(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-91709(P2018-91709A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】制動距離算出方法、装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20180518BHJP
G01M 17/02 20060101ALI20180518BHJP
【FI】
G01M17/00 E
G01M17/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-235015(P2016-235015)
(22)【出願日】2016年12月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石神 直大
(57)【要約】
【課題】制動中に変化する荷重条件及び速度条件に対応し、予測精度を向上させた制動距離算出方法を提供する。
【解決手段】接地圧分布データ18と、摩擦係数データ17と、を用いて、或る時点iにおける各微小面の摩擦係数と接地圧力とで定まる制動力を合計して、或る時点の制動力を算出するステップ(ST7)と、或る時点iの制動加速度G
iを算出するステップ(ST8)と、或る時点iにおける後輪から前輪への荷重移動量Δm
iを算出するステップ(ST9)と、次の時点の前輪荷重m
fi+1及び後輪荷重m
ri+1を算出するステップ(ST10)と、次の時点の車両速度V
i+1を算出するステップ(ST12)と、を含む。上記ステップをそれぞれ、初期時点(i=0)から速度が0になるまで単位時間Δt経過した時点毎に繰り返し実行し、全ての時点における車両速度と単位時間とに基づき制動距離を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪荷重、後輪荷重及び車両速度を含む初期時点に関するデータを設定するステップと、
接地面を構成する微小面毎に接地圧の値を有する接地圧分布データと、接地圧、スリップ速度及び摩擦係数の対応関係を示す摩擦係数データと、を用いて、或る時点における各微小面の摩擦係数と接地圧力とで定まる制動力を合計して、或る時点の制動力をシステム全体で算出するステップと、
制動力、前輪荷重及び後輪荷重に基づき或る時点の制動加速度を算出するステップと、
制動加速度と前輪荷重と後輪荷重とに基づき或る時点における後輪から前輪への荷重移動量を算出するステップと、
或る時点の荷重移動量を用いて次の時点の前輪荷重及び後輪荷重を算出するステップと、
制動加速度を用いて次の時点の車両速度を算出するステップと、
を含み、
前記算出するステップをそれぞれ、初期時点から速度が0になるまで単位時間経過した時点毎に繰り返し実行し、
全ての時点における車両速度と単位時間とに基づき制動距離を算出する、制動距離算出方法。
【請求項2】
荷重に応じて接地圧が変化する接地圧分布データを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
荷重に応じて接地圧及び接地面積が変化する接地圧分布データを用いる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前輪荷重、後輪荷重及び車両速度を含む初期時点に関するデータを設定する設定部と、
接地面を構成する微小面毎に接地圧の値を有する接地圧分布データと、接地圧、スリップ速度及び摩擦係数の対応関係を示す摩擦係数データと、を用いて、或る時点における各微小面の摩擦係数と接地圧とで定まる制動力を合計して、或る時点の制動力をシステム全体で算出する制動力算出部と、
制動力、前輪荷重及び後輪荷重に基づき或る時点の制動加速度を算出する制動加速度算出部と、
制動加速度と前輪荷重と後輪荷重とに基づき或る時点における後輪から前輪への荷重移動量を算出する荷重移動量算出部と、
或る時点の荷重移動量を用いて次の時点の前輪荷重及び後輪荷重を算出する荷重算出部と、
制動加速度を用いて次の時点の車両速度を算出する車両速度算出部と、
制動距離算出部と、
を備え、
前記制動力算出部、前記制動加速度算出部、前記荷重移動量算出部、前記荷重算出部、及び前記車両速度算出部による処理を、初期時点から速度が0になるまで単位時間経過した時点毎に繰り返し実行し、
前記制動距離算出部は、全ての時点における車両速度と単位時間とに基づき制動距離を算出する、制動距離算出装置。
【請求項5】
荷重に応じて接地圧が変化する接地圧分布データを用いる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
荷重に応じて接地圧及び接地面積が変化する接地圧分布データを用いる、請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制動距離算出方法、装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の多くには、ABS(Antilock Brake System)が実装されている。制動時にタイヤがロックすると、タイヤが路面をスリップしてしまう。スリップ状態は、ステアリング操作が不能となる。このようなスリップ状態を回避するために、ABS制御は、車速とタイヤ回転速度を検出してブレーキ力を制御する。タイヤに発生する制動力の大きさ(制動時のタイヤの摩擦係数μ)は、スリップ率Sに応じて変化する。車速V
V、タイヤ回転速度V
Tとすれば、スリップ率は、S=(V
V−V
T)/V
Vで表現される。ABSは、スリップ率Sとタイヤの制動力(摩擦係数μ)との関係(μ−Sカーブ)に基づいて、なるべくピークのμが得られるスリップ率になるように、ブレーキを制御する。
【0003】
制動距離は、実際のタイヤを装着した実走に計測できる。しかし、タイヤのコスト、車両コスト、人的コストを含むコストが必要となる。制動距離を予測する方法としては、台上試験等にて取得されたタイヤμから見積もることが提案されている。しかし、単一の荷重条件及び速度条件での見積であり、実車制動中のように荷重変化及び速度変化が考慮されていないため、予測精度が十分であるとはいえない。より詳細な予測方法として、詳細な車両モデル及びタイヤモデルを生成し、ABS制動シミュレーションを行う手法もあるが、車両及びタイヤモデルの作成にコストがかかり、しかも詳細なタイヤモデルを得るために複数本のタイヤが必要で、試験コストもかかる。
【0004】
参考として、特許文献1には、タイヤFEM(Finite Element Method;有限要素法)モデルを用いて、接地面に生じる力を予測することが記載されているが、この文献には制動距離の予測についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−37280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、制動中に変化する荷重条件及び速度条件に対応し、予測精度を向上させた制動距離算出方法、装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0008】
すなわち、本開示の制動距離算出方法は、
前輪荷重、後輪荷重及び車両速度を含む初期時点に関するデータを設定するステップと、
接地面を構成する微小面毎に接地圧の値を有する接地圧分布データと、接地圧、スリップ速度及び摩擦係数の対応関係を示す摩擦係数データと、を用いて、或る時点における各微小面の摩擦係数と接地圧力とで定まる制動力を合計して、或る時点の制動力をシステム全体で算出するステップと、
制動力、前輪荷重及び後輪荷重に基づき或る時点の制動加速度を算出するステップと、
制動加速度と前輪荷重と後輪荷重とに基づき或る時点における後輪から前輪への荷重移動量を算出するステップと、
或る時点の荷重移動量を用いて次の時点の前輪荷重及び後輪荷重を算出するステップと、
制動加速度を用いて次の時点の車両速度を算出するステップと、
を含み、
前記算出するステップをそれぞれ、初期時点から速度が0になるまで単位時間経過した時点毎に繰り返し実行し、
全ての時点における車両速度と単位時間とに基づき制動距離を算出する。
【0009】
このように、各時点における後輪から前輪への荷重移動量を算出し、荷重を更新し、各時点において算出した制動加速度により速度を更新し、更新後の荷重及び速度を利用して制動力を算出しているので、単一の荷重条件及び速度条件での予測する場合に比べて、予測精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の制動距離算出装置を示すブロック図。
【
図2】装置が実行する制動距離算出処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
[制動距離算出装置]
制動距離算出装置1は、制動距離を算出する。
【0013】
具体的に、装置1は、
図1に示すように、設定部10と、制動力算出部11と、制動加速度算出部12と、荷重移動量算出部13と、車両速度算出部14と、荷重算出部15と、制動距離算出部16と、を有する。これら各部10〜16は、CPU、メモリ、各種インターフェイス等を備えたパソコン等の情報処理装置においてCPUが予め記憶されている図示しない処理ルーチンを実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現される。
【0014】
設定部10は、前輪荷重m
f0、後輪荷重m
r0及び車両速度V
0を含む初期時点(i=0)に関するデータの入力を操作部を介して受けて、メモリに設定する。初期時点(i=0)の前輪荷重m
fi、後輪荷重m
ri、車両速度V
iは、
図1に示すように現時点iの初期値として保持される。設定部10は、その他に、スリップ率S
p、単位時間Δt、接地面を構成する微小面の面積ΔD、重力加速度g、ホールベースl、重心高さg
h等のパラメータの入力を操作部を介して受けて、メモリに設定する。これらは、メモリに予め設定されていてもよい。また、設定部10は、接地圧分布データ18及び摩擦係数データ17の指定を、操作部を介して受ける。
【0015】
接地圧分布データ18は、接地面を複数の微小面に細分化し、微小面毎に接地圧の値を有するデータである。
図3は、接地圧分布データに関する概念図である。
図3の下部には或る状態での接地形状を示す。
図3の例では、接地圧分布データは、p1、p2、p3、…、p20、p21、…、のように、微小面毎に接地圧の値を有する。本実施形態では、タイヤの荷重をパラメータとして、各微小面の接地圧値を返す関数P(m)を設けている。
P(m)=(p
1、p
2、…)
タイヤの荷重mに応じて、各微小面の接地圧が変化する。そのためには、種々の実装方法がある。例えば、荷重に応じて各圧力値が、1次式、2次式、3次式などのある関数に基づき変化する数式モデルを設けてもよい。また、複数の荷重について接地圧分布パターンをデータとして持っておき、パラメータとして入力された荷重に近いものを選択するように構成してもよく、荷重に近い2つのパターンから補間データを生成するようにしてもよい。このとき、出力される微小面の数が一定でもよいし、微小面の数も変化させて荷重に応じて接地面積も変化するように構成してもよい。もちろん、接地面積(微小面の数)も変化した方がよいが、接地面積(微小面の数)が一定であっても、或る程度の精度で予測することはできる。すなわち、荷重に応じて接地圧が変化する接地圧分布データを用いてもよいし、荷重に応じて接地圧及び接地面積が変化する接地圧分布データを用いてもよい。精度としては、後者の方が好ましい。
【0016】
摩擦係数データ17は、接地圧、スリップ速度及び摩擦係数の対応関係を示す。摩擦係数データ17は、接地圧P、スリップ速度S及び摩擦係数μの3つからなるデータであり、
図4に示すように二次曲面で表すことができる。次のように関数として表現することができる。
μ=F(P,S)
これらのデータは、例えば台上摩擦試験にて、ゴムサンプルの押しつけ圧Pと、スリップ速度S(すべり速度)を変更して、摩擦係数μを計測することで得ることができる。
【0017】
制動力算出部11は、接地圧分布データ18と、摩擦係数データ17と、を用いて、或る時点iにおける各微小面の摩擦係数と接地圧とで定まる制動力を合計して、或る時点iの制動力をシステム全体で算出する。具体的に、制動力算出部11は、前輪μ算出部11aと、後輪μ算出部11bと、を有する。
【0018】
前輪μ算出部11aは、前輪荷重m
fiを入力パラメータとして接地圧分布データ18を参照し、微小面毎(k=1〜)に接地圧p
kを取得する。前輪μ算出部11aは、接地圧
p
k及びスリップ速度(S
vi)を入力パラメータとして摩擦係数データ17を参照し、摩擦係数μを取得する。前輪μ算出部11aは、各微小面の摩擦係数μと接地圧p
kとで定まる制動力を合計し、前輪荷重m
fiで割ることで前輪全体での摩擦係数μ
fiを算出する。後輪μ算出部11bも同様にし、後輪全体での摩擦係数μ
riを算出する。これを式で表すと次の式となる。
【数1】
ここで、ΔDは、微小面一つあたりの面積である。
スリップ速度S
viは、S
vi=S
pV
iである。
システム全体の制動力は、前輪が2つ、後輪が2つあることから、
2m
fiμ
fi+2m
riμ
ri と表すことができる。
【0019】
制動加速度算出部12は、制動力、前輪荷重m
fi及び後輪荷重m
riに基づき或る時点iの制動加速度G
iを算出する。式は次の通りである。
【数2】
【0020】
荷重移動量算出部13は、制動加速度G
iと前輪荷重m
fiと後輪荷重m
riとに基づき或る時点iにおける後輪から前輪への一輪あたりの荷重移動量Δm
iを算出する。式は次の通りである。
【数3】
ここで、lはホイールベース、g
hは、重心高さである。
【0021】
車両速度算出部14は、制動加速度G
iを用いて次の時点(i+1)の車両速度V
i+1を算出する。式は次の通りである。
V
i+1=V
i−gG
iΔt …(5)
ここで、gは重力加速度であり、Δtは単位時間である。
【0022】
荷重算出部15は、或る時点iの荷重移動量を用いて次の時点(i+1)の前輪荷重m
fi+1及び後輪荷重m
ri+1を算出する。式は次の通りである。
m
fi+1=m
f0+Δm
i …(6)
m
ri+1=m
r0−Δm
i …(7)
【0023】
上記各部11〜14による処理は、初期時点(i=0)から速度V
iが0以下になるまで単位時間Δt経過した時点(i=0〜M)毎に繰り返し実行される。
【0024】
制動距離算出部16は、全ての時点(i=0〜M)における速度と単位時間とに基づき制動距離を算出する。具体的には、各時点iの速度V
iと、単位時間Δtとの積算の合計値であり、式で表すと、Σ
i(V
i*Δt)である。
【0025】
[制動距離算出方法]
上記装置1の動作について
図1〜2を参照しつつ説明する。
【0026】
まず、ステップST1において、設定部10は、前輪荷重m
f0、後輪荷重m
r0及び車両速度V
0を含む初期時点(i=0)に関するデータを設定する。
【0027】
次のステップST2において、制動力算出部11は、初期時点(i=0)の制動力を算出する。具体的には、前輪μ算出部11aが、初期時点の前輪μ
f0を算出し、後輪μ算出部11bが、初期時点の後輪μ
r0を算出する。式(1)及び(2)に基づき、前輪μ
f0及び後輪μ
r0は次の通りである。
μ
f0=Σ
k{F(p
k,V
0S
p)p
kΔD}/m
f0
μ
r0=Σ
k{F(p
k,V
0S
p)p
kΔD}/m
r0
制動力は、2m
f0μ
f0+2m
r0μ
r0 である。制動力は制動加速度G
iを算出するために用いられる。
【0028】
次にステップST3において、制動加速度算出部12は、初期時点(i=0)の制動加速度G
0を算出する。式(3)に基づき、制動加速度G
0は次の通りである。
G
0=(m
f0μ
f0+m
r0μ
r0)/(m
f0+m
r0)
【0029】
次のステップST4において、荷重移動量算出部13は、初期時点(i=0)の荷重移動量Δm
0を算出する。式(4)に基づき、荷重移動量Δm
0は次の通りである。
Δm
0=G
0(m
f0+m
r0)g
h/l
【0030】
次のステップST5において、荷重算出部15は、次の時点(i=1)の前輪荷重m
f1及び後輪荷重m
r1を算出する。式(6)及び(7)に基づき、前輪荷重m
f1及び後輪荷重m
r1は次の通りである。
m
f1=m
f0+Δm
0 …(6)
m
r1=m
r0−Δm
0 …(7)
【0031】
次のステップST6において、車両速度算出部14は、制動加速度G
0を用いて次の時点(i=1)の車両速度V
1を算出する。式(5)に基づき、車両速度V
1は次の通りである。
V
1=V
0−gG
0Δt
【0032】
次の時点(i=1)から速度が0以下になるまでステップST7〜11を繰り返す。
【0033】
ステップST7において、制動力算出部11は、時点(i)の制動力を算出する。次のステップST8において、制動加速度算出部12は、時点(i)の制動加速度G
iを算出する。次のステップST9において、荷重算出部15は、次の時点(i+1)の前輪荷重m
fi+1及び後輪荷重m
ri+1を算出する。次のステップST10において、荷重算出部15は、次の時点(i+1)の前輪荷重m
fi+1及び後輪荷重m
ri+1を算出する。次のステップST11において、車両速度算出部14は、制動加速度G
iを用いて次の時点(i+1)の車両速度V
i+1を算出する。次のステップST12において、次の時点(i+1)の車両速度V
i+1が0以下であるかを判定し、条件を満たさなければ、現時点を進めて(iをi+1にし)、ステップST7に移行する。ステップST12にて条件を満たせば、ステップST13へ移る。
【0034】
ステップST13では、制動距離算出部16が、全ての時点(i=0〜M)における速度と単位時間とに基づき制動距離を算出する。
【0035】
以上のように、本実施形態の制動距離算出方法は、
前輪荷重m
f0、後輪荷重m
r0及び車両速度V
0を含む初期時点(i=0)に関するデータを設定するステップ(ST1)と、
接地面を構成する微小面毎に接地圧の値を有する接地圧分布データ18と、接地圧、スリップ速度及び摩擦係数の対応関係を示す摩擦係数データ17と、を用いて、或る時点iにおける各微小面の摩擦係数と接地圧力とで定まる制動力を合計して、或る時点の制動力をシステム全体で算出するステップ(ST2、ST7)と、
制動力、前輪荷重m
fi及び後輪荷重m
riに基づき或る時点iの制動加速度G
iを算出するステップ(ST3、ST8)と、
制動加速度G
iと前輪荷重m
fiと後輪荷重m
riとに基づき或る時点iにおける後輪から前輪への荷重移動量Δm
iを算出するステップ(ST4、ST9)と、
或る時点iの荷重移動量Δm
iを用いて次の時点(i+1)の前輪荷重m
fi+1及び後輪荷重m
ri+1を算出するステップ(ST5、ST10)と、
制動加速度G
iを用いて次の時点(i+1)の車両速度V
i+1を算出するステップ(ST6、ST12)と、を含む。
前記算出するステップをそれぞれ、初期時点(i=0)から速度が0になるまで単位時間Δt経過した時点(i=0〜M)毎に繰り返し実行し、
全ての時点(i=0〜M)における車両速度V
iと単位時間Δtとに基づき制動距離を算出する。
【0036】
本実施形態の制動距離算出装置は、
前輪荷重m
f0、後輪荷重m
r0及び車両速度V
0を含む初期時点(i=0)に関するデータを設定する設定部10と、
接地面を構成する微小面毎に接地圧の値を有する接地圧分布データ18と、接地圧、スリップ速度及び摩擦係数の対応関係を示す摩擦係数データ17と、を用いて、或る時点iにおける各微小面の摩擦係数と接地圧とで定まる制動力を合計して、或る時点の制動力をシステム全体で算出する制動力算出部11と、
制動力、前輪荷重m
fi及び後輪荷重m
riに基づき或る時点iの制動加速度G
iを算出する制動加速度算出部12と、
制動加速度G
iと前輪荷重m
fiと後輪荷重m
riとに基づき或る時点iにおける後輪から前輪への荷重移動量Δm
iを算出する荷重移動量算出部13と、
或る時点iの荷重移動量Δm
iを用いて次の時点(i+1)の前輪荷重m
fi+1及び後輪荷重m
ri+1を算出する荷重算出部15と、
制動加速度G
iを用いて次の時点(i+1)の車両速度V
i+1を算出する車両速度算出部14と、
制動距離算出部16と、を備える。
装置1は、制動力算出部11、制動加速度算出部12、荷重移動量算出部13、荷重算出部15、及び車両速度算出部14による処理を、初期時点(i=0)から速度が0になるまで単位時間Δt経過した時点(i=0〜M)毎に繰り返し実行する。
制動距離算出部16は、全ての時点(i=0〜M)における車両速度V
iと単位時間Δtとに基づき制動距離を算出する。
【0037】
このように、各時点における後輪から前輪への荷重移動量を算出し、荷重を更新し、各時点において算出した制動加速度により速度を更新し、更新後の荷重及び速度を利用して制動力を算出しているので、単一の荷重条件及び速度条件での予測する場合に比べて、予測精度を向上させることが可能となる。
【0038】
本実施形態では、荷重に応じて接地圧が変化する接地圧分布データを用いる。
【0039】
このように、荷重に応じた接地圧を用いて制動力を算出するので、単一の荷重条件で予測する場合に比べて、予測精度を向上させることが可能となる。
【0040】
本実施形態では、荷重に応じて接地圧及び接地面積が変化する接地圧分布データを用いる。
【0041】
このように、荷重に応じた接地圧及び接地面積を用いて制動力を算出するので、より物理現象の再現度が増し、単一の荷重条件で予測する場合に比べて、予測精度を向上させることが可能となる。
【0042】
本実施形態のプログラムは、上記方法を構成する各ステップをコンピュータに実行させる。
これらプログラムを実行することによっても、上記方法の奏する作用効果を得ることが可能となる。言い換えると、上記方法を使用しているとも言える。
【0043】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0044】
例えば、
図1に示す各部10〜16は、所定プログラムをコンピュータのCPUで実行することで実現しているが、各部を専用メモリや専用回路で構成してもよい。
【0045】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…設定部
11…制動力算出部
12…制動加速度算出部
13…荷重移動量算出部
14…車両速度算出部
15…荷重算出部
16…制動距離算出部