【解決手段】地下の横坑2から上向きに立坑32を掘進する上向きシールド工法において、横坑2内に搬入可能、かつ、横坑2内から発進な幅で、かつ、長さが幅より長い非円形シールド機1を用い、この非円形シールド機1を横坑2内から上向きに発進させて、従来の円形断面より大きな面積の立坑32を構築するものである。
地下の横坑内から上向きに立坑を掘進する上向きシールド工法において、前記横坑内に搬入可能、かつ、前記横坑内から発進可能な幅で、かつ、長さが前記幅より長い非円形シールド機を用い、この非円形シールド機を前記横坑内から上向きに発進させて大きな面積の立坑を構築することを特徴とする異形断面上向きシールド工法。
前記非円形シールド機は、上下に延びる筒状に形成されると共に断面形状が前記横坑の軸方向に長い非円形に形成されたシールドフレームと、前記シールドフレームの上端部を塞ぐバルクヘッドと、前記バルクヘッドに対して回転自在に、かつ、長手方向に移動可能に設けられた土砂掘削用カッタ装置とを備え、前記土砂掘削用カッタ装置は、回転軌跡が前記横坑の外径より小径のドーム形状となるように形成された請求項1に記載の異形断面上向きシールド工法。
前記シールドフレームが断面長円形に形成されると共に前記バルクヘッドが前記シールドフレームの上端部を塞ぐ長円形に形成され、前記土砂掘削用カッタ装置は、前記バルクヘッドに対して回転自在に、かつ、前記バルクヘッドの長手方向にスライド自在に設けられた請求項2に記載の異形断面上向きシールド工法。
前記シールドフレームが断面長円形に形成されると共に前記バルクヘッドが前記シールドフレームの上端部を塞ぐ長円形に形成され、前記土砂掘削用カッタ装置は、前記バルクヘッドに対して回転自在に、かつ、前記バルクヘッドの長手方向に揺動自在に設けられた請求項2に記載の異形断面上向きシールド工法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地上の環境に影響を及ぼさせずに横坑と接続される大きな面積の立坑を構築する工法が存在しないという課題があった。
【0005】
従来の工法で横坑のルート上に立坑を設ける場合、地上から下向きに立坑を掘進した後、立坑に横坑用シールド機を到達及び発進させて接続する土木的手法が採用された。この土木的手法によれば、上述の顧客ニーズを満たすことは技術的には可能であった。しかし、横坑と立坑との接続作業を土水圧が高い地下で行わなければならず、安全確保に時間とコストがかかり課題があった。また、地上に立坑を掘削するための設備が必要となり、その占有面積および期間または騒音等が地上環境により制約を受ける場合があった。
【0006】
上述の課題を解決するために、立坑を構築する技術としては、横坑内に円形断面のシールド機を搬入したのち、横坑内からシールド機を上向きに掘進させる上向きシールド工法は知られている。しかし、構築できる立坑のサイズが横坑のサイズで制限されることがあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、横坑と接続される大きな面積の立坑を地上環境への影響を抑えて、地下の横坑から効率的に構築できる異形断面上向きシールド工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明は、地下の横坑内から上向きに立坑を掘進する上向きシールド工法において、前記横坑内に搬入可能な幅で、かつ、長さが前記幅より長い非円形シールド機を用い、この非円形シールド機を前記横坑内から上向きに発進させて、従来の円形断面より大きな面積の立坑を構築する上向きシールド工法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上向きシールド工法によれば、横坑と接続される従来の円形断面より大きな面積の立坑を地下の横坑から構築できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
まず、上向きシールド工法で用いる非円形シールド機について説明する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、非円形シールド機1は、横坑2内から発進される上向きシールド機である。非円形シールド機1の断面形状は、横坑2内に搬入可能、かつ、横坑2内から発進可能な最大の幅Wで、かつ、長さLが幅Wより長い長円形(小判形)に形成されている。具体的には、幅Wは、横坑2内から非円形シールド機1が発進するとき横坑2が土水圧等に耐えられる限界の寸法であり、横坑の内径φの約80%以下である。また、長さLは、非円形シールド機で構築される立坑の断面が顧客ニーズに沿う面積となるよう設定されている。
【0014】
図3、
図4及び
図5に示すように、非円形シールド機1は、上下に延びる筒状に形成されると共に断面形状が横坑2の軸方向に長い長円形に形成されたシールドフレーム3と、シールドフレーム3の上端部を塞ぐバルクヘッド4と、バルクヘッド4に対して回転自在に、かつ、バルクヘッド4の長手方向にスライド自在に設けられた土砂掘削用カッタ装置5と、シールドフレーム3の内周面に沿って組み立てられ構築したセグメントsから反力を取って推進力を得るためのシールドジャッキ6とを備える。
【0015】
バルクヘッド4は、後述するカッタスポーク25の下方(掘進方向後方)に形成されるチャンバ7と、シールド機内8とを隔てる隔壁として機能する。バルクヘッド4は、板状に形成された隔壁部9と、隔壁部9に設けられ土砂掘削用カッタ装置5をスライド可能に支持するスライド支持部10とを備える。
【0016】
隔壁部9は、シールドフレーム3の上端部を塞ぐように長円形に形成されている。また、隔壁部9の中央には、後述する土砂掘削用カッタ装置5のセンターシャフト24を挿通させるための挿通孔11が形成されている。挿通孔11は、隔壁部9の長手方向に長い長円形に形成されている。これにより、土砂掘削用カッタ装置5が隔壁部9の長手方向に移動可能となっている。
【0017】
また、隔壁部9の短手方向の離間したスライド支持部10外側の2箇所には、排土装置12の排土管13がチャンバ7に対して開口して設けられている。排土管13は、複数の短管を継ぎ足して形成され、それぞれにピンチバルブ14が設けられると共に、一対の排土ゲート15がピンチバルブ14の入口と出口とに位置して設けられている。排土管13はスライド支持部10を避けて斜め下方に延ばされ、非円形シールド機1の下方で合流され排土装置12が形成されている。なお、非円形シールド機1の断面積によっては、排土管13を1箇所にした排土装置12とすることも可能である。
【0018】
スライド支持部10は、隔壁部9から下方に延びると共にバルクヘッド4の長手方向に延びる板状に形成された一対のフレーム部16と、これらフレーム部16に設けられ土砂掘削用カッタ装置5をガイドする一対のガイドレール17とを備える。フレーム部16は、バルクヘッド4の短手方向に間隔を隔てて平行に、かつ、バルクヘッド4の中央部を挟むように配置されている。ガイドレール17は、断面L字状に形成されており、それぞれのフレーム部16の対向面に対称に設けられている。ガイドレール17は、上下方向に延びると共にバルクヘッド4の長手方向に延びる側面ガイド部17aと、側面ガイド部17aの下端からバルクヘッド4の中央に向けて延びる底面ガイド部17bとを備える。
【0019】
土砂掘削用カッタ装置5は、ガイドレール17に沿ってスライドするスライド基部18と、スライド基部18に回転自在に設けられたカッタ本体19とを備える。
【0020】
スライド基部18は、バルクヘッド4の長手方向に延びる箱形に形成されている。スライド基部18は、一対のガイドレール17の側面ガイド部17a間に位置されており、底面がそれぞれのガイドレール17の底面ガイド部17b上に載って支持される。また、スライド基部18には、後述するカッタ本体19のセンターシャフト24を回転自在に支持する軸受部材20が設けられている。軸受部材20は、スライド基部18から上方に延びる筒状の上部軸受部材20aと、スライド基部18から下方に延びる筒状の下部軸受部材20bとからなる。上部軸受部材20aは、隔壁部9の挿通孔11に挿通されている。また、上部軸受部材20aには、挿通孔11を塞ぐための上部蓋板部材21及び下部蓋板部材22が設けられている。上部蓋板部材21及び下部蓋板部材22は、土砂掘削用カッタ装置5の移動ストローク間にどこの位置であっても挿通孔11を塞ぐ大きさに形成され、隔壁部9と上部蓋板部材21及び下部蓋板部材22との間には土砂シールが設けられており、挿通孔11を上下から塞いで挿通孔11の位置に密閉空間を形成する。密閉空間には、止水用のグリスが封入されており、土砂掘削用カッタ装置5の往復移動中においてチャンバ7からの止水が確保されている。
【0021】
また、それぞれのフレーム部16には、土砂掘削用カッタ装置5をガイドレール17に沿ってスライド駆動するためのスライド用駆動装置23が設けられている。スライド用駆動装置23は、ジャッキ等をアクチュエータとする。具体的には、スライド用駆動装置23は、一端がフレーム部16に連結されると共に、他端がスライド基部18に連結されており、伸縮することでスライド基部18をバルクヘッド4の長手方向にスライドさせる。
【0022】
カッタ本体19は、スライド基部18に回転自在に、かつ、上下に延びて設けられたセンターシャフト24と、センターシャフト24の上端部外周から径方向外方に放射状に延びて設けられた複数のカッタスポーク25と、センターシャフト24及びカッタスポーク25に設けられた複数のカッタビット26とを備える。
【0023】
カッタスポーク25は、センターシャフト24の基端側から径方向外方の先端に向けて下方に傾斜して形成される。本実施例は横坑と立坑の外形比率が小さいため、基端側スポーク部25aと、先端側に形成され基端側スポーク部25aからさらに下方に屈曲された先端側スポーク部25bとを有し、2段の傾斜を設けている。
【0024】
カッタビット26は、センターシャフト24の先端に山形のフィッシュテール部材27を介して設けられると共に、カッタスポーク25の上端面にカッタスポーク25の長手方向に沿って複数設けられている。また、カッタスポーク25に設けられたカッタビット26の列は、上端が横坑2の内径φの半径と同じ円弧を描くように形成されている。これにより、カッタ本体19が回転したとき、カッタビット26先端の軌跡が横坑2の内径φの半径と同じドーム形状となる。
【0025】
また、スライド基部18には、センターシャフト24を回転駆動するための複数の駆動用モータ29が設けられている。
【0026】
次に、非円形シールド機1を用いた立坑の構築方法について述べる。
【0027】
非円形シールド機1を用いて立坑を構築する場合、まず、横坑2内に非円形シールド機1を搬入する。
【0028】
図6に示すように、横坑2内に敷設されたレール30上に台車31を載せ、この台車31上に非円形シールド機1を載せ、台車31を立坑構築位置まで走行させる。
【0029】
このとき、予め立坑構築位置の横坑2の上壁を切削可能な強度材料から成る切削可能壁(図示せず)で形成しておき、切削可能壁の鉛直下方に、非円形シールド機1を発進させるための反力架台(図示せず)を設置しておく。
【0030】
この後、非円形シールド機1が立坑構築位置に到達したら、非円形シールド機1を反力架台上に載せ、発進させる。
【0031】
非円形シールド機1は、シールドジャッキ6を伸長させることで反力架台から反力を取ると共に、土砂掘削用カッタ装置5を回転駆動させ、かつ、土砂掘削用カッタ装置5をバルクヘッド4の長手方向に往復移動させる。カッタ本体19は、駆動用モータ29の駆動力で回転駆動され、スライド用駆動装置23で往復移動される。また、カッタ本体19は、回転されることでカッタスポーク25のカッタビット26先端の軌跡が横坑2の内径φの半径と同じドーム形状となるため、短手方向断面では横坑2の切削可能壁を略均等な厚さで、かつ、長手方向断面ではカッタ本体19の中心側から切り拡げる形態で掘進できる。このため、例えば平面的な土砂掘削用カッタ(図示せず)のように、外周側ビットが先に接触・切削し、残される中心部切削可能壁の切削片の大きな塊が排出されることがなく、切削可能壁の切削片の大きな塊による排土管13への閉塞およびピンチバルブ14等の損傷を防ぐことができる。
【0032】
この後、非円形シールド機1は、セグメントsを組み立てて断面長円形の立坑32(
図1参照)を構築しつつ、組み立てたセグメントsから反力を取って地中を掘進する。非円形シールド機1で構築される立坑32の幅寸法Wは、従来と同等であるものの、長さLが幅Wより長く、従来の円形断面より大きな面積となる。
【0033】
このように、横坑2内に搬入可能、かつ、横坑2内から発進な幅Wで、かつ、長さLが幅Wより長い非円形シールド機1を用い、非円形シールド機1を横坑2内から上向きに発進させて立坑32を構築するため、横坑2と接続される大きな面積の立坑32を構築できる。
【0034】
また、非円形シールド機1は、上下に延びる筒状に形成されると共に断面形状が横坑2の軸方向に長い非円形に形成されたシールドフレーム3と、シールドフレーム3の上端部を塞ぐバルクヘッド4と、バルクヘッド4に対して回転自在に設けられた土砂掘削用カッタ装置5とを備え、土砂掘削用カッタ装置5に設けられたカッタ本体19は、回転軌跡が横坑2の内径φの半径と同じドーム形状(球面形状)となるように形成されたため、切削可能壁の大きな塊が排土装置12に取り込まれるのを防ぐことができ、排土管13への閉塞およびピンチバルブ14等の損傷を防ぐことができる。
【0035】
また、シールドフレーム3が断面長円形に形成されると共にバルクヘッド4がシールドフレーム3の上端部を塞ぐ長円形に形成され、土砂掘削用カッタ装置5は、バルクヘッド4に対して回転自在に、かつ、バルクヘッド4の長手方向にスライド自在に設けられるものとしたため、地山を簡易な構造で確実に長円形に掘削できる。
【0036】
なお、土砂掘削用カッタ装置5は、バルクヘッド4に対して回転自在に、かつ、バルクヘッド4の長手方向にスライド自在に設けられるものとしたが、これに限るものではない。
【0037】
図7に示すように、土砂掘削用カッタ装置40は、バルクヘッド41に対して回転自在に、かつ、バルクヘッド41の長手方向に揺動自在に設けられるものであってもよい。
【0038】
この土砂掘削用カッタ装置40を備える非円形シールド機42について説明する。なお、上述と同様の構成については説明を省略し、同符号を付す。
【0039】
非円形シールド機42は、シールドフレーム3と、シールドフレーム3の上端部を塞ぐバルクヘッド41と、バルクヘッド41に対して回転自在に、かつ、バルクヘッド41の長手方向に揺動自在に設けられた土砂掘削用カッタ装置40と、シールドジャッキ6とを備える。
【0040】
バルクヘッド41は、シールドフレーム3の上端部を塞ぐように長円形に形成された隔壁部43と、隔壁部43の中央に設けられ土砂掘削用カッタ装置40を揺動自在に支持する揺動支持部44とを備える。揺動支持部44は、環状に形成されており、内周面44aの上下の中間部が球面状に窪んで形成されている。
【0041】
土砂掘削用カッタ装置40は、揺動支持部44の内周面44aに沿って揺動する揺動基部45と、揺動基部45に回転自在に設けられたカッタ本体46とを備える。揺動基部45は、上下に延びる筒状に形成されると共に上下の中間部が球面状に膨らむ形状に形成されている。また、揺動基部45の外周面45aと揺動支持部44の内周面44aは、同じ径に形成されており、常に密接し、これらの間には土砂シールが設けられ揺動作動中におけるチャンバ7からの止水が確保されるようになっている。カッタ本体46は、揺動基部45に回転自在に設けられた旋回環47と、旋回環47に設けられた中間リング48と、中間リング48から上方(掘進方向前方)に延びる複数の中間ビーム49と、中間ビーム49の上端に設けられたカッタスポーク50と、カッタスポーク50に設けられたカッタビット51とを備える。
【0042】
また、揺動基部45には、カッタスポーク50の下方に形成されるチャンバ52とシールド機内53を隔てる中央隔壁54が設けられている。中央隔壁54には、排土装置55の排土管56がチャンバ52側に開口して設けられている。排土管56は、複数の短管を継ぎ足して形成されている。また、排土管56には、ピンチバルブ14が設けられると共に、排土ゲート15がピンチバルブ14の出口側に位置して設けられている。別の実施例として排土装置55を揺動基部45の中央隔壁部54に設けず、揺動支持部44の外側の隔壁部43に前述のスライド式の実施例のように2箇所の排土管13を設け、ピンチバルブ14と排土ゲート15で形成させ非円形シールド機42の下方で合流させる方法もある(図示せず)。
【0043】
このように、土砂掘削用カッタ装置40が、バルクヘッド41に対して回転自在に、かつ、バルクヘッド41の長手方向に揺動自在に設けられるものであっても、地山を確実に長円形に掘削できる。
【0044】
なお、非円形シールド機1は、カッタスポーク25を有するスポーク式について説明したが、面板式であってもよい。
【0045】
また、非円形シールド機は、断面長円形に限るものでもない。例えば非円形シールド機は、断面円形の上向きシールド機を横坑2の軸方向に複数連結した形状の多連シールド機(図示せず)であってもよい。