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特開2018-933342次元通信シートおよびそれを備えた2次元通信システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-93334(P2018-93334A)
(43)【公開日】2018年6月14日
(54)【発明の名称】2次元通信シートおよびそれを備えた2次元通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/00 20060101AFI20180518BHJP
   H04B 13/00 20060101ALI20180518BHJP
【FI】
   H04B5/00 Z
   H04B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-234121(P2016-234121)
(22)【出願日】2016年12月1日
(71)【出願人】
【識別番号】516361956
【氏名又は名称】テスラシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】張 兵
(72)【発明者】
【氏名】加川 敏規
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AA01
5K012AB06
5K012AB08
5K012AC03
(57)【要約】
【課題】カプラとのインピーダンス整合を改善し、周辺部におけるエバネッセント場の漏れを抑制可能な2次元通信シートを提供する。
【解決手段】2次元通信シート10は、誘電体層1と、導体2とを備える。導体2は、メッシュ形状を有し、誘電体層1の一方の面に配置される。導体2は、導体部21,22を含む。導体部21は、誘電体層1の内周部REG2に配置され、複数のメアンダ形状211が碁盤目状に配置された構造を有する。複数のメアンダ形状211の各々は、周期性を有する波形形状からなる。開口部2Aは、4個のメアンダ形状211によって囲まれることによって形成される。そして、開口部2Aは、例えば、正方形の平面形状を有する。導体部22は、誘電体層1の外周部REG1に配置され、直線形状を有する。誘電体層1の他方の面は、導体によって覆われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート形状を有する誘電体層と、
前記誘電体層の一方の面に配置され、メッシュ形状を有する第1の導体と、
前記誘電体層の他方の面を覆うように配置された第2の導体とを備え、
前記メッシュ形状は、前記誘電体層の端部から所望の距離までの外周領域において、周期性を有する波形形状からなるメアンダ形状と異なる形状を有し、前記外周領域の内周側に配置された内周領域において前記メアンダ形状を有する、2次元通信シート。
【請求項2】
前記メッシュ形状は、前記外周領域において直線形状を有する、請求項1に記載の2次元通信シート。
【請求項3】
前記誘電体層は、ゴムを含む、請求項1または請求項2に記載の2次元通信シート。
【請求項4】
給電ポートを更に備え、
前記給電ポートは、
前記第2の導体上に離間して配置された第1の給電板と、
前記第1の給電板に対向する位置に前記第1の導体上に離間して配置された第2の給電板と、
前記誘電体層を貫通し、前記第1の給電板と電気的に接続された第1の給電体と、
前記第2の給電板と電気的に接続された第2の給電体とを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の2次元通信シート。
【請求項5】
前記給電ポートに接続され、高周波電力を出力する発振器を更に備える、請求項4に記載の2次元通信シート。
【請求項6】
請求項5に記載の2次元通信シートと、
前記2次元通信シートの前記一方の面上に配置されたカプラと、
前記カプラに電気的に接続された充電可能な蓄電装置とを備える2次元通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2次元通信シートおよびそれを備えた2次元通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の絶縁体の表裏面を2枚の導電層で挟み、その間で電磁場を伝達可能にする2次元通信シートが知られている(非特許文献1)。
【0003】
この2次元通信シートにおいては、2枚の導電層のうち、一方の導体層をメッシュ状にして、その近傍に染み出るエバネッセント場を介して、2次元通信シート上の異なる位置に配置された通信機器間での信号の送受信および電力の供給を可能としている。
【0004】
2次元通信シートは、2次元通信シート内に信号を閉じ込め、表面に滲み出るエバネッセント場を介してシート表面を伝わる信号を使って通信することができる。つまり、通信シート表面の2次元の「面」で情報を伝搬することができ、簡便な接続または情報漏洩リスクの少ない通信が可能となる。
【0005】
ここで、2次元通信シートの誘電体層の材料として、密度が0.02〜0.1g/cmであり、誘電率が1.2以下であり、平均セル径が1〜300μmの気泡を有し、かつ、脂肪酸、脂肪酸アミド、および脂肪酸金属石鹸から選ばれる少なくとも1つの気泡をつぶれ難くして、形状回復性を向上させるための脂肪族系化合物を樹脂成分100重量部に対して1〜20の重量部を含有した低誘電シートが提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、少なくとも誘電体層と樹脂発泡体層から構成された2次元通信シート用の高周波基板材料が提案されている(特許文献2)。この高周波基板材料において、樹脂発泡体層は、12GHzにおける誘電率が3以下であり、誘電正接が0.01以下の特性を有する。そして、誘電体層と樹脂発泡体層とがシーラントA層を介して接合され、かつ、誘電体層と樹脂発泡体層との接着強度が0.05kN/m以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−201895号公報
【特許文献2】特開2013−206892号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Naoshi Yamahira, Yastoshi Makino, Hiroto Itai, and Hiroyuki Shinoda, “Proximity Cennection in Two-Dimensional Signal Transmission,” SICE-ICASE International Joint Conference, Busan, Korea, Oct. 18-21, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の2次元通信シートにおいては、カプラとのインピーダンス整合が悪く、周辺部におけるエバネッセント場の漏れが大きいという問題があった。
【0010】
この発明の実施の形態によれば、カプラとのインピーダンス整合を改善し、周辺部におけるエバネッセント場の漏れを抑制可能な2次元通信シートを提供する。
【0011】
また、この発明の実施の形態によれば、カプラとのインピーダンス整合を改善し、周辺部におけるエバネッセント場の漏れを抑制可能な2次元通信シートを備える2次元通信システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の実施の形態によれば、2次元通信シートは、誘電体層と、第1および第2の導体とを備える。誘電体層は、シート形状を有する。第1の導体は、誘電体層の一方の面に配置され、メッシュ形状を有する。第2の導体は、誘電体層の他方の面を覆うように配置される。メッシュ形状は、誘電体層の端部から所望の距離までの外周領域において、周期性を有する波形形状からなるメアンダ形状と異なる形状を有し、外周領域の内周側に配置された内周領域においてメアンダ形状を有する。
【0013】
この発明の実施の形態による2次元通信シートにおいては、メッシュ形状を有する第1の導体は、内周領域にメアンダ形状を有し、外周領域にメアンダ形状と異なる形状を有する。その結果、内周領域においてエバネッセント場の染み出し量が増加し、外周領域においてエバネッセント場の漏れが抑制される。
【0014】
従って、カプラとのインピーダンス整合を改善し、周辺部におけるエバネッセント場の漏れを抑制できる。特に、周辺部におけるエバネッセント場の漏れを抑制するとともに、給電用カプラおよび/または受電用カプラとのインピーダンス整合を改善し、電力の入出力を効率的に行うことができる。
【0015】
好ましくは、メッシュ形状は、外周領域において直線形状を有する。
【0016】
外周領域におけるエバネッセント場の漏れが、外周領域にメアンダ形状の導体を配置した場合よりも抑制される。
【0017】
従って、外周領域におけるエバネッセント場の漏れを効果的に抑制できる。
【0018】
好ましくは、誘電体層は、ゴムを含む。
【0019】
誘電体層がゴムからなる場合、2次元通信シートは、弾力性を有するので、玩具および電子機器等を2次元通信シート上に配置しても玩具および電子機器等に傷が着くのを抑制できる。
【0020】
好ましくは、2次元通信シートは、給電ポートを更に備える。給電ポートは、第1および第2の給電板と、第1および第2の給電体とを含む。第1の給電板は、第2の導体上に離間して配置される。第2の給電板は、第1の給電板に対向する位置に第1の導体上に離間して配置される。第1の給電体は、誘電体層を貫通し、第1の給電板と電気的に接続される。第2の給電体は、第2の給電板と電気的に接続される。
【0021】
給電ポートは、逆F型アンテナからなるので、小型で高効率な電力供給を行うことができる。
【0022】
好ましくは、2次元通信シートは、発振器を更に備える。発振器は、給電ポートに接続され、高周波電力を出力する。
【0023】
給電ポートは、発振器から高周波電力を受け、その受けた高周波電力を誘電体層に供給する。
【0024】
従って、2次元通信シート上に置かれた各種の機器に内蔵された蓄電装置を高効率に充電できる。
【0025】
また、この発明の実施の形態による2次元通信シートは、請求項5に記載の2次元通信シートと、カプラと、蓄電装置とを備える。カプラは、2次元通信シートの一方の面上に配置される。蓄電装置は、カプラに電気的に接続された充電可能な蓄電装置である。
【0026】
従って、各種の機器を2次元通信シート上に置くだけで、各種の機器に内蔵された蓄電装置を高効率に充電できる。
【発明の効果】
【0027】
カプラとのインピーダンス整合を改善し、周辺部におけるエバネッセント場の漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明の実施の形態1による2次元通信シートの平面図である。
図2図1に示す線II−IIにおける2次元通信シートの断面図である。
図3図1に示すメアンダ形状の一部の拡大図である。
図4】2次元通信シートの他の例を示す平面図である。
図5】2次元通信シートの更に他の例を示す平面図である。
図6】磁界強度のシミュレーション結果を示す図である。
図7】2次元通信シートの磁界強度のシミュレーション結果の断面図である。
図8】2次元通信シートの磁界強度のシミュレーション結果のグラフを示す図である。
図9】実施の形態1による別の2次元通信シートの断面図である。
図10】実施の形態2による2次元通信シートの平面図である。
図11図10に示す線XI−XIにおける2次元通信シートの断面図である。
図12】実施の形態3による2次元通信シートの断面図である。
図13図12に示す給電ポートの拡大図である。
図14図12に示す給電ポートの別の拡大図である。
図15】この発明の実施の形態における通信装置の構成を示す概略ブロック図である。
図16】2次元通信の概念図である。
図17】RTS(Request To Send)パケットの構成図である。
図18】伝送波の概念図である。
図19】受信用コネクタを選択する方法を説明するための図である。
図20】信号の受信および電力の受電を説明するための図である。
図21】信号の受信および電力の受電を説明するための他の図である。
図22】信号の送信を説明するための図である。
図23】充電オフモードを説明するための図である。
図24】電源オフモードを説明するための図である。
図25】実施の形態4による通信方法を説明するためのフローチャートである。
図26】実施の形態5による2次元通信システムの概略図である。
図27図26に示す玩具の概略図である。
図28図26に示す玩具の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0030】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による2次元通信シートの平面図である。図2は、図1に示す線II−IIにおける2次元通信シートの断面図である。
【0031】
図1および図2を参照して、この発明の実施の形態1による2次元通信シート10は、誘電体層1と、導体2,3とを備える。
【0032】
誘電体層1は、概略的にシート形状を有し、矩形の平面形状を有する。誘電体層1の厚みは、好ましくは、4mm以上6mm以下であり、より好ましくは、5mmである。この5mmの厚みは、特に、2.45GHz帯の入出力効率を改善するのに好ましい厚みである。
【0033】
誘電体層1は、例えば、発泡ポリエチレン(比誘電率が2.3である。)またはゴム(比誘電率が2.2〜8.0である。)からなる。誘電体層1がゴムからなる場合、2次元通信シート10は、弾力性を有するので、後述する玩具および電子機器等を2次元通信シート10上に配置しても玩具および電子機器等に傷が着くのを抑制できる。
【0034】
誘電体層1は、発泡ポリエチレンおよびゴムに限らず、誘電体であれば、どのようなものであってもよい。
【0035】
なお、誘電体層1の比誘電率によって、誘電体層1の好ましい厚みも変わる。
【0036】
導体2は、例えば、金属からなり、メッシュ形状を有する。そして、導体2は、誘電体層1の一方の面に配置される。
【0037】
導体2は、導体部21,22からなる。導体部21は、誘電体層1の端部から所望の距離までの外周領域REG1の内周側に配置された内周領域REG2に配置される。導体部21は、複数のメアンダ形状211が碁盤目状に配置された構造からなる。複数のメアンダ形状211の各々は、周期性を有する波形形状からなる。そして、複数のメアンダ形状211の各々は、例えば、矩形の波形形状からなる。メアンダ形状が矩形の波形形状からなる場合、インピーダンス整合を改善することができる。
【0038】
外周領域REG1は、例えば、誘電体層1の端部から5mm以上10mm以下の領域に設定される。
【0039】
導体部22は、外周領域REG1に配置され、直線形状からなる。
【0040】
導体2は、誘電体層1の面内方向(X軸方向およびY軸方向)において、所望の間隔を隔てて配置される(図2参照)。開口部2Aは、4個のメアンダ形状211によって囲まれることにより形成され、例えば、正方形の平面形状を有する。そして、複数の開口部2Aは、2次元通信シート10の外界における電磁波長よりも短い間隔で配置される。
【0041】
4個のメアンダ形状211A,211B,211C,211Dにおいては、メアンダ形状211Bは、メアンダ形状211Aを時計方向に90°回転させたものであり、メアンダ形状211Cは、メアンダ形状211Bを時計方向に90°回転させたものであり、メアンダ形状211Dは、メアンダ形状211Cを時計方向に90°回転させたものであり、メアンダ形状211Aは、メアンダ形状211Dを時計方向に90°回転させたものである。一方端が1つの点に集まる4個のメアンダ形状211の各々は、2次元通信シート10の任意の部分において、反時計方向に隣接するメアンダ形状を時計方向に90°回転させたものになっている。
【0042】
なお、この発明の実施の形態においては、一方端が1つの点に集まる4個のメアンダ形状211の各々は、2次元通信シート10の任意の部分において、時計方向に隣接するメアンダ形状を反時計方向に90°回転させたものになっていてもよい。
【0043】
導体3は、例えば、金属からなり、誘電体層1の他方の面(導体2が配置された面と反対面)を覆うように配置される。
【0044】
メッシュ形状を有する導体部2は、外界とシート状の誘電体層1との相互電磁結合を弱める働きをするので、外界と誘電体層1との電磁結合が十分に弱いと仮定すると、シート状の誘電体層1の内部では、電磁波は、1/(με)1/2で伝搬する。この場合、μは、誘電体層1の透磁率であり、εは、誘電体層1の誘電率である。
【0045】
開口部2Aは、2次元通信シート10の外界における電磁波長よりも短い間隔で配置されているので、各開口部2Aから漏れ出すエバネッセント波も、電磁波長よりも短い空間周期で電磁波位相が変化し、遠方まで伝搬する波動とはならない。
【0046】
この場合の減衰係数は、exp(−(ε/ε−1)1/2(ω/c)z)となる。ここで、εは、外界の誘電率であり、ωは、信号の角周波数であり、cは、外界における光速であり、zは、誘電体層1の導体2が形成された面からの距離である。
【0047】
したがって、εがそれほど大きくなくても、誘電体層1の薄い厚みに対して、エバネッセント波の染み出し領域を波長程度まで小さくすることができる。
【0048】
このように、2次元通信シート10は、電磁波を1/(με)1/2で伝搬させるとともに、その一主面(導体2が形成された面)からエバネッセント波を染み出させる。
【0049】
図3は、図1に示すメアンダ形状の一部の拡大図である。図3を参照して、1つのメアンダ形状211のX軸方向(またはY軸方向)における長さ、即ち、複数のメアンダ形状211の周期PLは、例えば、8mmであり、メアンダ形状211の線幅W1は、例えば、0.5mmであり、メアンダ形状211の線間隔GA1は、例えば、0.5mmであり、1つの開口部2Aを構成する4つのメアンダ形状211のうち、X軸方向(またはY軸方向)に対向する2つのメアンダ形状211の間隔GA2は、例えば、5.5mmであり、X軸方向(またはY軸方向)におけるメアンダ形状211の振れ幅W2は、例えば、2.5mmである。なお、線間隔GA1は、0.5mm以上1.5mm以下であればよい。
【0050】
図4は、2次元通信シートの他の例を示す平面図である。図4を参照して、2次元通信シート30は、図1に示す2次元通信シート10の導体2を導体31に代えたものであり、その他は、2次元通信シート10と同じである。
【0051】
導体31は、金属からなり、メアンダ形状からなるメッシュ形状を有する。そして、2次元通信シート30においては、メアンダ形状が2次元通信シートの全面に配置される。即ち、2次元通信シート10においては、外周領域REG1には、直線形状からなる導体部22が配置されているが、2次元通信シート30においては、外周領域REG1も含めてメアンダ形状からなる導体31が配置されている。そして、2次元通信シート30の導体31のメアンダ形状は、2次元通信シート10の導体2のメアンダ形状211と同じ周期PL、線幅W1、線間隔GA1、振れ幅W2および間隔GA2を有する。
【0052】
図5は、2次元通信シートの更に他の例を示す平面図である。図5を参照して、2次元通信シート40は、図1に示す2次元通信シート10の導体2を導体41に代えたものであり、その他は、2次元通信シート10と同じである。
【0053】
導体41は、金属からなり、直線形状のメッシュ形状を有する。
【0054】
発明者らは、2次元通信シート30,40について、磁界強度のシミュレーションを行った。シミュレーションの条件を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1において、保護層は、2次元通信シート30の導体31および裏面の導体を覆うように配置されるとともに、2次元通信シート40の導体41および裏面の導体を覆うように配置されるものである。そして、保護層は、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン等の誘電体からなり、2次元通信シート30の導体31および裏面の導体または2次元通信シート40の導体41および裏面の導体を保護する。
【0057】
また、表1においては、参考例は、2次元通信シート30におけるシミュレーションの条件を示し、比較例は、2次元通信シート40におけるシミュレーションの条件を示す。
【0058】
図6は、磁界強度のシミュレーション結果を示す図である。図6の(a)は、比較例に係る2次元通信シート40の磁界強度のシミュレーション結果を示し、図6の(b)は、参考例に係る2次元通信シート30の磁界強度のシミュレーション結果を示す。
【0059】
図6を参照して、参考例では、比較例に比べて、色の濃い領域(磁界強度の強い領域)が2次元通信シートの全体に広がっており、また、その拡がり方も均一である(図6の(b)参照)。
【0060】
図7は、2次元通信シートの磁界強度のシミュレーション結果の断面図である。図7の(a)は、比較例に係る2次元通信シート40の磁界強度のシミュレーション結果の断面図を示し、図7の(b)は、参考例に係る2次元通信シート30の磁界強度のシミュレーション結果の断面図を示す。
【0061】
図7の(a)を参照して、比較例では、2次元通信シートの中央部においては、エバネッセント場の染み出し量が多くなっているが、中央部から両端部に近づくに従ってエバネッセント場の染み出し量が急激に落ち込んでいる。
【0062】
一方、図7の(b)に示すように、参考例では、メッシュ形状をメアンダ形状としたことにより、2次元通信シートの表面からのエバネッセント場の染み出し量が全体的に増加しており、かつ、両端側においても、エバネッセント場の染み出し量がそれほど落ち込んでおらず、エバネッセント場の染み出し量が2次元通信シートの全体において均一であることが分かる。
【0063】
図8は、2次元通信シートの磁界強度のシミュレーション結果のグラフを示す図である。図8の(a)は、X軸方向(横方向)における磁界強度のシミュレーション結果のグラフを示し、図8の(b)は、Y軸方向(縦方向)における磁界強度のシミュレーション結果のグラフを示す。
【0064】
図8において、縦軸は、CDF(累積分布関数(Cumulative Distribution Function))を表し、横軸は、単位メートル当たりの電界強度(dBμA/m)を表す。また、一点鎖線は、比較例のシミュレーション結果を示し、実線は、参考例のシミュレーション結果を示す。
【0065】
図8の(a)を参照して、X軸方向(横方向)における電界強度は、メッシュ形状をメアンダ形状とすることにより、4dB改善されていることがわかる。また、図8の(b)を参照して、Y軸方向(縦方向)における電界強度は、メッシュ形状をメアンダ形状とすることにより、7dB改善されていることがわかる。
【0066】
このように、参考例に係る2次元通信シート30の導体31がメアンダ形状からなるメッシュ形状を有することにより、通信用カプラ、給電用カプラおよび受電用カプラとのインピーダンス整合が改善し、電磁波の入出力効率を改善することができる。そして、導体31がメアンダ形状からなるメッシュ形状を有することにより、特に、給電用カプラおよび/または受電用カプラとのインピーダンス整合を改善することができる。また、2次元通信シート30の表面におけるエバネッセント場の均一性を向上できる。更に、2次元通信シート30の表面におけるエバネッセント場の染み出し量が向上し、通信性能、給電性能および受電性能を向上できる。
【0067】
2次元通信シート30の導体31の配線パターンは、線幅が0.5mm以上1.5mm以下であり、メアンダ形状の周期PLが8mmとなっている。このため、通信用カプラ、給電用カプラおよび受電用カプラとのインピーダンス整合を更に改善することができる。その結果、電磁波(特に、2.45GHz帯)の入出力効率を更に改善することができる。また、2次元通信シートの表面におけるエバネッセント場の均一性を更に向上できる。更に、2次元通信シートの表面におけるエバネッセント場の染み出し量が更に向上し、通信性能、給電性能および受電性能を向上できる。
【0068】
発明者らは、上述した2次元通信シート30,40についてのシミュレーション結果に基づいて、2次元通信シートの外周領域REG1にメアンダ形状と異なる直線形状を配置するとともに外周領域REG1の内周側にメアンダ形状を配置することによって、周辺部におけるエバネッセント場の漏れを抑制し、かつ、通信用カプラ、給電用カプラおよび受電用カプラとのインピーダンス整合を改善できる2次元通信シート10を考案するに至った。そして、2次元通信シート10においては、特に、メアンダ形状に起因して、給電用カプラおよび/または受電用カプラとのインピーダンス整合を改善できる。従って、2次元通信シート10を用いることによって、電力の供給および/または受電を高効率に行うことができる。
【0069】
従って、2次元通信シート10は、2次元通信シート30と同じ効果を享受できるとともに周辺部におけるエバネッセント場の漏れを抑制できる。
【0070】
図9は、実施の形態1による別の2次元通信シートの断面図である。実施の形態1による2次元通信シートは、図9に示す2次元通信シート10Aであってもよい。
【0071】
図9を参照して、2次元通信シート10Aは、図1および図2に示す2次元通信シート10に保護膜4,5と、導体6とを追加したものであり、その他は、2次元通信シート10と同じである。
【0072】
保護層4は、導体2に接して導体2上に配置される。保護層5は、導体3に接して導体3上に配置される。保護層4,5の各々は、例えば、誘電体からなる。誘電体は、ポリエチレンおよびポリプロピレン等からなる。
【0073】
保護層4は、導体2を保護し、保護層5は、導体3を保護する。
【0074】
導体6は、誘電体層1の周囲の端部(誘電体層1の4辺の端部)に接して配置される。導体6は、例えば、良導体からなる。良導体は、銅およびアルミニウム等からなる。導体6は、導体2と導体3とを短絡し、2次元通信シート10Aの端部からの電磁波の漏洩を防止する。
【0075】
なお、導体6は、誘電体層1の端部の全てを覆う必要はなく、2次元通信シート10Aの端部からの電磁波の漏洩を防止できればよい。従って、導体6は、メッシュ形状またはストライプ形状とし、誘電体層1の端部を覆うようにしてもよい。
【0076】
なお、2次元通信シート10Aは、保護膜4,5を備えていなくてもよく、導体6を備えていなくてもよい。つまり、2次元通信シート10Aは、保護膜4,5と導体6とのうち、少なくとも一方を備えていればよい。
【0077】
また、上記においては、開口部2Aは、正方形の平面形状を有すると説明したが、実施の形態1においては、これに限らず、開口部2Aは、長方形の平面形状を有していてもよく、平行四辺形の平面形状を有していてもよく、菱形の平面形状を有していてもよい。
【0078】
2次元通信シート10Aについてのその他の説明は、2次元通信シート10についての説明と同じである。
【0079】
[実施の形態2]
図10は、実施の形態2による2次元通信シートの平面図である。図11は、図10に示す線XI−XIにおける2次元通信シートの断面図である。
【0080】
図10および図11を参照して、実施の形態2による2次元通信シート10Bは、図1に示す2次元通信シート10の導体2を導体2−1に代えたものであり、その他は、2次元通信シート10と同じである。
【0081】
導体2−1は、誘電体層1の一方の面および端部に配置される。導体2−1は、導体2の導体部22を導体部23に代えたものであり、その他は、導体2と同じである。
【0082】
導体部23は、誘電体層1の一方の面の周辺部および端部(誘電体層1の4辺の端部)に配置され、導体部21に接続されるとともに導体3に接続される。
【0083】
導体部23は、例えば、良導体からなる。良導体は、銅およびアルミニウム等からなる。
【0084】
このように、導体部23は、導体部21と導体3とを短絡し、2次元通信シート10Bの周辺部および端部からの電磁波の漏洩を防止する。
【0085】
なお、導体部23は、誘電体層1の一方の面の周辺部および端部の全てを覆う必要はなく、2次元通信シート10Bの周辺部および端部からの電磁波の漏洩を防止できればよい。従って、導体部23は、メッシュ形状またはストライプ形状とし、誘電体層1の一方の面の周辺部および端部を覆うようにしてもよい。
【0086】
2次元通信シート10Bについてのその他の説明は、2次元通信シート10についての説明と同じである。
【0087】
[実施の形態3]
図12は、実施の形態3による2次元通信シートの断面図である。図12を参照して、実施の形態3による2次元通信シート10Cは、図1および図2に示す2次元通信シート10に給電ポート7を追加したものであり、その他は、2次元通信シート10と同じである。
【0088】
給電ポート7は、誘電体層1および導体2,3を厚み方向から挟み込むように配置される。
【0089】
給電ポート7は、発振器(図示せず)から高周波電力を受け、その受けた高周波電力を誘電体層1内に供給する。
【0090】
図13は、図12に示す給電ポート7の拡大図である。図13を参照して、給電ポート7は、給電体71,72と、給電板73,74と、誘電体層75,76とを含む。
【0091】
給電体71は、円柱形状を有し、例えば、良導体からなる。良導体は、銅およびアルミニウム等からなる。給電体71は、誘電体層1,75を貫通し、給電板73に電気的に接続される。そして、給電体71は、2次元通信シート10Cの導体2側に突出している。
【0092】
給電体72は、中空の円柱形状を有し、例えば、良導体からなる。良導体は、銅およびアルミニウム等からなる。給電体72は、導体2上において給電体71の周囲に配置される。そして、給電体72は、一方端が給電板74に電気的に接続される。また、給電体72は、2次元通信シート10Cの導体2側に突出している。
【0093】
給電板73は、円形形状を有し、導体2から離間して誘電体層75上に配置される。給電板74は、ドーナツ形状を有し、給電板73に対向するとともに導体3から離間して誘電体層76上に配置される。給電板73,74の各々は、例えば、良導体からなる。良導体は、銅およびアルミニウム等からなる。
【0094】
誘電体層75は、円形形状を有し、導体3に接して配置される。誘電体層76は、ドーナツ形状を有し、導体2および給電板74に接して導体2と給電板74との間に配置される。誘電体層75,76の各々は、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン等からなる。
【0095】
給電ポート7には、例えば、SMA(Sub−Miniature Type A)コネクタにより同軸ケーブルが接続され、高周波電力が供給される。即ち、2次元通信シート10Cの表面側に突出された給電体71,72に同軸ケーブルが接続される。
【0096】
給電ポート7は、給電板73,74により、2次元通信シート10Cと容量結合するため、同軸ケーブルから供給される高周波電力を2次元通信シート10C内に供給する。また、給電ポート7は、逆F型アンテナとなっているため、小型で高効率な電力供給を行うことができる。
【0097】
図14は、図12に示す給電ポート7の別の拡大図である。図14を参照して、給電体71,72が2次元通信シート10Cの裏面側に突出するように給電ポート7を配置してもよい。
【0098】
この場合、2次元通信シート10Cの裏面側に突出した給電体71,72に同軸ケーブルが接続される。そして、給電板73は、導体2から離間して配置され、給電板74は、導体3から離間して配置される。
【0099】
図13に示す構成において、給電板74の端部を導体3と短絡させて、給電ポート7と2次元通信シート10Cとのインピーダンスのマッチング回路を構成するようにしてもよい。また、図14に示す構成において、給電板73の端部を導体3と短絡させて、給電ポート7と2次元通信シート10Cとのインピーダンスのマッチング回路を構成するようにしてもよい。この場合、誘電体層1の端部に導体を設け、その設けた導体を介して、給電板74または給電板73の端部を導体3と短絡させてもよい。このように構成することによって、給電ポート7と2次元通信シート10Cとのインピーダンス整合が更に改善するので、給電効率を更に向上できる。
【0100】
上述したように、2次元通信シート10Cは、給電ポート7を備えるので、発振器からの高周波電力を高効率で誘電体層1内に供給できる。
【0101】
実施の形態3による2次元通信シートは、上述した2次元通信シート10から2次元通信シート10Aへの変更と同じ変更を2次元通信シート10Cに追加したものであってもよく、2次元通信シート10Bに給電ポート7を追加したものであってもよく、2次元通信シート10から2次元通信シート10Aへの変更と同じ変更を2次元通信シート10Bに追加したものに給電ポート7を追加したものであってもよい。
【0102】
このような2次元通信シートにおいても、2次元通信シート10Cと同じ効果を享受できる。
【0103】
実施の形態3におけるその他の説明は、実施の形態1,2における説明と同じである。
【0104】
[実施の形態4]
図15は、この発明の実施の形態における通信装置の構成を示す概略ブロック図である。図15を参照して、この発明の実施の形態における通信装置100は、コネクタ111〜11n(nは、2以上の整数)と、インターフェース装置110とを備える。通信装置100は、例えば、スマートフォンからなる。
【0105】
インターフェース装置110は、デュアルスイッチ121〜12n+1と、整流回路131〜13nと、バイパス経路141〜14nと、メインスイッチ140と、スイッチ151〜15nと、信号抽出装置150と、信号電力分離器160と、信号処理器170と、電源安定装置180とを含む。
【0106】
コネクタ111〜11nの各々は、例えば、6cmΦの直径を有する円形形状からなり、2次元通信シート10の導体2側の表面に接して配置される。そして、コネクタ111〜11nは、2次元通信シート10から各種の伝送波を受信し、その受信した各種の伝送波をインターフェース装置110の整流回路131〜13nおよびスイッチ151〜15nへそれぞれ出力するとともに、インターフェース装置110のスイッチ151〜15nからそれぞれ受けた信号を伝送波として2次元通信シート10へ送信する。
【0107】
デュアルスイッチ121は、接地電位GNDとコネクタ111、整流回路131、バイパス経路141およびスイッチ151との間に配置される。デュアルスイッチ122は、整流回路131およびバイパス経路141とコネクタ112、整流回路132、バイパス経路142およびスイッチ152との間に配置される。デュアルスイッチ123は、整流回路132およびバイパス経路142とコネクタ113、整流回路133、バイパス経路143およびスイッチ153との間に配置される。以下、同様にして、デュアルスイッチ12nは、整流回路13n−1およびバイパス経路14n−1とコネクタ11n、整流回路13n、バイパス経路14nおよびスイッチ15nとの間に配置される。デュアルスイッチ12n+1は、整流回路13nおよびバイパス経路14nとメインスイッチ140との間に配置される。
【0108】
そして、デュアルスイッチ121は、信号抽出装置150からの信号SWD1によって整流回路131またはバイパス経路141に接続される。デュアルスイッチ122は、信号抽出装置150からの信号SWD2によって整流回路131,132またはバイパス経路141,142に接続される。デュアルスイッチ123は、信号抽出装置150からの信号SWD3によって整流回路132,133またはバイパス経路142,143に接続される。以下、同様にして、デュアルスイッチ12nは、信号抽出装置150からの信号SWDnによって整流回路13n−1,13nまたはバイパス経路14n−1,14nに接続される。デュアルスイッチ12n+1は、信号抽出回路150からの信号SWDn+1によって整流回路13nまたはバイパス経路14nに接続される。
【0109】
より具体的には、デュアルスイッチ121は、信号抽出装置150からのH(論理ハイ)レベルの信号SWD1によって整流回路131に接続され、信号抽出装置150からのL(論理ロー)レベルの信号SWD1によってバイパス経路141に接続される。
【0110】
デュアルスイッチ122は、信号抽出装置150からの[H,H]からなる信号SWD2によって両側のスイッチがそれぞれ整流回路131,132に接続され、信号抽出装置150からの[H,L]からなる信号SWD2によって左側のスイッチが整流回路131に接続され、かつ、右側のスイッチがバイパス経路142に接続され、信号抽出装置150からの[L,H]からなる信号SWD2によって左側のスイッチがバイパス経路141に接続され、かつ、右側のスイッチが整流回路132に接続され、信号抽出装置150からの[L,L]からなる信号SWD2によって両側のスイッチがそれぞれバイパス経路141,142に接続される。
【0111】
デュアルスイッチ123は、信号抽出装置150からの[H,H]からなる信号SWD3によって両側のスイッチがそれぞれ整流回路132,133に接続され、信号抽出装置150からの[H,L]からなる信号SWD3によって左側のスイッチが整流回路132に接続され、かつ、右側のスイッチがバイパス経路143に接続され、信号抽出装置150からの[L,H]からなる信号SWD3によって左側のスイッチがバイパス経路142に接続され、かつ、右側のスイッチが整流回路133に接続され、信号抽出装置150からの[L,L]からなる信号SWD3によって両側のスイッチがそれぞれバイパス経路142,143に接続される。
【0112】
以下、同様にして、デュアルスイッチ12nは、信号抽出装置150からの[H,H]からなる信号SWDnによって両側のスイッチがそれぞれ整流回路13n−1,13nに接続され、信号抽出装置150からの[H,L]からなる信号SWDnによって左側のスイッチが整流回路13n−1に接続され、かつ、右側のスイッチがバイパス経路14nに接続され、信号抽出装置150からの[L,H]からなる信号SWDnによって左側のスイッチがバイパス経路14n−1に接続され、かつ、右側のスイッチが整流回路13nに接続され、信号抽出装置150からの[L,L]からなる信号SWDnによって両側のスイッチがそれぞれバイパス経路14n−1,14nに接続される。
【0113】
デュアルスイッチ12n+1は、信号抽出装置150からのHレベルの信号SDWn+1によって整流回路13nに接続され、信号抽出装置150からのLレベルの信号SDWn+1によってバイパス経路14nに接続される。
【0114】
整流回路131〜13nは、それぞれ、コネクタ111〜11nに対応して設けられる。そして、整流回路131〜13nは、それぞれ、コネクタ111〜11nおよびスイッチ151〜15nに接続されるとともに、デュアルスイッチ121〜12n+1がHレベルの信号SWD1〜SWDn+1をそれぞれ受けると、直列に接続される。
【0115】
整流回路131〜13nは、それぞれ、コネクタ111〜11nから受けた伝送波を構成する電力を整流し、その整流した電力を、それぞれ、デュアルスイッチ122〜12n+1側へ供給する。
【0116】
バイパス経路141〜14nは、それぞれコネクタ111〜11nに対応して設けられ、デュアルスイッチ121〜12n+1がLレベルの信号SWD1〜SWDn+1をそれぞれ受けると、直列に接続される。
【0117】
メインスイッチ140は、デュアルスイッチ12n+1と電源安定装置180との間に配置される。そして、メインスイッチ140は、通信装置100のユーザによってオン/オフされる。
【0118】
スイッチ151〜15nは、それぞれコネクタ111〜11nに対応して設けられる。そして、スイッチ151〜15nは、信号抽出装置150からの信号SW1〜SWnによってそれぞれオン/オフされる。より具体的には、スイッチ151〜15nは、信号抽出装置150からのHレベルの信号SW1〜SWnによってそれぞれオンされ、信号抽出装置150からのLレベルの信号SW1〜SWnによってそれぞれオフされる。そして、スイッチ151〜15nは、オンされると、それぞれ、コネクタ111〜11nから受けた伝送波を信号抽出装置150へ出力するとともに、信号抽出装置150から受けた信号をそれぞれコネクタ111〜11nへ出力する。
【0119】
信号抽出装置150は、電源安定装置180から電力を受け、後述する方法によって、コネクタ111〜11nのうち、受信信号強度が最大であるコネクタを信号受信用のコネクタとして選択するとともに、信号受信用のコネクタが受信した伝送波を受ける。そして、信号抽出装置150は、信号受信用のコネクタが受信した伝送波の受信信号強度が伝送波から信号を抽出可能なしきい値TH_RSSIよりも小さいとき、その伝送波を信号処理器170へ直接出力する。一方、信号抽出装置150は、信号受信用のコネクタが受信した伝送波の受信信号強度がしきい値TH_RSSI以上であるとき、その伝送波を信号電力分離器160へ出力する。
【0120】
また、信号抽出装置150は、信号受信用のコネクタ以外のコネクタに対応して設けられた整流回路を直列に接続するための信号SWD1〜SWD1n+1を生成してデュアルスイッチ121〜12n+1へ出力する。
【0121】
信号電力分離器160は、信号抽出装置150から伝送波を受けると、その受けた伝送波を信号および電力に分離する。そして、信号電力分離器160は、その分離した信号を信号処理器170へ出力し、その分離した電力を電源安定装置180へ供給する。
【0122】
信号処理器170は、信号抽出装置150または信号電力分離器160から信号を受けると、その受けた信号の受信処理を行う。また、信号処理器170は、送信用の信号を生成し、その生成した送信用の信号をディジタル信号からアナログ信号に変換して信号抽出装置150へ出力する。
【0123】
電源安定装置180は、信号電力分離器160またはメインスイッチ140から供給された電力を蓄積する。そして、電源安定装置180は、その蓄積した電力を信号抽出装置150および信号電力分離器160へ供給する。
【0124】
図16は、2次元通信の概念図である。図16を参照して、図15に示す通信装置100と同じ構成からなる2つの通信装置100A,100Bが2次元通信シート10上に配置される。この場合、通信装置100A,100Bのコネクタ111〜11nが2次元通信シート10の開口部2Aに接する。通信装置100Aの信号処理器170は、送信すべき信号を生成し、その生成した信号をディジタル信号からアナログ信号に変換して信号抽出装置150へ出力する。
【0125】
通信装置100Aの信号抽出装置150は、信号処理器170から受けた信号を信号受信用のコネクタへ出力する。通信装置100Aの信号受信用のコネクタは、信号抽出装置150から受けた信号 (アナログ信号)に応じて、内蔵した電極(図示せず)のスカラーポテンシャルおよび/またはベクトルポテンシャルを変化させる。ここで、スカラーポテンシャルの変化は、電位の変化に対応し、ベクトルポテンシャルの変化は、電流分布の変化、電束密度の変化および変位電流の分布の変化に対応する。
【0126】
信号受信用のコネクタに内蔵された電極のスカラーポテンシャルおよび/またはベクトルポテンシャルが変化すると、2次元通信シート10の誘電体層1に電磁波が発生し、その発生した電磁波は、2次元通信シート10の表面付近のみを伝搬する(図16の矢印参照)。
【0127】
そして、通信装置100Bが配置された位置まで伝搬した電磁波は、誘電体層1の開口部2Aからエバネッセント波EWVをしみ出させる。そうすると、通信装置100Bのコネクタ111〜11nは、その内蔵した電極(図示せず)によってエバネッセント波EWVを検知し、通信装置100Aから送信された電気信号を受信する。
【0128】
このように、2次元通信は、2次元通信シート10の表面近傍を伝送する電磁波を用いて行なわれる。なお、誘電体層1に発生する電磁波は、後述する伝送波を構成する。
【0129】
図17は、RTS(Request To Send)パケットの構成図である。図17を参照して、RTSパケットは、フレーム制御部と、デュレーションと、送信先と、送信元と、FCS(Frame Check Sum)とを含む。
【0130】
フレーム制御部は、2Octetsの長さを有し、RTSパケットであることを示す。デュレーションは、2Octetsの長さを有し、RTSパケットの有効期間を示す。送信先は、6Octetsの長さを有し、RTSパケットの送信先を示すアドレスからなる。送信元は、6Octetsの長さを有し、RTSパケットの送信元のアドレスからなる。FCS(Frame Check Sequence)は、4Octetsの長さを有し、誤り訂正符号からなる。
【0131】
そして、フレーム制御部、デュレーション、送信先および送信元は、MAC(Media Access Control)ヘッダを構成する。
【0132】
図18は、伝送波の概念図である。図18を参照して、通信装置100は、振幅Iを有する伝送波wv_Mによってデータパケット、およびRTSパケット、CTS(Clear To Send)パケットおよびACK(Acknowledge)パケット等の制御パケットを送信する。
【0133】
伝送波wv_Mは、周期Tを有する。そして、伝送波wv_Mは、たとえば、10Wのエネルギーを有し、振幅I1を有する伝送波wv_SGと、振幅I2を有する伝送波wv_PWとからなる。そして、伝送波wv_SGは、データパケットおよび制御パケットからなり、伝送波wv_PWは、電力からなる。
【0134】
このように、伝送波wv_Mは、データパケットまたは制御パケットからなる信号と、電力とが重畳されたものである。つまり、電力および信号は、同じ周波数fを有する伝送波によって伝送される。そして、この周波数fは、2次元通信シート10の誘電体層1を伝送し易い周波数としてチューニングされた伝送周波数からなる。
【0135】
[受信用コネクタの選択]
図19は、受信用コネクタを選択する方法を説明するための図である。図19を参照して、信号抽出装置150は、受信用コネクタを選択する場合、スイッチ151のみをオンするためのHレベルの信号SW1と、Lレベルの信号SW2〜SWnとを生成し、その生成したHレベルの信号SW1をスイッチ151へ出力し、その生成したLレベルの信号SW2〜SWnをそれぞれスイッチ152〜15nへ出力する。
【0136】
また、信号抽出装置150は、Lレベルの信号SWD1,SWDn+1および[L,L]からなる信号SWD2〜SWDnを生成し、その生成したLレベルの信号SWD1,SWDn+1をそれぞれデュアルスイッチ121,12n+1へ出力し、その生成したL,L]からなる信号SWD2〜SWDnをそれぞれデュアルスイッチ122〜12nへ出力する。
【0137】
そうすると、スイッチ151は、Hレベルの信号SW1によってオンされ、スイッチ152〜15nは、それぞれ、Lレベルの信号SW2〜SWnによってオフされる。デュアルスイッチ121は、Lレベルの信号SWD1によってバイパス経路141に接続され、デュアルスイッチ122は、[L,L]からなる信号SWD2によってバイパス経路141,142に接続され、デュアルスイッチ123は、[L,L]からなる信号SWD3によってバイパス経路142,143に接続され、以下、同様にして、デュアルスイッチ12nは、[L,L]からなる信号SWDnによってバイパス経路14n−1,14nに接続され、デュアルスイッチ12n+1は、Lレベルの信号SWDn+1によってバイパス経路14nに接続される。
【0138】
そして、コネクタ111は、2次元通信シート10から受信した伝送波wv1をスイッチ151を介して信号抽出装置150へ出力する。信号抽出装置150は、コネクタ111から伝送波wv1を受け、その受けた伝送波wv1の受信信号強度RSSI1を検出する。
【0139】
信号抽出装置150は、同様にして、コネクタ112〜11nを順次選択し、コネクタ112〜11nがそれぞれ受信した伝送波wv2〜wvnを受け、その受けた伝送波wv2〜wvnの受信信号強度RSSI2〜RSSInを検出する。
【0140】
なお、伝送波wv1〜wvnの各々は、上述した伝送波wv_Mからなる。
【0141】
そうすると、信号抽出装置150は、検出した受信信号強度RSSI1〜RSSInのうち、最大の受信信号強度RSSImaxが得られたコネクタを信号受信用コネクタとして選択する。
【0142】
たとえば、受信信号強度RSSI3が最大である場合、信号抽出装置150は、コネクタ113を信号受信用コネクタとして選択する。
【0143】
[信号の受信および電力の受電]
図20は、信号の受信および電力の受電を説明するための図である。図20を参照して、信号抽出装置150は、信号受信用コネクタであるコネクタ113を用いて信号を受信する場合、Hレベルの信号SWD1を生成してデュアルスイッチ121へ出力し、[H,H]からなる信号SWD2を生成してデュアルスイッチ122へ出力し、[H,L]からなる信号SWD3を生成してデュアルスイッチ123へ出力し、[L,H]からなる信号SWD4を生成してデュアルスイッチ124へ出力し、[H,H]からなる信号SWD5〜SWDnを生成してそれぞれデュアルスイッチ125〜12nへ出力し、Hレベルの信号SWDn+1を生成してデュアルスイッチ12n+1へ出力する。また、信号抽出装置150は、Lレベルの信号SW1,SW2,SW4〜SWnを生成してそれぞれスイッチ151,152,154〜15nへ出力し、Hレベルの信号SW3を生成してスイッチ153へ出力する。
【0144】
そうすると、デュアルスイッチ121は、Hレベルの信号SWD1によって整流回路131に接続され、デュアルスイッチ122は、[H,H]からなる信号SWD2によって両側のスイッチがそれぞれ整流回路131,132に接続され、デュアルスイッチ123は、[H,L]からなる信号SWD3によって、左側のスイッチが整流回路132に接続され、右側のスイッチがバイパス経路143に接続され、デュアルスイッチ124は、[L,H]からなる信号SWD4によって、左側のスイッチがバイパス経路143に接続され、右側のスイッチが整流回路134(図示せず)に接続される。以下、同様にして、デュアルスイッチ125〜12nは、それぞれ、[H,H]からなる信号SWD5〜SWDnによって両側のスイッチが整流回路に接続される。デュアルスイッチ12n+1は、Hレベルの信号SWDn+1によって整流回路13nに接続される。
【0145】
また、スイッチ151,152,154〜15nは、それぞれ、Lレベル信号SW1,SW2,SW4〜SWnによってオフされ、スイッチ153は、Hレベルの信号SW3によってオンされる。
【0146】
そうすると、コネクタ113は、2次元通信シート10から受信した伝送波wv3をスイッチ153を介して信号抽出装置150へ出力する。信号抽出装置150は、コネクタ3から受けた伝送波wv3の受信信号強度RSSI3を検出し、その検出した受信信号強度RSSI3がしきい値TH_RSSIよりも小さいか否かを判定する。この場合、受信信号強度RSSI3は、しきい値TH_RSSI以上であるものとする。
【0147】
信号抽出装置150は、受信信号強度RSSI3がしきい値TH_RSSI以上であると判定すると、伝送波wv3を信号電力分離器160へ出力する。
【0148】
信号電力分離器160は、伝送波wv3を信号抽出装置150から受け、その受けた伝送波wv3を信号SGと電力PWとに分離し、その分離した信号SGを信号処理器170へ出力し、その分離した電力PWを電源安定装置180へ供給する。
【0149】
信号処理器170は、信号電力分離器160から信号SGを受け、その受けた信号SGの受信処理を行う。
【0150】
また、電源安定装置180は、信号電力分離器160から受けた電力PWを蓄積する。
【0151】
一方、コネクタ112,114〜11nは、2次元通信シート100からそれぞれ伝送波wv1,wv2,wv4〜wvnを受信し、その受信した伝送波wv1,wv2,wv4〜wvnをそれぞれ整流回路131,132,134〜13nへ供給する。
【0152】
そして、整流回路131,132,134〜13nは、それぞれ、伝送波wv1,wv2,wv4〜wvnを構成する電力を整流し、その整流した電力を整流回路132,134〜13n、バイパス回路143およびメインスイッチ140からなる経路を介して電源安定装置180へ供給する。
【0153】
電源安定装置180は、メインスイッチ140を介して供給された電力を蓄積する。
【0154】
このように、実施の形態4においては、通信装置100は、受信信号強度が最大であるコネクタ113を用いて受信した伝送波wv3を信号SGおよび電力PWに分離し、その分離した信号SGの受信処理を行い、その分離した電力PWと、受信用のコネクタ113以外のコネクタ111,112,114〜11nでそれぞれ受信した伝送波wv1,wv2,wv4〜wvnを構成する電力とを電源安定装置180に蓄積する。
【0155】
そして、信号受信用のコネクタ113以外のコネクタ111,112,114〜11nでそれぞれ受信した伝送波wv1,wv2,wv4〜wvnを構成する電力PW1,PW2,PW4〜PWnは、デュアルスイッチ121−整流回路131−デュアルスイッチ122−整流回路132−デュアルスイッチ123−バイパス経路143−デュアルスイッチ124−・・・デュアルスイッチ12n−整流回路13n−デュアルスイッチ12n+1からなる経路を介して電源安定装置180へ供給されるので、電力PW1,PW2,PW4〜PWnの電源安定装置180への供給は、コネクタ113で受信した伝送波wv3の受信処理に影響しない。
【0156】
したがって、信号および電力を安定して受信できる。
【0157】
図21は、信号の受信および電力の受電を説明するための他の図である。図21を参照して、信号抽出装置150は、図20において説明した動作と同じ動作によって、コネクタ113が2次元通信シート10から受信した伝送波wv3をスイッチ153を介してコネクタ113から受ける。
【0158】
そして、信号抽出装置150は、伝送波wv3の受信信号強度RSSI3を検出し、その検出した受信信号強度RSSI3がしきい値TH_RSSIよりも小さいと判定する。
【0159】
そうすると、信号抽出装置150は、伝送波wv3を信号処理器170へ直接出力する。そして、信号処理器170は、伝送波wv3を信号抽出装置150から直接受け、その受けた伝送波wv3を信号として処理する。
【0160】
このように、信号受信用のコネクタ113が受信した伝送波wv3の受信信号強度RSSI3がしきい値TH_RSSIよりも小さいとき、伝送波wv3を信号と電力とに分離せず、伝送波wv3を信号として処理する。したがって、実施の形態4によれば、信号受信用のコネクタ113が受信した伝送波wv3の強度が弱い場合でも、信号を安定して受信できる。
【0161】
[信号の送信]
図22は、信号の送信を説明するための図である。図22を参照して、通信装置100は、信号を送信する場合、信号受信用のコネクタ113を用いて信号を送信する。信号抽出装置150は、信号受信用のコネクタであるコネクタ113を用いて信号を送信する場合、Lレベルの信号SWD1を生成してデュアルスイッチ121へ出力し、[L,L]からなる信号SWD2〜SWD1nを生成してそれぞれデュアルスイッチ122〜12nへ出力し、Lレベルの信号SWDn+1を生成してデュアルスイッチ12n+1へ出力する。また、信号抽出装置150は、Lレベルの信号SW1,SW2,SW4〜SWnを生成してそれぞれスイッチ151,152,154〜15nへ出力し、Hレベルの信号SW3を生成してスイッチ153へ出力する。
【0162】
そうすると、デュアルスイッチ121は、Lレベルの信号SWD1によってバイパス経路141に接続され、デュアルスイッチ122は、[L,L]からなる信号SWD2によって両側のスイッチがそれぞれバイパス経路141,142に接続され、デュアルスイッチ123は、[L,L]からなる信号SWD3によって、両側のスイッチがそれぞれバイパス経路142,143に接続され、以下、同様にして、デュアルスイッチ12nは、[L,L]からなる信号SWDnによって両側のスイッチがそれぞれバイパス経路14n−1,14nに接続される。デュアルスイッチ12n+1は、Lレベルの信号SWDn+1によってバイパス経路14nに接続される。
【0163】
また、スイッチ151,152,154〜15nは、それぞれ、Lレベル信号SW1,SW2,SW4〜SWnによってオフされ、スイッチ153は、Hレベルの信号SW3によってオンされる。
【0164】
そして、信号処理器170は、送信すべき信号を生成し、その生成した信号をディジタル信号からアナログ信号に変換して信号抽出装置150へ出力し、信号抽出装置150は、信号処理器170から受けた信号をスイッチ153を介してコネクタ113へ出力する。
【0165】
そうすると、コネクタ113は、信号抽出装置150から受けた送信信号(アナログ信号)に応じて、内蔵した電極(図示せず)のスカラーポテンシャルおよび/またはベクトルポテンシャルを変化させ、伝送波を2次元通信シート10へ放射する。
【0166】
この場合、デュアルスイッチ121〜12n+1は、バイパス経路141〜14nに接続されているので、コネクタ111,112,114〜11nがコネクタ113を用いた信号の送信に影響を与えることはない。
【0167】
[充電オフモード]
図23は、充電オフモードを説明するための図である。図23を参照して、充電オフモードにおいては、信号抽出装置150は、Lレベルの信号SWD1、[L,L]からなる信号SWD2〜SWDnおよびLレベルの信号SWDn+1を生成し、その生成したLレベルの信号SWD1、[L,L]からなる信号SWD2〜SWDnおよびLレベルの信号SWDn+1をそれぞれデュアルスイッチ121〜12n+1へ出力する。また、信号抽出装置150は、Lレベルの信号SW1〜SWnを生成し、その生成したLレベルの信号SW1〜SWnをそれぞれスイッチ151〜15nへ出力する。
【0168】
そうすると、デュアルスイッチ121は、Lレベルの信号SWD1に応じて、バイパス経路141に接続される。また、デュアルスイッチ122は、[L,L]からなる信号SWD2に応じて、両側のスイッチがそれぞれバイパス経路141,142に接続され、デュアルスイッチ123は、[L,L]からなる信号SWD3に応じて、両側のスイッチがそれぞれバイパス経路142,143に接続され、以下、同様にして、デュアルスイッチ12nは、[L,L]からなる信号SWDnに応じて、両側のスイッチがそれぞれバイパス経路14n−1,14nに接続される。さらに、デュアルスイッチ12n+1は、Lレベルの信号SWDn+1に応じて、バイパス経路14nに接続される。
【0169】
また、スイッチ151〜15nは、それぞれ、Lレベルの信号SW1〜SWnに応じてオフされる。
【0170】
そうすると、整流回路131〜13nは、相互に切り離され、スイッチ151〜15nは、信号抽出装置150から切り離される。その結果、コネクタ111〜11nが2次元通信シート10から受信した伝送波wv1〜wvnは、電源安定装置180へ供給されることはない。すなわち、通信装置100のモードは、充電オフモードになる。
【0171】
[電源オフモード]
図24は、電源オフモードを説明するための図である。図24を参照して、デュアルスイッチ121〜12n+1が信号抽出装置150からの信号SWD1〜SWDn+1によって整流回路131〜13nに接続されていても、メインスイッチ140がオフであるとき、コネクタ111〜11nが2次元通信シート10から受信した伝送波wv1〜wvnは、電源安定装置180へ供給されない。すなわち、通信装置100のモードは、電源オフモードになる。
【0172】
図25は、実施の形態4による通信方法を説明するためのフローチャートである。図25を参照して、一連の動作が開始されると、信号抽出装置150は、自己に接続されるコネクタを複数のコネクタ111〜11nに順次切換えて伝送波を受信する(ステップS1)。
【0173】
そして、信号抽出装置150は、複数のコネクタ111〜11nで受信した複数の伝送波の複数の受信信号強度を検出する(ステップS2)。
【0174】
その後、信号抽出装置150は、複数の受信信号強度のうち、最大の受信信号強度が得られたときのコネクタを信号受信用のコネクタとして選択する(ステップS3)。
【0175】
そうすると、信号抽出装置150は、その選択した信号受信用のコネクタで伝送波を受信し(ステップS4)、その受信した伝送波の受信信号強度RSSIrを検出する(ステップS5)。
【0176】
引き続いて、信号抽出装置150は、受信信号強度RSSIrがしきい値TH_RSSIよりも小さいか否かを判定する(ステップS6)。
【0177】
ステップS6において、受信信号強度RSSIrがしきい値TH_RSSI以上であると判定されたとき、信号抽出装置150は、信号受信用のコネクタで受信した伝送波を信号電力分離器160へ出力し、信号電力分離器160は、信号抽出装置150から受けた伝送波を信号SGと電力PWとに分離する(ステップS7)。
【0178】
そして、信号電力分離器160は、その分離した信号SGを信号処理器170へ出力し、信号処理器170は、信号SGを受信信号として処理する(ステップS8)。
【0179】
また、信号電力分離器160は、その分離した電力PWを電源安定装置180に供給し、電源安定装置180は、電力PWを蓄積する(ステップS9)。
【0180】
一方、ステップS6において、受信信号強度RSSIrがしきい値TH_RSSIよりも小さいと判定されたとき、信号抽出装置150は、信号受信用のコネクタで受信した伝送波を信号処理器170へ直接出力し、信号処理器170は、信号抽出装置150から受けた伝送波を受信信号として処理する(ステップS10)。
【0181】
そして、ステップS9またはステップS10の後、信号受信用のコネクタ以外のコネクタで受信された伝送波は、整流回路131〜13nによって整流され、メインスイッチ140を介して電源安定装置180に供給され、電力として蓄積される(ステップS11)。
【0182】
その後、信号処理器170は、送信用の信号を生成し、その生成した信号をディジタル信号からアナログ信号に変換して信号抽出装置150へ出力し、信号抽出装置150は、信号処理器170から受けた信号を信号受信用のコネクタへ供給する。そして、信号受信用のコネクタは、信号抽出装置150から受けた送信用の信号 (アナログ信号)に応じて、内蔵した電極(図示せず)のスカラーポテンシャルおよび/またはベクトルポテンシャルを変化させる。これによって、送信用の信号が信号受信用のコネクタを用いて送信される(ステップS12)。そして、一連の動作が終了する。
【0183】
なお、上記においては、信号抽出装置150は、コネクタ111〜11nから最大の受信信号強度が得られるコネクタを受信用のコネクタとして選択すると説明したが、実施の形態4においては、これに限らず、信号抽出装置150は、コネクタ111〜11nから受信用のコネクタとして複数のコネクタを選択してもよい。
【0184】
また、上記においては、複数のコネクタ111〜11nによって受信した複数の伝送波の複数の受信信号強度のうち、受信信号強度が最大であるコネクタを信号受信用のコネクタとして選択すると説明したが、この発明においては、これに限らず、複数の受信信号強度のうち、受信信号強度がしきい値TH_RSSI以上である伝送波を受信したコネクタを信号受信用のコネクタとして選択するようにしてもよい。この場合、信号受信用のコネクタ以外のコネクタで受信した伝送波の受信信号強度が最大の受信信号強度である可能性もある。つまり、信号受信用のコネクタは、伝送波から信号を抽出可能な受信信号強度を有する伝送波を受信すればよく、最大の受信信号強度を有する伝送波を電力として蓄積することにしたものである。
【0185】
上述したように、通信装置100は、2次元通信シート10を介して信号を送信および/または受信するとともに、電力を蓄積する。そして、2次元通信シート10は、上述したように内周領域REG2にメアンダ形状からなるメッシュ形状を有する導体2を備えるので、エバネッセント波の染み出し量が向上し、通信装置100の通信性能を向上できるとともに電力を通信装置100に効率良く蓄積できる。
【0186】
なお、実施の形態4においては、2次元通信シート10に代えて2次元通信シート10A,10B,10Cのいずれかが用いられてもよい。
【0187】
従って、実施の形態4による2次元通信システムは、2次元通信シート10,10A,10B,10Cのいずれかと、通信装置100とを備える。2次元通信システムが2次元通信シート10Cを備える場合、通信装置100は、伝送波wvを受信することによって、信号SGを受信でき、または信号SGを受信するとともに電力PWを蓄積することができ、更に、伝送波wvの受信とは、独立に、給電ポート7を介して誘電体層1に供給された電力をコネクタ111〜11nによって受電して高効率に蓄積できる。
【0188】
なお、実施の形態4においては、コネクタ111〜11nを「カプラ」とも呼ぶ。
【0189】
[実施の形態5]
図26は、実施の形態5による2次元通信システムの概略図である。図26を参照して、実施の形態5による2次元通信システム200は、2次元通信シート10Cと、玩具210と、発振器220とを備える。
【0190】
図26においては、2次元通信シート10Cの内周領域REG2(点線で囲まれた領域)に配置された導体2は、図1に示すようにメアンダ形状211になっている。
【0191】
玩具210は、2次元通信シート10Cの導体2側の表面上に配置される。
【0192】
発振器220は、同軸ケーブルを介して2次元通信シート10Cの給電ポート7に電気的に接続される。
【0193】
発振器220は、ACアダプター(図示せず)を介してコンセントに接続される。そして、発振器220は、ACアダプターを介して電力を受け、例えば、2.45GHz帯の周波数を有し、5W〜10Wの高周波電力を給電ポート7へ出力する。
【0194】
図27は、図26に示す玩具210の概略図である。図27を参照して、玩具210は、カプラ212と、蓄電装置213とを含む。蓄電装置213は、例えば、リチウムイオン2次電池等の充電可能な電池からなる。
【0195】
カプラ212は、2次元通信シート10Cの導体2側の表面に接して配置される。そして、カプラ212は、整流回路を内蔵する。
【0196】
蓄電装置213は、カプラ212と電気的に接続される。そして、蓄電装置213は、カプラ212を介して受けた直流電力によって充電される。
【0197】
玩具210は、蓄電装置213に蓄積された電力によって駆動される。
【0198】
玩具210が2次元通信シート10C上に配置されると、カプラ212は、給電ポート7によって誘導体層1内に供給された高周波電力を受け、その受けた高周波電力を整流して蓄電装置213に供給する。これによって、蓄電装置213は、充電される。
【0199】
玩具210は、蓄電装置213に蓄積された電力によって駆動される。
【0200】
従って、玩具210を2次元通信シート10C上に置くだけで、玩具210の蓄電装置213は、充電される。その結果、玩具210の蓄電装置213を簡単に充電できる。また、玩具210を2次元通信シート10C上に置いておけば、玩具210の蓄電装置213が充電されているか否かを確認する必要がなく、いつでも自由に玩具210で遊ぶことができる。
【0201】
図28は、図26に示す玩具210の例を示す図である。図28を参照して、玩具210は、ロボットであっても良いし(図28の(a)参照)、車のミニチュアであっても良いし(図28の(b)参照)、キャラクターの人形であっても良い(図28の(c)参照)。
【0202】
なお、玩具210は、図28に示す例以外の玩具であっても良い。
【0203】
また、実施の形態5による2次元通信システムは、2次元通信シート10Cに代えて、2次元通信シート10,10A,10Bのいずれかに給電ポート7を追加したものを備えていてもよい。
【0204】
実施の形態5による2次元通信システムは、2次元通信シート10,10A,10B,10Cのいずれかを備えるので、玩具210に電力を高効率に供給できる。その結果、玩具210に内蔵された蓄電装置213を高効率に充電できる。
【0205】
上記においては、各種の玩具について説明したが、各種の玩具は、カプラ212と蓄電装置213とを備えるので、実施の形態5による2次元通信システムは、2次元通信シートと、発振器と、カプラと、蓄電装置とを備えるものであればよい。そして、2次元通信シートは、シート形状を有する誘電体層と、誘電体層の一方の面に配置され、メッシュ形状を有する第1の導体と、誘電体層の他方の面を覆うように配置された第2の導体と、給電ポートとを備え、メッシュ形状は、誘電体層の端部から所望の距離までの外周領域において、周期性を有する波形形状からなるメアンダ形状と異なる形状を有し、外周領域の内周側に配置された内周領域においてメアンダ形状を有し、給電ポートは、第2の導体上に離間して配置された第1の給電板と、第1の給電板に対向する位置に第1の導体上に離間して配置された第2の給電板と、誘電体層を貫通し、第1の給電板と電気的に接続された第1の給電体と、第2の給電板と電気的に接続された第2の給電体とを含む。
【0206】
実施の形態5におけるその他の説明は、実施の形態1から実施の形態3における説明と同じである。
【0207】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0208】
この発明は、2次元通信シートおよびそれを備えた2次元通信システムに適用される。
【符号の説明】
【0209】
1,75,76 誘電体層、2,2−1,3,6,31,41 導体、2A 開口部、4,5 保護層、7 給電ポート、10,10A,10B,10C,30,40 2次元通信シート、21,22,23 導体部、71,72 給電体、73,74 給電板、100 通信装置、110 インターフェース装置、111〜11n コネクタ、121〜12n+1 デュアルスイッチ、131〜13n 整流回路、140 メインスイッチ、141〜14n バイパス経路、150 信号抽出装置、151〜15n スイッチ、160 信号電力分離器、170 信号処理器、180 電源安定装置、200 2次元通信システム、210 玩具、211,211A,211B,211C,211D メアンダ形状、212 カプラ、213 蓄電装置、220 発振器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28