(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-89868(P2018-89868A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】振出式シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
B43K 29/02 20060101AFI20180518BHJP
B43K 21/16 20060101ALI20180518BHJP
B43K 21/00 20060101ALI20180518BHJP
【FI】
B43K29/02 A
B43K21/16 H
B43K21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-235735(P2016-235735)
(22)【出願日】2016年12月5日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】大池 英郎
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353FA04
2C353FA12
2C353FC13
2C353FE01
2C353FE16
2C353MA06
(57)【要約】
【課題】リターンスプリングを用いることなく簡単な組み立てにより、押圧部材に装着された消しゴムを使用することができる構造の振出式シャープペンシルを得る。
【解決手段】軸筒2を振ることにより生じる重量体16の慣性力によりチャック11を前進させて芯8を繰り出す振出式シャープペンシル1において、芯タンク15の後方に、消しゴム5が挿着された押圧部材6が配設され、押圧部材6に、自由端6aを前方に有し当該自由端6aが軸筒2の内面に設けた内段4gに当接する弾性舌片6bが設けられ、押圧部材6の外方に、消しゴム5を被覆するノブ7を装着することにより、ノブ7の内面7aで弾性舌片6bの外面6eを挟持して押圧部材6を軸筒2に対して前進可能とし、ノブ7を押圧部材6から取り外すことにより、弾性舌片6bの自由端6aを軸筒2の内段4gに当接させて押圧部材6を軸筒2に対して前進不能とする構造。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒を振ることにより生じる重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出す振出式シャープペンシルにおいて、芯タンクの後方に、消しゴムが挿着された押圧部材が配設され、前記押圧部材に、自由端を前方に有し当該自由端が前記軸筒の内面に設けた内段に当接する弾性舌片が設けられ、前記押圧部材の外方に、前記消しゴムを被覆するノブを装着することにより、前記ノブの内面で前記弾性舌片の外面を挟持して前記押圧部材を前記軸筒に対して前進可能とし、前記ノブを前記押圧部材から取り外すことにより、前記弾性舌片の自由端を前記軸筒の内段に当接させて前記押圧部材を前記軸筒に対して前進不能とする構造の振出式シャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出す振出式シャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
振出式シャープペンシルにおいては、重量体の慣性力でチャックを前進させる必要があることから、チャックを後方へ弾発するチャックスプリングの取付荷重は200g以下の弱い荷重で設定されることが多く、前記チャックにコネクタを介して連結された芯タンクの後方に配設した押圧部材へ装着された消しゴムを使用する際に、前記押圧部材が前進してノック操作が行われないようにするために、軸筒と押圧部材の間に350g程度で張架されたリターンスプリングを配設すると共に、軸筒の係止段部に押圧部材の係合突起を係止可能に構成し、リターンスプリングにより後方へ付勢された押圧部材の係合突起を軸筒の係止段により係止するものが存在しており、例えば本件出願人が出願した特開2011−83988号公報(特許文献1)にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−83988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の振出式シャープペンシルでは、リターンスプリングを必要とし、また軸筒の係止段部に押圧部材の係止突起を係止させるなど組み立てが複雑になることから、本発明では、前記リターンスプリングを用いることなく簡単な組み立てにより、押圧部材に装着された消しゴムを使用することができる構造の振出式シャープペンシルを得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
「軸筒を振ることにより生じる重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出す振出式シャープペンシルにおいて、芯タンクの後方に、消しゴムが挿着された押圧部材が配設され、前記押圧部材に、自由端を前方に有し当該自由端が前記軸筒の内面に設けた内段に当接する弾性舌片が設けられ、前記押圧部材の外方に、前記消しゴムを被覆するノブを装着することにより、前記ノブの内面で前記弾性舌片の外面を挟持して前記押圧部材を前記軸筒に対して前進可能とし、前記ノブを前記押圧部材から取り外すことにより、前記弾性舌片の自由端を前記軸筒の内段に当接させて前記押圧部材を前記軸筒に対して前進不能とする構造の振出式シャープペンシル。」である。
【0006】
本発明によれば、通常、消しゴムを使用するために行われるノブの取り外しの操作によって押圧部材を前進不能にすることができ、また押圧部材の押動による芯の繰り出しのために行われるノブの装着によって押圧部材を前進可能にすることができる。
【発明の効果】
【0007】
リターンスプリングを用いることなく簡単な組み立てにより、押圧部材に装着された消しゴムを使用することができる構造の振出式シャープペンシルを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の振出式シャープペンシルの縦断面図でノブを装着した状態を示す図である。
【
図3】本発明の振出式シャープペンシルの縦断面図でノブを取り外した状態を示す図である。
【
図5】押圧部材及び消しゴムの図で、
図5Aは正面図であり、
図5Bは側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。本実施例においては筆記先端側を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。尚、図中の同じ部材、同じ部品については、同じ符号としている。
【0010】
図1は本発明の振出式シャープペンシルの縦断面図でノブを装着した状態を示す図である。
図2は
図1の要部拡大図である。
シャープペンシル1は、軸筒2を、軸筒本体20の前方に装着された口金3と、当該軸筒本体20の後方に装着された尾筒4とで構成している。前記尾筒4はクリップ4aを側面に形成してある。口金3は、軸筒2に対して着脱可能に螺合されている。尾筒4は、前方へ突出させた小径部4bを軸筒本体20の後端開口部20aより挿通させ、当該小径部4bの中間部に形成した弾性片4cの後端にある突起4dを、前記軸筒本体20の内面に形成した凹部20bへ係止して、当該軸筒に対して前後動及び回動不能に固定してある。
詳細は後述するが、前記尾筒4に設けた貫通孔4eには、消しゴム5が挿着された押圧部材6が配設されており、押圧部材6にはノブ7が装着されている。
【0011】
次に、
図1及び
図2を用いて、本実施例の芯繰出機構についての説明を行う。本実施例では、芯8を適宜の力で保持するゴム材からなる芯ホルダ9を前記口金3の先端部に挿着し、芯ホルダ9の後方位置において締めリング10により当該芯8を後退しないように挟持するチャック11を配設し、前記締めリング10の後方位置においてチャックスプリング12の弾発力を受ける連結筒13の鍔部13aを前記口金3の内部に形成した段部3aと前記軸筒本体20の先端部20cとで挟持させ、前記チャック11の後部と係合させたコネクタ14にて前記チャックスプリング12の後端を当接させ、当該コネクタ14の後方小径部14aが芯タンク15の貫通孔15aに嵌着され、当該芯タンク15の先端が当該コネクタ14の鍔部14bに当接するようにしてある。
また、前記軸筒本体20と前記芯タンク15との間に形成される空間部Kには、重量体16を当該芯タンク15の外周に対して遊嵌するよう配設してある。
【0012】
本実施例のシャープペンシル1は、軸筒2を前後に振ることで、前記重量体16が空間部K内を前方はコネクタ14に当接するまで、後方は前記尾筒4の内面に形成した前方段部4fに当接するまで前後動し、重量体16が前進した際には、当該重量体16の慣性力でコネクタ14とチャック11および締めリング10を前記チャックスプリング12の弾発力に抗して前進させ、締めリング10が前記口金3に形成した当接段部3bに当接してチャック11を開放する迄の距離分だけ芯8を繰り出し、前記動作で繰り出された芯8は芯ホルダ9により一時的に保持され、前記重量体16の慣性力の影響がなくなったコネクタ14がチャックスプリング12の弾発力で後退することにより、コネクタ14に係合したチャック11が後退し、再び締めリング10がチャック11を締めることで芯8を挟持して、当該芯8の突出状態を維持して筆記可能状態にできる構造である。
また、本実施例では
図1に示す通り軸筒2の後方に前記ノブ7を配設しており、ノブ7を前進させることにより、当該ノブ7を装着した前記押圧部材6を前進させ、当該押圧部材6と連結された前記芯タンク15及び前記コネクタ14を前進させ、芯8の繰り出しを行うことも可能である。
【0013】
次に、
図3〜
図5を用いて、ノブを取り外した状態についての説明を行う。
図3は本発明の振出式シャープペンシルの縦断面図でノブを取り外した状態を示す図である。
図4は
図3の要部拡大図である。
図5は押圧部材及び消しゴムの図で、
図5Aは正面図であり、
図5Bは側面図である。
図に示す通り、本実施例の押圧部材6の側面には、自由端6aを前方に有した弾性舌片6bが設けられており、前記ノブ(
図2参照)を取り外すことにより、当該自由端6aの外方へ突出された突起部6cが、前記尾筒4の内面に形成した内段4gに当接して前記押圧部材6を前進不能にさせることができる。
したがって、ノブ(
図2参照)を取り外すだけで、前記押圧部材6が前進することによるノック操作を行えなくすることができ、当該押圧部材6の開口部6fに嵌着された消しゴム5に力を掛けて使用しても、芯8が繰り出されることはない。
さらに、本実施例では、押圧部材6の前方に形成した前方小径部6dが、前記芯タンク15の貫通孔15aに嵌着されており、当該押圧部材6と前記芯タンク15と前記コネクタ14とが一体になっていることから、仮に軸筒2が振られて重量体16がコネクタ14に当たったとしても、押圧部材6が前進できないため芯タンク15とコネクタ14も前進せず、芯8が繰り出されることはない。
【0014】
また、
図1及び
図2に示されたように、前記押圧部材6の外方に前記消しゴム5を被覆するノブ7を再び装着することによって、当該ノブ7の内面7aで前記押圧部材6の弾性舌片6bの外面6eを挟持して、当該弾性舌片6bの突起部6cを窄めて前記尾筒4の内段4gから離間させ、当該押圧部材6を前記軸筒2に対して前進可能とすることができ、前述の通り、ノブ7を前進させることで、芯8の繰り出しを行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0015】
1…シャープペンシル、
2…軸筒、
20…軸筒本体、20a…後端開口部、20b…凹部、20c…先端部、
3…口金、3a…段部、3b…当接段部、
4…尾筒、4a…クリップ、4b…小径部、4c…弾性片、4d…突起、4e…貫通孔、4f…前方段部、4g…内段、
5…消しゴム、
6…押圧部材、6a…自由端、6b…弾性舌片、6c…突起部、6d…前方小径部、6e…外面、6f…開口部、
7…ノブ、7a…内面、
8…芯、
9…芯ホルダ、10…締めリング、
11…チャック、
12…チャックスプリング、
13…連結筒、13a…鍔部、
14…コネクタ、14a…後方小径部、14b…鍔部、
15…芯タンク、15a…貫通孔、
16…重量体、
K…空間部。