【実施例】
【0020】
製造例1:
21.2gのチタン(Ti)、26.1gのニッケル(Ni)、および52.7gのスズ(Sn)をマッフル炉内に導入し、高温溶融プロセスに付し、チタンニッケルスズ合金ブロックを得た。次に、チタンニッケルスズ合金ブロックを、アニールプロセスを付した。そのアニールプロセスは、チタンニッケルスズ合金ブロックを1050℃で24時間加熱し、チタンニッケルスズの合金ブロックを900℃で240時間加熱することを含む。次いで、アニールされたチタンニッケルスズ合金ブロックを、ボールミル粉砕し、合金粉末を得た。次いで、合金粉末を、熱圧着成形プロセスに付し、チタンニッケルスズ(TiNiSn)の円形シート(約1mmの厚さおよび約1cmの半径を有する)を得た。
【0021】
チタンニッケルスズ(TiNiSn)の円形シートは、小さい断片(0.9cm
2の面積を有する)にカットされ、腐食性溶液(0.5Mの硫酸)内に配置され、その腐食耐性が評価された。チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートの小さい断片の腐食電流密度が時間に対して測定された。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示されるように、チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートの腐食電流密度は、チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを腐食溶液に5分間放置した後、約0.027μA/cm
-2に減少した。また、チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートの腐食電流密度は、チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを腐食溶液に90分間放置した後、約0.018μA/cm
-2に減少した。これは、製造例1のチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートが腐食耐性を発揮したことを示している。
【0024】
アニールされたチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートの電気伝導度を測定した。次いで、チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを腐食溶液に120分間放置した後、チタンニッケルスズシートの電気伝導度を測定した。その結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2に示されるように、アニールされたチタンニッケルスズシートの電気伝導度は、アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)で既定された標準的なバイポーラプレートの電気伝導度(100 Scm
-1)より大きい。また、腐食前または腐食後のチタンニッケルスズシートの電気伝導度は、実質的に同じである。これは、チタンニッケルスズシートの電気伝導度が、腐食に影響されないことを意味する。
【0027】
製造例2:
33.96gのジルコニウム(Zr)、21.85gのニッケル(Ni)、および44.19gのスズ(Sn)をマッフル炉内に導入し、高温溶融プロセスに付し、ジルコニウムニッケルスズ合金ブロックを得た。次いで、ジルコニウムニッケルスズ合金ブロックを、アニールプロセスに付した。そのアニールプロセスは、ジルコニウムニッケルスズ合金ブロックを1050℃で24時間加熱し、ジルコニウムニッケルスズの合金ブロックを900℃で240時間加熱することを含む。次いで、アニールされたジルコニウムニッケルスズ合金ブロックを、ボールミル粉砕に付し、合金粉末を得る。次いで、合金粉末は、熱圧着プロセスが施され、ジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn)の円形シート(約1mmの厚さおよび約1cmの半径を有する)を得た。
【0028】
製造例3:
50.15gのハフニウム(Hf)、16.49gのニッケル(Ni)、および33.36gのスズ(Sn)をマッフル炉内に導入し、高温溶融プロセスに付し、ハフニウムニッケルスズ合金ブロックを得た。次いで、ハフニウムニッケルスズ合金ブロックをアニールプロセスに付した。アニールプロセスは、ハフニウムニッケルスズ合金ブロックを1050℃で24時間加熱し、ハフニウムニッケルスズの合金ブロックを900℃で240時間加熱することを含む。次いで、アニールされたハフニウムニッケルスズ合金ブロックを、ボールミル粉砕に付し、合金粉末を得た。次いで、合金粉末を、熱圧着プロセスに付し、ハフニウムニッケルスズ(HfNiSn)の円形シート(約1mmの厚さおよび約1cmの半径を有する)を得た。
【0029】
製造例4:
21.23gのチタン(Ti)、26.04gのニッケル(Ni)、50.03gのスズ(Sn)、および2.70gのアンチモン(Sb)をマッフル炉内に導入し、高温溶融プロセスに付し、チタンニッケルスズアンチモン合金ブロックを得た。次いで、チタンニッケルスズアンチモン合金ブロックをアニールプロセスに付した。そのアニールプロセスは、チタンニッケルスズアンチモン合金ブロックを1050℃で24時間加熱し、チタンニッケルスズアンチモン合金ブロックを900℃で240時間加熱することを含む。次いで、アニールされたチタンニッケルスズアンチモン合金ブロックを、ボールミル粉砕に付し、合金粉末を得た。次いで、合金粉末を、熱圧着プロセスに付し、チタンニッケルスズアンチモン(TiNiSn
0.95Sb
0.05)の円形シート(約1mmの厚さおよび約1cmの半径を有する)を得た。
【0030】
耐食構造の製造
【0031】
実施例1:
熱圧着プロセスによりアルミニウムシート(約5mmの厚さと約1cmの半径を有する)を製造例1のチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートと接合した。その熱圧着プロセスの温度は約500℃、熱圧着プロセスの圧力は約1ton、かつプロセスの時間は約1時間で耐食構造(1)を得た。耐食構造(1)を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果を
図3に示す。
図3に示されるように、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを接合したとき、中間層14は、熱拡散接合によりアルミニウム層10とチタンニッケルスズ(TiNiSn)合金層(第1の耐食層12となる)の間に形成された。走査電子顕微鏡画像によって判定された耐食構造(1)の中間層14の厚さは、約90μmであった。
【0032】
次いで、領域31および領域32に配置された中間層14の元素分析は(
図3に示されるように)、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型分光計(SEM−EDS)を用いて行われた。その結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
表3に示されるように、中間層14は、チタンニッケルスズアルミニウム合金層である(Ti
xNi
ySn
wAl
zで表される化学式を有し、その中の領域31に位置される中間層14のxは0.1413、yは0.1536、zは0.6903、およびwは0.0148であり;領域32に位置される中間層14のxは0.2151、yは0.1097、zは0.645、およびwは0.0302である)。従って、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを接合した後、中間層となるチタンニッケルスズアルミニウム合金層は、熱拡散接合により形成された。
【0035】
実施例2:
熱圧着プロセスによりアルミニウムシート(約5mmの厚さと約1cmの半径を有する)を製造例1のチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートと接合した。熱圧着プロセスの温度は約500℃、熱圧着プロセスの圧力は約1ton、かつプロセスの時間は約2時間であり、耐食構造(2)を得た。耐食構造(2)は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果を
図4に示す。
図4に示されるように、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを接合したとき、中間層14は、熱拡散接合によりアルミニウム層10とチタンニッケルスズ(TiNiSn)合金層(第1の耐食層12となる)の間に形成された。走査電子顕微鏡画像によって判定された耐食構造(2)の中間層14の厚さは、約180μmであった。
【0036】
次いで、領域41に配置された第1の耐食層12、領域42と領域43に配置された中間層14、および領域44に配置されたアルミニウム層10(
図4に示されるように)の元素分析は、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型分光計(SEM−EDS)を用いて行われた。その結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
表4に示されるように、中間層14は、チタンニッケルスズアルミニウム合金層である(Ti
xNi
ySn
wAl
zで表される化学式を有し、その中の領域42に位置される中間層14のxは0.1455、yは0.1502、zは0.6596、およびwは0.0448であり、領域43に位置される中間層14のxは0.150、yは0.1435、zは0.6681、およびwは0.0384である)。従って、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを接合した後、中間層となるチタンニッケルスズアルミニウム合金層は、熱拡散接合により形成された。
【0039】
表5は、実施例1および実施例2に開示された熱圧着プロセスのプロセス条件により形成される中間層の厚さを示している。
【0040】
【表5】
【0041】
表5に示されるように、中間層の厚さは、熱圧着プロセスのプロセスの時間がのびたとき、増加される。
【0042】
実施例3:
熱圧着プロセスによりアルミニウムシート(約5mmの厚さと約1cmの半径を有する)を製造例2のジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn)シートとを接合した。熱圧着プロセスの温度は約500℃、熱圧着プロセスの圧力は約1ton、かつプロセスの時間は約1時間で耐食構造(3)を得た。耐食構造(3)は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果を
図5に示す。
図5に示されるように、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn)シートとを接合したとき、中間層14は、熱拡散接合によりアルミニウム層10とジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn)合金層(第1の耐食層12となる)との間に形成された。走査電子顕微鏡画像によって判定された耐食構造(3)の中間層14の厚さは、約100μmであった。
【0043】
次いで、(
図5に示されるように)領域51に位置される第1の耐食層12、領域52に位置される中間層14、および領域53に位置されるアルミニウム層10の元素分析は、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型分光計(SEM−EDS)を用いて行われた。結果を表6に示す。
【0044】
【表6】
【0045】
表6に示されるように、中間層14は、ジルコニウムニッケルスズアルミニウム合金層である(Zr
xNi
ySn
wAl
zで示される化学式を有し、その中の領域52に位置される中間層14のxは0.1260、yは0.1485、zは0.6391、およびwは0.0863である)。従って、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn)シートとを接合した後、中間層となるジルコニウムニッケルスズアルミニウム合金層は、熱拡散接合により形成された。
【0046】
実施例4:
熱圧着プロセスによりアルミニウムシート(約5mmの厚さと約1cmの半径を有する)を製造例3のハフニウムニッケルスズ(HfNiSn)シートと接合した。熱圧着プロセスの温度は約500℃、熱圧着プロセスの圧力は約1ton、かつプロセスの時間は約1時間で耐食構造(4)を得た。耐食構造(4)は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。結果を
図6に示す。
図6に示されるように、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとハフニウムニッケルスズ(HfNiSn)シートとを接合したとき、中間層14は、熱拡散接合によりアルミニウム層10とハフニウムニッケルスズ(HfNiSn)合金層(第1の耐食層12となる)との間に形成された。走査電子顕微鏡画像によって判定された耐食構造(4)の中間層14の厚さは、約150μmであった。
【0047】
次いで、(
図6に示されるように)領域61に位置される第1の耐食層12、領域62と領域63に位置される中間層14、および領域64に位置されるアルミニウム層10の元素分析は、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型分光計(SEM−EDS)を用いて行われた。結果を表7に示す。
【0048】
【表7】
【0049】
表7に示されるように、中間層14は、ハフニウムニッケルスズアルミニウム合金層である(Hf
xNi
ySn
wAl
zで示される化学式を有し、その中の領域62に位置される中間層14のxは0.1180、yは0.1395、zは0.6751、およびwは0.0673であり、領域63に位置される中間層14のxは0.1188、yは0.1340、zは0.7081、およびwは0.0390である)。従って、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとハフニウムニッケルスズ(HfNiSn)シートとを接合した後、中間層となるハフニウムニッケルスズアルミニウム合金層は、熱拡散接合により形成された。
【0050】
実施例5:
熱圧着プロセスによりアルミニウムシート(約5mmの厚さと約1cmの半径を有する)を製造例4のチタンニッケルスズアンチモン(TiNiSn
0.95Sb
0.05)シートと接合した。熱圧着プロセスの温度は約500℃、熱圧着プロセスの圧力は約1ton、かつプロセスの時間は約1時間で耐食構造(5)を得た。耐食構造(5)は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察された。結果を
図7に示す。
図7に示されるように、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズアンチモン(TiNiSn
0.95Sb
0.05)シートとを接合したとき、中間層14は、熱拡散接合によりアルミニウム層10とチタンニッケルスズアンチモン(TiNiSn
0.95Sb
0.05)合金層(第1の耐食層12となる)との間に形成された。走査電子顕微鏡画像によって判定された耐食構造(5)の中間層14の厚さは、約100μmであった。
【0051】
次いで、(
図7に示されるように)領域71に位置される第1の耐食層12、領域72に位置される中間層14、および領域73に配置されたアルミニウム層10の元素分析は、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型分光計(SEM−EDS)を用いて行われた。結果を表8に示す。
【0052】
【表8】
【0053】
表8に示されるように、中間層14は、チタンニッケルスズアンチモンアルミニウム合金層である(Ti
xNi
ySn
wSb
aAl
zで示される化学式を有し、その中の領域72に位置される中間層14のxは0.1643、yは0.1380、zは0.6666、wは0.0302、およびaは0.0009である)。従って、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズアンチモン(TiNiSn
0.95Sb
0.05)シートとを接合した後、中間層となるチタンニッケルスズアンチモンアルミニウム合金層は、熱拡散接合により形成された。
【0054】
接合強度テスト
実施例6:
実施例1の耐食構造(1)を2mm×2mmの四角形の断片にカットした。耐食構造(1)のアルミニウム層とチタンニッケルスズ合金層との間の接合強度は、スラスタによりASTM−F1269に基づいて測定された。結果として、チタンニッケルスズ合金層に50kgの推力を加えたばあい、チタンニッケルスズ合金層は、耐食構造(1)から剥離されなかった。従って、アルミニウム層と耐食層(例えば、チタンニッケルスズ合金層)との間に形成された本発明の中間層により、耐食層とアルミニウム層との間の接合強度が向上され、それにより、アルミニウム層から剥離しやすいという耐食層の問題が解決する。
【0055】
本発明の方法および材料に対して様々な修正および変形を行えることは当業者には自明であろう。明細書の記述および実施の形態は、単なる例示として考慮されるべきであり、特許請求の範囲によって示される本発明の真の範囲および技術的思想、および、それらの全範囲の均等範囲を伴うことが意図されている。