特開2018-93213(P2018-93213A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-93213(P2018-93213A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】導電体
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/16 20060101AFI20180518BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180518BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20180518BHJP
   H01L 39/00 20060101ALI20180518BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20180518BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20180518BHJP
【FI】
   H01L29/16ZAA
   H01L29/78 301B
   H01L39/00 A
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250E
   H01L29/78 301H
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-6843(P2018-6843)
(22)【出願日】2018年1月19日
(62)【分割の表示】特願2014-504436(P2014-504436)の分割
【原出願日】2012年4月13日
(31)【優先権主張番号】2011/02820
(32)【優先日】2011年4月14日
(33)【優先権主張国】ZA
(71)【出願人】
【識別番号】513254752
【氏名又は名称】セイジ ワイズ 66 (ピーティーワイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139044
【弁理士】
【氏名又は名称】笹野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】プリンス ヨハン フランス
【テーマコード(参考)】
4M113
5F140
【Fターム(参考)】
4M113CA39
5F140AA01
5F140AA39
5F140BA00
5F140BA01
5F140BA04
5F140BA06
5F140BA18
5F140BC05
5F140BF01
5F140BF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低抵抗の電気流路を生じさせ、この低抵抗の電気流路内で、外側の電子が、酸素ドープされたダイヤモンドなどの基材の表面に沿って自由に動けるようにする。
【解決手段】電気流路および電子デバイスであって、該電気流路の少なくとも一部が基材材料からなる本体によって形成されていて、基材材料の少なくとも一部が、表面と、この表面以下の位置に注入された原子と、を有するドープ部分であり、表面の少なくとも一部が電気流路における低抵抗セクションを画定していることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型基材の表面よりも外側に該表面と平行に電流が流れるように、n型基材の材料の表面よりも外側に存在する自由電子であって該表面との接触により電界の影響を受けて自由に動くことのできる自由電子を電荷キャリアとする電気流路であって、
上記自由電子は、上記基材内および上記基材表面付近の位置における高密度のドナーの電子放出に起因して生じたものであり、
該電気流路の少なくとも一部が基材材料からなる本体から形成されていて、上記基材材料の少なくとも一部は、表面と、この表面以下の位置に注入された原子と、を有するドープ部分であり、
上記表面の少なくとも一部に、抵抗率が2×10−8Ω・mよりも小さい該電気流路の低抵抗セクションを有し、
該電気流路の少なくとも一部が上記表面の少なくとも一部に沿って延在し、
上記基材は、ダイヤモンド、グラフェン、グラフェンを主成分とする材料、ポリマ、立方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウムおよびβ−アルミナからなる群から選択された電子親和力の小さいものであり、上記基材材料の表面よりも外側に該表面に沿った側方導通が生じていることを特徴とする電気流路。
【請求項2】
n型基材の表面よりも外側に該表面と平行に電流が流れるように、n型基材の材料の表面よりも外側に存在する自由電子であって該表面との接触により電界の影響を受けて自由に動くことのできる自由電子を電荷キャリアとする電気流路であって、
上記自由電子は、上記基材内および上記基材表面付近の位置における高密度のドナーの電子放出に起因して生じたものであることを特徴とする電気流路。
【請求項3】
該電気流路の少なくとも一部が基材材料からなる本体から形成されていて、上記基材材料の少なくとも一部は、表面と、この表面以下の位置に注入された原子と、を有するドープ部分であり、
上記表面の少なくとも一部に、抵抗率が2×10−8Ω・mよりも小さい該電気流路の低抵抗セクションを有し、
該電気流路の少なくとも一部が上記表面の少なくとも一部に沿って延在し、
上記基材は、ダイヤモンド、グラフェン、グラフェンを主成分とする材料、ポリマ、立方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウムおよびβ−アルミナからなる群から選択された電子親和力の小さいものであり、上記基材材料の表面よりも外側に該表面に沿った側方導通が生じていることを特徴とする請求項2に記載の電気流路。
【請求項4】
該電気流路が回路の一部であることを特徴とする請求項2に記載の電気流路。
【請求項5】
上記基材材料からなる本体が電子的構成要素の一部であるとともに、上記電気流路を含む回路および上記電子的構成要素は電子デバイスの一部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電気流路。
【請求項6】
上記電子的構成要素の残部は、コネクタを介して上記流路に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の電気流路。
【請求項7】
上記電気流路の低抵抗セクションの抵抗率が5×10−13Ω・mよりも小さいことを特徴とする請求項1または3に記載の電気流路。
【請求項8】
上記注入された原子は、酸素、水素、リチウム、窒素、フッ素、クロム、硫黄、リン、ヒ素およびこれらの混合物から選択されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電気流路。
【請求項9】
上記注入された原子のうちの少なくともいくつかは、上記基材の表面から0.1Å〜5000Åだけ深い位置にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電気流路。
【請求項10】
上記注入された原子の密度は、1017個/cm〜1023個/cmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電気流路。
【請求項11】
請求項2に記載の電気流路を有する導電体。
【請求項12】
上記基材は、該基材を貫通している通路を有し、この通路の周囲に上記電気流路が延在していることを特徴とする請求項11に記載の導電体。
【請求項13】
請求項12に記載の導電体を含む回路。
【請求項14】
請求項2に記載の電気流路を含む電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気流路、導電体、電子的構成要素および電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
出願人がこれまで提示したことによれば、酸素プラズマを使用してダイヤモンドに低エネルギ・イオン注入を行うと、ダイヤモンドのごく表面付近および表面よりも低い位置に高密度の電子ドナー・サイトが生じ、ダイヤモンドの表面とアノードとの間の電界(電場)によってそのようなダイヤモンドから電子が引き出され得る(国際出願PCT/IB02/03482号明細書)。図1に、実験装置の概略が示されている。出願人が見出したことは、臨界電圧よりも高くすると、(ダイヤモンド表面をアノードに接続する)ブラック(暗黒)ロッドが生じ、平衡電流が回路に流れたことである。常識に囚われない出願人の考えによれば、ダイヤモンド表面から垂直に電子が引き出されると、表面の真下にある正のドナー電荷と、これらの正電荷によって表面に強固に結合した外部の電子とによって構成される双極子が、表面を横切るように生じる。この双極子層の幅は、アノードを介して電圧をかけると増大し、ついには、外部に結合していた電子がアノードと接触するようになる。これにより、双極子の負の層を形成するように強固に結合していた外部の電子が解放される。すると、電流がダイヤモンド表面に対して垂直方向に流れて、ダイヤモンドから、外部に結合した複数の電子を通り過ぎるようにしてアノード内まで達する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
出願人は、常識に囚われることはないが、固体電子インターフェイスの物理モデルに基づいて考えれば、ダイヤモンドからアノードまで電流が流れる場合にも、ロッドに沿って存在する電界はないと考える。これは、1911年にカメリング・オネスが発見した超電導を特定する挙動であることから、ロッドは超導電相であるように思われた。
【0004】
この態様で生成する相についての可能性のある電子的応用は、現時点では限られている。側方流動を有する低抵抗領域を、例えば電子チップ上につくり出せれば好ましい。従って、本発明の目的は、低抵抗の電気流路を生じさせ、この低抵抗の電気流路内で、外側の電子が、酸素ドープされたダイヤモンドなどの基材の表面に沿って自由に動けるようにすることである。理想的には、そのような領域が超電導であればよいが、現在使用されている導電性材料よりもずっと抵抗が小さいのであれば、そのような領域をつくり出すことができれば、同様なドープ基材を内蔵している電子チップの速度と寸法に相当な影響を与えよう。
【0005】
ダイヤモンド基材の低エネルギ酸素イオン処理が、そのようなダイヤモンドの表面に沿ったすべての側方導通を全体的に失活させることは、ダイヤモンドに関する科学論文で認識されている。水素を使用しているときにのみ、側方導通が観察されるが、この導通は、ダイヤモンドの表面よりも低い位置で生じる。そればかりか、このような水素処理されたダイヤモンドが続いて酸素イオン処理を受けるとこの導通は失活し、やがて消滅する。すると、表面が横方向に沿って絶縁性を有するようになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
出願人はこの度、後者の処理の際にダイヤモンドの表面が黒鉛化することを防ぐための焼きなましをしているときに、(表面よりも低い位置および表面付近で)注入酸素イオンの密度を非常に高い値まで増加させると、ついには側方導通が始まることを見出した(科学論文等で報告されている理論とは矛盾するかもしれないが)。非常に高いイオン密度においては、酸素プラズマ処理をしても側方導通を失活させず、現実に導通を生じさせるようである。続いての実験は、この側方導通がダイヤモンドの表面上かつ外側で生じることを示している。このことは、表面に結合されていた(この態様で該表面に跨る双極子層を形成する)電子のいくつかが自由電子となって、ダイヤモンドの表面上かつ外側で側面に沿った電流が流れることを示唆している。これにより、極めて低い抵抗がつくり出され、ひいては、極めて低い抵抗率、純電子、および表面の外側の導電相が実現される。この相は、新規な電子デバイスの設計および製造に応用できる可能性がある。これらの相の抵抗率は、電子チップ上での接続用に一般に使用されている周知の金属その他の材料の抵抗率と比べてもずっと小さい。
【0007】
続いて見出したこととして、窒素イオンを使用する場合、また水素イオンを使用する場合にも、同様の導通が生み出され得る。後者を使用する場合、ダイヤモンドの表面下が最初に、低エネルギ炭素イオン注入によって前処理されれば、高密度の空格子サイトが生み出される。空孔を有する層が表面付近および表面よりも低い位置に生じている場合には、後者の目的を達成するために、種々の他のイオンも(電子さえも)使用され得る。続いての水素プラズマ処理後に得られる導通は、表面下だけではなく、この場合には、ダイヤモンドの外側で側面に沿って移動可能な自由電子によって生じる。表面の外側で側面に沿った導通を生じさせるために、表面下の空孔の存在が不可欠なことであると思われる。
【0008】
従って、本発明の第1の態様によれば、電気流路であって、電気流路の少なくとも一部が基材材料からなる本体によって形成されていて、基材材料の少なくとも一部が、表面と、表面以下の位置に注入された(埋め込まれた)原子と、を有するドープ部分であり、表面の少なくとも一部が電気流路における低抵抗セクションを画定していることを特徴とする電気流路が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、n型基材材料の表面の外側にある複数の電荷からなる側方の電気流路であって、複数の電荷は、表面上の外側電子軌道とは対照的に、基材材料の表面に沿って適用された電界の影響を受けて動くことができ、複数の電荷は、基材の表面および表面付近の位置にある基材内の高密度のドナー欠落によって生み出されていることを特徴とする側方の電気流路が提供される。
【0010】
電気流路は、電圧源を含む回路の一部となり得る。基材材料の本体は、電子的構成要素の一部であり、回路および電子的構成要素は、電子デバイスの一部であり得る。
【0011】
電子的構成要素はコネクタを介して流路に接続されているとよい。電気流路の低抵抗セクションの抵抗率は、好ましくは約2×10−8Ω・mよりも低く、さらに好ましくは約5×10−13Ω・mよりも低い。
【0012】
基材材料は、電子親和力が小さい材料、例えば、ダイヤモンド、グラフェンないしグラフェンを主成分とする材料のような炭素基材料、ポリマ、立方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、β−アルミナなどの材料から選択され得る。炭素基材料が短い結合長さを有していることは、さらに高濃度のドーパントと高密度の空孔を可能にするので、炭素基材料が選択されることが好ましい。
【0013】
注入された原子は、酸素、水素、リチウム、窒素、フッ素、クロム、硫黄、リン、ヒ素およびこれらの同等物から選択されたものとされ得る。
【0014】
コネクタは、金製のコネクタであるとよいが、いっそう小さな(低抵抗の)電子的機能を有することが好ましい。
【0015】
注入された原子の少なくともいくつかは、基材の表面から約0.1Å〜約5000Åの深さに位置することが好ましい。注入された原子の密度は、約1017個/cm〜1023個/cmであることが好ましい。
【0016】
本発明の他の態様によると、表面の長さに沿って延びている電気流路を画定する長手方向の表面を有する細長い基材を含む導電体であって、表面の少なくとも一部がドープ部分である、導電体が提供される。
【0017】
本発明の他の態様によると、該穴の周囲に電気流路を画定する穴を取り囲むように円形の形状の導電体が提供される。
【0018】
従って、本発明は、基材が該基材を貫く通路を有し、電気流路が通路を取り囲むように延在している導電体を提供する。この実施例においては、電気流路に直流電流が流されると、通路ないし穴を貫く磁束が発生する。電気流路に電流を送る電力供給を遮断しても、磁束は、通路ないし穴に残ったままになる。このことは、流路に沿って移動する電荷が、無視し得るほど低い抵抗を受けていることを示している。
【0019】
流路と、外部抵抗および電流計とを接触点を介して接続すると、リングは、保存された磁界(磁場)がゼロになるまで電力供給源として機能し、チャージ後に小型バッテリとして機能したことが見出された。
【0020】
本発明の他の態様によると、電気流路を含む電子デバイスであって、電気流路の少なくとも一部は、基材材料の本体によって形成されていて、基材材料の少なくとも一部は、表面を有するとともに表面の位置および表面下に注入された原子を有するドープ部分であり、表面の少なくとも一部が電気流路における低抵抗セクションを画定していることを特徴とする電子デバイスが提供される。
【0021】
一連の実施例においては、2つの金めっき済み金属接触点と、酸素原子でプラズマドープされていたダイヤモンド基材の表面と、を接触させた。そして、ダイヤモンドの表面に沿った接触点間の抵抗が測定された。ダイヤモンドは、連続的なプラズマ処理を受けたので、イオン密度の関数としての抵抗を測定するために、抵抗測定は、2つの接触点がダイヤモンド表面上へ機械的に押圧されることを必要とした。この押圧を行うと、測定結果に再現不可能なばらつきが生じる。しかし、後者のプロセスにより、イオン線量の関数として抵抗を測定することが可能となった。再現不可能なばらつきを抑えるために、図2に概略的に示されている測定装置が最終的に構築された。この場合には、処理済みのダイヤモンドの表面が、バネが装着されたマイクロメータによって、2つの金めっき済みスライド・ガラス上の位置にまで下げられた。接触点間距離Lの関数として抵抗が測定され得るように、接触点間の距離Lが変えられた。
【0022】
図3に、抵抗の大きさの変化の一例が、注入酸素イオン線量との関係で示されている。これらの測定はすべて、同じ接触点間距離Lについて行われた。最初のうちは、文献で報告されている酸素イオンプラズマ処理について予想される通り、何も測定されなかった。しかし、インキュベーション・イオン線量後に、測定可能な導通が見られるようになった。さらにイオン線量が増加するにつれ、抵抗の大きさが低下し、約200kΩの平均値で飽和した。このことは、表面に最も近いドナーの密度は、無制限に増加することはできず、飽和最大値に達することを示唆している。同様の結果は、数多くのダイヤモンドを用いた実験を通して一貫して得られた。すべての実験における結果のばらつきは、再現不可能な接触抵抗の大きさのみに起因するものと考えられる。
【0023】
接触点間の距離を大きくしても、抵抗の大きさは実験誤差の範囲内で変わらなかった。このことは、測定された抵抗の大きさは接触点における抵抗の大きさのみに依存し、ダイヤモンド基材の抵抗の大きさがほぼゼロであったことを示している。図4は、6つの異なる2接触点間距離Lに同じ電圧を加えたときの2接触点間距離Lの関数としての電流を示している。複数のデータ点は、これらすべての実験で得られる通常のばらつきの範囲内によく収まり、どの距離Lについても同じ大きさの電流が流れたことを示している。
【0024】
常識に囚われずに考えると、表面付近のドナーが充分な量の電子を放出し、これらの電子のいくつかが表面に自由電子として蓄積する。そして、これらの電子が低い抵抗率で側面に沿った電流を流すとすれば、接触点が表面に押し付けられるとすぐに、これらの接触点はそれらの電子と遭遇する。従って、接触点を表面に押し付ける前に接触点領域上および接触点領域周囲に存在している電子は、押し付けられた状態では、金属接触点内へ流入する。これにより、今度は、ダイヤモンド金属インターフェイスに跨る双極子が発生し、金属接触点の各々が負に帯電する。そして、このような接触点は、これを取り囲んでいる自由電子を(表面上に存在していれば)押しのける。このことは、図5に概略的に示されており、図5は、接触点に生じる長さΔLの高抵抗ギャップを示している。複数の円は、自由電子を概略的に表している。
【0025】
様々なダイヤモンドを使用しての数多くの実験において、実験誤差範囲内で同じ結果が得られた。もっと長いIb型ダイヤモンドを使用した場合、2つの接触点間でかつ2つの接触点から離れている2点間の電圧を測定したが、電圧が低すぎて信頼できる測定はできなかった。このことが示唆するのは、接触点と接触点の間の抵抗率は、接触点における抵抗の大きさと比べてずっと小さいということであった。再び常識に囚われずに考えると、これらの結果は、表面上の自由電子によって電流が流れることを示唆しているが、そう結論付けるのは早計である。表面よりも低い所で電流が流れているかもしれないからである。
【0026】
しかし、以下の解析は、表面上および表面の外側に導通があることと理屈が合っている。
【0027】
距離をL、接触点間の材料の抵抗の大きさをR、各接触点における抵抗の大きさをRとすると、合成抵抗RΩの大きさは、次のようになる。
【数1】
【0028】
ダイヤモンドの幅をwとすると、見かけのシート抵抗率RASは、次のように表される。
【数2】
【0029】
また、表面上および表面の外側に導通があるとすれば、図5に示されているギャップΔLによって生じる抵抗の分を減算する必要があり、すると接触点間のギャップL内の電子相における実際のシート抵抗率Rは、以下のようになる。
【数3】
【0030】
よって、(2)式は、次のように書き直される。
【数4】
【0031】
Lが非常に長い場合、RAS→Rとなる。しかし、外側の電子相がゼロの抵抗率を有する場合、L≧2ΔLの種々の値について(無限大になるまで)、Rは無視し得るほどに小さい。よって、第2項が支配的に見かけのシート抵抗率RASを決める。また、Lを無限大としたときに、RASは、Lの逆数に比例してゼロの値に近づくように必ず減少する。すなわち、長さの逆数1/Lの関数としてRASをプロットすると、(2wR)の傾きを有する直線的な関係が得られ、このグラフ上で、1/Lがゼロに近づくと、RASの値もゼロに近づく。
【0032】
見かけのシート抵抗率RASは、ダイヤモンドの1つに関する一式の測定で使われたLの逆数の関数として図6にプロットされている。Lの値が非常に小さいときのデータ点が挿入図(下)に示されている。すべての点を使って線形最小二乗法の計算を行った。これにより、実線と、Rs=−28Ωについての値とが得られた(図6の挿入図(上)参照)。最小距離がスライド・ガラスの縁部にある鋸歯によって影響され得るので、この点を無視して最小二乗法の計算を行った。この結果は、図7に破線で示されているように、L−1=0であるときに特に小さいシート抵抗率となる。シート抵抗率が負になることはないので、これらの結果は、抵抗率が非常に小さいことと整合し、実質ゼロ抵抗率であることを示している。接触抵抗に一定値が用いられることはなく、例えば、接触面積の増大とともに接触抵抗が減少する場合(表面よりも低い位置で導通が生じている場合にはそうなる)、「無限長の」長さLでは、シート抵抗率が特に大きな負の値となってしまう。このことは、表面よりも低い位置では導通が生じていないことのさらなる証拠である。
【0033】
さらに多くのデータ点を用いて測定を続けたところすべての測定で、Lが無限長になるとシート抵抗率がゼロに近くなる(厳密にはゼロでなくとも)という結果と整合した。
【0034】
以下に、実施例及び図面を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】国際出願PCT/IB02/03482号明細書中で使用される、高ドープn型ダイヤモンドから電子を引き出して真空(正孔)を生じさせる実験装置の概略図。
図2】2つの接触点上の位置まで注入済みダイヤモンド面を降下させるために使用される実験設備を概略的に示す図。離間距離Lが様々な距離になるように調節され得るものであり、ダイヤモンドを降下させるのに使われるアームは、バネで付勢されていて、このバネがある程度圧縮されるとすぐに開くマイクロスイッチを有するものであった。
図3】注入された酸素イオン線量の関数としての抵抗の大きさの変化を示す典型的なプロット(最良のプロットではない)を示す図。
図4】酸素ドープされたダイヤモンドの表面の6つの様々な接触点間距離Lで同じ電圧を印加したときの、2接触点間距離Lの関数としての電流を示す拡大プロット図。
図5】金製の接触点が負に荷電され、これらの接触点の周りに長さΔLの高抵抗域が発生することを示す図であって、高抵抗領域が発生することによって、1つの接触点から他の接触点まで表面上および表面の外側で電流が流れているときの抵抗の測定値が、接触点によって決まることを概略的に示している。
図6】データ点を使って最小二乗法を行った結果、接触点間距離Lの逆数の関数としての見かけのシート抵抗率を示す図であって、L−1=0(すなわち、Lは無限長)とすると、負の抵抗率となってしまう。
図7】ドープIb型ダイヤモンドを通流する電流の測定値を、表面から接触点までの垂直方向距離dの関数として示す図であって、最大接触点間距離についてのデータと最小接触点間距離についてのデータが示されている。
図8】酸素イオン埋め込みによってダイヤモンド基材上に発生した純電子チャネルを有する金箔で被覆された導電性デバイスを概略的に示す図。このデバイスの抵抗率は、電子チャネルのない金属層の抵抗率よりも小さく、測定するには小さ過ぎるほどであった。
図9】2つのダイヤモンド層間に電荷が存在している導電性デバイスを概略的に示す図であって、2つのダイヤモンド層の各々がプラズマ処理後に表面の外側に電子を有し、この態様で、表面間に電子が存在し続けることに貢献する。
図10】穴からリングの外側まで該リングに切り込まれているスロットを有する円形のダイヤモンドリングを示している。酸素イオンプラズマ処理後、リングを貫く磁束を発生させるために、1つの接触点から他の接触点までリングを周るように電流が流され得る。電磁場が安定した後、他の処理済みダイヤモンドを架橋エレメントとして使用して、スロットを渡るようにリングをショート(短絡)させた。
図11】該デバイス内を通流する電流を制御および切り替えるための金属ゲートを使用するトランジスタデバイスを示す図であって、他のトランジスタとは対照的に、ゲート抵抗の大きさが無視できるほど小さい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、国際出願PCT/IB02/03482号明細書中で使用される、高ドープn型ダイヤモンドから電子を引き出すための従来の実験装置10を概略的に示している。この装置は、アノード12と、電流計18および電圧計20を含むコネクタ16によって接続されたn型ダイヤモンド14と、を備える。矢印22は、マイクロメータ(図示せず)によって測定されるアノードの動き(移動距離)を示している。
【0037】
図2は、注入済みダイヤモンド面を2つの接触点の位置まで降下させるのに使われる実験設備30を示しており、これら2つの接触点は、様々な接触点間距離Lを有するように調節され得る。実験設備は、ダイヤモンド基材32、スライド・ガラス34,36、金製の標的接触点38、および金製の注入用接触点40を含む。ギャップd(μm)は矢印42によって示されている。マイクロメータで調節されるギャップは、矢印44によって示されている。
【0038】
図5を参照すると、装置50において、金製の接触点が負に帯電し、これらの接触点の周りに長さΔLの高抵抗領域が発生する様子が示されている。図において、符号52はダイヤモンド基材を示し、矢印54は長さLを示し、符号56は注入用接触点を示し、符号58は標的接触点を示している。符号60は、ΔLを示し、符号65は、接触抵抗Rを概略的に示している。符号62は、外側の軌道を概略的に示し、符号64は、注入されたイオンを概略的に示している。
【0039】
図8は、酸素イオン注入によってダイヤモンド基材上に発生した純電子チャネルを有する金箔で覆われた導電性デバイス70を示している。このデバイスは、ダイヤモンド基材72、金属層74および超電導チャネル76を含む。
【0040】
図9を参照すると、導電性デバイス80においては、2つのダイヤモンド層間に電荷が存在し、これら2つのダイヤモンド層の各々は、プラズマ処理された後、これらの層の表面の外側に電子を有する。デバイス80は、ダイヤモンド基材82,84と、接触点86,88と、を含む。電荷は円90で概略的に示されている。
【0041】
図10は、円形のリング型ダイヤモンド102の上面100を示している。ダイヤモンド102は、このダイヤモンドを貫く4mmの穴104と、該穴104から該リング型ダイヤモンド102の外側まで延びているスロット106と、を有する。内側接触点108と外側接触点110がスロット106に隣接して配置されており、酸素イオンプラズマ処理によって生じる円形の電流経路112が、接触点108から接触点110まで延在している。流路112に電流を流した後、他の処理済みダイヤモンド(図の下側に符号114として側面が示されている)が架橋エレメントとして使用され、スロット106を渡るようにリングをショート(短絡)させる。矢印116で示されているダイヤモンドの直径は11mmである。
【0042】
図11を参照すると、トランジスタデバイス120は、ダイヤモンド基材122と、接触点124,126と、該デバイス内を流れる電流を切り換えるための金属ゲート電極128と、を含む。この図においても、電荷は円130で概略的に示されている。
【0043】
例1
ダイヤモンドの表面の外側に自由電子を発生させ、ダイヤモンドの表面に沿った側方の電荷移動を生じさせるために、表面積が3.6×3.6mmの天然(高純度)IIa型ダイヤモンドの表面を、塩酸、過塩素酸および硫酸の沸騰溶液中で洗浄し、蒸留水で濯いだ。洗浄されたダイヤモンドを加熱し、プラズマ注入装置を使用して酸素イオンでのイオン注入によって酸素ドープを行った。注入された原子を表面付近に生じさせるために、ダイヤモンドを150Vの電位にバイアスした状態で、数多くの注入を行った。各注入は、約60秒間という短時間だけ行われた。各注入が実行される前に、ダイヤモンドが配置されたテーブルは400℃の温度にまで加熱されていた。各注入ステップが行われた後、ダイヤモンドは室温まで冷却され、真空システムから取り出された。距離Lだけ離間している2つの金めっき済み金属接触点間の電気抵抗は、その後ドープダイヤモンド面に接触点を押し付けることにより測定された。そして、印加電圧の関数としての電流を記録した。この結果を図3に示す。
【0044】
イオン線量の増加に伴い(図3においてx軸に注入時間として示されている)、累積のイオン線量は、導通を測定できる限度を超えてしまった。イオン線量の増加に伴って抵抗の大きさは急低下し、さらに高い飽和線量にしても、実験誤差の範囲内で同じ値であった。
【0045】
このプロセスは、様々なダイヤモンドを使って繰り返し行われた。測定された抵抗の大きさの値にはある程度のばらつきが見られたが、各実験における抵抗の大きさは、同じ大きさのイオンエネルギを使用した場合には、実験誤差の範囲内で同じ値に収まった。
【0046】
例2
例1のプロセスは接触点間の距離Lを変えて繰り返し行われた。再び、各実験における抵抗の大きさは、同じ大きさのイオンエネルギを使用した場合には、例1で得られた値と実験誤差の範囲内で同じ値に収まった。
【0047】
例3
例1のプロセスのバリエーションとして、比較的長いダイヤモンドが使用された。2つの接触点は、0.01mm〜3.1mmの間の様々な離間距離Lとなるように配置された。実験設備は、図2に概略的に示されている。様々な距離Lについての抵抗の大きさを測定した。この結果を図4に示す。図から判るように、距離Lが0.01mm〜3.1mmのときには、電流の平均値は、0.35mAよりも僅かに高かった。L=0.01mmのときの方が、L=3.1mmのときよりも(後者の距離の方が310倍長いが)電流が低かった。この結果が示唆していることは、すべてのLの値についての電流の大きさは、実験誤差の範囲内で同じであるということである。
【0048】
例4
比較的長い合成Ib型ダイヤモンドを使って例3のプロセスが繰り返し行われた。接触点に対しダイヤモンドを垂直に動かしたときの全抵抗の大きさが、マイクロメータの移動距離の関数として測定された。この精度は±0.2μmであった。ダイヤモンドの表面と接触点の表面とが平行となるように細心の注意が払われた。図7に、最小の接触点間距離L=0.01mmについて測定された接触点間の電流と、最大の接触点間距離L=3.1mmについて測定された接触点間の電流とが、垂直方向のマイクロメータの移動距離の関数として示されている。
【0049】
マイクロスイッチが起動する位置からマイクロメータが22.5μm移動するまでの間、圧力が低下しつつもダイヤモンドは接触点に触れたままであった。図7における垂直軸は、ダイヤモンドが接触点から離れるときの距離を示している。垂直軸の位置において、ダイヤモンドの表面と接触点表面との間の垂直方向距離dは0である。いずれの場合にも、ギャップ距離dがゼロよりも大きいときに電流が流れている。これは、外側の電子相が、ダイヤモンドの表面と接触点との間に存在することを示している。
【0050】
接触点間距離がL=0.1mmである場合、電流が約0.15mAで安定した。この値における電流は、d≒82.5μmmまで測定することができた。接触点間ギャップがL=3.1mmと大きい場合、電流は始め安定していたが、やがて不安定になって距離d≒10μmのときにゼロとなった。後者の場合、接触点の効力が及ぶダイヤモンドの表面積は、Lが非常に小さい場合と比べてずっと小さかった。
【0051】
例5
ギャップLのないデバイスを製造するために即ちダイヤモンドと外側の電子層の上面上の単一の金属接触層との間に相を生じさせるために、非常に高い線量での連続的な高エネルギ炭素イオン注入によってダイヤモンド内にチャネルを生じさせた後、焼きなまして、塩酸、硫酸、過塩素酸の沸騰溶液中でのエッチングにより黒鉛化物質を取り除いた。チャネルの深さdは約1μm以上と推測された。そして、チャネル内に、非常に高い線量まで、適度に浅い酸素ドナーを注入することにより、チャネルの底部がn型導電性を有するようになった。チャネルの上面に金箔が配置され、該金箔の縁に沿って塗られた接着剤で所定の位置に固定された。このデバイスの概略を図8に示す。さまざまな実施例において、チャネルの底と金属の表面との間の距離は、約3Å〜5Å程度から約100μmまでの間にあった。このチャネル内の抵抗を測定し、イオン注入ステップを省いていた同様のデバイスのチャネル内の抵抗と比較した。注入が行われたデバイスの抵抗の大きさの方がずっと小さく、測定装置の精度範囲内で実質的にゼロであった。
【0052】
例6
同じ表面積を有する2つのダイヤモンド基材が処理され、図9に示されるように、導電性表面と金属接触点とを離間させることでサンドイッチ型を形成するように使用された。このようにして、ダイヤモンド表面間に低い内部抵抗を有するチャネルが形成された。このようなダイヤモンド層を使用すること、各層の両側を処理すること、そしてこれらを積層することによって、大きな断面積を有する低抵抗エレメントをつくり出すことができる。
【0053】
例7
この例においては、図10に示されているように、ダイヤモンド基材が機械加工されてリングを形成し、このリングの内側の穴から外側までスロットが切り込まれた。そして、このリングが導電性を有するように処理されることで、スロットの両側の2つの接触点間で、穴の周りに電流を流すことができるようになった。
【0054】
平面図に破線で示されている四角形も、導電性を有するようにつくられた単独のダイヤモンド・ブロックである。このダイヤモンド・ブロックは、該ダイヤモンド・ブロックの底にある電子とリングの表面にある電子とが接触するようにダイヤモンドリング上の位置まで下げられたとき、2つの接触点間に位置するスロットを架橋するように使用され得る。
【0055】
最初に、ブリッジ(橋)は、リングと接触しないようにリングよりも高位置に保たれていた(側面図参照)。そして、リングに取り囲まれた穴を貫く磁束を発生させるために、一方の接触点から他方の接触点までリングを周回する直流電流を流した。そして、ダイヤモンド・ブロックを下げることにより、ブリッジが確立した。そして、リングの周りに電流を流していた電力を遮断しても、リングの穴を貫く磁束は残っていた。このことは、リングの周りを動いている電荷が受けている抵抗が無視し得るほど小さいことを証明している。
【0056】
接触点が外部抵抗および電流計と接触しているとき、保存された磁界がゼロになるまでリングは今や電力供給源として機能することが見出された。従って、リングは、チャージされた後に小型バッテリとして機能する。
【0057】
例8
この例においては、矩形の表面を有する長いダイヤモンド基材が使用された。図11に示されているように、表面に電子が存在することで導電性を有するように処理された後、この導電性ダイヤモンドの表面よりも高い位置に、小さなゲート金属電極が保持された。
【0058】
このゲート電極に負の電荷を与えることにより、ゲート電極よりも低い位置にある複数の電子がダイヤモンドの表面内へ押し戻され、電流が停止する。こうして、このデバイスは、トランジスタ・スイッチとして機能した。また、ゲート電極への印加電圧を変化させることにより直流電流を変調させることができ、このデバイスがアナログ・トランジスタとしても作動することが見出された。このトランジスタはゼロに近い値を有する(ゲート電極の下で実際にはゼロの抵抗率ではなくても)。この抵抗率こそが、プロセッサ・チップ内で獲得され得る速度を制限しているため、このような小型の外部電子式トランジスタは、市販のプロセッサ・チップよりも高速のプロセッサ・チップを製造できる可能性がある。
【0059】
すべての測定結果が示していることは、ダイヤモンド表面の外側に自由電荷があることにより上記の導通が生じ、ひいては、電気抵抗が無視し得るほど小さいということである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2018年2月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型基材の表面よりも外側に該表面と平行に電流が流れるように、電荷キャリアを含む電気流路であって、
上記電荷は、上記基材内および上記基材表面付近の位置における高密度のドナーの電子放出に起因して生じたものであり、
該電気流路の少なくとも一部が基材材料からなる本体から形成されていて、上記基材材料の少なくとも一部は、表面と、この表面以下の位置に注入された原子と、を有するドープ部分であり、
上記表面の少なくとも一部に、抵抗率が2×10−8Ω・mよりも小さい該電気流路の低抵抗セクションを有し、
該電気流路の少なくとも一部が上記表面の少なくとも一部に沿って延在し、
上記基材材料は、ダイヤモンド、グラフェン、グラフェンを主成分とする材料、ポリマ、立方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウムおよびβ−アルミナからなる群から選択された電子親和力の小さいものであり、上記基材材料の表面よりも外側に該表面に沿っ側方導通が生じていることを特徴とする電気流路。
【請求項2】
n型基材の表面よりも外側に該表面と平行に電流が流れるように、電荷キャリアを含む電気流路であって、
上記電荷は、上記基材内および上記基材表面付近の位置における高密度のドナーの電子放出に起因して生じたものであり、
基材材料の表面よりも外側に該表面に沿って側方導通が生じていることを特徴とする電気流路。
【請求項3】
該電気流路の少なくとも一部が基材材料からなる本体から形成されていて、上記基材材料の少なくとも一部は、表面と、この表面以下の位置に注入された原子と、を有するドープ部分であり、
上記表面の少なくとも一部に、抵抗率が2×10−8Ω・mよりも小さい該電気流路の低抵抗セクションを有し、
該電気流路の少なくとも一部が上記表面の少なくとも一部に沿って延在し、
上記基材材料は、ダイヤモンド、グラフェン、グラフェンを主成分とする材料、ポリマ、立方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウムおよびβ−アルミナからなる群から選択された電子親和力の小さいものであることを特徴とする請求項2に記載の電気流路。
【請求項4】
上記基材材料からなる本体が電子的構成要素の一部であり、
電気流路を含む回路および上記電子的構成要素が、電子デバイスの一部であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電気流路。
【請求項5】
上記電子的構成要素の残部は、コネクタを介して上記流路に接続されていることを特徴とする請求項に記載の電気流路。
【請求項6】
上記電気流路の低抵抗セクションの抵抗率が5×10−13Ω・mよりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の電気流路。
【請求項7】
入された原子は、酸素、水素、リチウム、窒素、フッ素、クロム、硫黄、リン、ヒ素およびこれらの混合物から選択されたものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電気流路。
【請求項8】
入された原子のうちの少なくともいくつかは、上記基材の表面から0.1Å〜5000Åだけ深い位置にあることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電気流路。
【請求項9】
入された原子の密度は、1017個/cm〜1023個/cmであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電気流路。
【請求項10】
請求項に記載の電気流路を有する導電体。
【請求項11】
上記基材は、該基材を貫通している通路を有し、この通路の周囲に上記電気流路が延在していることを特徴とする請求項10に記載の導電体。
【請求項12】
請求項11に記載の導電体を含む回路。
【請求項13】
請求項に記載の電気流路を含む電子デバイス。
【手続補正書】
【提出日】2018年2月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型基材の表面よりも外側に該表面と平行に電流が流れるように、電荷キャリアを含む電気流路であって、
上記電荷は、上記基材の表面および上記基材内の表面付近の位置に注入された原子からなる高密度のドナーの電子放出に起因して生じたものであり、
該電気流路の少なくとも一部が基材材料からなる本体から形成されていて、上記基材材料の少なくとも一部は、表面と、この表面以下の位置に注入された原子と、を有するドープ部分であり、
上記表面の少なくとも一部に、抵抗率が2×10−8Ω・mよりも小さい該電気流路の低抵抗セクションを有し、
該電気流路の少なくとも一部が上記表面の少なくとも一部に沿って延在し、
上記基材材料は、ダイヤモンド、グラフェン、グラフェンを主成分とする材料、ポリマ、立方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウムおよびβ−アルミナからなる群から選択された電子親和力の小さいものであり、
上記基材材料の表面よりも外側に該表面に沿って側方導通が生じていることを特徴とする電気流路。
【請求項2】
n型基材の表面よりも外側に該表面と平行に電流が流れるように、電荷キャリアを含む電気流路であって、
上記電荷は、上記基材の表面および上記基材内の表面付近の位置に注入された原子からなる高密度のドナーの電子放出に起因して生じたものであり、
基材材料は、ダイヤモンド、グラフェン、グラフェンを主成分とする材料、ポリマ、立方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウムおよびβ−アルミナからなる群から選択された電子親和力の小さいものであり、
上記基材材料の表面よりも外側に該表面に沿って側方導通が生じていることを特徴とする電気流路。
【請求項3】
該電気流路の少なくとも一部が基材材料からなる本体から形成されていて、上記基材材料の少なくとも一部は、表面と、この表面以下の位置に注入された原子と、を有するドープ部分であり、
上記表面の少なくとも一部に、抵抗率が2×10−8Ω・mよりも小さい該電気流路の低抵抗セクションを有し、
該電気流路の少なくとも一部が上記表面の少なくとも一部に沿って延在することを特徴とする請求項2に記載の電気流路。
【請求項4】
上記基材材料からなる本体が電子的構成要素の一部であり、
該電気流路を含む回路および上記電子的構成要素が、電子デバイスの一部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気流路。
【請求項5】
上記電子的構成要素の残部は、コネクタを介して上記流路に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の電気流路。
【請求項6】
上記電気流路の低抵抗セクションの抵抗率が5×10−13Ω・mよりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の電気流路。
【請求項7】
注入された原子は、酸素、水素、リチウム、窒素、フッ素、クロム、硫黄、リン、ヒ素およびこれらの混合物から選択されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電気流路。
【請求項8】
注入された原子のうちの少なくともいくつかは、上記基材の表面から0.1Å〜5000Åだけ深い位置にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電気流路。
【請求項9】
注入された原子の密度は、1017個/cm〜1023個/cmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電気流路。
【請求項10】
請求項1に記載の電気流路を有する導電体。
【請求項11】
上記基材は、該基材を貫通している通路を有し、この通路の周囲に上記電気流路が延在していることを特徴とする請求項10に記載の導電体。
【請求項12】
請求項11に記載の導電体を含む回路。
【請求項13】
請求項1に記載の電気流路を含む電子デバイス。