:水素原子又はメチル基、X:O又はNH、Y:2価の有機基、n:任意の繰り返し数、「Polymer A」:メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上含むポリマー)で表される構成単位(1)30〜99質量%と、ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーに由来する構成単位(2)と、ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーに由来する構成単位(3)とを含む樹脂により形成された架橋アクリル微粒子である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、その末端に不飽和結合を有する高分子量のモノマー(いわゆる、マクロモノマー)を使用し、マクロモノマー由来のポリマーがグラフトした架橋アクリル微粒子を合成する場合を想定する。この場合、マクロモノマーとその他のモノマーを混合して調製した均一なモノマー成分を水系媒体中に乳化又は懸濁して重合しようとすると、マクロモノマーがモノマー液滴からはじき出されてしまうことがある。このため、重合反応が不完全となりやすく、マクロモノマー由来のポリマーの導入量を高めることが困難であった。
【0006】
一方、水酸基などの官能基を架橋微粒子に導入しておき、その官能基にアゾ系又は過酸化物系のラジカル発生基をさらに導入した後、そのラジカル発生基を開始点としてモノマーを重合すれば、ポリマーが多くグラフトした架橋アクリル微粒子を製造することができる。しかしながら、架橋微粒子に水酸基などの官能基を導入する工程が増えるため、製造工程が煩雑になりやすいといった課題がある。また、ラジカル発生基どうしでカップリングしやすく、架橋微粒子どうしが結合してしまい、目的とする架橋アクリル微粒子を得ることが困難であった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、電子材料、光学材料、及びカラム充填材料等として有用な架橋アクリル微粒子、並びに高効率にポリマーがグラフトされた架橋アクリル微粒子を得ることが可能な架橋アクリル微粒子の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の架橋アクリル微粒子(微粒子A)を製造するための前駆体(中間体)として有用な架橋アクリル微粒子(微粒子B)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す架橋アクリル微粒子(微粒子A)が提供される。
[1]下記一般式(1)で表される構成単位(1)30〜99質量%と、ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーに由来する構成単位(2)0.25〜65質量%と、ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーに由来する構成単位(3)0〜69.75質量%と、を含む樹脂により形成された架橋アクリル微粒子。
【0009】
(前記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、nは、任意の繰り返し数を示し、「Polymer A」は、メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上含むポリマーを示す)
【0010】
また、本発明によれば、以下に示す架橋アクリル微粒子(微粒子B)が提供される。
[2]下記一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位(X)3〜97質量%と、ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーに由来する構成単位(2)3〜97質量%と、ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーに由来する構成単位(3)0〜94質量%と、を含む樹脂により形成された、リビングラジカル重合しうる基を有する架橋アクリル微粒子。
【0011】
(前記一般式(2)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、Zは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す)
【0012】
さらに、本発明によれば、以下に示す架橋アクリル微粒子(微粒子A)の製造方法が提供される。
[3]前記[1]に記載の架橋アクリル微粒子(微粒子A)の製造方法であって、前記[2]に記載の架橋アクリル微粒子(微粒子B)と、メタクリル酸系モノマーを90質量%以上含むモノマー成分と、を重合する工程を有する架橋アクリル微粒子の製造方法。
[4]前記一般式(2)中のZが臭素原子であり、ヨウ化物イオンを生成しうる化合物の存在下で、前記架橋アクリル微粒子(微粒子B)と、前記モノマー成分と、を重合する前記[3]に記載の架橋アクリル微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子材料、光学材料、及びカラム充填材料等として有用な架橋アクリル微粒子、並びに高効率にポリマーがグラフトされた架橋アクリル微粒子を得ることが可能な架橋アクリル微粒子の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記の架橋アクリル微粒子(微粒子A)を製造するための前駆体(中間体)として有用な架橋アクリル微粒子(微粒子B)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の架橋アクリル微粒子(微粒子A)は、下記一般式(1)で表される構成単位(1)30〜99質量%と、ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーに由来する構成単位(2)0.25〜65質量%と、ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーに由来する構成単位(3)0〜69.75質量%と、を含む樹脂により形成されたものである。
【0016】
(前記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、nは、任意の繰り返し数を示し、「Polymer A」は、メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上含むポリマーを示す)
【0017】
また、上記の架橋アクリル微粒子(微粒子A)を製造するための前駆体(中間体)として、特定の架橋アクリル微粒子(微粒子B)を用いる。すなわち、本発明の架橋アクリル微粒子(微粒子B)は、下記一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位(X)3〜97質量%と、ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーに由来する構成単位(2)3〜97質量%と、ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーに由来する構成単位(3)0〜94質量%と、を含む樹脂により形成された、リビングラジカル重合しうる基を有するものである。
【0018】
(前記一般式(2)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、Zは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す)
【0019】
<架橋アクリル微粒子(微粒子B)>
まず、リビングラジカル重合しうる基(リビングラジカル重合基)を有する架橋アクリル微粒子(微粒子B)について説明する。微粒子(B)を構成する樹脂は、一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位(X)を含む。一般式(2)中、Zで表される基が結合した炭素原子からポリマーが生成して、ポリマー(一般式(1)中の「Polymer A」)がグラフトした樹脂からなる架橋アクリル微粒子(微粒子A)が形成される。
【0020】
一般式(2)で表されるモノマーは、例えば下記式で表されるように、対応するモノマー(a)と酸成分(b)との反応生成物である。
【0022】
モノマー(a)は、水酸基を有する(メタ)アクリレートである。モノマー(a)のうち、上記一般式(a)中のXがOであるものとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ポリ(n=2以上)エチレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸(n=2以上)プロピレングリコールモノエステル、(メタ)アクリル酸(n=2以上)エチレンプロピレングリコールエステルなどを挙げることができる。
【0023】
また、これらの水酸基含有モノマーを用いて、ε−カプロラクトンや乳酸などを重合して得られる末端水酸基ポリエステル型モノマー;これらの水酸基含有モノマーにフタル酸などの多塩基酸を反応させて得られるモノエステルの他のカルボキシ基に、エチレングコリールやアミノエタノールなどの2以上の水酸基やアミノ基を有する有機化合物を反応して得られる水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマーにカルボキシ基を有する有機化合物を反応させ、エポキシ基を開環して水酸基を生成させて得られる水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸イソシアナトエチルなどのイソシアネートに、2以上の水酸基や2以上の水酸基とアミノ基を有する有機化合物を反応させて得られる水酸基含有モノマーなどであってもよい。
【0024】
モノマー(a)のうち、上記一般式(a)中のXがNHであるものとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸クロライドなどの酸ハロゲン化物と、アミノ基を有し、水酸基を1以上有する化合物とを反応させて得られるモノマーなどを挙げることができる。
【0025】
酸成分(b)としては、例えば、2−クロロプロピオン酸、2−ブロモプロピオン酸、2−アイオドプロピオン酸、2−クロロ−2−メチル−プロピオン酸、2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸、2−アイオド−2−メチルプロピオン酸などを挙げることができる。
【0026】
なお、モノマー(a)と、ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーとを重合して架橋アクリル微粒子を形成した後、モノマー(a)に由来する構成単位中の水酸基に酸成分(b)を反応させて、微粒子Bを形成してもよい。
【0027】
一般式(2)中、Zで表される基(ハロゲン)が結合した炭素原子からハロゲンラジカルが脱離して炭素ラジカルが生ずる。生じた炭素ラジカルにモノマーが挿入され、末端ラジカル基が生成する。生成した末端ラジカル基に脱離したハロゲンラジカルが結合し、ラジカルの副反応であるラジカル同士のカップリングを防止することができる。
【0028】
一般式(2)で表されるモノマーと共重合させるモノマーとして、ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーを用いる。ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーを用いることで、架橋構造を有する樹脂からなる微粒子Bを得ることができる。ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーとしては、例えば、二官能性のモノマーや、三官能以上のモノマーを用いることができる。
【0029】
二官能性のモノマーとしては、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAの(ポリ)エチレングリコール付加物ジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ポリマージオールとして、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリオレフィンジ(メタ)アクリレート、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、メチレンビスアクリルアミド、マレイン酸ビニルなどを挙げることができる。
【0030】
三官能以上のモノマーとしては、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリマーポリオールの(メタ)アクリレート、トリビニルベンゼン、マレイン酸ジビニルなどを挙げることができる。なお、メタクリル酸グリシジルとメタクリル酸などの、相互に反応しうるモノマーを併用して一般式(2)で表されるモノマーと共重合してもよい。
【0031】
一般式(2)で表されるモノマー及びラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーとともに、ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーをさらに共重合させてもよい。ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどのカルボキシ基含有(メタ)アクリル酸系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート及びアルケニル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート及びシクロアルケニル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレートなどの酸素含有(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどのハロゲン含有(メタ)アクリレート;トリメチルシリル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン(メタ)アクリレートなどのケイ素含有(メタ)アクリレート;2−(4−ベンゾキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルメタクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収性基を有するメタクリレート;テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素含有(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。また、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーなどを用いることもできる。
【0032】
さらに、ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーとしては、スチレン系ビニルモノマー、アミド系モノマー、アルカン酸ビニル系モノマー、マレイン酸系モノマーなどを用いることができる。スチレン系ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ビニルキシレンなどを挙げることができる。アミド系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。
【0033】
アルカン酸ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、ラウリン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどを挙げることができる。また、マレイン酸系モノマーとしては、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸ジブチルなどを挙げることができる。
【0034】
微粒子Bは、一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位(X)3〜97質量%と、ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーに由来する構成単位(2)3〜97質量%と、ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーに由来する構成単位(3)0〜94質量%と、を含む樹脂により形成されている。構成単位(X)の量が3質量%未満又は構成単位(2)の量が97質量%超であると、十分な量の「Polymer A」がグラフトした樹脂からなる架橋アクリル微粒子(微粒子A)を得ることができない。一方、構成単位(X)の量が97質量%超又は構成単位(2)の量が3質量%未満であると、構成単位(2)の割合が相対的に少なすぎるため、架橋していても溶媒に溶解又は膨潤したりする場合がある。微粒子Bを構成する樹脂中、構成単位(X)の量は5〜50質量%であることが好ましく、構成単位(2)の量は5〜50質量%であることが好ましく、構成単位(3)の量は0〜90質量%であることが好ましい。
【0035】
上記のモノマーをラジカル重合するには、通常、ラジカル重合開始剤を用いる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、水性及び油性のアゾ系開始剤や過酸化物開始剤などを用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸リチウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物系化合物;2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、これらの無機酸塩及び有機酸塩などのアゾ系化合物;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリルなどの油性のアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルラウリン酸過エステルなどの油性の過酸化物などを挙げることができる。ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して0.01〜5質量部とすることが好ましく、0.2〜3質量部とすることがさらに好ましい。
【0036】
重合の際には、水や有機溶剤などの従来公知の溶剤を使用することができる。有機溶剤としては、ヘキサン、オクタン、デカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、琥珀酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、カプロラクタムなどのアミド系溶剤の他;ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチルなどを挙げることができる。なお、これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
重合系は、水系及び油系のいずれであってもよい。また、重合方法は、乳化重合、懸濁重合、ミニエマルジョン重合、マイクロエマルジョン重合、沈殿重合、及び分散重合のいずれの方法であってもよい。得られる微粒子Bは、単一組成の球状であってもよいし、モノマー組成に傾斜を有していてもよく、コアシェル型の粒子であってもよい。さらには、予め調製した小さい微粒子を凝集させて大きい粒子とした凝集型の粒子であってもよい。
【0038】
例えば、液媒体中で重合して形成された微粒子Bを取り出すことなく、そのまま次の重合を行って微粒子Aを製造してもよく、形成された微粒子Bを液媒体から取り出して、次の重合を行ってもよい。微粒子Bの粒子径は特に限定されず、処方によって、任意の粒子径(例えば、ナノサイズからミクロンサイズ)の微粒子Bを製造することができる。なお、動的光散乱法や細孔電気抵抗法などにより測定される微粒子Bの数平均粒子径は、例えば10nm〜100μmであり、好ましくは100nm〜10μmである。
【0039】
<架橋アクリル微粒子(微粒子A)の製造方法>
次に、微粒子Bを用いて架橋アクリル微粒子(微粒子A)を製造する方法について説明する。微粒子Aは、微粒子Bと、メタクリル酸系モノマーを90質量%以上含むモノマー成分とを重合することによって製造することができる。微粒子Bとモノマー成分とは、具体的にはリビングラジカル重合法により重合させる。すなわち、一般式(2)中のZで表される基(ハロゲン原子)が触媒や熱によりラジカルとなって脱離するとともに、ハロゲン原子が結合していた炭素原子がラジカルとなる。そして、生成したラジカルがモノマー成分と反応し、ラジカルが生成する。生成したラジカルに脱離したハロゲンラジカルが直ちに結合して安定化させる。生成したラジカルをこのように安定化させることで、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応を生じにくくすることができる。これにより、微粒子Bにおけるリビングラジカル重合しうる基からメタクリレート系モノマーを含むモノマー成分が逐次重合して一般式(1)中の「Polymer A」で表されるポリマーが形成され、微粒子Aを得ることができる。
【0040】
リビングラジカル重合法としては、金属錯体を触媒とし、金属原子のハロゲン付加酸化還元反応を利用する原子移動ラジカル重合法;ヨウ素化合物を開始化合物として用いるヨウ素移動重合法;ヨウ素化合物を開始化合物とし、ヨウ素をラジカルとして引き抜く有機化合物を触媒として用いる可逆的触媒移動重合法などがある。なかでも、一般式(2)中のZが臭素原子であり、ヨウ化物イオンを生成しうる化合物の存在下で、架橋アクリル微粒子(微粒子B)と、モノマー成分とを重合することが好ましい。臭素末端がヨウ素化物イオンを生成しうる化合物(ヨウ素化合物)とハロゲン交換した後、ヨウ素原子がラジカルとして脱離し、生成したラジカルにモノマー成分が反応して逐次重合すると考えられる。
【0041】
ヨウ素化合物としては、ヨウ化金属塩、第四級アンモニウムアイオダイド塩、第四級ホスホニウムアイオダイド塩、第四級アンモニウムトリヨージド塩などを用いることができる。ヨウ化金属塩としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウムなどを挙げることができる。第四級アンモニウムアイオダイド塩としては、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイドなどを挙げることができる。第四級ホスホニウムアイオダイド塩としては、テトラブチルホスホニウムアイオダイド、トリブチルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイドなどを挙げることができる。第四級アンモニウムトリヨージド塩としては、トリブチルメチルアンモニウムトリヨージドなどを挙げることができる。
【0042】
微粒子Bとモノマー成分は、有機溶剤中で重合させることが好ましい。ヨウ化物イオンを生成しうる化合の存在下で重合する場合には、ヨウ化物イオンを溶解させるために高極性の有機溶剤を用いることが好ましく、アルコール系、グリコール系、アミド系、尿素系の溶剤を用いることが好ましい。重合の際には、ラジカル発生剤、還元剤、金属、ヨウ素の引き抜きが可能な有機化合物などの触媒を用いてもよい。
【0043】
モノマー成分は、メタクリル酸系モノマーを含む。モノマー成分としてメタクリル酸系モノマーを用いることで、耐熱性、耐薬品性、耐酸アルカリ性、及び耐加水分解性に優れ、様々なガラス転移温度を有するポリマーとすることができる。メタクリル酸系モノマーとしては、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−メチルプロパンメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ベへニルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート、シクロデシルメチルメタクリレート、トリシクロデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどの(シクロ)アルキルメタクリレート;フェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなどのアリールメタクリレート;アリルメタクリレートなどのアルケニルメタクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクレート、(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレートなどの水酸基含有メタクリレート;(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノラウリルエーテルメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコ−ルモノメチルエーテルメタクリレートなどのグリコールモノアルキルエーテル系メタクリレート;
【0044】
ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有メタクリレート;クロロトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートなどの第4級アンモニウム塩基を有するメタクリレート;(メタ)アクリロイロキシエチルイソシアネートや2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルメタクリレートのイソシアネート基をε−カプロラクトン、メチルエチルケトンオキシム(MEKオキシム)、及びピラゾールなどでブロックしたイソシアネート基含有メタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレートなどの環状メタクリレート;オクタフルオロオクチルメタクリレート、テトラフルオロエチルメタクリレートなどのハロゲン含有メタクリレート;2−(4−ベンゾキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルメタクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線を吸収するメタクリレート;トリメトキシシリル基やジメチルシリコーン鎖を有するケイ素含有メタクリレートなどを挙げることができる。また、これらのモノマーを重合して得られるオリゴマーの片末端に(メタ)アクリル基を導入して得られるマクロモノマーなどを用いることができる。
【0045】
カルボキシ基、リン酸基、又はスルホン酸基を有するモノマーを用いることもできる。カルボキシ基を有するモノマーとしては、メタクリル酸ヒドロキシアルキルの二塩基酸エステル(例えば、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチルのコハク酸ハーフエステルやマレイン酸エステルなど);マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などのジカルボン酸モノマー及びこれらの脂肪族アルコール、脂環族アルコール、(ポリ)アルキレングリコール、又はその末端アルキルエーテルのハーフエステル化物などを挙げることができる。リン酸基を有するモノマーとしては、メタクリロイロキシエチルリン酸エステルなどを挙げることができる。スルホン酸基を有するモノマーとしては、メタクリロイロキシエチルスルホン酸などを挙げることができる。
【0046】
<架橋アクリル微粒子(微粒子A)>
次に、本発明の架橋アクリル微粒子(微粒子A)について説明する。本発明の微粒子Aは、下記一般式(1)で表される構成単位(1)と、ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマーに由来する構成単位(2)と、ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマーに由来する構成単位(3)と、を含む樹脂により形成された架橋アクリル微粒子である。この樹脂微粒子Aを形成する樹脂は、微粒子Bに「Polymer A」がグラフトした構造を有する。本発明の微粒子Aは、上述の通り、微粒子Bと、メタクリル酸系モノマーを90質量%以上含むモノマー成分とを重合することによって製造することができる。
【0047】
(前記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは、2価の有機基を示し、nは、任意の繰り返し数を示し、「Polymer A」は、メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上含むポリマーを示す)
【0048】
一般式(1)中の「Polymer A」は、メタクリル酸系モノマーがリビングラジカル重合して生成したポリマー(マクロモノマー)であり、好ましくはポリメタクレートである。「Polymer A」は、熱的に安定であるとともに、耐酸・耐アルカリ性に優れた、メタクリル酸系モノマーを重合して形成されるメタクリル酸系ポリマーである。また、メタクリル酸系モノマーに水酸基、グリシジル基、アルコキシシリル基、カルボキシ基、イソシアネート基などの官能基を導入して、その官能基と反応しうる化合物を添加して、形成される微粒子A同士を架橋することもできる。さらには、他の用途に使用するポリマーと反応させることもできる。
【0049】
本発明の微粒子Aは、より多くのポリマー成分がグラフトしているため、グラフトしているポリマー成分の量が少ない微粒子に比べて、グラフトしたポリマー部分(Polymer A)の表面積が拡大している。また、「Polymer A」における官能基等量も増加しているため、官能性も高い。このため、「Polymer A」を膜形成成分として機能させることで、基材などへの密着性を高めることができる。また、グラフトしたポリマー部分である「Polymer A」が立体反発しやすいため、液媒体中における分散安定性を高めることができる。さらに、粒子の内部(コア部)と「Polymer A」(シェル部)の屈折率差、ガラス転移温度の差(軟質硬質の差)、或いはイオン性の違い等により、これまでにない機能性が付与された微粒子とすることができる。また、「Polymer A」(シェル部)をフッ素原子やケイ素原子を含むポリマー鎖とすることで、撥水性が付与された微粒子とすることができる。
【0050】
「Polymer A」(マクロモノマー)の数平均分子量は、1,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜40,000であることがさらに好ましく、5,000〜20,000であることが特に好ましい。マクロモノマーの数平均分子量が1,000未満であると、表面積や官能基当量を増大させる効果が不足する場合がある。一方、マクロモノマーの数平均分子量が100,000超であると、微粒子Aを製造する過程の重合溶液中で高粘度化してしまい、製造が困難になる場合がある。また、「Polymer A」の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。「Polymer A」の分子量は、例えば、架橋アクリル微粒子(微粒子A)を加水分解して得られる、グラフトしていたポリマーの分子量を測定することによって特定することができる。なお、本明細書における「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0051】
「ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマー」及び「ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマー」の具体例としては、微粒子Bの構成単位(2)及び(3)を構成するために用いる、前述の「ラジカル重合しうる不飽和結合を2以上有するモノマー」及び「ラジカル重合しうる不飽和結合を1つ有するモノマー」の具体例と同様のものを挙げることができる。
【0052】
「Polymer A」は、ホモポリマーであってもよく、ランダム構造を有する共重合体や、ブロック構造を有する共重合体であってもよい。ブロック構造を有する「Polymer A」とする場合は、微粒子Bとモノマー成分とを重合する途中又は重合後に、その他のモノマーを添加して重合することによって製造することができる。
【0053】
以上のようにして製造することができる本発明の架橋アクリル微粒子(微粒子A)の用途としては、塗料、インク、コーティング剤、電子材料、洗顔料、着色剤などに添加して用いられる添加剤;減粘剤、増粘剤、レオロジー制御剤などの添加剤;インク受容層の受容剤;ドラックデリバリーシステムや診断薬などの医療材料;イオン交換樹脂やカラム充填剤;貴金属、遷移金属、放射性金属などの金属捕集材料;化粧品材料;ポリマースペーサー;光拡散剤;電子写真用トナーの外添剤;プラスチックに練り込まれる強度改良剤や充填剤などを挙げることができる。また、紫外線吸収性基を有するモノマーを用いて製造すれば、紫外線吸収剤として用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0055】
(実施例1)
温度計を取り付けた2Lの三口丸型フラスコ(反応容器)に、酢酸エチル670部、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)65部、及びメタクリル酸2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)エチル(BEMA)5.7部を入れ、緩く栓をして、70℃の湯浴に浸漬させた。別容器に、酢酸エチル20部及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2.2部を入れ、AIBNを溶解させて重合開始剤溶液を調製した。反応容器の系全体が65℃に達したところで、調製した重合開始剤溶液を反応容器内に添加し、その温度で10時間反応させた。反応により系内が白濁するとともに、粒子が凝集して析出してきた。冷却及びろ過後、酢酸エチルで洗浄した。70℃の送風乾燥機にて乾燥して、白色の微粒子(微粒子B−1)69.7部を得た。収率より、ほぼすべてのモノマーが反応したと考えられる。すなわち、得られた微粒子を構成する樹脂中、BEMAに由来する構成単位の含有量は8.1%であり、DEGDMAに由来する構成単位の含有量は91.9%である。得られた微粒子B−1の粒子構造を示す顕微鏡写真を
図1に示す。コールターカウンター(ベックマン・コールター社製)を使用して測定した微粒子B−1の数平均粒子径は1.86μmであった。以下、断りがない限り、上記の方法によって微粒子の重量平均粒子径を測定した。粉砕機を使用して得られた微粒子B−1を粉砕した後、100メッシュパスさせた。
【0056】
窒素導入装置及び冷却管を装着した500mLのセパラブルフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン200部、微粒子B−1 20部、及び2−ブロモ−2−イソ酪酸エチル(EBIB)0.2部を入れて撹拌した。テトラブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)4.83部を添加し、75℃で30分加温した。内温が75℃に達した際に、メタクリル酸メチル(MMA)100部、及びトリエチルアミン(TEA)0.5部を添加し、75℃で8時間重合した。冷却した後、サンプリングした一部をテトラヒドロフラン(THF)に添加してよく撹拌し、0.5μmのフィルターでろ過してTHF溶液を得た。得られたTHF溶液を測定用試料とし、THF展開溶媒とするGPCにより測定した重合物の数平均分子量は12,000であり、分子量分布(分散度(PDI))は1.89であった。このようにして測定した重合物の分子量は、微粒子に結合した「Polymer A」の分子量と見積もることができる。
【0057】
得られた重合溶液をメチルエチルケトン(MEK)で希釈した後、10μmの加圧濾過器でろ過して固形物を得た。3Lのフラスコにメタノール1,500部を入れ、撹拌装置を使用して撹拌しながら、得られた固形物を添加した。ろ過後にメタノールで洗浄し、次いで、25℃(室温)で12時間、80℃で24時間乾燥させて白色の微粒子(微粒子A−1)40.8部を得た。
【0058】
微粒子B−1を構成する樹脂中、2官能モノマー(DEGDMA)に由来する構成単位の含有量は91.9%であるため、微粒子B−1を構成する樹脂20部には、2官能モノマー(DEGDMA)に由来する構成単位が約18.38部含有されている。すなわち、微粒子A−1を構成する樹脂中、2官能モノマー(DEGDMA)に由来する構成単位の含有量は30.2%である。このため、微粒子A−1を構成する樹脂中、一般式(1)で表される構成単位(1)の含有量は「69.8%」と算出することができる。以下、同様にして、一般式(1)で表される構成単位(1)の含有量を算出した。得られた微粒子A−1の粒子構造を示す顕微鏡写真を
図2に示す。また、得られた微粒子A−1の重量平均粒子径は、2.98μmであった。
【0059】
得られた微粒子A−1 1部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)50部に添加し、超音波にて分散させたところ、微粒子A−1が分散した分散液を得ることができた。得られた分散液中の微粒子A−1の重量平均粒子径は、2.12μmであった。得られた分散液を80℃で1週間放置したところ、沈降物が生ずることがなく、微粒子A−1の粒子径も変化しなかった。微粒子A−1を分散・放置後の粒子構造を示す顕微鏡写真を
図3に示す。
【0060】
得られた微粒子A−1 1部をMEK100部に添加し、超音波にて分散させた後、0.5μmのフィルターで加圧ろ過して固形物を取り出した。取り出した固形物の形状を顕微鏡で観察したところ、
図3中の微粒子と同様の形状であり、その重量平均粒子径は2.99μmであることがわかった。以上のことから、微粒子A−1は、重合により生成したMMAのポリマーが微粒子B−1に吸着したり、微粒子B−1の内部で重合して生成したMMAのポリマーが存在したりするものではなく、微粒子B−1のリビングラジカル重合しうる基を開始点としてモノマー(MMA)が重合し、微粒子B−1にグラフトした架橋アクリル微粒子であることがわかる。
【0061】
また、微粒子A−1を10%水酸化ナトリウム水溶液に添加し、80℃で24時間撹拌したところ、微粒子A−1の形状が不明瞭となった。得られた分散液に塩酸を添加してpHを8.3に調整した後、ろ過して、イオン交換水で洗浄した。固形物の一部をTEAに溶解して測定した数平均分子量は11,300であり、PDIは2.32であった。これは、イソブチルエステル基がアルカリで加水分解されて切断され、微粒子A−1に結合していた「Polymer A」が直鎖状のポリマーとして得られたと考えられる。以下、同様にして「Polymer A」の分子量を測定した。
【0062】
(実施例2〜4)
MMAに代えて、メタクリル酸ラウリル(LMA)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mw=200)モノメタクリレート(PEGMEMA)、及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)をそれぞれ用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして微粒子A−2、A−3、及びA−4を調製した。調製した微粒子A−2、A−3、及びA−4の詳細を表1に示す。
【0063】
【0064】
なお、微粒子A−4の「Polymer Aの数平均分子量」は、リチウムブロマイド10mMジメチルホルムアミド(DMF)溶液を展開溶媒とするGPCにより測定した。得られた微粒子は、ディスプレー用のスペーサー、光拡散剤、化粧品材料などとして好適である。
【0065】
(実施例5)
MMAに代えて、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)50部を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして微粒子A−5を調製した。リチウムブロマイドDMF溶液を展開溶媒とするGPCにより測定した「Polymer A」の数平均分子量は6,500であり、PDIは1.65であった。反応溶液に10%酢酸水溶液190部を加えて中和した後、水2,000部の入ったフラスコへ撹拌しながら添加した。次いで、1%水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加えて微粒子を析出させた後、70℃に加温して凝集させた。凝集物をろ過して洗浄した後、50℃の送風乾燥機にて24時間乾燥させて微粒子を得た。得られた微粒子の一部をトルエン/エタノール溶液に添加して撹拌混合した後、ブロモフェノールブルーを指示薬とし、0.1N塩酸イソプロパノール溶液にて滴定して測定したアミン価は250.1mgKOH/gであった。以上より、多価アミン価の樹脂からなる微粒子が得られたことがわかる。
【0066】
(実施例6)
メタノール100部、及び実施例5で得た微粒子A−5 20部をセパラブルフラスコに入れ、室温で撹拌及び混合した。次いで、塩化ベンジル11.3部及びメタノール50部の混合物を徐々に滴下した。室温で2時間撹拌した後、4時間還流して微粒子A−6を得た。得られた微粒子A−6を構成する樹脂のアミン価は2mgKOH/gであった。すなわち、微粒子A−5を構成する樹脂のアミノ基が第4級アンモニウム塩になったと考えられる。微粒子A−6は、第4級アンモニウム塩を側鎖に有する「Polymer A」が結合した樹脂からなる微粒子であり、イオン交換樹脂や金属補足剤などとして有用であると考えられる。なお、DMAEMAに代えて、メタクリル酸トリメチルアンモニウムエチルクロリドを用いること以外は、前述の実施例5と同様に操作しても、微粒子A−6と同様の微粒子を得ることができた。実施例5で得た微粒子A−5や、実施例6で得た微粒子A−6は、イオン交換樹脂や金属補足剤などとして有用である。
【0067】
(実施例7)
MMAに代えて、メタクリル酸ベンジル(BzMA)60部、HEMA10部、及びメタクリル酸2−エチルヘキシル(2EHMA)30部を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして微粒子A−7を調製した。GPCにより測定した「Polymer A」の数平均分子量は15,200であった。また、微粒子A−7の重量平均粒子径は3.21μmであり、一般式(1)で表される構成単位(1)の含有量は74.2%であった。このようにして調製した微粒子A−7は、反応性基である水酸基を側鎖に有する「Polymer A」が結合した樹脂からなる微粒子であるため、この水酸基を架橋反応や化学修飾に利用しうる微粒子である。
【0068】
(実施例8〜10)
微粒子Bを構成する樹脂の組成比(モノマー組成)を表2に示すようにしたこと以外は、前述の実施例1と同様にして微粒子B及び微粒子A(微粒子A−8、A−9、及びA−10)を調製した。調製した微粒子A−9、A−9、及びA−10の詳細を表2に示す。なお、実施例10では、微粒子Bを構成するモノマーとしてメタクリル酸ブチル(BMA)を用いた。
【0069】
【0070】
表2に示すように、中間体として調製する微粒子Bを構成する樹脂に含まれる開始基(リビングラジカル重合しうる基)の含有量を調整することで、分子量や粒子径をある程度制御することができ、様々な用途に適した微粒子を調製可能であることがわかる。
【0071】
(実施例11)
200mL容器に、スチレン50部、ジビニルベンゼン10部、EBMA10部、反応性界面活性剤(商品名「ラテムルPD−420」、花王社製)3部、及びヘキサデカン4.6部を入れ、均一に溶解させてモノマー混合液を得た。得られたモノマー混合液とイオン交換水122.4部を混合し、高圧ホモジナイザーにて5パス処理してミニエマルション液滴を調製した。調製したミニエマルション液滴、及びイオン交換水110.4部を500mL反応溶液に入れ、撹拌しながら60℃に加熱した。60℃に達したところで過硫酸アンモニウム0.21部を添加し、18時間重合して白色の乳液を得た。光散乱平均粒子径測定装置(商品名「Photal PAR−IIIS」、大塚電子社製)を使用して測定した乳液中の微粒子の重量平均粒子径は、321nmであった。乳液の一部をサンプリングし、重量法によって算出した重合転化率は、ほぼ100%であった。得られた乳液を90℃に加温して粒子を凝集させた後、熱時ろ過した。固形分を温水で洗浄した後、乾燥及び粉砕して、微粒子B−11 70.2部を得た。
【0072】
次いで、得られた微粒子B−11を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、微粒子A−11を調製した。GPCにより測定した「Polymer A」の数平均分子量は8,000であった。また、微粒子A−11の重量平均粒子径は405nmであり、一般式(1)で表される構成単位(1)の含有量は55%であった。ナノサイズの微粒子を用いたことで、表面積が広くなったと考えられる。以上より、ナノサイズの架橋アクリル微粒子を製造できることがわかる。