【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する先端医療機器・システムの研究開発/安全性と医療効率の向上を両立するスマート治療室の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】本開示の一態様を示す情報統合装置10の情報取得部30、40〜50は、手術で使用される医療装置102〜112から医療情報を取得する。情報保存部30は、情報取得部が医療情報を取得する時間を一元化された時間軸上で管理して医療情報に付与し、医療情報を特定するためのラベルを医療情報に付与して記憶装置に保存する。イベント抽出部72は、記憶装置に保存されている医療情報から表示装置74に表示させるイベントを、医療情報に付与されたラベルに基づいて抽出する。領域設定部72は、イベント抽出部が抽出したイベントを表示装置に表示させる時間領域を設定する。表示部72は、設定された時間領域において、医療情報として、手術箇所を含む画像とイベント抽出部が抽出したイベントとを、医療情報に付与された時間に基づいて表示装置に表示させる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態を図に基づいて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1に示す情報統合システム2は、情報統合装置10と、医療装置群100と、を備えている。医療装置群100は、生体情報検出装置102と、エネルギーデバイス104と、医療画像撮影装置106と、神経機能検査装置108と、DNA量測定装置110と、3次元位置取得装置112と、を備えている。
【0014】
情報統合装置10は、手術室における各種の医療情報を統合して保存し、表示するための装置である。情報統合装置10は、CPU、RAM、ROM、HDD等を備えた周知のコンピュータ20、60、70を備えている。
【0015】
情報統合装置10は、コンピュータ20、60、70のCPUが上記HDDにインストールされたプログラムを実行することにより、後述する情報統合処理を実行する。情報統合装置10は、機能的には、情報取得保存部30と、ソフトウェアコンポーネント40〜50と、アプリケーション62、64と、統合表示アプリケーション72と、表示装置74と、を備えている。以下、アプリケーションを単にアプリとも言う。
【0016】
情報取得保存部30とソフトウェアコンポーネント40〜50とはコンピュータ20により実現され、アプリ62、64はコンピュータ60により実現され、統合表示アプリ72と表示装置74とはコンピュータ70により実現されている。情報取得保存部30として、例えばORiNが使用される。ORiNは、Open Resource interface for the Networkの略である。
【0017】
情報取得保存部30とソフトウェアコンポーネント40〜50とは、プログラミング言語、通信プロトコルの種類に関わらず、情報統合装置10が医療装置群100の間で情報のやり取りをするためのインターフェースとして機能する。ソフトウェアコンポーネント40〜50は、情報取得保存部30と医療装置群100との間で相互にデータをやりとりすることを可能にするコンポーネントである。
【0018】
情報取得保存部30は、医療装置群100との間でやり取りして取得した医療情報として、画像、生体情報等をHDD等に保存する。
情報取得保存部30は、所定時間間隔で取得した医療情報に、医療情報を特定するラベルと、医療情報を取得した時間とを付与してHDD等に保存する。医療情報に付与する時間は、情報統合装置10が備える図示しない時計から取得され、一元化された時間軸上で管理されている。
【0019】
アプリ62、64は、情報取得保存部30が医療装置群100との間でやり取りした医療情報を用いて、アプリ62、64に特有の医療処理として、解析結果をファイルに出力したり、解析結果を画像表示したり、解析結果を編集したりする。統合表示アプリ72は、情報取得保存部30が保存している医療情報を時間軸上で統合し、表示装置74に表示させる。
【0020】
表示装置74は、例えばタッチパネル方式の液晶ディスプレイであり、一画面にMPR画像等の3次元画像と各種の操作ボタンとを表示可能である。MPRは、Multi Planar Reconstructionの略である。また、表示装置74は、タッチパネルに表示された操作ボタンに対するユーザの入力操作とマウスの操作とに対応する信号を情報取得保存部30に出力する。
【0021】
生体情報検出装置102は、手術中の患者の生体情報として、血圧、心電図、酸素飽和度、心拍数、脈波、脳波、筋電、麻酔深度、等を検出する。
エネルギーデバイス104は、電気メス、ドリル、超音波照射装置等、患者の患部に対して手術を行う医療装置である。
【0022】
医療画像撮影装置106は、CT、MRI等の患者の患部を撮影する装置である。CTはComputed Tomographyの略であり、MRIはMagnetic Resonance Imagingの略である。
神経機能検査装置108は、手術中の運動誘発電位、体性感覚誘発電位等を検査する。以下、運動誘発電位を略してMEP、体性感覚誘発電位を略してSEPとも言う。MEPとSEPも生体情報である。
【0023】
DNA量測定装置110は、手術中に切除された組織を生体検査し、がん細胞であるか否かの検査結果を手術中に出力する装置である。
3次元位置取得装置112は、医療装置として電気メス、鉗子等の手術器具の手術中における3次元位置を取得する装置である。手術器具の3次元位置を取得する方法として、例えば、予めマーカを手術器具の特定の位置に取り付け、手術が実施される空間において予め規定された基準位置から手術器具における特定の位置までのベクトルを手術器具の3次元位置として特定することが考えられる。
[1−2.処理]
次に、情報統合装置10の統合表示アプリ72が実行する情報統合処理について説明する。
図2に示す情報統合処理のフローチャートは、情報統合装置10の電源がオンになり、情報統合処理の開始がスイッチ等で指示されると実行される。
【0024】
図2示す情報統合処理により表示装置74に表示される画像の例として、脳に対して電気メスで手術を行ったときのMPR画像を
図3に示す。MPR画像として、CT画像またはMRI画像が使用される。
【0025】
S400において統合表示アプリ72は、手術中に医療装置群100から取得して情報取得保存部30が保存している医療情報を情報取得保存部30から読み出す。
S402において統合表示アプリ72は、各医療情報に付与されている時間に基づき、一元化された時間軸上において医療情報の順序を整理する。
【0026】
S404において統合表示アプリ72は、表示装置74に表示させるイベントの時間領域を設定するための基準時間となる注目点を抽出する。そして、統合表示アプリ72は、注目点を基準時間として、注目点よりも前の例えば手術開始時間から注目点である基準時間までを、表示装置74に画像を表示させる時間領域として設定する。時間領域は、ユーザが設定しない場合は初期値として、例えば、手術開始から手術終了までが設定される。
【0027】
例えば、S404で注目点を抽出する条件として、MEPの値が40%以下になるとき等がユーザにより設定される。注目点を抽出する条件は、脳に対する電気メスによる手術の場合には、統合表示アプリ72により予め設定されていてもよい。また、ユーザがその都度、注目点を抽出する条件を設定してもよい。
【0028】
また、注目点を基準時間として表示装置74に画像とイベントとを表示させる時間領域は、時間領域の開始時間を手術開始時間として統合表示アプリ72により予め設定されていてもよいし、注目点を基準時間としてユーザがその都度設定してもよい。また、注目点は、時間領域の終了時間ではなく、開始時間でもよいし、時間領域の途中時間でもよい。
【0029】
S406において統合表示アプリ72は、S404で設定した時間領域において、脳のMPR画像とともに表示装置74に表示させるイベントを抽出する。
S408において統合表示アプリ72は、S404で設定した時間領域において、MPR画像とS406で抽出したイベントとを表示装置74に表示させる。
図3に示す表示例では、MEPの値が40%以下になったときの時間を注目点とし、手術開始から注目点までの時間領域におけるイベントとして、電気メスの軌跡200とMEPの値とSEPの値とが、MPR画像とともに表示装置74に表示されている。イベントののうち電気メスの軌跡200は、MPR画像に重畳して表示されている。
【0030】
尚、表示装置74に表示するイベントとして、電気メスの軌跡200とMEPの値とSEPの値と以外に、脳波、脈波等の生体情報を医療情報から抽出して表示させてもよい。
表示装置74に表示される表示レイアウトは、複数種類用意されており、表示する医療情報に応じて対応する表示レイアウトが統合表示アプリ72により選択されるか、ユーザが表示レイアウトを設定する。
【0031】
次に、ユーザの操作に応じて、S410、S412またはS414、S416またはS418、S420、またはS422、S424の処理が実行される。各処理を実行すると、処理はS408に戻る。
【0032】
S410においてユーザが表示装置74のタッチパネル上の再生ボタンを押下すると、S412において統合表示アプリ72は、ユーザが表示装置74のタッチパネル上の停止ボタンを押下するまで、軌跡200上の電気メスの現在位置とそのときのMEPの値とSEPの値とを表示装置74上で再生する。
【0033】
S414においてユーザがマウスホイールを回すと、S416において統合表示アプリ72は、軌跡200上の電気メスの現在位置とそのときのMEPの値とSEPの値とを示す時間軸上の位置とを、マウスホイールの回転方向に応じて時間を前後させて表示装置74上で再生する。
【0034】
S418においてユーザがイベントを抽出すると、S420において統合表示アプリ72は、抽出されたイベントが発生した時間の画像を表示装置74に表示させる。
S422においてユーザが軌跡200上でマウスをクリックすると、S424において統合表示アプリ72は、マウスでクリックした軌跡200上の時間の画像を表示装置74に表示させる。
[1−3.効果]
第1実施形態によると、以下の効果を得ることができる。
【0035】
医療情報から表示装置74に表示させるイベントを抽出し、設定した時間領域の範囲で抽出したイベントの変化を表示装置74に表示できる。これにより、手術中において注目したいイベントの変化を注目したい時間領域の範囲で表示装置74に表示し、手術の経過を検証できる。
【0036】
第1実施形態において、情報統合装置10が情報統合装置に対応し、情報取得保存部30とソフトウェアコンポーネント40〜50とが情報取得部に対応し、情報取得保存部30が情報保存部に対応し、統合表示アプリ72がイベント抽出部と領域設定部と表示部とに対応し、表示装置74が表示装置に対応する。
【0037】
また、S404が領域設定部の処理に対応し、S406がイベント抽出部の処理に対応し、S408、S412、S416、S420、S424が表示部の処理に対応する。
[2.第2実施形態]
[2−1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態の情報統合システムの構成は、第1実施形態の情報統合システム2と実質的に同じであるが、表示装置74に表示する画像の表示例が第1実施形態と異なる。第1実施形態と同じ構成部分については同一符号を用いる。第1実施形態と同一符号については、先行する説明を参照する。
【0038】
図4に示すように、表示装置74に表示された体軸断面、矢状断面、冠状断面、斜視画像のいずれかの画像上でマウス等によりユーザが空間領域210を指定すると、統合表示アプリ72は、他の画像で対応する空間領域210を設定する。時間領域は、例えば、手術開始から手術終了までが設定される。
【0039】
統合表示アプリ72は、空間領域210内で発生したイベントだけを表示装置74に表示させる。
図4では、空間領域210の電気メスの軌跡200がイベントとして表示されている。
【0040】
そして、例えばユーザがマウスホイールを回すと、マウスホイールの回転方向に応じて、空間領域210の画像だけが、各画像を見る定点を変えずに時間を前後して表示装置74に表示される。
[2−2.効果]
第2実施形態によると、注目したい空間領域210におけるイベントの時間変化を、表示装置74に定点からの視点で表示できる。これにより、注目したいイベントと空間領域210とに基づいて、手術の経過を検証できる。
【0041】
第2実施形態において、空間領域210が空間領域に対応する。
[3.第3実施形態]
[3−1.第1実施形態との相違点]
第3実施形態の情報統合システムの構成は、第1実施形態の情報統合システム2と実質的に同じであるが、表示装置74に表示する画像の表示例が第1実施形態と異なる。第1実施形態と同じ構成部分については同一符号を用いる。第1実施形態と同一符号については、先行する説明を参照する。
【0042】
図5に示すように、ユーザは、表示装置74に表示された体軸断面、矢状断面、冠状断面、斜視画像のいずれかの画像上で、マウス等により空間領域220を指定する。統合表示アプリ72は、いずれかの画像で空間領域220が指定されると、他の画像で対応する空間領域220を設定する。時間領域は、例えば、手術開始から手術終了までが設定される。
【0043】
さらに、ユーザは、電気メス、ドリル等の手術器具により空間領域220内で発生する熱量または温度をイベントとして設定する。
例えば、空間領域220における色表示が青いほど熱量の発生量が少なく、色表示が赤いほど熱量の発生量が多いことを表す。ユーザがマウスホイールを回転することにより、設定された時間領域において、空間領域220の色表示が時間を前後して変化する。熱量または温度は、例えばドリルの作動状態、ドリルに加わる反力、ドリルの素材、ドリル使用時の冷却水の冷却効果等を考慮して算出する。
【0044】
さらに、
図6に示すように、時間領域において空間領域220内で発生した瞬時の熱量300と、熱量の積算値310とを表示装置74に表示してもよい。
[3−2.効果]
第3実施形態によると、注目したい空間領域220における熱量の変化を、設定した時間領域において表示装置74上で容易に検証できる。
【0045】
第3実施形態において、空間領域220が空間領域に対応する。
[4.他の実施形態]
(1)上記の基準時間を設定する注目点として、麻酔を投与した時間を抽出してもよい。そして、麻酔を投与した基準時間を含む前後の時間領域において、抽出されたイベントの時間変化を表示装置74に表示させてもよい。
【0046】
(2)情報統合装置10は、イベントとして手術中に発生した異常原因を、情報取得保存部30が保存している時間管理された複数の医療情報に基づいて検証してもよい。
(3)上記実施形態では、情報統合装置10を使用して脳に対する手術を検証する例を説明した。これ以外にも、歯、骨、鼻、耳、等の手術中に動かない身体箇所に対する手術の検証に情報統合装置10を使用してもよい。
【0047】
(4)情報統合装置10を構成するコンピュータの数は、上記実施形態で例示した2個に限るものではなく、1個でもよいし3個以上でもよい。
(5)上記実施形態における一つの構成要素が有する複数の機能を複数の構成要素によって実現したり、一つの構成要素が有する一つの機能を複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を一つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される一つの機能を一つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。尚、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0048】
(6)上述した情報統合装置の他、当該情報統合装置を構成要素とする情報統合システム、当該情報統合装置としてコンピュータを機能させるための情報統合プログラム、この情報統合プログラムを記録した記録媒体、情報統合方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。