特開2018-94977(P2018-94977A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-94977(P2018-94977A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20180525BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
   B60C11/12 D
   B60C11/03 100A
   B60C11/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-239065(P2016-239065)
(22)【出願日】2016年12月9日
(11)【特許番号】特許第6312783号(P6312783)
(45)【特許公報発行日】2018年4月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡一
(57)【要約】
【課題】 スノー操縦安定性能を維持しつつ、ドライ制動性能を向上させることができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 空気入りタイヤにおいては、陸部は、両端部のうち一端部のみが周溝に連接する陸溝を備え、少なくとも一つの周溝の一方側に連接される陸溝の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きと、当該周溝の他方側に連接される陸溝の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きとは、同じ向きである。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って延びる複数の周溝と前記複数の周溝に区画される複数の陸部とを有するトレッド部を備え、
前記陸部は、両端部のうち一端部のみが前記周溝に連接する陸溝を備え、
少なくとも一つの前記周溝の一方側に連接される前記陸溝の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きと、当該周溝の他方側に連接される前記陸溝の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きとは、同じ向きである、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記陸溝は、一端部側に、屈曲部を一つ有するように形成される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記周溝の一方側に連接される前記陸溝の前記屈曲部は、タイヤ周方向の一方側に向けて凸状となるように形成され、
当該周溝の他方側に連接される前記陸溝の前記屈曲部は、タイヤ周方向の他方側に向けて凸状となるように形成される、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記周溝間に配置される前記陸部に配置される前記陸溝の前記屈曲部は、前記陸部のタイヤ幅方向の端部領域に配置される、請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周溝に区画される複数の陸部を備える空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤとして、タイヤ周方向に沿って延びる複数の周溝に区画される複数の陸部を備える空気入りタイヤが、知られている。そして、陸部が陸溝を多数備えているため、タイヤのアイス操縦安定性能が優れている(例えば、特許文献1及び2)。
【0003】
ところで、特許文献1及び2に係る空気入りタイヤにおいては、陸溝が陸部のタイヤ幅方向全域に亘って延びているため、陸部のタイヤ幅方向の端部領域の剛性が小さくなる。したがって、特定の方向の力に対して、陸部のタイヤ幅方向の端部領域の変形が大きくなるため、周溝の幅が大きくなり過ぎることもある。これにより、特に、タイヤのドライ制動性能が劣ってしまうため、斯かる空気入りタイヤをオールシーズンで使用することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第5665844号公報
【特許文献2】特開第5899287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、課題は、スノー操縦安定性能を維持しつつ、ドライ制動性能を向上させることができる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
空気入りタイヤは、タイヤ周方向に沿って延びる複数の周溝と前記複数の周溝に区画される複数の陸部とを有するトレッド部を備え、前記陸部は、両端部のうち一端部のみが前記周溝に連接する陸溝を備え、少なくとも一つの前記周溝の一方側に連接される前記陸溝の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きと、当該周溝の他方側に連接される前記陸溝の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きとは、同じ向きである。
【0007】
また、空気入りタイヤにおいては、前記陸溝は、一端部側に、屈曲部を一つ有するように形成される、という構成でもよい。
【0008】
また、空気入りタイヤにおいては、前記周溝の一方側に連接される前記陸溝の前記屈曲部は、タイヤ周方向の一方側に向けて凸状となるように形成され、当該周溝の他方側に連接される前記陸溝の前記屈曲部は、タイヤ周方向の他方側に向けて凸状となるように形成される、という構成でもよい。
【0009】
また、空気入りタイヤにおいては、前記周溝間に配置される前記陸部に配置される前記陸溝の前記屈曲部は、前記陸部のタイヤ幅方向の端部領域に配置される、という構成でもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上の如く、空気入りタイヤは、スノー操縦安定性能を維持しつつ、ドライ制動性能を向上させることができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部展開図である。
図2図2は、図1のII領域拡大図である。
図3図3は、比較例に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部拡大展開図であって、制動時にかかる力の説明図である。
図4図4は、図1及び図2に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部拡大展開図であって、制動時にかかる力の説明図である。
図5図5は、図1のV領域拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、図1図5を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0013】
図1(以下の図も同様)において、第1の方向D1は、タイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ回転軸周りの方向であるタイヤ周方向D2である。なお、タイヤ幅方向D1の一方向(図1の右方向)は、第1幅方向D11といい、他方向(図1の左方向)は、第2幅方向D12という。また、タイヤ周方向D2の一方向(図1の上方向)は、第1周方向D21といい、他方向(図1の下方向)は、第2周方向D22という。
【0014】
そして、タイヤ径方向は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の直径方向である。また、タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ幅方向D1の中心に位置する面であり、タイヤ子午面は、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード部(図示していない)と、各ビード部からタイヤ径方向の外側に延びるサイドウォール部(図示していない)と、一対のサイドウォール部のタイヤ径方向の外端部に連接され、外表面がトレッド面を構成するトレッド部2とを備えている。なお、タイヤ1は、リム(図示していない)に装着されており、タイヤ1の内部は、空気により加圧されている。
【0016】
トレッド部2は、タイヤ周方向D2に沿って延びる複数の周溝3,4と、複数の周溝3,4に区画される複数の陸部5,6とを備えている。本実施形態においては、周溝3,4は、三つ備えられており、陸部5,6は、四つ備えられている。なお、周溝3,4及び陸部5,6の数量は、斯かる構成に限られない。また、周溝3,4は、タイヤ周方向D2に沿って延びる溝であって、路面に接地する接地面に配置される溝である。
【0017】
タイヤ幅方向D1の最外側に配置される周溝3は、ショルダー周溝3といい、ショルダー周溝3よりもタイヤ幅方向D1の内側に配置される周溝4は、センター周溝4という。また、ショルダー周溝3よりもタイヤ幅方向D1の外側に配置される陸部5は、ショルダー陸部5といい、ショルダー周溝3及びセンター周溝4の間に配置される陸部6は、センター陸部6という。なお、本実施形態においては、センター周溝4は、タイヤ赤道面S1上に配置されている。
【0018】
陸部5,6は、タイヤ周方向D2と交差するように延びる複数の陸溝7を備えている。陸溝7は、周溝3,4よりも幅狭である細溝と、細溝よりも幅狭であるサイプとを備えている。例えば、細溝は、幅が1.0mm以上である凹状部のことであり、サイプは、幅が1.0mm未満である凹状部のことである。このように、多数の陸溝7が備えられているため、タイヤ1のスノー操縦安定性能が優れている。
【0019】
ここで、周溝3,4及び陸部5,6に対する陸溝7の構成について、説明する。まず、センター周溝4及びセンター陸部6,6について、図2図4を参照しながら、説明する。
【0020】
図2に示すように、センター陸部6は、タイヤ幅方向D1の外側に配置される端部領域A1,A2と、端部領域A1,A2の間に配置される中央領域A3と、に区画される。なお、端部領域A1,A2及び中央領域A3は、タイヤ幅方向D1で均等に(1/3ずつに)区画されている。なお、タイヤ幅方向D1の内側の端部領域A1は、内側端部領域A1といい、タイヤ幅方向D1の外側の端部領域A2は、外側端部領域A2という。
【0021】
周溝3,4間に配置されるセンター陸部6に備えられる陸溝7においては、一端部は、周溝3,4に連接しており、他端部は、周溝4,3から離れている。即ち、陸溝7は、センター陸部6のタイヤ幅方向D1の一部に配置されている。そして、陸溝7の一端部が周溝3,4に連接されることで、陸溝7は、溝としての機能(例えば、排水機能、エッジ機能)を発揮する。
【0022】
ところで、陸溝7の一端部が周溝3,4と連接されることで、陸溝7の一端部側の剛性が小さくなる。そこで、陸溝7は、周溝3,4に連接されている一端部側に、屈曲部7aを一つ備えている。これにより、陸溝7の一端部側の剛性が小さくなることを抑制している。したがって、センター陸部6のタイヤ幅方向D1において、陸溝7に起因する剛性差が生じることを抑制することができている。
【0023】
陸溝7の屈曲部7aは、湾曲状(曲線状)に形成されており、陸溝7は、屈曲部7aのタイヤ幅方向D1の両側に直線状に延びる直線部7b,7cを備えている。なお、周溝3,4に連接する直線部7bは、第1直線部7bといい、周溝4,3から離れている直線部7cは、第2直線部7cという。
【0024】
陸溝7の屈曲部7aは、センター陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置されている。具体的には、ショルダー周溝3に連接されている陸溝7の屈曲部7aは、外側端部領域A2に配置され、センター周溝4に連接されている陸溝7の屈曲部7aは、内側端部領域A1に配置されている。そして、第2直線部7cの端部は、タイヤ幅方向D1において、端部領域A1,A2まで延びている。
【0025】
このように、屈曲部7aが、センター陸部6の両方の端部領域A1,A2に配置されている。これにより、センター陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2の剛性が大きくなると共に、センター陸部6のタイヤ幅方向D1における剛性差が生じることを抑制することができている。
【0026】
なお、屈曲部7aのタイヤ幅方向D1の位置は、屈曲点7dの位置とする。該屈曲点7dは、屈曲部7aが湾曲形状である場合には、陸溝7のうち、凸状の内側となる端縁上の位置で、且つ、屈曲部7aのうち、タイヤ周方向D2の最端位置の点である。また、屈曲点7dは、屈曲部7aが屈折形状(直線が折れ曲った形状)である場合には、陸溝7の凸状の内側となる端縁上の屈折位置(二つの直線の連結位置)の点である。
【0027】
また、センター周溝4のタイヤ幅方向D1の一方側(即ち、第1幅方向D11側の端縁)に連接される陸溝7の屈曲部7aは、第2周方向D22側に向けて凸状となるように形成されている。また、センター周溝4のタイヤ幅方向D1の他方側(即ち、第2幅方向D12側の端縁)に連接される陸溝7の屈曲部7aは、第1周方向D21側に向けて凸状となるように形成されている。
【0028】
したがって、センター周溝4の第1幅方向D11側の近傍に配置される屈曲部7aと、センター周溝4の第2幅方向D12側の近傍に配置される屈曲部7aとは、反対側に向けて凸状となるように形成されている。これにより、タイヤ周方向D2の特定の方向の力に対して、センター周溝4の剛性が小さくなることを抑制することができる。
【0029】
また、センター周溝4の第1幅方向D11側の端縁に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3と、センター周溝4の第2幅方向D12側の端縁に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD4とは、同じ向きである。具体的には、図2の破線で示しているように、それぞれの傾斜する向きD3,D4は、図2において、左上がり(右下がり)の向きである。なお、「傾斜する向きが同じ」とは、タイヤ幅方向D1に対する傾斜角度が異なっていても、同じ向きであれば含まれる。
【0030】
ここで、斯かる構成の作用について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0031】
まず、図3に示すように、比較例に係るタイヤにおいては、図3の破線で示しているように、センター周溝4に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD5,D6は、異なっている。具体的には、第1幅方向D11側の陸溝7の端部の傾斜する向きD5は、左上がりの向きであり、第2幅方向D12側の陸溝7の端部の傾斜する向きD6は、右上がりの向きである。
【0032】
そして、例えば、比較例に係るタイヤが、ドライ路面に対して制動する時に、タイヤ回転方向と反対側である第1周方向D21の力を受けると、陸溝7は、センター周溝4の幅を広げるように(図3における二点鎖線矢印の方向に)変形する。これにより、ドライ制動性能が低下してしまう。
【0033】
それに対して、図4に示すように、本実施形態に係るタイヤ1においては、センター周溝4に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きは、それぞれ同じである。そして、同様に、本実施形態に係るタイヤ1が、ドライ路面に対して制動する時に、第1周方向D21の力を受けると、陸溝7は、センター周溝4の幅を維持するように(図4における二点鎖線矢印の方向に)変形する。これにより、比較例に対して、ドライ制動性能を向上させることができる。
【0034】
次に、第1幅方向D11側のショルダー周溝3及び陸部5,6に対する陸溝7の構成について、図5を参照しながら、説明する。
【0035】
図5に示すように、ショルダー陸部5に備えられる陸溝7においては、タイヤ幅方向D1の内側に配置される一端部は、ショルダー周溝3に連接している。そして、陸溝7の一端部がショルダー周溝3に連接されることで、陸溝7は、溝としての機能(例えば、排水機能、エッジ機能)を発揮する。
【0036】
そして、ショルダー周溝3に連接されるショルダー陸部5の陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD7と、ショルダー周溝3に連接されるセンター陸部6の陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD8とは、同じ向きである。具体的には、図5の破線で示しているように、それぞれの傾斜する向きD7,D8は、図2において、左上がり(右下がり)の向きである。
【0037】
これにより、タイヤ1がドライ路面に対して制動する時に、ショルダー周溝3が幅を広げるように変形することを抑制することができる。これにより、ドライ制動性能を向上させることができる。なお、ショルダー周溝3がドライ路面の旋回時にも影響するため、ドライ旋回性能も向上させることができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、センター周溝4に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3,D4と、ショルダー周溝3に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD7,D8とは、同じ向きである。即ち、各周溝3,4に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3,D4,D7,D8は、全て同じ向きである。
【0039】
また、ショルダー周溝3に連接されるショルダー陸部5の陸溝7の屈曲部7aは、第2周方向D22側に向けて凸状となるように形成されている。また、ショルダー周溝3に連接されるセンター陸部6の陸溝7の屈曲部7aは、第1周方向D21側に向けて凸状となるように形成されている。
【0040】
したがって、ショルダー陸部5の屈曲部7aと、センター陸部6の屈曲部7aとは、反対側に向けて凸状となるように形成されている。これにより、タイヤ周方向D2の特定の方向の力に対して、ショルダー周溝3の剛性が小さくなることを抑制することができる。
【0041】
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向D2に沿って延びる複数の周溝3,4と前記複数の周溝3,4に区画される複数の陸部5,6とを有するトレッド部2を備え、前記陸部6は、両端部のうち一端部のみが前記周溝3,4に連接する陸溝7を備え、少なくとも一つの前記周溝3,4の一方側に連接される前記陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3,D7と、当該周溝3,4の他方側に連接される前記陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD4,D8とは、同じ向きである。
【0042】
斯かる構成によれば、少なくとも一つの周溝3,4の一方側に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3,D7と、当該周溝3,4の他方側に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD4,D8とは、同じ向きである。これにより、タイヤ回転方向に関わらず、ドライ路面の制動時に、周溝3,4の幅が広がるように変形することを抑制することができる。
【0043】
しかも、陸溝7の両端部のうち一端部のみが周溝3,4に連接しているため、周溝3,4間に配置される陸部6においては、タイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2の剛性が大きくなる。したがって、ドライ路面の制動時に、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2が変形することを抑制することができることも起因して、タイヤ1のドライ制動性能を向上させることができる。なお、陸溝7の一端部が、周溝3,4に連接しているため、陸溝7は、溝としての機能(排水機能、エッジ機能)を発揮することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記陸溝7は、一端部側に、屈曲部7aを一つ有するように形成される、という構成である。
【0045】
斯かる構成によれば、陸溝7の一端部が周溝3,4に連接することで、剛性が小さくなることに対して、陸溝7は、該一端部側に、屈曲部7aを一つ有している。これにより、屈曲部7aの剛性が大きいため、陸溝7の一端部側の剛性が小さくなることを抑制することができる。したがって、周溝3,4の剛性が小さくなることを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記周溝3,4の一方D11側に連接される前記陸溝7の前記屈曲部7aは、タイヤ周方向D2の一方D22側に向けて凸状となるように形成され、当該周溝3,4の他方D12側に連接される前記陸溝7の前記屈曲部7aは、タイヤ周方向D2の他方D21側に向けて凸状となるように形成される、という構成である。
【0047】
斯かる構成によれば、周溝3,4の一方D11側に連接される陸溝7の屈曲部7aは、タイヤ周方向D2の一方D22側に向けて凸状となるように形成され、当該周溝3,4の他方D12側に連接される陸溝7の屈曲部7aは、タイヤ周方向D2の他方D21側、即ち、反対側に向けて凸状となるように形成されている。これにより、タイヤ周方向D2の特定の方向の力に対して、周溝3,4の剛性が小さくなることを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記周溝3,4間に配置される前記陸部6に配置される前記陸溝7の前記屈曲部7aは、前記陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置される、という構成である。
【0049】
斯かる構成によれば、陸溝7の屈曲部7aが、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置されているため、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2の剛性が大きくなる。これにより、周溝3,4の剛性が小さくなることをさらに抑制することができる。
【0050】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0051】
上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、陸溝7は、屈曲部7aを一つ有するように形成される、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、陸溝7は、屈曲部7aを複数備えている、という構成でもよい。また、例えば、陸溝7は、屈曲部7aを備えず、直線部のみからなる、という構成でもよい。
【0052】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、周溝3,4の一方側に連接される陸溝7の屈曲部7aと他方側に連接される陸溝7の屈曲部7aは、タイヤ周方向D2で異なる方向に向けて凸状となるように形成される、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、周溝3,4の一方側に連接される陸溝7の屈曲部7aと他方側に連接される陸溝7の屈曲部7aは、タイヤ周方向D2で同じ方向に向けて凸状となるように形成される、という構成でもよい。
【0053】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、陸溝7の屈曲部7aは、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置される、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、陸溝7の屈曲部7aは、陸部6のタイヤ幅方向D1の中央領域A3に配置される、という構成でもよい。
【0054】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1は、全ての周溝3,4において、周溝3,4の一方側に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3,D7と、当該周溝3,4の他方側に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD4,D8とは、同じ向きである、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、一つの周溝3,4のみが、斯かる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…空気入りタイヤ、2…トレッド部、3…ショルダー周溝、4…センター周溝、5…ショルダー陸部、6…センター陸部、7…陸溝、7a…屈曲部、7b…第1直線部、7c…第2直線部、7d…屈曲点、A1…内側端部領域、A2…外側端部領域、A3…中央領域、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ周方向、D11…第1幅方向、D12…第2幅方向、D21…第1周方向、D22…第2周方向、S1…タイヤ赤道面
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2017年8月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って延びる複数の周溝と前記複数の周溝に区画される複数の陸部とを有するトレッド部を備え、
前記陸部は、両端部のうち一端部のみが前記周溝に連接する陸溝を備え、
少なくとも一つの前記周溝の一方側に連接される前記陸溝の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きと、当該周溝の他方側に連接される前記陸溝の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きとは、同じ向きである、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記陸溝は、一端部側に、屈曲部を一つ有するように形成される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記周溝の一方側に連接される前記陸溝の前記屈曲部は、タイヤ周方向の一方側に向けて凸状となるように形成され、
当該周溝の他方側に連接される前記陸溝の前記屈曲部は、タイヤ周方向の他方側に向けて凸状となるように形成される、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記周溝間に配置される前記陸部に配置される前記陸溝の前記屈曲部は、前記陸部のタイヤ幅方向の端部領域に配置される、請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記周溝間に配置される前記陸部は、前記屈曲部を有する前記陸溝を複数備え、
前記屈曲部の少なくとも一つは、前記陸部のタイヤ幅方向の一方側の端部領域に配置され、
前記屈曲部の少なくとも一つは、前記陸部のタイヤ幅方向の他方側の端部領域に配置される、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
【特許文献1】特許第5665844号公報
【特許文献2】特許第5899287号公報
【手続補正書】
【提出日】2017年12月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って延びる複数の周溝と前記複数の周溝に区画される複数の陸部とを有するトレッド部を備え、
前記複数の周溝は、タイヤ周方向に対して平行に延びる第1周溝と、前記第1周溝よりもタイヤ幅方向の一方側に配置される第2周溝と、を備え、
前記複数の陸部は、前記第1周溝と前記第2周溝との間に配置される第1陸部と、前記第1周溝のタイヤ幅方向の他方側に配置される第2陸部と、を備え、
前記第1陸部は、タイヤ幅方向の他方側の端部のみが前記第1周溝に連接する第1陸溝を備え、前記第2陸部は、タイヤ幅方向の一方側の端部のみが前記第1周溝に連接する第2陸溝を備え
第1周溝のタイヤ幅方向の一方側に連接される前記第1陸溝のタイヤ幅方向の他方側の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きと、当該第1周溝のタイヤ幅方向の他方側に連接される前記第2陸溝のタイヤ幅方向の一方側の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きとは、同じ向きであり、
前記第1陸部は、タイヤ幅方向の一方側の端部のみが前記第2周溝に連接する第3陸溝を備え、
前記第1陸溝は、前記第1陸溝のタイヤ幅方向の他方側に、屈曲部を一つ有するように形成され、前記第3陸溝は、前記第3陸溝のタイヤ幅方向の一方側に、屈曲部を一つ有するように形成され、
前記第1陸部は、タイヤ幅方向で均等に区画される一対の端部領域と中央領域とを備え、
前記第1陸溝の前記屈曲部は、前記第1陸部のタイヤ幅方向の他方側の前記端部領域に配置され、前記第3陸溝の前記屈曲部は、前記第1陸部のタイヤ幅方向の一方側の前記端部領域に配置され、
前記第1陸溝の前記屈曲部は、タイヤ周方向の一方側に向けて凸状となるように形成され、前記第3陸溝の前記屈曲部は、タイヤ周方向の他方側に向けて凸状となるように形成される、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1陸溝のタイヤ幅方向の一方側の端部は、前記第1陸部のタイヤ幅方向の一方側の前記端部領域に配置され、前記第3陸溝のタイヤ幅方向の他方側の端部は、前記第1陸部のタイヤ幅方向の他方側の前記端部領域に配置される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2陸溝は、タイヤ幅方向の一方側に、屈曲部を一つ有するように形成され、
前記第2陸溝の前記屈曲部は、タイヤ周方向の他方側に向けて凸状となるように形成される、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1陸溝において、タイヤ幅方向の一方側の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きと、タイヤ幅方向の他方側の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きとは、反対の向きであり、
前記第3陸溝において、タイヤ幅方向の一方側の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きと、タイヤ幅方向の他方側の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きとは、反対の向きである、請求項1〜3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1陸溝と前記第3陸溝とは、タイヤ周方向で重なっている、請求項1〜4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。