【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0074】
材料及び方法
患者
DLBの脳組織を、臨床診断を組織病理学的に確認した患者7名からの剖検で得た。ブラーク病期分類によると、これらの被験者のうち、6名はびまん性皮質型DLB(DN−DLB)に罹っていると分類され、残り1症例は大脳辺縁系型DLB(Li−DNB)であった。プリオン病の脳組織は、3名の孤発性CJD(sCJD)患者及び1名の、PRNPのコドン102におけるProからLeuへの変異に関連する、GSS患者からの剖検で得た。sCJDのサブタイプは、PRNP遺伝子のコドン129における遺伝子型及び異常プリオンタンパク質(PrP
Sc)の生理学的特性に従って診断した。彼らは1型、コドン129MM(MM1)の2症例、2型、コドン129MM(MM2)の1症例を含んでいた。ADの脳組織は、神経原線維変化及び老人斑の存在という神経病理学的診断を受けていた患者2名からの剖検で得た。脳標本は、LBDの共存を殆ど又は全く伴わない純粋型のADであった。脳における組織病理学的変化が無い、統合失調症及び乳癌の患者由来の脳組織を、非変性的症例として用いた。本研究に加わることについての、書面のインフォームドコンセントを患者の家族から受け取った。研究プロトコールは長崎大学病院の倫理委員会により承認され(ID:10042823)、大学病院医療情報ネットワークに登録された(ID:UMIN000003301)。
【0075】
組換えヒトα−シヌクレインの発現及び精製
Hisタグ付き野生型ヒトαSynのN末端残基1〜140をコードするDNA配列を、ヒトcDNA(Toyobo)から、フォワードプライマー(5’−ggaattccatatgaaacatcatcatcatcatcaccagatggatgtattcatgaaagg−3’(配列番号5))及びリバースプライマー(5’−ctagctagctagttaggcttcaggttcgtagtctt−3’(配列番号6))により増幅した。S129A変異体は、フォワードプライマー(5’−ggaattccatatgaaacatcatcatcatcatcaccagatggatgtattcatgaaagg−3’(配列番号7))及びリバースプライマー(5’−ctagctagctagttaggcttcaggttcgtagtcttgatacccttcctcagcaggc−3’(配列番号8))により増幅した。N末端Hisタグを消化するジペプチジルペプチダーゼIのための終止点を、発現コンストラクトにグルタミンコドンを挿入することにより、タンパク質配列に導入した。増幅したPCR断片を、pET11aベクター(Novagen)のNdeI及びNheI部位に挿入し、配列決定解析により確認した。プラスミドを、B21 DE3 E.coliコンピテントセル(BioDynamics Laboratory)に形質転換後、MagicMedia E.coli Expression Medium(Invitrogen)を用いて、組換えタンパク質を発現させた。細胞ペレットを、リゾチーム(Wako)及びベンゾナーゼヌクレアーゼ(Novagen)の存在下、CelLytic B(Sigma−Aldrich)に懸濁した。溶解物を3000rpmで15分間遠心分離し、上清をNi−NTA Superflow resin(Qiagen)と室温で30分間インキュベーションした。タンパク質を300mM NaCl,50mM Tris−HCl(pH8.0),250mMイミダゾールを含有する緩衝液で溶出させ、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析した。
図1A及び1Bに示す通り、N末端Hisタグ付ヒトα−シヌクレインからのタグの除去を、TAGZyme system(Qiagen)を用いて行った。精製His−r−Synは、N末端側エキソペプチダーゼのDAPase(Qiagen)のためのグルタミンの終止点を、Hisタグ配列とαSynの最初のアミノ酸との間に含有する。グルタミンシクロトランスフェラーゼのQcyclase(Qiagen)存在下、DAPaseによりタグを切断し、生成物をNi−NTA resin(Qiagen)にアプライして未切断のHisタグ付タンパク質を除去した。Qcyclase存在下、グルタミン残基は、DAPase分解に対する終止点として作用するピログルタミン酸に変換される。ピログルタミルアミノペプチダーゼのpGAPase(Qiagen)の作用により、ピログルタミン酸を除去することによってヒトαSynを得た。DAPase、Qcyclase、及びpGAPaseは、そのC末端にHisタグを有するので、Ni−NTA resin用いて除去した。最終タンパク質を10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に対して透析し、2.0μmシリンジフィルターで濾過した。タンパク質試料の純度を、SDS−PAGE及びイムノブロット法により、98%
>と見積もった。円二色性(CD)及びフーリエ変換赤外分光(FTIR)による解析によって、r−αSynの変性構造が示された(
図1C及び1D)。精製後、タンパク質の等分割量を、使用するまで−80℃で保存した。
【0076】
RT−QUIC実験
我々は、黒色の96ウェル蛍光用プレート(Nunc)中に、最終全体積100μlの反応混合物を調製した。混入を防ぐため、我々は、物質をすべて生物学的安全キャビネットの内側で調製し、エアロゾル耐性チップを用いた。反応緩衝液成分の最終濃度は50mM HEPES(pH7.5)及び10μMチオフラビンT(ThT)であった。r−αSynの濃度は100μg/ml〜150μg/mlで、解凍したてのr−αSynのみを用いた。我々は、r−αSynのロット間で至適r−αSyn濃度(100μg/ml〜150μg/ml)に軽度のばらつきを認めたが、最終感度は概ね同一であった。マルチビーズショッカーを用い、タンパク質分解酵素阻害剤混合物(Roche)を添加した氷冷PBS中、10%で脳組織(前頭葉領域)をホモジェナイズした。2000×gで2分間遠心分離後、上清を採取し、使用するまで−80℃に凍結した。脳ホモジネートは、反応前にPBSで希釈した。96ウェルプレートを密封テープ(Nunc)で覆い、プレートリーダー(Infinite M200 fluorescence plate reader;TECAN)中で断続的に震盪(円形状の震盪を最大速度で40秒、20秒間震盪無し、次いで蛍光測定のため2分休止から成る)して40℃でインキュベーションした。励起光及び蛍光の波長をそれぞれ440nm及び485nmとした単色光分光器を用いて、プレート底部の蛍光強度を10分毎に読み取り、アミロイド形成の動態をモニターした。各希釈脳ホモジネート試料を6レプリケート測定した。不溶性凝集体及びr−αSynオリゴマーの各希釈試料を、それぞれ、3〜4レプリケート及び3〜6レプリケートアッセイした。我々は、120任意単位超の蛍光強度を有する反応を陽性反応とし、レプリケート反応の50%において陽性反応を示したシード用量(SD
50)を、スピアマン−ケルバー方法を以前(Wilham et al.,2010)記載された通りに用いて算出した。
【0077】
ウェスタンブロット法
脳組織(前頭葉領域)を、Triton−デオキシコール酸(DOC)溶解緩衝液(50mM Tris−HCl,pH7.5(150mM NaCl,0.5%Triton X−100,0.5%デオキシコール酸ナトリウム,2mM EDTA,及びタンパク質分解酵素阻害剤を含有))により、4℃で30分間溶解させた。2000×gで2分間遠心分離後、上清を採取し、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて全タンパク質濃度を測定した。試料を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)充填緩衝液(62.5mM Tris−HCl,PH6.8(5% 2−メルカプトエタノール,2%SDS,5%ショ糖,及び0.005%ブロモフェノールブルー含有))と共に95℃で5分間煮沸し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)に供した。タンパク質を、15%メタノールを含有する転写緩衝液中、Immobilon−P membrane(Millipore)に300mAで2時間転写し;膜を、TBST(10mM Tris−HCl,pH7.8,100mM NaCl,0.1% Tween 20)中5%脱脂粉乳で4℃で2時間ブロッキングし、希釈した一次抗体と反応させた。免疫反応したバンドを、増強化学発光システム(GE healthcare Life Sciences)を用いて、HRP−結合二次抗体により可視化した。
【0078】
透過型電子顕微鏡法
カーボン支持膜グリッド(染色前にグロー放電した)上でネガティブ染色を行った。試料の5μl等分割量をグリッド上に吸着させ、残液を濾紙で吸収した。グリッドを、新たに濾過した染色液(2%酢酸ウラン)5μlで染色した。乾燥した時点で、透過型電子顕微鏡(JEM−1400PLUS;JEOL)で試料を観察した。
【0079】
CD
円二色性(CD)スペクトルを、石英セルを用い、JASCO J−820分光偏光計(JASCO)により、1mmの経路長で測定した。195nm〜250nmの波長範囲での4回のスキャンを平均することにより、CDスペクトルを得た。r−αSynは20mMリン酸ナトリウム(pH6.5)及び150mM NaClの緩衝液中に溶解させた。r−αSynの濃度は300μg/mlであった。
【0080】
FTIR
フーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルは、液体窒素で冷却した水銀カドミウムテルル(MCT)検出器を備えたBruker Tensor 27 FTIR instrument(Bruker Optics)により測定した。試料の20μl等分割量を、BioATRcell II減衰全反射型反射ユニットに装填した。4cm
−1分解能における、全128スキャンを、一定の窒素パージの下、各試料について収集し、水蒸気に関して補正し、緩衝液の背景スペクトルを差し引いた。
【0081】
組織病理学及び免疫組織化学的染色
脳組織を20%中性緩衝ホルマリン中で固定し、ミクロトームで、スライドグラス上に8μmのパラフィン切片を作製した。脱パラフィン及び再水和後、組織切片をヘマトキシリン及びエオジンでの染色、並びに抗Ser129リン酸化α−Syn抗体(1:3000希釈;Wako)を用いた免疫組織化学的染色に供した。免疫原性を増進するため、一次抗体とインキュベーションする前に、98℃で40分間加熱することにより切片を作製した。一次抗体の結合は、標識ストレプトアビジン−ビオチン法(DAKO)により検出した。ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンを、3’3−ジアミノベンジジン(Wako)を発色原として可視化した。免疫染色した切片を、マイヤーのヘマトキシリンで軽く対比染色した。
【0082】
統計解析
最大蛍光強度についてのデータは一元配置分散分析、続いてテューキー−クレーマー検定で解析した。遅滞期についてのデータ解析は、ログランク検定及びテューキー−クレーマー検定に供した。統計学的有意を示すため、P<0.05又はP<0.01を用いた。
【0083】
補足的な実験手順
組換えα−シヌクレインのin vitroリン酸化
r−αSyn(3μg)を、20μlの反応緩衝液(20mM Tris−HCl,pH7.5,50mM KCl,及び10mM MgCl
2)中で、カゼインキナーゼ2(New England Biolabs)及び200μM ATP(Sigma)と37℃で5時間インキュベーションした。95℃で10分間煮沸することにより反応を停止した。
【0084】
Phos−tag SDS−PAGE及びウェスタンブロット法
tricine−SDS−PAGE法に基づいてPhos−tag SDS−PAGEを行った。ポリアクリルアミドの分離ゲルには1M Tris−HCl(pH8.45),0.1%SDS,13.3%グリセロール,100μM Phos−tag,及び400μM ZnCl
2を含めた。陽極緩衝液成分の濃度は、200mM Tris−HCl(pH8.9)とした。陰極緩衝液成分の濃度は、100mM Tris,100mM Tricine,及び0.1%SDSとした。SDS充填緩衝液(5% 2−メルカプトエタノール,2%SDS,5%ショ糖,及び0.005%ブロモフェノールブルーを含有する62.5mM Tris−HCl,pH6.8)と共に、試料を95℃で5分間煮沸し、Phos−tag SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法に供した。電気泳動後、ゲルを、Zn
2+イオンをキレートするための10mM EDTAを含有する転写緩衝液で洗浄した。タンパク質を、15%メタノールを含有する転写緩衝液中、300mAで2時間、Immobilon−P membrane(Millipore)上に転写した。膜をTBST(10mM Tris−HCl,pH7.8,100mM NaCl,0.1% Tween20)中5%脱脂粉乳で、4℃で2時間ブロッキングし、希釈した一次抗体と反応させた。増強化学発光システム(Amersham)を用いて、免疫反応性のバンドを、HRP結合二次抗体で可視化した。ImageJ 1.41を用いて、バンドの強度を測定した。
【0085】
ドットブロット
BH及びr−αSynを、SDS充填緩衝液(5% 2−メルカプトエタノール及び2%SDSを含有する62.5mM Tris−HCl,pH6.8)と共に95℃で10分間煮沸した。bio−blot(Bio−Rad,Hercules,CA,USA)を用いて、試料を、穏やかな減圧促進条件下でニトロセルロース膜上にブロットした。TBST(10mM Tris−HCl,pH7.8,100mM NaCl,0.1% Tween20)で洗浄及びTBST中5%脱脂粉乳で2時間ブロッキング後、希釈した一次抗体で膜をプローブした。増強化学発光システム(Amersham)を用いて、免疫反応性のバンドを、HRP結合二次抗体で可視化した。ImageJ 1.41を用いて、ドットの強度を測定した。
【0086】
結果
Ser129がリン酸化されたα−シヌクレインはレビー小体型認知症由来の脳中に多量にある。
まず、我々は、DLB患者の脳中にLB及びSer129でリン酸化されたαSyn(pSer129−αSyn)が存在することを、それぞれヘマトキシリン・エオジン染色及び免疫組織化学的染色により確認した(
図2A)。びまん性新皮質型DLB(DN−DLB)患者2名及び大脳辺縁系型DLB(Li−DLB)患者1名由来の剖検で得られた黒質及び前頭葉の皮質の切片において、LB及びpSer129−αSynの両方が観察された。pSer129−αSynは、LB中に存在するように見えた。皮質中では、DN−DLBにおける、pSer129−αSynを含有するLBは、Li−LDBにおけるそれよりも明らかに大きかった。対照的に、組織化学的解析により、非DLB症例の脳では、病理学的異常が明らかではなかった。Tannickal et al.(2007)による以前の報告と整合して、黒質中の、メラニン顆粒を含有する細胞は、通常、DN−DLB及びLi−DLB患者では恐らく神経変性のため喪失していたが、非DLBではそうではなかった。
【0087】
次に、我々は、抗αSyn抗体D119を用いたウェスタンブロット法により、DLB患者由来の脳ホモジネート(BH)中のαSynの生化学的特性を検証し、非DLB症例由来のそれらの結果と比較した(
図2B)。全患者由来試料イムノブロット解析により、18kDaにおける天然のαSynのバンド、36kDaの二量体型、又は両方が示された。DN−DLBの2症例及びLi−DLBの1症例は、>250kDaの分子量範囲の、顕著に嵩張った多量体型αSynを含有していた。不溶性多量体はLi−DLBよりも、DN−DLBにおいてより豊富であったが、このことにより、αSyn多量体形成が、疾患進行に極めて重要であることが示された。このバンドは非DLB症例では観察されなかったが、GSSにおいて、比較的少量の重合体が観察された。すべての症例で、約50kDa〜250kDaの分子量範囲に、様々な大きさのバンドが示された。これらのバンドは、恐らくオリゴマーのαSyn及び/又はユビキチン化αSynに起因し、症例間で大きく異なってはいなかった。pSer129−αSynに対する抗体は、DN−DLBの2症例において、高分子量(>250kDa)の見かけ上のバンドを検出した(
図2C)。同様の大きさのバンドが、Li−DLBの1症例で観察されたが、免疫反応性の強度はDN−DLBのよりもずっと弱かった。対照的に、非DLB症例では、pSer129−αSynに対する抗体への免疫反応性は示されなかった。これらの観察により、DLBの脳中、>250kDaの、(多くがSer129でリン酸化された)αSynの不溶性多量体の存在が示された。更に、我々はPhos−tag SDS−PAGEに続く定量的ドットブロットイムノアッセイにより、DLB症例の脳におけるpSer129−αSynのレベルを見積もった(
図7)。DN−DLB症例#1及び#2におけるpSer129−αSynのレベルは、それぞれ13.5±0.4mg/g脳及び3.7±0.2mg/g脳であり、Li−DLBにおけるレベルは0.06±0.02mg/g脳であった。DN−DLBにおける全αSynに対するpSer129−αSynの割合は、Li−DLBにおけるそれよりも高かった:DN−DLB症例#1(57.9%±1.5%)、DN−DLB#2(22.6%±1.2%)、及びLi−DLB(6.1%±1.7%)。これらの結果により、pSer129−αSynが疾患の進行に関連することが示唆される。以前の研究により、LBD脳において、Ser87でリン酸化されたαSynのレベルも上昇することが示された(Paleologou et al.,2010)。しかし、Ser87リン酸化αSynに対する抗体では36kDaの二量体バンドが検出され、Ser87リン酸化型のレベルにおける、症例間での顕著な差はなかった(
図2D)。
【0088】
RT−QUICによる、可溶型の組換えヒトα−シヌクレインのアミロイド線維への転換
我々は、次に、DLB患者由来のBHを反応液に添加した場合に、RT−QUICにおいてr−αSyn線維形成が誘導され得るかどうかを、ThT蛍光レベルをモニタリングすることによって検証した(
図3A及び
図3B)。5×10
−5及び5×10
−6希釈の、DN−DLBの2症例由来BHを添加した場合、早くて24時間、すべての反応液では96時間以内にThT蛍光陽性が示された。5×10
−7希釈では、症例#1の6レプリケートウェルのうちの4、症例#2の6ウェルのうち3で、アッセイが陽性であった。5×10
−8希釈では、症例#1についての6反応のうち2で陽性であったが、症例#2では蛍光の増大は観察されなかった。5×10
−9希釈の反応では、症例#1ですべて陰性であった。Li−DLB症例については、5×10
−5希釈での6反応のうち2で陽性反応が示されたが、より薄い希釈では反応が観察されなかった。我々はLi−DLBについての5×10
−4希釈の効果も検証したが、蛍光の増大は観察されなかった(データ示さず)。陰性反応は、おそらく、反応においてr−αSyn線維形成を阻害する、BH中の多様な成分のレベルが高いことに起因すると思われた。対照的に、シード無しの対照及び統合失調症のBHの5×10
−5及び5×10
−6希釈による反応では、96時間超でレスポンスがもたらされなかった。最大蛍光強度は、シード無しの対照に比べて、DN−DLB症例#1の5×10
−5及び5×10
−6希釈、DN−DLB症例#2の5×10
−5〜5×10
−7の範囲の希釈、及びLi−DLBの5×10
−5希釈での反応で有意に強かった(
図3B)。遅滞期は、シード無しの対照に比べて、DN−DLBの2症例由来の5×10
−5希釈での反応で有意に短かった(
図3B)。DN−DLB症例#1及び#2のSD
50/g脳の値は、それぞれ10
7.8及び10
7.3であった。我々はLi−DLBのシーディング用量を正確に算出できなかったが、その値は、5×10
−4希釈で100%陽性が示されるとの仮定に基づいて、5.1(logSD
50/g脳)未満と見積もられた。組換えヒトプリオンタンパク質を基質とする反応又はタンパク質無しの反応においては、DLBの特異的検出は認められなかった(
図8)が、このことにより、DLB症例由来BHの、r−Synをシーディングする能力が証明されたが、他のタンパク質をシーディングする能力に関しては証明されなかった。他のタンパク質ミスフォールディング疾患及び変性の疾患の、RT−QUICに対する影響を更に評価するために、我々はアルツハイマー病(AD)、孤発性クロイツフェルト−ヤコブ病(sCJD)1型及び2型、並びにGSSの患者由来のBHをアッセイに適用した。AD、sCJD(1型及び2型)並びにGSSにおいては、5×10
−5及び5×10
−6希釈の反応すべてで、96時間以内に陰性のレスポンスがもたらされた(
図3A及び3B)。これらの観察により、RT−QUICがDLB症例由来のBHの存在下のみで、r−αSyn線維の形成を誘導すること、及びDN−DLBのシーディング活性はLi−DLBのそれよりも高いことが示された。これらの知見により、r−αSynは、プリオン様の機構によりアミロイド線維に転換され得ることが示唆された。
【0089】
r−αSynの線維構造を特性解析するために、試料をネガティブ染色透過型電子顕微鏡法(TEM)により検証した。DN−DLB症例#1でシーディングしたr−αSyn線維の電子顕微鏡写真により、長く、細く、且つ分岐した線維束が明らかにされたが、シーディング無しの陰性対照反応においては、線維が観察されなかった(
図3C)。フーリエ変換赤外分光(FTIR)により、DLBと非DLBの症例との間で、変性構造に帰属する、1650cm
−1における最も顕著なバンドにほぼ差がないことが示された(
図3D)。該結果により、DLB BHでシーディングされた反応においては、少量のr−αSyn線維のみが生成したことが示唆される。RT−QUICの確実性を更に確認するため、我々は、更に4名のDN−DLB患者由来のBH試料を解析した(
図4B及び4C)。DN−DLB症例#1及び#2と同様に、すべての患者由来試料のイムノブロット解析により、>250kDaの不溶性αSyn多量体が示された。pSer129−αSynは、多量体の大きさでのみ検出された(
図4A)。これらの症例の5×10
−6及び5×10
−7希釈を添加した場合、RT−QUIC反応ですべて陽性が示された。症例#5及び#6の5×10
−8希釈での反応も、すべて陽性であった。症例#3及び#4については、5×10
−8希釈での6反応のうちの5で、陽性レスポンスが示された。5×10
−9希釈では、症例#4については6ウェルのうち4で、症例#5については全ウェルで、症例#6については6ウェルのうちの4でアッセイが陽性であり、症例#3のウェルはすべて陰性であった。5×10
−10希釈では、症例#4、#5及び#6での反応はすべて陰性であった。最大蛍光強度は、シーディング無しの対照と比較して、症例#3、#4及び#6の5×10
−5〜5×10
−8の範囲、及び症例#5の5×10
−6〜5×10
−9の範囲の希釈での反応において有意に強かった(
図4C)。遅滞期は、シーディング無しの対照と比較して、症例#3及び#4の5×10
−6〜5×10
−8及び症例#5及び#6の5×10
−6〜5×10
−9の範囲の希釈での反応において、有意に短かった(
図4C)。SD
50/g脳の値は、以下の通りであった:10
8.6(症例#3)10
9.3(症例#4)10
9.8(症例#5)及び10
9.5(症例#6)。従って、我々は、他のDN−DLB患者由来の脳のシーディング活性を検出できた。
【0090】
α−シヌクレインの不溶性凝集体は、シーディング活性を殆ど又は全く有しない
次に、我々は、Ser129でリン酸化されたr−αSyn(pSer129−r−αSyn)を用いて、Ser129リン酸化が、プリオン様機構によるαSyn線維形成に極めて重要なのかどうかを検証した。WT r−αSynは、カゼインキナーゼ2(CK2)及びATPの両方の存在下でのインキュベーションによってのみSer129でリン酸化されたが、S129A変異体は同一条件下でリン酸化されなかった(
図5A)。DLB BHでの場合と同様に、不溶性pSer129−r−αSynは、72及び264時間のインキュベーション後の>250kDaの分子量範囲にのみ観察された。ATP非存在下(WT
CK2)又は存在下(WT
CK2+ATP)、CK2とインキュベーションしたWT r−αSynとCK2及びATPとインキュベーションしたS129A r−αSyn(S129A
CK2+ATP)との間でThT蛍光レベルの増大に有意差はなかったが(
図5B)、72時間インキュベーション後、pSer129−r−αSynの凝集体形成は、非リン酸化r−αSynのそれよりも効率的に誘導された(
図5A)。これらの結果により、Ser129リン酸化によってr−Synの重合が促進されることが示唆された。以前の報告(Vlad et al.,2011)と整合して、72時間インキュベーション後の試料すべてにおいて、全長r−αSynよりも低分子量の、13kDaのバンドが観察されたが、このことにより、r−αSyn凝集体形成はr−αSynの切断及び/又は分解に仲介されることが示された。CK2及びATPと264時間インキュベーションしたWT(WT−264h)及び変異体r−αSyn(S129A−264h)のFTIRスペクトルにより、インキュベーション前(WT−0h及びS129A−0h)と比較して、わずかに低い波数へのシフトが示されたが、このことにより、βシート含有量の小幅な増加(1630〜1610cm
−1)が示された(
図5C)。インキュベーションの前後で、WTと変異体r−αSynとの間には、赤外線スペクトルに差が殆ど無かった(
図5C)。TEM解析により、WT−264h及びS129A−264hが、専ら非晶質の凝集体から成ることが示された(
図5D)。我々は、次に、RT−QUICにおいて、非晶質のr−αSyn凝集体の存在下で、r−αSynが新たにアミロイド線維に転換され得るかどうかを検証した。意外にも、WT−264h又はS129A−264hとの反応はすべて、2×10
−2及び2×10
−4希釈で、RT−QUICアッセイにおいて否定的な結果をもたらした(
図5E)。従って、r−αSynの不溶性凝集体は、それらがSer129でリン酸化されていようがいまいがに関係なく、プリオン様のシーディング活性を有しなかった。
【0091】
α−シヌクレインのオリゴマー様形態は、プリオン様伝播を惹起する
WT r−αSynを用いたRT−QUICにより、ATP存在下(WT
CK2+ATP)でのCK2との反応において、その非存在下(WT
CK2)においてよりも蛍光強度の迅速な増加及び高いレベルの蛍光強度がもたらされたが、2条件(S129A
CK2及びS129A
CK2+ATP)の間でS129A r−αSynのThT結合動態に差は無かった(
図6A)。pSer129−αSynに対する抗体により、WT
CK2+ATPにのみ、16kDaにおける支配的なバンド及び>250kDaの分子量範囲における薄いバンドが検出された(
図6B)。これらの結果により、Ser129リン酸化によって、RT−QUICKにおいてr−αSynの線維形成が促進されることが示唆される。震盪なしで生成された不溶性凝集体とは異なり、
図5Aに示す通り、反応のすべてで、16kDaにおいて単量体αSynの支配的なバンドが示された。更に、250kDa超の重合体は、WT
CK2+ATP及びWT
CK2に辛うじて検出された。r−αSynの凝集サイズにおける、
図5Aとの差は、恐らく、線維の断片化を惹起し得る震盪に起因すると思われる。FTIR解析により、すべての反応間で、変性構造に帰属する1650cm
−1における支配的なバンドには殆ど差が無いことが示された(
図6C)。WT
CK2+ATP及びS129A
CK2+ATPのTEM解析により、r−αSynのオリゴマー様の顆粒状形態が明らかとなった(
図6D)。これらのオリゴマー様分子種がシーディング活性を示すかどうかを検証するために、我々はRT−QUIC試料の2代目継代を行った(
図6E及び6F)。2×10
−4及び2×10
−5希釈のWT
CK2+ATP、WT
CK2、及びS129A
CK2+ATPにより、すべての反応で100%陽性が示された。2×10
−6希釈では、WT
CK2+ATPについては6ウェルのうち5で、WT
CK2については6ウェルのうち2で、S129A
CK2+ATPについては6ウェルのうち5で、アッセイが陽性であった。2×10
−7希釈では、WT
CK2+ATP及びWT
CK2での反応ですべて陰性であったが、この濃度で、S129A
CK2+ATPでの6反応のうちの3で陽性であった。5×10
−8希釈では、これらの3試料でのすべてのウェルで陰性の結果が示された。リン酸化オリゴマー様分子種により10
4.9/μg r−αSyn(WT
CK2+ATP)のSD
50値がもたらされ、非リン酸化オリゴマー様分子種により、10
4.4/μg r−αSyn(WT
CK2)及び10
5.4/μg r−αSyn(S129A
CK2+ATP)のSD
50値が示された。対照的に、我々は、WT
CK2+ATPと同一成分を含有し、アッセイ直前に震盪せずに調製したモック試料(WT−mock)の2×10
−4〜2×10
−8の範囲の希釈での、あらゆる反応で蛍光の増加を観察しなかった。最大蛍光強度は、2×10
−5希釈でのWT
CK2+ATP及びWT
CK2との反応及び2×10
−4〜2×10
−6の範囲の希釈のS129A
CK2+ATPとの反応で、WT−mockと比較して有意に強かった(
図6F)。遅滞期は、2×10
−4〜2×10
−6の範囲の希釈のWT
CK2+ATP及びS129A
CK2+ATPとの反応並びに2×10
−4及び2×10
−5の範囲の希釈のWT
CK2との反応で、WT−mockと比較して有意に短かった(
図6F)。我々の結果により、r−αSynのオリゴマー様分子種により、Ser129でのリン酸化有り又は無しで、シーディング活性が表されることが示された。
【0092】
更に、2×10
−4及び2×10
−5希釈でのS129A
CK2+ATPとの反応の最大蛍光強度は、WT
CK2+ATPのそれよりも有意に強かった(
図6F)。その上、2×10
−5希釈のS129A
CK2+ATPとの反応の遅滞期は、WT
CK2+ATPのそれよりも有意に短かった(
図6F)。従って、S129A
CK2+ATPを含有するRT−QUIC反応液は、WT
CK2+ATP又はWT
CK2を含有するものよりも高いシーディング能を有することが示された。これらの差についての正確な理由はまだ知られていないが、WT r−αSynとS129A r−αSynとの間の構造の微妙な差が関連する可能性が高い。
【0093】
考察
本研究の結果により、r−αSyn線維の形成が、DLB患者由来のBHの存在下でのみ、可溶性r−αSynを用いたRT−QUICにより誘導されることが初めて証明された(
図3A及び3B)。DLB症例においてのみ検出される、250kDaよりも大きな、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)不溶性凝集体は、Ser129で特異的にリン酸化されており(
図2C)、従って我々は、pSer129−αSynの不溶性凝集体が、プリオン様のシーディング活性を付与すると仮定した。しかし、意外にも、βシート構造の増加を伴ったr−αSynの不溶性凝集体は、リン酸化状態及び非リン酸化状態で共にシーディング活性を殆ど有しなかった(
図5E)。その代わりに、r−αSynの前線維オリゴマーが、リン酸化有り又は無しで、共に、シーディング活性を発揮した(
図6E及び6F)。我々の知見により、可溶性オリゴマーであるが、完全に線維性でないαSynが、in vitroのシーディング分子種であることが示唆される。以前の研究により、r−αSynのオリゴマー分子種が、初代ニューロン又はニューロン細胞株によって内在化され、内生αSynの凝集を誘導することが示されている(Danzer et al.,2007;Danzer et al.,2009)。更に、オリゴマー形態のαSynがニューロン細胞死及び神経変性の原因であることを示唆する証拠が相当にある(Brown,2010;Vekrellis.,2011)。死後研究においては、DLB患者の脳における可溶性αSynオリゴマーのレベルが、AD患者及び対照よりも有意に高かった一方、該3群間において、全αSynレベルに有意差は無かった(Paleologou et al.,2009)。これらの報告により、成熟線維又は非晶質凝集体よりも、むしろ前線維αSynオリゴマーが、LBDにおける、プリオン用挙動を伴う病原性分子種に相当するという示唆が支持される。単量体アミロイドβ(Aβ)を用いた同様のアプローチにより、タンパク質ミスフォールディング環状増幅(PMCA)アッセイによって、AD患者由来のCSF中に存在するAβオリゴマーに関連するシーディング活性が検出され得ることが示された(Salvadores at al.,2014)。DN−DLB由来脳組織は、症例#1及び#2において、それぞれ、10
3.4/μg全αSyn及び10
3.1/μg全αSynのSD
50値を有しており、Li−LDBにおいては10
2.1/μg全αSynであった(
図3A及び3B)。その一方、RT−QUICによって生成されたWT r−αSynオリゴマーの値は10
4.4μg/r−αSyn〜10
4.9μg/r−αSynであった(
図6E及び6F)。RT−QUIC反応において、全てのr−αSynがオリゴマー形態で存在するかどうかは明らかではないが、もしそうなら、DN−DLB症例#1及び#2の脳において、それぞれ全αSynの3.2%〜10%及び1.6%〜5.0%が、Li−LDBの脳では0.2%〜0.5%がオリゴマーと見積もられる。不溶性LB凝集体の正確な役割は不明なままであるが、細胞保護的及び神経保護的な役割が、細胞株(Tanaka et al.,2004)及びショウジョウバエ(Chen and Feany, 2005)を用いた研究で報告されている。S129Aオリゴマーのシーディング活性は、リン酸化状態に関係なく、WTオリゴマーのそれよりも高く(
図6F)、ウェスタンブロット解析において、WTオリゴマーを含有する反応液中に少量の不溶性凝集体が検出されたが、S129Aオリゴマーを含有する反応液中ではそうではなかった(
図6B)。これらの結果により、不溶性凝集体によってαSynのプリオン様伝播からの防御がもたらされることが示唆される。Ser129リン酸化型と非リン酸化型との間でr−αSynオリゴマーのシーディング活性に顕著な差はなかったが、我々はr−αSynのリン酸化により、自己凝集が促進されることを見出した(
図5A及び6A)。このことは、以前の報告(Fujiwara et al.,2002)と整合する。以前の研究により、pSer129−αSynレベルの上昇は、LBD患者の脳におけるLBの出現に先行すること(Lue et al.,2012)、及びLBDの病理で観察される酸化ストレス、ミトコンドリア機能不全(Perfeito at al.,2014)、及びプロテアソーム阻害(Chau et al.,2009)によって誘導されることが示された。更に、pSer129−αSynは、神経機能不全に対する防御効果を有することが報告されている(Gorbatyuk et al.,2008;Kuwahara et al.,2012)。これらの結果により、pSer129−αSynは、神経機能不全に対する防御機構に起因することが示唆される。pSer129−αSynは、その後前線維オリゴマー及び成熟線維への自己凝集の開始を促進すると思われる。
【0094】
RT−QUICにより、DLBの、AD病及びプリオン病等の他の変性疾患並びに非変性症例からの鑑別が可能となったが、このことにより、r−αSynは、他のミスフォールドタンパク質、即ち、アミロイドβ、タウ及びPrP
Scの、異種交差シーディングを誘導する能力による影響をほぼ受けないことが示唆される。in vitro及びin vivoで、αSynと他のミスフォールドタンパク質との間の交差シーディング相互作用の報告(Morales et al.,2013)があるが、RT−QUIC反応に対する影響は殆ど無いように思える。DLBの、他の変性疾患からの鑑別で、RT−QUICを用いた特異的検出を、鑑別的な診断に応用する可能性が生じる。DN−DLB患者由来の脳は、SD
50値が10
7〜10/g脳であり、Li−DLB患者由来の脳はSD
50値がおおよそ10
5.1/g脳であると見積もられた。従って、RT−QUICは、ウェスタンブロット法又はELISAを用いたpSer129−αSynについての試験と比較して、DLBに対して検出感度が高く、より正確な脳の生検又は剖検の診断がもたらされることが示唆された。ELISA又はビーズベースのフローサイトメトリーアッセイを用いたいくつかの研究により、DLB及び他のシヌクレイノパチーの患者のCSF及び血液中の全αSynレベルが調査されたが、結果は結論が出ないもので、且つ矛盾している(Kasuga et al.,2012)。その一方、DLB及びPDのCSF及び血液では、可溶性αSynオリゴマーレベルが、AD及び対照のそれらと比較して上昇することが、ELISAで示された(Hansson et al.,2014;Tokuda et al., 2010)。これらの報告により、オリゴマー型のαSynが、LBD診断のための重要かつ有望な標的であるという示唆が支持され、LBD患者のCSF及び血液由来オリゴマーのシーディングによるRT−QUICの、診断の潜在力が示唆される。従って、αSynオリゴマーに特異的な既存のELISAと共にRT−QUICを用いることが、LBDの鑑別診断に特に有利だと考えられる。RT−QUICが、種々のタイプのLBD間の鑑別に役立つかどうか、及びこのアッセイが体液又は他の組織と共に用い得るかどうかを決定するためには、更なる研究が必要である。
【0095】
本研究において、我々は、αSynのシーディング分子種の候補を、実験室で検出するために、RT−QUICを用いることの実行可能性を証明した。我々のデータにより、オリゴマー型のαSynが、プリオン様伝播を惹起し、LBDの発症に重要な役割を果たす病原性分子種であるという示唆に、更なる支持がもたらされる。我々は、この新たな方法が、臨床診断、薬剤候補のスクリーニング、及び我々の、LBDにおけるプリオン様タンパク質としてのαSynの役割の理解の進展のための、確固たるツールになると考えている。
【0096】
追加実験
脳脊髄液サンプルによるα−シヌクレイノパチーと他の認知症等との鑑別
剖検により、レビー小体型認知症(DLB)及び弧発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)であることが確認されている患者の脳脊髄液サンプルを採取し、それぞれに対してα−シヌクレイノパチーのためのRT−QUICを行った(
図12)。尚、反応混合液には、300mM NaClを含めた。DLBについて5例(症例#1〜5)、CJDについて1例(症例CJD#1)の結果を、
図12に示す。剖検例(確実例)におけるDLB患者のサンプルのみで特異的にシグナルを検出した。CJD患者のサンプル及びシード無しのコントロール(PBS)では、シグナルを検出しなかった。
【0097】
鑑別診断補助検査(プリオン病vs DLB)
プリオン病(CJD)とDLBの診断が難しい症例において、採取した髄液に対する、RT−QUIC検査を行ったところ、シヌクレイン/QUIC法で陽性を示した(
図13;シード無しのコントロール(PBS)では、シグナルを検出せず、CJDのためのRT−QUIC検査(非特許文献18)では陰性であった)。本実験においては、反応混合液にNaClは含めなかった。その後の検査で、MIBG心筋シンチと脳血流シンチの結果からDLBと診断され、RT−QUIC法の結果と一致した。
【0098】
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