【解決手段】インシュレータは、内側部材と外側部材とにゴム弾性体が結合するストラットマウントの外側部材と軸受との間に介在する。インシュレータの円筒状の円筒部が外側部材に被さり、円盤状のフランジ部が、円筒部の第1端部から径方向の外側へ突出する。フランジ部および円筒部はゴム状弾性体の一体成形品なので、インシュレータの体積を小さくできる。よって、インシュレータを軽量化できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述した従来の技術では、軸受を受けるインシュレータはストラットマウントのゴム弾性体との一体成形品なので、インシュレータの体積が増え、インシュレータの質量が増加するという問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、軽量化できるインシュレータを提供することを目的としている。
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載のインシュレータによれば、内側部材と外側部材とにゴム弾性体が結合するストラットマウントの外側部材と軸受との間に介在する。円筒状の円筒部が外側部材に被さり、円盤状のフランジ部が、円筒部の第1端部から径方向の外側へ突出する。フランジ部および円筒部はゴム状弾性体の一体成形品なので、インシュレータの体積を小さくできる。よって、インシュレータを軽量化できる効果がある。
【0007】
請求項2記載のインシュレータによれば、ゴム状弾性体は自己潤滑性を有する。よって、請求項1の効果に加え、軸受がインシュレータに擦れて生じる異音を抑制できる効果がある。
【0008】
請求項3記載のインシュレータによれば、円筒部は、円筒部の周方向に間隔をあけて複数の突部が設けられる。複数の突部は、円筒部の内周面から径方向の内側へ突出し、円筒部の軸方向に沿って延びるので、円筒部を外側部材に被せ易くすることができると共に、突部によって締め代を確保できる。よって、請求項1又は2の効果に加え、外側部材へ円筒部を取り付け易くしつつ、外側部材から円筒部を外れ難くできる効果がある。
【0009】
請求項4記載のインシュレータによれば、突部は円筒部の第1端部の反対側の第2端部から軸方向へ突出するので、外側部材から突部に第1端部の方向の圧縮力を入力し易くできる。その反力によって円筒部はフランジ部側へ付勢されるので、請求項3記載の効果に加え、外側部材から円筒部を外れ難くできる効果がある。
【0010】
請求項5記載のインシュレータによれば、円筒部とフランジ部との境界の外周面に、周方向に延びる溝が形成されている。外側部材の形状に応じてフランジ部の付け根を変形させ易くできるので、第2端部の方向の圧縮力を円筒部に入力させ難くできる。よって、請求項1から4のいずれかの効果に加え、外側部材から円筒部を外れ難くできる効果がある。
【0011】
請求項6記載のインシュレータによれば、フランジ部は円筒部の反対側へ凸起部が凸起する。凸起部を外側部材に係合させてフランジ部を外側部材に固定できるので、請求項1から5のいずれかの効果に加え、外側部材からインシュレータを外れ難くできる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施の形態におけるインシュレータ50が装着されるストラットマウント10の平面図であり、
図2は
図1のII−II線におけるストラットマウント10の断面図である。ストラットマウント10は、サスペンションストラットを自動車の車体に連結するためのマウントとして使用される。
図1及び
図2に示すようにストラットマウント10は、内側部材11、ゴム弾性体13及び外側部材20を備えている。
【0014】
内側部材11は、軸線Oに沿って形成される穴部12が中央を貫通する円板状の部材である。ショックアブソーバのピストンロッド40が穴部12に取り付けられる。内側部材11の軸線Oはピストンロッド40の軸と一致する。内側部材11の外周と間隔をあけて内側部材11を囲む中間筒14が配置される。中間筒14は円筒状の部材であり、内側部材11と同軸状に配置される。中間筒14の軸線O方向の長さは、内側部材11の軸線O方向の長さより長い。内側部材11は、中間筒14の軸線O方向の中央に配置される。
【0015】
内側部材11の上面、下面および外周面と中間筒14の内周とを円筒状のゴム弾性体13が連結する。ゴム弾性体13は中間筒14の軸線O方向の両側に突出する。ゴム弾性体13は、内側部材11及び中間筒14に加硫接合されている。
【0016】
外側部材20は、中間筒14を保持しゴム弾性体13を介して内側部材11を弾性支持する。外側部材20は、円筒状に形成される外筒部21と、外筒部21の軸方向の第1端部(
図2下側)に連接される底部23と、外筒部21の軸方向の第2端部(
図2上側)に連接される鍔部25とを備えている。
【0017】
外筒部21は中間筒14が圧入される部位である。外筒部21は、周の一部に拡径部22(外筒部21の一部)が形成されている。拡径部22は、円筒の側面を軸線Oに対して斜めに切断した形状をしており、中間筒14の外径よりも大きな内径をもつ。底部23は外筒部21の底を構成する部位であり、穴部24が中央を貫通する。底部23はゴム弾性体13の下端部を軸線O方向へ押し付ける。ゴム弾性体13は、底部23と内側部材11との間で軸線O方向に圧縮される。内側部材11に取り付けられるピストンロッド40は穴部24を挿通する。
【0018】
鍔部25は、外筒部21の径方向の外側へ張り出す部位であり、平面視における形状は略三角形である。本実施の形態では、鍔部25は軸線Oに対し傾いて配置されている。鍔部25は、厚さ方向に貫通する穴部26が、周方向に間隔をあけて3か所に形成されている。外側部材20は、上面に上部材30が取り付けられている。
【0019】
上部材30は、平面視が略三角形の形状をした部材であり、円筒状に形成される外筒部31と、外筒部31の軸方向の第1端部(
図2上側)に連接される頂部32と、外筒部31の軸方向の第2端部(
図2下側)に連接される鍔部34とを備えている。
【0020】
外筒部31は、中間筒14の外径よりも大きな内径をもつ部位であり、円筒の側面を軸線Oに対して斜めに切断した形状をしている。頂部32は、外筒部31の底を構成する部位であり、穴部33が中央を貫通する。頂部32はゴム弾性体13の上端部を軸線O方向へ押し付ける。ゴム弾性体13は、頂部32と内側部材11との間で軸線O方向に圧縮されると共に、頂部32と底部23との間で軸線O方向に圧縮される。ピストンロッド40を内側部材11に固定するためのナットを締結する工具(図示せず)は、穴部33を挿通する。
【0021】
鍔部34は、外筒部31の径方向の外側へ張り出す部位であり、平面視における形状は略三角形である。本実施の形態では、鍔部34は外側部材20の鍔部25と重なり合うように軸線Oに対し傾いて配置されている。鍔部34はプロジェクション溶接によって外側部材20の鍔部25と接合されている。鍔部34は、厚さ方向に貫通する穴部35が、周方向に間隔をあけて3か所に形成されている。鍔部34の穴部35の位置は、外側部材20の鍔部25の穴部26の位置と対応するので、穴部26,35にボルト36を挿通させることができる。ボルト36により、外側部材20及び上部材30は車体(図示せず)に固定される。
【0022】
上部材30の鍔部34及び外側部材20の鍔部25は、厚さ方向に貫通する穴部(図示せず)が、ボルト36が挿通される穴部26,35と異なる位置(本実施の形態では2か所)に形成されている。インシュレータ50(後述する)の凸起部58(
図1参照)を嵌めるためである。
【0023】
ストラットマウント10の製造方法は以下の通りである。まず、内側部材11及び中間筒14を加硫金型(図示せず)にセットした後、キャビティにゴム状弾性体を充填し、加圧・加熱して内側部材11及び中間筒14にゴム弾性体13を加硫接合する。次に、中間筒14を外側部材20に嵌め、外側部材20に上部材30を接合して、ストラットマウント10が得られる。
【0024】
ゴム弾性体13の大きさを、外側部材20と上部材30とに囲まれた空間に収容される大きさにできるので、内側部材11及び外側部材20を加硫金型(図示せず)にセットしてゴム弾性体を成形する場合に比べて、加硫金型による製品の取り数を増やすことができる。よって、製品のコストを削減できる。
【0025】
ゴム弾性体13は、外側部材20と上部材30とに囲まれた空間に収容される大きさなので、ゴム弾性体13の体積および質量を小さくできる。ゴム弾性体13の質量を小さくできる分だけ、ストラットマウント10を軽量化できる。
【0026】
ゴム弾性体13は上下から上部材30及び外側部材20に挟まれることで、軸線O方向に圧縮される。軸線O方向(上下方向)はゴム弾性体13のせん断方向なので、ストラットマウント10は、軸線O方向の荷重に対して比較的軟らかいばね特性が得られる。軸線Oと交差する方向(前後方向・左右方向)はゴム弾性体13の圧縮方向なので、ストラットマウント10は、軸線Oと交差する方向の荷重に対するばねを硬くできる。
【0027】
外側部材20の下面にインシュレータ50が取り付けられる。インシュレータ50の外周に円環状の軸受(ベアリング)41が取り付けられる。軸受41の下面にアッパシート42が配置される。アッパシート42は、ショックアブソーバに取り付けられたロアシート(図示せず)との間にコイルスプリング43を保持する部材である。アッパシート42は、コイルスプリング43の弾性復元力によって軸受41に押し付けられる。軸受41は、転舵に伴ってサスペンションストラット(ショックアブソーバ及びコイルスプリング43等)を回転させるためや、コイルスプリング43の伸縮時にコイルスプリング43の上下端の間に生じるねじれを吸収するために設けられる。
【0028】
図3及び
図4を参照してインシュレータ50について説明する。
図3はインシュレータ50の平面図であり、
図4は
図3のIV−IV線におけるインシュレータ50の断面図である。
図3及び
図4に示すようにインシュレータ50は、軸線O方向に延びる円筒状の円筒部51と、円筒部51の第1端部(
図4上側)から径方向の外側へ突出する円板状のフランジ部56とを備えている。インシュレータ50はゴム状弾性体の一体成形品である。
【0029】
インシュレータ50に軸受41(
図2参照)が取り付けられた状態では、円筒部51は軸受41から径方向の入力を受け、フランジ部56は軸受41から軸線O方向の入力を受ける。インシュレータ50は、軸受41の振動や衝撃が車体(図示せず)に直接伝わるのを防ぐための部材である。
【0030】
インシュレータ50は外側部材20の下面に取り付けられる一体成形品なので、インシュレータ50をゴム弾性体13と一体成形する場合に比べて、ゴム弾性体13とインシュレータ50とを接続するゴム部分を省略できる。そのゴム部分を省略できる分だけ、インシュレータ50の体積を小さくできる。よって、インシュレータ50を軽量化できる。
【0031】
なお、合成樹脂製の軸受41を採用して軸受41自体を軽量化することにより、サスペンションストラットの上部に取り付けられる部品(ストラットマウント10及び周辺部品)の軽量化を図ることができる。
【0032】
また、インシュレータ50を外側部材20に加硫接合する場合には、外側部材20を加硫金型(図示せず)にセットしてキャビティにゴム状弾性体を充填する必要がある。これに対し、インシュレータ50は外側部材20に加硫接合されていないので、加硫金型に外側部材20をセットするスペースを不要にできる。その結果、加硫金型による製品(インシュレータ50)の取り数を増やすことができるので、製品のコストを削減できる。
【0033】
本実施の形態では、インシュレータ50を構成するゴム状弾性体は自己潤滑性を有している。自己潤滑性を有するゴム状弾性体は、脂肪酸アミド等の潤滑剤がゴム状弾性体の表面にブリードして、表面の摩擦係数を低減して潤滑性を発揮するものが用いられる。インシュレータ50が自己潤滑性を有するゴム状弾性体で形成されているので、インシュレータ50の外周に取り付けられた軸受41(
図2参照)がインシュレータ50に擦れて生じる異音を抑制できる。
【0034】
円筒部51は、外側部材20の外筒部21に被さる部分であり、外筒部21の一部の拡径部22を覆う第1部52と、外筒部21のうち拡径部22以外の部分(拡径部22よりも第2端部(
図4下側)側の部分)を覆う第2部53とを備えている。円筒部51のうち第2部53の内周面54に複数の突部55が形成されている。突部55は、円筒部51の周方向に間隔をあけて内周面54の全周に設けられると共に、内周面54から径方向の内側へ突出する。突部55は円筒部51の軸線O方向に沿って延びている。突部55が設けられているので、円筒部51は外筒部21の締め代を確保できる。よって、インシュレータ50を外側部材20から外れ難くできる。
【0035】
突部55は円筒部51の軸線O方向に沿って延びるので、外側部材20の外筒部21を軸線Oに沿って滑らせ易くできる。よって、円筒部51に外筒部21を嵌め易くできる。また、円筒部51の突部55間の部分を周方向に伸ばし易くできるので、その周方向の反力によって、外筒部21に被さる円筒部51を外筒部21に締め付けて固定できる。突部55は円筒部51の周方向に間隔をあけて内周面54の全周に設けられているので、軸線Oを中心に回転する力を軸受41が円筒部51に加えても、円筒部51を周方向にずれ難くできる。
【0036】
突部55は、円筒部51(第2部53)の第2端部(
図4下側)からフランジ部56と反対側の軸線O方向へ突出する。そのため、突部55が外筒部21に押し付けられた状態では、外筒部21から突部55に第1端部の方向(
図4上側)の圧縮力を入力し易くできる。その反力によって突部55は円筒部51をフランジ部56側へ付勢するので、外筒部21から円筒部51を外れ難くできる。
【0037】
円筒部51は径方向の厚さが適度にあるゴム状弾性体なので、軸受41(
図2参照)をストラットマウント10に組み付けるときの軸受41の軸とストラットマウント10の軸線Oとの位置ずれ等に起因する組付け誤差を、円筒部51の弾性変形によって吸収できる。よって、軸受41の組付け作業性を確保できる。
【0038】
また、第2部53(円筒部51)の外周面53aは、フランジ部56に近づくにつれて拡径する傾斜面である。軸線Oを含む断面(
図4)において、外周面53aは軸線Oに対して傾斜している。外周面53aがフランジ部56に近づくにつれて拡径するので、円筒部51の外周に軸受41を組み付け易くできると共に、軸受41の組付け誤差を吸収し易くできる。
【0039】
インシュレータ50は、円筒部51とフランジ部56との境界の外周面に、周方向に延びる溝57が形成されている。本実施の形態では、溝57は、円筒部51とフランジ部56との境界のフランジ部56の下面に形成されている。溝57が形成されているので、外側部材20の形状に応じてフランジ部56の付け根を変形させ易くできる。その結果、フランジ部56と反対側の第2端部の方向(
図4下側)の圧縮力を円筒部51に入力させ難くできる。よって、外筒部21から円筒部51を外れ難くできる。
【0040】
なお、円筒部51に溝57が形成される場合には、軸受41から入力された円筒部51の溝57の近傍に集中して引張応力が生じ、円筒部51が疲労し易くなる可能性がある。本実施の形態におけるインシュレータ50は、主に圧縮応力が生じるフランジ部56に溝57が形成されるので、インシュレータ50の疲労を抑制しつつ、外筒部21から円筒部51を外れ難くできる。
【0041】
フランジ部56は、円筒部51の反対側へ凸起部58が凸起する。凸起部58は、上部材30(
図2参照)の鍔部34及び外側部材20の鍔部25に形成された穴部(図示せず)に挿入される部位である。本実施の形態では、凸起部58はフランジ部56の2か所に周方向に間隔をあけて設けられている。凸起部58は、円柱状の軸部59と、軸部59の先端に円錐台状に形成される頭部60とを備えている。頭部60の先端(軸部59から遠い側)は、外径が軸部59の外径と同じであり、頭部60の後端(軸部59に近い側)は、外径が軸部59の外径よりも大きい。軸部59の軸方向の長さは、鍔部25,34の板厚(穴部の長さ)と略等しく、軸部59の外径は穴部(図示せず)の内径よりも少し小さい。
【0042】
外側部材20(
図2参照)にインシュレータ50を組み付けるときに、外側部材20の外筒部21の外周に円筒部51を取り付け、フランジ部56を鍔部25に当てた状態で凸起部58を穴部(図示せず)に通すと、凸起部58を外側部材20に係合させてフランジ部56を外側部材20に固定できる。これにより、外側部材20からインシュレータ50を外れ難くできる。また、凸起部58を外側部材20に係合させることにより、軸線Oを中心に回転する力を軸受41が円筒部51に加えても、円筒部51を周方向にずれ難くできる。
【0043】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、ストラットマウント10の内側部材11、ゴム弾性体13及び外側部材20の形状や大きさ等は適宜設定できる。
【0044】
上記実施の形態では、ストラット式サスペンションとして、ショックアブソーバの外側にコイルスプリング43を取り付けたものを説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ショックアブソーバやコイルスプリング43に代えて、エアサスペンションや油圧サスペンション、或いはリニアモータ等を用いてサスペンションストロークを制御するようなストラット式サスペンションにインシュレータ50を適用することは当然可能である。
【0045】
上記実施の形態では、軸受41の一例としてベアリング(転がり軸受)の場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。軸受41として、合成樹脂製などの滑り軸受を採用できることは当然である。