特開2018-90079(P2018-90079A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2018090079-空気入りタイヤ 図000003
  • 特開2018090079-空気入りタイヤ 図000004
  • 特開2018090079-空気入りタイヤ 図000005
  • 特開2018090079-空気入りタイヤ 図000006
  • 特開2018090079-空気入りタイヤ 図000007
  • 特開2018090079-空気入りタイヤ 図000008
  • 特開2018090079-空気入りタイヤ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-90079(P2018-90079A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20180518BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20180518BHJP
【FI】
   B60C11/13 B
   B60C11/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-234734(P2016-234734)
(22)【出願日】2016年12月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 昭範
(57)【要約】
【課題】タイヤ周方向に延びる細溝がトレッドのショルダー陸部に形成されていて、耐偏摩耗性と加硫成形時の離型性に優れる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ周方向に延びる細溝3がトレッドのショルダー陸部に形成されている。ショルダー陸部は、細溝3によって、トレッドセンター側のメイン陸部21とトレッド端TE側の犠牲陸部22とに区画される。細溝3の溝底部は、トレッドセンター側の溝壁を窪ませて形成されており、細溝3の溝底部とメイン陸部21のトレッド端側エッジ21Eとの間に、細溝3のトレッドセンター側の溝壁を窪ませてなる複数のディンプル4が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる細溝がトレッドのショルダー陸部に形成され、
前記ショルダー陸部が、前記細溝によって、トレッドセンター側のメイン陸部とトレッド端側の犠牲陸部とに区画された空気入りタイヤにおいて、
前記細溝の溝底部がトレッドセンター側の溝壁を窪ませて形成されており、
前記細溝の溝底部と前記メイン陸部のトレッド端側エッジとの間に、前記細溝のトレッドセンター側の溝壁を窪ませてなる複数のディンプルが設けられていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記細溝の長さ方向に沿って複数の前記ディンプルが千鳥状に配置されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記細溝の深さ方向から見て、前記ディンプルと、その直近に位置する別の前記ディンプルとが相互にオーバーラップしないように配置されている請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記細溝の長さ方向から見て、前記ディンプルと、その直近に位置する別の前記ディンプルとが相互にオーバーラップしないように配置されている請求項1〜3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
タイヤ子午線断面において前記ディンプルが半水滴形状をなす請求項1〜4に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ周方向に延びる細溝がトレッドのショルダー陸部に形成された空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、タイヤ周方向に延びる細溝73がトレッドのショルダーリブ70(ショルダー陸部の一例)に形成された空気入りタイヤが公知であり、例えば特許文献1に開示されている。ショルダーリブ70は、細溝73によって、トレッドセンター側のメインリブ71と、トレッド端側の犠牲リブ72とに区画される。このように構成されたタイヤでは、犠牲リブ72に摩耗を集中させることでメインリブ71の摩耗が抑えられるため、耐偏摩耗性を向上できる。かかる細溝73は、ディフェンスグルーヴとも呼ばれ、主としてトラックやバスなどに用いられる重荷重用の空気入りタイヤに形成される。
【0003】
ところが、細溝73を設けていても、メインリブ71のトレッド端側エッジ71Eでは接地圧が高くなる傾向があり、それに起因して破線BLで示したような肩落ち摩耗が発生するので、メインリブ71に局所的な偏摩耗が生じることがあった。本発明者の知見によれば、このようなメインリブ71の肩落ち摩耗を防止するには、図6のように細溝73の溝底部をトレッドセンター側に窪ませて形成し、トレッド端側エッジ71Eの接地圧を下げることが有効である。かかる溝底部の形状は、例えば特許文献2に開示されているように、細溝73の溝底クラックを抑える手法としても知られている。
【0004】
図7は、加硫成形時における図6のトレッドを示している。加硫成形では、このような骨部91やブレード92が設けられた金型90をトレッドの接地面に押し当てることによって、主溝や細溝73が形成される。ブレード92の先端部は、細溝73の溝底部に対応しており、トレッドセンター側に膨出して形成されている。このため、ブレード92を引き抜くときの抵抗が大きく、強引にブレード92を引き抜くとメインリブ71が欠けたりブレード92が折れたりするなど、離型性に関して改善の余地があった。
【0005】
特許文献3に記載のタイヤでは、複数のディンプルを細溝のトレッドセンター側の溝壁に形成しているが、該ディンプルはショルダー陸部の接地圧を均一化するために設けられたものであり、上記のようなブレードの引き抜きの問題に関して、その解決手段を示すものではない。また、特許文献4,5に記載のタイヤでは、タイヤ周方向に連続して延びる環状溝を細溝のトレッドセンター側の溝壁に形成しているが、離型時にブレードの先端部がタイヤ周方向に沿って環状溝に引っ掛かりやすいため、メインリブの欠損などの不都合が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−147076号公報
【特許文献2】国際公開第2008/111582号
【特許文献3】特開2012−101741号公報
【特許文献4】特開平11−301214号公報
【特許文献5】特開平7−76204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ周方向に延びる細溝がトレッドのショルダー陸部に形成されていて、耐偏摩耗性と加硫成形時の離型性に優れる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる細溝がトレッドのショルダー陸部に形成され、前記ショルダー陸部が、前記細溝によって、トレッドセンター側のメイン陸部とトレッド端側の犠牲陸部とに区画された空気入りタイヤにおいて、前記細溝の溝底部がトレッドセンター側の溝壁を窪ませて形成されており、前記細溝の溝底部と前記メイン陸部のトレッド端側エッジとの間に、前記細溝のトレッドセンター側の溝壁を窪ませてなる複数のディンプルが設けられているものである。
【0009】
このタイヤでは、細溝の溝底部がトレッドセンター側の溝壁を窪ませて形成されているため、メイン陸部のトレッド端側エッジの接地圧が下がる。これにより、メイン陸部の接地圧を均一化して局所的な偏摩耗を抑制することができ、耐偏摩耗性に優れる。しかも、細溝の溝底部とメイン陸部のトレッド端側エッジとの間に、トレッドセンター側の溝壁を窪ませてなる複数のディンプルが設けられているので、ブレードの引き抜き抵抗が小さく、加硫成形時の離型性に優れる。
【0010】
複数の前記ディンプルがタイヤ周方向に沿って千鳥状に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、離型時にブレードの先端部がタイヤ周方向に沿ってディンプルに引っ掛からないため、優れた離型性を発揮できる。
【0011】
前記細溝の深さ方向から見て、及び/または、前記細溝の長さ方向から見て、前記ディンプルと、その直近に位置する別の前記ディンプルとが相互にオーバーラップしないように配置されていることが好ましい。これにより、ディンプルが設けられている溝壁の剛性低下を抑えて、ブレードの引き抜きに伴うディンプル間のゴム欠けを防止できる。
【0012】
タイヤ子午線断面において前記ディンプルが半水滴形状をなすことが好ましい。かかる構成によれば、ディンプルを形成するブレードの突部が溝壁から抜けやすくなるため、ディンプル間のゴム欠けを防止できるとともに、離型性が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る空気入りタイヤのトレッドの一例を概略的に示すタイヤ子午線断面図
図2図1の要部を示す拡大図
図3】細溝のトレッドセンター側の溝壁を示す斜視図
図4】ディンプルの断面図
図5】従来タイヤのショルダー陸部を示す断面図
図6】従来タイヤのショルダー陸部を示す断面図
図7図6のトレッドを成形する様子を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の空気入りタイヤTのトレッド10を概略的に示し、図2は、そのトレッド10の要部を拡大して示している。
【0015】
この空気入りタイヤTは、一般的な空気入りタイヤと同様に、図示しない一対のビードと、そのビードからタイヤ径方向外側へ延びた一対のサイドウォールとを有しており、トレッド10は、そのサイドウォールの各々のタイヤ径方向外側端に連なるようにして設けられている。また、一対のビードの間にはトロイド状に延びるカーカスが設けられ、そのカーカスを補強するベルトなどの補強部材がトレッド10に埋設されているが、それらの図示は省略している。
【0016】
トレッド10にはタイヤ周方向に延びる複数の主溝が形成され、本実施形態では4本の主溝11〜14が形成されている。トレッド10は、その複数の主溝によって、ショルダー陸部20を含む複数の陸部に区画されている。ショルダー陸部20は、タイヤ幅方向最外側に位置するショルダー主溝11,14とトレッド端TEとの間に位置する。本実施形態では、ショルダー陸部20が、タイヤ周方向に連続して延びるショルダーリブとして設けられているが、これに限られない。
【0017】
このタイヤTでは、タイヤ周方向に延びる細溝3がトレッド10のショルダー陸部20に形成されている。細溝3は、タイヤ周方向に沿って直線状またはジグザグ状に連続して延在している。細溝3の深さD3は、例えばショルダー主溝11,14の深さD1の0.3〜1.5倍の範囲である。細溝3は、トレッド10の接地面においてショルダー主溝11,14よりも細く形成され、その開口部の幅W1は、例えば0.3〜5.0mmの範囲である。細溝3は、片側のショルダー陸部20のみに設けても構わないが、優れた耐偏摩耗性を発揮するうえで両側のショルダー陸部20に設けることが好ましい。
【0018】
ショルダー陸部20は、細溝3によって、トレッドセンターTC側のメイン陸部21と、トレッド端TE側の犠牲陸部22とに区画されている。本実施形態では、メイン陸部21が、タイヤ周方向に連続して延びるメインリブとして設けられ、犠牲陸部22が、タイヤ周方向に連続して延びる犠牲リブとして設けられている。細溝3は、ショルダー陸部20のトレッド端TEの近傍部に位置し、メイン陸部21は犠牲陸部22よりも幅広に設けられている。
【0019】
図2に拡大して示すように、細溝3の溝底部は、トレッドセンターTC側の溝壁を窪ませて形成されている。即ち、細溝3の溝底部には、トレッドセンターTC側の溝壁を窪ませてなる内側凹曲面31が形成されている。内側凹曲面31は、タイヤ周方向に沿って環状に延設されている。タイヤ子午線断面における内側凹曲面31の輪郭は、タイヤ幅方向内側に窪んだ円弧状の湾曲面により形成されている。細溝3の溝底部は、その細溝3の開口部よりも幅広で且つ丸みを帯びた形状をしており、その最大幅W2は開口部の幅W1よりも大きい。加硫成形時の離型性を向上する観点から、幅W2は幅W1の2倍以下であることが好ましい。
【0020】
このタイヤTでは、細溝3の溝底部がトレッドセンターTC側の溝壁を窪ませて形成されているため、メイン陸部21のトレッド端側エッジ21Eの接地圧が下がる。これにより、メイン陸部21の接地圧を均一化して局所的な偏摩耗を抑制することができ、耐偏摩耗性に優れる。トレッド端側エッジ21Eの接地圧を適切に下げる観点から、細溝3のトレッドセンターTC側の溝壁を基準とした溝底部の窪み幅は、少なくとも1mmであることが好ましい。この窪み幅は、本実施形態では幅W1と幅W2との差(W2−W1)として求められる。
【0021】
細溝3の溝底部は、トレッドセンターTC側だけでなくトレッド端TE側も含めた両側の溝壁を窪ませて形成されたものでも構わない。但し、本実施形態のように、細溝3の溝底部がトレッドセンターTC側の溝壁のみを窪ませた形状であれば、細溝3の溝底部によって犠牲陸部22の剛性が低下しないため、優れた耐テア性を発揮できる。テアとは、犠牲陸部が引き裂かれるようにして千切れる現象を指す。
【0022】
このタイヤTでは、細溝3の溝底部とメイン陸部21のトレッド端側エッジ21Eとの間に、細溝3のトレッドセンターTC側の溝壁を窪ませてなる複数のディンプル4が設けられている。このため、タイヤTの加硫成形で用いる金型に設けられたブレード(図7のブレード92参照)の引き抜き抵抗が小さくなり、加硫成形時の離型性に優れる。ディンプル4は、該ブレードの側面に設けられた不図示の突部によって形成される。ディンプル4の形状は、全体的に丸みを帯びていることが好ましく、本実施形態では、タイヤ子午線断面においてディンプル4が半円形状をなす。
【0023】
図3に示すように、本実施形態では、細溝3の長さ方向LDに沿って複数のディンプル4が千鳥状に配置されている。図3において、細溝3の長さ方向LDはタイヤ周方向に相当する。かかる構成によれば、離型時にブレードの先端部がタイヤ周方向に沿ってディンプル4に引っ掛からないため、優れた離型性を発揮できる。ブレードの引き抜きに伴うディンプル4間のゴム欠けを防止する観点から、細溝3のトレッドセンターTC側の溝壁を基準としたディンプル4の窪み幅W4は、細溝3の溝底部の窪み幅(W2−W1)よりも小さいことが好ましい。
【0024】
本実施形態では、細溝3の深さ方向DDから見て、ディンプル4と、その直近に位置する別のディンプル4とが相互にオーバーラップしないように配置されている。したがって、例えば、ディンプル41と、そのディンプル41の直近に位置するディンプル42とは、長さ方向LDに間隔G1を設けて配置される。これにより、ディンプル4が設けられている溝壁の剛性低下を抑えて、ブレードの引き抜きに伴うディンプル4間のゴム欠けを防止できる。間隔G1は、例えば0〜3mmである。
【0025】
本実施形態では、細溝3の長さ方向LDから見て、ディンプル4と、その直近に位置する別のディンプル4とが相互にオーバーラップしないように配置されている。したがって、例えば、ディンプル41と、そのディンプル41の直近に位置するディンプル42とは、深さ方向DDに間隔G2を設けて配置される。これにより、ディンプル4が設けられている溝壁の剛性低下を抑えて、ブレードの引き抜きに伴うディンプル4間のゴム欠けを防止できる。間隔G2は、例えば0〜3mmである。
【0026】
図4(a)は、ディンプル4の断面を示しており、これは図2の要部拡大図に相当する。既述のように、タイヤ子午線断面においてディンプル4は半円形状をなす。ディンプル4の輪郭は円弧状の湾曲面によって形成されており、このディンプル4の最大窪み位置P1は中央横断線C1と同じ高さにある。最大窪み位置P1は、ディンプル4において最もトレッドセンターTC側に窪んだ位置であり、後述の最大窪み位置P2もこれに準ずる。中央横断線C1は、深さ方向DDにおける前記湾曲面の中央を通ってタイヤ幅方向に延びる仮想線であり、後述の中央横断線C2もこれに準ずる。
【0027】
図4(b)は、ディンプル4の変形例を示す。この例では、タイヤ子午線断面においてディンプル4が半水滴形状(水滴形状の半分の形状)をなす。ディンプル4の輪郭は円弧状の湾曲面によって形成されており、このディンプル4の最大窪み位置P2は中央横断線C2よりも溝底側にある。かかる構成によれば、ディンプル4を形成するブレードの突部が溝壁から抜けやすくなるため、ディンプル4間のゴム欠けを防止できるとともに、離型性が更に向上する。
【0028】
このような細溝3が形成された空気入りタイヤTは、加硫成形で用いられる金型の内面をトレッド10に応じた形状にする程度の改変で、具体的には、細溝3を形成するブレードの側面に、上記の如きディンプル4を形成するための突部を設ける程度の改変で、その他は従来のタイヤ製造工程と同様にして製造ができる。
【0029】
本発明の空気入りタイヤは、上記の如き細溝がトレッドのショルダー陸部に形成されていること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造などが何れも本発明に採用できる。
【0030】
本発明の空気入りタイヤは、前述の如き作用効果により優れた耐偏摩耗性を発揮しうることから、特にトラックやバスなどに用いられる重荷重用の空気入りタイヤとして有用である。
【0031】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、トレッドパターンは、使用する用途や条件に応じて適宜に変更できる。
【符号の説明】
【0032】
3 細溝
4 ディンプル
10 トレッド
11 主溝
14 主溝
20 ショルダー陸部
21 メイン陸部
21E メイン陸部のトレッド端側エッジ
22 犠牲陸部
31 内側凹曲面
41 ディンプル
42 ディンプル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7