【解決手段】白色顔料を含有する水性の白色インクを着色された布帛にインクジェット法により付与して印刷する捺染印刷方法である。布帛を表面処理剤で前処理することなく加熱し、50℃以上に加熱した布帛に、白色インクを、総吐出量が2.4×10
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の捺染印刷方法は、白色顔料を含有する水性の白色インクを着色された布帛にインクジェット法により付与して印刷する方法である。そして、布帛を表面処理剤で前処理することなく加熱し、加熱した布帛に白色インクを複数回に分けて付与する工程を有する。以下、その詳細について説明する。
【0010】
(白色インクの付与工程)
本発明の捺染印刷方法は、着色された布帛を表面処理剤で前処理することなく加熱し、加熱した布帛に白色インクを複数回に分けて付与する工程(白色インクの付与工程)を有する。布帛は、例えば、面ヒーター等の加熱機器の加熱面上に載置し、印刷面(白色インクの付与面)の反対側の面から加熱することができる。布帛は50℃以上、好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上に加熱する。布帛の加熱温度が低すぎると、布帛に付与された白色インクが速やかに乾燥せず、隠蔽性、洗濯堅牢度、及び摩擦堅牢度に優れた白色の捺染物を得ることができない。一方、布帛の加熱温度は100℃以下とすることが好ましい。布帛の加熱温度が高すぎると、布帛に悪影響を及ぼす可能性があるとともに、白色インクを吐出する記録ヘッドに熱が伝わりやすくなり、記録ヘッドが目詰まりを起こしやすくなる場合がある。なお、布帛の加熱温度は50℃以上であれば、布帛の種類(素材)等に応じて適宜設定することができる。
【0011】
付与工程では、総吐出量が2.4×10
-2g/cm
2以上、好ましくは2.5×10
-2g/cm
2以上、及び1回当たりの吐出量が8.0×10
-3g/cm
2以下、好ましくは7.0×10
-3g/cm
2以下となるように、白色インクを布帛に付与する。また、印刷回数を4回以上に分けて白色インクを布帛に付与する。すなわち、1回の吐出により布帛に付与するインクの量を減少させてインクの盛りを薄くし、複数回に分けて布帛に付与することで、白色インクに熱が伝わりやすく、乾燥速度が速まって布帛へのインクの浸透を抑制することができる。白色インクを分割して付与する回数が少なすぎると、布帛に付与された白色インクが速やかに乾燥せず、隠蔽性、洗濯堅牢度、及び摩擦堅牢度に優れた白色の捺染物を得ることができない。一方、白色インクを分割して付与する回数は、10回以下とすることが好ましい。白色インクを分割して付与する回数が多すぎると、操作が煩雑になる場合がある。なお、白色インクを分割して付与する回数は4回以上であれば、布帛の種類(素材)等に応じて適宜設定することができる。
【0012】
被印刷物となる布帛としては、綿、絹、羊毛、麻、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の任意の天然繊維又は合成繊維からなる布帛を用いることができる。また、布帛だけでなく、人工皮革や天然皮革等を被印刷物として用いることもできる。
【0013】
(後処理工程)
本発明の捺染印刷方法は、付与された白色インクを布帛に密着させる後処理工程をさらに有することが好ましい。後処理工程では、例えば、ヒートプレス機などの布帛を加熱及び加圧することが可能な装置を使用する。加熱する温度は、布帛にダメージを与えることなく、かつ、布帛を着色している染料等の色材が転写しない範囲内で高く設定することが好ましい。具体的には、120〜200℃で加熱すればよい。また、加熱する時間は、品質と作業性の観点から適宜設定すればよく、例えば1〜3分程度とすればよい。
【0014】
(着色インクの付与工程)
本発明の捺染印刷方法は、さらに、白色インクが付与された布帛に着色インクをさらに付与する工程を有することが好ましい。着色インクを布帛へ付与する方法は特に限定されない。例えば、通常のインクジェット法によって吐出して付与することができるが、白色インクの場合と同様に複数回に分割して付与することにより、より再現性に優れた捺染物を得ることができる。
【0015】
(白色インク)
本発明の捺染印刷方法で用いる白色インクは、白色顔料を含有する水性のインクである。白色インクは、白色顔料の他、例えば、水、水溶性有機溶剤、白色顔料をインク中に分散させる分散剤(顔料分散剤)、バインダー樹脂などを含有する。
【0016】
[白色顔料]
白色顔料としては、白色無機顔料及び白色有機顔料のいずれも用いることができる。白色無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウムなどを挙げることができる。白色有機顔料としては、白色の中空樹脂粒子及び白色の高分子粒子などを挙げることができる。
【0017】
白色顔料のカラーインデックス(C.I.)としては、例えば、C.I.Pigment White 1(塩基性炭酸鉛)、4(酸化亜鉛)、5(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、6(酸化チタン)、6:1(他の金属酸化物を含有する酸化チタン)、7(硫化亜鉛)、18(炭酸カルシウム)、19(クレー)、20(雲母チタン)、21(硫酸バリウム)、22(天然硫酸バリウム)、23(グロスホワイト)、24(アルミナホワイト)、25(石膏)、26(酸化マグネシウム・酸化ケイ素)、27(シリカ)、28(無水ケイ酸カルシウム)などを挙げることができる。なかでも、表面処理された酸化チタンが、発色性及び隠蔽性に優れているとともに、良好な分散性を示すために好ましく、シリカやアルミナで表面処理された酸化チタンがさらに好ましい。
【0018】
また、酸化チタンのなかでも、白色顔料として一般的なルチル型酸化チタンが好ましい。ルチル型酸化チタンの市販品としては、以下商品名で、Tipaque(登録商標)R−580、R−670、R−780、R−850、R−855、CR−60(以上、石原産業社製);JR−301、JR−403、JR−405、JR−804、JR−806、JR−600A、JR−800等(以上、テイカ社製)などを挙げることができる。
【0019】
白色インク中の白色顔料の含有量は、14〜24質量%であることが好ましく、16〜20質量%であることがさらに好ましい。白色顔料の含有量が上記の範囲内である白色インクを用いることで、インクの付与量(盛り)をより少なくすることが可能となり、さらに乾燥しやすくすることができる。なお、白色顔料の含有量が少なすぎる白色インクを用いると、白色度及び隠蔽性が低下する場合がある。一方、白色顔料の含有量が多すぎると、記録ヘッドからの白色インクの吐出性が低下する場合がある。
【0020】
[水溶性有機溶剤]
水溶性有機溶剤としては、室温(25℃)で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を用いることができる。水溶性有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどの炭素原子数2〜6のアルキレン基を含むアルキレングリコール類;グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどを挙げることができる。
【0021】
これらの水溶性有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。乾燥性及び保湿効果の観点から、インク中の水溶性有機溶剤の含有量は、5〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0022】
[水]
インク中の水の含有量は、粘度調整の観点から、20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
[顔料分散剤]
顔料分散剤としては、インクジェットインク用の従来公知の顔料分散剤を用いることができる。顔料分散剤は、界面活性剤などの低分子量の分散剤であってもよく、ポリマー型の分散剤(いわゆる高分子分散剤)であってもよい。高分子分散剤としては、アクリル系、スチレン系、メタクリル系、エステル系、アミド系、ポリエーテル系などの、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、グラジエントコポリマー、星形ポリマー、デンドリマーなどの高次構造を有するポリマーを用いることができる。なかでも、疎水性のポリマーブロックと、メタクリレート系モノマー(例えば、メタクリル酸)などのモノマーで構成された親水性のポリマーブロックとを有するブロックコポリマーが好ましく、A−B型のブロックコポリマーがさらに好ましい。A−B型のブロックコポリマーは、バインダー樹脂と相溶するので、白色インクの分散性や保存安定性を高めることができる。インク中の顔料分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して、5〜100質量部とすることが好ましく、10〜60質量部とすることがさらに好ましい。
【0024】
[バインダー樹脂]
バインダー樹脂としては、インクジェットインク用の従来公知のバインダー樹脂を用いることができる。バインダー樹脂を含有する白色インクを用いることで、白色インクを布帛に強く固着することができる。バインダー樹脂としては、アクリル系、スチレン系、メタクリル系、エステル系、アミド系、ポリエーテル系などの、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、グラジエントコポリマー、星形ポリマー、デンドリマーなどを用いることができる。インク中のバインダー樹脂の含有量は、2〜30質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0025】
[アルカリ成分]
白色インクは、通常、顔料分散剤(高分子分散剤)の酸性基を中和して水に溶解させるべく、又はインクのpHを調整すべく、アルカリ成分を含有する。アルカリ成分としては、例えば、アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等の脂肪族第1〜3級アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルイソプロピルアミン等のアルコールアミン;ピペリジン、モルホリン、N−メチルモルホリン等の複素環式アミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物などを挙げることができる。インク中のアルカリ成分の含有量は、高分子分散剤の酸性基の一部又は全部を中和しうる量とすることが好ましい。また、白色インクのpHは、7.0〜10.0であることが好ましく、7.5〜9.5であることがさらに好ましい。白色インクのpHが7.0未満であると、顔料分散剤が析出しやすくなるとともに、顔料が凝集する場合がある。一方、白色インクのpHが10.0超であると、強アルカリ性になるために取扱いが困難になる場合がある。
【0026】
[その他の成分]
白色インクには、例えば、湿潤剤(保湿剤)、表面張力調整剤(界面活性剤)、消泡剤、定着剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等を適宜含有させることができる。湿潤剤としては、多価アルコール類を使用することができる。表面張力調整剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤などの界面活性剤を用いることができる。
【0027】
界面活性剤を配合することで、白色インクをインクジェット方式の記録ヘッドからより安定して吐出させることができるとともに、布帛への白色インクの浸透をさらに適切に制御することができる。インク中の界面活性剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましい。界面活性剤の含有量が多すぎると、白色インクの表面張力が低下しすぎることがある。このため、布帛への白色インクの浸透速度が速くなりすぎる傾向にあり、隠蔽性や発色性が不足する場合がある。
【0028】
白色インクの表面張力は、15〜45mN/mであることが好ましく、20〜40mN/mであることがさらに好ましい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、通常、インクの発泡、フィルム表面でのインクのはじき、及び顔料の凝集などの要因となることがある。このため、インクへの界面活性剤の添加量は少なく抑えることが好ましい。フッ素系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べて僅かな添加量でインクの表面張力を下げることができるので、添加量を少なく抑えることが可能である。フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル系の界面活性剤、パーフルオロアルケニル系のフッ素系界面活性剤などがある。なかでも、パーフルオロアルキル系の界面活性剤が好ましい。
【0029】
インク中のフッ素系界面活性剤の含有量は、質量基準で、10〜10,000ppmであることが好ましく、20〜5,000ppmであることがさらに好ましい。フッ素系界面活性剤の含有量が10ppm未満であると、インクの表面張力を十分に下げることが困難になる場合がある。一方、フッ素系界面活性剤の含有量が10,000ppm超であると、インクの表面張力が下がりすぎる場合があるとともに、インクが発泡しやすくなることがある。
【0030】
白色インクには、粘度やpHを調整するために電解質を含有させることができる。電解質としては、例えば、硫酸ナトリウム、リン酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸カリウム、ホウ酸ナトリウムなどを挙げることができる。また、硫酸、硝酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミンなどを、インクの増粘助剤やpH調整剤として用いることができる。
【0031】
酸化防止剤を白色インクに添加することで、インク中の各成分の酸化を防止し、インクの保存安定性を向上させることができる。酸化防止剤としては、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0032】
白色インクには、腐敗を防止して保存安定性を向上させるために防腐剤を含有させることができる。防腐剤としては、例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾロン系防腐剤;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン等のトリアジン系防腐剤;2−ピリジンチオールナトリウム−1−オキシド、8−オキシキノリン等のピリジン・キノリン系防腐剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム等のジチオカルバメート系防腐剤;2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン等の有機臭素系防腐剤;p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、サリチル酸などを挙げることができる。
【0033】
(白色インクの調製)
白色インクは、例えば、白色顔料を水性媒体中に分散させた顔料分散体を調製した後、この顔料分散体と、その他の各成分とを混合すること等によって調製することができる。顔料分散体は、白色顔料、高分子分散剤等の顔料分散剤、及び水等の水性媒体を混合し、必要に応じて前分散した後、本分散することで調製することができる。前分散は、一般的なディゾルバーを使用して行うことができる。なお、高速撹拌機を使用して前分散することが好ましい。高速撹拌機としては、TKホモミキサー、TKロボミックス、TKフィルミックス(以上、プライミクス社製、商品名);クリアミックス(エムテクニック社製、商品名);ウルトラディスパー(浅田鉄鋼社製、商品名)などが好ましい。
【0034】
本分散には、例えば、ニーダー、二本ロール、三本ロールの他;SS5(エムテクニック社製、商品名)、ミラクルKCK(浅田鉄鋼社製、商品名)等の混練機;超音波分散機;マイクロフルイダイザー(みずほ工業社製、商品名)等の高圧ホモジナイザー;ナノマイザー(吉田機械興業社製、商品名);スターバースト(スギノマシン社製、商品名);G−スマッシャー(リックス社製、商品名)等の分散機を使用することができる。また、ガラスやジルコニアなどのビーズメディアを用いるボールミル、サンドミル、横型メディアミル分散機、コロイドミル等を使用することもできる。ビーズミルで用いるメディアとしては、直径1mm以下のビーズメディアが好ましく、直径0.5mm以下のビーズメディアがさらに好ましい。
【0035】
顔料分散体中の白色顔料の分散粒子径(メジアン径D50)は、50〜1,000nmであることが好ましく、100〜600nmであることがさらに好ましく、200〜500nmであることが特に好ましい。メジアン径D50が50nm以上の白色顔料が分散した顔料分散体を用いることで、発色性をより良好な状態に維持することができる。また、メジアン径D50が1,000nm以下であると、定着性をより良好な状態に維持することができるとともに、インクの吐出性をさらに向上させることができる。さらに、メジアン径D50を100nm以上とすることで、隠蔽性及び発色性をさらに良好な状態に維持することができる。なお、白色インクの粘度は、吐出性の観点から、2〜30mPa・sであることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以降、「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0037】
<A−B型ブロックコポリマー(高分子分散剤)の合成>
(合成例1)
撹拌機、逆流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコ(反応装置)に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)125部、2−アイオド−2−シアノプロパン3部、メタクリル酸メチル(MMA)76部、アクリル酸(AA)24部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2.5部、及びアイオドスクシンイミド0.1部を添加し、窒素を流しながら撹拌した。反応温度を75℃として3時間重合させた。重合溶液の一部をサンプリングして固形分濃度を測定したところ42.1%であり、ほとんどのモノマーが重合してポリマーが形成されたことを確認した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリマーの数平均分子量(Mn)は5,000であり、分散度(PDI)は1.42であった。
【0038】
上記の重合溶液に、メタクリル酸ベンジル(BzMA)19部及びAIBN0.2部の混合物を添加し、75℃で3時間重合させた。重合溶液の一部をサンプリングして固形分濃度を測定したところ49.0%であり、ほとんどのモノマーが重合してポリマーが形成されたことを確認した。GPCにより測定したポリマーのMnは5,500であり、PDIは1.44であった。また、ベンジル基に由来するUV吸収から算出したポリマーのMnは5,400であり、PDIは1.44であった。(1)GPCの可視領域から算出したMnと、UV吸収から算出したMnとが、ほとんど同一であること、及び(2)MMA/AAポリマーブロックにBzMAを重合させたことで、Mnが増大したことから、MMA/AAポリマーブロックにBzMAポリマーブロックが結合したA−B型ブロックコポリマーが形成されたと考えられる。なお、A−B型ブロックコポリマーの酸価は、154mgKOH/gであった。
【0039】
ポリマー中のカルボキシ基を中和する当量の水酸化カリウム水溶液を重合溶液に添加してカルボキシ基を中和した後、純水を添加し、固形分濃度を40%に調整したポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液は透明であり、ポリマーの析出は認められなかった。これは、BzMAポリマーブロックも析出することなく、溶解していたことを意味する。ポリマー溶液を50℃で2時間処理してポリマー末端のヨウ素を分解し、高分子分散剤−1の溶液を得た。
【0040】
<アクリルエマルジョン(バインダー樹脂)の合成>
(合成例2)
合成例1で用いたものと同様の反応装置に水2,000部を入れて窒素置換した後、75℃に加温した。また、別容器に、スチレン200部、アクリル酸ブチル700部、アクリル酸2−エチルヘキシル90部、トリプロピレングリコールジメタクリレート10部、及びポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム(商品名「アクアロンKH−10」、第一工業製薬社製、反応性界面活性剤)20部を入れ、混合均一化してモノマー混合液を調製した。反応装置内に、窒素をバブリングしながら過硫酸カリウム15部を添加した後、滴下ロートを用いてモノマー混合液を3時間にわたって滴下した後、3時間熟成して白色のエマルジョンを得た。得られたエマルジョンを冷却した後、0.5μmのフィルターでろ過して粗大粒子を除去してバインダー樹脂−1のエマルジョンを得た。一部をサンプリングして測定したエマルジョンの固形分濃度は33.2%であった。また、光散乱方式の粒子径測定装置を使用して測定したエマルジョン中の樹脂粒子のメジアン径(D50)は150nmであった。
【0041】
<白色顔料分散体の調製>
(調製例1)
酸化チタン(商品名「CR−60」、石原産業社製)250部、高分子分散剤−1 12部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル48部、及びイオン交換水190部を混合して混合物を得た。得られた混合物をビーズミル(商品名「DYNO−MILL KDL A型」、シンマルエンタープライゼス社製)に入れ、直径0.5mmのジルコニアビーズを充填率80%に充填し、滞留時間2分で分散して白色顔料分散体Aを得た。得られた白色顔料分散体Aの固形分濃度は52.7%、25℃における粘度は12.3mPa・s、25℃におけるpHは8.3であり、白色顔料(酸化チタン)のメジアン径(D50)は253nmであった。
【0042】
<白色インクの調製>
(調製例2)
表1に示す各成分を混合した後、5μmのメンブレンフィルターでろ過して粗大粒子を除去し、白色インクを得た。表1中、「サーフロンS−211」は、旭硝子社製の界面活性剤(アニオン性のフッ素系界面活性剤)の商品名である。
【0043】
【0044】
<印刷>
(実施例1〜5、比較例1〜4)
インクジェット方式のプリンタ(商品名「HEATJET MMP813H」、マスターマインド社製)を使用し、黒色染料で着色されたコットン製(リングスパンコットン100%)の布帛に表2に示す条件で白色インクを付与してベタ印刷し、印刷物を得た。自動アイロンプレス機(商品名「SATANAS PS−4634」、ユーロポート社製)を使用し、得られた印刷物を表2に示す条件で加圧して60秒、白色インクを布帛に定着させて捺染物を得た。
【0045】
(実施例6〜8、比較例5〜8)
黒色染料で着色されたポリエステル製(ポリエステル100%)の布帛を用いたこと、及び表3に示す条件でベタ印刷したこと以外は、前述の実施例1〜5、比較例1〜4の場合と同様にして捺染物を得た。
【0046】
<評価>
(OD値)
反射濃度計(商品名「i1」、X−Rite社製)を使用し、得られた捺染物のOD値を測定した。測定結果を表2及び3に示す。なお、OD値が0.250以下である場合に隠蔽性が高いと判定することができる。
【0047】
(洗濯堅牢度)
小型自動洗濯機(商品名「晴晴ミニ AKS−2.5GL」、アルミス社製)を使用して、得られた捺染物を15分×3回洗濯した。洗剤を2g/L投入した40℃の温水を使用し、水:布帛=30:1(質量比)の条件で洗濯した。なお、洗剤としては商品名「アタック」(花王製)を用いた。脱水後、2分濯ぎ、さらに脱水及び乾燥した。変退色グレースケールを使用し、以下に示す基準にしたがって洗濯堅牢度を評価した。結果を表2及び3に示す。
A:4−5級〜5級
B:3−4級〜4級
C:2−3級〜3級
D:2級以下
【0048】
(摩擦堅牢度)
摩擦試験機II型 JIS L 0823(染色堅牢度試験用摩擦試験機)を使用し、JIS0849に準拠した摩擦堅牢度試験を実施した。摩擦子の先端に、100%湿潤状態の摩擦用白綿布(5cm×5cm、かなきん3号(綿))を被せ、試験台上に固定した試験片(22cm×3cm)上10cmの間を毎分30回往復する速度で100回往復摩擦した。変退色グレースケールを使用し、以下に示す基準にしたがって摩擦堅牢度を評価した。結果を表2及び3に示す。
A:4−5級〜5級
B:3−4級〜4級
C:2−3級〜3級
D:2級以下
【0049】
【0050】