特開2018-87301(P2018-87301A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-87301(P2018-87301A)
(43)【公開日】2018年6月7日
(54)【発明の名称】ゴム組成物および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20180511BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20180511BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20180511BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L101/02
   C08K3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-231687(P2016-231687)
(22)【出願日】2016年11月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷺谷 智
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA033
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC072
4J002AC081
4J002AC091
4J002AF023
4J002BA013
4J002BB181
4J002BC043
4J002BC053
4J002BK003
4J002BP013
4J002DJ016
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD090
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD200
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】優れた耐引裂性(耐カット性)を有する加硫ゴムが得られるゴム組成物を提供すること。
【解決手段】ジエン系ゴムと、シリカと、炭化水素樹脂を含むゴム組成物であって、前記ジエン系ゴムが、アクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび該アクリロニトリル−ブタジエンゴム以外のその他のジエン系ゴムを含み、前記アクリロニトリル−ブタジエンゴムは、アクリロニトリルの含有量が25重量%以上であり、前記炭化水素樹脂は、不飽和基含有炭化水素樹脂であり、かつ軟化点が80〜120℃であり、前記アクリロニトリル−ブタジエンゴムが、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して、1〜25重量部であることを特徴とするゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムと、シリカと、炭化水素樹脂を含むゴム組成物であって、
前記ジエン系ゴムが、アクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび該アクリロニトリル−ブタジエンゴム以外のその他のジエン系ゴムを含み、
前記アクリロニトリル−ブタジエンゴムは、アクリロニトリルの含有量が25重量%以上であり、
前記炭化水素樹脂は、不飽和基含有炭化水素樹脂であり、かつ軟化点が80〜120℃であり、
前記アクリロニトリル−ブタジエンゴムが、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して、1〜25重量部であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記炭化水素樹脂が、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して、1〜20重量部であることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記シリカが、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して、10〜120重量部であることを特徴とする請求項1または2記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物を用いてなる空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ジエン系ゴムと、シリカやカーボンブラックなどの充填剤を含むタイヤ用ゴム組成物において、炭化水素樹脂が配合されたものが知られている(特許文献1、2)。
【0003】
特に、特許文献2では、上記の炭化水素樹脂として、特定量の不飽和基を含む脂環族炭化水素樹脂を用いることによって、当該脂環族炭化水素樹脂が加硫の際にゴムの主鎖と架橋してゴム分子の強度を改善できるため、空気入りタイヤの耐カット性や耐屈曲性が向上できることが記載されている。
【0004】
一方、上記のジエン系ゴムおよび充填剤を含むタイヤ用ゴム組成物において、極性の高いゴムが配合されたものが知られている(特許文献3〜5)。特に、特許文献3では、極性の高いゴムとして、アクリロニトリルを特定量含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムを用いることで、空気入りタイヤのウエットグリップ性能、低燃費性能、耐摩耗性を改善できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2011−526310号公報
【特許文献2】特開2000−344947号公報
【特許文献3】特開2011−57922号公報
【特許文献4】特開平6−9826号公報
【特許文献5】特開平11−286575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、市場では、ゴム組成物を用いてなる空気入りタイヤにおいて、より耐引裂性(耐カット性)に優れたものが求められているが、上記の特許文献のようなゴム組成物から得られた空気入りタイヤなどの加硫ゴムでは、当該特性を満足するものではなかった。特に、上記の特許文献2のようなゴム組成物では、シリカの分散が十分ではなく、さらに、架橋密度が上がることにより、架橋の網目鎖にシリカが捕捉され、分散が不十分な加硫ゴムになるものと考えられる。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、優れた耐引裂性(耐カット性)を有する加硫ゴムが得られるゴム組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ジエン系ゴムと、シリカと、炭化水素樹脂を含むゴム組成物であって、前記ジエン系ゴムが、アクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび該アクリロニトリル−ブタジエンゴム以外のその他のジエン系ゴムを含み、前記アクリロニトリル−ブタジエンゴムは、アクリロニトリルの含有量が25重量%以上であり、前記炭化水素樹脂は、不飽和基含有炭化水素樹脂であり、かつ軟化点が80〜120℃であり、前記アクリロニトリル−ブタジエンゴムが、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して、1〜25重量部であることを特徴とするゴム組成物、に関する。
【0009】
また、本発明は、前記ゴム組成物を用いてなる空気入りタイヤ、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴム組成物は、ゴムの原料として、アクリロニトリルを特定量含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム(以下、NBRとも称す)と、該NBR以外のその他のジエン系ゴムを用い、シリカおよび不飽和基含有炭化水素樹脂を含むものである。前記NBRは、前記その他のジエン系ゴムよりも極性が高いため、ゴム組成物に含まれるゴム成分全体の極性を下げることができる。よって、ゴム組成物中の、ゴム成分全体の極性とシリカとの極性差を小さくすることができるため、ゴムマトリックス中でのシリカの分散性を向上できるものと推定される。その結果、加硫により上記の炭化水素樹脂の不飽和基や、ジエン系ゴムの成分が架橋した際にも、シリカは高い分散性(架橋ゴムのペイン効果の値が小さい)を有するため、当該ゴム組成物から得られる加硫ゴムは、優れた耐引裂性(耐カット性)を有する。
【0011】
また、軟化点が80〜120℃程度である不飽和基含有炭化水素樹脂を用い、かつ特定量の上記のNBRを用いることにより、加硫ゴムの架橋密度を過度に高めない(ゴム強度が十分に発揮できるような適度な架橋密度を有する)効果が期待されるため、当該ゴム組成物からは、上記の特許文献の単純な組み合わせから期待される耐引裂性(耐カット性)の改善幅よりも、耐引裂性が大きく向上した加硫ゴムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムと、シリカと、炭化水素樹脂を含有する。また、ゴム組成物は、各種配合剤を適宜組み合わせて含有させることができる。
【0013】
<ジエン系ゴム>
本発明のジエン系ゴムは、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)および該アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)以外のその他のジエン系ゴムを含有する。
【0014】
前記アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)は、アクリロニトリルの含有量(結合アクリロニトリル量)が25重量%以上である。NBRは、加硫ゴムに高い耐引裂性を付与する観点から、アクリロニトリルの含有量が30重量%以上であることが好ましく、そして、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましい。なお、上記のアクリロニトリルの含有量は、JIS K6364に記載のミルオーブン法に準拠して、発生した窒素量を測定して、算出される。
【0015】
前記アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)以外のその他のジエン系ゴムは、例えば、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)などの合成ジエン系ゴムが挙げられる。その他のジエン系ゴムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0016】
前記その他のジエン系ゴムは、加硫ゴムに耐引裂性を付与する観点から、天然ゴム(NR)と合成ジエン系ゴムとの併用が好ましく、合成ゴムとしては、SBR、BRを用いることが好ましい。天然ゴムと合成ジエン系ゴムの重量比(天然ゴム/合成ジエン系ゴム)は、20/80〜70/30であることが好ましく、30/60〜60/40であることがより好ましい。
【0017】
<シリカ>
本発明のシリカは、補強性のフィラーとして使用できるものであれば何ら限定されるものではないが、湿式シリカ(含水ケイ酸)が好ましい。シリカのコロイダル特性も、特に限定されるものではないが、BET法による窒素吸着比表面積(BET)が150〜250m2/gであるものが好ましく、180〜230m2/gであるものがより好ましい。なお、シリカのBETは、ISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。シリカは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0018】
<炭化水素樹脂>
本発明の炭化水素樹脂は、不飽和基含有炭化水素樹脂であり、かつ軟化点が80〜120℃である。前記軟化点は、加硫ゴムに高い耐引裂性を付与する観点から、85℃以上が好ましく、そして、115℃以下であることが好ましい。なお、軟化点は、JIS K2207に記載の環球式に準拠して、測定される。
【0019】
前記炭化水素樹脂は、加硫により架橋反応ができる不飽和炭素結合(例えば、エチレン系炭化水素、共役二重結合など)を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、石油系炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂などが挙げられる。炭化水素樹脂は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0020】
前記石油系炭化水素樹脂としては、例えば、C5系の脂肪族系炭化水素樹脂、C9系の芳香族系炭化水素樹脂、C5/C9系の脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂が挙げられる。脂肪族系炭化水素樹脂は、炭素数4〜5個相当の石油留分(C5留分)であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり、一部水添したものであってもよい。芳香族系炭化水素樹脂は、炭素数8〜10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり、一部水添したものであってもよい。脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂は、上記C5留分とC9留分とをカチオン重合により共重合して得られる樹脂であり、一部水添したものであってもよい。
【0021】
前記テルペン系樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0022】
前記スチレン系樹脂としては、ポリスチレンブロックとポリオレフィン構造のエラストマーブロックで構成されたコポリマーなどのスチレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、及びスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)など、また、これらの一部水添したものが挙げられる。
【0023】
前記ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの原料ロジン、原料ロジンの不均化物、重合ロジンなどのロジン類や、ロジン類のエステル化物(ロジンエステル樹脂)、フェノール変性ロジン類、不飽和酸(マレイン酸など)変性ロジン類、ロジン類を還元処理したホルミル化ロジン類などが挙げられる。
【0024】
以下、本発明のゴム組成物の各成分の配合量について説明する。
【0025】
前記アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)は、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して、1〜25重量部である。NBRは、加硫ゴムに高い耐引裂性を付与する観点から、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して、3重量部以上であることが好ましく、そして、18重量部以下であることが好ましく、13重量部以下であることがより好ましく、8重量部以下であることがさらに好ましい。
【0026】
前記シリカは、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して、10〜120重量部であることが好ましく、50〜100重量部であることがより好ましい。
【0027】
前記炭化水素樹脂は、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して、1〜20重量部であることが好ましい。前記炭化水素樹脂は、加硫ゴムに高い耐引裂性を付与する観点から、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して、3重量部以上であることが好ましく、8重量部以上であることがより好ましく、そして、18重量部以下であることが好ましく、13重量部以下であることがより好ましい。
【0028】
<各種配合剤>
前記ゴム組成物では、さらに、各種配合剤を用いることができる。使用可能な配合剤としては、例えば、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、カーボンブラック、シランカップリング剤、酸化亜鉛、メチレン受容体およびメチレン供与体、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、有機過酸化物、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤が挙げられる。
【0029】
前記硫黄系加硫剤としての硫黄は、通常のゴム用硫黄であればよく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。硫黄系加硫剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0030】
前記硫黄の含有量は、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して0.3〜6.5重量部であることが好ましい。硫黄の含有量が0.3重量部未満であると、加硫ゴムの架橋密度が不足してゴム強度などが低下し、6.5重量部を超えると、特に耐熱性および耐久性の両方が悪化する。加硫ゴムのゴム強度を良好に確保し、耐熱性と耐久性をより向上するためには、硫黄の含有量が前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して1.0〜5.5重量部であることがより好ましい。
【0031】
前記加硫促進剤としては、通常のゴム用加硫促進剤であればよく、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。加硫促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0032】
前記加硫促進剤の含有量は、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0033】
前記老化防止剤としては、通常のゴム用老化防止剤であればよく、例えば、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記老化防止剤の含有量は、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0035】
前記カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。カーボンブラックは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0036】
前記カーボンブラックの含有量は、前記その他のジエン系ゴム100重量部に対して1〜100重量部であることが好ましく、10〜50重量部であることが好ましい。
【0037】
前記シランカップリング剤としては、通常のゴム用シランカップリング剤であればよく、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン;3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランなどが挙げられる。シランカップリング剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0038】
前記シランカップリング剤の含有量は、その添加効果を十分に発揮させる観点から、前記シリカ重量の2重量%以上であることが好ましく、4重量%以上であることがより好ましく、そして、20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましい。
【0039】
<ゴム組成物の製造方法>
以下に、本発明のゴム組成物の製造方法について具体的に説明する。
【0040】
前記ゴム組成物の製造方法は、前記ジエン系ゴムと、前記シリカと、前記炭化水素樹脂を乾式混合することにより、ゴム組成物を製造する。さらに、前記乾式混合では、必要に応じ、前記各種配合剤を配合することができる。
【0041】
前記乾式混合において、各原料(各成分)の配合方法は特に限定されないが、例えば、硫黄系加硫剤および加硫促進剤などの加硫系成分以外の成分を、任意の順序で添加し混練する方法、同時に添加して混練する方法、また、全成分を同時に添加して混練する方法などが挙げられる。
【0042】
前記乾式混合としては、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りする方法が挙げられる。混練りする回数は、1回または複数回であってもよい。混練りする時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、2〜5分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、ゴム組成物に前記加硫系成分を含まない場合、120〜170℃とすることが好ましく、120〜150℃とすることがより好ましい。混練機の排出温度は、ゴム組成物に前記加硫系成分を含む場合、80〜110℃とすることが好ましく、80〜100℃とすることがより好ましい。
【0043】
本発明のゴム組成物から得られた加硫ゴムは、良好な耐引裂性を有するため、空気入りタイヤ用途に適している。
【実施例】
【0044】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0045】
(使用原料)
a)アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR):
NBR(AN含有量35重量%):「JSR N230S」(JSR社製)
NBR(AN含有量40重量%):「Nipol DN4050」(日本ゼオン社製)
NBR(AN含有量19.5重量%):「JSR N250S」(JSR社製)
b)炭化水素樹脂:
炭化水素樹脂(軟化点95℃):「ペトロタック90」(東ソー社製)
炭化水素樹脂(軟化点115℃):「PX1150」(ヤスハラケミカル社製)
炭化水素樹脂(軟化点140±5℃):「アルコンP140」(荒川化学工業社製)
c)スチレン−ブタジエンゴム(SBR):「VSL5025−0HM」(ランクセス社製)
d)天然ゴム(NR):「RSS#3」
e)シリカ:「ニップシールAQ」(東ソー・シリカ社製)
f)カーボンブラック(CB):「ダイアブラックN341」(三菱化学社製)
g)シランカップリング剤:「Si69」(エボニック・デグサ社製)
h)亜鉛華:「亜鉛華1号」(三井金属社製)
i)老化防止剤:「アンチゲン6C」(住友化学工業社製)
j)ステアリン酸:「ルナックS−20」(花王社製)
k)ワックス:「OZOACE0355」(日本精蝋社製)
l)硫黄:「5%油入微粉末硫黄」(鶴見化学工業社製)
m)加硫促進剤:「ソクシールCZ」(住友化学社製)
【0046】
<ゴム組成物の製造>
表1に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:3分、排出温度:150℃)することにより、ゴム組成物を製造した。次いで、得られたゴム組成物に、表1に記載の硫黄、加硫促進剤を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:1分、排出温度:90℃)することにより、未加硫ゴム組成物を製造した。なお、表1中の配合比率は、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)以外のその他のジエン系ゴムのゴム成分を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。
【0047】
<実施例2〜9、比較例1〜4>
各原料の種類とその配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、未加硫ゴム組成物を製造した。
【0048】
上記の実施例及び比較例で得られた未加硫ゴム組成物を、150℃、30分間の条件で加硫することにより、加硫ゴムを製造した。得られた加硫ゴムについて以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0049】
<耐引裂性の評価>
耐引裂性の評価は、JIS K6252規定のクレセント形で、上記で得られた加硫ゴムを打ち抜き、くぼみの中央に0.50±0.08mmの切れ込みを入れたサンプルを得た。島津製作所の引張り試験機によって500mm/minの引張り速度で引裂強度を測定した。実施例1〜9、比較例2〜4は、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、耐引裂性(耐カット性)に優れることを示す。
【0050】
<ペイン効果の評価>
東洋精機社製粘弾性試験機を使用し、得られた加硫ゴムの試験片を温度60℃、周波数10Hz、静歪み10%の条件で、動歪みが0.1および10%の時の貯蔵弾性率(E´(0.1)およびE´(10))を測定し、ペイン効果(δE´=E´(0.1)−E´(10))を算出した。実施例1〜9、比較例2〜4は、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほど、ペイン効果が小さく、フィラーの分散性が良好であることを示す。
【0051】
【表1】