【解決手段】軸方向の第1端部および第2端部を有する筒部材と、内周面が筒部材の外周面と所定間隔をあけて配置される筒状の質量体と、質量体の内周面から突出して先端が筒部材の外周面と対向する、質量体と一体成形された突出部と、質量体の内周面および突出部と筒部材の外周面とを連結するゴム状弾性体から構成される弾性連結部と、筒部材に挿入されて筒部材の第2端部を相手側部材に締結する締結部材と、第1端部において筒部材の軸直方向外側へ張り出す張出部とを備え、張出部よりも第2端部側に突出部が位置し、筒部材に対して質量体を筒部材の軸心周りに相対回転させたいずれの位置においても張出部と突出部とが筒部材の軸方向に重なる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本発明の第1実施の形態におけるダイナミックダンパ1について説明する。
図1は本発明の第1実施の形態におけるダイナミックダンパ1の断面図である。
【0013】
図1に示すように、ダイナミックダンパ1は、自動車等の車両や産業機械等におけるエンジン等の振動や走行時(作動時)に生じる共振等の有害振動を抑制するための装置である。ダイナミックダンパ1は、振動する相手側部材2に取り付けられる。相手側部材2は、例えば、エンジンマウントのブラケットであり、板状の部材である。
【0014】
ダイナミックダンパ1は、筒部材10と、内周面21が筒部材10の外周面13と所定間隔をあけて配置される筒状の質量体20と、質量体20の内周面21から突出する突出部30と、質量体20及び突出部30と筒部材10とを連結する弾性連結部40と、筒部材10を相手側部材2に締結する締結部材50と、を備える。
【0015】
筒部材10は、軸心Aを中心とした円筒状の金属製の部材である。筒部材10は、軸方向の第1端部11及び第2端部12を備える。質量体20は、筒部材10を同軸状に取り囲む肉厚の円筒状の金属製の部材である。質量体20の軸心と筒部材10の軸心Aとが同一である。
【0016】
突出部30は、質量体20との一体成形品であり、質量体20の内周面21の軸方向中央から筒部材10の外周面13へ向かって突出する。突出部30は、周方向に連続して設けられる環状の部位である。突出部30の内周面は、先端面31と、傾斜面32とを備える。
【0017】
先端面31は、質量体20から最も離れた突出部30の先端を構成する面であり、筒部材10の外周面13と対向する。先端面31は、軸心Aを含む断面において軸心A(筒部材10の外周面13)と平行に形成される。傾斜面32は、質量体20の内周面21に連なる部位であり、軸方向外側から先端面31へ向かうにつれて筒部材10の外周面13へ近づくように傾斜する。
【0018】
弾性連結部40は、ゴム状弾性体から構成される部材である。弾性連結部40は、質量体20の内周面21と筒部材10の外周面13との間に設けられ、質量体20の内周面21及び突出部30と筒部材10の外周面13とに加硫接着される。
【0019】
弾性連結部40には、軸方向両端側から突出部30へ向かって凹む凹部41,42がそれぞれ形成される。この凹部41,42の深さ(軸方向寸法)を調整することで、弾性連結部40のばね定数を調整できる。
【0020】
弾性連結部40との一体成形品である弾性膜43で質量体20の外周面および軸方向両端面が覆われる。質量体20を弾性膜43で覆うことで、質量体20が振動して相手側部材2等に衝突したときの衝撃音を低減できる。
【0021】
弾性膜43で覆われた質量体20の軸方向寸法は、筒部材10の軸方向寸法よりも小さく設定される。これにより、相手側部材2に筒部材10を取り付け、質量体20が筒部材10に対して軸直方向に振動するとき等、弾性膜43と相手側部材2や締結部材50との接触を抑制できる。これにより、その接触に起因して質量体20の振動が妨げられることを抑制できる。
【0022】
締結部材50は、フランジボルト51と、ナット55とを備える。フランジボルト51は、軸方向視において六角形状の頭部52と、頭部52の軸方向一端側に設けられる円板状のフランジ53と、頭部52との間にフランジ53を挟んでフランジ53から軸方向に突出する軸部54とを備える。フランジ53は、頭部52よりも軸直方向外側へ所定量張り出す部位であり、筒部材10の第1端部11において筒部材10の外周面13よりも軸直方向外側へ張り出す。
【0023】
筒部材10を相手側部材2に取り付けるには、まず、筒部材10の第1端部11側から筒部材10に軸部54を挿入して、第2端部12側から出た軸部54を、相手側部材2を板厚方向に貫通する貫通孔2aに挿入する。この相手側部材2の貫通孔2aに挿入された軸部54にナット55を取り付けることによって、相手側部材2とフランジ53とで筒部材10が軸方向に挟まれ、締結部材50により筒部材10が相手側部材2に締結される。
【0024】
次に
図1に加え
図2(a)を参照して、突出部30とフランジ53との関係について説明する。
図2(a)は質量体20及び突出部30の側面図である。
図2(a)には、フランジ53の外形線が二点鎖線で図示される。
【0025】
図1及び
図2(a)に示すように、フランジ53の外径が突出部30の内径よりも大きく設定されるので、フランジ53の一部と突出部30の一部とが全周に亘って軸方向に重なる。さらに、フランジ53よりも第2端部12側に突出部30が位置するので、弾性連結部40の破断等によって筒部材10から質量体20が脱落することを防止できる。
【0026】
なお、質量体20の内周面21から突出部30が突出していない場合、弾性連結部40の破断等による質量体20の脱落を防止するには、質量体20の内径よりもフランジボルト51のフランジ53の外径を大きくする必要がある。しかし、所望のダイナミックダンパ1の固有振動数を得るために、筒部材10の外周面13と質量体20の内周面21との間(弾性連結部40)の軸直方向寸法を決定したとき、JIS等により規格されたフランジボルト51では、質量体20の内径よりもフランジ53の外径が小さくなることがあり、規格外のフランジボルト51を特注して用いる必要がある。
【0027】
これに対して第1実施の形態では、質量体20の内周面21から突出部30が突出し、内周面21からの突出部30の突出量を調整することで、JIS等により規格されたフランジボルト51のフランジ53と突出部30とを軸方向に重ねることができる。よって、JIS等により規格されたフランジボルト51を用いることができるので、規格外のフランジボルト51を用いる場合に比べてフランジボルト51にかかるコストを低減できる。
【0028】
また、質量体20の内周面21から突出部30が突出し、質量体20の脱落を防止するために突出部30とフランジ53とを軸方向に重ねるので、フランジ53の外径とは無関係に質量体20の内径を設定できる。これにより質量体20の内径の自由度を向上できるので、質量体20の内周面21と筒部材10の外周面13との間の軸直方向寸法の自由度を向上でき、その軸直方向寸法に依存するダイナミックダンパ1の固有振動数を調整し易くできる。
【0029】
次に、
図3(a)及び
図3(b)を参照して、質量体20及び突出部30の製造方法について説明する。
図3(a)は切削加工前の質量体20及び突出部30の断面図であり、
図3(b)は切削加工後の質量体20及び突出部30の断面図である。
【0030】
質量体20及び突出部30を製造するには、まず、
図3(a)に示す質量体20及び突出部30を鋳造する。その後、質量体20から最も離れた突出部30の先端を、軸心Aと平行な切削仮想線Cに沿って切削加工して、
図3(b)に示すように、突出部30の先端面31を形成する。そのため、先端面31には切削痕が形成される。
【0031】
再び
図1を参照しながらダイナミックダンパ1の製造方法について説明する。まず、筒部材10の外周面13と、質量体20及び突出部30の表面に加硫接着用の接着剤を塗布する。次いで、接着剤を塗布した筒部材10と質量体20及び突出部30とを金型(図示せず)の所定位置に配置する。その金型内のキャビティに、弾性連結部40及び弾性膜43の原料となる未加硫ゴムを充填させる。その後、未加硫ゴムを加硫し、加硫成形品を金型から取り外すことで、弾性連結部40が加硫成形されると同時に、筒部材10の外周面13、質量体20の内周面21及び突出部30が弾性連結部40と加硫接着され、ダイナミックダンパ1が製造される。
【0032】
以上の通り第1実施の形態におけるダイナミックダンパ1によれば、ダイナミックダンパ1が取り付けられた相手側部材2の振動のうち、ダイナミックダンパ1の固有振動数に応じた振動を抑制できる。このダイナミックダンパ1の固有振動数は、質量体20の質量と、弾性連結部40のばね定数とにより決定される。ここで、質量体20の内周面21から突出部30が突出していない場合には、質量体20の内周面21と筒部材10の外周面13との間の軸直方向寸法に基づく、弾性連結部40の軸直方向寸法によって弾性連結部40のばね定数が決定される。そのため、弾性連結部40のばね定数を調整するために、質量体20の内径や筒部材10の外径を調整する必要があり、ダイナミックダンパ1の固有振動数を調整し難い。
【0033】
これに対し、第1実施の形態では、質量体20の内周面21から突出部30が突出しているので、弾性連結部40のばね定数は、突出部30の先端面31と筒部材10の外周面13との間の軸直方向寸法に大きく依存する。質量体20の内径や筒部材10の外径を調整するのに比べ、質量体20の内周面21から突出部30の先端面31までの突出部30の突出量を調整する方が弾性連結部40のばね定数の調整を容易にできる。従って、フランジ53との軸方向の重なりにより質量体20の脱落を防止する突出部30によって、ダイナミックダンパ1の固有振動数を調整し易くできる。
【0034】
さらに、鋳造された突出部30の先端を切削加工して先端面31を形成するので、切削仮想線Cの位置を調整することで、突出部30の突出量を調整し易くできる。また、鋳物である質量体20及び突出部30の表面は、ざらつきが大きいので、筒部材10の外周面13と質量体20の内周面21及び突出部30との軸直方向寸法は、ばらつきが大きくなる。
【0035】
しかし、切削加工によって先端面31を滑らかにできるので、先端面31と筒部材10の外周面13との間の軸直方向寸法を所望の値に調整し易くできる。突出部30の先端面31と筒部材10の外周面13との間の軸直方向寸法に弾性連結部40のばね定数が大きく依存するので、その軸直方向寸法を所望の値に調整し易くすることによって、ダイナミックダンパ1の固有振動数のばらつきを抑制し易くできる。
【0036】
特に、第1実施の形態では、筒部材10の外周面13と先端面31とが平行になるように先端面31を切削加工によって形成するので、先端面31と筒部材10の外周面13との間の軸直方向寸法を軸方向に亘って均一に近づけることができる。その軸直方向寸法を軸方向に亘って均一に近づけることによって、ダイナミックダンパ1の固有振動数のばらつきをより抑制し易くできる。
【0037】
また、上述した通り突出部30がない場合には、内周面21と外周面13との間の軸直方向寸法により弾性連結部40のばね定数が決定されるので、ダイナミックダンパ1の固有振動数のばらつき(弾性連結部40のばね定数のばらつき)を抑制するには、鋳物である質量体20の内周面21を全面、切削加工して滑らかにする必要がある。
【0038】
これに対し第1実施の形態では、先端面31と外周面13との間の軸直方向寸法に弾性連結部40のばね定数が大きく依存するので、先端面31のみを切削加工によって滑らかにし、質量体20の内周面21を切削加工しなくても、ダイナミックダンパ1の固有振動数のばらつきを十分に抑制できる。よって、突出部30を設けることで、ダイナミックダンパ1の固有振動数のばらつきを抑制するための切削量を少なくできる。
【0039】
軸心Aを含むダイナミックダンパ1の断面において、質量体20の内周面に連なる傾斜面32によって、質量体20の内周面21と突出部30との隅の角度を緩やかにできる。内周面21と突出部30との隅の角度が90度に近い程、質量体20及び突出部30と弾性連結部40とを加硫接着するための接着剤が表面張力によって、内周面21と突出部30との隅に溜まり易い。この接着剤の溜まりに起因して質量体20及び突出部30と弾性連結部40との接着不良が起こり易くなる。
【0040】
これに対し第1実施の形態では、傾斜面32によって内周面21と突出部30との隅の角度を緩やかにできるので、その隅に加硫接着用の接着剤を溜まり難くできる。その結果、接着剤の溜まりに起因する質量体20及び突出部30と弾性連結部40との接着不良を抑制できる。
【0041】
質量体20の内周面21の軸方向中央から突出部30が突出するので、突出部30と筒部材10との間、即ち、軸方向中央の弾性連結部40のばね定数が、その軸方向外側のばね定数よりも大きい。そのため、筒部材10に対して質量体20をこじり方向に振動させ易くできる。
【0042】
図2(a)に示すように、突出部30が周方向に連続して設けられる場合に限らず、
図2(b)に示すように、質量体20の内周面21の周方向の一部に突出部35を設けることも可能である。2つの突出部35が軸心Aに対して対称に配置される。
【0043】
軸方向から見たフランジ53の外形が円形であり、フランジ53の外径よりも2つの突出部35間の距離が小さく設定されるので、フランジ53や筒部材10に対して質量体20を軸心A周りに相対回転させたいずれの位置においてもフランジ53と突出部35とが軸方向に重なる。これにより、弾性連結部40の破断等によって筒部材10から質量体20が脱落することを防止できる。
【0044】
突出部35は、周方向の側面が先端面31へ向かうにつれて軸心A側へ近づくように傾斜する横傾斜面37を備える。横傾斜面37は、質量体20の内周面21に連なる部位である。そのため、軸方向における質量体20の内周面21と突出部35との隅の角度を緩やかにする傾斜面32と同様に、横傾斜面37によって、周方向における内周面21と突出部35との隅の角度を緩やかにできる。横傾斜面37により周方向における内周面21と突出部35との隅にも接着剤を溜まり難くできるので、その接着剤の溜まりに起因する質量体20及び突出部35と弾性連結部40との接着不良を抑制できる。
【0045】
次に
図4及び
図5(a)を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、質量体20の内周面21の軸方向中央から突出部30が突出する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、質量体20の内周面21の軸方向両端側からそれぞれ突出部65が突出する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0046】
図4は第2実施の形態におけるダイナミックダンパ60の断面図であり、
図5(a)は質量体20及び突出部65の側面図である。
図5(a)には、張出部62の外形線および筒部材61の外周面13の外形線が二点鎖線で図示される。
【0047】
図4に示すように、ダイナミックダンパ60は、筒部材61と、内周面21が筒部材61の外周面13と所定間隔をあけて配置される筒状の質量体20と、質量体20の内周面21から突出する突出部65と、質量体20及び突出部65と筒部材61とを連結する弾性連結部69と、筒部材61を相手側部材2に締結する締結部材70と、を備える。
【0048】
筒部材61は、軸心Aを中心とした円筒状の金属製の部材である。筒部材61は、軸方向の第1端部11及び第2端部12を備える。筒部材61の第1端部11には、外周面13から軸直方向外側へ張り出す張出部62が設けられる。
【0049】
突出部65は、質量体20との一体成形品であり、質量体20の内周面21の軸方向両端側から筒部材61の外周面13へ向かってそれぞれ突出する。突出部65は、周方向に連続して設けられる環状の部位である。突出部65の内周面は、先端面66と、傾斜面67とを備える。
【0050】
先端面66は、質量体20から最も離れた突出部65の先端を構成する面であり、筒部材61の外周面13と対向する。先端面66は、軸心Aを含む断面において軸心A(筒部材61の外周面13)と平行に形成される。傾斜面67は、質量体20の内周面21に連なる部位であり、質量体20の軸方向中央から先端面66へ向かうにつれて筒部材61の外周面13へ近づくように傾斜する。
【0051】
軸心Aを含むダイナミックダンパ60の断面において、質量体20の内周面に連なる傾斜面67によって、質量体20の内周面21と突出部65との隅の角度を緩やかにできるので、その隅に加硫接着用の接着剤を溜まり難くできる。その結果、接着剤の溜まりに起因する質量体20及び突出部65と弾性連結部69との接着不良を抑制できる。
【0052】
質量体20及び突出部65の製造方法は、まず、質量体20の外径と同じ外径で、突出部65の内径よりも内径が小さい円筒部材を鋳造等により形成する。その円筒部材の内周面を切削加工することによって、筒部材61及び突出部65を形成する。
【0053】
なお、筒部材61及び突出部65の製造方法は、鋳造品である円筒部材を切削加工して筒部材61及び突出部65を形成する場合に限らない。砂中子等を用いて、筒部材61の内周面21から軸直方向に突出部65が突出したものを鋳造することで、切削加工せずに筒部材61及び突出部65を製造することが可能である。
【0054】
砂中子等を用いて筒部材61及び突出部65を鋳造する場合、突出部65の先端面66に切削加工による切削痕を形成することで、先端面66を滑らかにできる。先端面66と筒部材61の外周面13との間の軸直方向寸法に弾性連結部69のばね定数が大きく依存するので、先端面66のみを切削加工によって滑らかにし、質量体20の内周面21を切削加工しなくても、ダイナミックダンパ60の固有振動数のばらつきを十分に抑制できる。よって、突出部65を設けることで、ダイナミックダンパ60の固有振動数のばらつきを抑制するための切削量を少なくできる。
【0055】
弾性連結部69は、ゴム状弾性体から構成される部材である。弾性連結部69は、質量体20の内周面21と筒部材61の外周面13との間に設けられ、質量体20の内周面21及び突出部65と筒部材61の外周面13とに加硫接着される。
【0056】
弾性連結部69との一体成形品である弾性膜43で質量体20の外周面および軸方向両端面が覆われる。弾性膜43で覆われた質量体20の軸方向寸法は、筒部材61の第2端部12から張出部62までの軸方向寸法よりも小さく設定される。これにより、相手側部材2に筒部材61を取り付け、質量体20が筒部材61に対して軸直方向に振動するとき等、弾性膜43と相手側部材2や張出部62との接触を抑制できる。これにより、その接触に起因して質量体20の振動が妨げられることを抑制できる。
【0057】
締結部材70は、頭部52及び軸部54を有するボルト71と、ナット55とを備える。このボルト71の軸部54を第1端部11側から筒部材61に挿入して、さらに相手側部材2の貫通孔2aに軸部54を挿入した状態でナット55を軸部54に取り付けることで、相手側部材2と頭部52とで筒部材61が軸方向に挟まれ、締結部材70により筒部材61が相手側部材2に締結される。
【0058】
図4及び
図5(a)に示すように、筒部材61の外周面13から軸直方向外側へ張り出す張出部62は、筒部材61の周方向の一部に設けられる。2つの張出部62が軸心Aに対して対称に配置され、張出部62の最も軸直方向外側である先端間の距離が、周方向に連続した環状の突出部65の内径よりも大きく設定される。これにより、筒部材61に対して質量体20及び突出部65を軸心A周りに相対回転させたいずれの位置においても張出部62と突出部65とが軸方向に重なる。これにより、弾性連結部69の破断等によって筒部材61から質量体20が脱落することを防止できる。
【0059】
以上の通り第2実施の形態におけるダイナミックダンパ60によれば、質量体20の内周面21から突出部65が突出しているので、弾性連結部69のばね定数は、突出部65の先端面66と筒部材61の外周面13との間の軸直方向寸法に大きく依存する。質量体20の内径や筒部材61の外径を調整するのに比べ、突出部65の突出量を調整する方が弾性連結部69のばね定数の調整を容易にできる。従って、張出部62との軸方向の重なりにより質量体20の脱落を防止する突出部65によって、ダイナミックダンパ60の固有振動数を調整し易くできる。
【0060】
質量体20の脱落を防止するために突出部65と張出部62とを軸方向に重ねるので、張出部62の外径とは無関係に質量体20の内径を設定できる。これにより質量体20の内径の自由度を向上できるので、質量体20の内周面21と筒部材61の外周面13との間の軸直方向寸法の自由度を向上でき、その軸直方向寸法に依存するダイナミックダンパ60の固有振動数を調整し易くできる。
【0061】
質量体20の内周面21の軸方向両端側から2つの突出部65が突出しているので、突出部65と筒部材61との間、即ち、軸方向両端側の弾性連結部69のばね定数が、それらの間のばね定数よりも大きい。そのため、筒部材61に対して質量体20をこじり方向に振動させ難くできる。
【0062】
次に
図5(b)を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施の形態では、突出部65が周方向に連続する環状に形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、突出部81が周方向に断続的に設けられる場合について説明する。なお、第1,2実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0063】
図5(b)は第3実施の形態における質量体20及び突出部81の側面図である。
図5(b)には、張出部82の外形線および筒部材61(
図4参照)の外周面13の外形線が二点鎖線で図示される。第3実施の形態におけるダイナミックダンパは、第2実施の形態のダイナミックダンパ60に対して突出部65及び張出部62の形状が異なる。
【0064】
図5(b)に示す通り、第3実施の形態のダイナミックダンパの突出部81は、周方向に断続的に複数設けられる。第3実施の形態の張出部82も周方向に断続的に複数設けられる。1つの突出部81の周方向寸法よりも、隣り合う張出部82の間隔が小さく設定される。そのため、筒部材61(
図4参照)に対して質量体20及び突出部81を軸心A周りに相対回転させたいずれの位置においても張出部82の一部と突出部81の一部とが軸方向に重なる。これにより、弾性連結部69(
図4参照)の破断等によって筒部材61から質量体20が脱落することを防止できる。
【0065】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、筒部材10,61や質量体20、突出部30,35,65,81、弾性連結部40,69、締結部材50,70等の形状は一例であり、種々の形状を採用することは当然である。
【0066】
上記第1実施の形態では、フランジボルト51のフランジ53の一部が突出部30の一部と軸方向に重なる場合について説明し、上記第2,3実施の形態では、筒部材61の張出部62,82の一部が突出部65,81の一部と軸方向に重なる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。張出部62,82を有しない筒部材10の第1端部11と、フランジ53を有しないボルト71の頭部52との間にワッシャを設け、そのワッシャの一部(張出部)と突出部30,65,81の一部とを軸方向に重ねることで、弾性連結部40,69の破断等によって筒部材10,61から質量体20が脱落することを防止できる。また、フランジ53を有しないボルト71の頭部52の外径を、突出部30,65,81の内径よりも大きくして、頭部52の一部(張出部)と突出部30,65,81の一部とを軸方向に重ねることで、弾性連結部40,69の破断等によって筒部材10,61から質量体20が脱落することを防止できる。
【0067】
上記第1実施の形態では、鋳造により質量体20及び突出部30を形成し、切削加工により突出部30の先端面31を形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。質量体20の外径と同じ外径であって、突出部30の内径よりも内径が小さい円筒部材の内周面を切削加工して、質量体20及び突出部30、その先端面31を形成することも可能である。また、鍛造によって質量体20及び突出部30を形成することも可能である。
【0068】
上記各実施の形態では、突出部30,35,65,81の先端面31,66が軸心Aに対して平行である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。所望の弾性連結部40,69のばね定数を得るために、突出部の先端面を軸心Aに対して傾斜させることは当然可能である。また、突出部の先端が平面である場合に限らず、突出部の先端を点状や線状とすることが可能である。