【解決手段】ステータ11の弁本体20側の面に弾性線材で形成された固定用ワイヤバネ1を設ける。固定用ワイヤバネ1は、ステータ11の下面の111 固定凸部111の溝111bと矩形凸部112の円弧溝112aに嵌合して固定する。ステータ11の円柱状の嵌挿孔11H内にキャン30を嵌め込み、固定用ワイヤバネ1の水平山形部1bをキャン30の凹部30aに嵌合させる。固定用ワイヤバネ1によりキャン30とステータ11の継鉄11cとを電気的に接地する。または、ステータに取り付けた固定用ワイヤバネを弁本体20の第1継手管21に係合する。
モータ部の駆動により作動する弁部材を内蔵した弁本体に対して前記モータ部のマグネットロータを収容した円筒形状のキャンを組み付けてなる弁装置と、前記モータ部を構成するとともに軸線を中心とする円柱形状の嵌挿孔を有するステータと、を備え、前記ステータの前記嵌挿孔に前記キャンを嵌め込むことで前記ステータが前記弁装置に装着された電動弁であって、
前記ステータに一部係合して該ステータに保持される弾性部材を備え、前記弾性部材に設けられた固定手段により、前記ステータが前記弁装置に固定されている
ことを特徴とする電動弁。
前記弾性部材が線材から構成されるとともに、前記ステータに前記嵌挿孔の周囲で前記軸線と同心の円弧溝が形成され、前記弾性部材の一部が前記円弧溝内に挿通されていることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
前記弾性部材の前記固定手段が、前記嵌挿孔側に突出して前記弁装置側の凹部に嵌合する水平山形部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電動弁。
前記係止用凸部が前記弁装置の側部に水平に突出した係止用突起部であり、前記クランプ部が前記係止用突起部に対して前記軸線回りに回動する方向で前記係止用突起部に係合するよう構成されたことを特徴とする請求項5に記載の電動弁。
前記係止用凸部が前記弁装置の側部に水平に突出した継手管であり、前記クランプ部が前記継手管に対して前記軸線方向に移動して前記継手管に係合するよう構成されたことを特徴とする請求項5に記載の電動弁。
前記係止用凸部が前記弁装置の側部に水平に突出した継手管であり、前記クランプ部が前記継手管に対して前記軸線回りに回動する方向で前記継手管に係合するよう構成されたことを特徴とする請求項5に記載の電動弁。
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、電動弁を室外機内に設置する際には、室外機内でステータを弁装置に取り付ける作業が必要となる。しかしながら、複雑に配管された室外機内はスペースが狭いため、作業がしにくいという問題がある。このため、弁装置に対してステータを容易に組み付けられる構造が要求される。
【0006】
本発明は、マグネットロータを収容するキャンを弁本体に組み付けた弁装置に対してステータを取り付けるようにした電動弁において、キャンの外周にステータを容易に組み付けられる電動弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の電動弁は、モータ部の駆動により作動する弁部材を内蔵した弁本体に対して前記モータ部のマグネットロータを収容した円筒形状のキャンを組み付けてなる弁装置と、前記モータ部を構成するとともに軸線を中心とする円柱形状の嵌挿孔を有するステータと、を備え、前記ステータの前記嵌挿孔に前記キャンを嵌め込むことで前記ステータが前記弁装置に装着された電動弁であって、前記ステータに一部係合して該ステータに保持される弾性部材を備え、前記弾性部材に設けられた固定手段により、前記ステータが前記弁装置に固定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の電動弁は、請求項1に記載の電動弁であって、前記弾性部材が、前記ステータの前記嵌挿孔の全周または略全周を囲う部材から構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の電動弁は、請求項2に記載の電動弁であって、前記弾性部材が線材から構成されるとともに、前記ステータに前記嵌挿孔の周囲で前記軸線と同心の円弧溝が形成され、前記弾性部材の一部が前記円弧溝内に挿通されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の電動弁は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電動弁であって、前記弾性部材の前記固定手段が、前記嵌挿孔側に突出して前記弁装置側の凹部に嵌合する水平山形部であることを特徴とする。
【0011】
請求項5の電動弁は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電動弁であって、前記弾性部材の前記固定手段が、前記弁装置側に設けられた係止用凸部に係合されたクランプ部であることを特徴とする。
【0012】
請求項6の電動弁は、請求項5に記載の電動弁であって、前記係止用凸部が前記弁装置の側部に水平に突出した係止用突起部であり、前記クランプ部が前記係止用突起部に対して前記軸線回りに回動する方向で前記係止用突起部に係合するよう構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項7の電動弁は、請求項5に記載の電動弁であって、前記係止用凸部が前記弁装置の側部に水平に突出した継手管であり、前記クランプ部が前記継手管に対して前記軸線方向に移動して前記継手管に係合するよう構成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項8の電動弁は、請求項5に記載の電動弁であって、前記係止用凸部が前記弁装置の側部に水平に突出した継手管であり、前記クランプ部が前記継手管に対して前記軸線回りに回動する方向で前記継手管に係合するよう構成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項9の電動弁は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電動弁であって、前記弾性部材により、前記弁装置と前記ステータの継鉄とが電気的に接地されていることを特徴とする。
【0016】
請求項10の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1乃至9の電動弁によれば、ステータに弾性部材が設けられ、この弾性部材の固定手段によりステータを弁装置に固定するので、キャンの外周にステータを容易に組み付けることができる。
【0018】
請求項2の電動弁によれば、弾性部材が嵌挿孔の全周または略全周を囲う部材から構成されているので、この弾性部材に設ける固定手段の位置を嵌挿孔の周囲で選択できるので、設計自由度が高まる。
【0019】
請求項3の電動弁によれば、線材からなる弾性部材が、嵌挿孔の周囲の円弧溝内に挿通されているので、弾性部材が弾性変形するときにその一部が円弧溝内で摺動可能となり、弾性変形を容易にできる。
【0020】
請求項4の電動弁によれば、嵌挿孔側に突出して弾性部材に設けられた水平山形部を弁装置側の凹部に嵌合するだけでステータを弁装置に固定できるので、キャンの外周にステータを容易に組み付けることができるとともに、弁装置に対するステータの軸線回りの位置決めを行うことができる。
【0021】
請求項5の電動弁によれば、弾性部材に設けられたクランプ部を弁装置側に設けられた係止用凸部に係合させるだけでステータを弁装置に固定できる。
【0022】
請求項6の電動弁によれば、弾性部材に設けられたクランプ部を弁装置側に設けられた係止用突起部に対して軸線回りに回動するようにして係合するだけでステータを弁装置に固定できるとともに、ステータの軸線回りの位置決めを行うことができる。。
【0023】
請求項7または請求項8の電動弁によれば 請求項5の効果に加えて、弁装置の継手管を利用してステータを弁装置に固定できるので、製造が容易になる。
【0024】
請求項9の電動弁によれば、請求項1乃至8の効果に加えて、ステータの継鉄と弁装置との間の電気的ノイズを防止することができる。
【0025】
請求項10の冷凍サイクルシステムによれば、請求項1乃至9と同様な効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の電動弁の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態の電動弁の側面図、
図2は第1実施形態におけるステータの底面を示す
図1のA−A矢視図、
図3は同ステータの底部断面を示す
図1のB−B矢視図、
図4は第1実施形態における固定用ワイヤバネの底面図及び側面図、
図5は第1実施形態の電動弁の縦断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1、
図2及び
図5の図面における上下に対応する。
【0028】
図5に示すように、この電動弁は、「弾性部材」としての固定用ワイヤバネ1と、「モータ部」としてのステッピングモータ10と、弁本体20と、非磁性体からなる円筒形状のキャン30とを備えている。ステッピングモータ10は、キャン30の外周に取り付けられた後述説明するステータ11と、キャン30の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ12とで構成されている。マグネットロータ12は、外周に着磁部材121を備えるとともに中央に雌ねじ部材122を備えている。なお、マグネットロータ12は円筒形状のキャン30の軸線Lと同軸にして回転可能となっている。
【0029】
弁本体20はステンレス等で略円筒形状に形成されており、その内側に弁室20Aを有している。弁本体20の外周片側には弁室20Aに導通される第1継手管21が接続されるとともに、下端から下方に延びる筒状部に第2継手管22が接続されている。また、第2継手管22の弁室20A側には弁座部材23が嵌合されている。弁座部材23には、その内側に弁室20Aに連通する弁ポート23aが形成されている。この弁ポート23aを介して弁室20Aと第2継手管22とが導通可能となっている。なお、第1継手管21及び第2継手管22は、弁本体20に対してろう付け等により固着されている。
【0030】
弁本体20の上端には、平板円環状の固定部材24を介してキャン30が溶接等によって気密に組み付けられ、これにより、弁本体20、キャン30及び固定部材24は「弁装置」を構成している。キャン30内において、弁本体20の弁ポート23aと反対側にはホルダ41と該ホルダ41に固定された雄ねじ部材42とが取り付けられている。雄ねじ部材42は外周に雄ねじ部42aを有している。また、ホルダ41及び雄ねじ部材42の中心にはガイド孔411,421が形成されており、このガイド孔411,421内に弁部材43のロッド部43aが挿通されている。弁部材43はステンレス等により形成され、弁室20A内に挿通される下端に円柱状の弁体43bを有している。そして、弁部材43はガイド孔411,421にガイドされて、軸線L方向に摺動可能となっている。また、ロッド部43aの最上部には、コイルばね44を受けるばね受け44aが取り付けられている。
【0031】
マグネットロータ12の雌ねじ部材122は、その雌ねじ部122aにて雄ねじ部材42の雄ねじ部42aに螺合されている。また、マグネットロータ12と前記ばね受け44aとの間にはコイルばね44が装着されており、このコイルばね44により、ばね受け44aと弁部材43とが弁ポート23a側に常時付勢されている。これにより、マグネットロータ12がキャン30内で回転可能に設けられている。マグネットロータ12の着磁部材121の外周面とキャン30の内周面との間には所定の隙間が設けられている。
【0032】
キャン30の天井部には、螺旋ガイド線体51と可動ストッパ部材52とからなる回転ストッパ機構50が設けられている。このストッパ機構50は、マグネットロータ12の回転に伴って突起部12aが可動ストッパ部材52を蹴り回すことにより、可動ストッパ部材52が螺旋ガイド線体51との螺合によって旋回しながら上下動する。そして、可動ストッパ部材52が、螺旋ガイド線体51の下端ストッパ51aに当接することによって、マグネットロータ12及び弁部材43の最下端位置での回転ストッパ作用が得られる。また、可動ストッパ部材52が、螺旋ガイド線体51の上端ストッパ51bに当接することによって、マグネットロータ12及び弁部材43の最上端位置での回転ストッパ作用が得られる。
【0033】
ステータ11は、一対のコイル部11A,11Bを軸線L方向に積層して構成され、各コイル部11A,11Bにおいて、樹脂製のボビン11aにコイル11bが巻装され、ボビン11aの外周には磁極歯11c1を持つ継鉄(ヨーク)11cが嵌合されている。継鉄11cは磁性体からなる。そして、継鉄11cの上下と外周は、モールド成形によりモールド樹脂110で被覆されている。
【0034】
ステータ11は、中央に軸線Lを中心とする円柱形状の嵌挿孔11Hを有しており、この嵌挿孔11Hの内周にはモールド樹脂110は形成されておらず、この内周面に継鉄11cの磁極歯11c1が配置されている。そして、この磁極歯11c1はキャン30の外周面に密着する。
【0035】
以上の構成により、ステッピングモータ10では、コイル11bへのパルス出力の印加によりコイル11bが磁力線を発生する。これにより、コイル部11A,11Bにおいて、磁極歯11c1に磁極(N、S極)が交互に変化し、マグネットロータ12の着磁部材121に対して磁気吸引力及び磁気反発力を発生し、マグネットロータ12が回転する。マグネットロータ12が回転すると、マグネットロータ12の雌ねじ部122aと雄ねじ部材42の雄ねじ部42aとのねじ送り機構により、マグネットロータ12と弁部材43が軸線L方向に上下動し、弁体43bが弁座部材23に対して離座/着座する。これにより、弁ポート23aの開口面積を増減し、第1継手管11から第2継手管12へ、あるいは第2継手管12から第1継手管11へ流れる冷媒の流量が制御される。
【0036】
ステータ11の弁本体20側の底面には、嵌挿孔11Hから所定距離の位置で同一円周上に、1個の固定凸部111と、軸線L及び嵌挿孔11Hと同心に湾曲した4個の矩形凸部112とが形成されている。この固定凸部111と矩形凸部112は、モールド成形によりモールド樹脂110の一部として形成されている。固定凸部111は嵌挿孔11H側(内側)に凸となる台形部111aを有し、この台形部11aの両側に溝111bを有している。また、矩形凸部112は、嵌挿孔11H側(内側)に開口する円弧溝112aを有している。円弧溝112は軸線L及び嵌挿孔11Hと同心の円周上にある。そして、この固定凸部111の溝111bと矩形凸部112の円弧溝112a内に固定用ワイヤバネ1が嵌め込まれることで、固定用ワイヤバネ1がステータ11の下面に取り付けられている。
【0037】
固定用ワイヤバネ1は、ステンレス等の弾性線材で形成されており、この固定用ワイヤバネ1は、ステータ11の嵌挿孔11Hの略全周を囲うような略円弧状の形状をしている。固定用ワイヤバネ1の両端部には半径方向外側に折り曲げられた曲げ部1a,1aを有しており、この曲げ部1a,1aから等距離の中央に位置する「固定手段」としての1つの水平山形部1bを有している。また、固定用ワイヤバネ1は、水平山形部1bと一方の曲げ部1aとの間と、水平山形部1bと他方の曲げ部1aとの間に、2つの傾斜山形部1c,1cを有している。水平山形部1bは軸線Lと直角な面内で当該固定用ワイヤバネ1の内側に突出するように形成されている。傾斜山形部1c,1cは当該固定用ワイヤバネ1の内側に突出するとともに、軸線L側に対して傾斜してステータ11側に突出するように形成されている。また、曲げ部1aと傾斜山形部1cとの間の部分と、水平山形部1bと傾斜山形部1cとの間の部分は、それぞれ円弧状の連結部1dとなっている。
【0038】
そして、固定用ワイヤバネ1は、水平山形部1bが固定凸部111の台形部111aに嵌合され、傾斜山形部1c,1cが固定凸部111と矩形凸部112との間に配置されている。また、曲げ部1a,1aが固定凸部111から遠い方の矩形凸部112,112の端面に係合されている。そして、連結部1dを、それぞれ矩形凸部112の円弧溝112a内に嵌合して挿通させることで、固定用ワイヤバネ1がステータ11に対して取り付けられている。以上のような構造により、固定用ワイヤバネ1は、特に連結部1dが円弧溝112a内で溝方向に摺動可能となっている。また、固定用ワイヤバネ1は、矩形凸部112の円弧溝112aに嵌合されることで、ステータ11に対する軸線L方向の位置が固定される。
【0039】
また、
図1及び
図2に示すように、固定用ワイヤバネ1の傾斜山形部1cの突端は、嵌挿孔11Hの周囲において、ステータ11の継鉄11cに圧接されており、これにより継鉄11cと固定用ワイヤバネ1が電気的に接地されている。
【0040】
固定用ワイヤバネ1が取り付けられたステータ11は、嵌挿孔11H内にキャン30を嵌め込み、弁本体20の上部でキャン30に取り付けられている。このとき、固定用ワイヤバネ1の水平山形部1bの突端がキャン30の下部外周に形成された凹部30a(
図5参照)内に嵌合し、この固定用ワイヤバネ1の(特に水平山形部1c)の弾性力により、固定用ワイヤバネ1及びステータ11がキャン30に固定される。さらに、固定用ワイヤバネ1とキャン30は、凹部30aと水平山形部1cに電気的に接地される。これにより、継鉄11cとキャン30との間の電気的ノイズを防止することができる。また、上記の取り付け時に、固定用ワイヤバネ1がキャン30の外周を軸線L方向に移動する際に、水平山形部1bが弾性力に抗して開くように弾性変形するが、この第1実施形態(及び後述の第2実施形態)では、連結部1dが矩形凸部112の円弧溝112a内で溝方向に摺動可能となているので、上記水平山形部1bの弾性変形が容易になる。
【0041】
図6は第2実施形態の電動弁の縦断面図である。以下、第2実施形態乃至第6実施形態において、第1実施形態と同様な要素には
図1乃至
図5と同符号を付記して重複する説明は適宜省略する。
【0042】
第1実施形態では弁本体20に対して平板円環状の固定部材24を介してキャン30を取り付けている。また、第1実施形態のキャン30は凹部30aを形成する箇所が嵌挿孔11Hの内径より径が大きくなっている。これは、凹部30aの箇所がキャン30の内側に出っ張る分、マグネットロータ12を内挿するときに干渉しないようにするためである。キャン30の凹部30aを形成する箇所のみを、マグネットロータ12を内挿するときに干渉しないだけ外側に打ち出すことで、キャン30の全周を広げないようにしてもよい。
【0043】
これに対して、この第2実施形態では、キャン30より長さが短く弁本体20側の端部も嵌挿孔11Hの内径に整合するようなストレートなキャン40を用いている。また、弁本体20に対して皿状の固定部材25を介してキャン40が溶接等によって気密に組み付けられている。これにより、弁本体20、キャン40及び固定部材25は「弁装置」を構成している。そして、固定部材25の外周に凹部25aが形成されており、固定用ワイヤバネ1の水平山形部1bの突端がこの凹部25a内に嵌合し、この固定用ワイヤバネ1の(特に水平山形部1c)の弾性力により、固定用ワイヤバネ1及びステータ11が固定部材25及びキャン40に固定されている。その他の構成、作用効果は第1実施形態と同じである。
【0044】
図7は第3実施形態の電動弁の側面図、
図8は第3実施形態におけるステータの上面を示す
図7のA−A矢視図、
図9は同ステータの上部断面を示す
図7のB−B矢視図、
図10は第3実施形態における固定用ワイヤバネの底面図及び側面図である。
【0045】
図7に示すように、この電動弁は、「弾性部材」としての固定用ワイヤバネ3と、前記同様にステッピングモータ10と、弁本体20と、非磁性体からなるキャン40とを備えている。ステッピングモータ10は、キャン40の外周に取り付けられたステータ11′と、キャン40の内部に回転可能に配設された図示しないマグネットロータとで構成されている。なお、この第3実施形態でも、第2実施形態と同様に、弁本体20、キャン40及び固定部材25は「弁装置」を構成しており、キャン40内のマグネットロータ等、その他の構造は第2実施形態と同様である。
【0046】
ステータ11′の弁本体20と反対側の上面には、嵌挿孔11Hから所定距離の位置で同一円周上に、1個の固定凸部111と、軸線L及び嵌挿孔11Hと同心に湾曲した4個の矩形凸部112とが形成されている。この固定凸部111と矩形凸部112は、ステータ11′の上面に形成されていること以外は第1実施形態と同形状であり、第1実施形態と同部号を付記する。すなわち、固定凸部111は台形部111aと溝111bを有し、矩形凸部112は円弧溝112aを有している。円弧溝112は軸線L及び嵌挿孔11Hと同心の円周上にあり、嵌挿孔11H側に開口している。また、この第3実施形態のステータ11′の上面部には、軸線Lを挟んで固定凸部111と対向する位置に2つの固定孔113,113が形成されている。
【0047】
固定用ワイヤバネ3は、ステンレス等の弾性線材で形成されており、この固定用ワイヤバネ3は、嵌挿孔11Hの略全周を囲うような略円弧状の形状をしている。固定用ワイヤバネ3の両端部には軸線L方向に折り曲げられた曲げ部3a,3aを有しており、この曲げ部3a,3aと対向する位置に「固定手段」としての1つの水平山形部3bを有している。また、固定用ワイヤバネ3は、水平山形部3bと一方の曲げ部3aとの間と、水平山形部3bと他方の曲げ部3aとの間に、2つの傾斜山形部3c,3cを有している。水平山形部3bは軸線Lと直角な面内で当該固定用ワイヤバネ3の内側に突出するように形成されている。傾斜山形部3c,3cは当該固定用ワイヤバネ3の内側に突出するとともに、軸線L側に対して傾斜してステータ11′側に突出するように形成されている。また、曲げ部3aと傾斜山形部3cとの間の部分と、水平山形部3bと傾斜山形部3cとの間の部分は、それぞれ連結部3dとなっている。
【0048】
そして、固定用ワイヤバネ3は、水平山形部3bが固定凸部111の台形部111aに嵌合され、傾斜山形部3c,3cが固定凸部111と矩形凸部112との間に配置されている。また、曲げ部3a,3aが固定孔113,113内に挿入されて係合されている。そして、連結部3dを、それぞれ矩形凸部112の円弧溝112a内に嵌合して挿通させることで、固定用ワイヤバネ3がステータ11′に対して取り付けられている。固定用ワイヤバネ3は、矩形凸部112の円弧溝112aに嵌合されることで、ステータ11′に対する軸線L方向の位置が固定される。
【0049】
また、
図7及び
図8に示すように、固定用ワイヤバネ3の傾斜山形部3cの突端は、嵌挿孔11Hの周囲において、ステータ11′の継鉄11cに圧接されており、これにより継鉄11cと固定用ワイヤバネ3が電気的に接地されている。
【0050】
固定用ワイヤバネ3が取り付けられたステータ11′が弁本体20の上部でキャン40に取り付けられたとき、
図10に一点鎖線で示すように、固定用ワイヤバネ3の水平山形部3bの突端がキャン40の上部外周に形成された凹部40b内に嵌合し、この固定用ワイヤバネ3の弾性力により、固定用ワイヤバネ3及びステータ11′がキャン40に固定される。さらに、固定用ワイヤバネ3とキャン40は、凹部40bと水平山形部3cにて電気的に接地される。これにより、継鉄11cとキャン40との間の電気的ノイズを防止することができる。
【0051】
図11は第4実施形態の電動弁の側面図、
図12は第4実施形態の電動弁の縦断面図である。
【0052】
この電動弁は、「弾性部材」としての固定用ワイヤバネ4と、「モータ部」としてのステッピングモータ10と、弁本体20′と、非磁性体からなるキャン30とを備えている。ステッピングモータ10は第1実施形態と同様にステータ11と図示しないマグネットロータとで構成されている。また、第1実施形態と同様に、弁本体20′、キャン30及び固定部材24は「弁装置」を構成している。そして、固定部材24の外周一箇所には「係止用凸部」としての係止用突起部26が設けられている。なお、この係止用突起部26は固定部材24とは別部材とし、これを固定部材24に溶接等により接合するようにしてもよい。
【0053】
ステータ11の弁本体20側の下面には、キャン30の回りに複数の凸部114が形成されており、この凸部114に固定用ワイヤバネ4が取り付けられている。この凸部114に対する固定用ワイヤバネ4の取り付け構造は前記各実施形態と同様に、凸部114に形成された溝内に嵌め込む構造である。
【0054】
固定用ワイヤバネ4は、ステンレス等の弾性線材で形成されており、この固定用ワイヤバネ4は、嵌挿孔11Hの全周を囲うような略円弧状の形状をしている。また、固定用ワイヤバネ4は、キャン30の回りの一箇所において両端部が重なる構造をなすクランプ部4aを有している。クランプ部4aは、水平な押さえバー4a1と、傾斜したスライドバー4a2と、矩形状曲げ部4a3とで構成されている。
【0055】
そして、固定用ワイヤバネ4が取り付けられたステータ11を弁本体20′の上部に取り付けるとき、
図11の矢印Pのようにステータ11の嵌挿孔11H内にキャン30を嵌め込み、ステータ11を矢印Qのように回し、クランプ部4aを係止用突起部26に係合する。このとき、係止用突起部26は、スライドバー4a2を下方に押し下げながら、このスライドバー4a2と矩形状曲げ部4a3との境界を乗り越える。そして、係止用突起部26は矩形状曲げ部4a3内に嵌合するとともに、押さえバー4a1が係止用突起部26の上面を押さえ付ける。これにより、固定用ワイヤバネ4及びステータ11が弁本体20′とキャン30に対して固定される。
【0056】
図13は第5実施形態の電動弁の側面図、
図14は第5実施形態の電動弁の正面図、
図15は第5実施形態におけるステータの上面を示す
図13のA−A矢視図、
図16は第5実施形態における固定用ワイヤバネの底面図及び側面図である。
【0057】
この第5実施形態と第1実施形態との異なるところは、「弾性部材」としての固定用ワイヤバネ5の構造と固定用ワイヤバネ5を弁本体20に固定する点であり、ステータ11、固定凸部111,矩形凸部112はに対する固定用ワイヤバネ5の取り付け構造等は第1実施形態と同様である。また、この第5実施形態の「弁装置」は第2実施形態と同様であり、弁本体20、キャン40及び固定部材25が「弁装置」を構成している。
【0058】
固定用ワイヤバネ5は、ステンレス等の弾性線材で形成されており、この固定用ワイヤバネ5は、嵌挿孔11Hの全周を囲うような略円弧状の形状をしている。また、固定用ワイヤバネ5は、固定部材25の回りの一箇所において両端部が重なる構造をなすクランプ部5aを有している。クランプ部5aは、傾斜したスライドバー5a1と、「係止用凸部」としての第1継手管21に整合する円弧状に曲げられた円弧部5a2と、傾斜したスライドバー5a3と、第1継手管21に整合する円弧状に曲げられた円弧部5a4とで構成されている。スライドバー5a1と円弧部5a2、スライドバー5a3と円弧部5a4は、それぞれ軸線L方向に延在されている。
【0059】
また、固定用ワイヤバネ5は、クランプ部5aから等距離の中央に位置する「固定手段」としての1つの水平山形部5bと、水平山形部5bとクランプ部5aとの間に2つの傾斜山形部5c,5cを有している。水平山形部5bは軸線Lと直角な面内で当該固定用ワイヤバネ5の内側に突出するように形成されている。傾斜山形部5c,5cは当該固定用ワイヤバネ5の内側に突出するとともに、軸線L側に対して傾斜してステータ11側に突出するように形成されている。また、クランプ部5aと傾斜山形部5cとの間の部分と、水平山形部5bと傾斜山形部5cとの間の部分は、それぞれ連結部5dとなっている。また、固定用ワイヤバネ5は、水平山形部5bが固定凸部111の台形部111aに嵌合され、傾斜山形部5c,5cが固定凸部111と矩形凸部112との間に配置されている。さらに、連結部5dを、それぞれ矩形凸部112の円弧溝112a内に嵌合して挿通させることで、固定用ワイヤバネ5がステータ11に対して取り付けられている。以上のような構造により、固定用ワイヤバネ1は、特に連結部5dが円弧溝112a内で溝方向に摺動可能となっている。
【0060】
そして、固定用ワイヤバネ5が取り付けられたステータ11を弁本体20の上部に取り付けるとき、
図14の矢印Pの方向にステータ11の嵌挿孔11H内にキャン30を嵌め込み、クランプ部5aを第1継手管21に係合する。このとき、第1継手21は。スライドバー5a1とスライドバー5a3を押し拡げながら、このスライドバー5a1,5a3と円弧部5a2,5a4との境界を乗り越える。そして、第1継手管21は円弧部5a2,5a4内に挟み込むように嵌合する。これにより、固定用ワイヤバネ5及びステータ11が、弁本体20、キャン40及び固定部材25からなる弁装置に対して固定される。
【0061】
また、
図13及び
図15に示すように、固定用ワイヤバネ5の傾斜山形部5cの突端は、嵌挿孔11Hの周囲において、ステータ11の継鉄11cに圧接されており、これにより継鉄11cと固定用ワイヤバネ5が電気的に接地されている。さらに、
図16に一点鎖線で示すように、固定用ワイヤバネ5の水平山形部5bの突端が固定部材25の外周に形成された凹部25a内に嵌合し、固定用ワイヤバネ5と固定部材25は、凹部25aと水平山形部5bにて電気的に接地される。これにより、継鉄11cとキャン30との間の電気的ノイズを防止することができる。また、上記の取り付け時に、固定用ワイヤバネ5が固定部材25の外周を軸線L方向に移動する際に、水平山形部5bが弾性力に抗して開くように弾性変形するが、この第5実施形態でも、連結部5dが矩形凸部112の円弧溝112a内で溝方向に摺動可能となているので、上記水平山形部5bの弾性変形が容易になる。
【0062】
図17は第6実施形態の電動弁の側面図、
図18は第6実施形態の電動弁の正面図、
図19は第6実施形態におけるステータの上面を示す
図17のA−A矢視図、
図20は第6実施形態における固定用ワイヤバネの底面図及び側面図である。
【0063】
この第6実施形態と第5実施形態との異なるところは、「弾性部材」としての固定用ワイヤバネ6の構造と固定用ワイヤバネ6を弁本体20に固定する点であり、ステータ11、固定凸部111,矩形凸部112はに対する固定用ワイヤバネ5の取り付け構造等は第5実施形態と同様である。
【0064】
固定用ワイヤバネ6は、ステンレス等の弾性線材で形成されており、この固定用ワイヤバネ6は、嵌挿孔11Hの全周を囲うような略円弧状の形状をしている。また、固定用ワイヤバネ6は、固定部材25の回りの一箇所において両端部が重なる構造をなすクランプ部6aを有している。クランプ部6aは、傾斜したスライドバー6a1と、第1継手管21に整合する円弧状に曲げられた円弧部6a2と、傾斜したスライドバー6a3と、第1継手管21に整合する円弧状に曲げられた円弧部6a4とで構成されている。スライドバー6a1と円弧部6a2は第1継手21の上側で、スライドバー6a3と円弧部6a4は第1継手21の下側で、それぞれ軸線Lと交差する方向に延在されている。
【0065】
また、固定用ワイヤバネ6は、クランプ部6aから等距離の中央に位置する「固定手段」としての1つの水平山形部6bと、水平山形部6bとクランプ部6aとの間に2つの傾斜山形部6c,6cを有している。水平山形部6bは軸線Lと直角な面内で当該固定用ワイヤバネ6の内側に突出するように形成されている。傾斜山形部6c,6cは当該固定用ワイヤバネ6の内側に突出するとともに、軸線L側に対して傾斜してステータ11側に突出するように形成されている。また、クランプ部6aと傾斜山形部6cとの間の部分と、水平山形部6bと傾斜山形部6cとの間の部分は、それぞれ連結部6dとなっている。また、固定用ワイヤバネ6は、水平山形部6bが固定凸部111の台形部111aに嵌合され、傾斜山形部6c,6cが固定凸部111と矩形凸部112との間に配置されている。さらに、連結部6dを、それぞれ矩形凸部112の円弧溝112a内に嵌合して挿通させることで、固定用ワイヤバネ6がステータ11に対して取り付けられている。以上のような構造により、固定用ワイヤバネ6は、特に連結部6dが円弧溝112a内で溝方向に摺動可能となっている。
【0066】
そして、固定用ワイヤバネ6が取り付けられたステータ11を弁本体20の上部に取り付けるとき、
図18の矢印Pの方向にステータ11の嵌挿孔11H内にキャン30を嵌め込み、ステータ11を矢印Qの方向に回転し、クランプ部6aを第1継手管21に係合する。このとき、第1継手21は。スライドバー6a1とスライドバー6a3を押し拡げながら、このスライドバー6a1,6a3と円弧部6a2,6a4との境界を乗り越える。そして、第1継手管21は円弧部6a2,6a4内に嵌合する。これにより、固定用ワイヤバネ6及びステータ11が、弁本体20、キャン40及び固定部材25からなる弁装置に対して固定される。
【0067】
また、
図17及び
図19に示すように、固定用ワイヤバネ6の傾斜山形部6cの突端は、嵌挿孔11Hの周囲において、ステータ11の継鉄11cに圧接されており、これにより継鉄11cと固定用ワイヤバネ6が電気的に接地されている。さらに、
図20に一点鎖線で示すように、固定用ワイヤバネ6の水平山形部6bの突端が固定部材25の外周に形成された凹部25a内に嵌合し、固定用ワイヤバネ6と固定部材25は、凹部25aと水平山形部6bにて電気的に接地される。これにより、継鉄11cとキャン30との間の電気的ノイズを防止することができる。また、上記の取り付け時に、固定用ワイヤバネ6が固定部材25の外周を軸線L方向に移動する際に、水平山形部6bが弾性力に抗して開くように弾性変形するが、この第6実施形態でも、連結部6dが矩形凸部112の円弧溝112a内で溝方向に摺動可能となているので、上記水平山形部6bの弾性変形が容易になる。
【0068】
以上の各実施形態において、回転ストッパ機構50で規定されるマグネットロータの下端位置を基準位置として、マグネットロータの磁極と、キャンの凹部と、固定用ワイヤバネの固定位置と、ステータの磁極歯の軸線L回りの位置は、それぞれ上記基準位置に対して予め設定されている。そして、固定用ワイヤバネにより、上記の設定された位置に固定されるようになっている。
【0069】
図21は実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。図において、符号100は膨張弁を構成する本発明の各実施形態の電動弁、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。電動弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、及び圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0070】
冷凍サイクルの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、図に実線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された冷媒液は電動弁100を介して室内熱交換器300に流入され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0071】
一方、暖房運転時には、図に破線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室内熱交換器300、電動弁100、室外熱交換器200、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外内熱交換器200が蒸発器として機能する。電動弁100は、冷房運転時に室外熱交換器200から流入する冷媒液、または暖房運転時に室内熱交換器300から流入する冷媒液を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。
【0072】
実施形態における「弁装置」は固定部材を含んでいるが、弁装置は、固定部材がなく、キャンを弁本体に直接接合した構造のものでもよい。例えば、
図5において、固定部材24を無くし、キャン30の下端を弁本体20の上端外周に溶接等によって固定した構造でもよい。また、
図6において、固定部材25を無くし、キャン40の下部を延長してその下端を弁本体20の上端外周に溶接等によって固定した構造でもよい。さらに、
図6において、弁本体20に代えて固定部材25を下方に延長し、この円筒状の部材を「弁本体」とし、その「弁本体」に第1継手21、第2継手22及び弁座部材23を組み付けたような構造でもよい。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。