特開2018-95093(P2018-95093A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-95093(P2018-95093A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20180525BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
   B60C11/01 B
   B60C11/13 B
   B60C11/13 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-242068(P2016-242068)
(22)【出願日】2016年12月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷田 弘到
(57)【要約】
【課題】タイヤ周方向に延びる細溝がトレッドのショルダー陸部に形成されていて、耐溝底クラック性、耐テア性及び耐偏摩耗性に優れる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ周方向に延びる細溝3がトレッド10のショルダー陸部に形成された空気入りタイヤにおいて、細溝3の溝底部に、トレッドセンター側の溝壁を窪ませてなる内側凹曲面41と、トレッド端TE側の溝壁を窪ませてなる外側凹曲面42とが形成されていて、内側凹曲面41と外側凹曲面42とを含む前記溝底部の内面が、タイヤ子午線断面において単一の円弧により形成されており、該円弧の曲率半径Rが細溝の開口部の幅Wと同じかそれよりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる細溝がトレッドのショルダー陸部に形成された空気入りタイヤにおいて、
前記細溝の溝底部に、トレッドセンター側の溝壁を窪ませてなる内側凹曲面と、トレッド端側の溝壁を窪ませてなる外側凹曲面とが形成されていて、
前記内側凹曲面と前記外側凹曲面とを含む前記溝底部の内面が、タイヤ子午線断面において単一の円弧により形成されており、
前記円弧の曲率半径が前記細溝の開口部の幅と同じかそれよりも大きいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記円弧の曲率半径が前記細溝の開口部の幅よりも大きい請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記円弧の中心点が、前記細溝の幅中央位置よりもトレッドセンター側に位置する請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記円弧の中心点から前記細溝の幅中央位置までの距離が、前記細溝の開口部の幅Wの0.5倍以下である請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記トレッドの表面から前記溝底部に至るまでの深さが、前記ショルダー陸部に面した主溝の深さと同じかそれよりも大きい請求項1〜4いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ周方向に延びる細溝がトレッドのショルダー陸部に形成された空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ周方向に延びる細溝がトレッドのショルダーリブ(ショルダー陸部の一例)に形成された空気入りタイヤが公知である。ショルダーリブは、該細溝によって、トレッドセンター側のメインリブと、トレッド端側の犠牲リブとに区画される。このように構成されたタイヤでは、犠牲リブに摩耗を集中させることができるため、メインリブの摩耗が抑えられて耐偏摩耗性が向上する。かかる細溝は、ディフェンスグルーヴとも呼ばれ、主としてトラックやバスなどに用いられる重荷重用の空気入りタイヤに形成される。
【0003】
ところで、縁石にタイヤが乗り上げるなどしてショルダー陸部が大きな入力を受けると、細溝の溝底部に歪みが局所的に集中してクラックを生じることがある。これに対し、特許文献1〜3には、細溝の断面を丸底フラスコ形状にすることで、溝底クラックの発生を抑える手法が開示されている。この手法によれば、細溝の溝底部が開口部よりも幅広で且つ丸みを帯びた形状となるので、溝底部に作用した歪みが分散しやすく、耐溝底クラック性が向上する。
【0004】
しかし、細溝を丸底フラスコ形状に形成した場合であっても、その溝底部のサイズが相応に大きくなければ、歪みを十分に分散させることができない。また、細溝の溝底部の内面は、曲率半径が異なる複数の円弧を連ねて形成されているので、その円弧の継ぎ目に歪みが局所的に集中する恐れがある。かかる観点から、本発明者は、耐溝底クラック性に関して更なる改善の余地を見出した。なお、細溝の溝底クラックは、犠牲リブが引き裂かれるようにして千切れる、いわゆるテアの起点になりうることから、耐溝底クラック性の改善は耐テア性の向上にも役立つ。
【0005】
また、細溝を設けていてもメインリブが局所的な偏摩耗を生じることがあるため、耐偏摩耗性を更に改善する余地があった。本発明者が調査したところによれば、メインリブのトレッド端側エッジで接地圧が高くなる傾向にあり、それに起因してメインリブが偏摩耗を生じることが判明した。例えば特許文献2(図1,2)や特許文献3(図2)では、細溝の溝底部が、トレッド端側となる片側の溝壁だけを窪ませて形成されており、かかる構成では、上記のメインリブの接地圧分布に起因した局所的な偏摩耗を抑制できないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/111582号
【特許文献2】特開2001−260612号公報
【特許文献3】特開平3−7604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ周方向に延びる細溝がトレッドのショルダー陸部に形成されていて、耐溝底クラック性、耐テア性及び耐偏摩耗性に優れる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる細溝がトレッドのショルダー陸部に形成された空気入りタイヤにおいて、前記細溝の溝底部に、トレッドセンター側の溝壁を窪ませてなる内側凹曲面と、トレッド端側の溝壁を窪ませてなる外側凹曲面とが形成されていて、前記内側凹曲面と前記外側凹曲面とを含む前記溝底部の内面が、タイヤ子午線断面において単一の円弧により形成されており、前記円弧の曲率半径が前記細溝の開口部の幅と同じかそれよりも大きいものである。
【0009】
かかる構成によれば、細溝の溝底部は、その細溝の開口部よりも幅広で且つ丸みを帯びた形状となる。しかも、細溝の溝底部の内面が単一の円弧により形成されているため、歪みが局所的に集中しやすい箇所が溝底部に形成されない。更に、上記円弧の曲率半径が細溝の開口部の幅と同じかそれよりも大きいことにより、溝底部のサイズが相応に大きく確保される。その結果、ショルダー陸部が大きな入力を受けた際に、細溝の溝底部に作用する歪みを効果的に分散させて、優れた耐溝底クラック性を発揮することができる。
【0010】
上記のように、このタイヤによれば、細溝における溝底クラックの発生を良好に抑制でき、延いてはテアの起点の発生を抑制できることになるため、耐テア性に優れる。また、トレッドセンター側の溝壁を窪ませてなる内側凹曲面が溝底部に形成されているので、メインリブのトレッド端側エッジの接地圧を低め、該メインリブにおける局所的な偏摩耗を抑制し、優れた耐偏摩耗性を発揮することができる。
【0011】
細溝の溝底部のサイズを適度に大きくする観点から、前記円弧の曲率半径が前記細溝の開口部の幅よりも大きいことが好ましい。
【0012】
前記円弧の中心点が、前記細溝の幅中央位置よりもトレッドセンター側に位置するものが好ましい。かかる構成によれば、円弧の中心点が細溝の幅中央位置にある場合と比べて、細溝の溝底部におけるトレッド端側の窪みが小さくなるとともに、トレッドセンター側の窪みが大きくなる。そのため、外側凹曲面による犠牲リブの剛性低下を抑えて、より優れた耐テア性を発揮できる。また、メインリブのトレッド端側エッジの接地圧を良好に低めて、該メインリブにおける局所的な偏摩耗を抑制し、より優れた耐偏摩耗性を発揮できる。
【0013】
前記円弧の中心点から前記細溝の幅中央位置までの距離が、前記細溝の開口部の幅Wの0.5倍以下であるものが好ましい。これにより、単一の円弧で形成された溝底部の内面とトレッドセンター側の溝壁とを繋ぐ部分が鋭角状に角張らないため、耐溝底クラック性を高めるうえで都合が良い。
【0014】
前記トレッドの表面から前記溝底部に至るまでの深さが、前記ショルダー陸部に面した主溝の深さと同じかそれよりも大きいものが好ましい。かかる構成によれば、トレッドの摩耗末期に至るまで細溝の溝底部が表面に露出せず、優れた耐溝底クラック性を良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る空気入りタイヤのトレッドの一例を概略的に示すタイヤ子午線断面図
図2図1の要部を示す拡大図
図3】本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤにおける細溝のタイヤ子午線断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の空気入りタイヤTのトレッド10を概略的に示す。図2は、図1の破線枠により囲まれた要部を拡大して示す。
【0017】
この空気入りタイヤTは、一般的な空気入りタイヤと同様に、図示しない一対のビードと、そのビードからタイヤ径方向外側へ延びた一対のサイドウォールとを有しており、トレッド10は、そのサイドウォールの各々のタイヤ径方向外側端に連なるようにして設けられている。また、一対のビードの間にはトロイド状に延びるカーカスが設けられ、そのカーカスを補強するベルトなどの補強部材がトレッド10に埋設されているが、それらの図示は省略している。
【0018】
トレッド10にはタイヤ周方向に延びる複数の主溝が形成され、本実施形態では4本の主溝11〜14が形成されている。トレッド10は、その複数の主溝によって、ショルダー陸部20を含む複数の陸部に区画されている。ショルダー陸部20は、タイヤ幅方向最外側に位置するショルダー主溝11,14とトレッド端TEとの間に位置する。本実施形態では、ショルダー陸部20が、タイヤ周方向に連続して延びるショルダーリブとして設けられているが、これに限られない。
【0019】
このタイヤTでは、タイヤ周方向に延びる細溝3がトレッド10のショルダー陸部20に形成されている。細溝3は、タイヤ周方向に沿って直線状またはジグザグ状に連続して延在している。細溝3の深さD1は、例えばショルダー主溝11,14の深さdの0.3〜1.5倍の範囲である。細溝3は、トレッド10の表面においてショルダー主溝11,14よりも細く形成され、その開口部の幅Wは、例えば0.3〜5.0mmの範囲である。細溝3は、片側のショルダー陸部20のみに設けても構わないが、優れた耐偏摩耗性を発揮するうえで両側のショルダー陸部20に設けることが好ましい。
【0020】
ショルダー陸部20は、細溝3によって、トレッドセンターTC側のメインリブ21と、トレッド端TE側の犠牲リブ22とに区画されている。細溝3は、ショルダー陸部20のトレッド端TEの近傍部に位置し、メインリブ21は犠牲リブ22よりも幅広に設けられている。細溝3は、タイヤ子午線断面において丸底フラスコ形状を呈し、その溝底部は、細溝3の開口部よりも幅広で且つ丸みを帯びた形状となる。
【0021】
図2に拡大して示すように、細溝3の溝底部には、トレッドセンターTC側の溝壁を窪ませてなる内側凹曲面41と、トレッド端TE側の溝壁を窪ませてなる外側凹曲面42とが形成されている。内側凹曲面41は、タイヤ幅方向内側に窪んだ断面円弧状の湾曲面により形成され、外側凹曲面42は、タイヤ幅方向外側に窪んだ断面円弧状の湾曲面により形成されている。内側凹曲面41及び外側凹曲面42は、いずれもタイヤ周方向に沿って環状に延設されている。
【0022】
細溝3の溝底部は、タイヤ子午線断面において上向きランドルト環の形状をなす内面を有する。該内面は、内側凹曲面41と、外側凹曲面42と、それらに挟まれた細溝3の底面とが連なって構成されている。この細溝3では、内側凹曲面41と外側凹曲面42を含む溝底部の内面が、タイヤ子午線断面において単一の円弧により形成されている。図2において、Rは該円弧の曲率半径であり、Cは該円弧の中心点である。この円弧の曲率半径Rは細溝3の開口部の幅Wと同じかそれよりも大きく、曲率半径Rと幅WとがR≧Wの関係を満たす。
【0023】
このタイヤTでは、細溝3の溝底部の内面が、複数の円弧を連ねて形成されておらず、上記のような単一の円弧によって形成されているため、歪みが局所的に集中しやすい箇所が溝底部に形成されない。また、細溝3の溝底部は開口部よりも幅広となるが、その曲率半径Rが幅Wと同じかそれよりも大きいため、溝底部のサイズが相応に大きく確保される。その結果、ショルダー陸部20が大きな入力を受けた際に、細溝3の溝底部に作用する歪みを効果的に分散させて、優れた耐溝底クラック性を発揮することができる。
【0024】
既述の通り、このタイヤTによれば、細溝3における溝底クラックの発生を良好に抑制できる。細溝3の溝底クラックは、トレッド端TE側に伸展することでテアを引き起こすことから、そのテアの起点となりうる溝底クラックの発生を抑制することは、耐テア性の向上に資する。また、トレッドセンターTC側の溝壁を窪ませてなる内側凹曲面41が溝底部に形成されているので、メインリブ21のトレッド端側エッジ21Eの接地圧を低め、そのメインリブ21における局所的な偏摩耗を抑制し、優れた耐偏摩耗性を発揮できる。
【0025】
細溝3の溝底部のサイズを適度に大きくする観点から、曲率半径Rが幅Wよりも大きいこと、即ちR>Wの関係を満たすことが好ましく、曲率半径Rが幅Wの1.2倍以上であることがより好ましい。また、溝底部のサイズが必要以上に大きくならないように、曲率半径Rは幅Wの2.0倍以下であることが好ましい。
【0026】
角部43は、単一の円弧で形成された溝底部の内面とトレッドセンターTC側の溝壁とを繋ぐ部分であり、角部44は、その溝底部の内面とトレッド端TE側の溝壁とを繋ぐ部分である。耐溝底クラック性を高めるうえで、角部43,44は、曲率半径rの円弧を介して丸みを帯びていることが好ましい。その場合、曲率半径Rを有する単一の円弧は、曲率半径rを有する一対の円弧の間に配置される。曲率半径Rの円弧の長さを確保するうえで、曲率半径rは曲率半径Rよりも小さいことが好ましい。この単一の円弧の両端と中心点Cを結んだ一対の直線がなす角θは、例えば40〜80度である。
【0027】
トレッド10の表面から溝底部に至るまでの深さD2は、ショルダー陸部20に面した主溝14の深さdと同じかそれよりも大きいことが好ましい。これにより、トレッド10の摩耗末期に至るまで細溝3の溝底部が表面に露出せず、優れた耐溝底クラック性を良好に維持することができる。
【0028】
図2では、細溝3の幅中央位置30を鎖線で示している。この鎖線は、タイヤ子午線断面において、細溝3の開口部の幅中央を通り、トレッド10の表面の法線に沿った方向に延びている。本実施形態では、円弧の中心点Cが幅中央位置30にある例を示す。深さD1,D2は、いずれも無負荷の状態において、この幅中央位置30上で(即ち、上記鎖線に沿って)測定されるものとする。
【0029】
図3は、他の実施形態に係る細溝の断面を示す。この実施形態は、以下に説明する構成の他は、図2に示した実施形態と同様の構成であるので、共通点を省略して主に相違点について説明する。なお、図2の実施形態で説明した部位と同一の部位には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0030】
図3に示すように、本実施形態では、溝底部の内面を形成する円弧の中心点Cが、細溝3の幅中央位置30よりもトレッドセンターTC側に位置する。これにより、前述の実施形態と比べて、細溝3の溝底部におけるトレッド端TE側の窪みが小さくなるとともに、トレッドセンターTC側の窪みが大きくなる。その結果、外側凹曲面42による犠牲リブ22の剛性低下を抑えて、より優れた耐テア性を発揮できる。更には、トレッド端側エッジ21Eの接地圧を良好に低めて、メインリブ21における局所的な偏摩耗を抑制し、より優れた耐偏摩耗性を発揮できる。
【0031】
上述した効果を奏するうえで、円弧の中心点Cから細溝3の幅中央位置30までの距離Gは、細溝3の開口部の幅Wの0.1倍以上であること、即ち0.1W≦Gを満たすことが好ましい。また、距離Gは、幅Wの0.5倍以下であること、即ちG≦0.5Wを満たすことが好ましく、これにより、単一の円弧で形成された溝底部の内面とトレッドセンターTC側の溝壁とを繋ぐ部分である角部43が鋭角状に角張らないため、耐溝底クラック性を高めるうえで都合が良い。
【0032】
本発明の空気入りタイヤは、上記の如き細溝がトレッドのショルダー陸部に形成されていること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造などが何れも本発明に採用できる。
【0033】
本発明の空気入りタイヤは、前述の如き作用効果により、優れた耐溝底クラック性、耐テア性及び耐偏摩耗性を発揮しうることから、特にトラックやバスなどに用いられる重荷重用の空気入りタイヤとして有用である。
【0034】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、トレッドパターンは、使用する用途や条件に応じて適宜に変更できる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。タイヤの各性能評価は、次のようにして行った。
【0036】
(1)耐偏摩耗性
リムサイズ22.5×8.25のホイールにタイヤを組み付けて空気圧を760kPa(TRA規定内圧)とし、速度80km/h、荷重27.5kN(TRA100%荷重)の条件で走行試験を実施し、トレッドの偏摩耗比を調査した。偏摩耗比は、トレッドセンターを通るセンター陸部の摩耗量Ceに対するショルダー陸部の摩耗量Shの比(Sh/Ce)として算出した。数値が1.00に近いほど偏摩耗が抑制され、耐偏摩耗性に優れることを示す。
【0037】
(2)耐溝底クラック性
リムサイズ22.5×8.25のホイールにタイヤを組み付けて空気圧を760kPaとし、速度60km/h、荷重21.8kNの条件で、クリート付きドラムを用いて走行試験を実施し、1.5万km走行後に細溝における溝底クラックの幅を測定した。該測定値は、比較例2の結果を100として指数化した。数値が小さいほど溝底クラックの発生が抑制されており、耐溝底クラック性に優れることを示す。尚、溝底クラックはテアの起点になりうるので、耐溝底クラック性に劣る場合は耐テア性にも劣ると評価できる。
【0038】
比較例及び実施例
4本の主溝により5つの陸部に区画されたトレッドを有するタイヤ(サイズ:295/75R22.5)において、上述した曲率半径Rや距離Gを異ならせ、比較例1,2及び実施例1〜4とした。これらの寸法を除く細溝の構成や、細溝以外のタイヤの構成は、各例において共通であり、細溝の開口部の幅Wは一律に2.0mmとした。比較例1は、内側凹曲面と外側凹曲面を有しない細溝を採用し、比較例1以外は、溝底部の内面を単一の円弧で形成した細溝を採用した。比較例2では、R≧Wの関係を満たさず、実施例4では、円弧の中心点が細溝の幅中央位置よりもトレッド端側に位置する。評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1より、実施例1〜4では、比較的に優れた耐溝底クラック性及び耐偏摩耗性を発揮できていることが分かる。中でも、実施例2,3は、特に耐偏摩耗性に優れている。比較例1,2では、実施例1〜4に比べて溝底クラックの発生が顕著であり、それを起点としたテアの発生が懸念されることから、実施例1〜4は比較例1,2よりも耐テア性に優れると評価できる。
【符号の説明】
【0041】
3 細溝
10 トレッド
11 主溝
14 主溝
20 ショルダー陸部
21 メインリブ
21E メインリブのトレッド端側エッジ
22 犠牲リブ
30 幅中央位置
41 内側凹曲面
42 外側凹曲面
図1
図2
図3