特開2018-87377(P2018-87377A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 財團法人工業技術研究院の特許一覧

<>
  • 特開2018087377-耐食構造およびそれを用いた燃料電池 図000011
  • 特開2018087377-耐食構造およびそれを用いた燃料電池 図000012
  • 特開2018087377-耐食構造およびそれを用いた燃料電池 図000013
  • 特開2018087377-耐食構造およびそれを用いた燃料電池 図000014
  • 特開2018087377-耐食構造およびそれを用いた燃料電池 図000015
  • 特開2018087377-耐食構造およびそれを用いた燃料電池 図000016
  • 特開2018087377-耐食構造およびそれを用いた燃料電池 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-87377(P2018-87377A)
(43)【公開日】2018年6月7日
(54)【発明の名称】耐食構造およびそれを用いた燃料電池
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20180511BHJP
   H01M 8/0208 20160101ALI20180511BHJP
   C22C 30/04 20060101ALI20180511BHJP
   C23C 10/30 20060101ALI20180511BHJP
【FI】
   C22C21/00 E
   H01M8/0208
   C22C30/04
   C23C10/30
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-226195(P2017-226195)
(22)【出願日】2017年11月24日
(31)【優先権主張番号】105139052
(32)【優先日】2016年11月28日
(33)【優先権主張国】TW
(31)【優先権主張番号】106128395
(32)【優先日】2017年8月22日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】許 嘉政
(72)【発明者】
【氏名】朱 旭山
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA12
5H126DD05
5H126DD14
5H126GG02
5H126GG08
5H126JJ03
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】高い耐食性をもち、耐食構造が互いに剥離しないバイポーラプレート、およびそれを用いた燃料電池を提供する。
【解決手段】アルミニウム層、ニッケルスズ含有合金層である第1の耐食層、および前記アルミニウム層と前記第1の耐食層との間に配置され、ニッケルスズアルミニウム含有合金層である中間層を含む耐食構造、およびそれを用いた燃料電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム層、
ニッケルスズ含有合金層である第1の耐食層、および
前記アルミニウム層と前記第1の耐食層との間に配置され、ニッケルスズアルミニウム含有合金層である中間層
を含む耐食構造。
【請求項2】
前記第1の耐食層が、チタンニッケルスズ含有合金層、ジルコニウムニッケルスズ含有合金層、またはハフニウムニッケルスズ含有合金層である請求項1に記載の耐食構造。
【請求項3】
前記中間層が、MxNiySnwAlz(式中、0.10≦x≦0.25、0.10≦y≦0.25、0.6≦z≦0.75、0.01≦w≦0.10、x+y+z+w=1であり、Mは、Ti、Zr、またはHfである)で表される構造を有する請求項2に記載の耐食構造。
【請求項4】
前記第1の耐食層が、アンチモンがドープされたニッケルスズ含有合金層である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐食構造。
【請求項5】
前記第1の耐食層内の前記アンチモンが、アンチモンとスズの総量に基づいて、0.01atom%〜5atom%の原子分率を有する請求項4に記載の耐食構造。
【請求項6】
前記第1の耐食層が、チタンニッケルスズ含有合金層である請求項1に記載の耐食構造。
【請求項7】
前記第1の耐食層が、アンチモンがドープされたチタンニッケルスズ含有合金層である請求項6に記載の耐食構造。
【請求項8】
前記中間層が、チタンニッケルスズアルミニウム含有合金層である請求項6に記載の耐食構造。
【請求項9】
前記チタンニッケルスズアルミニウム含有合金層が、TixNiySnwAlz(式中、0.10≦x≦0.25、0.10≦y≦0.25、0.6≦z≦0.75、0.01≦w≦0.10、およびx+y+z+w=1である)で表される構造を有する請求項8に記載の耐食構造。
【請求項10】
前記第1の耐食層が、ジルコニウムニッケルスズ含有合金層である請求項1に記載の耐食構造。
【請求項11】
前記第1の耐食層が、アンチモンがドープされたジルコニウムニッケルスズ含有合金層である請求項10に記載の耐食構造。
【請求項12】
前記中間層が、ジルコニウムニッケルスズアルミニウム含有合金層である請求項10に記載の耐食構造。
【請求項13】
前記ジルコニウムニッケルスズアルミニウム含有の合金層は、ZrxNiySnwAlz(式中、0.10≦x≦0.25、0.10≦y≦0.25、0.6≦z≦0.75、0.01≦w≦0.10、およびx+y+z+w=1である)で表される構造を有しする請求項12に記載の耐食構造。
【請求項14】
前記第1の耐食層が、ハフニウムニッケルスズ含有合金層である請求項1に記載の耐食構造。
【請求項15】
前記第1の耐食層が、アンチモンがドープされたハフニウムニッケルスズ含有の合金層である請求項14に記載の耐食構造。
【請求項16】
前記中間層が、ハフニウムニッケルスズアルミニウム含有合金層である請求項14に記載の耐食構造。
【請求項17】
前記ハフニウムニッケルスズアルミニウム含有合金層が、HfxNiySnwAlz(式中、0.10≦x≦0.25、0.10≦y≦0.25、0.6≦z≦0.75、0.01≦w≦0.10、およびx+y+z+w=1である)で表される構造を有する請求項16に記載の耐食構造。
【請求項18】
前記中間層が、1μm〜300μmの厚さを有する請求項1〜17のいずれか1項に記載の耐食構造。
【請求項19】
前記中間層が第2の耐食層となる請求項1〜17のいずれか1項に記載の耐食構造。
【請求項20】
バイポーラプレートを含む燃料電池であって、前記バイポーラプレートが、請求項1〜19のいずれか1項に記載の耐食構造である燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食構造およびそれを用いた燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、高効率且つ低公害のエネルギー変換装置である。燃料電池では、燃料ガスの気流(例えば、水素)が陽極に供給され、酸化剤が陰極に供給される。従って、燃料ガスの化学エネルギーは、電気化学的酸化還元反応の結果として電気エネルギーに変換される。
【0003】
バイポーラプレートは、燃料電池の鍵となる部品の1つである。バイポーラプレートは、燃料ガスの気流と雰囲気ガスの気流との組み合わせから生じる爆発の危険を回避するために、燃料ガスの気流と雰囲気ガスの気流とを分離する。ステンレス鋼バイポーラプレートは、高耐食性とう利点を有し、アルミニウムバイポーラプレートは、軽量、高強度、および低製造コストという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0214927号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ステンレス鋼バイポーラプレートには、コストと重量が増加するという欠点があり、アルミニウムバイポーラプレートには、アルミニウム基板と耐食層との間の接合強度が劣り、コーティングの剥離が生じるという問題がある。
【0006】
したがって、上述の問題を解決することができるバイポーラプレートの開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アルミニウム層、第1の耐食層、および中間層を含む耐食構造であって、第1の耐食層が、ニッケルスズ含有合金層であることができ、中間層が、アルミニウム層と第1の耐食層との間に配置されることができる耐食構造を提供する。具体的には、中間層は、ニッケルスズアルミニウム含有合金層であることができる。
【0008】
本発明のもう1つの実施形態によれば、本発明は、燃料電池も提供する。燃料電池は、バイポーラプレートを含むことができ、バイポーラプレートは、上述の耐食構造であることができる。
【発明の効果】
【0009】
従って、高い腐食耐性の要求に適い、且つ耐食構造が互いに剥離するのを回避するために、バイポーラプレートとして供され得る新規の耐食構造が提供される。
【0010】
詳細な説明は、添付の図面と併せて以下の実施形態においてなされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一つの実施形態に係る耐食構造の概略図である。
図2】本発明の一つの実施形態に係る燃料電池の概略図である。
図3】実施例1の耐食構造(1)の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図4】実施例2の耐食構造(2)の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図5】実施例3の耐食構造(3)の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図6】実施例4の耐食構造(4)の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図7】実施例5の耐食構造(5)の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明において、説明の目的のために、多数の具体的詳細が、本発明の実施態様の完全な理解を提供するために示される。そして、説明されている構造は、正確な縮尺である必要はない。しかしながら、1つ以上の実施形態が、これらの具体的な詳細なしに行い得ることは明らかである。他の例では、周知の構造および装置は、図を簡素化するために概略的に示されている。
【0013】
本発明は、耐食構造を提供し、この耐食構造は、燃料電池に用いるバイポーラプレートとなることができる。耐食構造の形成のプロセスの条件(例えば、温度および圧力)を最適化することで、中間層が第1の耐食層(例えば、チタンニッケルスズ(TiNiSn)合金層)とアルミニウム層との間に形成されることができる。中間層(例えば、MxNiySnwAlz(式中、0.10≦x≦0.25、0.10≦y≦0.25、0.6≦z≦0.75、0.01≦w≦0.10、x+y+z+w=1、Mは、Ti、Zr、またはHfである)で表される化学式を有する層)は、アルミニウム層を保護するために、第2の耐食層となることができる。また、中間層により、第1の耐食層とアルミニウム層との間の接合強度が向上される。従って、耐食層がアルミニウム層から剥離する問題が抑えられる、またはなくなる。
【0014】
本発明の実施形態によれば、図1に示されるように、耐食構造100は、アルミニウム層10、第1の耐食層12、およびアルミニウム層と第1の耐食層との間に配置された中間層14を含むことができる。第1の耐食層12は、ニッケルスズ含有合金層であることができる。中間層14は、第2の耐食層となることができる。具体的には、中間層は、ニッケルスズアルミニウム含有合金層であることができる。ここでは、ニッケルスズ含有の合金層は、ニッケルとスズからなる合金を含むことができる。また、ニッケルスズ含有の合金層は、例えば、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムなど他の金属を更に含むことができる。ニッケルスズアルミニウム含有合金層は、ニッケル、スズ、およびアルミニウムからなる合金を含むことができる。また、ニッケルスズアルミニウム含有合金層は、例えば、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムなど他の金属を更に含むことができる。アルミニウム層10は、約100μm〜5mm(例えば、約200μm〜3mm、または約200μm〜2mm)の厚さを有することができる。第1の耐食層12は、約100μm〜5mm(例えば、約200μm〜3mm、または約200μm〜2mm)の厚さを有することができる。中間層14は、約1μm〜300μm(例えば、約5μm〜180μm、または約10μm〜150μm)の厚さを有することができる。中間層14の厚さが薄過ぎる場合、第1の耐食層12は、耐食構造100から剥離しやすい。中間層14の厚さが厚すぎる場合、耐食構造100全体の電気的特性を低下させることになる。
【0015】
本発明の実施形態によれば、第1の耐食層は、例えば、チタンニッケルスズ(TiNiSn)合金層、ジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn)合金層、またはハフニウムニッケルスズ(HfNiSn)合金層など、チタンニッケルスズ含有合金層、ジルコニウムニッケルスズ含有合金層、またはハフニウムニッケルスズ含有合金層であることができる。第1の耐食層の電気的特性を向上させるために、第1の耐食層は、アンチモンがドープされたニッケルスズ含有合金層であることができる。本発明の実施形態によれば、アンチモンがドープされたニッケルスズ含有合金層内のアンチモンは、アンチモンがドープされたニッケルスズ含有合金層のアンチモンとスズの総量に基づいて、約0.01atom%〜5atom%の原子分率を有することができる。例えば、第1の耐食層は、アンチモンがドープされたチタンニッケルスズ(TiNiSn1-aSba)合金層、アンチモンがドープされたジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn1-aSba)合金層、またはアンチモンがドープされたハフニウムニッケルスズ(HfNiSn1-aSba)合金層であることができ、0.0001≦a≦0.05であることができる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、中間層は、MxNiySnwAlz(式中、0.10≦x≦0.25、0.10≦y≦0.25、0.6≦z≦0.75、0.01≦w≦0.10、x+y+z+w=1、Mは、Ti、Zr、またはHfである)で表される化学式を有することができる。また、中間層は、チタンニッケルスズアルミニウム含有合金層であることができる。例えば、チタンニッケルスズアルミニウム含有合金層は、TixNiySnwAlz(式中、0.10≦x≦0.25、0.10≦y≦0.25、0.6≦z≦0.75、0.01≦w≦0.10、およびx+y+z+w=1である)で表される化学式を有するチタンニッケルスズアルミニウム合金層であることができる。中間層は、ジルコニウムニッケルスズアルミニウム含有合金層であることができる。例えば、ジルコニウムニッケルスズアルミニウム含有合金層は、ZrxNiySnwAlz(式中、0.10≦x≦0.25、0.10≦y≦0.25、0.6≦z≦0.75、0.01≦w≦0.10、およびx+y+z+w=1である)で表される化学式を有するジルコニウムニッケルスズアルミニウム合金層であることができる。中間層は、ハフニウムニッケルスズアルミニウム含有合金層であることができる。例えば、ハフニウムニッケルスズアルミニウム含有合金層は、HfxNiySnwAlz(式中、0.10≦x≦0.25、0.10≦y≦0.25、0.6≦z≦0.75、0.01≦w≦0.10、およびx+y+z+w=1である)で表される化学式を有するハフニウムニッケルスズアルミニウム合金層であることができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、耐食構造を形成する方法は、熱圧着プロセスによってニッケルスズ含有合金シート(例えば、チタンニッケルスズ含有合金シート、ジルコニウムニッケルスズ含有合金シート、またはハフニウムニッケルスズ含有合金シート)とアルミニウムシートとを接合し、本発明の耐食構造を得る工程を含む。特に、熱圧着プロセスの温度は、約400℃〜600℃(例えば、約450℃〜550℃)とすることができ、熱圧着プロセスの圧力は、約0.5ton〜5ton(例えば約1ton〜3ton)とすることができ、プロセスの時間は、約0.1時間〜10時間(例えば、約1時間〜5時間)とすることができる。留意すべきことは、耐食構造の中間層の厚さは、熱圧着プロセスの温度、圧力、およびプロセスの時間によって調整できることである。また、熱圧着プロセスによってニッケルスズ含有合金シートをアルミニウムシートに接合する前に、ニッケルスズ含有合金シートを、アニールプロセスに付すことができ、そのアニールプロセスの温度は、約800℃〜1050℃(例えば、約850℃〜950℃)とすることができる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、本発明は、図2に示されるように、燃料電池200も提供する。燃料電池200は、第1のバイポーラプレート102、膜電極接合体104、および第2のバイポーラプレート106を含むことができ、少なくとも1つの第1のバイポーラプレート102および第2のバイポーラプレート106が、本発明の上述の耐食構造である。例えば、第1のバイポーラプレート102が、本発明の耐食構造であってもよく、第2のバイポーラプレート106が、本発明の耐食構造であってもよく、または第1のバイポーラプレート102と第2のバイポーラプレート106とが共に、本発明の耐食構造であってもよい。
【0019】
以下においては、当業者が容易に理解できるように、添付の図面を参照して、実施形態の例を詳細に説明する。本発明の概念は、本明細書に記載された実施形態の例に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。周知の部分の説明は明瞭さのために省略し、全体を通して、同じ参照番号は同じ構成を示す。
【実施例】
【0020】
製造例1:
21.2gのチタン(Ti)、26.1gのニッケル(Ni)、および52.7gのスズ(Sn)をマッフル炉内に導入し、高温溶融プロセスに付し、チタンニッケルスズ合金ブロックを得た。次に、チタンニッケルスズ合金ブロックを、アニールプロセスを付した。そのアニールプロセスは、チタンニッケルスズ合金ブロックを1050℃で24時間加熱し、チタンニッケルスズの合金ブロックを900℃で240時間加熱することを含む。次いで、アニールされたチタンニッケルスズ合金ブロックを、ボールミル粉砕し、合金粉末を得た。次いで、合金粉末を、熱圧着成形プロセスに付し、チタンニッケルスズ(TiNiSn)の円形シート(約1mmの厚さおよび約1cmの半径を有する)を得た。
【0021】
チタンニッケルスズ(TiNiSn)の円形シートは、小さい断片(0.9cm2の面積を有する)にカットされ、腐食性溶液(0.5Mの硫酸)内に配置され、その腐食耐性が評価された。チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートの小さい断片の腐食電流密度が時間に対して測定された。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示されるように、チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートの腐食電流密度は、チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを腐食溶液に5分間放置した後、約0.027μA/cm-2に減少した。また、チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートの腐食電流密度は、チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを腐食溶液に90分間放置した後、約0.018μA/cm-2に減少した。これは、製造例1のチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートが腐食耐性を発揮したことを示している。
【0024】
アニールされたチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートの電気伝導度を測定した。次いで、チタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを腐食溶液に120分間放置した後、チタンニッケルスズシートの電気伝導度を測定した。その結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2に示されるように、アニールされたチタンニッケルスズシートの電気伝導度は、アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)で既定された標準的なバイポーラプレートの電気伝導度(100 Scm-1)より大きい。また、腐食前または腐食後のチタンニッケルスズシートの電気伝導度は、実質的に同じである。これは、チタンニッケルスズシートの電気伝導度が、腐食に影響されないことを意味する。
【0027】
製造例2:
33.96gのジルコニウム(Zr)、21.85gのニッケル(Ni)、および44.19gのスズ(Sn)をマッフル炉内に導入し、高温溶融プロセスに付し、ジルコニウムニッケルスズ合金ブロックを得た。次いで、ジルコニウムニッケルスズ合金ブロックを、アニールプロセスに付した。そのアニールプロセスは、ジルコニウムニッケルスズ合金ブロックを1050℃で24時間加熱し、ジルコニウムニッケルスズの合金ブロックを900℃で240時間加熱することを含む。次いで、アニールされたジルコニウムニッケルスズ合金ブロックを、ボールミル粉砕に付し、合金粉末を得る。次いで、合金粉末は、熱圧着プロセスが施され、ジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn)の円形シート(約1mmの厚さおよび約1cmの半径を有する)を得た。
【0028】
製造例3:
50.15gのハフニウム(Hf)、16.49gのニッケル(Ni)、および33.36gのスズ(Sn)をマッフル炉内に導入し、高温溶融プロセスに付し、ハフニウムニッケルスズ合金ブロックを得た。次いで、ハフニウムニッケルスズ合金ブロックをアニールプロセスに付した。アニールプロセスは、ハフニウムニッケルスズ合金ブロックを1050℃で24時間加熱し、ハフニウムニッケルスズの合金ブロックを900℃で240時間加熱することを含む。次いで、アニールされたハフニウムニッケルスズ合金ブロックを、ボールミル粉砕に付し、合金粉末を得た。次いで、合金粉末を、熱圧着プロセスに付し、ハフニウムニッケルスズ(HfNiSn)の円形シート(約1mmの厚さおよび約1cmの半径を有する)を得た。
【0029】
製造例4:
21.23gのチタン(Ti)、26.04gのニッケル(Ni)、50.03gのスズ(Sn)、および2.70gのアンチモン(Sb)をマッフル炉内に導入し、高温溶融プロセスに付し、チタンニッケルスズアンチモン合金ブロックを得た。次いで、チタンニッケルスズアンチモン合金ブロックをアニールプロセスに付した。そのアニールプロセスは、チタンニッケルスズアンチモン合金ブロックを1050℃で24時間加熱し、チタンニッケルスズアンチモン合金ブロックを900℃で240時間加熱することを含む。次いで、アニールされたチタンニッケルスズアンチモン合金ブロックを、ボールミル粉砕に付し、合金粉末を得た。次いで、合金粉末を、熱圧着プロセスに付し、チタンニッケルスズアンチモン(TiNiSn0.95Sb0.05)の円形シート(約1mmの厚さおよび約1cmの半径を有する)を得た。
【0030】
耐食構造の製造
【0031】
実施例1:
熱圧着プロセスによりアルミニウムシート(約5mmの厚さと約1cmの半径を有する)を製造例1のチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートと接合した。その熱圧着プロセスの温度は約500℃、熱圧着プロセスの圧力は約1ton、かつプロセスの時間は約1時間で耐食構造(1)を得た。耐食構造(1)を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果を図3に示す。図3に示されるように、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを接合したとき、中間層14は、熱拡散接合によりアルミニウム層10とチタンニッケルスズ(TiNiSn)合金層(第1の耐食層12となる)の間に形成された。走査電子顕微鏡画像によって判定された耐食構造(1)の中間層14の厚さは、約90μmであった。
【0032】
次いで、領域31および領域32に配置された中間層14の元素分析は(図3に示されるように)、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型分光計(SEM−EDS)を用いて行われた。その結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
表3に示されるように、中間層14は、チタンニッケルスズアルミニウム合金層である(TixNiySnwAlzで表される化学式を有し、その中の領域31に位置される中間層14のxは0.1413、yは0.1536、zは0.6903、およびwは0.0148であり;領域32に位置される中間層14のxは0.2151、yは0.1097、zは0.645、およびwは0.0302である)。従って、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを接合した後、中間層となるチタンニッケルスズアルミニウム合金層は、熱拡散接合により形成された。
【0035】
実施例2:
熱圧着プロセスによりアルミニウムシート(約5mmの厚さと約1cmの半径を有する)を製造例1のチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートと接合した。熱圧着プロセスの温度は約500℃、熱圧着プロセスの圧力は約1ton、かつプロセスの時間は約2時間であり、耐食構造(2)を得た。耐食構造(2)は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果を図4に示す。図4に示されるように、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを接合したとき、中間層14は、熱拡散接合によりアルミニウム層10とチタンニッケルスズ(TiNiSn)合金層(第1の耐食層12となる)の間に形成された。走査電子顕微鏡画像によって判定された耐食構造(2)の中間層14の厚さは、約180μmであった。
【0036】
次いで、領域41に配置された第1の耐食層12、領域42と領域43に配置された中間層14、および領域44に配置されたアルミニウム層10(図4に示されるように)の元素分析は、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型分光計(SEM−EDS)を用いて行われた。その結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
表4に示されるように、中間層14は、チタンニッケルスズアルミニウム合金層である(TixNiySnwAlzで表される化学式を有し、その中の領域42に位置される中間層14のxは0.1455、yは0.1502、zは0.6596、およびwは0.0448であり、領域43に位置される中間層14のxは0.150、yは0.1435、zは0.6681、およびwは0.0384である)。従って、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズ(TiNiSn)シートを接合した後、中間層となるチタンニッケルスズアルミニウム合金層は、熱拡散接合により形成された。
【0039】
表5は、実施例1および実施例2に開示された熱圧着プロセスのプロセス条件により形成される中間層の厚さを示している。
【0040】
【表5】
【0041】
表5に示されるように、中間層の厚さは、熱圧着プロセスのプロセスの時間がのびたとき、増加される。
【0042】
実施例3:
熱圧着プロセスによりアルミニウムシート(約5mmの厚さと約1cmの半径を有する)を製造例2のジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn)シートとを接合した。熱圧着プロセスの温度は約500℃、熱圧着プロセスの圧力は約1ton、かつプロセスの時間は約1時間で耐食構造(3)を得た。耐食構造(3)は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果を図5に示す。図5に示されるように、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn)シートとを接合したとき、中間層14は、熱拡散接合によりアルミニウム層10とジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn)合金層(第1の耐食層12となる)との間に形成された。走査電子顕微鏡画像によって判定された耐食構造(3)の中間層14の厚さは、約100μmであった。
【0043】
次いで、(図5に示されるように)領域51に位置される第1の耐食層12、領域52に位置される中間層14、および領域53に位置されるアルミニウム層10の元素分析は、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型分光計(SEM−EDS)を用いて行われた。結果を表6に示す。
【0044】
【表6】
【0045】
表6に示されるように、中間層14は、ジルコニウムニッケルスズアルミニウム合金層である(ZrxNiySnwAlzで示される化学式を有し、その中の領域52に位置される中間層14のxは0.1260、yは0.1485、zは0.6391、およびwは0.0863である)。従って、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとジルコニウムニッケルスズ(ZrNiSn)シートとを接合した後、中間層となるジルコニウムニッケルスズアルミニウム合金層は、熱拡散接合により形成された。
【0046】
実施例4:
熱圧着プロセスによりアルミニウムシート(約5mmの厚さと約1cmの半径を有する)を製造例3のハフニウムニッケルスズ(HfNiSn)シートと接合した。熱圧着プロセスの温度は約500℃、熱圧着プロセスの圧力は約1ton、かつプロセスの時間は約1時間で耐食構造(4)を得た。耐食構造(4)は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。結果を図6に示す。図6に示されるように、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとハフニウムニッケルスズ(HfNiSn)シートとを接合したとき、中間層14は、熱拡散接合によりアルミニウム層10とハフニウムニッケルスズ(HfNiSn)合金層(第1の耐食層12となる)との間に形成された。走査電子顕微鏡画像によって判定された耐食構造(4)の中間層14の厚さは、約150μmであった。
【0047】
次いで、(図6に示されるように)領域61に位置される第1の耐食層12、領域62と領域63に位置される中間層14、および領域64に位置されるアルミニウム層10の元素分析は、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型分光計(SEM−EDS)を用いて行われた。結果を表7に示す。
【0048】
【表7】
【0049】
表7に示されるように、中間層14は、ハフニウムニッケルスズアルミニウム合金層である(HfxNiySnwAlzで示される化学式を有し、その中の領域62に位置される中間層14のxは0.1180、yは0.1395、zは0.6751、およびwは0.0673であり、領域63に位置される中間層14のxは0.1188、yは0.1340、zは0.7081、およびwは0.0390である)。従って、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとハフニウムニッケルスズ(HfNiSn)シートとを接合した後、中間層となるハフニウムニッケルスズアルミニウム合金層は、熱拡散接合により形成された。
【0050】
実施例5:
熱圧着プロセスによりアルミニウムシート(約5mmの厚さと約1cmの半径を有する)を製造例4のチタンニッケルスズアンチモン(TiNiSn0.95Sb0.05)シートと接合した。熱圧着プロセスの温度は約500℃、熱圧着プロセスの圧力は約1ton、かつプロセスの時間は約1時間で耐食構造(5)を得た。耐食構造(5)は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察された。結果を図7に示す。図7に示されるように、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズアンチモン(TiNiSn0.95Sb0.05)シートとを接合したとき、中間層14は、熱拡散接合によりアルミニウム層10とチタンニッケルスズアンチモン(TiNiSn0.95Sb0.05)合金層(第1の耐食層12となる)との間に形成された。走査電子顕微鏡画像によって判定された耐食構造(5)の中間層14の厚さは、約100μmであった。
【0051】
次いで、(図7に示されるように)領域71に位置される第1の耐食層12、領域72に位置される中間層14、および領域73に配置されたアルミニウム層10の元素分析は、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型分光計(SEM−EDS)を用いて行われた。結果を表8に示す。
【0052】
【表8】
【0053】
表8に示されるように、中間層14は、チタンニッケルスズアンチモンアルミニウム合金層である(TixNiySnwSbaAlzで示される化学式を有し、その中の領域72に位置される中間層14のxは0.1643、yは0.1380、zは0.6666、wは0.0302、およびaは0.0009である)。従って、熱圧着プロセスによりアルミニウムシートとチタンニッケルスズアンチモン(TiNiSn0.95Sb0.05)シートとを接合した後、中間層となるチタンニッケルスズアンチモンアルミニウム合金層は、熱拡散接合により形成された。
【0054】
接合強度テスト
実施例6:
実施例1の耐食構造(1)を2mm×2mmの四角形の断片にカットした。耐食構造(1)のアルミニウム層とチタンニッケルスズ合金層との間の接合強度は、スラスタによりASTM−F1269に基づいて測定された。結果として、チタンニッケルスズ合金層に50kgの推力を加えたばあい、チタンニッケルスズ合金層は、耐食構造(1)から剥離されなかった。従って、アルミニウム層と耐食層(例えば、チタンニッケルスズ合金層)との間に形成された本発明の中間層により、耐食層とアルミニウム層との間の接合強度が向上され、それにより、アルミニウム層から剥離しやすいという耐食層の問題が解決する。
【0055】
本発明の方法および材料に対して様々な修正および変形を行えることは当業者には自明であろう。明細書の記述および実施の形態は、単なる例示として考慮されるべきであり、特許請求の範囲によって示される本発明の真の範囲および技術的思想、および、それらの全範囲の均等範囲を伴うことが意図されている。
【符号の説明】
【0056】
10 アルミニウム層
12 第1の耐食層
14 中間層
31、32 領域
41、42、43 領域
51、52、53 領域
61、62、63、64 領域
71、72、73 領域
100 耐食構造
102 第1のバイポーラプレート
104 膜電極接合体
106 第2のバイポーラプレート
200 燃料電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7