特開2018-89810(P2018-89810A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2018089810-万年筆用ペン先 図000003
  • 特開2018089810-万年筆用ペン先 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-89810(P2018-89810A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】万年筆用ペン先
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/02 20060101AFI20180518BHJP
【FI】
   B43K1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2016-233409(P2016-233409)
(22)【出願日】2016年11月30日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】泉田 一也
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA01
2C350HA01
2C350NA22
2C350NC11
2C350NC46
2C350NE09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】刻印の視認性に優れた万年筆のペン先を提供する。
【解決手段】ステンレスで成形したペン先1であって、ステンレスで成形したペン先本体2の表面2aに、酸化皮膜層3aと、該酸化皮膜層3aと当該酸化皮膜層3aに隣接した前記ペン先本体の表面に設けたレーザー彫刻による刻印部4と、を有した万年筆用ペン先。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレスで成形したペン先本体の表面に、酸化皮膜層と、該酸化皮膜層と当該酸化皮膜層に隣接した前記ペン先本体の表面に設けたレーザー彫刻による刻印部と、を有した万年筆用ペン先。
【請求項2】
前記酸化皮膜層の膜厚が0.1μm以上であり、前記刻印部の深さが5μm〜10μmである請求項1記載の万年筆用ペン先。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、万年筆用ペン先に関するものである。さらに詳しくは、ペン先表面に設けた刻印の視認性に優れた万年筆用のペン先に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、万年筆のペン先に、ブランド名やペン先の大きさあるいは模様などの表示を設ける手段として、刻印を施す手法が知られている。金属に刻印する際には、ポンチによる打刻がよく用いられるが、ポンチによる打刻は、細い打刻幅を形成することが難しく、細い打刻幅では刻印が不鮮明になってしまうという問題があった。また、ポンチによる刻印は、ペン先を曲面形状にプレス成形する前の材料が平らな状態で刻印を設ける必要があることから、刻印を行った後のプレス成形時に、刻印の形状がいびつになってしまうという問題が存在している。この問題への対応として、特許文献1には、レーザー彫刻で刻印を設ける構造の万年筆のペン先が記載されている。このペン先は、レーザー彫刻によって底面が梨地状となる刻印が施されており、ポンチによる刻印と比較して、刻印とその周辺との表面の差(梨地の有無)によって、当該刻印を見やすくすることが可能となった。尚、前記レーザー彫刻は、高密度のレーザーによって、照射部分を瞬間的に融解、蒸発させて刻印を形成することから、変形しやすいものや形状が複雑なものであっても刻印することが可能であり、ペン先のように肉厚が薄く曲面を有したものへの刻印にも適しているが、レーザー彫刻は、その刻印の深さが浅いことから、やはり細い線の刻印では視認性が悪くなることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−240518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、刻印の視認性に優れた万年筆のペン先を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
「1.ステンレスで成形したペン先本体の表面に、酸化皮膜層と、該酸化皮膜層と当該酸化皮膜層に隣接した前記ペン先本体の表面に設けたレーザー彫刻による刻印部と、を有した万年筆用ペン先。
2.前記酸化皮膜層の膜厚が0.1μm以上であり、前記刻印部の深さが5μm〜10μmである前記1項記載の万年筆用ペン先。」である。
【0006】
本発明によれば、刻印部とその周辺の酸化皮膜層との色差が明瞭になり、さらに、レーザー彫刻により形成された刻印部は梨地状の底面を有することから、深さが浅い刻印であっても、視認性が良好な万年筆のペン先を得ることが可能になる。
【0007】
本発明におけるペン先本体は、ステンレス板材をプレスによりペン先外形形状に打抜き加工した後に曲げ成形したもの、あるいは薄肉円筒形状のステンレスパイプを斜めに切断して軸筒と一体に成形したものである。
【0008】
本発明のペン先本体の表面には、酸化皮膜層を有する。該酸化皮膜層は、ペン先本体を陽極酸化処理することによって形成される透明な皮膜であり、0.1μm以上の膜厚を有する。該酸化皮膜層を表面に有したペン先は、光の干渉現象によって青みがかった黒色を呈し、膜厚を厚くすることによって、黒色の色合いを強くすることができる。
【0009】
本発明における刻印部は、レーザー彫刻することによって、前記酸化皮膜層を設けたペン先本体の表面側に形成する。刻印部は、5μm〜10μmの深さを有し、梨地状の底面を有する。刻印部は、レーザーによって焼けが生じ、薄褐色となる。したがって、酸化皮膜層の一部が剥がれてステンレス地金が見えてしまった場合でも、刻印部との色とは異なることから、刻印の認識が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
ステンレスで成形したペン先本体の表面に、酸化皮膜層と、該酸化皮膜層と当該酸化皮膜層に隣接した前記ペン先本体の表面に設けたレーザー彫刻による刻印部との色差が明瞭になり、また、刻印部が梨地状の底面を有することによって、深さが浅い刻印であっても、視認性が良好な万年筆のペン先を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施例の万年筆用ペン先である。
図2図1のA−A線端面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施例の万年筆用ペン先について説明をする。説明を分かりやすくするために、図中の同じ部材、同じ部品については同じ符号を付してある。
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0013】
図1図2に示すように、ペン先1は、ステンレス(SUS304)で成形したペン先本体2の表面2a及び裏面2bに、陽極酸化処理による酸化皮膜層3a及び3bを設けてあり、該酸化皮膜層3aと当該酸化皮膜層3aに隣接したペン先本体2の表面2aにレーザー彫刻による刻印部4を設けてある。ペン先2の先端には、筆記用のペンポイント5を溶着しており、ペンポイント5には、ペン先2の後方へ向かって延びる切り割6を設けてある。図2は、図1のA−A線端面概念図である。本実施例のペン先1は、ペン先本体2の表面に、酸化皮膜層3a及び3bを0.1μmの膜厚で形成してあり、刻印部4を、ペン先本体2の表面2aから5μmの深さで形成してあり、刻印底部40は前記レーザー彫刻により形成された梨地状としてある。
【0014】
前記ペン先1は、酸化皮膜層3aが膜厚0.1μm以上としてあることから青みがかった黒色となり、また刻印部4はレーザー彫刻による薄褐色となることから、色差が明瞭となり、さらに刻印底部40の梨地状の凹凸により、刻印の視認性が良好なものとなった。
【符号の説明】
【0015】
1…ペン先、
2…ペン先本体、2a…表面、2b…裏面、
3a,3b…酸化被膜層、
4…刻印部、40…刻印底部、
5…ペンポイント、
6…切り割。
図1
図2