(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-94504(P2018-94504A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】バラスト水処理装置及び紫外線ランプの劣化検出方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20060101AFI20180525BHJP
B63B 13/00 20060101ALI20180525BHJP
G01N 21/49 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
C02F1/32
B63B13/00 Z
G01N21/49 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-241571(P2016-241571)
(22)【出願日】2016年12月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】丹下 智陽
【テーマコード(参考)】
2G059
4D037
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB05
2G059EE01
2G059GG01
2G059GG02
2G059HH02
2G059KK02
4D037AA06
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
4D037CA02
(57)【要約】
【課題】紫外線ランプの劣化を正確に判定することのできるバラスト水処理装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、紫外線ランプ(30)と、前記紫外線ランプ(30)からの紫外線の照度を前記バラスト水を介して測定する紫外線センサ(31)と、当該紫外線センサ(31)が測定する紫外線の照度に応じて前記紫外線ランプ(30)の出力を制御する制御手段(5)とを備えたバラスト水処理装置であって、前記紫外線ランプ(30)が照射する紫外線よりも波長の長い光を照射する発光手段(7)と、前記発光手段(7)からの光の照度を前記バラスト水を介して測定する光センサ(8)とをさらに備え、前記制御手段(5)は、前記光センサ(8)が測定した光の照度を参照して、前記紫外線ランプ(30)の照度が低下しているかどうかを判定する、バラスト水処理装置が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線ランプと、前記紫外線ランプからの紫外線の照度を前記バラスト水を介して測定する紫外線センサと、当該紫外線センサが測定する紫外線の照度に応じて前記紫外線ランプの出力を制御する制御手段とを備えたバラスト水処理装置であって、
前記紫外線ランプが照射する紫外線よりも波長の長い光を照射する発光手段と、前記発光手段からの光の照度を前記バラスト水を介して測定する光センサとをさらに備え、
前記制御手段は、前記光センサが測定した光の照度を参照して、前記紫外線ランプの照度が低下しているかどうかを判定する、バラスト水処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記光センサが測定する光の照度ごとの前記紫外線ランプの出力の平常値を予め記憶しておき、前記紫外線ランプが紫外線を照射する間、光の照度と前記紫外線ランプの出力とを所定のタイミングごとに参照して、光の照度に対する前記紫外線ランプの出力が記憶した平常値よりも高い場合、紫外線ランプの照度が低下したと判定する、請求項1に記載のバラスト水処理装置。
【請求項3】
バラスト水処理装置における紫外線ランプの劣化検出方法であって、
前記紫外線ランプが照射する紫外線よりも波長の長い光を照射する発光手段と、前記発光手段からの光の照度を前記バラスト水を介して測定する光センサとを備え、
前記光センサが測定した光の照度を参照して、前記紫外線ランプの照度が低下しているかどうかを判定する、バラスト水処理装置における紫外線ランプの劣化検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外線ランプを備えたバラスト水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカー等の船舶は、積み荷の原油等を降ろした後、再度目的地に向けて航行する際、航行中の船舶のバランスを取るため、通常、バラスト水と呼ばれる水をバラストタンク内に貯留する。バラスト水は、基本的に荷上港で取水されて、荷積港で排出される。そのため、それらの場所が異なっていれば、バラスト水中に含まれるプランクトンや細菌類の微生物が世界中を移動することになる。従って、荷上港と異なる水域の荷積港でバラスト水を排出すると、その港に別の水域の微生物を放出することになり、その水域の生態系を破壊するおそれがある。
【0003】
そこで、バラスト水中に含まれる微生物の含有量を低減するために、バラスト水処理装置が用いられている。例えば、特許文献1に記載のバラスト水処理装置は、紫外線ランプによりバラスト水に紫外線を照射して微生物の殺滅処理(殺菌処理)をする紫外線ランプを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−248510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、紫外線ランプは、その点灯時間に応じて劣化して照度が徐々に低下するが、例えば紫外線の照度を測定する紫外線センサにより測定される照度を測定するだけでは、照度の低下が水質の低下(濁度の上昇)によるものなのか、紫外線ランプの劣化によるものなのかを区別することが難しかった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、紫外線ランプの劣化を正確に判定することのできるバラスト水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、紫外線ランプと、前記紫外線ランプからの紫外線の照度を前記バラスト水を介して測定する紫外線センサと、当該紫外線センサが測定する紫外線の照度に応じて前記紫外線ランプの出力を制御する制御手段とを備えたバラスト水処理装置であって、前記紫外線ランプが照射する紫外線よりも波長の長い光を照射する発光手段と、前記発光手段からの光の照度を前記バラスト水を介して測定する光センサとをさらに備え、前記制御手段は、前記光センサが測定した光の照度を参照して、前記紫外線ランプの照度が低下しているかどうかを判定する、バラスト水処理装置が提供される。
【0008】
このような構成によれば、紫外線ランプが照射する紫外線よりも波長の長い光を照射する発光手段と、発光手段からの光の照度をバラスト水を介して測定する光センサとを備えていることから、光センサが測定した光の照度を参照して紫外線ランプの照度が低下しているかどうかを判定することができる。具体的には、紫外線センサにより測定される紫外線の照度が低下した際、光の照度も同時に低下している場合はバラスト水の水質低下に起因するもの、光の照度が低下していない場合は紫外線ランプの劣化によるものであると判定することができ、紫外線ランプの劣化を正確に判定することができる。そして、紫外線ランプの劣化を判定することで、紫外線を照射するバラスト水の流量を削減して紫外線照射量を確保する対応を行うことや、紫外線ランプの交換を推奨することが可能となる。加えて、本発明においては、発光手段が紫外線ランプの照射する紫外線よりも波長が長く透過性の高い光を照射するため、水質が悪く濁度の高いバラスト水であっても、透過度がゼロとなって光センサが発光手段からの光を検知できなることはなく、確実に水質の変化を検知することができる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0010】
好ましくは、前記制御手段は、前記光センサが測定する光の照度ごとの前記紫外線ランプの出力の平常値を予め記憶しておき、前記紫外線ランプが紫外線を照射する間、光の照度と前記紫外線ランプの出力とを所定のタイミングごとに参照して、光の照度に対する前記紫外線ランプの出力が記憶した平常値よりも高い場合、紫外線ランプの照度が低下したと判定する。
【0011】
また、本発明によれば、バラスト水処理装置における紫外線ランプの劣化検出方法であって、前記紫外線ランプが照射する紫外線よりも波長の長い光を照射する発光手段と、前記発光手段からの光の照度を前記バラスト水を介して測定する光センサとを備え、前記光センサが測定した光の照度を参照して、前記紫外線ランプの照度が低下しているかどうかを判定する、バラスト水処理装置における紫外線ランプの劣化検出方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るバラスト水処理装置の概略を示す図である。
【
図2】
図1のバラスト水処理装置の紫外線リアクタを示す図である。
【
図3】
図1のバラスト水処理装置の制御手段による制御を示すグラフであり、(a)はバラスト水の紫外線透過度とランプ出力の関係を示すグラフ、(b)はバラスト水の紫外線透過度とバラスト水の流量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るバラスト水処理装置の実施形態について、以下図面を参照しながら説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0014】
<バラスト水処理装置の構成>
図1は、本実施形態に係るバラスト水処理装置の構成を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態のバラスト水処理装置は、海水等の船外の水をシーチェストSCから船内に取り込んでバラスト水として圧送するポンプ1と、フィルタを備えバラスト水を濾過処理するバラスト水濾過装置2と、紫外線処理手段としての紫外線リアクタ3と、バラスト水を貯留するバラストタンク4と、バラスト水処理装置の各処理の制御を行う制御手段5とを備える。
【0015】
ここで、紫外線リアクタ3は、
図2に示すように、内部に透明な石英保護管で覆われた紫外線ランプ30を有し、紫外線ランプ30によりバラスト水に紫外線を照射して微生物を殺菌処理するものである。ここで、
図2では紫外線ランプ30を1つのみ図示しているが、紫外線リアクタ3内に配置するランプの数は特に限定されず、いくつであっても良い。また、紫外線リアクタ3は、紫外線ランプ30からの紫外線の照度をバラスト水を介して測定する紫外線センサ31も備えている。本実施形態において、この紫外線リアクタ3は、バラスト水濾過装置2の下流側に設けられる(
図1参照)。
【0016】
また、本実施形態のバラスト水処理装置は、紫外線リアクタ3の近傍に、紫外線ランプ30が照射する紫外線よりも波長の長い光を照射する発光手段7と、発光手段7からの光の照度をバラスト水を介して測定する光センサ8とをさらに備えている。本実施形態において、これら発光手段7及び光センサ8は、
図2に示すように、紫外線リアクタ3の上流側に設置される。ただし、これらの設置位置は、バラスト水濾過装置2の下流側であれば特に限定されず、紫外線リアクタ3の下流側に設置することも可能である。
【0017】
なお、本明細書において「バラスト水」については、バラストタンク4に導入(流入)される前又はバラストタンク4から排出(流出)された後に拘わらず、また、バラスト水濾過装置2に導入(流入)される前又はバラスト水濾過装置2から排出(流出)された後に拘わらず、さらには、紫外線リアクタ3に導入(流入)される前又は紫外線リアクタ3から排出(流出)された後に拘わらず、船内に取り込まれた水を全て「バラスト水」と表現し、これは、海水、淡水、汽水等を含む。
【0018】
また、本実施形態に係るバラスト水処理装置は、上記各構成要素を流通する複数のラインL1〜L8を備える。「ライン」とは、配管により形成される、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0019】
具体的には、
図1に示すように、ラインL1はシーチェストSCとポンプ1を接続するラインであり、開閉弁V1を有する。ラインL2はポンプ1とバラスト水濾過装置2を接続するラインであり、ラインL3はバラスト水濾過装置2と紫外線リアクタ3を接続するラインである。また、ラインL4は、紫外線リアクタ3とバラスト水を船外へ排出する船外排出口DPを接続するラインであり、開閉弁V2を有する。なお、ラインL1〜ラインL4は、これらを合わせて、シーチェストSCと船外排出口DPとを接続する主管とも呼ばれる。
【0020】
次に、ラインL5は、一端がラインL2と接続され、他端がラインL3と接続されて、バラスト水濾過装置2をバイパスするラインであり、開閉弁V3を有する。ラインL6は、一端が紫外線リアクタ3と開閉弁V2の間の位置においてラインL4と接続され、他端がバラストタンク4に接続されて、紫外線リアクタ3とバラストタンク4を接続するラインであり、開閉弁V4を有する。そして、ラインL7は、一端が開閉弁V4とバラストタンク4の間の位置においてラインL6と接続され、他端が開閉弁V1とポンプ1の間の位置においてラインL1と接続されて、バラストタンク4とポンプ1を接続するラインであり、開閉弁V5を有している。
【0021】
また、本実施形態において、バラスト水濾過装置2は、濾過処理中にフィルタの洗浄を行うフィルタ洗浄手段(図示せず)を備えており、フィルタ洗浄手段により排出される洗浄汚水を船外へ排出するラインL8が接続される。ラインL8には、開閉弁V6が設けられる。
【0022】
そして、制御手段5は、ポンプ1及び、上述した開閉弁V1〜V6の開閉を制御することにより、バラスト水のバラストタンク4への漲水(バラスト動作)制御及びバラストタンク4からの排水(デバラスト動作)制御を行う。また、制御手段5は、バラスト水の流量制御及び、紫外線リアクタ3の出力制御も行う。
【0023】
<バラスト水処理装置の動作>
次に、以上のように構成された本実施形態のバラスト水処理装置の動作を説明する。
【0024】
まず、バラスト動作時には、制御手段5は、開閉弁V1,V4,V6を開き、開閉弁V2,V3,V5を閉じて、ポンプ1を起動するとともに、紫外線ランプ30に通電する。ポンプ1の起動により、シーチェストSCから船外の水(海水等)が取り込まれ、ラインL1,L2を通ってバラスト水濾過装置2へと通水される。バラスト水濾過装置2へ通水されたバラスト水は、フィルタにより濾過処理された後、ラインL3を通って紫外線リアクタ3へと流れる。ここで、上述したバラスト水濾過装置2のフィルタ洗浄手段により、バラスト水濾過装置2へ流入したバラスト水の一部は、フィルタ洗浄の汚水としてラインL8を通って船外へと排出される。紫外線リアクタ3を通過するバラスト水には紫外線ランプ30により紫外線が照射され、殺菌処理がなされる。そして、殺菌処理がなされたバラスト水はラインL4の一部とラインL6を通過してバラストタンク4へと送り込まれる。
【0025】
一方、デバラスト動作時には、開閉弁V5,V3,V2を開き、開閉弁V1,V4,V6を閉じて、ポンプ1を起動するとともに紫外線ランプ30に通電する。ポンプ1の起動により、バラストタンク4の水がラインL7、ラインL1の一部、ラインL5、ラインL3の一部を通って紫外線リアクタ3へと流れ、その後、ラインL4を通って船外排出口DPから船外へと排出される。船外へ排出するバラストタンク4内のバラスト水がバラスト水濾過装置2を通らず、ラインL5によりバイパスされているのは、バラストタンク4内のバラスト水は上述したバラスト処理時にすでに一度濾過処理を行っているためである。
【0026】
なお、バラストタンク4内のバラスト水の残量が少なくなってからは、ポンプ1がキャビテーションを起こさないよう開閉弁V1を開き、船外から取り込んだ水と一緒にバラストタンク4内のバラスト水を排水するのが好ましい。この場合は、開閉弁V3を閉じて開閉弁V6を開き、バラスト水濾過装置2による濾過処理を行ってから排水しても良い。
【0027】
また、本実施形態では、バラスト動作時及びデバラスト動作時における紫外線ランプ30の出力(電力)P及び紫外線リアクタ3を流れるバラスト水の流量Qは、紫外線センサ31が測定する紫外線の照度に応じて制御手段5により制御される。具体的には、制御手段5は、まず紫外線センサ31により測定される紫外線ランプ30からの紫外線の照度から、紫外線リアクタ3を流れるバラスト水の紫外線透過度を推定する。そして、この推定される紫外線透過度に応じて、
図3(a)のグラフの実線で示すような関係となるよう紫外線ランプ30の出力Pを決定し、また、
図3(b)のグラフの実線で示す関係となるよう紫外線リアクタ3を流れるバラスト水の流量Qを決定する。ここで、
図3(a)は、バラスト水の実際の紫外線透過度Tと紫外線ランプ30の出力Pの関係を示すグラフ、
図3(b)は、バラスト水の実際の紫外線透過度Tとバラスト水の流量Qの関係を示すグラフである。
【0028】
より具体的には、制御手段5は、推定されるバラスト水の紫外線透過度が高い場合(グラフの右側)には紫外線ランプ30の出力Pを抑え(例えば、最大出力の30%とする)、バラスト水の紫外線透過度が低下するほど出力Pを上げて、バラスト水が濁っていてもバラスト水に紫外線が確実に照射され、微生物を殺菌処理できるよう制御する。そして、紫外線ランプ30の出力Pを最大としても紫外線が十分に照射できない紫外線透過度(これを限界透過度T1とする)以下になった場合は、紫外線リアクタ3を流れるバラスト水の流量Qを減少させることで、紫外線リアクタ3を流れるバラスト水に対して単位時間あたりに照射する紫外線の照射量を確保して、殺菌処理が確実に行われるよう制御するようにしている。
【0029】
ところで、紫外線ランプ30は、点灯時間に応じて劣化し照度が低下するため、紫外線センサ31により測定される紫外線の照度は、バラスト水の実際の紫外線透過度Tだけでなく、紫外線ランプ30の劣化にも依存する。つまり、紫外線ランプ30が劣化すると、バラスト水の実際の紫外線透過度Tが高くても、紫外線センサ31を用いて推定される紫外線透過度が実際の紫外線透過度Tよりも低くなる。しかしながら、制御手段5は、紫外線センサ31により測定される紫外線の照度を参照するだけでは、推定される紫外線透過度の低下の原因が水質に起因するものなのか紫外線ランプ30に起因するものなのか判断できない。この場合、制御手段5は、
図3(a)のグラフの破線で示すように、通常よりも紫外線ランプ30の出力Pを増加させる制御を行うことで、紫外線ランプ30の劣化を考慮せず紫外線処理を継続してしまうことになる。つまり、制御手段5は、通常の限界透過度T1よりも高い限界透過度T2の段階で紫外線ランプ30の出力Pを最大とし、紫外線透過度が限界透過度T2以下になると流量Qを制限する制御を行うことになる(制御手段5はT1=T2と認識している)。このような制御では、紫外線ランプ30の交換時期をランプが完全に切れるまで認識できず、流量Qを低下させるため処理速度が落ちるうえ、消費電力も増加してしまうことになる。
【0030】
以上のことから、紫外線センサ31で照度が低いと測定された場合に、その原因が水質に起因するものなのか紫外線ランプ30の劣化に起因するものなのかを判定する必要があった。
【0031】
そこで、本実施形態では、紫外線ランプ30が照射する紫外線よりも波長の長い光を照射する発光手段7と、発光手段7からの光の照度をバラスト水を介して測定する光センサ8とを導入し、制御手段5が、光センサ8の測定する光の照度ごとの紫外線ランプ30の出力Pの平常値を予め記憶するようにしている。そして、紫外線ランプ30がバラスト水に紫外線を照射する間、制御手段5は、光センサ8が測定する発光手段7からの光の照度と紫外線ランプ30の出力Pとを所定のタイミングごとに参照し、光の照度に対する紫外線ランプ30の出力Pが記憶した平常値であれば紫外線透過度Tが低下した(水質起因)と判定し、出力Pが記憶した平常値よりも高い場合、紫外線ランプ30の照度が低下した(ランプ劣化)と判定するようにしている。
【0032】
本実施形態のバラスト水処理装置は、上記のような構成により、紫外線センサ31で照度が低いと測定された場合に、その原因が水質に起因するものなのか紫外線ランプ30の劣化に起因するものなのかを判定することができるようになっている。従って、紫外線ランプ30が劣化したと判定した場合には、一時的な対応としてバラスト水の流量Qを通常よりも削減して紫外線照射量を確保する対応を行うことや、紫外線ランプの交換を推奨することが可能となっている。
【0033】
なお、発光手段7と光センサ8により紫外線透過度Tの低下又は紫外線ランプ30の照度低下を判定するには、濁度が高いときにも、光センサが発光手段からの光を検知する必要がある。この点、本実施形態においては、発光手段7が紫外線ランプ30の照射する紫外線よりも波長が長く透過性の高い光を照射するため、水質が悪く濁度の高いバラスト水であっても、透過度がゼロとなって光センサが発光手段からの光を検知できなることはなく、水質の変化を検知することができるようになっている。
また、紫外線よりも波長が長く透過性の高い光を発する発光手段7としては、レーザー光源やLEDとすることが好ましい。レーザー光源やLEDは、紫外線ランプよりも寿命が長く劣化しにくいため、光センサ8が測定するレーザー光やLED光の照度が変化した場合に、その原因を、発光手段7の劣化による変化ではなく光の透過度の変化(つまり、濁度の変化)とみなすことができる。したがって、光の照度を基準として、光センサ8の測定する光の照度ごとの紫外線ランプ30の出力Pの平常値を予め記憶することで、ある光の照度のときの紫外線ランプ30の出力Pが平常値よりも高い場合に、紫外線ランプ30の照度が低下したとみなすことができるのである。
【0034】
<変形例>
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。特に、発明の均等な範囲において開閉弁やポンプの上流下流に係る順序を一部入れ替えたり、新たなライン、開閉弁、ポンプ等を追加したりしてもかまわない。
【0035】
また、上述した実施形態においては、バラスト水処理装置はバラスト水濾過装置2を備えていたが、紫外線リアクタ3のみとすることや、バラスト水を浄化する他の装置を有していても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 :ポンプ
2 :バラスト水濾過装置
3 :紫外線リアクタ
4 :バラストタンク
5 :制御手段
7 :発光手段
8 :光センサ
30 :紫外線ランプ
31 :紫外線センサ
DP :船外排出口
L1〜L8 :ライン
P :ランプ出力
Q :流量
SC :シーチェスト
T :紫外線透過度
T1 :限界透過度
T2 :限界透過度
V1〜V6 :開閉弁