特開2018-91134(P2018-91134A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-91134鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-91134(P2018-91134A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20180518BHJP
   F16L 3/08 20060101ALI20180518BHJP
【FI】
   E04B1/94 D
   E04B1/94 F
   F16L3/08 E
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-28469(P2018-28469)
(22)【出願日】2018年2月21日
(62)【分割の表示】特願2013-134125(P2013-134125)の分割
【原出願日】2013年6月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 玄宏
(72)【発明者】
【氏名】山脇 慎平
【テーマコード(参考)】
2E001
3H023
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA06
2E001FA13
2E001FA34
2E001GA28
2E001GA47
2E001HA32
2E001LA09
2E001LA13
3H023AB04
3H023AC75
(57)【要約】
【課題】鉄骨梁の耐火被覆処理よりも先に配管工事が行なわれた場合であっても、鉄骨梁の配管挿通部を容易に耐火被覆でき、配管のずれにも柔軟に対応できるようにする。
【解決手段】耐火充填材30,30は、配管20の貫通する貫通部32と、この貫通部32と該耐火充填材30,30の外側縁36の間を繋ぐ切込み37とを有し、ウエブ12の両側において切込み37に沿って配管20にはめ込まれ、配管20が貫通部32に収まった状態でウエブ12を両側から挟み込み、耐火被覆材40は、耐火充填材30,30の貫通部32と対応する位置に形成された配管20の貫通する貫通部41と、この貫通部41と該耐火被覆材40の外側縁44の間を繋ぐ切込み45とを有し、切込み45に沿って配管20にはめ込まれ、配管20が貫通部41に収まった状態で一対の耐火充填材30,30を被覆する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H型鋼鉄骨梁のウエブに形成した配管挿通孔に配管を挿通させ、その後、前記ウエブと前記配管を、耐火充填材と耐火被覆材によって覆う場合の耐火被覆構造において、
前記耐火充填材は、前記H型鋼におけるウエブの前記配管挿通孔を含む幅方向範囲の全体を被覆するものであって、前記配管の貫通する貫通部と、この貫通部と該耐火充填材外側縁の間を繋ぐ前記ウエブの長さ方向に対して45度以内の角度で交差する切込みとを有し、前記ウエブの両側において前記切込みに沿って前記配管にはめ込まれ、前記配管が前記貫通部に収まった状態で前記ウエブを両側から挟み込み、
前記耐火被覆材は、前記耐火充填材の貫通部と対応する位置に形成された前記配管の貫通する貫通部と、この貫通部と該耐火被覆材外側縁の間を繋ぐ一つの切込みを有し、前記切込みに沿って前記配管にはめ込まれ、前記配管が前記貫通部に収まった状態で前記一対の耐火充填材を被覆する、
構造としたことを特徴とする鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造。
【請求項2】
前記耐火充填材の貫通部が、孔、切込み又は切込みの中心に小孔を形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造。
【請求項3】
前記耐火被覆材の貫通部が、切込み又は切込みの中心に小孔を形成したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H型鋼などで構成される鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨構造の耐火建築物においては、火災時の温度上昇に伴う構造材の強度低下を防止するために、主要な構造材に耐火被覆処理が施される。例えば、H型鋼からなる鉄骨梁においては、上下のフランジ及びウエブに沿わせるように耐火被覆材(ロックウールなど)を巻き付けたり、ウエブに対して隙間をあけるようにして耐火被覆材を巻き付ける耐火被覆処理が広く採用されている。
【0003】
また、鉄骨梁のウエブに形成した配管挿通孔へ配管を挿通させる配管挿通部においては、ウエブの両側を覆う耐火被覆材に対して鉄骨梁の配管挿通孔に対応した貫通孔又は切込みを形成し、これらの貫通孔又は切込みを貫通させながら配管を鉄骨梁の配管挿通孔へ挿通させるようにしている。
【0004】
また、特許文献1には、鉄骨梁のウエブに形成した配管挿通孔の周りに、ウエブを両側から挟み込むようにして一対の耐火充填材を取り付けて、一対の耐火充填材に形成した貫通孔とウエブの配管挿通孔とを互いに重ね合わせた後、一対の耐火充填材を包み込むように鉄骨梁に巻き付けた耐火被覆材に、一対の耐火充填材の貫通孔に対向する一対の切込みを形成して、一方の切込みから挿入した配管を、耐火充填材の貫通孔及びウエブの配管挿通孔に挿通させて、他方の切込みから抜き出した鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造が示されている。
【0005】
このような鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造によれば、耐火被覆材に切り込みを形成して配管を貫通させるものでありながら、耐火被覆材の内側において鉄骨梁のウエブを挟み込むようにして耐火充填材が設けられているので、耐火被覆材と配管との間に隙間が生じても、鉄骨梁のウエブが露出することを防止して良好な耐火性能が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5141592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、鉄骨構造からなる耐火建築物の建築現場では、鉄骨梁の耐火被覆処理よりも先に配管工事が行なわれることがある。この場合は、鉄骨梁の配管挿通孔に配管が挿通された状態で耐火被覆処理を行なうことになるが、従来の耐火被覆材や耐火充填材は、もっぱら配管前の施工に合わせたものであって配管後の施工を考慮していないため、配管後の耐火被覆処理が不可能であるか、可能であっても作業性が著しく低下するという問題があった。
【0008】
また、鉄骨梁の耐火被覆処理よりも先に配管工事が行なわれた場合、配管挿通孔の中心に配管が挿通されず、中心からずれた位置に配管が挿通される可能性がある。このような場合は、配管後の耐火被覆処理がより困難になるだけでなく、耐火被覆材と配管の間や耐火充填材と配管の間に隙間が生じて耐火性能が低下するおそれがあった。
【0009】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、鉄骨梁の耐火被覆処理よりも先に配管工事が行なわれた場合であっても、鉄骨梁の配管挿通部を容易に耐火被覆できるだけでなく、配管のずれにも柔軟に対応して耐火性能の低下も防止することができる鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明の鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造は、H型鋼鉄骨梁のウエブに形成した配管挿通孔に配管を挿通させ、その後、前記ウエブと前記配管を、耐火充填材と耐火被覆材によって覆う場合の耐火被覆構造において、
前記耐火充填材は、前記H型鋼におけるウエブの前記配管挿通孔を含む幅方向範囲の全体を被覆するものであって、前記配管の貫通する貫通部と、この貫通部と該耐火充填材外側縁の間を繋ぐ前記ウエブの長さ方向に対して45度以内の角度で交差する切込みとを有し、前記ウエブの両側において前記切込みに沿って前記配管にはめ込まれ、前記配管が前記貫通部に収まった状態で前記ウエブを両側から挟み込み、
前記耐火被覆材は、前記耐火充填材の貫通部と対応する位置に形成された前記配管の貫通する貫通部と、この貫通部と該耐火被覆材外側縁の間を繋ぐ一つの切込みを有し、前記切込みに沿って前記配管にはめ込まれ、前記配管が前記貫通部に収まった状態で前記一対の耐火充填材を被覆する、構造としてある。
【0011】
このようにすると、耐火充填材及び耐火被覆材は、鉄骨梁の配管挿通孔に挿通された配管に対してはめ込み可能な切込みを有するので、鉄骨梁の耐火被覆処理よりも先に配管工事が行なわれた場合であっても、鉄骨梁の配管挿通部を容易に耐火被覆することができる。しかも、耐火充填材及び耐火被覆材は、配管を基準として取付けられるので、配管が配管挿通孔の中心からずれた状態で挿通されていても、耐火被覆材と配管の間や耐火充填材と配管の間に隙間が生じることを回避し、耐火性能の低下も防止できる。
【0012】
特に、耐火充填材は、配管の貫通する貫通部と該耐火充填材外側縁の間を繋ぐ切込みが、前記ウエブの長さ方向に対して45度以内の角度で交差するように設けられている。
【0013】
このような構成としてあるので、耐火充填材を切込みに沿って配管にはめ込んだとき、たとえ切込み部分が開いた状態になったとしても、一対の耐火充填材でウエブを両側から挟み込む段階で、耐火充填材がH型鋼の上下のフランジ間で押圧されることにより、開いた切込み部分が閉じられるだけでなく、閉じた状態を維持することができる。
【0014】
また、前記耐火充填材の貫通部は、孔、切込み又は切込みの中心に小孔を形成したものとすることができる。
このようにすると、耐火充填材を可及的に隙間がない状態で配管にはめ込むことができる。
【0015】
また、前記耐火被覆材の貫通部は、切込み又は切込みの中心に小孔を形成したものとすることができる。
このようにすると、耐火被覆材を可及的に隙間がない状態で配管にはめ込むことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、鉄骨梁の耐火被覆処理よりも先に配管工事が行なわれた場合であっても、鉄骨梁の配管挿通部を容易に耐火被覆できるだけでなく、配管のずれにも柔軟に対応して耐火性能の低下も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造を示す断面図である。
図2】耐火被覆処理よりも先に鉄骨梁の配管挿通孔に配管が挿通された状態を示す図であり、(a)は、配管挿通孔の中心位置に配管が挿通された状態を示す断面図、(b)は、配管挿通孔の中心からずれた位置に配管が挿通された状態を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る耐火充填材を示す図であり、(a)は、配管の貫通部として孔が形成された耐火充填材の側面図、(b)は、配管の貫通部として切込みが形成された耐火充填材の側面図、(c)は、配管の貫通部として切込みの中心に小孔が形成された耐火充填材の側面図である。
図4】(a)は、本発明の実施形態に係る耐火充填材が鉄骨梁に取付けられた状態を示す図であり、耐火充填材でウエブの幅方向の全体を被覆した状態を示す鉄骨梁の側面図、(b)は、耐火充填材でウエブの幅方向の一部を被覆した状態を参考的に示す鉄骨梁の側面図である。
図5】鉄骨梁の配管挿通孔に挿通された配管に対して耐火充填材をはめ込む工程を示す斜視図である。
図6】(a)及び(b)は、耐火充填材に二つの切込みを形成した実施形態を示す図であり、(a)は、配管の貫通部の横方向に二つの切込みを形成した耐火充填材の側面図、(b)は、配管の貫通部の横と縦の方向に一つずつの切込みを形成した耐火充填材の側面図、(c)は、配管の貫通部の縦方向に二つの切込みを形成した参考耐火充填材の側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る耐火被覆材を示す図であり、(a)は、配管の貫通部として切込みが形成された耐火被覆材の部分側面図、(b)は、配管の貫通部として切込みの中心に小孔が形成された耐火被覆材の部分側面図である。
図8】鉄骨梁の配管挿通孔に挿通された配管に対して耐火充填材をはめ込む工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造を示す断面図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る鉄骨梁10は、H形鋼からなり、上下のフランジ11,11と、上下のフランジ11,11の中央部間を連結するウエブ12とを一体的に備え、上側のフランジ11上には、例えばコンクリート製の床パネル13が設置される。また、ウエブ12の幅方向(図1の上下方向)の中央部には、例えば円形の配管挿通孔14が形成されており、ここに給排水用、換気用、配線挿通用等に使用される配管20が挿通される。
【0020】
図2は、耐火被覆処理よりも先に鉄骨梁の配管挿通孔に配管が挿通された状態を示す図であり、(a)は、配管挿通孔の中心位置に配管が挿通された状態を示す断面図、(b)は、配管挿通孔の中心からずれた位置に配管が挿通された状態を示す断面図である。
図2に示すように、配管20は、耐火被覆処理を行なう前の段階で鉄骨梁10の配管挿通孔14に挿通される場合がある。この場合、配管20は、耐火被覆処理部材による位置的な制約を受けないので、図2の(a)に示すように、配管挿通孔14の中心位置に挿通される保証はなく、図2の(b)に示すように、配管挿通孔14の中心からずれた位置に挿通されることもある。
【0021】
以下、鉄骨梁10のウエブ12に形成した配管挿通孔14に配管20を挿通させ、その後、ウエブ12と配管20を、耐火充填材30,30と耐火被覆材40によって覆う場合の耐火被覆構造について説明する。
【0022】
図3は、本発明の実施形態に係る耐火充填材を示す図であり、(a)は、配管の貫通部として孔が形成された耐火充填材の側面図、(b)は、配管の貫通部として切込みが形成された耐火充填材の側面図、(c)は、配管の貫通部として切込みの中心に小孔が形成された耐火充填材の側面図である。
図1及び図3に示すように、耐火充填材30,30は、例えばロックウールをほぼ直方体形状に成形した柔軟性を有するものであって、その側面31、31の中央部間を貫通する貫通部32が形成され、ここに配管20が貫通した状態で鉄骨梁10に取付けられる。
【0023】
耐火充填材30,30の貫通部32は、図3の(a)に示すように、配管20の外径とほぼ同径か、それよりも僅かに小径な円形の貫通孔33とすることができる。このようにすると、可及的に隙間がない状態で配管20を貫通させることが可能になる。また、貫通部32は、図3の(b)に示すような放射状(例えば十字状)の切込み34としてもよく、この場合には、切込み34の周囲を捲り上げた状態で配管20が貫通される。なお、貫通部32を切込み34とする場合は、図3の(c)に示すように、切込み34の中心に小孔35を形成してもよい。
【0024】
図4(a)は、本発明の実施形態に係る耐火充填材が鉄骨梁に取付けられた状態を示す図であり、耐火充填材でウエブの幅方向の全体を被覆した状態を示す鉄骨梁の側面図、(b)は、耐火充填材でウエブの幅方向の一部を被覆した状態を参考的に示す鉄骨梁の側面図である。
図1及び図4に示すように、耐火充填材30,30は、鉄骨梁10に対してウエブ12を両側から挟み込む状態で取付けられる。このとき耐火充填材30,30は、図4の(a)に示すように、ウエブ12の幅方向の全体を被覆することが可能である。このように、ウエブ12の幅方向の全体を被覆する耐火充填材30,30は、鉄骨梁10の上下のフランジ11,11とウエブ12とによって囲まれた空間にはめ込み状に取付けられるので、別途固定手段を用いることなく容易に取付けられるという利点がある。
【0025】
図5は、鉄骨梁の配管挿通孔に挿通された配管に対して耐火充填材をはめ込む工程を示す斜視図である。
図3図5に示すように、耐火充填材30,30は、その外側縁36と貫通部32との間を繋ぐ切込み37を有しており、この切込み37を開くことにより、配管20に対して側方から耐火充填材30,30をはめ込むことができるようになっている。そして、鉄骨梁10の配管挿通孔14に配管20を挿通した後に行われる本発明の耐火被覆処理において、耐火充填材30,30は、ウエブ12の両側で切込み37に沿って配管20にはめ込まれ、配管20が貫通部32に収まった状態でウエブ12を両側から挟み込むように鉄骨梁10に対して取付けられる。
【0026】
耐火充填材30,30は、切込み37に沿って配管20にはめ込まれたとき、切込み37の部分が開いたままの状態になる可能性がある。この場合、クリップ等の固定具を用いて切込み37の部分を閉じることも可能であるが、図4の(a)に示すようにすれば、固定具を用いることなく、開いた切込み37の部分を閉じ、かつ閉じた状態を維持することができる。つまり、図4の(a)に示すように、耐火充填材30,30は、鉄骨梁10におけるウエブ12の配管挿通孔14を含む幅方向範囲の全体を被覆するものとし、かつ耐火充填材30,30の切込み37は、ウエブ12の長さ方向に対して45度以内の角度で交差するものとする。このようにすると、耐火充填材30,30を切込み37に沿って配管20にはめ込んだとき、たとえ切込み37の部分が開いた状態になったとしても、一対の耐火充填材30,30でウエブ12を両側から挟み込む段階で、耐火充填材30,30が上下のフランジ11,11間で押圧されることにより、開いた切込み37の部分が閉じられるだけでなく、閉じた状態を維持することが可能になる。
【0027】
なお、耐火充填材30,30における切込み37は、一つに限られるものではなく、二つ以上形成したものであってもよい。配管20が太い場合には、一つの切込み37だけだと、切込み37の開口が不十分になり配管20へのはめ込みを行なえなくなる可能性がある。このため、図6(a)〜(b)に示すように、耐火充填材30,30に複数の切込み37を形成しておき、耐火充填材30,30を分割できるようにしておくと、太い配管20に対するはめ込みも容易に行なうことができる。
【0028】
耐火被覆材40は、例えばロックウールをマット状に成形してなる柔軟性を有するものであり、図1に示すように、耐火充填材30,30が取付けられた鉄骨梁10に対してほぼU字状に巻き付けられる。耐火被覆材40の固定は、例えば耐火被覆材40の外側から金属製の固定ピンを差し込み、この固定ピンを鉄骨梁10の適所にスタッド溶接することにより行われる。
【0029】
図7は、本発明の実施形態に係る耐火被覆材を示す図であり、(a)は、配管の貫通部として切込みが形成された耐火被覆材の部分側面図、(b)は、配管の貫通部として切込みの中心に小孔が形成された耐火被覆材の部分側面図である。
図7に示すように、耐火被覆材40には、耐火充填材30,30の貫通部32と対応する位置に配管20を貫通させるための貫通部41が形成される。この貫通部41は、図7の(a)に示すような放射状(例えば十字状)の切込み42とすることができ、この場合には、切込み42の周囲を捲り上げた状態で配管20が貫通される。このようにすると、可及的に隙間がない状態で配管20を貫通させることが可能になる。なお、貫通部41を切込み42とする場合は、図7の(b)に示すように、切込み42の中心に小孔43を形成してもよい。
【0030】
図8は、鉄骨梁の配管挿通孔に挿通された配管に対して耐火充填材をはめ込む工程を示す斜視図である。
図7及び図8に示すように、耐火被覆材40は、その外側縁44(上端縁)と貫通部41との間を繋ぐ切込み45を有しており、この切込み45を開くことにより、配管20に対して下方から耐火被覆材40をはめ込むことができるようになっている。そして、鉄骨梁10の配管挿通孔14に配管20が挿通された状態で行われる本発明の耐火被覆処理において、耐火被覆材40は、切込み45に沿って下方から配管20にはめ込まれ、配管20が貫通部41に収まった状態で一対の耐火充填材30,30を被覆するように鉄骨梁10に対して固定される。
【0031】
なお、配管20に対して耐火被覆材40をはめ込む際に捲れ上がった切込み42の周囲は、耐火被覆材40の内側ではなく、耐火被覆材40の外側に延出させて、図1に示すように、配管20の外周に沿わせることが好ましい。このようにすると、切込み42の周囲の捲り上がった部分を利用して、配管20と耐火被覆材40の隙間を塞ぐことができる。
【0032】
以上のように構成された本実施形態の鉄骨梁10における配管挿通部の耐火被覆構造によれば、鉄骨梁10のウエブ12に形成した配管挿通孔14に配管20を挿通させ、その後、ウエブ12と配管20を、耐火充填材30,30と耐火被覆材40によって覆う場合の耐火被覆構造において、耐火充填材30,30は、配管20の貫通する貫通部32と、この貫通部32と該耐火充填材30,30の外側縁36の間を繋ぐ切込み37とを有し、ウエブ12の両側において切込み37に沿って配管20にはめ込まれ、配管20が貫通部32に収まった状態でウエブ12を両側から挟み込み、耐火被覆材40は、耐火充填材30,30の貫通部32と対応する位置に形成された配管20の貫通する貫通部41と、この貫通部41と該耐火被覆材40の外側縁44の間を繋ぐ切込み45とを有し、切込み45に沿って配管20にはめ込まれ、配管20が貫通部41に収まった状態で一対の耐火充填材30,30を被覆するので、鉄骨梁10の耐火被覆処理よりも先に配管工事が行なわれた場合であっても、鉄骨梁10の配管挿通部を容易に耐火被覆することができる。しかも、耐火充填材30,30及び耐火被覆材40は、配管20を基準として取付けられるので、配管20が配管挿通孔14の中心からずれた状態で挿通されていても、耐火被覆材40と配管20の間や耐火充填材30,30と配管20の間に隙間が生じることを回避し、耐火性能の低下も防止できる。
【0033】
以上、本発明の鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造について、実施形態を示して説明したが、本発明に係る鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0034】
例えば、耐火充填材や耐火被覆材の形成材料は、ロックウール以外であってもよい。また、耐火充填材の形状は、直方体に限定されず、任意の形状とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、H型鋼で構成される鉄骨梁における配管挿通部の耐火被覆構造に適用でき、特に、鉄骨梁のウエブに形成した配管挿通孔に配管を挿通させ、その後、ウエブと配管を、耐火充填材と耐火被覆材によって覆う場合の耐火被覆構造に好適である。
【符号の説明】
【0036】
10 鉄骨梁
11 フランジ
12 ウエブ
13 床パネル、
14 配管挿通孔
20 配管
30 耐火充填材
32 貫通部
33 貫通孔
34 切込み
35 小孔
36 外側縁
37 切込み
40 耐火被覆材
41 貫通部
42 切込み
43 小孔
44 外側縁
45 切込み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8