(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-90101(P2018-90101A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/00 20060101AFI20180518BHJP
B60C 15/024 20060101ALI20180518BHJP
【FI】
B60C15/00 L
B60C15/024 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-235340(P2016-235340)
(22)【出願日】2016年12月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄二
(57)【要約】
【課題】ビードベース面での空気漏れとリム外れとを効果的に防止する。
【解決手段】ビードベース面に、タイヤ幅方向に延びタイヤ周方向に並設される複数の第1突出部5と、タイヤ周方向に延びる少なくとも1本の非折れ線状の第2突出部6とが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードベース面に、タイヤ幅方向に延びタイヤ周方向に並設される複数の第1突出部と、タイヤ周方向に延びる少なくとも1本の非折れ線状の第2突出部とが形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1突出部は、断面台形状の突条に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2突出部は、リムへの取付方向から取外方向に向かって徐々に突出する断面三角形に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第2突出部は、ビードワイヤの中心位置を通り前記ビードベース面に直交する位置に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1突出部は、タイヤ幅方向の内側領域以外に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤとして、ビードベース面に、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるリムずれ防止用の突条を形成したものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
また他の空気入りタイヤとして、ビードベース面に、タイヤ軸方向に沿って延びる凸条をタイヤ周方向に複数形成したものが公知である(例えば、特許文献2参照)。
さらに他の空気入りタイヤとして、ビードベース面に、タイヤ周方向に不連続で、かつビードトウとビードヒールを連結させない凹部を形成したものが公知である(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、前記いずれの空気入りタイヤであっても、ビードベース面に於けるタイヤ幅方向への空気の漏れとリム外れについて考慮したものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−19427号公報
【特許文献2】特開2003−170712号公報
【特許文献3】特開2002−211215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビードベース面での空気漏れとリム外れとを効果的に防止する空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
ビードベース面に、タイヤ幅方向に延びタイヤ周方向に並設される複数の第1突出部と、タイヤ周方向に延びる少なくとも1本の非折れ線状の第2突出部とが形成されていることを特徴とする空気入りタイヤを提供する。
【0007】
この構成により、第1突出部がタイヤ周方向へのリムずれを防止しつつ、非折れ線状の第2突出部がタイヤ幅方向への空気漏れを防止する。
【0008】
前記第1突出部は、断面台形状の突条に形成されているのが好ましい。
【0009】
この構成により、リムに対して突条の先端側を面接触させることができるので、効果的にタイヤ周方向へのリムずれを防止できる。
【0010】
前記第2突出部は、リムへの取付方向から取外方向に向かって徐々に突出する断面三角形に形成されているのが好ましい。
【0011】
この構成により、リムへの装着を容易にしつつ、リム外れを効果的に防止することができる。
【0012】
前記第2突出部は、ビードワイヤの中心位置を通り前記ビードベース面に直交する位置に設けられているのが好ましい。
【0013】
この構成により、リムに対して最も圧力が高まる位置に第2突出部を設けることにより、空気漏れをより一層効果的に防止することができる。
【0014】
前記第1突出部は、タイヤ幅方向の内側領域よりも外側に形成されているのが好ましい。
【0015】
この構成により、タイヤ幅方向の内側でビードベース面とリムとの間に隙間が形成されなくなり、さらに空気が漏れにくい構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ビードベース面に、タイヤ幅方向に延びる第1突出部と、タイヤ周方向に延びる第2突出部とをそれぞれ形成するようにしたので、タイヤ周方向へのリムずれと、タイヤからの空気漏れを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤのビードコア側を示すタイヤ子午線方向の概略断面図である。
【
図2】
図1に示す空気入りタイヤのビードベース面を矢視Aから見た平面図である。
【
図3】他の実施形態に係る
図2に対応する平面図である。
【
図4】他の実施形態に係る
図2に対応する平面図である。
【
図5】他の実施形態に係る
図2に対応する平面図である。
【
図7】他の実施形態に係る第1突出部の横断面図である。
【
図8】他の実施形態に係る第1突出部の横断面図である。
【
図9】他の実施形態に係る第1突出部の縦断面図である。
【
図10】他の実施形態に係る
図2に対応する平面図である。
【
図11】他の実施形態に係る
図2に対応する平面図である。
【
図12】他の実施形態に係る
図2に対応する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0019】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1のビードコア2側を示すタイヤ子午線方向の概略断面図である。ここでは、空気入りタイヤ1の内部構成についてはビードコア2以外は図示を省略している。空気入りタイヤ1のリム3の当接受面3aに当接される面がビードベース面4である。
【0020】
図2は
図1に示す空気入りタイヤ1のビードベース面4を矢視Aから見た平面図である。ビードベース面4には、第1突出部5と第2突出部6とが形成されている。ビードベース面4の他の部分は概ね平坦となっている。第1突出部5と第2突出部6のビードベース面4からの突出寸法はほぼ同じである。
【0021】
第1突出部5は、タイヤ幅方向に延びる突条であり、タイヤ周方向に所定間隔で形成されている。各第1突出部5は、ビードベース面4からの突出寸法はほぼ同じで、しかもタイヤ周方向に一定間隔に配置されている。これにより、タイヤ周方向で第1吐出部からリム3に作用する力にばらつきが出ないようにしている。
【0022】
具体的に、第1突出部5の各寸法は次のように設定されている。高さは、0.1〜1.0mmに設定されている。幅は、0.3〜2.0mmに設定されている。タイヤ周方向の間隔(第1突出部5の中心線間距離)は、0.8〜5.0mmに設定されている。
【0023】
第1突出部5は、例えば、
図2〜
図5に示す種々の態様をとることができる。
【0024】
図2では、第1突出部5はタイヤ幅方向に沿って配置され、タイヤ周方向に延びる第2突出部6とは直交している。これにより、タイヤの回転方向の違いに拘わらず、リム3に対して常に一定の摩擦力を作用させてリム3ずれを防止する。
【0025】
図3では、第1突出部5はタイヤ幅方向外側に向かってタイヤ回転方向に傾斜するように配置されている。これにより、コーナリング等で多方向に力が作用する場合であっても、有効にリムずれを防止することができる。
【0026】
図4では、第1突出部5はタイヤ幅方向外側に向かってタイヤ回転逆方向に傾斜するように配置されている。これにより、コーナリング等で多方向に力が作用する場合であっても、有効にリムずれを防止することができる。
【0027】
図5では、第1突出部5は複数の突起で構成されている。各突起は球面の一部で構成されたもので、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向の同一直線上にそれぞれ配置されている。タイヤ周方向に整列されるある列の突起と、後述する第2突出部6とは互い交差して設けられている。このように、第1突出部5を複数の突起で構成することにより、コーナリング等で多方向に力が作用する場合であっても、有効かつ均等にリムずれを防止することができる。
【0028】
第1突出部5の横(
図2のB−B線)断面形状は、例えば、
図6〜
図8とすることができる。
【0029】
図6では、第1突出部5は断面台形状(正確には台形ではない)に形成されている。すなわち、第1突出部5の上部に平坦面が形成されている。側面は、ビードベース面4に向かって徐々に接近する断面円弧状に形成されている。平坦面を有することで、第1突出部5はリム3の当接受面3aに面接触し、タイヤのリム3ずれに対して十分な摩擦力を作用させることができる。したがって、良好なリム3ずれ防止効果を発揮する。
【0030】
図7では、第1突出部5は下部が断面矩形状、上部が断面半球状に形成されている。これにより、第1突出部5はリム3の当接受面3aに対して上部の断面半球状の面を圧接させる。この圧接状態では、中心部分が最も強く圧接し、その両側に向かうに従って圧接力が徐々に弱くなる。つまり、中心部分に接触圧の高い部分を形成することができるので、この中心部分での接触圧を管理することで、所望のリム3ずれ防止能力を発揮させることが可能となる。
【0031】
図8では、第1突出部5は断面三角形に形成されている。タイヤ周方向に隣接する第1突出部5同士は、三角形の底辺部分で連続している。このように、断面三角形の第1突出部5によれば、リム3の当接受面3aに対する接触面積を上端の変形部分のみとすることができる。したがって、
図7に示す断面半球状のものに比べて当接受面3aに対する接触圧を安定させることができ、所望のリム3ずれ防止能力を発揮させることが可能となる。
【0032】
第1突出部5の縦(
図2のC−C線)断面形状は、矩形状でもよいが、例えば、
図9に示すように、複数の凸部7からなる鋸歯状とできる。各凸部7はリム3へのタイヤの取付方向から取外方向に向かって徐々に突出する断面三角形に形成されている。詳しくは、各凸部7は、ビードベース面4に対し、所定角度で傾斜する傾斜面7aと、直交する垂直面7bとを備える。このため、リム3に対してタイヤを取り付ける際、リム3の当接受面3aには凸部7の傾斜面7aが摺接することになり、スムーズにリム3へと組み付けることができる。そして、取付後は、凸部7の傾斜面7aと垂直面7bが交差するエッジ部7cが取外方向に作用する力に対して効果的に摩擦力を発揮する。したがって、第1突出部5を、前述の複数の凸部7を有する構成とすることにより、リム3に対してタイヤを取り付ける際、その取付性を阻害することなく、取付後は外れにくくすることができる。
【0033】
図2に戻って、第2突出部6は、タイヤ周方向に延びる非折れ線状に形成され、環状につながっている。
図2では、第2突出部6は、タイヤ周方向に延びる直線状に形成されているが、多少傾斜していてもよく、又、多少の屈曲あるいは湾曲形状を含む概念として非折れ線状という用語を使用している。例えば、第2突出部6が屈曲形状である場合、各直線の延びる方向がタイヤ周方向に対して45°未満であれば、非折れ線形状に含めるものとする。
【0034】
第2突出部6は、ビードコア2の中心位置からビードベース面4に延ばした垂線の延長線上に位置するように形成されている。これは、ビードコア2の中心位置に対応する部分で、リム3に対して作用する圧力が最大となるため、この位置に第2突出部6を設けることで、リム3の当接受面3aとの圧接状態を強固なものとしている。これにより、第2突出部6を設けただけであっても、全体を面接触する場合と遜色なく、空気漏れを効果的に防止することができる。
【0035】
第2突出部6の縦(
図2のD−D線)断面形状は、矩形状でもよいが、複数の凸部からなる鋸歯状に形成することもできる(
図9は、第1突出部5の縦断面形状を示すものであるが、第2突出部6でも同様な形状となるため、この図を代用して第2突出部6の縦断面図を省略する。)。この場合、凸部のビードベース面4からの突出寸法が減少していく方向がタイヤ回転方向と合致するようにすればよい。これにより、制動力が作用したとき、凸部がリム3に対するずれを防止するように作用する。なお、凸部は、高さ、幅、及び、タイヤ周方向の間隔は、それぞれ0.1〜1.0mm、0.3〜2.0mm、及び、0.8〜5.0mmに設定されている。
【実施例】
【0036】
比較例及び実施例に係るタイヤについて、リムずれ性能、エア漏れ性能及びリム外れ性能をそれぞれ比較例の場合を100として指数により評価した。
リム3ずれ性能については、実車前輪にタイヤを装着して、速度50km/hで制動試験を10回繰り返し、リム3に対するタイヤのずれ量を測定した結果を評価した。
エア漏れ性能については、リム組み後、一定温度の室温で90日、静的放置し、内圧低下代を評価した。
リム外れ性能については、5°傾いた軸にタイヤを取り付け、10°傾いた路面にスライドさせ、外れたときの空気圧で評価した。
【0037】
第1突出部5及び第2突出部6のレイアウトは、それぞれ実施例1〜6では
図2、実施例7では
図3、実施例8では
図4、実施例9では
図5とした。第1突出部5及び第2突出部6の高さは、実施例1では0.05mm、それ以外は1.0mmとした。第1突出部5の横断面形状は、実施例4では
図7、実施例5では
図8、それ以外は
図6に示す構成とした。第1突出部5のタイヤ周方向の間隔は、実施例6では2.0mm、それ以外では1.0mmとした。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例1〜9のいずれの場合であっても、エア漏れ性能については、第1突出部5を形成しているにも拘わらず比較例と同等の結果を得ることができた。一方、リム3ずれ性能及びリム外れ性能については実施例1〜9のいずれであっても十分な効果を発揮した。特に、実施例3では、リム3ずれ性能で顕著な効果を発揮した。これは、第1突出部5の幅寸法を大きくすることによるものと考えられる。
【0040】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0041】
前記実施形態では、第1突出部5をビードベース面4のタイヤ幅方向の全体に形成するようにしたが、タイヤの内側領域には設けないようにするのが好ましい。ここで、内側領域とは、ビードベース面4の幅寸法の5%以上15%以下の範囲としている。但し、矢視Aで、ビードコア2とは重ならない位置であるのが好ましい。
【0042】
前記実施形態では、第2突出部6をタイヤ周方向に延びる1本で構成するようにしたが、例えば、
図10に示すように、2本で構成することもできるし、3本以上で構成することも可能である。
【0043】
前記実施形態では、第1突出部5と第2突出部6を四角形が連なった格子状に設けるようにしたが、四角形ではなく、他の多角形が連なった形状とすることもできる。例えば、
図11及び
図12に示すように構成することも可能である。
【0044】
図11では、第1突出部5と第2突出部6とがハニカム構造となるように設けられている。すなわち、タイヤ周方向にジグザグ状に連続する部分が第1突出部5である。タイヤ幅方向に台形の階段状に連続する部分が第2突出部6である。第1突出部5と第2突出部6とをハニカム構造とすることで、ビードベース面4の強度を確保してリム3の当接受面との接触状態を安定させることができる。
【0045】
図12では、第1突出部5と第2突出部6を複数の三角形が連なった形状となるように設けられている。この場合、タイヤ周方向にジグザグ状に連続する部分が第1突出部5であり、タイヤ幅方向に真っ直ぐ延びる直線部分が第2突出部6である。
【符号の説明】
【0046】
1…空気入りタイヤ
2…ビードコア
3…リム
3a…当接受面
4…ビードベース面
5…第1突出部
6…第2突出部
7…凸部