(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-94773(P2018-94773A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】プランジャおよび成形金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20180525BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20180525BHJP
B29C 45/53 20060101ALI20180525BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/02
B29C45/53
H01L21/56 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-240200(P2016-240200)
(22)【出願日】2016年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 高志
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
5F061
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AC01
4F202AD19
4F202AH37
4F202AJ02
4F202AJ12
4F202AM33
4F202CA12
4F202CB01
4F202CB17
4F202CK01
4F202CK52
4F206AA36
4F206AD19
4F206AH37
4F206AJ02
4F206AJ12
4F206AM33
4F206JA02
4F206JB17
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN11
4F206JQ32
4F206JQ81
5F061AA01
5F061CA21
5F061DA12
(57)【要約】
【課題】押圧部材の作動不良を抑制することのできる技術を提供する。
【解決手段】ヘッド(20)およびシャフト(50)を有し、貫通部材としてのポットに挿入される押圧部材としてのプランジャ(10)は、シャフト(50)の先端部(51)にヘッド(20)が組み付けられ、ヘッド(51)の外周側面に設けられる周溝(23)と、シャフト(50)の先端部(51)の外周側面に設けられる周溝(53)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドおよびシャフトを有し、ポットに挿入されるプランジャであって、
前記シャフトの先端部に前記ヘッドが組み付けられ、
前記ヘッドの外周側面に設けられる第1周溝と、
前記シャフトの先端部の外周側面に設けられる第2周溝と、
を備えることを特徴とするプランジャ。
【請求項2】
前記ヘッドに対して前記シャフトの熱伝導率が低いことを特徴とする請求項1記載のプランジャ。
【請求項3】
前記ヘッドが超硬材から構成され、前記シャフトが鋼材から構成されることを特徴とする請求項1または2記載のプランジャ。
【請求項4】
前記ヘッドの外周側面に前記第1周溝が2段で設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプランジャ。
【請求項5】
前記シャフトの前記先端部の外周側面に前記第2周溝が2段で設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプランジャ。
【請求項6】
前記第1周溝と前記第2周溝との間であって前記ヘッドの外周側面に設けられ、前記第1周溝よりも浅く、幅の広い第3周溝を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプランジャ。
【請求項7】
前記第1周溝と前記第2周溝との間であって前記ヘッドの外周側面に周方向に沿って均等に8箇所で面取りされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプランジャ。
【請求項8】
前記第1周溝と前記第2周溝との間であって前記ヘッドの外周側面に設けられ、前記第1周溝よりも浅く、幅の広い一対の第3周溝を更に備え、
前記一対の第3周溝の間であって前記ヘッドの外周側面に周方向に沿って均等に複数箇所で面取りされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプランジャ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のプランジャと、
前記プランジャが挿入して設けられるポットと、
を備えることを特徴とする成形金型。
【請求項10】
ヘッドおよびシャフトを有するキャビティ駒と、前記キャビティ駒が挿入して設けられるクランパとを備え、前記クランパに対して前記キャビティ駒が相対的に進退動可能に設けられる成形金型であって、
前記シャフトの先端部に前記ヘッドが組み付けられ、
前記ヘッドの外周側面に設けられる第1周溝と、
前記シャフトの先端部の外周側面に設けられる第2周溝と、
を備えることを特徴とする成形金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャおよび成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−134607号公報(特許文献1)には、トランスファ成形において、ヘッド部(先端部)に周溝が形成されると共に、該周溝よりもプランジャ先端の側面にテーパ部が形成されたプランジャが記載されている。
【0003】
特開2015−214140号公報(特許文献2)には、トランスファ成形において、プランジャのヘッド部を構成するフランジ部とヘッド本体部とが分割されることが記載されている。
【0004】
特開2012−61728号公報(特許文献3)には、圧縮成形において、下型の底面部材が、その上面の外周縁部に全周にわたって設けられた溝部を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−134607号公報
【特許文献2】特開2015−214140号公報
【特許文献2】特開2012−61728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えばトランスファ成形のように、ポット(貫通部材)内の樹脂をプランジャ(押圧部材)のヘッド(先端部)で押圧する工程を含む場合、特に、低粘度(1Pa・s以下)の樹脂(例えばLED用の透過樹脂等で、固形樹脂もあるが、特には液状樹脂)が用いられていると、樹脂がポットとプランジャの隙間から漏れてしまうことがある。プランジャはトランスファ機構に取り付けられて進退動可能に構成されているが、樹脂が漏れることによって、ポットとの隙間におけるプランジャの摺動抵抗が増加したり、トランスファ機構内部に樹脂が入り込んでトランスファ機構が破損したりしてプランジャの作動不良が発生する場合がある。なお、クランパ(貫通部材)内の樹脂をキャビティ駒(押圧部材)のヘッド(先端部)で押圧する工程を含む圧縮成形の場合も同様の問題が生じ得る。
【0007】
本発明の一目的は、押圧部材の作動不良を抑制することのできる技術を提供することにある。なお、本発明の一目的および他の目的ならびに新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかにしていく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
本発明の一解決手段に係るプランジャは、ヘッドおよびシャフトを有し、ポットに挿入されるプランジャであって、前記シャフトの先端部に前記ヘッドが組み付けられ、前記ヘッドの外周側面に設けられる第1周溝と、前記シャフトの先端部の外周側面に設けられる第2周溝と、を備える。これによれば、ポット内の樹脂を押圧した際に第1周溝に溜まって形成される樹脂リングでヘッドとポットの隙間を塞いで(小さくして)おき、仮にヘッドの外周側面で樹脂が漏れたとしても第2周溝で樹脂を溜めることによって、プランジャの後端部まで樹脂が漏れるのを防止することができる。したがって、プランジャの作動不良とトランスファ機構の破損を抑制することができる。
【0010】
ここで、前記ヘッドに対して前記シャフトの熱伝導率が低いことがより好ましい。また、前記ヘッドが超硬材から構成され、前記シャフトが鋼材から構成されることがより好ましい。ヘッド(超硬材)は熱伝導率が高く、樹脂を押圧する際に温度が低下し冷め易くなるが、シャフト(鋼材)はヘッドよりも熱伝導率が低く、温度が低下し冷め難い。このため、仮にシャフトまで樹脂が漏れてきた場合でも樹脂に熱を与え、第2周溝で溜まった樹脂を硬化させることができる。
【0011】
また、前記ヘッドの外周側面に前記第1周溝が2段で設けられることがより好ましい。これによれば、ヘッドにおいて段階的に樹脂を溜めることができる。第1周溝が3段、4段と増えると、ポットとの隙間によるプランジャの摺動抵抗が増えてしまう。このため、第1周溝を2段とすることで、摺動抵抗の増加を抑制して樹脂を溜めることができる。
【0012】
また、前記シャフトの前記先端部の外周側面に前記第2周溝が2段で設けられることがより好ましい。これによれば、シャフトにおいて段階的に樹脂を溜めることができる。
【0013】
また、前記第1周溝と前記第2周溝との間であって前記ヘッドの外周側面に設けられ、前記第1周溝よりも浅く、幅の広い第3周溝を更に備えることがより好ましい。第1周溝で溜まって硬化された樹脂は第1周溝の深さ方向に厚いため、シュリンクによりポットとの隙間が大きくなり易い。これに対して第3周溝で溜まって硬化された樹脂は深さ方向に浅いため、シュリンクが少なく、更に第1周溝よりも幅を広くしているため、樹脂漏れを効果的に止めることができる。
【0014】
また、前記第1周溝と前記第2周溝との間であって前記ヘッドの外周側面に周方向に沿って均等に8箇所で面取りされていることがより好ましい。シャフトの先端部にヘッドを組み付ける際に、面取り部に例えばスパナを掛けることができ、また、8箇所で均等に面取りされることで、プランジャの進退動に垂直度(直進性)を持たせることができる。
【0015】
また、前記第1周溝と前記第2周溝との間であって前記ヘッドの外周側面に設けられ、前記第1周溝よりも浅く、幅の広い一対の第3周溝を更に備え、前記一対の第3周溝の間であって前記ヘッドの外周側面に周方向に沿って均等に複数箇所で面取りされていることがより好ましい。シャフトの先端部にヘッドを組み付ける際に、面取り部に例えばスパナを掛けることができる。また、複数の面取り部を挟んで一対の第3周溝が設けられることで、プランジャの進退動に垂直度を持たせることができる。
【0016】
本発明の一解決手段に係る成形金型は、前記プランジャと、前記プランジャが挿入して設けられるポットと、を備えることを特徴とする。これによれば、例えばトランスファ成形において、プランジャの作動不良を抑制することができる。
【0017】
本発明の他の解決手段に係る成形金型は、ヘッドおよびシャフトを有するキャビティ駒と、前記キャビティ駒が挿入して設けられるクランパとを備え、前記クランパに対して前記キャビティ駒が相対的に進退動可能に設けられる成形金型であって、前記シャフトの先端部に前記ヘッドが組み付けられ、前記ヘッドの外周側面に設けられる第1周溝と、前記シャフトの先端部の外周側面に設けられる第2周溝と、を備えることを特徴とする。これによれば、例えば圧縮成形において、クランパに対して相対的に進退動するキャビティ駒の作動不良を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一解決手段によれば、押圧部材の作動不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプランジャの側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置の要部の断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る樹脂成形装置の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0021】
(実施形態1)
本発明の実施形態に係るプランジャ10について、主として
図1〜
図3を参照して説明する。
図1はプランジャ10の側面図である。
図2はプランジャ10のヘッド20の説明図であり、
図2Aが側面図、
図2Bが端面図である。
図3はプランジャ10のシャフト50の説明図であり、
図3Aが端面図、
図3Bが側面図である。
【0022】
押圧部材としてのプランジャ10は、ヘッド20およびシャフト50を有し、貫通部材としてのポット11(
図4参照)に挿入され、公知のトランスファ機構によって進退動可能に構成される。円柱状のヘッド20の最外径は、円筒状のポット11の内径に対して同じか僅かに小さい。すなわち、プランジャ10では、ヘッド20の外周側面がポット11の内周壁面に摺動するように構成されている。他方、プランジャ10では、シャフト50が摺動しないように構成されている。また、プランジャ10は、樹脂R(
図4参照)を押圧するドーム状の押圧面21をヘッド20に有している。この押圧面21には樹脂Rの食い付き防止のため梨地加工が施されている。
【0023】
プランジャ10を構成するヘッド20(第1部材)とシャフト50(第2部材)とは、互いに独立した部材であり、ヘッド20がシャフト50の先端部51(一端部)に組み付けられる。具体的には、無頭ネジ(ボルト)を用い、この両端部のそれぞれをヘッド20のネジ穴22(ナット穴)およびシャフト50のネジ穴52(ナット穴)に接着剤と共に捩じ込んで組み付けられる。ネジ穴22はヘッド20の押圧面21とは反対側の端面中央に形成され、ネジ穴52はシャフト50の先端部51の端面中央に形成される。本実施形態では、先端部51は、ヘッド20を支持するように、シャフト50の本体部54(中央部)よりも径方向(プランジャ10の長さ方向と直交する方向)に大きく構成されている。その一方で、先端部51は、ポット11で摺動しないように、ヘッド20よりも径方向に小さく構成されている。
【0024】
また、プランジャ10は、ヘッド20の外周側面に設けられる周溝23(第1周溝)を備える。このようなヘッド20の外周側面の全周に渡って窪む所定の深さ(例えば0.5mm)の周溝23によれば、ポット11内の樹脂Rを押圧した際に周溝23に溜まって(流れ止まって)形成される樹脂リングによって、ヘッド20とポット11の隙間を塞いで(または小さくして)おくことができる。また、周溝23に樹脂Rが入り易くなるように、周溝23にかかる押圧面21の外周縁部の径は、ポット11の内径やヘッド20の外周側面の径よりも僅かに(例えば0.02mm〜0.1mm)細く(小さく)なっている。
【0025】
周溝23は、1段(1本)とすることもできるが、本実施形態ではヘッド20の外周側面に2段(2本)で設けられている。これによれば、ヘッド20において段階的に樹脂Rを溜めることができる。周溝23が3段、4段と増えると、樹脂Rが溜まることでプランジャ10の摺動抵抗が増えてしまう。このため、周溝23を2段とすることが最適で、摺動抵抗の増加を抑制して樹脂Rを溜めることができる。なお、1段目と2段目の周溝23の間では、押圧面21と1段目の周溝23との間のようにヘッド20の外周側面の径を細くしていない。
【0026】
また、プランジャ10は、シャフト50の先端部51の外周側面に設けられる周溝53(第2周溝)を備える。本実施形態では、ヘッド20の周溝23よりも深い周溝53を設けている。このようなシャフト50の先端部51の外周側面の全周に渡って窪む所定の深さ(例えば1.0mm)の周溝53によれば、仮にヘッド20の外周側面で樹脂Rが漏れたとしても周溝53で樹脂Rを溜めることによって、プランジャ10の後端部(他端部)まで樹脂Rが漏れるのを防止することができる。このようにヘッド20とは別部材のシャフト50でも樹脂Rの流れ止めを行うことでプランジャ10の作動不良を抑制することができる。
【0027】
周溝53は、1段(1本)とすることもできるが、本実施形態ではシャフト50の先端部51の外周側面に2段(2本)で設けられている。これによれば、シャフト50において段階的に樹脂Rを溜めることができる。
【0028】
このようなプランジャ10では、互いに独立したヘッド20(第1部材)とシャフト50(第2部材)とが組み付けられている。本実施形態では、ヘッド20に対してシャフト50の熱伝導率を低くしている。具体的には、ヘッド20を超硬材(例えばタングステン・カーバイドを主体とした超硬合金)から構成し、シャフト50を鋼材(例えば鋼を主体とした工具鋼)から構成している。すなわち、ヘッド20(超硬材)は熱伝導率が高く、樹脂Rを押圧する際に温度が低下し冷め易くなるが、シャフト50(鋼材)はヘッドよりも熱伝導率が低く、温度が低下し冷め難い。このため、仮にシャフト50まで樹脂Rが漏れてきた場合でも樹脂Rに熱を与え、周溝53で溜まった樹脂Rを硬化させることができる。
【0029】
また、プランジャ10は、周溝23と周溝53との間であってヘッド20の外周側面に設けられ、周溝23よりも浅く、プランジャ10の長さ方向の幅が広い浅溝24(第3周溝)を備える。周溝23で溜まって硬化された樹脂Rは周溝23の深さ方向に厚いため、樹脂の硬化収縮によりポット11との隙間が大きくなり易い。これに対して浅溝24で溜まって硬化された樹脂Rはその深さ方向に浅いため、シュリンクが少なく、更に周溝23よりも幅を広くしているため、樹脂漏れを効果的に止めることができる。また、後述の複数の面取り部25を挟んで一対の浅溝24を設けることで、ヘッド20の先端側および後端側でバランスが取れ、プランジャ10の進退動に垂直度(直進性)を持たせることもできる。
【0030】
また、プランジャ10では、周溝23と周溝53との間であってヘッド20の外周側面に周方向に沿って均等に平面取りされた面取り部25を8箇所(例えば
図2Bに示す端面視で正八角形状)で備える。面取り部25に例えばスパナを掛けることで、無頭ネジを介してシャフト50の先端部51にヘッド20を容易に組み付けることができる。
【0031】
面取り部25は、4箇所(端面視で正四角形状)とすることもできるが、本実施形態では8箇所で均等に面取りしている。これによれば、端面視円形状に近くなり、ガイドとなってプランジャ10の進退動に垂直度を持たせることができる。また、面取り部25の後端側(シャフト50側)において、互いに隣接する面取り部25に架かるようにヘッド20の外周側面から面取り部25よりも深い位置で丸面取りされた面取り部26が形成される。面取り部26をガイドとして用いないことで垂直度や摺動抵抗を調整することができる。また、面取り部25を8箇所(端面視で正八角形状)とすることで、ヘッド20の外周側面とポット11の内周壁面との隙間が狭くなるので、仮に樹脂漏れがあったとしても、面取り部25で樹脂Rが溜まりにくいため、摺動抵抗が低下するのを防止することができる。
【0032】
次に、本発明の実施形態に係るトランスファ成形を行う樹脂成形装置100について、主として
図4を参照して説明する。
図4は、樹脂成形装置100の要部である成形金型60の断面図であり、型閉じによりワークWをクランプした状態である。なお、プランジャ10は前述した構成を有するものであるため、説明を明解にするために
図4では概略して示している。
【0033】
樹脂成形装置100は、例えば、図示しない供給部と収納部との間に、少なくとも一つのプレス部を備えて構成される。各プレス部には、型閉じの状態でキャビティCが形成される成形金型60が少なくとも1つ設けられて、キャビティCまでの樹脂路に溶融した樹脂Rを圧送するプランジャ10が設けられる。供給部は、ローダ(搬送装置)を用いて被成形品であるワークWや封止するための樹脂Rをプレス部に供給する公知の機構で構成される。また、収納部は、プレス部からアンローダ(搬送装置)を用いて樹脂封止成形された成形品であるワークWを取り出し、収納する公知の機構で構成される。
【0034】
ワークWとしては、例えば、基板(有機基板、セラミック基板等)やリードフレーム上に複数の電子部品(例えば、半導体チップに限らず、コンデンサ、抵抗等を含む電気、電子部品でも良い)が実装されたものを用いることができる。また、樹脂Rとしては、例えば、タブレット状、液状、顆粒状、粉末状、シート状などの種々の形状のものを用いることができ、本実施形態によれば、低粘度(1Pa・s以下)のものでも用いることができる。
【0035】
成形金型60は、公知のプレス機構によって型開閉可能に構成される上型61(一方の金型)および下型62(他方の金型)を備える。また、成形金型60は、プランジャ10と、プランジャ10が挿入して設けられるポット11とを備える。このポット11は、下型62を貫通して設けられる。この下型62の金型面(パーティング面)にはワークWをセットするセット部63が設けられる。また、上型61の金型面にはカル64、ランナ・ゲート65、キャビティCが設けられる。
【0036】
下型62の下方には、プランジャ10を上下方向(型開閉方向)に進退動させる公知のトランスファ機構(図示せず)が設けられる。トランスファ機構は、例えば、油圧あるいは電動モータによる駆動力を利用する。このトランスファ機構とプランジャ10とは、トランスファ機構に設けられた押動ロッドの上端面とプランジャ10の後端部とがキー係合して、抜け止め状態で連結される。
【0037】
ここで、成形金型60を用いた成形品の製造方法(動作方法)について説明する。まず、型開きした状態において、ポット11に樹脂Rをセットし、またセット部63にワークW(被成形品)をセットする。このとき、ポット11内のプランジャ10のヘッド20は、金型面から後退した位置(待機位置)にある。続いて、型閉じすることによって、上型61と下型62とでワークWをクランプする。このとき、成形金型60では、キャビティCが閉塞される。このキャビティCとポット11とは、カル64およびランナ・ゲート65を介して連通される。
【0038】
続いて、溶融している樹脂Rを押圧しながら、プランジャ10のヘッド20を上死点位置まで進出させていく。これにより、ポット11からカル64およびランナ・ゲート65を介してキャビティC内へ樹脂Rが圧送(注入)される。そして、キャビティC内を樹脂Rで充填し、所定の条件(圧力、温度、時間)で熱硬化させることで、ワークWが成形品として略完成する。
【0039】
このような成形金型60によれば、樹脂漏れを防止してプランジャ10の作動不良を抑制することができる。プランジャ10の摺動抵抗が変化してしまうと、プランジャ10がキャビティC内へ樹脂Rを圧送する圧力に差が生じてしまい、成形品の品質不良の原因となる。しかしながら、前述したように、プランジャ10の摺動抵抗が増加するのを抑制することができるので、成形品の品質の低下を防止することができる。
【0040】
(実施形態2)
本発明の実施形態に圧縮成形を行う樹脂成形装置100Aについて、主として
図5を参照して説明する。
図5は、樹脂成形装置100Aの要部である成形金型60Aの断面図である。本発明の押圧部材および貫通部材について、前記実施形態1ではそれぞれプランジャ10およびポット11に適用したが、本実施形態ではそれぞれキャビティ駒10Aおよびクランパ11Aに適用する。本実施形態ではキャビティ駒10Aおよびクランパ11Aを備える成形金型60Aが前記実施形態1と相違するので、この点について説明する。なお、キャビティ駒10Aは押圧部材として前述したプランジャ10と同様の構成を適宜有するものであるため、説明を明解にするために
図5では概略して示している。
【0041】
成形金型60Aは、公知のプレス機構によって型開閉可能に構成される上型61A(一方の金型)および下型62A(他方の金型)を備える。成形金型60Aでは、上型61Aの金型面にワークWがセットされ、下型62Aの金型面にキャビティCが設けられる。成形金型60Aは、キャビティ駒10Aと、キャビティ駒10Aが挿入して設けられるクランパ11Aとを備え、クランパ11Aに対してキャビティ駒10Aが相対的に進退動可能に設けられる。このため、キャビティ駒10Aの上面およびクランパ11Aの内周壁面から構成されるキャビティCは深さ(容量)が変化する可動キャビティとなる。
【0042】
上型61Aは、ベース71と、チェイス72と、ガイド73と、インサート74とを備える。ベース71にはチェイス72が固定され、チェイス72にはベース71側とは反対側の外周部にガイド73が固定される。このガイド73には、チェイス72と当接するように、インサート74が支持される。インサート74には金型面(吸着面)に通じる吸引路76が形成されており、成形金型60Aの外部で設けられるエアを吸引する吸引装置(図示せず)と接続される。この吸引路76は、インサート74とチェイス72との間のシール部材77(例えばOリング)によって気密性が保たれており、吸引装置が作動するとワークWを上型61Aの金型面に吸着保持(セット)させることができる。
【0043】
下型62Aは、キャビティ駒10Aおよびクランパ11Aの他に、ベース81と、チェイス82とを備える。ベース81にはチェイス82が固定される。このチェイス82ではクランパ11Aがチェイス82との間に弾装された弾性部材84により常時上方に付勢される。クランパ11Aの中央部では、その厚さ方向に貫通する貫通孔11aが設けられる。この貫通孔11aに挿入されるキャビティ駒10Aがその後端部でチェイス82に固定して組み付けられる。このため、成形金型60Aの型閉じの際、弾性部材84を押し縮ませてクランパ11Aを動かすことにより、キャビティ駒10Aを相対的に上昇させることができる。すなわち、キャビティ駒10Aは、クランパ11Aに対して型閉じ動作に応じて相対的に進退動(往復動)することとなる。これにより、キャビティ駒10Aは、キャビティC内に充填された樹脂Rを押圧することができる。
【0044】
前記実施形態1で説明したように、押圧部材であるキャビティ駒10Aは、ヘッド20およびシャフト50を有する。キャビティ駒10Aを構成するヘッド20(第1部材)とシャフト50(第2部材)とは、互いに独立した部材であり、ヘッド20がシャフト50の先端部51(一端部)に組み付けられる。キャビティ駒10Aは、ヘッド20の外周側面に設けられる周溝23(第1周溝)を備える。このようなヘッド20の外周側面の全周に渡って窪む所定の深さの周溝23によれば、クランパ11A内の樹脂Rを押圧した際に周溝23に溜まって(流れ止まって)形成される樹脂リングによって、ヘッド20とクランパ11Aの隙間を塞いで(小さくして)おくことができる。
【0045】
また、キャビティ駒10Aは、シャフト50の先端部51の外周側面に設けられる周溝53(第2周溝)を備える。本実施形態では、ヘッド20の周溝23よりも深い周溝53を設けている。このようなシャフト50の先端部51の外周側面の全周に渡って窪む所定の深さの周溝53によれば、仮にヘッド20の外周側面で樹脂Rが漏れたとしても周溝53で樹脂Rを溜めることによって、キャビティ駒10Aの後端部(他端部)まで樹脂Rが漏れるのを防止することができる。このようにヘッド20とは別部材のシャフト50でも樹脂Rの流れ止めを行うことで、キャビティ駒10Aの作動不良を抑制することができる。
【0046】
ここで、成形金型60Aを用いた成形品の製造方法(動作方法)について説明する。まず、型開きした状態で、上型61Aの金型面にワークW(被成形品)をセットし、また下型62AのキャビティC内に樹脂Rをセットする。続いて、型閉じしていき、上型61Aと下型62AとでワークWをクランプした後、弾性部材84を押し縮め、クランパ11Aに対してキャビティ駒10Aを相対的に上昇させる。これにより、キャビティC内で溶融している樹脂Rがキャビティ駒10Aで押圧され、樹脂RがキャビティC内で充填される。次いで、キャビティC内で充填された樹脂Rを所定の条件(圧力、温度、時間)で熱硬化させることで、ワークWが成形品として略完成する。
【0047】
このような成形金型60Aによれば、樹脂漏れを防止してキャビティ駒10Aの作動不良を抑制することができる。キャビティ駒10Aの摺動抵抗が変化してしまうと、キャビティ駒10AがキャビティC内へ樹脂Rを圧送する圧力に差が生じてしまい、成形品の品質不良の原因となる。しかしながら、前述したように、キャビティ駒10Aの摺動抵抗が増加するのを抑制することができるので、成形品の品質の低下を防止することができる。
【0048】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0049】
例えば、前記実施形態1では、樹脂成形装置の成形金型においてプランジャを用いた場合について説明した。これに限らず、樹脂などの液体を押圧して所定箇所まで液体を圧送する装置に本発明に係るプランジャを用いることもできる。
【符号の説明】
【0050】
10 プランジャ
20 ヘッド
23 周溝
50 シャフト
51 先端部
53 周溝