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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-92225(P2018-92225A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20180518BHJP
【FI】
   G06T19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-232662(P2016-232662)
(22)【出願日】2016年11月30日
(71)【出願人】
【識別番号】713005473
【氏名又は名称】株式会社カブク
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 昌彦
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050AA09
5B050BA12
5B050BA15
5B050BA18
5B050CA07
5B050CA08
5B050DA07
5B050EA03
5B050EA07
5B050EA12
5B050FA02
5B050FA12
(57)【要約】
【課題】ユーザ端末にモデリングデータを提供することなく、モデリングデータに基づく表示を当該ユーザ端末にて実現させる。
【解決手段】画像処理装置(100)は、物体の3次元形状を表すモデリングデータを取得する取得手段(120、130)と、前記モデリングデータに基づいて、一の方向からみた前記物体を表す2次元画像データを複数生成する生成手段(110)と、該生成された複数の2次元画像データを纏めて出力または該生成された複数の2次元画像データのうちユーザが選択した2次元画像を出力する出力手段(121)とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の3次元形状を表すモデリングデータを取得する取得手段と、
前記モデリングデータに基づいて、前記物体を表す2次元画像データを複数生成する生成手段と、
該生成された複数の2次元画像データの全部又は一部を同時にもしくは関連付けて出力し、または該生成された複数の2次元画像データのうちユーザが選択した2次元画像を出力する出力手段と
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記複数の2次元画像データは、前記物体から等距離にあって前記物体に対する方向が異なる位置を視点とする画像を表す、
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記物体に関する特徴量を取得する第2取得手段をさらに備え、
前記生成手段は、前記特徴量に基づいて、前記複数の2次元画像データのそれぞれについて前記方向を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記物体に関する特徴量を取得する第2取得手段をさらに備え、
前記生成手段は、前記特徴量に応じて前記複数の2次元画像データの解像度を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記特徴量は、前記生成手段にて生成された2次元画像データごとに算出される、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記物体の部位の指定をユーザから受付ける受付手段を更に備え、
該指定された部位が1以上の画像に現れるように、前記複数の2次元画像データのそれぞれについて前記方向を決定する、
ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
コンピュータに、
物体の3次元形状を表すモデリングデータを取得するステップと、
前記モデリングデータに基づいて、一の方向からみた前記物体を表す2次元画像データを複数生成するステップと、
該生成された複数の2次元画像データを纏めて出力または該生成された複数の2次元画像データのうちユーザが選択した2次元画像を出力するステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項8】
物体の3次元形状を表すモデリングデータを取得するステップと、
前記モデリングデータに基づいて、一の方向からみた前記物体を表す2次元画像データを複数生成するステップと、
該生成された複数の2次元画像データを纏めて出力または該生成された複数の2次元画像データのうちユーザが選択した2次元画像を出力するステップと
を有する画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元モデリングデータに基づく画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
3DCADやレーザスキャン等によって仮想物体または現実物体の3次元形状を表すモデリングデータを生成する技術がある(いわゆるモデリング)。生成されたモデリングデータと視点の情報や光源の情報等に基づいて描画処理(いわゆる3Dレンダリング)を行うことで、様々な視点からみた当該物体の画像を画面に表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−170488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、モデリングデータのサイズは大きく、表示処理の際に複雑な演算を必要とする。コンテンツサーバから取得したモデリングデータを用いてユーザ端末にて描画処理を行う場合、モデリングデータをコンテンツサーバからダウンロードするのに時間がかかるうえに、ユーザ端末における処理負担が大きい。加えて、端末にレンダリング処理を行うアプリがインストールされている必要がある。加えて、悪意のあるユーザによって、モデリングデータが許可なく複製されて配布されるリスクも発生する。
本発明は、ユーザ端末にモデリングデータを提供することなく、3Dデータに基づく表示を当該ユーザ端末にて実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一の態様において、物体の3次元形状を表すモデリングデータを取得する取得手段と、前記モデリングデータに基づいて、一の方向からみた前記物体を表す2次元画像データを複数生成する生成手段と、該生成された複数の2次元画像データを纏めて出力しまたは該生成された複数の2次元画像データのうちユーザが選択した2次元画像を出力する出力手段とを有する画像処理装置を提供する。
【0006】
本発明によれば、ユーザ端末にモデリングデータを引き渡すことなく、当該ユーザ端末にて当該モデリングデータに基づく表示が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】画像処理システム10の概要図。
図2】画像処理サーバ100の機能図。
図3】特徴量の算出を説明するための図。
図4】ユーザ端末200の機能図。
図5】3Dデータから2Dデータを生成する処理を説明するための概念図。
図6】1つの3Dデータから生成される2Dデータセットの構造の例。
図7】画像処理システム10の動作例。
図8】ユーザ端末200の画面に表示されるダウンロードサイトの例。
図9】ユーザ端末200にて画像表示アプリを実行した時に表示される画面例(その1)。
図10】ユーザ端末200にて画像表示アプリを実行した時に表示される画面例(その2)。
図11】ユーザ端末200にて画像表示アプリを実行した時に表示される画面例(その3)。
図12】ユーザ端末200にて画像表示アプリを実行した時に表示される画面例(その4)。
図13】ユーザ端末200にて画像表示アプリを実行した時に表示される画面例(その5)。
図14】画像処理システム10の動作の他の例。
図15】ユーザ端末200にて画像表示アプリを実行した時に表示される画面例(その6)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施例>
図1は画像処理システム10の概要を示す。画像処理システム10は、画像処理サーバ100とユーザ端末200とを含む。画像処理サーバ100は例えば物体コンテンツの公開およびユーザ端末200への提供を行う事業者によって管理されるサーバである。ユーザ端末200は例えば汎用のパーソナルコンピュータである。300は例えばインターネットや専用線である。画像処理サーバ100およびユーザ端末200は、300を介して接続される。
【0009】
図2は画像処理サーバ100の機能を表す。画像処理サーバ100は、制御部110と、通信部120と、記憶部130と、表示部140と、150含む。通信部120は、所定の通信規格に従って、ユーザ端末200との間でデータを送受信するための通信インタフェースとして実装され、送信部121と受信部122とを含む。
【0010】
受信部122は、物体の3次元形状を表すモデリングデータ(以下、「3Dデータ」という)を取得する。3Dデータとは、現実の物体または仮想の物体の3次元形状を示すデータであって、例えば、STL、OBJ、PLY、OFF、3DS、COLLADA、PTX、V3D、PTS、APTS、XYZ、GTS、TRI、ASC、X3D、X3DV、VRML、ALN、DXF、GTS、U3D、IDTF、X3D等の形式のデータである。3Dデータは、3DCGソフトや3DCADソフト等で作成し仮想的な物体を表すデータであってもよいし、現実の物体を3Dスキャニングして得られたデータであってもよい。また、3Dデータ共有サイト等から入手したデータであってもよいし、その生成方法や取得方法は問わない。
【0011】
取得した3Dデータは記憶部130に記憶され、ユーザ端末200から受付けた要求に応じて読み出される。この要求には、少なくとも表示対象の物体を指定する情報が含まれ、加えて、当該物体の方向(視点)に関する情報が含まれてもよい。方向は、例えば、物体が置かれた仮想空間上のある点を原点とする3次元空間上の位置(直交座標や極座標)として表わされる。あるいは、方向は、正面、背面、右側面、左側面という方向の範囲として定義されてもよい。
【0012】
この要求には、さらに、当該物体の1以上の部位の指定が含まれてもよい。例えば、物体が人形であり、「顔」、「目」、「胴体」といった物体の一部分を指定する情報が含まれる。要するに、物体が占める3次元空間の一部の領域(座標の集合)である。
【0013】
送信部121は、データ生成部112にて生成された一の3Dデータに対応する複数の2次元画像データ(以下、2Dデータという)を出力する。2Dデータは、例えば、JPEG、BMP、PDF、TIF等の形式を有する。複数の2Dデータは、全部または一部を同時に出力してもよいし、ユーザから受けた要求に応じて一つずつ出力してもよい。また、複数の2Dデータは、特定の物体に関するデータであるものとして全部または一部を関連付けて送信されるものであれば、出力タイミングは異なってもよい。
【0014】
記憶部130は、ハードディスク、半導体メモリ、その等の記憶装置であって、制御部110にて実行されるプログラムおよび当該プログラムによって読み出される3Dデータを記憶する。
【0015】
表示部140はキーボード、タッチパネル、マウス、スタイラス等の画像処理サーバ100の管理者によって操作される入力デバイスである。150は管理者に画像処理サーバ100の動作状況等情報等を提示するための液晶ディスプレイ等の表示装置である。
【0016】
画像処理サーバ100は、1以上の、汎用のプロセッサ(CPU等)および/または描画処理プロセッサ(GPU)等の専用プロセッサとして実装され、特徴決定部111と、データ生成部112と、視点設定部113とを含む。
【0017】
特徴決定部111は、3Dデータが表す物体に関する特徴量を取得してデータ生成部112または視点設定部113に出力する。
物体に関する特徴量は、特徴決定部111が、記憶部130から取得した3Dデータに基づいて、各方向についての特徴量を算出し、データ生成部112にて生成された2Dデータの方向に対応する特徴量を、視点設定部113にて生成された各2Dデータに付与してもよい。
あるいは、物体に関する特徴量は、データ生成部112にて生成された2Dデータに基づいて特徴決定部111が算出してもよい。2Dデータに基づいて算出する具体的方法としては、視点設定部113が、所定のアルゴリズムに従って、物体の構造的特徴および色彩(模様)的特徴の少なくともいずれかに基づいて決定する。その他の構造的特徴は、例えば物体表面のテクスチャ(凹凸の程度)や頂点や面の数によって定義される。色彩または模様に関する特徴は、例えば、使用されている色の多様性(バリエーション)として定義される。
【0018】
図3は特徴量を説明するための図である。人形900は、3Dデータによって表される物体の一例である。
(a)は人形900を正面からみた画像、人形900を水平面内(紙面左右方向)で45°回転させた画像(視点が水平面面内で45°回転した位置にある画像)、90°回転させた画像、135°回転させた画像、180°回転させた画像を示す。
【0019】
同図(b)および(c)は、各角度に対応して計算された特徴量を表すパラメータの例を示す。(b)は2Dデータとしてθ=0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°の2Dデータが生成された場合においてそれぞれ角度に応じて算出された特徴量を示す。この例では、正面側のほうが背面側よりも構造的に複雑であり、正面からみた画像が相対的に大きい特徴量を有すると判定されている。図(c)は、3Dデータから直接、特徴量をθの関数として算出した例である。
【0020】
物体に関する特徴量は、3Dデータや2Dデータとは別途独立に、取得されてもよい。例えば、正面側(−45°〜−45°)の範囲の視点の画像は重付けパラメータを+Δw1、背面側(135°〜225°)を―Δw1、両側面側を0と定義する。この特徴量は、ユーザがユーザ端末200に入力し、画像処理サーバ100に送信されてもよい。例えば、人形900の顔が向いている方向が「正面」であると定義され、データ生成部112にて生成された2Dデータで表わされる画像に対して画像解析を行って顔が映っているか否かを判定し、顔が映っている画像は顔が映っていない画像に比べて大きな特徴量を付与してもよい。
【0021】
上述の例では、説明の便宜上、特徴量は1つの回転方向について算出したが、2つの角度パラメータθおよびφで表わされる任意の方向に対応する特徴量を算出することができる。例えば、紙面上下方向の向き(φ方向)に依存する特徴量についても、3Dデータや2Dデータから計算してもよいし、3Dデータや2Dデータとは別途独立に取得してもよい。例えば、同図(a)に示す人形の場合は、一般的に、真上(θ=0°、φ=90°)や真下(θ=0°、φ=―90°)から見た画像を表す2Dデータの特徴量は、正面(θ=0°、φ=0°)からみた画像を表す2Dデータの特徴量よりも小さくなる。
【0022】
視点設定部113は、生成すべき2Dデータが人形900をどの方向からみたものであるべきかを決定する。換言すると、視点設定部113は、人形900を仮想的に撮影する方向または当該撮影の視点を決定する。
決定された方向を表す情報はデータ生成部112に出力される。例えば、視点設定部113は特徴決定部111から供給される特徴量に基づいて方向を決定してもよい。また、画像処理サーバ100がユーザ端末200から人形900の部位の指定を受付けた場合、視点設定部113は、該指定された部位が1以上の画像に必ず現れるように、上記方向を決定してもよい。
あるいは、特徴量は画像処理サーバ100以外の装置で決定され、画像処理サーバ100に供給されてもよい。
【0023】
データ生成部112は、1つの3Dデータに基づいて、各々、一の方向からみた人形900を表す2Dデータを複数生成する。具体的には、所定のレンダリングアルゴリズムに従って、必要に応じて光源等のパラメータを設定して、視点設定部113から供給された視点の情報に基づいてレンダリング処理を行う。
レンダリング処理に際しては、特徴決定部111から供給された特徴量を用いてもよい。特徴量が2Dデータに基づいて生成される場合、まずデータ生成部112にて生成された2Dデータを特徴決定部111に出力し、特徴決定部111にて生成された特徴量を取得してもよい。
データ生成部112は、特徴量に応じて、生成された複数の2Dデータに含まれる1以上の2Dデータの解像度を決定してもよい。特徴に基づく解像度の設定の一例としては、特徴量が小さい2Dデータほど解像度を下げる処理を行う。このように相対的に特徴量が小さい画像(換言すると、その角度からみた物体には特徴があまりない、あるいはユーザにとっての重要性ないし関心度が低いと推定される視点からの画像)については、解像度を相対的に落とすことにより、複数の2Dデータセットに基づいて描画処理を行った場合にユーザに与える違和感の低下を抑えつつ、2Dデータ全体のデータ量を小さくすることができる。解像度は、例えば縦横のピクセル数によって規定される。
生成された2Dデータは、記憶部130または通信部120に供給される。
【0024】
図4はユーザ端末200の機能図である。ユーザ端末200は、通信部210と、入力部220と、表示部230と、記憶部240と、画像処理部250とを含む。
【0025】
記憶部240は、ハードディスク、半導体メモリその等の記憶装置であって、画像処理部250にて実行されるプログラムおよび画像処理サーバ100から取得した2Dデータを記憶する。
【0026】
入力部220は、キーボード、タッチパネル、マウス等のユーザ端末200のユーザ(以下、単にユーザという)によって操作される入力デバイスであって、ユーザからの指示を受付ける。この指示には、表示すべき人形900の方向が含まれる。また、この指示には、画像処理サーバ100にて2Dデータを生成する際に用いられる情報が含まれていてもよい。
【0027】
通信部210は所定の通信規格に従って、ユーザ端末200との間でデータを送受信するための通信インタフェースとして実装される。具体的には、入力部220にて入力された、表示部230に表示するために必要な、表示対象の指定および表示対象の方向の指定を含む要求を画像処理サーバ100に送信し、該要求に応じて画像処理サーバ100から送信された2Dデータを受信して画像処理部250に供給する。
【0028】
画像処理部250は、1以上の、汎用のプロセッサ(CPU等)および/または描画処理プロセッサ(GPU)等の専用プロセッサとして実装され、画像処理サーバ100から受信した2Dデータおよび入力部220にて指示された向きに基づいて描画処理を行う。具体的には、記憶部240に記憶されている、1つの3Dデータに対応する複数の2Dデータのうち、入力部220にて指定された方向に対応する1または複数の2Dデータを特定し、必要なエンコード等の画像処理等を行って、描画命令とともに画像処理部250に出力する。
【0029】
表示部230は液晶ディスプレイ等の表示装置であって、画像処理部250からの指令の下、画像を表示する。
【0030】
図5は、3Dデータから2Dデータを生成する処理を説明するための概念図である。人形900は、原点をPとする3次元(XYZ)仮想空間上に配置される。人形900の中心を貫く中心軸CLを設定する。
画像処理サーバ100は、仮想空間に設定された複数の視点からみた人形900の2次元画像を生成する。換言すると、仮想空間に設置された仮想的なカメラ(視点に相当;以下、単にカメラという)にて人形900を「撮影」することに相当する。同図において、A〜Nはカメラを表している。θはXY平面内の角度、φはXZ平面内の角度である。L1〜L5は、カメラが配置される位置を規定し、φが異なるXY平面である。換言すると、φはカメラの高さ(上下方向の角度)、θはカメラの平面内の角度を表す。なお、人形900の顔が向いている方向(θ=0°)が「正面」であると定義されていると仮定する。なお、正面など、人形900の基準となる方向は、3Dデータの特徴量に基づいて決定されてもよいし、別途画像処理サーバ100やユーザ端末200が指定してもよい。この例では、全てのカメラはPから等距離に配置される。
つまり、生成される複数の2Dデータは、人形900から等距離にあって前記物体に対する方向が異なる位置を視点とする画像を表す。
【0031】
同図の通り、カメラは、L3にはA〜Hまでの計6個が配置され、L2には人形900の上方やや斜めの位置にIおよびJが配置され、L1には人形900の頭上付近にKが配置され、L4においては、下方やや斜めの位置に配置され、LおよびMが配置され、L5において足元付近にNが配置された例を示す。この結果、1つの3Dデータにおいて視点位置をA〜Nに設定して得られる2Dデータが計14個生成される。
同図に示すように、この例では、人形900の正面に重点的にカメラが配置されている。より具体的には、θ=−90、φ=0に近い位置においてはカメラが密に配置され、離れた位置(上方、下方、側面、背面)には疎に配置されている。これは、特徴決定部111において特徴量が正面側からみた画像が相対的に大きいと算出され、視点設定部113にて特徴量に基づいてカメラ位置が決定されたためである。
【0032】
なお、図5に示す配置は一例に過ぎない。カメラの配置は、物体(3Dデータ)の特徴、ユーザの好み、生成される2Dデータのデータサイズについての制約などの通信環境、画像処理サーバ100に許容される処理負荷に関する条件など、ハードウェアリソースおよびソフトウェアリソースの少なくともいずれかに関する条件に応じて決定することができる。
【0033】
カメラの数に関し、例えば、カメラの数が少ないほど生成される2Dデータ全体のデータ量は小さくなる一方、ユーザが選択できる視点が少なくなるので、3Dデータの再現性は低下するといえる。逆に、カメラの数が増えるほど、ユーザ端末200のユーザに2Dデータセットに基づいて、補間処理を行うなどして元の3Dデータ(に近似するデータ)を生成されてしまうというリスクが高まる。
【0034】
カメラの位置に関し、物体の特徴部分は、物体によって異なるし、ユーザがどこに着目しているかなどユーザの主観に依存し得る。例えば、物体に「正面」が観念できたとしても、正面から画像が最も重要であるとは限らない。また、物体の全体像をさまざまな方向から万遍なく確認したいという場合もありうる。このような場合は、視点設定部113は、特徴量を用いることなく、カメラの配置を決定してもよい。一例としては、各レイヤに配置される数を同一に設定する。そして、同一レイヤ上のカメラの間隔が等しくなるように設定する。例えば、レイヤに30個、配置する場合は、θが12°ずつずれた位置に配置され、計150枚分の2Dデータが生成される。
【0035】
また、各カメラが全て基準点から等距離ある必要もない。例えば、物体表面からの距離がほぼ等距離になるようにカメラ位置を決定してもよい。原点Pの設定の仕方も図5に示した態様に限らない。Pは人形900が占める空間の外に設定されてもよい。
なお、カメラは同一の性能である必要はない。例えば、画角やフォーカスが異なる複数のカメラを配置してもよい。
要するに、1つの3Dデータに基づいて各々一の視点に対応する2Dデータが複数個生成されればよい。
【0036】
図6は、1つの3Dデータから生成されるデータDのデータ構造の一例を示す。(a)はデータの全体構造を示す。データDは、ヘッダ部Dhおよび複数の2Dデータからなる画像データ本体Dmによって構成される。ヘッダ部Dhは、生成元の3Dデータを識別するための識別子と、このデータの構造を定義する情報を含む。この情報は、画像データ本体Dmに含まれる複数の2次元画像ファイルと複数の視点との関係を規定する。
(b)は画像データ本体Dmの詳細を示す。この例では、視点設定部113にて、5つのレイヤが設定され、レイヤごとに30枚(12°ごと)にカメラを配置された場合を示す。Dmには、IM1−1〜IM5−30の計150枚分の画像データが含まれ、これが、ヘッダ部Dhに規定された順番(この例ではレイヤごとにまとまて)にて配列されている。
【0037】
なお、生成される2Dデータは、図6に示すように全体として1つのファイルとして認識される形式でもよいし、個別の画像ファイルの集合として認識される形式でもよい。要するに、ユーザ端末200において扱われた場合に、それぞれ元の1つの3Dに基づいて生成されたということが認識されるような形式であればよい。後者の場合、例えば、各2Dデータは、元の3Dデータの識別情報と視点を示す情報とをヘッダに含む、1つの独立した画像ファイルとして生成される。
【0038】
図7は画像処理システム10の動作の一例である。ユーザ端末200は、ウェブブラウザ等を起動し、画像処理サーバ100が適用するウェブサイトにアクセスし、コンテンツを画像処理サーバ100の画面上に表示する(S102)。図8は、ユーザ端末200にて画像表示アプリを実行した時に表示される画面W2の例である。3Dデータで表わされる物体の代表となる2D画像(図では正面からみた画像)がサムネイル表示される。
ユーザは、閲覧したい画像を指定する(S104)と、当該画像の識別情報を含む要求が画像処理サーバ100に送信される(S106)。
【0039】
画像処理サーバ100は、指定された物体の3Dデータを取得し(S108)、当該3Dデータに基づいて2Dデータセットを生成する(S110)。生成された2Dデータセットは互いに関連付けられてユーザ端末200に送信され(S112)、表示部230に記憶される。
【0040】
ユーザ端末200において、自動的にまたはユーザの指示により、描画アプリケーションが起動されると、2Dデータセットが読み込まれ、図9に示すような画面W3が表示される。ここでは2Dデータセットのうち代表となる方向(ここでは正面)に対応する一の2Dデータがデフォルトとして選択され、その画像が表示される。加えて、この画面W3にはユーザがみたい方向を指定することを促すメッセージが表示される。
【0041】
ユーザが方向(例えば水平面内の45°回転した位置)を指定すると(S114)、画像処理部250は指定された方向に対応する1つの2Dデータを読み出して表示する(S116)。この結果、例えばW4のような画面が表示される。なお、ユーザが指定した方向(例えば14°回転した方向)に相当する2Dデータが存在しない場合は、そのような指定を無視するか、あるいは指定した方向に最も近い方向の2Dデータが抽出される。例えば、この状態から更に連続的に同一方向に45回転すること指示を受付けると、順にW5、W6、W7に示すような画面が連続して表示され、あたかも人形900を回転させたごとくユーザには感じられる。
【0042】
このように、上記実施例によれば、ユーザはあたかもユーザ端末200が保有する3Dデータに基づいて演算した結果が表示されているような感覚を与えることができる。しかし、実際には、ユーザ端末200には3Dデータ自体は提供されないので、3Dデータが複製されるリスクが低減する。また、元の3Dデータに比べてやり取りされるデータの量が小さいので、画像処理サーバ100とユーザ端末200との間のレスポンスが向上する。加えて、端末にレンダリング機能を有するアプリケーションをインストールしておく必要もない。
【0043】
<その他の実施例>
2Dデータの提供方法は、図7に示した態様に限られない。図13は、画像処理システム10の動作の他の例である。図7と同一の符号は同一の動作内容を示す。この例において図7の動作と異なるのは、ユーザ端末200が2Dデータセットを一括して受信するのではなく、必要に応じて受信する点である。すなわち、ユーザは表示対象を指定する際に、1つの方向を更に指定する(S103)。具体的には、描画アプリケーションは、W3のように、ある3Dデータに関連付けられた1つの2Dデータを表示中に、ユーザから新たな方向の指定を受付けると、当該3Dデータの識別情報に加えて、当該方向を表す情報を画像処理サーバ100に送信する(S106)。
【0044】
画像処理サーバ100では、当該3Dデータが記憶部130に記憶されていれば読み出し、記憶されていなければ新たに取得する(S108)。
続いて画像処理サーバ100は、指定された方向に対応する1つの2Dデータを抽出する(S120)。そのようなデータが記憶部130に既に記憶されている場合は読み出す。具体的には、当該3Dデータに関連する2Dデータとして指定された方向と同一の方向からみた2Dデータが既に存在すればそのデータが読み出される。同一の角度のデータが存在しない場合は、最も近い角度の2Dデータが読み出される。あるいは、制御部110は新たに指定された方向からみた2Dデータを新たに生成してもよい。
抽出または生成された1つの2Dデータはユーザ端末200に送信される(S122)。画像処理サーバ100にて描画表示アプリケーションは、受信した2Dデータに基づいて描画処理を実行する。ユーザ指定した方向に応じた画像が表示される(S116)点は上述の実施例と同様である。
【0045】
例えば、図7のように複数の角度に対応する複数の2Dデータを一度に受信した場合は、図15に示す画面W8のように、一画面に複数の画像を表示してもよい。この場合、一画面に表示されるのは取得した2Dデータのうちの一部であってもよい。図15の場合は、取得した150個の2Dデータのうち(θ:0°〜180°、φ=0)にある5つのデータのみを一度に表示している。すなわち、ユーザが表示を指定する方向は1つの方向に限らず、複数の方向または方向の範囲であってもよい。この指定方法は、図13に示す態様においても適用できる。
【0046】
視点設定部113は、同一方向に2以上のカメラを配置してもよい。具体的には、ユーザは方向に加えて物体から視点までの距離を指定し、画像処理サーバ100は指定された方向および距離(拡大/縮小率)に応じて2Dデータをユーザ端末200に提供する。この結果、回転操作に加えてズーム操作を行っているような感覚をユーザに与えることができる。
【0047】
要するに、本発明のシステムにおいては、物体の3次元形状を表すモデリングデータを取得するステップと、前記モデリングデータに基づいて、一の方向からみた前記物体を表す2次元画像データを複数生成するステップと、複数の2次元画像データの少なくとも一部を出力するステップが実行されればよい。ここで、出力対象となる複数の2次元画像データは、ユーザによって指定されたものであってもよいし、ユーザの指定とは関係なく同時に出力されてもよいし、互いに関連付けられて出力されてもよい。要するに、複数の2次元画像データが全て元の一つのモデリングデータに基づいて生成されたものであることが受信端末にて把握できるような態様で、出力されればよい。
【符号の説明】
【0048】
100・・・画像処理サーバ、200・・・ユーザ端末、110・・・制御部、111・・・特徴決定部、112・・・データ生成部、113・・・視点設定部、130・・・記憶部、140・・・表示部、120・・・通信部、121・・・送信部、122・・・受信部、230・・・表示部、210・・・通信部、220・・・入力部、240・・・記憶部、250・・・画像処理部
図1
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