(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-90993(P2018-90993A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】自力浮遊型溶出容器
(51)【国際特許分類】
E03D 9/02 20060101AFI20180518BHJP
【FI】
E03D9/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-233742(P2016-233742)
(22)【出願日】2016年12月1日
(11)【特許番号】特許第6179835号(P6179835)
(45)【特許公報発行日】2017年8月16日
(71)【出願人】
【識別番号】716005036
【氏名又は名称】浅野 智博
(72)【発明者】
【氏名】浅野 智博
【テーマコード(参考)】
2D038
【Fターム(参考)】
2D038AA02
2D038BA09
(57)【要約】
【課題】 従来の固形の芳香洗浄剤をそのまま投入するものは、流水時に排水口を塞いでしまうこと、常に水中に露出されるため溶けた成分が過度に放出されることという問題があった。また、貯水タンク内に容器を吊設または固定するものは、設置する場所が必要でかつ時間がかかること、破損による落下で使用効果が得られなくなること、構造が複雑なため製造費用が高くなることなどの問題があった。
【解決手段】 上下2つに分離する透明球体容器で下方に一段または複数段に少なくとも1個以上の通水薬剤連通口と錘を有し、その容器に芳香洗浄剤を収容する。貯水タンク内の水面に置くと容器の約半分まで注水され残り半分は空気が残る。これにより容器に浮力が生まれ自力で水面にとどまるほか、薬剤溶出量を調節し長持ちさせ、排水口に詰まることも防ぐことができる。また、芳香洗浄剤の残量確認や設置が容易になり、形状が単純なため壊れにくくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香洗浄剤が収容される球体の溶出容器であって、溶出容器は少なくとも半径1cm以上かつ貯水タンク内に収まる大きさであり、溶出容器の少なくとも上部の一部が透明プラスチック製であり、溶出容器底面から高さ2/3の範囲内に一段または複数段に少なくとも1個以上の通水薬剤連通口を有し、該通水薬剤連通口の少なくとも一段に連通口面積を可変可能な機構を有し、溶出容器下部に錘を有することを特徴とする自力浮遊型溶出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗トイレの貯水タンク内に使用される固形の芳香洗浄剤の使用可能期間を長く保たせるための自力浮遊型溶出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の家庭用トイレ洗浄剤には、貯水タンク内に固形の芳香洗浄剤をそのまま投入し、タンク底面に固定粘着させて使用するもの、あるいは貯水タンク内に吊設または固定する容器に固形芳香洗浄剤を入れ、外部から注水された水により溶かし流出させて使用するものなど、さまざまな構成の容器が提案されている。
【0003】
特許文献1にはタンク内に紐状体でぶら下げてとどめる薬剤供給具が開示されている。しかしながらこの薬剤供給具は紐状体で水中にとどめているため、紐状体が切断すると底に沈み、機能を発揮できなくなるほか、構造が複雑で壊れやすいという問題点があった。特許文献2には吸盤により薬剤供給具を壁面に固定する溶出容器が開示されている。しかしながら、このような位置を固定する方法では構造が複雑であり、吸盤が外れて底に落下すると浮きが溶出容器底部の開口部を開くことができず、溶出容器としての機能を発揮できないという問題点があった。上記、まとめると固形の芳香洗浄剤をそのまま投入するも
のは、流水時に排水口を塞いでしまうこと、常に水中に露出されるため溶けた成分が過度に放出されること、貯水タンク内に吊るすまたは吸盤で固定するものは、吊るすまたは固定する場所が必要なこと、設置に時間がかかること、器具の破損または落下で使用効果が得られなくなること、構造が複雑なため製造費用が高くなることという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−119191号公報
【特許文献2】特開平09-41461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は構造が単純で、水上に浮遊し、洗浄剤の残量が確認容易であり、容器の破損がなく、適度に洗浄剤が溶出し、なおかつ溶出量を調節できる溶出容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、芳香洗浄剤が収容される球体の溶出容器であって、溶出容器は少なくとも半径1cm以上かつ貯水タンク内に収まる大きさであり、溶出容器の少なくとも上部の一部が透明プラスチック製であり、溶出容器底面から高さ2/3の範囲内に一段または複数段に少なくとも1個以上の通水薬剤連通口を有し、該通水薬剤連通口の少なくとも一段に連通口面積を可変可能な機構を有し、溶出容器下部に錘を有することを特徴とする自力浮遊型溶出容器である。
本発明に用いる洗浄容器は、一般的な水洗便器に適用することができる。
芳香洗浄剤は一般的に市場で販売されている円筒形のもので、使用する容器の大きさによって芳香洗浄剤の大きさや重さが異なる。
球体容器とは上下2つに分離する形状をしている。
球体容器の大きさは半径が1cm以上であることが必要であり、これより小さいと内包する洗浄剤の全量が少なくなり頻繁に交換する必要があるという欠点となる。
溶出容器の上部の一部に用いる透明プラスチックは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン)、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、PET樹脂、ポリエチレンテレフタレート、PVA樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン6(ポリアミド)、ナイロン66(ポリアミド)、ナイロン12(ポリアミド)、アセタール樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、PBT樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン・フッ素樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン・フッ素樹脂、ポリアミドイミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、アリル樹脂、ジアリルフタレート、シリコン樹脂、シリコーン、エポキシ樹脂、フラン樹脂、フラン-ホルムアルデヒド樹脂、アセチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、が好ましいが、比重が1より小さなポリエチレンが最も好ましい。
透明プラスチック以外の部分は前述のプラスチックのほか、アルミニウム、ゴムが好ましい。
【0007】
溶出容器底面から高さ2/3の範囲内に設けるとは、容器内に1/3以上の空気が必要でありそれには連通口の最上部が2/3以下である必要がある。好ましくは1/2以下に連通口を設け、空気を1/2程度残すのがよい。
複数段とは連通口を上下段に設けることで、設置の際に下段から水が入り上段から空気が抜け、容器内水量を一定に保つことができる。
連通口の数は少なくとも1つ以上は必要であり、半径0.5〜5mmの連通口を複数段に4〜10個設けるのが好ましい。
球体容器の大きさの上限は貯水タンク内に収まる大きさである必要があり、直径12cm以内であることが好ましい。
可変機構とは容器上下の接続部に連通口があり、上下それぞれを逆にずらすことで連通口の面積を小さくでき溶出量を調節できる。
【0008】
溶出容器下部に錘を有するとは、容器が上下回転しないように安定させる必要があり、容器下部を容器上部より軽い素材とし、なおかつ底辺のプラスチック部分を厚くして錘にするのが好ましい。重さは容器の大きさにより異なるが、少なくとも水上または水中にとどまる程度の重さがよく、具体的には0.2〜10gが好ましい。
本発明の構造によれば、容器に芳香洗浄剤を収容し貯水タンク内の水面に置くと、芳香洗浄剤の重みおよび自重により下段の通水薬剤連通口から注水される。上段の通水薬剤連通口からは空気が放出されるため、容器は上段の通水薬剤連通口の位置まで沈む。しかし、そこより上には通水薬剤連通口がないため容器の体積の約半分は空気として残り沈下が止まる。
【0009】
上記の課題解決手段による作用は次の通りである。侵入した水により容器下部に設置された芳香洗浄剤は溶解し、水より重い性質を持つ薬剤が通水薬剤連通口を通り貯水タンク内に溶出する。しかし、通水薬剤連通口の面積は限られており、溶けた成分の溶出量は制限される。また、一部の通水薬剤連通口を狭めることにより溶出量を調節できる。これにより芳香洗浄剤の使用期間が延長でき、貯水タンク内の排水口に詰まることも防ぐことができる。また、容器を透明にすることで芳香洗浄剤の残量を容易に確認でき、吊設または固定する場所が不要で時間を要さず簡単に設置や取り出しができるほか、形状が単純なため壊れにくく長持ちし、これらにより上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の溶出容器は、芳香洗浄剤の過度の溶出を抑えることで使用期間を延長し、水面に浮くため排水口に洗浄剤が詰まることを防止でき、芳香洗浄剤の残量を目視のみで確認でき、吊るす固定するなどの場所がいらず手間もないため容易に取り替え作業を行える。そして、単純な構造のため製造費用が抑えられるほか、構造上壊れにくく利用者の負担も小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は芳香洗浄剤を内包した状態の溶出容器である。
【
図3】
図3は溶出容器を解体した際の下部に芳香洗浄剤を入れた状態である。
【
図5】
図5は芳香洗浄剤を内包した状態の溶出容器を貯水タンク内に設置した状態である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を
図1から
図5に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
図1においては、1は上下2つに分割される透明プラスチック製の溶出容器本体で容器上部3と容器下部4から形成されている。容器1の球体の半径は約4cmで体積は約268cm
2。
【0014】
容器下部4には通水薬剤連通口5-1と5-2があり、通水薬剤連通口5-2は容器上部3の結合部にも設けられる。この穴は半径約2.5mmの円形で通水薬剤連通口5-1・5-2はそれぞれ4つずつ計8つ、それぞれに等間隔で設置されている。
【0015】
容器下部4は底辺が約1gの錘6で重くなっている。また、容器上部3は容器下部4と比べて軽い素材となっている。容器下部4には、重さ約50gの芳香洗浄剤2が設置される。芳香洗浄剤2を内包した容器1は
図5の貯水タンク内の水面9に10のように設置される。
【0016】
以下、上記構成の動作を説明する。満水の貯水タンク内に芳香洗浄剤2が収容される容器1を置くと、芳香洗浄剤2の重みおよび容器1の自重により4つの通水薬剤連通口5-1より注水が開始される。通水薬剤連通口5-2より空気8が放出されるため、容器1は通水薬剤連通口5-2の位置まで沈む。しかし、それより上には通水薬剤連通口がないため容器1には容器のおよそ半分となる空気8が残り沈下が止まる。
【0017】
注水により浸水した容器1内部では、芳香洗浄剤2が水に溶けはじめる。溶けた薬剤は水より重い性質により通水薬剤連通口5-1・5-2より外部へ溶出される。通水薬剤連通口5-1・5-2という限られた面積の穴から芳香洗浄剤2を溶出させることにより、溶出量は制限される。また、結合された容器上部3と容器下部4を左右にずらすことで、上下容器接続部7にある通水薬剤連通口5-2と容器下部4にある通水薬剤連通口5-2の面積が狭まり、溶出量を調節することができる。これにより使用期間を延ばすことができる。
【0018】
また、容器自体は前述の浮力により排出時の水位変動にも自力で水面にとどまる。これにより簡単に芳香洗浄剤2の残量を確認でき、また容器1を容易に設置および取り出し芳香洗浄剤2の交換ができるほか、形状が単純なため壊れにくく、芳香洗浄剤2が貯水タンク内の排水口に詰まることを防ぐことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
図1に示すように、この実施例の自力浮遊型容出容器は、水上に浮く容器に水溶性の芳香洗浄剤を収容している。自力浮遊型溶出容器は
図1に示すような球状ではなく、他の適宜の形状としてもよい。容器は金属、プラスチック、陶器、ガラス、ゴム、その他合成樹脂等で形成することができ、特に加工の容易性の点からプラスチック、合成樹脂等で形成することが好ましい。また、形状や寸法は任意に変更することができる。
【0020】
上記実施例では、貯水タンク内において
図5のように水面に浮遊させて使用するようにしたが、用途またはデザインによっては水中に浮遊させるほか、水底に沈めて使用することもできる。それらは通水薬剤連通口の大きさや数や位置、空気の量、容器の大きさ、それらによる調整もしくは全体をもって変更することが可能である。分解方法を容器上部や容器下部とせず、左右に分離する、蓋型として上部のみを開放可能にするなど変更することができる。また、自力浮遊型溶出容器が可能とするこれらの効果は、例えば芳香洗浄剤の用途に限らず、アートやインテリアなどの要素として、水中内に色の含まれた成分を溶出させそれらを鑑賞し、視覚的な楽しみを得るものにも流用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 容器
2 芳香洗浄剤
3 容器上部
4 容器下部
5-1 通水薬剤連通口
5-2 通水薬剤連通口
6 錘
7 上下容器接続部
8 空気
9 水面
10 設置状態
【手続補正書】
【提出日】2017年4月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形の芳香洗浄剤が収容される上下半分で分割可能な球体の溶出容器であって、溶出容器は少なくとも半径1cm以上かつ貯水タンク内に収まる大きさであり、溶出容器の少なくとも上部の一部が透明のポリエチレンまたはポリプロピレンのプラスチック製であり、溶出容器底面から高さ2/3の範囲内に少なくとも1個以上の半径0.5〜5mmの通水薬剤連通口を複数段に4〜10個有し水位が連通口の最上段に達すると注水が止まり空気が1/2程度残り外部補助がなくとも容器単体での水面浮遊が可能であり、球体上下の結合部に有する螺合機構によって該通水薬剤連通口の少なくとも一段に連通口面積を可変可能な機構を有し、溶出容器下部に0.2〜10gの錘を有することを特徴とする自力浮遊型溶出容器。