(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-89400(P2018-89400A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】高周波電気神経ブロック
(51)【国際特許分類】
A61N 1/05 20060101AFI20180518BHJP
A61N 1/06 20060101ALI20180518BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20180518BHJP
【FI】
A61N1/05
A61N1/06
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-19146(P2018-19146)
(22)【出願日】2018年2月6日
(62)【分割の表示】特願2014-511571(P2014-511571)の分割
【原出願日】2012年5月18日
(31)【優先権主張番号】61/487,877
(32)【優先日】2011年5月19日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】513290462
【氏名又は名称】ニューロス・メディカル・インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジ−ピン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジェー・スナイダー
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC10
4C053DD02
4C053DD07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】神経内の活動電位を遮断することになる方法および装置を提供する。
【解決手段】必要とする患者において末梢神経の疼痛を改善する方法であって、(a)前記患者の前記末梢神経に接する埋込電極50に動作可能に接続された波形発生装置10から、4Vppから20Vppまでの範囲にある電圧、または、4mAppから26mAppまでの範囲にある電流の一方での波形を、前記患者に実質的に即時の鎮痛をもたらすのに十分な間隔で、前記神経に供給するステップと、(b)神経の疼痛を改善する必要に応じて、前記ステップ(a)を選択的に繰り返すステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする患者において末梢神経の疼痛を改善する方法であって、
(a)前記患者の前記末梢神経に接する埋込電極に動作可能に接続された波形発生装置から、4Vppから20Vppまでの範囲にある電圧、または、4mAppから26mAppまでの範囲にある電流の一方での波形を、前記患者に実質的に即時の鎮痛をもたらすのに十分な間隔で、前記神経に供給するステップと、
(b)神経の疼痛を改善する必要に応じて、前記ステップ(a)を選択的に繰り返すステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
供給される前記波形は少なくとも5kHzから50kHzまでであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
供給される前記波形は10kHzの正弦波形であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記神経の直径は12mmまでであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記神経の直径は3mmを超えて12mmまでであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記神経は坐骨神経であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記神経は脛骨神経であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記間隔は前記患者によって調整されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(a)は、罹患した前記神経に接するとともにカフに収められた単極、二極、または三極の電極を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カフは、約5mmから約12mmまでの範囲の内径を備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記間隔は約10分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
供給される前記電流または前記電圧は、約10秒から約60秒までの範囲で、一定の比率で大きさを増加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記電極は、従来の電極よりも比較的大きな前記神経との接触面を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
患者において所望の応答をもたらすために前記患者の神経内の活動電位を可逆的に遮断する方法であって、
(a)前記患者の前記神経に接する埋込電極に動作可能に接続された波形発生装置から、4Vppから20Vppまでの範囲にある電圧、または、4mAppから26mAppまでの範囲にある電流の一方での波形を、前記患者において実質的な応答をもたらすのに十分な間隔で前記神経に供給するステップと、
(b)前記ステップ(a)を選択的に繰り返すステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記応答は疼痛であり、前記患者は、電気的な前記波形を印加すると実質的に即時に鎮痛を経験することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記応答は、前記神経によって弱められた筋肉の痙性を改善することであり、前記患者は、電気的な前記波形を印加すると実質的に即時に痙性の改善を経験することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記応答は、膀胱における尿意を改善することであり、前記患者は、電気的な前記波形を印加すると実質的に即時に尿意の改善を経験することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
供給される前記波形は5kHzから50kHzまでの範囲であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
供給される前記波形は正弦波形であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本明細書においてその全体が参照により明示的に組み込まれている、2011年5月19日に出願された同時係属中の米国特許出願第61/487,877号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ある形態では、高周波神経ブロックを用いて、急性疼痛または慢性疼痛(6カ月を超える継続時間)にかかわらず、ヒトにおける末梢性疼痛を、活動電位で神経伝導を遮断することによって急性処置する方法および装置によって、良好な結果が得られたことが開示されている。急性処置は、実質的に即時の鎮痛効果を伴うオンデマンド治療と定義される。ある形態では、この方法が、約12mmまでの直径を有する末梢神経、すなわち、坐骨神経などの比較的大きな神経で用いられる。ある形態では、この方法が、例えば、痙性となる運動神経や、例えば、過活動膀胱において尿意をもたらす神経といった神経への治療によって疼痛以外の状態を改善するために、神経に用いられる。
【0003】
例えば、四肢における損傷した神経といった、末梢起源の疼痛に対する以前の治療は、以下の方法を単独で、または組み合わせて構成されていた。
【0004】
ある以前の治療は、リドカインなどの薬理的な麻酔の局所注射であった。治療効果は、例えば数時間といった短い時間しか続かないことが多い。繰り返し投与することは、麻酔の毒性および他の理由のため、通常、実施不可能である。
【0005】
別の以前の治療は、表面電極、または、外科的に埋め込まれた電極(例えば、経皮的神経電気刺激法、末梢神経および脊髄刺激装置)による、従来の電気的な刺激であった。電気的な刺激の治療は、背中の疼痛や関節の疼痛を処置するために用いられるが、効果が一定していない。一定していないのは、治療の間接的な性質によるものである。すなわち、疼痛の源からの疼痛信号を遮断する代わりに、このタイプの電気的な刺激は、疼痛以外の感覚神経に作用して、疼痛の感覚を遮蔽する他の種類の感覚(例えば、うずく感覚)を発生させる。このような遮蔽は、複雑でしばしば不確実な、神経系の様々な部分の相互作用によるものである。
【0006】
今後可能性のある治療は、高周波の交流電流を神経幹に直に印加することで、末梢神経を可逆的に遮断することを含む。具体的には、5kHzから50kHzまでの範囲の電流が印加され、これが、上記の従来の電気的な刺激で印加された1kHz未満の電流と比較して、高周波として表されている。人間以外の動物(カエル、ネコ)の急性実験において、高周波の交流電流治療の有効性が報告されている。米国特許第7,389,145号および米国特許第8,060,208号には、この電気的な刺激の技術が大まかに説明されている。データは示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,389,145号
【特許文献2】米国特許第8,060,208号
【特許文献3】米国特許第4,602,624号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、必要とする患者において、例えば、坐骨神経や脛骨神経などの、直径が3mmを超えて約12mmまでの末梢神経内の活動電位を可逆的に遮断する方法を開示している。その方法は、電気的な波形を、概して約10分以内と定められる、実質的に即時の鎮痛をもたらすのに十分な時間間隔で供給するステップを含む。一実施形態は、5kHzから50kHzまでの範囲の波形を用いる。一実施形態は、10kHzの正弦波形を、4mAppから26mAppまでの範囲にある電流で用いる。電極は、活動電位が遮断される所望の末梢神経を取り巻くカフで保持することができる。カフの内径は、約5mmから約12mmまでの範囲とすることができる。時間間隔は約10分であってよいが、間隔は、患者に鎮痛をもたらすのに十分な長さにより、選択されてもよい。一実施形態では、鎮痛をもたらす電気的な波形は、4Vppから20Vppまでの範囲にある電圧、または、4mAppから26mAppまでの範囲にある電流の範囲にある。大きさを増加する時間は、一定の比率の電圧または電流の増加で、約10秒から約60秒までの範囲とすることができる。波形は、患者に埋め込まれた電極に動作可能に接続された波形発生装置によって供給され、このような方法は当技術分野において公知である。
【0009】
一実施形態は、比較的大きな神経、すなわち、直径が約3mmを超えて12mmまでの神経内の活動電位を可逆的に遮断する装置である。装置は、あらかじめ張力を持たせた第1の層と、あらかじめ張力を持たせていない第2の層とを備える非導電性材料から成る自己湾曲シートを備える。2つの層は、それらの間に導電性材料の帯片を具備または保持するカフを形成するように構成される。実施形態では、装置は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはより多くの連続する導電性材料の帯片を備えており、それらの帯片は、自己湾曲シートの長手方向に延びる一方の縁に隣接しつつ交わらないように配置されている。これらの導電性材料の帯片の各々は、リード線に接続される。一実施形態では、装置は、単極構成と称される1つの導電性材料の帯片を備える。一実施形態では、装置は、リード線によって接続された、二極構成と称される、少なくとも2つの連続する導電性材料の帯片を備える。一実施形態では、装置は、リード線によって接続された、三極構成と称される、少なくとも3つの連続する導電性材料の帯片を備える。一実施形態では、装置は、リード線によって接続された、少なくとも4つの連続する導電性材料の帯片を備える。典型的には円形であるがそれに必ずしも限定されない複数の開口部が、自己湾曲シート/カフの2つの非導電性のシートまたは層の一方の湾曲する長さに沿う内側神経接触面に一定の間隔で配置される。これは、連続した複数の導電性の接触点を露出して提供することで、神経への接触をもたらす。この露出は、導電性材料をできるだけ多く露出する、もしくは、所望だけ露出し、従来の電極の接触面の面積を超える任意の間隔であればよい。第1または上側の非導電性のシートまたは層、および、第2または下側の非導電性のシートまたは層の各々は、それらの間に導電性材料をなおも保持および具備している。すなわち、シート同士または層同士の間に挟まれている。その結果、導電性材料は、実際に保持されており、飛び出したり外れたりすることなく、効率的に電流を流す。一実施形態では、非導電性材料はシリコンであり、リード線はステンレス鋼であり、導電性材料は白金である。非導電性材料、リード線または電線、および、導電性材料の各々についての他の材料は、当技術分野において公知である。使用の際、装置は、例えば、外部リード線または外部電線によって、調整した波形を供給する波形発生装置に動作可能に接続される。
【0010】
一実施形態は、処置を必要とする患者において末梢神経の疼痛を処置する方法である。前述の装置は、例えば、坐骨神経や脛骨神経といった、対象とする末梢神経の特定部位を取り巻いた。電気的な波形発生装置に接続された患者の埋込電極を用いる場合、電気的な波形が、例えば10分といった、実質的に即時の患者の鎮痛をもたらすのに十分な時間間隔、例えば10分以内、および、数時間までの鎮痛の延長された期間、付与される。一実施形態における電流は、4mAppから26mAppまでの範囲であり、一実施形態では、4mAppから26mAppまでの範囲である。
【0011】
本発明の方法では、高周波電気神経ブロックの技術を疼痛の管理に用いる人体研究からのデータが提供される。一実施形態では、その結果は、切断の疼痛が緩和されたというものであった。特別製の埋込神経電極を介した特別製の発生器によって発生された10kHzの交流電流を印加することで、この方法によって処置された患者の大部分において疼痛を大幅に緩和した。必要な電圧/電流の大きさを報告する。具体的なヒトの神経において確実に鎮痛を達成する継続時間を報告する。副作用を最小限とするように電気的エネルギーを印加するために必要な流れおよび時間を報告する。予想される付随する感覚およびその時間的経過を報告する。電流の停止後における鎮痛の継続時間を報告する。疼痛の緩和の延長における電流の連続的な印加の累積的な影響を報告する。
【0012】
装置は、外部のまたは埋め込まれた波形発生装置に動作可能に接続された埋め込み可能な電極であった。電極は、米国特許第4,602,624号に記載されているものと同様の螺旋状のカフ電極であり、以下により完全に説明する。使用の際、電極は、活動電位が遮断されることになる所望の末梢神経をカフが取り巻くようにして、疼痛源(例えば、神経腫)に隣接した所望の末梢神経幹においてヒト哺乳動物に埋め込まれた。カフの内径は、約5mmから約12mmまでの範囲であった。坐骨神経は、比較的大きな神経幹を有していることが知られており、成人のヒトにおける坐骨神経の近位部の直径は約12mmである。一実施形態では、装置および方法は、上記の膝上での切断患者において四肢の疼痛を処置するために、坐骨神経に用いられた。一実施形態では、装置および方法は、膝下での切断患者において四肢の疼痛を処置するために、脛骨神経に用いられた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】外部の波形発生装置および相互接続ケーブルの斜視図である。
【
図2】患者の神経を取り巻く神経カフ電極に動作可能に接続された埋め込まれた波形発生装置の使用中の図である。
【
図3A】埋め込まれたカフおよび電極の写真である。
【
図3B】埋め込まれたカフおよび電極の確認の蛍光透視写真である。
【
図4】神経カフ電極およびリード線の概略図である。
【
図5】本発明の使用と薬物処置とを比較した、ある患者の鎮痛のグラフである。
【
図6】本発明を用いたある患者の疼痛強度と鎮痛とのグラフである。
【
図7A】巻き上げられていない構成の三極の電極の大まかな概略図である。
【
図7B】
図7Aの一実施形態を具体的な寸法と共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
使用の際、
図1に示す外部の波形発生装置と、
図2に示す埋め込まれた波形発生装置とは、神経活動電位を遮断するに十分な任意の形(正弦波、矩形、他の形)で、高周波の交流電流を送り出した。使用の際、操作者は、電極に印加される電流の量、継続時間、他の任意所望のパラメータ(例えば、連続性に対する間欠性)などを治療ごとに選択的に調整した。一実施形態では、10kHzの周波数の正弦波形が、効果的かつ繰り返して疼痛を緩和した。一実施形態では、20kHzから30kHzの範囲の周波数の正弦波形が効果的に疼痛を緩和したが、10kHzの正弦波形に必要とされる電圧および電流と比較して、20kHzの正弦波形では約2倍の大きさの電圧および電流を必要とし、30kHzの正弦波形では約3倍の大きさの電圧および電流を必要とした。
【0015】
10kHzの周波数の正弦波形を用いたとき、患者は、1Vppから10Vppの範囲の電圧および1mAppから16mAppの範囲の電流で、感覚閾値を伝えてきた。感覚閾値は、患者が、例えば、うずくような感覚を感じることができるといった、印加された電流に起因する感覚を感じることを指し示した、最小限の刺激であった。
【0016】
感覚閾値を示すことは、完全な鎮痛を含むがそれに限定されることのない、疼痛の何らかの緩和または改善として広く定義される鎮痛を指し示してはいない。10kHzの正弦波形を用いたとき、患者の疼痛の緩和は、4Vppから20Vppの範囲の電圧および4mAppから26mAppの範囲の電流で実現された。2つのパラメータ(感覚閾値を実現するために印加される必要のある電圧/電流に対する、鎮痛を実現するために印加される必要のある電圧/電流)の間の間隔は、約10秒から約60秒の範囲に渡って、穏やかな一定の比率の増加によって最適に実現された。これは、治療開始時に患者が疼痛または他の望ましくない感覚を経験することを、最小限に抑えるかもしくは防止する。
【0017】
一実施形態では、電極は、
図3Aに示すように、脛骨神経に埋め込まれた。適切に埋め込んだかは、
図3Bに示すように、蛍光透視の可視化によって検証された。
【0018】
下肢切断後の疼痛を経験する5人の患者のうちの1人において、基準疼痛強度の程度、および、自己投与の麻薬錠剤によるこの疼痛の緩和の程度が、連続21日間の期間に渡って自己評価された開示された神経ブロック装置および方法を用いた基準疼痛強度の程度およびこの疼痛の緩和の程度と比較された。0〜10の等級を用いる患者の自己評価の疼痛強度は、0が疼痛なしであり、10が疼痛のあり得る最もひどい強度である。麻薬は、1回分が10mg/325mgの錠剤として調合されるヒドロコドン/APAPであった。患者は、必要により、錠剤を自身で経口投与した。
【0019】
電気神経ブロック治療を自己適用するとき、患者が調整しなかったパラメータは、印加される電流の量、および、各適用期間の継続時間であった。患者が調整したパラメータは、治療を自己適用する24時間の期間のうちの時間、および、適用ごとの時間間隔であった。一実施形態では、各処置は10分間であった。一実施形態では、ある自己適用の10分間の電気処置に続いて、直ちに少なくとも1回の追加の自己適用の10分間の電気処置が行われ、累積的な疼痛の緩和効果が得られた。各間隔の間に印加される電流/電圧の量は、それぞれ、4mAppから26mApp/4Vppから20Vppの範囲であった。
【0020】
2人の患者の各々についての具体的な選択されたデータが、
図5および
図6にそれぞれ示されている。5人の患者すべてについての結果のまとめが、
図8に示されている。
【0021】
処置の開始から数分以内に疼痛の緩和を経験したと患者らは報告した。しびれる、うずく、引っ張られるなどの感覚が、処置の開始後数分以内に弱まったと患者らは報告した。10分間の処置(電気的に遮断する電流の印加)の後、患者らは、経験した疼痛の緩和が処置の停止後も数時間まで持続したと報告した。
【0022】
神経伝導ブロックに用いられた電極の様々な実施形態の説明は、次のとおりである。これらの実施形態は、Naplesの米国特許第4,602,624号で開示された装置の使用とは異なる。Naplesの電極は、約1mmから約3mmの直径の神経において、活動電位を、刺激、すなわち、活性化、作用、発生させるために用いられる。Naplesの場合、4組の矩形状の電極が、シリコンなどの非導電性材料の2つの層の間に挟まれている接触点を構成している。非導電性材料の層は自己湾曲であった。導電性の接触点が、弾性的に伸縮性のある第1の層の内周における部位において、接触点同士の間が一定の間隔とされて配設されていた。導電性の接触点は、例えば、ステンレス鋼線といった、電線またはリード線によって接続されている。層は、選択的な調整、この場合、活動電位を開始するために活性化したとき、導電性の接触点を神経に露出するために、非導電性材料に孔(窓部)を備えている。孔同士の間の距離(離間距離)、および、層の湾曲する長さは、神経の直径に比例している。
【0023】
直径が約3mmを超える神経内の活動電位を遮断しようとする試みでは、前述の装置および方法は不適当である。これは、前述の設計を単に大きくするだけでは、約3mm以下の直径の典型的な神経と比較して、比較的大きな直径を有する神経内の活動電位の伝導を遮断するのに必要な適切な電流を流すことができなかったためである。例えば、成人のヒトでは坐骨神経が約3mmを超える直径であり、12mmまでの直径となる可能性がある。坐骨神経は、病変の源となることが多く、治療を必要とすることがよくある。本発明の方法は、神経伝導ブロックのために、約3mmを超える直径の神経に用いられた。
【0024】
一実施形態では、本発明の方法は、約1mmから約8mmの間の直径の神経に用いられた。一実施形態では、本発明の方法は、約3mmから約10mmの間の直径の神経に用いられた。一実施形態では、本発明の方法は、約8mmから約12mmの間の直径の神経に用いられた。一実施形態では、本発明の方法は、約12mmまでの直径の神経に用いられた。本発明の方法は、坐骨神経を含む神経内の活動電位を遮断し、それによって、末梢神経の疼痛を改善および/または緩和させた。本発明の方法は、神経内の活動電位を発生させるために用いられたことはなく、活動電位の伝導を遮断するために用いられた。神経内の活動電位を刺激することに対して、神経内の活動電位の伝導を遮断することは、より大きな電流を必要とするため、神経と電極との間の境界面においてより小さな抵抗を必要とする。本発明の方法は、より小さな電力消費で適切な電圧を有利に提供する発生装置を用いた。したがって、本発明の方法は、発生装置の使用中に発生される熱による組織への熱損傷を最小限としつつ、効率を改善させた。
【0025】
すべての実施形態において、電極は、Naplesの電極などの従来の電極よりも、神経との接触面が比較的大きかった。1つだけの例が本発明の方法で用いられたため、開口部同士は0.5mmから1.9mmまでの範囲の間隔で離間された。一実施形態では、開口部同士は、隣り合う開口部同士の間で中心間の寸法として定義したとき、1.0mmの間隔で離間された。
【0026】
図1に示すように、外部の波形発生装置10は、ケーブル25で動作可能に接続された電極コネクタ20を備え、コネクタ13、LED表示部15、および、オン/オフ表示部17を備えている。
図2、
図3、および
図4での使用で示すように、神経カフ電極50は、自己湾曲シート53に含まれる導電性材料51と、波形発生装置10に接続するリード線25とを備えている。
図7Aおよび
図7Bで最もよく示すように、導電性材料51は、
図4に示す埋め込み可能で拡張可能な螺旋状のカフ52内に含まれて保持されている。カフ52は、約3mmを超えて約12mmまでの直径の神経に接して調整するように使用するために必要な柔軟性を提供し、組織の損傷を最小限にするために、神経との間に硬くない接触面を提供する。
【0027】
概して
図7Aに示す一実施形態において、かつ、
図7Bに示す具体的な一実施形態において、電極は、
図7Bでは具体的には白金である導電性材料51の連続する帯片を、
図7Bでは具体的にはシリコンである非導電性材料53の2つの対向する面またはシートで挟んだ構成で、非導電性材料53の全長に沿って含んでいた。非導電性材料53は自己湾曲性であった。導電性材料51の神経との接触点を提供するために、神経の周囲にカフ52が埋め込まれ、孔または開口部57が、非導電性材料53の一方の面に一定の間隔59で作られている。間隔59の隔たりは、使用中に導電性材料51が非導電性材料53内に含まれて保持されるように、すなわち、非導電性材料が飛び出したり外れたりすることのないようになっており、神経との電気的な接触のために導電性材料51を十分に露出させている。一実施形態では、孔57は1mmの間隔で作られた。一実施形態では、孔57は、約1mmから約2mm未満の間の範囲の間隔で作られた。孔57は、非導電性材料53に作られた。活動電位の伝導を遮断するために神経が導電性材料51に曝されるのは、これらの孔57においてであった。二極または三極の実施形態では、帯片同士の間の距離または隔たりは、処置される神経の大きさに依存した1:1となっている。すなわち、より大きい神経は、帯片同士の間により大きな隔たりを許容することができる。
図7Aでは、各電極について、導電性材料接触部70を備えた帯片の長さは、リード線または電線A、B、およびCの各々について示されている。この電極の設計は、効果的な電流を流して、活動電位を効果的に遮断した。この電極の設計は、非導電性材料53の2つの層の中に導電性材料51を含んで保持していた。
【0028】
一実施形態では、装置の湾曲した構成は、10mmの直径で、1.5巻回すなわち円周の2分の1が非導電性材料53の単一の挟まれたシート(すなわち2層)を含み、円周の他方の1.5巻回が非導電性材料53の2つの挟まれたシート(すなわち4層)を含んでいた。神経に損傷を与えない可撓性の柔軟なカフとなる任意の巻回が用いられてもよい。両極間の距離は、内側のカフ直径の約0.75倍から1.5倍であった。接触面の面積は、神経の刺激および活性化について開示されたNaplesの電極などの従来の電極の接触面の面積より比較的大きく、直径が12mmまでの神経であっても、神経の活動電位を遮断するために、より大きな必要な電荷量を安全に送り出した。
【0029】
一実施形態では、電極は二極であった。別の実施形態では、電極は、3つの接触する群、すなわち、三極を用いた。この実施形態では、電極は導電性材料の3つの連続する帯片を含んでおり、それらは、導電性材料の2つの連続する帯片について先に説明したのと同じ方法で、2つの対向する非導電性の面の間に設けられたリード線(
図7Aおよび
図7BにおけるA、B、C)によって接続されている。2つ、3つ、またはより多くの導体の帯同士の間の離間すなわち距離が、カフの直径の関数である。離間:直径の比は、0.75:1.5の範囲である。
【0030】
上記の電極は、多くの神経束および/または神経繊維を遮断した。遮断は可逆的であり、カフは任意の場所で任意の長さの神経に沿って埋め込み可能であり、電気的パラメータ(電流、電圧、継続時間など)は操作者によって選択された。一実施形態では、埋め込み可能な装置の受容者が操作者である。一実施形態では、健康管理専門者が操作者である。電極を使用すると、神経と電極との間の境界面での抵抗が小さくなる。このような複数の点での接触と、比較的大きな孔とによって、電極は神経幹の少なくとも一部を遮断することができる。三極の構成とされた一実施形態では、電極は、先ず神経幹の少なくとも一部を遮断し、次に遮断を検証するために他の部分を刺激するように用いることができる。
【0031】
本発明の方法は、様々な疼痛および疼痛以外の用途で使用される。一実施形態は、末梢神経の疼痛を遮断するために、方法および電極を用いる。使用および説明が先に行われた切断の疼痛を緩和するための使用に加えて、疼痛を緩和する他の例には、神経因性疼痛、侵害受容性疼痛、慢性神経疼痛、片頭痛、ヘルペス後神経痛、骨盤痛、慢性的な術後疼痛、術後疼痛、および神経痛の緩和が含まれるが、それらに限定されない。当技術分野で知られているように、疼痛は、知覚神経終末の有害刺激によって引き起こされる不快感として定義されている。切断の疼痛は、例えば、病変や外傷などから生じる治療のために処置する、体の一部、または四肢もしくは四肢の一部を外科的に除去することから生じる疼痛である。神経因性疼痛は、末梢神経系または中枢神経系の神経組織の直接的な入力から生じる疼痛であり、概して、焼けるように、または、うずくように感じられ、感覚消失の領域でしばしば発生する。侵害受容性疼痛は、疼痛性刺激に対する神経受容体の刺激、すなわち、侵害受容体の入力から生じる疼痛である。慢性神経疼痛は、神経系に由来し、長い期間に渡って続く(すなわち、急性ではなく慢性である)疼痛である。片頭痛は、頭痛となり、頭蓋外の血管の拡張に関連しており、その原因が明確になる(例えば、特定の食物の摂取、外的刺激)こともあるし、明確にならないこともある。ヘルペス後神経痛は、帯状疱疹の以前の発疹の場所で発生する難治性疼痛を伴う神経痛の形態である。骨盤痛は、骨盤の領域すなわち体幹部の下方部に集中する疼痛である。慢性的な術後疼痛は、整体的および手術的方法による病気または外傷の処置の後に始まる長期間に渡って続く疼痛である。術後疼痛は、整体的および手術的方法による病気または外傷の処置の後に始まる疼痛である。神経痛は、任意の数の神経系の病変または疾患から生じる「刺痛」として特徴づけられる、しばしば激しい疼痛である。
【0032】
他の実施形態では、本発明の方法は、神経の活動電位を遮断することで所望の改善結果をもたらす疼痛以外の用途で用いられる。このような疼痛以外の使用の一例は、肥満を改善することである。当技術分野で知られているように、肥満は、主に内蔵および皮下組織における、脂肪細胞の割合の異常な増加である。本発明の方法は、この実施形態では、迷走神経において用いることができる。このような疼痛以外の使用の他の例は、過活動膀胱を改善することである。過活動膀胱は、膀胱保管機能の疾患または病変の俗称である。方法および電極は、抑制するのが困難で失禁させる可能性がある急激な尿意を改善するために、骨盤神経に用いることができる。このような疼痛以外の使用の他の例は、任意の運動神経の痙性を改善することであり、痙性は、過度な筋肉の収縮をもたらし、何らかの複数の神経系の疾患に起因する可能性がある。以下の仮説に基づいた例は、これらの実施形態を例示している。
【0033】
2型糖尿病の患者が、脚への血流不足の結果、脚に神経因性疼痛を経験している。通常の用量の痛みを和らげる麻薬は、効果がないか、もしくは、望ましくない副作用を引き起こすかのいずれかである。右の坐骨神経幹における膝窩において、電極の埋め込みとカフの配置とをした後、患者が10mAppで10分間の疼痛の自己処置を行うと、すぐに疼痛の緩和を経験する。患者は、必要により、オンデマンドで手順を繰り返す。
【0034】
片頭痛の患者が、従来の処置に無反応な激しい頭痛を経験している。より大きな後頭神経幹において、電極の埋め込みとカフの配置とをした後、患者が10mAppで10分間の疼痛の自己処置を行うと、すぐに疼痛の緩和を経験する。患者は、必要により、オンデマンドで手順を繰り返す。
【0035】
帯状疱疹を患う患者が、従来の処置に無反応なヘルペス後神経痛を経験している。肋間神経において、電極の埋め込みとカフの配置とをした後、患者が10mAppで10分間の疼痛の自己処置を行うと、すぐに疼痛の緩和を経験する。患者は、必要により、オンデマンドで手順を繰り返す。
【0036】
術後の鼠径ヘルニア術の患者が、慢性疼痛を経験している。腸骨鼠径神経において、電極の埋め込みとカフの配置とをした後、患者が10mAppで10分間の疼痛の自己処置を行うと、すぐに疼痛の緩和を経験する。患者は、必要により、オンデマンドで手順を繰り返す。
【0037】
過活動膀胱症候群を患う患者が、骨盤神経において、電極の埋め込みとカフの配置とをする手術を受ける。患者が尿意の際に10mAppで自己処置を行うと、すぐに尿意が止まるのを経験する。
【0038】
筋肉の痙性を患う患者が、運動神経において、電極の埋め込みとカフの配置とをする手術を受ける。患者が必要なときに10mAppで自己処置を行うと、神経が刺激する筋肉の痙性が改善される。
【0039】
例示して説明した実施形態は、当業者である発明者による具体的な実施形態であり、決して限定するものではない。そのため、以下の特許請求の範囲にある本発明の精神から逸脱することなく、これらの実施形態の様々な変更、改良、または代用を行うことができる。引用された先行技術文献は、それらの全体が本明細書において参照により明確に組み入れられる。
【符号の説明】
【0040】
10 波形発生装置
13 コネクタ
15 LED表示部
17 オン/オフ表示部
20 電極コネクタ
25 ケーブル
25 リード線
50 神経カフ電極
51 導電性材料
52 カフ
53 自己湾曲シート
53 非導電性材料
57 孔
57 開口部
59 間隔
70 導電性材料接触部
【手続補正書】
【提出日】2018年3月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢神経からの疼痛を改善する装置であって、
4Vppから20Vppまでの範囲にある電圧、または、4mAppから26mAppまでの範囲にある電流の一方での波形を発生可能な波形発生器と、
前記波形発生器に動作可能に接続されていると共に患者の前記末梢神経に接触可能である埋込電極と、
を備え、
前記波形が前記末梢神経に供給され、
前記埋込電極は、電性材料の連続する帯片を、非導電性材料の2つの対向するシートで挟んだ構成を有しており、
開口部が、前記非導電性材料の一方の面に一定の間隔で形成されており、
前記埋込電極が埋め込み可能であると共に拡張可能である螺旋状のカフ内に含まれて保持されている、装置。
【請求項2】
供給される前記波形の周波数は少なくとも5kHzから50kHzまでであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
供給される前記波形は10kHzの正弦波形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記末梢神経は坐骨神経であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記末梢神経は脛骨神経であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記波形の供給期間は前記患者によって調整されることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記埋込電極は、罹患した前記末梢神経に接することができるとともにカフに収められた単極、二極、または三極の電極であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記カフは、約5mmから約12mmまでの範囲の内径を備えることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記波形の供給期間は約10分であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
供給される前記電流または前記電圧は、約10秒から約60秒までの範囲で、一定の比率で大きさを増加することを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
患者において所望の応答をもたらすために前記患者の神経内の活動電位を可逆的に遮断する装置であって、
前記患者の前記神経に接触可能な埋込電極であって、4Vppから20Vppまでの範囲にある電圧、または、4mAppから26mAppまでの範囲にある電流の一方での波形を、前記患者に供給する埋込電極を備え、
前記波形が所定の間隔で前記患者の前記神経に供給され、
前記埋込電極は、電性材料の連続する帯片を、非導電性材料の2つの対向するシートで挟んだ構成を有しており、
開口部が、前記非導電性材料の一方の面に一定の間隔で形成されており、
前記埋込電極が埋め込み可能であると共に拡張可能である螺旋状のカフ内に含まれて保持されている、装置。
【請求項12】
前記応答は疼痛の改善又は緩和であり、前記患者は、電気的な前記波形を印加すると実質的に即時に鎮痛を経験することを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記応答は、前記神経によって弱められた筋肉の痙性を改善することであり、前記患者は、電気的な前記波形を印加すると実質的に即時に痙性の改善を経験することを特徴とする請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記応答は、膀胱における尿意を改善することであり、前記患者は、電気的な前記波形を印加すると実質的に即時に尿意の改善を経験することを特徴とする請求項11〜13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
供給される前記波形の周波数は5kHzから50kHzまでの範囲であることを特徴とする請求項11〜14の何れか一項に記載の装置。
【請求項16】
供給される前記波形は正弦波形であることを特徴とする請求項11〜15の何れか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記埋込電極は自己湾曲性を有する、請求項1〜16の何れか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記開口部が、前記埋込電極の湾曲する長さに沿う内側神経接触面に一定の間隔で配置されている、請求項1〜17の何れか一項に記載の装置。
【請求項19】
開口部同士は0.5mmから1.9mmまでの範囲の間隔で離間されている、請求項1〜18の何れか一項に記載の装置。
【外国語明細書】