特開2018-9306(P2018-9306A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-9306H型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-9306(P2018-9306A)
(43)【公開日】2018年1月18日
(54)【発明の名称】H型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20171215BHJP
【FI】
   E04G23/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-137225(P2016-137225)
(22)【出願日】2016年7月12日
(11)【特許番号】特許第5999862号(P5999862)
(45)【特許公報発行日】2016年9月28日
(71)【出願人】
【識別番号】593179783
【氏名又は名称】株式会社フジモト
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆司
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA07
2E176BB29
(57)【要約】
【課題】構造が簡単で組み立て作業が容易で、狭い作業空間での作業も容易にでき、充填するグラウト材の量も大幅に減らすことができ、地震エネルギーの減衰、引張強度の向上に寄与する高強度繊維シートの劣化を防止することが可能なH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造を提供することを目的とする。
【解決手段】固定用孔を形成したフランジと両フランジ間を連結するウェブを有するH型鋼からなる鉄骨構造物と、内面に高強度繊維シートを配置し、両端に固定用孔を形成しフランジ、ウェブとの間に閉じた空間を形成する補強部材と、補強部材の両端の固定用孔とフランジに形成した固定用孔に挿入して補強部材をH型鋼からなる鉄骨構造物に固定する固定部材と、補強部材とフランジ、ウェブとの間の閉じた空間に充填される固化材と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定用孔を形成したフランジと両フランジ間を連結するウェブを有するH型鋼からなる鉄骨構造物と、
内面に高強度繊維シートを配置し、両端に固定用孔を形成しフランジ、ウェブとの間に閉じた空間を形成する補強部材と、
補強部材の両端の固定用孔とフランジに形成した固定用孔に挿入して補強部材をH型鋼からなる鉄骨構造物に固定する固定部材と、
補強部材とフランジ、ウェブとの間の閉じた空間に充填される固化材と、
を備えることを特徴とするH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造。
【請求項2】
一端をウェブに溶着される定着部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造。
【請求項3】
補強部材をウェブの一方の側のフランジ又はウェブの両方の側のフランジに固定することを特徴とする請求項1又は2に記載のH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造。
【請求項4】
フランジと補強部材の固定部に補強プレートを配置することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造に関する。
【0002】
従来、H型鋼からなる鉄骨構造物の補強構造として、対向する一対のフランジと、その対向間隔内に設けたウェブとによって断面形状をH型としたH型鋼柱の外周を囲い鋼板で囲み、この囲い鋼板で囲んだ内側にグラウト材を充填するとともにグラウト材に軸方向筋を埋設して補強柱を構成するH型鋼柱の補強構造において、ウェブに平行な面側に配置する軸方向の総合曲げ耐力を、フランジに平行な面側に配置する軸方向筋の総合曲げ耐力より強くして、補強柱の全方向における曲げ耐力を均等にするH型鋼柱からなる鉄骨構造の補強構造が提案されている。また、囲い鋼板の外周に繊維シートを配置し、引張強度とエネルギー減衰性能を向上させる先行技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5725486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のH型鋼からなる鉄骨構造物の補強構造は、H型鋼からなる鉄骨構造物の周囲を囲い鋼板で囲み、囲い鋼板で囲んだ内側にグラウト材を充填するため、グラウト材を充填する空間が大きく充填するグラウト材の量を大きくなるという問題を有する。また、H型鋼からなる鉄骨構造物を補強する場合、場合によってはH型鋼からなる鉄骨構造物の一方の側だけしか空き空間が無いこともあり、H型鋼からなる鉄骨構造物の全周を囲い鋼板で囲むことができないという問題を有していた。また、囲い鋼板の外周に繊維シートを配置する従来技術においては、繊維シートが環境下に曝されるため、紫外線等により劣化しその性能が著しく低下するという問題を有していた。
【0005】
本発明は、従来技術のもつ課題を解決する、構造が簡単で組み立て作業が容易で、狭い作業空間での作業も容易にでき、充填するグラウト材の量も大幅に減らすことができ、地震エネルギーの減衰、引張強度の向上に寄与する高強度繊維シートの劣化を防止することが可能なH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造は、前記課題を解決するために、固定用孔を形成したフランジと両フランジ間を連結するウェブを有するH型鋼からなる鉄骨構造物と、内面に高強度繊維シートを配置し、両端に固定用孔を形成しフランジ、ウェブとの間に閉じた空間を形成する補強部材と、補強部材の両端の固定用孔とフランジに形成した固定用孔に挿入して補強部材をH型鋼からなる鉄骨構造物に固定する固定部材と、補強部材とフランジ、ウェブとの間の閉じた空間に充填される固化材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造は、一端をウェブに溶着される定着部材を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造は、補強部材をウェブの一方の側のフランジ又はウェブの両方の側のフランジに固定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造は、フランジと補強部材の固定部に補強プレートを配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
固定用孔を形成したフランジと両フランジ間を連結するウェブを有するH型鋼からなる鉄骨構造物と、内面に高強度繊維シートを配置し、両端に固定用孔を形成しフランジ、ウェブとの間に閉じた空間を形成する補強部材と、補強部材の両端の固定用孔とフランジに形成した固定用孔に挿入して補強部材をH型鋼からなる鉄骨構造物に固定する固定部材と、補強部材とフランジ、ウェブとの間の閉じた空間に充填される固化材と、を備えることで、構造が簡単で組み立て作業が容易で、狭い作業空間での作業も容易にでき、充填するグラウト材の量も大幅に減らすことができ、地震エネルギーの減衰、引張強度の向上に寄与する高強度繊維シートの劣化を防止することが可能となる。
一端をウェブに溶着される定着部材を備えることで、固化材との一体化を促進し耐震性能を向上することが可能となる。
補強部材をウェブの一方の側のフランジ又はウェブの両方の側のフランジに固定することで、耐震補強するH型鋼からなる鉄骨構造物の状態に応じた耐震補強をすることが可能となる。
フランジと補強部材の固定部に補強プレートを配置することで、大地震による大きな変位に対しても耐える固定部とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態を示す図である。
図2】本発明の実施形態を示す図である。
図3】本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造の実施の形態を図により説明する。
【0013】
フランジ2とウェブ3を有するH型鋼からなる鉄骨構造物1は、構造物の柱や梁として用いられる。図1は、ウェブ3の一方の側を補強する実施形態を示す。フランジ2には、所定高さ毎に固定用孔を形成する。また、ウェブ3には、所定高さ毎に前方に伸びる定着部材4の一端を溶接により固定する。定着部材4の固定位置は、フランジ2に形成した固定用孔の位置と異なるようにし、タイロッド等の固定部材と定着部材4が干渉しないようにする。
【0014】
補強部材5は、鋼板等の強度の大きな材料で形成される。補強部材5の両端には、フランジ2に形成した固定用孔と合致するように所定高さ毎に固定用孔を形成する。図では補強部材5の断面形状をコ字形にしているが、半円形等どのような形状であっても良い。
【0015】
補強部材5の内面には高強度繊維シート6が接着剤を介して配置する高強度繊維シート6の材料をカーボン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維及びポリアレート繊維のいずれかとすることで、引張強度の大きな材料で高強度繊維シート6を形成することが可能となる。高強度繊維シート6を補強部材5の内面に配置する作用、効果については後述する。
【0016】
鉄骨構造物1の補強長さに応じた長さの補強部材5を用意し、内面に高強度繊維シート6を接着剤を介して配置する作業は工場で実施する。現場では、H型鋼からなる鉄骨構造物1のウェブ3に所定間隔毎に定着部材4を溶接により固定する作業と、フランジ2に所定間隔毎に固定孔を削孔する作業を実施する。
【0017】
H型鋼からなる鉄骨構造物1の一方のフランジ2上に補強部材5の両端の固定用孔がフランジ2に形成した固定用孔の位置と合致するように配置する。補強部材5の固定用孔とフランジ2の固定用孔に両端に雄ネジ部を形成したタイロッド等の固定部材7を挿入する。固定部材7に補強プレート8を配置し、固定部材7の雄ネジ部にナット9を螺着して補強部材5をH型鋼からなる鉄骨構造物1に固定する。補強プレート8は、地震時の変位により固定部が損傷を受けるのを防止する。
【0018】
H型鋼からなる鉄骨構造物1のウェブ3、フランジ2と補強部材5で囲まれた空間に軸方向筋10を配筋する。必要に応じて軸方向筋10に副筋を配筋しても良い。
【0019】
H型鋼からなる鉄骨構造物1のウェブ3、フランジ2と補強部材5で囲まれた空間にグラウト等の固化材を充填し、養生して固化させ、H型鋼からなる鉄骨構造物1と補強部材5を一体化し、H型鋼からなる鉄骨構造物1の耐震補強構造とする。
【0020】
補強部材5の内側に配置した高強度繊維シート6は、環境下に曝されることが無いので劣化が防止され、地震エネルギーの減衰性能、引張強度の向上性能を維持することが可能となる。
【0021】
H型鋼からなる鉄骨構造物1のウェブ3、フランジ2と補強部材5で囲まれた空間に配置される定着部材4、軸方向筋10は、固化材と一体化しH型鋼からなる鉄骨構造物1の耐震性能を向上させる。
【0022】
図2は、ウェブ3の両方の側を補強する実施形態を示し、図3は、図2のA−A線切断面図である。ウェブ3を挟んだ両側のフランジ2には、所定高さ毎に固定用孔を形成する。また、ウェブ3の両側に所定高さ毎に前方に伸びる定着部材4の一端を溶接により固定する。定着部材4の固定位置は、フランジ2に形成した固定用孔の位置と異なるようにし、タイロッド等の固定部材と定着部材4が干渉しないようにする。
【0023】
補強部材5は、鋼板等の強度の大きな材料で形成される。補強部材5の両端には、フランジ2に形成した固定用孔と合致するように所定高さ毎に固定用孔を形成する。図では補強部材5の断面形状をコ字形にしているが、半円形等どのような形状であっても良い。
【0024】
補強部材5の内面には高強度繊維シート6が接着剤を介して配置する高強度繊維シート6の材料をカーボン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維及びポリアレート繊維のいずれかとすることで、引張強度の大きな材料で高強度繊維シート6を形成することが可能となる。
【0025】
ウェブ3を挟んだ両側のフランジ2に図1に示される実施形態と同様な手順で補強部材5を固定し、軸方向筋10を配筋し、H型鋼からなる鉄骨構造物1のウェブ3、フランジ2と補強部材5で囲まれた空間にグラウト等の固化材を充填し、養生して固化させ、H型鋼からなる鉄骨構造物1と補強部材5を一体化し、H型鋼からなる鉄骨構造物1の耐震補強構造とする。
【0026】
以上のように、本発明のH型鋼からなる鉄骨構造物の耐震補強構造によれば、構造が簡単で組み立て作業が容易で、狭い作業空間での作業も容易にでき、充填するグラウト材の量も大幅に減らすことができ、地震エネルギーの減衰、引張強度の向上に寄与する高強度繊維シートの劣化を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1:鉄骨構造物、2:フランジ、3:ウェブ、4:定着部材、5:補強部材、6:高強度繊維シート、7:固定部材、8:補強プレート、9:ナット、10:軸方向筋
図1
図2
図3