特開2018-90742(P2018-90742A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2018090742-マスカーテープ 図000004
  • 特開2018090742-マスカーテープ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-90742(P2018-90742A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】マスカーテープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20180518BHJP
   C09J 151/00 20060101ALI20180518BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20180518BHJP
   B32B 3/04 20060101ALI20180518BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20180518BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180518BHJP
   B05B 12/16 20180101ALI20180518BHJP
   B05B 14/00 20180101ALI20180518BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J151/00
   C09J201/00
   B32B3/04
   B32B27/32 D
   B32B27/00 M
   B05B15/04 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-237338(P2016-237338)
(22)【出願日】2016年12月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 高功
(72)【発明者】
【氏名】早川 洋
【テーマコード(参考)】
4D073
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073DB03
4D073DB08
4D073DB14
4D073DB15
4D073DB28
4F100AK03D
4F100AK03E
4F100AK03G
4F100AK06D
4F100AK46C
4F100AK46E
4F100AK48C
4F100AK48E
4F100AK63D
4F100AL06E
4F100AL06G
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10E
4F100CB03E
4F100CB05B
4F100DB02
4F100EC182
4F100GB07
4F100GB31
4F100JA04C
4F100JA04E
4J004AA05
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA05
4J004CA06
4J004CB03
4J004DA03
4J004DB02
4J004DB04
4J004FA01
4J040DA082
4J040DF021
4J040JB09
4J040NA12
4J040NA16
4J040PA42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】柔軟性、追従性、耐熱性及び塗料付着性に優れるとともに、フィルムの折り目に起因するピンホール等の発生を低減させるマスカーテープを提供する。
【解決手段】基材2aとその上に形成された粘着層2bとを備える粘着テープ2と、粘着テープ2の側縁4に沿った貼付領域2cにおいて粘着剤層に貼り付けられた養生フィルム3とを備えるマスカーテープ1であって、養生フィルム3は、ポリアミド系樹脂を主成分として含む両外層(A)と、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む芯層(B)と、を有するマスカーテープ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とその上に形成された粘着層とを備える粘着テープと、前記粘着テープの側縁に沿った貼付領域において前記粘着剤層に貼り付けられた養生フィルムとを備えるマスカーテープであって、
前記養生フィルムは、ポリアミド系樹脂を主成分として含む両外層(A)と、
ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む芯層(B)と、を有することを特徴とするマスカーテープ。
【請求項2】
前記ポリアミド系樹脂は、融点(Tm)が200℃以上であることを特徴とする請求項1記載のマスカーテープ。
【請求項3】
前記ポリアミド系樹脂は、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1又は2記載のマスカーテープ。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンから選ばれる1種であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のマスカーテープ。
【請求項5】
前記養生フィルムの厚さは、10〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のマスカーテープ。
【請求項6】
前記養生フィルムの厚さをt、前記両外層(A)の厚さをta、前記芯層(B)の厚さをtbとしたとき、3μm≦ta、(1/3)t≦tbであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のマスカーテープ。
【請求項7】
前記養生フィルムは、前記両外層(A)と前記芯層(B)との間に、接着性樹脂から成る接着性樹脂層(C)を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のマスカーテープ。
【請求項8】
前記芯層(B)が、接着性樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のマスカーテープ。
【請求項9】
前記接着性樹脂は、不飽和カルボン酸グラフト変性ポリオレフィンであることを特徴とする請求項7又は8記載のマスカーテープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や車両等の塗装時に非塗装部分を被覆する等の目的で利用されるマスカーテープに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や車両等に塗装を施す際、非塗装部分に塗料が付着することを防ぐために、非塗装部分を養生フィルム等で被覆した状態で塗装が行われる。この被覆作業を容易に行うため粘着テープの側縁に沿って養生フィルム等が予め貼り付けられているマスカーテープが実用化されている。
【0003】
このようなマスカーテープには、建築物や車両等の曲線や曲面、凹凸のある粗面等への貼り付けに対応するために柔軟性や追従性が必要である。また、フィルム表面に塗料が付着しやすく、塗料が乾燥してもフィルム表面から塗料が剥離しにくい性質(以下、塗料付着性と称する)のものが必要とされ、これらに最適なものとして、ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンフィルム等が使用されてきた(特許文献1及び2参照)。しかしながら、車両等の塗装においては140℃〜180℃の高温焼付け乾燥が行われる場合があるため、ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムでは十分な耐熱性が得られず、剥離時に切断や破れなどが生じる問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決するものとして、マスキングテープやマスキングシートに、耐熱性や柔軟性が高いポリアミド系樹脂を用いることが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−320077
【特許文献2】特開2013−249436
【特許文献3】特開2000−210604
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなマスカーテープは、非塗装部分への塗料の付着を防止することを目的としている為、マスカーテープには破れやピンホール等が無いことが求められる。しかしながら、マスカーテープは、通常、養生フィルムが多層に折り畳まれた状態でロール状に巻回されロール体として運搬・保管されている為、保管時やテープの繰り出しの際などに養生フィルムの折り目部分が破れてしまうこと、マスカーテープを車両等の曲面に貼り付ける際、折り目部分が引き伸ばされてピンホールが発生することがある。このようにマスカーテープの折り目部分が破れ、ピンホールが発生していると、車両等への塗装の際、非塗装部分に塗料が付着する問題が起きる。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであり、柔軟性、追従性、耐熱性及び塗料付着性に優れるとともに、フィルムの折り目部分に起因するピンホール等の発生を低減させるマスカーテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、養生フィルムとして耐熱性、塗料付着性に優れるポリアミド系樹脂を主成分として含む両外層に、柔軟性や追従性に優れるポリオレフィン系樹脂を主成分として含む芯層を設けることにより、柔軟性、追従性、耐熱性に優れるとともに、フィルムの折り目に起因するピンホール等の発生を低減させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明によれば、
(1)基材とその上に形成された粘着層とを備える粘着テープと、前記粘着テープの側縁に沿った貼付領域において前記粘着剤層に貼り付けられた養生フィルムとを備えるマスカーテープであって、
前記養生フィルムは、ポリアミド系樹脂を主成分として含む両外層(A)と、
ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む芯層(B)と、を有することを特徴とするマスカーテープが提供され、
(2)前記ポリアミド系樹脂は、融点(Tm)が200℃以上であることを特徴とする(1)記載のマスカーテープが提供され、
(3)前記ポリアミド系樹脂は、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12から選ばれる1種であることを特徴とする(1)又は(2)記載のマスカーテープが提供され、
(4)前記ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンから選ばれる1種であることを特徴とする(1)乃至(3)の何れかに記載のマスカーテープが提供され、
(5)前記養生フィルムの厚さは、10〜100μmであることを特徴とする(1)乃至(4)の何れかに記載のマスカーテープが提供され、
(6)前記養生フィルムの厚さをt、前記両外層(A)の厚さをta、前記芯層(B)の厚さをtbとしたとき、3μm≦ta、(1/3)t≦tbであることを特徴とする(1)乃至(5)の何れかに記載のマスカーテープが提供され、
(7)前記養生フィルムは、前記両外層(A)と前記芯層(B)との間に、接着性樹脂から成る接着性樹脂層(C)を有することを特徴とする(1)乃至(6)の何れかに記載のマスカーテープが提供され、
(8)前記芯層(B)が、接着性樹脂を含むことを特徴とする(1)乃至(6)の何れかに記載のマスカーテープが提供され、
(9)前記接着性樹脂は、不飽和カルボン酸グラフト変性ポリオレフィンであることを特徴とする(7)又は(8)記載のマスカーテープが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマスカーテープは、柔軟性、追従性、耐熱性及び塗料付着性に優れる為、建築物や車両等の曲線や曲面、凹凸のある粗面等への貼り付け適性に優れ、車両等の塗装時の高温焼付け乾燥(140℃〜180℃)後の剥離時における切断、破れ、車両等への貼り付きを抑制できるとともに、養生フィルムが特定の多層構成となっている為、フィルムの折り目部分に起因するピンホール等の発生が抑制され、建築物や車両等の塗装を施す際、非塗装部分に塗料が付着することをより確実に抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るマスカーテープの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るマスカーテープの、図1におけるA−A’線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のマスカーテープ1は、基材2aとその上に形成された粘着剤層2bとを備える粘着テープ2と、粘着テープ2の側縁に沿った貼付領域2cにおいて粘着剤層2bに貼り付けられた養生フィルム3とを備える。また、図1には示していないが、養生フィルム3は、コンパクトに収納すべく、通常、側縁4に平行に折り目が入るように折り畳まれている。
【0013】
上記粘着テープ2は、基材2aとその上に形成された粘着剤層2bとを備えるものであり、図1では、ロール状のテープの外側が基材2a、内側が粘着剤層2bになっている。なお、ここでは図示しないが、粘着テープの基材2aの背面側には、ロール状に巻回された際に粘着剤層2bと接することから剥離層が形成されている。
【0014】
上記基材2aは、一般にマスキングテープや養生テープに用いられる基材を適宜選択することができ、特に制限するものではないが、例えば、紙、布、又は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂から構成されるフィルムや不織布等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性、追従性及び耐熱性の観点から、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0015】
上記基材2aの厚さは、マスカーテープのハンドリング性を考慮して適宜設定可能であり、特に制限するものではないが、例えば、5〜200μmであり、好ましくは10〜100μである。基材2aが薄すぎると、基材2aとして必要な強度が不足しやすくなり、基材2aが厚すぎると、曲面への追従性や柔軟性が悪くなる恐れがある。
【0016】
上記粘着剤層2bは、一般に用いられている粘着剤を適宜選択することができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤等を用いることができる。又、これらの粘着剤を望ましい性能とするために、粘着性付与剤、老化防止剤及び硬化剤等を配合することができる。
【0017】
上記ゴム系粘着剤としては、不飽和二重結合を持った天然ゴム系粘着剤やSBR系粘着剤、或いはそれらの混合物を用いることができる。また、必要に応じて、架橋剤、軟化剤、充填剤、難燃剤等を添加することができる。
【0018】
上記アクリル系粘着剤としては、アクリル酸エステル系を主たる単量体単位とする単独重合体(主モノマー)、及びコモノマーとの共重合体から選ばれたアクリル系共重合体、その他の官能性単量体(官能基含有モノマー)との共重合体及びこれらの重合体の混合物を用いることができる。
【0019】
上記粘着剤層2bの厚さは、使用される用途等に応じて適宜設計することができ、特に制限するものではないが、例えば、10〜60μmである。10μm未満では、得られる粘着テープの粘着力が低くなる場合がある。一方、60μmを超えると、被着体への粘着剤の糊残りが発生する場合がある。
【0020】
上記粘着テープ2の製造方法としては、従来公知の方法を採用することができ、特に制限するものではないが、例えば、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、リバースコーター、コンマコーター、エアナイフコーター、メイアーバーコーター等を用いて溶剤に溶解した粘着剤を基材2aにコーティングし、加熱して溶剤を飛散させる方法等が挙げられる。なお、粘着剤の種類が熱硬化性のものであれば、加熱と同時に硬化させても、溶剤を飛散させた後に硬化させても良い。
【0021】
図2に示すように、本実施形態マスカーテープ1における養生フィルム3は、ポリアミド系樹脂を主成分として含む両外層(A)3a、3cと、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む芯層(B)3bとを有する多層フィルムであり、両外層(A)3a、3cの何れか一方の表面が粘着テープ2の側縁に沿った貼付領域2cにおいて粘着テープ2の粘着剤層2bに貼り付けられた構成となっている。
【0022】
上記両外層(A)3a、3cは、ポリアミド系樹脂を主成分として含むものであり、ポリアミド系樹脂を主成分として含む両外層はポリアミド系樹脂のアミド結合の存在により、塗料付着性に優れ得る。両外層(A)3a、3cに用いられるポリアミド系樹脂は、ジアミンとジカルボン酸との重縮合、ω−アミノカルボン酸の自己縮合、ラクタム類の開館重合などによって得られ、十分な分子量を有する熱可塑性樹脂である。なお、ここでいう主成分とは、養生フィルムの各層中、50重量%以上を占める成分を指し、以下同じとする。
【0023】
上記ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6/6,6、ナイロン6/6,6/12、ナイロン6,MXD(MXDはm−キシリレンジアミン成分を表す)、ナイロン6,6T(Tはテレフタル酸成分を表す)、ナイロン6,6I(Iはイソフタル酸成分を表す)、アモルファスナイロンなどが挙げられ、これらの中から選ばれる1種、或いは2種以上を用いることができる。
【0024】
ジアミンとジカルボン酸の重縮合により得られる上記ポリアミド系樹脂の場合、ジアミンの具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの脂肪族および芳香族ジアミンなどが挙げられ、これらの中から選ばれる1種或いは2種以上を用いることができる。ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸、シュウ酸、シュウ酸エステル等の脂肪族、脂環族、芳香族ジカルボン酸などが挙げられ、これらの中から選ばれる1種、或いは2種以上を用いることができる。
【0025】
これらの中でも、柔軟性、追従性、耐熱性及び塗料付着性に優れるポリアミド系樹脂が好ましく、特に耐熱性の観点からポリアミド系樹脂の融点(Tm)は200℃以上であることが好ましい。ポリアミド系樹脂の融点(Tm)は、210℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることが特に好ましい。ポリアミド系樹脂の融点(Tm)が200℃以上であれば、車両等の塗装時における高温での焼付け乾燥後、養生フィルムが車両等に貼り付くことをより確実に抑制し得る。耐熱性に優れるポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12等が挙げられる。
【0026】
上記両外層(A)3a、3cは、上記ポリアミド系樹脂を主成分として含んでいれば良く、その含有量を特に制限するものではないが、車両等の塗装における高温焼付け乾燥に耐えうる耐熱性の観点から、例えば、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが特に好ましい。なお、両外層(A)3a、3cは、上記ポリアミド系樹脂を主成分として含んでいれば、上述したポリアミド系樹脂を2種以上含むブレンドであっても良い。また、両外層(A)3a、3cは、上述したように上記ポリアミド系樹脂を主成分として含んでいれば、外層3aと外層3cとは異なる組成であっても良い。例えば、フィルムのブロッキングや帯電を防止するために、一方の外層にアンチブロッキング剤や帯電防止剤を配合する組成としても良い。
【0027】
上記両外層(A)3a、3cに含まれる上記ポリアミド系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エラストマー、ゴム等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種、或いは2種以上を用いることができる。
【0028】
上記両外層(A)3a、3cは、添加剤を含有していても良く、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤、可塑剤、滑剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0029】
上記芯層(B)3bは、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むものであり、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む芯層を有することにより、柔軟性、追従性に優れるとともに、フィルムの折り目に起因するピンホール等の発生を低減することができる。上記芯層(B)3bに用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、変性ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数4〜18の少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体等のポリエチレン系樹脂が挙げられ、これらの中から選ばれる1種、或いは2種以上を用いることができる。
【0030】
これらの中でも、柔軟性、追従性、耐ピンホール性に優れるポリエチレン系樹脂が好ましく、特に耐ピンホール性の観点から、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0031】
上記芯層(B)3bにおけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、特に制限するものではないが、例えば、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが特に好ましい。なお、芯層(B)3bは、上記ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むのであれば、他の熱可塑性樹脂を含んでいても良く、他の樹脂としては上述した熱可塑性樹脂が挙げられる。また、添加剤を含んでいても良く、添加剤としては上述した添加剤が挙げられる。
【0032】
上記養生フィルム3は、上述したように、ポリアミド系樹脂を主成分として含む両外層(A)と、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む芯層(B)とを有する構成であれば良く、目的に応じて他の層を配置しても良い。ポリアミド系樹脂を主成分として含む両外層(A)と、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む芯層(B)とは、層間での密着性に乏しい為、両外層(A)と芯層(B)との間にそれぞれの層と接着性を示す接着性樹脂から構成される、或いは接着性樹脂を含む接着性樹脂層(C)を配置する構成(外層(A)/接着性樹脂層(C)/芯層(B)/接着性樹脂層(C)/外層(A))であることが好ましい。接着性樹脂としては、マレイン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物のモノマーとグラフト化した不飽和カルボン酸グラフト変性ポリオレフィン、金属架橋ポリオレフィン、エチレン又はプロピレンと(メタ)アクリル酸との共重合体、エチレン又はポロピレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体等が挙げられる。接着性樹脂層(C)は、各層の接着性を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂を含んでいても良く、他の熱可塑性樹脂としては上述した熱可塑性樹脂が挙げられる。接着性樹脂層(C)の厚みは、各層の接着性を担保できる厚みであればよく、特に制限するものではないが、例えば、0.1〜20μmである。なお、上記接着性樹脂は、両外層(A)及び/又は芯層(B)に配合されていても良く、両外層(A)、芯層(B)に該樹脂を配合することで、接着性樹脂層(C)を無くす構成としても良い。
【0033】
上記養生フィルムの各層の厚み比は、特に制限されるものではないが、例えば、養生フィルム3の厚さをt、両外層(A)の厚さをta、芯層(B)の厚さをtbとしたとき、3μm≦ta、(1/3)t≦tbであることが好ましい。芯層(B)の厚さtbが全体の厚さtの1/3未満であると、柔軟性、追従性が低下するとともに耐ピンホール性が損なわれる恐れがある。また、両外層(A)の厚さが3μm未満では、安定して製膜することが困難となる。
【0034】
上記養生フィルム3の厚さは特に制限されるものではなく、使用される用途等に応じて適宜設計すれば良く、例えば、10〜100μmであることが好ましく、15〜80μmであることがより好ましく、20〜60μmであることが特に好ましい。
【0035】
上記養生フィルム3は、車両等の塗装時における塗料付着性を向上させる為、必要に応じて表面処理を施しても良い。表面処理としては、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマー等のコーティング処理等が挙げられる。
【0036】
上記養生フィルム3の製造方法は、従来公知の方法を採用することができ、特に制限するものではないが、例えば、上述した両外層(A)を形成するための樹脂組成物と、芯層(B)を形成するための樹脂組成物と、必要に応じて接着性樹脂層(C)を形成するための樹脂組成物とを、別々の押出機に供給し、1つのダイスから押出すインフレーション共押出法やTダイ共押出法、予め製膜された両外層(A)間に芯層(B)を形成するための樹脂組成物を押出しラミネートする方法、予め製膜された両外層(A)、芯層(B)間に接着性樹脂層(C)を形成するための樹脂組成物を押出しラミネートする方法、予め製膜された両外層(A)、芯層(B)に接着剤を塗布し、ドライラミネートする方法等を用いることができる。
【0037】
なお、本発明における養生フィルム3の製造方法としては、インフレーション共押出法を採用することが好ましく、例えば、インフレーション共押出法により製膜されたチューブ状のフィルムを長手方向に平行に折り畳み(ガゼット等)、次いでチューブ状のフィルムの長手方向の一部を切り開いてフィルムの長手方向に向かって左又は右の部分をフィルムの端部にて長手方向を回転軸として回転させてチューブ状のフィルムの内面を露出させることで、長手方向に平行に折り畳まれた状態でロール状に巻回すことができ、効率よく多層に折り畳まれた状態の養生フィルム3を得ることができる。
【0038】
上記マスカーテープ1の製造方法は、従来公知の方法を採用することができ、特に制限するものではないが、例えば、上述した方法で粘着テープ2と養生フィルム3とを作成し、貼付領域2cにおいて粘着テープ2と養生フィルム3とが重なるよう、養生フィルム3を粘着テープ2の粘着剤層2bに貼り合わせることによって製造することができる。貼付領域2cの幅は、養生フィルム3が粘着テープ2から外れない程度の強度を付与できる幅であれば良く、例えば、粘着テープ幅の5〜90%であることが好ましく、10〜80%であることがより好ましく、20〜60%であることが特に好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について、実施例によりさらに詳しく説明する。なお、実施例において行った測定方法は次の通りである。
(1)引張試験
各実施例、比較例のフィルムから、4号形試験片(測定部の幅10mm)を作成し、JIS K7127(1989)に準拠して、引張速度50mm/分にて引張試験を行った。
(2)ゲルボ試験
各実施例、比較例のフィルムから、200mm(短辺)×300mm(長辺)の試験片を切出し、該試験片における長辺の両端を貼り合わせて円筒状に丸め、筒状の試験片を作成した。次いで、筒状にした試験片の両端を固定ヘッドと駆動ヘッドで保持し、440°のひねりを加えながら固定ヘッドと駆動ヘッドの間隔を7インチから3.5インチに狭めて、さらにひねりを加えたまま直線水平運動にてヘッドの間隔を1インチまで狭め、その後ヘッドの間隔を3.5インチまで広げ、さらにひねりを戻しながらヘッドの間隔を7インチまで広げるという往復運動を40回/分の速さで、23℃の環境下で500回及び1000回行った。ピンホール数の確認は浸透深傷液を用いて行った。
【0040】
[実施例1]
両外層(A)用樹脂としてナイロン6(密度:1.13g/cm、96%硫酸相対粘度:4.4)95重量部とアモルファスナイロン(密度:1.13g/cm)5重量部とからなる樹脂組成物を用い、芯層(B)層用樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.923g/cm、MFR:1.5g/10min)100重量部を用い、接着性樹脂層(C)用樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.923g/cm、MFR:1.5g/10min)50重量部と酸変性ポリエチレン(密度:0.920g/cm、MFR:4.5g/10min)50重量部とからなる樹脂組成物を用い、インフレーション共押出法にて、外層(A)/接着性樹脂(C)/芯層(B)/接着性樹脂(C)/外層(A)の5層の養生フィルムを製膜した。フィルムの膜厚は25μmであり、各層の厚みは、両外層(A)が5μm、芯層(B)が10μm、接着性樹脂層が2.5μmとした。得られたフィルムの引張試験及びゲルボ試験の結果を表1に示す。
【0041】
[実施例2]
両外層(A)用樹脂としてナイロン6/6,6(密度:1.13g/cm、96%硫酸相対粘度:4.2)100重量部を用い、接着性樹脂層(C)用樹脂として酸変性ポリエチレン(密度:0.920g/cm、MFR:2.8g/10min)を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2の養生フィルムを得た。得られたフィルムの引張試験及びゲルボ試験の結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
養生フィルムとして、ナイロン6の単層無延伸フィルム(三菱樹脂化学株式会社製 ダイアミロンC、厚み25μm)を用いた。フィルムの引張試験及びゲルボ試験の結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、両外層(A)にナイロン6を用い、芯層(B)に直鎖状低密度ポリエチレンを用いた実施例1の養生フィルム及び両外層(A)にナイロン6/6,6を用い、芯層(B)に直鎖状低密度ポリエチレンを用いた実施例2の養生フィルムは、ゲルボ試験におけるピンホールの発生がなく、耐ピンホール性に優れる結果を示した。一方、ナイロン6の単層からなる比較例1の養生フィルムは、ゲルボ試験においてピンホールが発生し、耐ピンホール性に劣る結果を示した。
【0045】
[実施例3]
次いで、実施例1にて得られた養生フィルムと粘着テープ(ニチバン株式会社製 塩ビマスキングテープ No.535A、25mm品)とを準備し、粘着テープの貼付領域において粘着テープと養生フィルムとが重なるよう、養生フィルムの外層側表面を粘着テープに貼り合わせてマスカーテープを作成した。貼付領域の幅は、7mmとした。
【0046】
得られたマスカーテープを自動車の非塗装部分に貼り付けて塗装を行った後に、170℃×30minの環境下で焼付け乾燥を行った。乾燥後、マスカーテープを剥離したところ、切断、破れ、貼り付き等が起きることなく剥離でき、自動車の表面への養生フィルムの貼り付き等も見られず、耐熱性に優れる結果を示した。また、自動車の非塗装部分にはピンホールに起因する塗装不良も見られなかった。
【0047】
以上の如く、本発明によれば、養生フィルムとして耐熱性、塗料付着性に優れる樹脂を主成分として含む両外層に柔軟性や追従性に優れる樹脂を主成分として含む内層を設けることにより、柔軟性、追従性、耐熱性に優れるとともに、フィルムの折り目に起因するピンホール等の発生を低減させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1:マスカーテープ
2:粘着テープ
2a:基材
2b:粘着剤層
2c:貼付領域
3:養生フィルム
3a:外層
3b:芯層
3c:外層
4:側縁


図1
図2