(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-94920(P2018-94920A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】流体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20180525BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
B41J2/175 165
B41J2/01 301
B41J2/01 307
B41J2/175 119
B41J2/175 153
B41J2/175 161
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-233051(P2017-233051)
(22)【出願日】2017年12月5日
(31)【優先権主張番号】15/371,632
(32)【優先日】2016年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン ジュニア.・ジェームス ディー.
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA03
2C056FA10
2C056HA05
2C056HA06
2C056HA07
2C056HA09
2C056HA17
2C056KB15
2C056KC01
2C056KC05
2C056KC22
(57)【要約】
【課題】流体送出装置に取り付けられたチップにおける応力と変形を減らす効力を持つ流体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】流体吐出ヘッドは、少なくとも1つの流体供給口を備えたノーズピースを有する流体供給体を有する。台座は、流体供給口に近いノーズピースの外面から外側に延伸する。半導体チップ取り付け面は、台座の上に形成される。フレキシブル回路接合面は、複数のリブによって形成され、また、台座の外周に近いノーズピースの外面から外側に延伸する。台座の上に取り付けられた半導体チップに対する損傷を減らすための損傷低減構造は、台座とフレキシブル回路接合面の間に設置される。同様に、損傷低減構造は、複数のリブの各隣接対の間に設置される。それぞれの場合において、損傷低減構造は、流体供給体を通ってチップ取り付け面およびその上に取り付けられたチップに伝わる衝撃波によって生じる損傷を隔離および低減する空所であってもよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーズピースを有し、その中に少なくとも1つの流体供給口を形成するよう構成された流体供給体と、
前記少なくとも1つの流体供給口に最も近い前記ノーズピースの外面から外側に延伸するよう構成され、外周縁を有し、且つ前記外周縁内に形成された半導体チップ取り付け面を有する台座と、
前記台座の前記外周縁に隣接する前記外面から外側に延伸するよう構成されたフレキシブル回路接合面と、
前記外周縁と前記フレキシブル回路接合面の間に設置されるよう構成された損傷低減構造と、を含む
流体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記損傷低減構造が、前記外周縁と前記フレキシブル回路接合面を隔離するよう構成された空所である
請求項1に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記損傷低減構造が、耐食性圧縮部材を含む
請求項1または2に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記台座が、対向する側面と対向する端面を有するよう構成され、前記フレキシブル回路接合面が前記台座の前記側面および前記端面のそれぞれに隣接して配置された
請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記フレキシブル回路接合面が、複数のリブを含み、前記損傷低減構造が、前記複数のリブの各隣接対の間に設置された
請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記複数のリブの各隣接対の間に設置されるよう構成された前記損傷低減構造が、空所である
請求項5に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記台座が、対向する側面と対向する端面を有するよう構成され、少なくとも3つのリブが、各側面に隣接して設置され、少なくとも2つのリブが、前記台座の各端面に隣接して設置された
請求項5または6に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記複数のリブが、前記フレキシブル回路接合面を形成するよう構成された実質的に平面の上面を含む
請求項5〜7のいずれか1項に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記複数のリブが、第1長さを有するリブと第2長さを有するリブを含む
請求項5〜8のいずれか1項に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記半導体チップ取り付け面が、ドッグボーン形状である
請求項1〜9のいずれか1項に記載の流体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体吐出ヘッド構造に関するものであり、特に、流体送出装置に取り付けられたチップにおける応力と変形を減らす効力を持つ装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタや気化装置等の流体吐出装置に用いる流体吐出ヘッドは、吐出ヘッドを進歩させるための技術として改良され続けている。廃棄や吐出ヘッド損傷の量が比較的少なく、高収率で製造することのできる低コストで高信頼性の流体吐出ヘッドを提供する新たな技術が常に開発されている。
【0003】
吐出ヘッドの速度と吐出量を増やすために、吐出アクチュエータの数を増やした比較的大きな吐出ヘッドが開発されている。しかしながら、吐出ヘッドのサイズおよび吐出アクチュエータの数が増えると、このような吐出ヘッドに対する耐性向上の要求を満たすことのできる製造装置および技術が必要になる。部品の耐性に僅かなばらつきがあると、適切な吐出ヘッド製品の動作と収率に大きな影響を与える。
【0004】
流体吐出ヘッドの主要構成要素は、チップまたはチップ含有流体吐出アクチュエータ、およびチップに取り付けられたノズルプレートである。チップは、一般的に、シリコンで作られ、その装置表面に堆積された様々なパッシベーション層(passivation layer)、導電金属層、抵抗層、絶縁層、および保護層を含む。熱流体吐出ヘッドは、抵抗層において個々のヒーターが定義され、各ヒーターレジスタは、ノズルプレート内のノズルホールに対応して、吐出ヘッドから対象媒体に向かって流体を加熱および吐出する。流体吐出ヘッドは、気泡ポンプ型の吐出ヘッドを含んでもよい。トップシュータ(top shooter)型の吐出ヘッドは、チップにノズルプレートを取り付け、チップ上にヒーターまたは気泡ポンプのそれぞれに流体を導くための流体チャンバおよび流体供給チャネルがノズルプレート材料または分離厚膜層のいずれかに形成される。トップシュータ型の吐出ヘッドの中央供給設計は、流体をスロットからチャネルおよびチャンバに供給するか、あるいは従来のようにチップの厚さを通して化学的エッチングまたはグリットブラスト(grit blasting)で形成することにより供給する。一般的に、熱硬化型接着剤を使用してノズルプレートを含むチップを熱可塑性体に接合し、流体吐出ヘッド構造を提供する。
【0005】
熱硬化プロセスは、昇温状態で構成要素を1つに固定する。ヒーターチップは、熱膨張係数(coefficient of thermal expansion, CTE)が比較的低く、塑性体は、CTEが比較的高い。構成要素を加熱することにより、一つ一つがそれぞれのCTEに基づいて膨張する。部品が冷却して収縮した時、CTEの高い塑性体は、CTEの低いシリコンヒーターチップよりも大きく収縮するため、チップに熱応力が生じる。チップおよび本体の力−たわみ(ばね定数)特性は、各部品の平衡偏向(equilibrium deflection)を決定する。
【0006】
チップおよび塑性体が冷却した時にチップが熱圧縮する問題を処理するため、セラミック基板をチップに取り付ける。しかしながら、セラミック基板は、実質的に、吐出ヘッドのコストを上げる。チップのビア領域のシリコンブリッジ(silicon bridge)も使用されているが、このようなシリコンブリッジは、チップビア領域に流体流動問題をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
チップの歪みや亀裂の主な要因は、チップと熱可塑性体の間の熱膨張係数の不一致であると思われる。製造中、チップおよび本体が接着硬化サイクルを経る時、構成要素が冷却するにつれてチップに歪みが生じる。したがって、チップの亀裂による製品損失のない改良された吐出ヘッドの構成要素および構造を提供する製造プロセスおよび技術を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記について、ノーズピースを有し、その中に少なくとも1つの流体供給口を形成した流体供給体を有する流体吐出ヘッドを提供する。台座は、少なくとも1つの流体供給口に最も近いノーズピースの外面から外側に延伸する。台座は、外周縁を有し、場合によっては、ドッグボーン(dog-bone)形状である。半導体チップ取り付け面は、外周縁内に形成される。
【0009】
フレキシブル回路接合面も台座の外周縁に隣接するノーズピースの外面から外側に延伸する。ある場合において、台座は、対向する側面と対向する端面を有し、フレキシブル回路接合面は、台座の側面および端面のそれぞれに隣接する。別の場合において、フレキシブル回路接合面は、台座の側面のみに沿って設置されてもよい。
【0010】
台座の外周縁とフレキシブル回路接合面の間に損傷低減構造を設置して、台座に取り付けられた半導体チップに対する損傷を減らす。ある場合において、損傷低減構造は、空所(void space)である。空所は、台座を周囲のフレキシブル回路接合面から隔離するため、フレキシブル回路接合面およびその上に取り付けられたチップに達する前に、流体供給体に影響を与える有害な損傷(例えば、落下により生じる損傷)が低減または除外される。別の場合において、損傷低減構造は、シリコンゴム等の耐食性圧縮部材であってもよい。
【0011】
ある実施形態において、フレキシブル回路接合面は、複数のリブを含む。好ましくは、リブ(またはその一部)は、フレキシブル回路接合面を形成するのに適した実質的に平面の上面を有する。
【0012】
リブの長さと厚さは、周囲のフレキシブル回路接合面から台座の隔離を改善し、同時に、チップおよび流体供給体全般に十分な構造的サポートを提供する要求に応じて、異なってもよい。ある実施形態において、第1長さを有するリブと第2長さを有するリブを含むリブの混合物を使用してもよい。例えば、ある実施形態において、台座は、対向する側面と対向する端面を有し、少なくとも3つのリブは、各側面に隣接して設置され、少なくとも2つのリブは、台座の各端面に隣接して設置される。また、リブは、他のリブに対して異なる角度で配向されてもよい。例えば、流体供給体は、第1リブと、第1リブに対して角度qに配向された第2リブとを含むことができる。角度θは、異なってもよく、ある場合において、0°よりも大きく、180°よりも小さい。別の場合において、θは、45°よりも大きく、135°よりも小さい。
【0013】
台座に向かって延伸するリブは、フレキシブル回路接合面から台座の隔離を維持するために、台座に接触していないのが好ましい。複数のリブの各隣接対の間には、損傷低減構造が設置される。ある場合において、損傷低減構造は、空所である。別の場合において、損傷低減構造は、シリコンゴム等の耐食性圧縮部材であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の実施形態は、流体送出装置に取り付けられたチップにおける応力と変形を減らす。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のさらなる利点については、添付の図面とともに詳細な説明を参照することによって明らかにされるであろう。これらの図面において、同様の参照符号は、図面を通して同様の部材を示す。特徴は、理解しやすくするために誇張してあるが、特徴の相対的な厚さを示す意図はない。
【
図1】先行技術の流体吐出ヘッドの一部の斜視図である。
【
図2】先行技術の流体吐出ヘッドの一部の斜視図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態に係る台座チップ取り付け面を有する流体供給体の斜視図である。
【
図4】台座チップ取り付け面を示す
図3の流体供給体の一部の断面図である。
【
図5】吐出ヘッドのカートリッジ本体内のフィルターおよびフィルター塔を示す
図3の流体供給体の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および
図2は、本体に取り付けられた流体吐出ヘッドによって吐出される流体を提供する先行技術の熱可塑性体10の例を示したものである。簡略化するために、用語「チップ」は、その上にある半導体チップ含有流体吐出装置と、チップに取り付けられ、流体吐出ヘッドをまとめて提供するノズルプレートを含むことを意図する。流体吐出ヘッドの構成要素の詳細は、当業者に周知であるため、ここでは説明を省略する。吐出ヘッドの構成要素のうち、チップ12が最も重要な構成要素である。チップ12は、半導体またはセラミック材料で作られ、本体10と比べて壊れやすい。したがって、流体吐出ヘッドの組み立て中や使用中にチップが損傷しないよう、気を付けなければならない。しかしながら、現在の設計は、チップに対する保護が不十分であるため、チップが損傷しやすい。下記の説明および添付した特許請求の範囲において、用語「損傷(damage)」は、応力を指し、流体吐出ヘッドのチップの性能に悪影響を及ぼす可能性のある熱応力または落下応力、衝撃、振動等を含むことができる。
【0017】
図1を参照すると、チップポケット16または本体10の表面18の凹んだ領域において、チップ12を含む吐出ヘッドを本体10に取り付ける。チップ12は、相対的に小さく、約10〜約100mmの長さ(L)、約3〜約10mmの幅(W)、約200〜約800μの厚さ(T)を有する。チップ12は、チップ12の厚さTを通してエッチングすることによって定義される1つまたはそれ以上の流体供給スロット14を含み、本体10からチップ12の装置表面の吐出アクチュエータに流体を供給する。
図1において、チップ12において3つのスロット14を示してあるが、チップ12は、それ以上またはそれ以下のスロット14を有してもよい。本体10は、例えば、非晶性熱可塑性ポリエーテルイミド(amorphous thermoplastic polyetherimide)材料、ガラス充填の熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂(glass filled thermoplastic polyethylene terephthalate resin)材料、シンジオタクチックポリスチレン含有ガラス繊維(syndiotactic polystyrene containing glass fiber)、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン合金樹脂(polyphenylene ether/polystyrene alloy resin)、およびポリアミド/ポリフェニレンエーテル合金樹脂(polyamide/polyphenylene ether alloy resin)等の高分子材料で作られてもよい。
【0018】
チップは、通常、チップポケット16へ挿入された後に、本体10によって四面が取り囲まれる。例えば、
図1および2において、チップ12は、標準矩形ポケットの中に入った状態で示されている。チップポケット16は、チップ12内のスロット14に対応し、本体10から吐出ヘッドチップ12に流体を供給するためのスロット20を含む。重要なこととして、チップポケット16内のスロット20は、チップ内に形成された供給スロット14と並んだ状態を維持することにより、チップ12の性能を最大化する。その理由から、熱硬化接着剤を用いてチップ12をチップポケット16内の本体10に取り付けて、
図2に示した組み立て構造を提供する。接着剤は、エポキシ接着剤であってもよい。チップポケット16内の接着剤の厚さは、約25μ〜約250μの範囲であってもよい。通常、接着剤を硬化して、チップ12をチップポケット16内の本体10に取り付けるためには、加熱が必要である。
【0019】
本体10およびチップ12は、通常、熱膨張係数(CTE)が異なる。例えば、本体10は、1℃ごとに約42μ/mのCTEを有することができる。一方、チップ12は、1℃ごとに約2〜3μ/mのCTEを有することができる。また、使用した接着剤は、本体10またはチップ12と異なるCTEを有してもよい。異なるCTEの材料は、チップ12を本体10に取り付ける手続き中に重要になる。このプロセスの間、およそ60℃〜80℃の硬化サイクルの温度変化があってもよく、温度変化は、チップ12、本体10、および接着剤の熱膨張を引き起こす。本体10は、チップ12よりも10倍以上高い熱膨張係数を有するため、チップ12および本体10が冷却した時、本体10の収縮は、チップ12の収縮よりも実質的に大きくなる。同様に、接着剤の収縮速度は、本体10またはチップ12の収縮速度によって大きく変わってもよい。1つの構成要素は急速に、または大幅に収縮するが、他の構成要素は、ゆっくりと、またはわずかに収縮するため、本体10の収縮により、チップやノズルプレート等に応力または変形の形で損傷が生じる。
【0020】
以上の理由から、チップ12は、単に製造プロセスによってある程度の応力がかかっている。この固有応力によって、チップが壊れやすくなる。チップ12は、既に応力がかかっているため、応力や衝撃が加わることによって、チップ12に損傷を与え、壊れたり、能力が低下したりする。そのため、製造プロセス中にチップにかかる応力の量を減らすことによって、また、落下や突然の衝撃等によりチップに伝わる応力の量を減らすことによって、チップ12に損傷を与える可能性を減らすための方法および装置が必要である。
【0021】
図3〜
図5を参照すると、本発明の1つの実施形態に係るチップの損傷を減らすために設計された流体吐出ヘッド100を提供する。流体吐出ヘッド100は、ノーズピース104を有し、その中に少なくとも1つの流体供給口106が形成された流体供給体102を含む。台座108は、少なくとも1つの流体供給口106に最も近いノーズピース104の外面から外側に延伸する。台座108は、外周縁を有し、外周縁内に半導体チップ取り付け面110が形成される。 上述した接着剤を使用して、取り付け面110に半導体チップを取り付けてもよい。ある実施形態において、取り付け面110は、ややドッグボーン形状である。この形状は、側面に沿ってチップを取り付ける塑性材料の量を最小限にしながら、端部に幅広のポケットを維持して、腐食防止を行う。チップの長さに沿った狭い領域は、塑性体の強度をチップの強度よりも弱くする。また、接着剤がチップの側面を伝って上昇することにより、チップに応力が生じ、次にノズルプレート内で歪みが生じる可能性も減らす。端部をより幅広くすることによって、より大きなポケット領域に接着剤を分配できるようにもなるため、フレキシブル回路の後ろ側に腐食抑制剤として押し込むことができる。
【0022】
また、フレキシブル回路接合面112は、台座108の外周縁に隣接するノーズピース104の外面から外側に延伸する。いくつかの実施形態において、フレキシブル回路接合面112は、台座の対向する側面にのみ設置される。しかしながら、別の実施形態において、フレキシブル回路接合面112は、台座の対向する側面と対向する端面に設置される。損傷低減構造115は、台座の外周縁とフレキシブル回路接合面の間に設置される。損傷低減構造115は、台座108をフレキシブル回路接合面112から隔離することを目的とする。損傷低減構造115は、また、本体102を介してチップ取り付け面110およびそこに取り付けられたチップに伝わる衝撃力や振動等を制限することによって、台座に取り付けられた半導体チップに生じる損傷を減らす。
【0023】
この特定に場合において、損傷低減構造115は、台座108の外周縁をフレキシブル回路接合面112から隔離する空所または空域である。台座108を周辺構造から分離または隔離することによって、強制的に本体を通して移動させ、その結果、落下や衝撃等が台座に取り付けられたチップに到達する前に低減または除外される。チップは、これらの力によって損傷する可能性が低い。
図1〜2に示した先行技術の構造では、衝撃波等が本体から直接チップおよびチップ取り付け面にチップを接続する接着剤結合に容易に伝わることができる。しかしながら、
図4に最もよく示すように、本体102を流れる衝撃波は、チップ取り付け面110に直接流れることができないため、表面に取り付けられたチップに流れることができない。台座108を周囲の構造から隔離することにより、これらの衝撃波は、チップに向かう1つの経路のみを有する。衝撃波は、その上に取り付けられたチップに到達する前に、台座108を通過しなければならない。この間接的な経路は、チップに対する損傷を大幅に減らし、チップ全体に対する損傷も防ぐことができる。
【0024】
別の実施形態において、台座108の外周縁とフレキシブル回路接合面112の間の空間は、単なる空所ではなくてもよい。その代わり、損傷低減構造115は、フレキシブル回路接合面112から台座108への衝撃力の伝達を制限する圧縮材料であってもよい。この空間を充填してもよいが、チップに作用する力を減らしてチップに損傷を与えないようにすることは、依然として重要である。例えば、損傷低減構造115として用いることのできる1つの材料は、シリコンゴム等の耐食性圧縮部材である。
【0025】
台座108を周囲のフレキシブル回路接合面112から隔離する他に、ある実施形態において、リブ付き構造(ribbed structure)を有する通常は固体の、または連続したフレキシブル回路接合面を置くことによって、チップに対する損傷をさらに減らすことができる。上述したように、チップは、通常、チップポケットに挿入された後、本体が全面を取り囲む。これまで、チップおよびチップポケットは、お互いと実質的に連続接触していた。これによって、衝撃力が非常に容易にチップに伝達される。また、CTEが異なることにより、接着剤接合プロセス中に熱が適用されて、本体がチップよりも速い速度で伸縮するため、チップを損傷する可能性がある。
【0026】
しかしながら、本装置において、ポケットを形成するフレキシブル回路接合面112は、かなりのリブ114を使用して作られる。リブ114は、フレキシブル回路を取り付けるのに便利な位置を提供する。リブの上面を含むリブ114の形状は、異なっていてもよい。しかしながら、リブの上面の少なくとも一部が平面であり、フレキシブル回路をその上に容易に取り付けられるのが好ましい。
【0027】
このリブ付き構造は、本体102からチップ取り付け面110への衝撃力の伝達を減らし、その結果、チップ12自体への衝撃力の伝達を減らすものと思われる。損傷低減構造115は、リブ114の各隣接対の間に設置され、チップ12にさらなる保護を提供することができる。例えば、複数のリブ114の各隣接対の間に設置された損傷低減構造115は、空所であってもよい。
図1および
図2を参照すると、これまで、本体10の膨張は、チップポケットを取り囲む表面18の連続性により、やむを得ず1つの方向に(すなわち、チップポケット16に)膨張した。本体10の伸縮は、チップ12に熱膨張応力をかけることによって、チップ12に損傷を与える傾向にある。しかしながら、
図3〜
図5に示すように、フレキシブル回路接合面112を形成する材料の量が減るため、膨張した材料の強度が下がるものと思われる。チップを保持する塑性体の強度を減らすことにより、チップの強度を支配し、接合プロセス中等の本体が伸縮する度にチップが損傷する可能性を減らす。
【0028】
フレキシブル回路接合面112を形成する材料の量を減らすと上述したような利点があるが、材料を減らしすぎると、問題が生じる可能性がある。例えば、フレキシブル回路接合面112から過度の材料を除外すると、脆くなる可能性があるため、製造中または使用中にフレキシブル回路を十分にサポートすることができないと思われる。また、フレキシブル回路接合面112は、台座108に対してある程度のサポートを提供する。台座108がノーズピース104から完全に隔離されて上に伸び、いかなる周辺構造も有さない場合は、チップに損傷を与える可能性が増えるものと思われる。これらの理由から、最小量の材料で台座108を取り囲むことが推奨される。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも3つのリブが台座108の各側面に隣接して設置され、少なくとも2つのリブが台座108の各端面に隣接して設置される。しかしながら、それ以上またはそれ以下のリブ114を使用してもよい。
【0029】
存在するリブ114の数を変更する他に、リブ114の厚さY、高さおよび長さX、および方向を変えることにより、材料の量を必要に応じて変更しながら、十分な強度を維持することができる。
図4に示すように、リブ114の厚さYは、異なっていてもよく、複数の厚さを使用してフレキシブル回路接合面112を形成することができる。同様に、リブ114の方向が異なっていてもよい。ある実施形態において、第1リブと第2リブの間の角度θは、0°よりも大きく、180°よりも小さい。別の実施形態において、θは、45°よりも大きく、135°よりも小さい。
図4に示した実施形態において、台座108の対向する側に沿って設置されたリブは、台座108の対向する端部に沿って設置されたリブに対して略直角にあるため、θは、およそ90°である。
【0030】
本発明の実施形態において修正および/または変更が可能であることは、上記説明から考慮され、当業者にとって明らかである。したがって、上記記載は、限定するものではなく、単に好ましい実施形態の例示であり、本発明の真の精神および範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して決定されることが、明確に意図される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、流体送出装置に取り付けられたチップにおける応力と変形を減らすことのできる流体吐出ヘッドに関するものである。
【符号の説明】
【0032】
10 本体
12 チップ
14 スロット
16 チップポケット
18 表面
20 スロット
100 流体吐出ヘッド
102 流体供給体
104 ノーズピース
106 流体供給口
108 台座
110 取り付け面
114 リブ
115 損傷低減構造
T、Y 厚さ
L、X 長さ
W 幅
θ 角度