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特開2018-94858ゴム芯入り紐の接合構造及びゴム芯入り紐の接合用固化剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-94858(P2018-94858A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】ゴム芯入り紐の接合構造及びゴム芯入り紐の接合用固化剤
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/48 20060101AFI20180525BHJP
   D04C 1/12 20060101ALI20180525BHJP
   A45D 8/36 20060101ALI20180525BHJP
   B65D 63/10 20060101ALN20180525BHJP
【FI】
   B29C65/48
   D04C1/12
   A45D8/36 A
   B65D63/10 J
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-244005(P2016-244005)
(22)【出願日】2016年12月16日
(11)【特許番号】特許第6175551号(P6175551)
(45)【特許公報発行日】2017年8月2日
(71)【出願人】
【識別番号】501193621
【氏名又は名称】栄光通商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596152327
【氏名又は名称】大谷 武三郎
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 武三郎
(72)【発明者】
【氏名】烏帽子田 彰
(72)【発明者】
【氏名】巽 義則
【テーマコード(参考)】
3E085
4F211
4L046
【Fターム(参考)】
3E085BA23
3E085BD08
3E085BE03
3E085BE08
3E085BH03
4F211AA19
4F211AA45
4F211AD15
4F211AD16
4F211AG13
4F211TA03
4F211TC08
4F211TD07
4F211TH19
4F211TN42
4L046AA01
4L046AA21
4L046BA00
4L046BB00
(57)【要約】
【課題】従来のゴムリングにおけるゴム芯入り紐の接合構造と比較して接合強度が高い接合構造を提供する。またこのような接合構造を提供する、ゴム芯入り紐の接合用固化剤を提供する。
【解決手段】本発明のゴム芯入り紐11の接合構造2は、ゴム芯入り紐11の両端部が付き合わされて、又は、2本のゴム芯入り紐の端部が付き合わせされて接着剤で接合されているゴム芯入り紐の接合構造である。ゴム芯入り紐11の両端部、又は、2本のゴム芯入り紐の端部には、固化した固化剤25によって固化部分23が形成されており、当該固化部分23には、多孔質粒子が含まれている。本発明の固化剤25は、ゴム芯入り11紐に付着させる固化剤であって、固化作用成分を含有する溶媒と、当該溶媒に入れられた多孔質粒子とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム芯入り紐の両端部が付き合わされて、又は、2本のゴム芯入り紐の端部が付き合わせされて接着剤で接合されているゴム芯入り紐の接合構造であって、
ゴム芯入り紐の両端部、又は、2本のゴム芯入り紐の端部には、固化した固化剤によって固化部分が形成されており、当該固化部分には、多孔質粒子が含まれている、ゴム芯入り紐の接合構造。
【請求項2】
複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って形成された編み紐又は縒り紐の両端部が付き合わされて、或いは、各々が複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って形成されている2本の編み紐又は縒り紐の端部が付き合わされて接着剤で接合されているゴム芯入り紐の接合構造であって、
編み紐又は縒り紐の両端部、或いは、2本の編み紐又は縒り紐の端部には、固化した固化剤によって固化部分が形成されており、当該固化部分には、多孔質粒子が含まれている、ゴム芯入り紐の接合構造。
【請求項3】
ゴム芯入り紐に付着させる固化剤であって、
固化作用成分を含有する溶媒と、当該溶媒に入れられた多孔質粒子とを含む固化剤。
【請求項4】
多孔質粒子は、多孔質ポリマー粒子、多孔質無機粒子、炭粒子、砂礫粒子、又はこれら粒子の任意の混合物である。請求項3に記載の固化剤。
【請求項5】
固化作用成分はポリビニルアルコールであり、溶媒は水である、請求項3又は請求項4に記載の固化剤。
【請求項6】
請求項1に記載のゴム芯入り紐の接合構造を作製する方法であって、
ゴム芯入り紐の両端部に固化剤を付着させる工程、又は、長尺のゴム芯入り紐に局所的に固化剤を付着させ、当該固化剤が固化して固化部分が形成された後に、当該固化部分にて長尺のゴム芯入り紐を切断する工程を含んでおり、
固化剤は、固化作用成分を含有する溶媒と、当該溶媒に入れられた多孔質粒子とを含む、方法。
【請求項7】
請求項2に記載のゴム芯入り紐の接合構造を作製する方法であって、
長尺の編み紐又は縒り紐に局所的に固化剤を付着させ、当該固化剤が固化して固化部分が形成された後に、当該固化部分にて長尺の編み紐又は縒り紐を切断する工程を含んでおり、
固化剤は、固化作用成分を含有する溶媒と、当該溶媒に入れられた多孔質粒子とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ゴム芯入り紐の両端部を付き合わせて接合する、又は、2本のゴム芯入り紐の端部を付き合わせて接合する接合構造に関する。また、本発明は、このようなゴム芯入り紐の接合構造を形成する際に使用される固化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム芯入り紐(ゴム芯入り組紐とも称される)の両端部を付き合わせて接合することで環状にしたゴムリングは、髪留めやアクセサリ−として用いられている。ゴム芯入り紐は、1又は複数のゴム芯と当該ゴム芯を被覆する伸縮性カバーとで構成されており、伸縮性カバーは繊維糸を編んで構成されている。
【0003】
このようなゴムリングの製造においては、ゴムリングを形成するゴム芯入り紐の両端部を固化剤(硬化剤とも称される)付着して固くすること、或いは、長尺のゴム芯入り紐に局所的に固化剤を付着して固くした後に固化部分を切断することで、ゴムリングを形成するゴム芯入り紐を得ることが行われている(特許文献1及び特許文献2参照)。ゴムリングを形成するゴム芯入り紐の両端部が固化剤で固まることで、これらの端部において、伸縮性カバーの端部の繊維糸が毛羽立つ事態や、ゴム芯の端面が伸縮性カバーの端部から凹む事態が防止又は抑制される。さらには、このように、ゴム芯入り紐の両端部を固化剤で固くすることで、両端部を付き合わせて接着剤を用いて接合することが容易になると共に、両端部の接合強度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−34317号公報
【特許文献2】特開2005−40173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴムリングの機能及び品質上、ゴム芯入り紐の両端部の接合強度が極めて重要であることは言うまでもない。ゴム芯入り紐の両端部の接合強度を高めることは、ゴムリングの製造者にとって恒常的な課題となっている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するものであって、従来技術のゴムリングにおけるゴム芯入り紐の接合構造と比較して接合強度が高い接合構造を提供する。また、本発明は、上記の課題を解決するものであって、このような接合強度が高い接合構造をゴム芯入り紐にもたらす固化剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム芯入り紐の両端部が付き合わされて、又は、2本のゴム芯入り紐の端部が付き合わせされて接着剤で接合されているゴム芯入り紐の接合構造であって、ゴム芯入り紐の両端部、又は、2本のゴム芯入り紐の端部には、固化した固化剤によって固化部分が形成されており、当該固化部分には多孔質粒子が含まれている。
【0008】
本発明は、複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って形成された編み紐又は縒り紐の両端部が付き合わされて、或いは、各々が複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って形成されている2本の編み紐又は縒り紐の端部が付き合わされて接着剤で接合されているゴム芯入り紐の接合構造であって、編み紐又は縒り紐の両端部、或いは、2本の編み紐又は縒り紐の端部には、固化した固化剤によって固化部分が形成されており、当該固化部分には多孔質粒子が含まれている。
【0009】
本発明は、ゴム芯入り紐に付着させる固化剤であって、固化作用成分を含有する溶媒と、当該溶媒に入れられた多孔質粒子とを含む。多孔質粒子は、多孔質ポリマー粒子、多孔質無機粒子、炭粒子、砂礫粒子、又はこれら粒子の任意の混合物であってよい。固化作用成分はポリビニルアルコールであり、溶媒は水であってよい。
【0010】
本発明は、上記のゴム芯入り紐の接合構造を作製する方法であって、ゴム芯入り紐の両端部に固化剤を付着させる工程、又は、長尺のゴム芯入り紐に局所的に固化剤を付着させ、当該固化剤が固化して固化部分が形成された後に、当該固化部分にて長尺のゴム芯入り紐を切断する工程を含んでおり、固化剤は、固化作用成分を含有する溶媒と、当該溶媒に入れられた多孔質粒子とを含む。
【0011】
本発明は、上記のゴム芯入り紐の接合構造を作製する方法であって、長尺の編み紐又は縒り紐に局所的に固化剤を付着させ、当該固化剤が固化して固化部分が形成された後に、当該固化部分にて長尺の編み紐又は縒り紐を切断する工程を含んでおり、固化剤は、固化作用成分を含有する溶媒と、当該溶媒に入れられた多孔質粒子とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下に示す試験結果によって確認されているように、従来技術のゴム芯入り紐の接合構造と比較して接合強度が高いゴム芯入り紐の接合構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るゴム芯入り紐の接合構造を有するゴムリングを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すゴムリングを構成するゴム芯入り紐の断面図である。
図3図3(a)乃至(d)は、図1に示すゴムリングの製造工程を示す説明図である。
図4図4は、本発明に係るゴム芯入り紐の接合構造を有するゴムリングを示す斜視図である。
図5図5(a)乃至(d)は、図4に示すゴムリングの製造工程を示す説明図である。
図6図6(a)乃至(d)は、図4に示すゴムリングの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、図を参照しつつ具体的に説明する。図1は、本発明に係るゴム芯入り紐の接合構造を有する第1ゴムリング1を示す斜視図であり、図2は、第1ゴムリング1を構成するゴム芯入り紐11を長さ方向に沿って破断した断面図である。
【0015】
ゴム芯入り紐11は、天然ゴム又は合成ゴムで作られている細長いゴム芯13と、ゴム芯13を覆う伸縮性カバー15とを備えている。ゴム芯13の(長さ方向に直交する面で破断した)断面は、例えば矩形又は円形にされるが、本発明において、ゴム芯13の断面形状は限定されない。本実施形態では、ゴム芯入り紐11は1本のゴム芯13を備えているが、本発明において、ゴム芯入り紐11は、複数のゴム芯入り紐を伸縮性カバー15で束ねたものであってもよい。
【0016】
伸縮性カバー15は、ゴム芯入り紐11の長さ方向に伸縮可能に繊維糸を編んで形成されている。伸縮性カバー15を形成する繊維糸としては、例えば、綿糸、ポリエステル糸、レーヨン糸やポリウレタン糸が使用される。
【0017】
第1ゴムリング1は、ゴム芯入り紐11の両端部が付き合わされて接着剤21(図3(d)参照)で接合されている接合構造2を備えている。接合構造2は、ゴム芯入り紐11の両端部に形成された固化部分23を備えており、両端部の固化部分23の端面どうしが接着剤21によって接合されている。
【0018】
ゴム芯入り紐11の固化部分23は、ゴム芯入り紐11に固化剤25(図3(a)参照)を付着させてこれを固化することで形成されている。固化剤25は、固化作用成分を含有する溶媒と、当該溶媒に入れられた多孔質粒子とを含んでいる。固化作用成分としては、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース誘導体、多糖類、糖類、グリセリン誘導体、ポリリジン、ポリアリルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアルキルアミン、ポリエチレンイミンなどが使用されてよい。溶媒としては、水が使用される。ポリビニルアルコール及び水は、ゴム芯入り紐における従来の接合構造においても、固化剤の固化作用成分及び溶媒として夫々使用されているものである。
【0019】
更に、有機溶剤系洗浄剤が固化剤25に含められてよい。洗浄剤自体は気化して、固化剤25により形成された固化部分23に細孔もたらす働きがある。有機溶剤系洗浄剤としては、アノン、メタノール、メチルエチルケトン、プロピレンジクロライド、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、n−ヘプタン、アセトン等が使用される。
【0020】
本発明の特徴は、多孔質粒子を固化剤25に含めること、そして、ゴム芯入り紐11の固化部分23に多孔質粒子が含まれていることである。多孔質粒子としては、多孔質ポリマー粒子、多孔質無機粒子、炭粒子、砂礫粒子、これら粒子の任意の混合物などが挙げられるが、本発明の作用効果が得られる限りにおいて、任意の多孔質粒子が使用されてよい。本発明において多孔質粒子の形状は限定されず、多孔質粒子は、例えば、球状や糸状であってよく、また、繊維粉末であってもよい。本発明において、多孔質粒子は微粒子であるのが好ましい。粒子の平均粒径は、例えば50μm以下とされるが、本発明の作用効果が得られる限りにおいて、任意の大きさの多孔質粒子が使用されてよい。
【0021】
本発明に係る多孔質粒子として使用可能な多孔質ポリマー粒子としては、例えば、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(フェニレンオキシド)、又は、ポリ(エーテルスルホン)で形成された多孔質粒子、及び、それらの任意の混合物がある。
【0022】
本発明に係る多孔質粒子として使用可能な多孔質無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、又はジルコニアで形成された多孔質粒子、及び、それらの任意の混合物がある。
【0023】
本発明に係る多孔質粒子として使用可能な炭粒子としては、黒炭、白炭、竹炭、備長炭で形成された炭粒子、及び、それらの任意の混合物がある。
【0024】
本発明に係る多孔質粒子として使用可能な砂礫粒子としては、トルマリン、ゼオライト、花崗岩、貝化石、日光石、珊瑚化石、緑泥石、大谷石、麦飯石などの多孔質の自然石、火山岩や凝灰岩の塊を粉砕し、ふるい分け等して得られた砂礫粒子、及び、それらの任意の混合物がある。
【0025】
ゴム芯入り紐11の両端部の端面を接合するために本発明において使用可能な接着剤21としては、浸透性を有しており、非水溶性の接着剤が使用されるのが好ましく、例えば、シアノアクリレート系の接着剤が使用される。
【0026】
図3(a)乃至(d)は、図1に示す第1ゴムリング1の製造工程の概要を示す説明図である。まず、図3(a)に示すように、長尺のゴム芯入り紐31に、多孔質粒子を含む固化剤25を離間して付着させる。ゴム芯入り紐31において固化剤25を付着させる箇所は、第1ゴムリング1の周長程度離間している。その後、図3(b)に示すように、固化剤25が固まることで、長尺のゴム芯入り紐31に、多孔質粒子を含む固化部分33が離間して形成される。
【0027】
長尺のゴム芯入り紐31に固化部分33が形成された後、図3(c)に示すように、固化部分33にて長尺のゴム芯入り紐31を切断することで、両端部に固化部分23が形成されている、第1ゴムリング1を形成するゴム芯入り紐11が得られる。その後、図3(d)に示すように、ゴム芯入り紐11の一方の端面に接着剤21を塗布した後、ゴム芯入り紐11の両端部を付き合わせる。接着剤21が固まると、第1ゴムリング1が完成する。
【0028】
図3(a)乃至(d)に例示した製造工程では、長尺のゴム芯入り紐31に固化剤25を離間して付着させたが、当該工程を行うことなく、長尺のゴム芯入り紐31を切断して、第1ゴムリング1を形成するゴム芯入り紐11が得られてよい。その後、ゴム芯入り紐11の両端部に固化剤25を付着させる工程が行われる。当該工程は、例えば、保存容器に入った固化剤25にゴム芯入り紐11の両端部を浸漬することでなされてよい。
【0029】
図4は、本発明に係るゴム芯入り紐の接合構造5を有する第2ゴムリング4を示す斜視図である。第2ゴムリング4は、複数のゴム芯入り紐41を編んで形成された編み紐43の両端部が付き合わされて接着剤21で接合されることで形成されている。編み紐43の両端部には、多孔質粒子を含む固化部分51が形成されている。各ゴム芯入り紐41は、先の実施形態の第1ゴムリング1におけるゴム芯入り紐11と同様に構成されている。
【0030】
本実施形態では、3本のゴム芯入り紐41を三つ編みすることで編み紐43が形成されているが、本発明において、編み紐43を構成する複数のゴム芯入り紐41の数とそれらの編み方は限定されない。例えば、編み紐43は、左右編みされた2本のゴム芯入り紐41で構成されてもよい。また、編み紐43の代わりに複数のゴム芯入り紐41を縒って形成された縒り紐を用いて第2ゴムリング4が形成されてもよい。
【0031】
図5(a)乃至(d)は、図4に示す第2ゴムリング4の製造工程の概要を示す説明図である。まず、図5(a)に示すように、長尺の編み紐61に多孔質粒子を含む固化剤25を離間して付着させる。編み紐61において固化剤25を付着させる箇所は、第2ゴムリング4の周長程度離間している。その後、図5(b)に示すように、固化剤25が固まることで、長尺の編み紐61に、多孔質粒子を含む固化部分63が離間して形成される。
【0032】
長尺の編み紐61に固化部分63が形成された後、図5(c)に示すように、固化部分63にて長尺の編み紐61を切断することで、両端部に固化部分51が形成されている、第2ゴムリング4を形成する編み紐43が得られる。その後、図5(d)に示すように、編み紐43の一方の端面に接着剤21を塗布した後、編み紐43の両端部を付き合わせて接合する。
【0033】
図6は、図4に示す第2ゴムリング4の代替的な製造工程の概要を示す説明図である。まず、図6(a)に示すように、長尺の編み紐61に破断可能な帯状の結束部材65を離間して巻き付ける。結束部材65としては、編み紐61に巻着させることができ、且つ、容易に破断可能であるものであればよく、例えば、市販の粘着テープが使用されてよい。編み紐61において結束部材65を巻き付ける箇所は、第2ゴムリング4の周長よりも長く離間している。
【0034】
その後、図6(b)に示すように、結束部材65にて、長尺の編み紐61を破断した後、図6(c)に示すように、得られた編み紐67における少なくとも結束部材65の残部の内側に多孔質粒子を含む固化剤(図示せず)を付着させる。固化剤が固まることで多孔質粒子を含む固化部分69が形成された後、図6(d)に示すように、固化部分69にて編み紐67を切断することで、両端部に固化部分51が形成されており、第2ゴムリング4を形成する編み紐43が得られる。その後、図5(d)を参照して述べた工程と同様に、編み紐43の一方の固化部分51の端面に接着剤21を塗布した後、編み紐43の両端部を付き合わせて接合する。なお、図6(c)に示す工程は、保存容器に入った固化剤25に編み紐67の両端部を浸漬することでなされてよい。
【実施例】
【0035】
本発明の効果を確認するために、本発明に係る接合構造2を有する図1に示した第1ゴムリング1を、上述した製造工程を実行することで作製した。作製した第1ゴムリング1の周長は、略16cmであり、第1ゴムリング1を構成するゴム芯入り紐11は、一辺が略2mmである略正方形の断面を有するゴム芯13を備えていた。
【0036】
第1ゴムリング1の作製に使用された固化剤25は、溶媒として水を、固化作用成分としてポリビニルアルコールを、有機溶剤系洗浄剤としてアセトンを使用した溶液(具体的には、水約50wt%、PVA水溶液(10%)約20wt%、アセトン約30wt%の混合液)に、多孔質ポリマー粒子、多孔質無機粒子、炭粒子、又は、砂礫粒子を加えることで調製された。これらの粒子は、溶液100ml当たり5gの割合で加えられた。多孔質ポリマー粒子としては、ナイロン6多孔質微粒子(平均粒径13μm)(東レ株式会社)を、多孔質無機粒子としては、サイシリア350(粒径約4μm)(富士シリシア化学株式会社)を、炭粒子としては、備長炭粉末及び竹炭粉末の混合物(平均粒径16.72μm)(株式会社増田屋)を、砂礫粒子としては、中華人民共和国阜新市産麦飯石粉末(粒度300メッシュ)を使用した。なお、第1ゴムリング1の作製に使用された接着剤21は、シアノアクリレート系接着剤であった。
【0037】
各種類の多孔質粒子について、第1ゴムリング1のサンプルを10個ずつ作製して、各サンプルについて第1ゴムリング1の接合構造2の接合強度を評価した。更に、固化剤25に多孔質粒子が含まれない点を除いて第1ゴムリング1と同様な構成を有する10個のゴムリングを比較例として作製して、各サンプルについて接合構造の接合強度を評価した。接合強度の評価は、第1ゴムリング1の接合構造又は比較例のゴムリング接合構造における接合された固化部分を分離させるのに要する力を測定することで行った。具体的には、計測軸の先端に子鉤を取り付けたデジタルフォースゲージ(株式会社イマダ)を作業台に固定して、第1ゴムリング1又は比較例のゴムリングのサンプルを子鉤に引っかけてデジタルフォースゲージから離れるように引っ張って、接合されているゴム芯入り紐の両端部を分離させた。デジタルフォースゲージには、第1ゴムリング1又は比較例のゴムリングのサンプルに加えた引っ張り力のピーク値(単位はkgf)が記録された。
【0038】
以下の表1は、以上の試験結果をまとめたものである(表1に記載の値は、上記のピーク値である)。
【表1】
【0039】
表1に示されているように、ゴム芯入り紐の両端部を分離させるために要した力の平均値は、比較例のサンプルでは7.8kgfであり、多孔質ポリマー粒子、多孔質無機粒子、炭粒子、及び砂礫粒子を固化剤に含めたサンプルでは夫々、13.6kgf、13.5kgf、13.2kgf、12.7kgfとなった。多孔質ポリマー粒子、多孔質無機粒子、炭粒子、及び砂礫粒子を固化剤25に加えた場合において、本発明に係る第1ゴムリング1におけるゴム芯入り紐の両端部を分離させるのに要する力は、比較例のゴムリングにおけるゴム芯入り紐の両端部を分離させるのに要する力の約1.6〜1.7倍である。このように、本発明は、ゴムリングにおけるゴム芯入り紐の接合構造の接合強度を従来のゴムリングと比較して著しく向上させることが実際に確認された。
【0040】
上記の実施形態では、本発明を用いてゴム芯入り紐11の両端部が接合されて第1ゴムリング1が形成されており、本発明を用いて編み紐43の両端部が接合されて第2ゴムリング4が形成されている。しかしながら、本発明は、2本のゴム芯入り紐の端部を接合して、これらのゴム芯入り紐を繋げるために使用されてよく、2本の編み紐又は縒り紐の端部を接合して、これらの編み紐又は縒り紐を繋げるために使用されてよいことは明らかである。
【0041】
本発明において、ゴム芯入り紐の接合構造の固化部分に含まれる多孔質粒子の量、或いは、固化剤に含まれる多孔質粒子の量又は割合は、本発明の作用効果が得られるように又は本発明の作用効果が得られる限りにおいて適宜調節されてよいことは明らかである。
【0042】
本発明において、ゴム芯入り紐の接合構造の固化部分に含まれる多孔質粒子、又は、固化剤に含まれる多孔質粒子は、ゴム芯入り紐の伸縮性カバーの繊維の色と同じ色又は似た色に着色されてよい。このように多孔質粒子が着色されることで、ゴム芯入り紐の接合構造において、多孔質粒子の存在を目立たなくすることができる。また、固化剤の溶媒も、ゴム芯入り紐の伸縮性カバーの繊維の色と同じ色又は似た色に着色されてよい。
【0043】
上記説明は、開示されている発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 ゴムリング
11 ゴム芯入り紐
2 接合構造
21 接着剤
23 固化部分
25 固化剤
4 ゴムリング
41 ゴム芯入り紐
43 編み紐
5 接合構造
51 固化部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2017年5月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明は、ゴム芯入り紐の両端部が付き合わされて、又は、2本のゴム芯入り紐の端部が付き合わせされて接着剤で接合されているゴム芯入り紐の接合構造を形成するために、前記ゴム芯入り紐の両端部又は前記2本のゴム芯入り紐の端部に付着させる固化剤であって、固化作用成分を含有する溶媒と、当該溶媒に入れられた多孔質粒子とを含む。多孔質粒子は、多孔質ポリマー粒子、多孔質無機粒子、炭粒子、砂礫粒子、又はこれら粒子の任意の混合物であってよい。固化作用成分はポリビニルアルコールであり、溶媒は水であってよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
ゴム芯入り紐の両端部が付き合わされて、又は、2本のゴム芯入り紐の端部が付き合わせされて接着剤で接合されているゴム芯入り紐の接合構造を形成するために、前記ゴム芯入り紐の両端部又は前記2本のゴム芯入り紐の端部に付着させる固化剤であって、
固化作用成分を含有する溶媒と、当該溶媒に入れられた多孔質粒子とを含む固化剤。