晶系はOrthorhombic、空間群はP2、z値は8であり、非対称単位中に1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン2分子のみが存在する結晶である。また本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体の結晶の理論含水量は0%に対し、水分値は0%を示した。これらのことから、該結晶が半水和物からの脱水により生じた無水物の結晶であると判明した。
【0035】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体の結晶は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の結晶を脱水することにより製することができる。脱水は、常法に従って加温条件下に減圧条件にて乾燥することにより実施することができる。脱水温度は40℃〜70℃が好ましく、特に60℃〜70℃が好ましい。
【0036】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体の結晶は、通常の保存条件下にて1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物結晶へと転移することが確認された。ここにおいて、通常の保存条件下とは、温度としては室温、湿度としては30〜60%RHのことをいう.
【0037】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体の結晶は、図4に示される粉末X線結晶回折パターンにより特徴づけられる。粉末X線結晶回折パターンにおける特徴的なピークとしては、2θ値として4.06°±0.2°、8.20°±0.2°、9.86°±0.2°、15.68°±0.2°、18.72°±0.2°、19.92°±0.2°、20.32°±0.2°、21.42°±0.2°、27.54°±0.2°及び32.94°±0.2°が挙げられる。
【0038】
また、本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体の結晶は、図8に示されるDSC曲線により特徴づけられる。DSCにおいて68℃〜92℃に融解に伴う吸熱を観測しており、ピーク温度は82℃、吸熱開始温度は74℃、融解熱は−39mJである。
【0039】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体の結晶の単結晶X線回折による結晶パラメータは次に示す通りである。
格子定数 a=5.582(8)Å
b=8.896(11)Å
c=21.56(3)Å
α=γ=90°、β=97.87(6)°
V=1061(3)Å
晶系 Monoclinic
空間群 P2
z値 2
密度Dcalc 1.523g/cm
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体結晶は、晶系はMonoclinic、空間群はP2、z値は2であり、非対称単位中に1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1分子のみが存在する結晶である。また本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体の結晶の理論含水量は0%に対し、水分値は0%を示した。これらのことから、該結晶が1水和物からの脱水により生じた無水物の結晶であると判明した。
【0040】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体の結晶は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶を脱水することにより製することができる。脱水は、常法に従い加温条件下に減圧条件にて乾燥することにより実施することができる。脱水温度は40℃〜70℃が好ましく、特に60℃〜70℃が好ましい。
【0041】
本発明における1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体の結晶は、通常の保存条件下にて1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶へと転移することが確認された。ここにおいて、通常の保存条件下とは、温度としては室温、湿度としては30〜60%RHのことをいう。
【0042】
本発明は、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの新規結晶及び薬理的に許容し得る担体を含む医薬組成物も提供する。
【0043】
本発明の結晶性化合物は、ナトリウム依存性グルコース輸送担体の阻害剤としての活性を有しており、優れた血糖低下作用を示す。
本発明の結晶形は、糖尿病(1型又は2型糖尿病など)、糖尿病性合併症(例えば糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症)、食後高血糖症、遅延創傷治癒、インスリン抵抗性、高血糖症、高インスリン血症、高脂肪酸血症、高グリセロール血症、高脂血症、肥満症、高トリグリセリド血症、X症候群、アテローム硬化症または高血圧症の治療、予防又は進行もしくは発症を遅延させる上で有用であると期待される。
【0044】
本発明の結晶形又はその薬理的に許容し得る塩は、経口的にも非経口的にも投与することができ、好適な医薬製剤の形態で使用することができる。経口投与に好適な医薬製剤として、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤等の固体製剤、または溶液製剤、懸濁液製剤、乳化液製剤等が挙げられる。非経口投与に好適な医薬製剤として、例えば、坐剤;注射用蒸留水、生理的食塩水又はグルコース水溶液を用いる注射剤や静脈内点滴剤;及び吸入製剤が挙げられる。
【0045】
本発明の医薬組成物は、用量単位、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、注射剤、坐剤、茶さじ一杯等あたり、有効成分を約0.01mg/kg〜約100mg/kg体重(好ましくは、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、より好ましくは約0.01mg/kg〜約30mg/kg)含有し、約0.01mg/kg/日〜約100mg/kg/日(好ましくは、約0.01mg/kg/日〜約50mg/kg/日、より好ましくは約0.01mg/kg/日〜約30mg/kg/日)の用量で投与し得る。本発明で記載の疾患を処置する方法は、また本明細書に定義された結晶形と薬理的に許容し得る担体を含む医薬組成物を用いて行われる。投与形態は、有効成分を約0.01mg/kg〜約100mg/kg好ましくは、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、より好ましくは約0.01mg/kg〜約30mg/kg)含有し、選択された投与形態に好適な任意の形態に構築し得る。しかしながら、用量は、投与経路、被験体の要求、処置される状態の重篤度及び使用される化合物によって異なる。毎日投与又は周期後投与のいずれをも使用し得る。成人へ経口投与する場合には、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンとして1回あたり100mgまたは300mgの投与量となるのが好ましい。
【0046】
本発明の結晶形は、必要ならば、1以上の他の抗糖尿病剤、抗高血糖症剤及び/又は他の疾患の治療剤と組み合わせて使用し得る。本化合物およびこれらの他の薬剤は、同じ投与形態で、又は別々の経口投与形態で、又は注射により投与し得る。
それらの薬剤の用量は、例えば、患者の年齢、体重、状態、投与経路及び投与形態によって異なり得る。
【実施例】
【0047】
以下、実施例等で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
実施例にて用いられた1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物は、例えば、国際公開公報WO2008/069327に記載された手順に従って調製することができる。
なお、実施例に記載した粉末X線結晶回折パターンは、前記測定条件によって測定した。
【0048】
実施例1
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物結晶の調製
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの半水和物(10.00g)をメタノール(2.79g)中、30℃にて一晩撹拌した。得られた結晶を濾取し、減圧乾燥することにより1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶を得た。
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの半水和物(20.16g)を酢酸イソプロピル(86.67g)に70℃にて溶解させ、その後、溶液を54℃に冷却した。同温にて1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶を少量接種し、2時間撹拌した。得られた結晶を濾取し、50℃にて3時間減圧乾燥することにより、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン無水物の結晶を得た(16.94g)。得られた結晶の粉末X線結晶回折パターンは図1及び表1の通り。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例2
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物結晶の調製
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの半水和物(5.04g)をメタノール(2.36g)及び水(15.14mL)中、10℃にて一晩撹拌した。得られた結晶を濾取し、減圧乾燥することにより1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶を得た。
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの半水和物(7.00g)をメタノール(12.40g)と水(14.19mL)に加えて60℃にて溶解させ、その後、溶液を35℃に冷却した。同温にて1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶を少量接種し、2時間撹拌した。懸濁液を10℃まで冷却後1.5時間撹拌した後、結晶を濾取し、メタノール(3.20g)と水(3.77mL)の混液で洗浄した.得られた結晶を55℃にて3時間減圧乾燥することにより、1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物の結晶を得た(6.89g)。得られた結晶の粉末X線結晶回折パターンは図2及び表2の通り。
【0051】
【表2】
【0052】
実施例3
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体結晶の調製
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物(100mg)を70℃にて一晩減圧乾燥することにより1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物脱水体の結晶を得た。得られた結晶の粉末X線結晶回折パターンは図3及び表3の通り。
【0053】
【表3】
【0054】
実施例4
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体結晶の調製
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物(100mg)を70℃にて一晩減圧乾燥することにより1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン1水和物脱水体の結晶を得た。得られた結晶の粉末X線結晶回折パターンは図4及び表4の通り。
【0055】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0056】
1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼンの新規結晶は、操作性及び安定性に優れ、また商業生産に適した製造方法が見出されており、医薬品原薬として有用である。また、これらの新規結晶は、簡便な方法で1−(β−D−グルコピラノシル)−4−メチル−3−[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニルメチル]ベンゼン半水和物の結晶へ導くことができ、医薬品原薬の中間体としても有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8