【実施例3】
【0041】
本発明の実施例3を
図3に基づいて以下に説明する。
【0042】
本実施例3は、第1のサイプA’及び第2のサイプB’の配置が上記実施例1と同様であり、各サイプA’,B’の溝の構成は上記実施例1と相違し、タイヤ周方向のサイプ幅が、タイヤ幅方向中央領域からに両端部かけて徐々に広がる構成にしたものである。
【0043】
すなわち、本実施例3におけるブロックT3の幅方向外側に位置する主溝Gの溝深さHは9mmである。第1のサイプA’におけるタイヤ幅方向中央領域の溝深さH1は5.5mm、タイヤ幅方向両端部の溝深さH2は4.5mmであり、タイヤ幅方向中央領域のサイプ幅w1は0.3mmであり、タイヤ幅方向両端部はタイヤ幅方向中央領域のサイプ幅w1から徐々に広がってサイプ開口端におけるサイプ幅w2はサイプ幅w1の2倍の0.6mmである。第2のサイプB’におけるタイヤ幅方向中央領域の溝深さH3は6.5mm、タイヤ幅方向両端部の溝深さH4は3.5mmであり、タイヤ幅方向中央領域のサイプ幅w1は0.3mmであり、タイヤ幅方向両端部はタイヤ幅方向中央領域のサイプ幅w1から徐々に広がってサイプ開口端におけるサイプ幅w2はサイプ幅w1の2倍の0.6mmである。
【0044】
そして、本実施例3においては、
図3(a)に示すように、第1のサイプA’をブロックT3におけるタイヤ周方向両側部に1列ずつ配置し、その内方に第1のサイプA’と第2のサイプB’とをタイヤ周方向に交互に配置してなるものである。すなわち、タイヤ周方向のブロックの一方の側部側から、第1のサイプA’、第2のサイプB’、第1のサイプA’、第2のサイプB’、第1のサイプA’、第2のサイプB’、第1のサイプA’の順に7列のサイプが配置されている。
【0045】
なお、図示及び説明は省略するが、実施例2と同様に第1のサイプA’及び第2のサイプB’を配置してもよい。
【0046】
[比較例1]
比較例1を
図4に基づいて以下に説明する。
【0047】
比較例1におけるブロックT4の幅方向外側に位置する主溝Gの溝深さHは9mmである。サイプCは、その溝深さがタイヤ幅方向の一端から他端まで変化しない均一の深さであって、その溝深さH3は実施例1における第2のサイプBの溝深さH3と同一の6.5mmであり、サイプ幅w1は0.3mmである(比較容易のため、サイプの溝深さ及びサイプ幅は実施例1と同一の符号を付す)。
【0048】
そして、比較例1においては、
図4(a)に示すように、全て同一のサイプCをブロックT4におけるタイヤ周方向に合計7列配置したものである。
【0049】
本発明に係る各実施例との主たる相違は、比較例1におけるサイプCは、1つのサイプにおいてタイヤ幅方向に溝深さが変化しない均一の深さであり、かつ、各列においては全て同一のサイプCであってタイヤ周方向にも溝深さが変化しないサイプである。
【0050】
[比較例2]
比較例2を
図5に基づいて以下に説明する。
【0051】
比較例2におけるブロックT5の幅方向外側に位置する主溝Gの溝深さHは9mmである。サイプBは、実施例1における第2のサイプBと同一の溝深さの構成であって、タイヤ幅方向中央領域の溝深さH3は6.5mm、タイヤ幅方向両端部の溝深さH4は3.5mmであり、サイプ幅w1は0.3mmである(比較容易のため、サイプ、溝深さ及びサイプ幅は実施例1と同一の符号を付す)。
【0052】
そして、比較例2においては、
図5(a)に示すように、全て同一のサイプBのみをブロックT5におけるタイヤ周方向に合計7列配置したものである。
【0053】
本発明に係る実施例1との主たる相違は、比較例2におけるサイプBは、実施例1と同様に1つのサイプにおいて溝深さが変化するが、各列においては全て同一のサイプBのみが配置されていてタイヤ周方向には溝深さが変化しないサイプである。
【0054】
[比較例3]
比較例3を
図6に基づいて以下に説明する。
【0055】
比較例3におけるブロックT6の幅方向外側に位置する主溝Gの溝深さHは9mmである。サイプCは、比較例1におけるサイプCと同一の溝の構成であり、タイヤ幅方向の一端から他端まで変化しない均一の溝深さであって、溝深さH3は実施例1における第2のサイプBのH3と同一の6.5mmであり、サイプ幅w1は0.3mmである(比較容易のため、溝深さ及びサイプ幅は比較例1と同一の符号を付す)。サイプDは、タイヤ幅方向の一端から他端まで変化しない均一の溝深さであって、その溝深さH1は実施例1における第1のサイプAの溝深さH1と同一の5.5mmであり、サイプ幅w1は0.3mmである(比較容易のため、溝深さ及びサイプ幅は実施例1と同一の符号を付す)。
【0056】
そして、比較例3においては、
図6(a)に示すように、サイプDをブロックT6におけるタイヤ周方向両側部に1列ずつ配置し、その内方にサイプCとサイプDとをタイヤ周方向に交互に配置してなるものである。すなわち、タイヤ周方向のブロックの一方の側部側から、サイプD、サイプC、サイプD、サイプC、サイプD、サイプC、サイプDの順に7列のサイプが配置されている。
【0057】
本発明に係る実施例1との主たる相違は、比較例3におけるサイプC及びサイプDは、いずれも1つのサイプにおいてはタイヤ幅方向に溝深さが変化しないサイプである。
【0058】
[比較試験]
次に本発明に係る空気入りタイヤについて、以下の条件の下に、上記の実施例1〜3及び比較例1〜3について比較試験を行った。その結果を下記表1に示す。
【0059】
テストタイヤのサイズ:195/65R15
テスト項目
アイス性能:車両に各タイヤを装着させて、アイス路面で時速40kmで走行し、時速40kmから停止、すなわち0kmの制動距離を計測した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、アイス制動性能が優れていることを示す。
【0060】
偏摩耗:車両に各タイヤを装着させて、乾燥路面を8000km走行したときの段差摩耗量(摩耗によるサイプとサイプとの段差)を計測した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど良好な結果を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
[比較試験の結果]
(1) アイス性能について
溝深さが変化しないサイプCのみを配置した比較例1に対して、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向の溝深さが変化するサイプA,B,A’,B’を配置した実施例1〜3のアイス性能が向上した。おそらくタイヤ幅方向におけるサイプA,B,A’,B’の両端部及びタイヤ中央領域の溝深さの変化、及び、タイヤ周方向におけるサイプA,B,A’,B’の溝深さの変化により各サイプ間におけるブロックの陸部のエッジ効果が向上したものと考えられる。
【0063】
タイヤ幅方向の両端部のサイプ幅を広げたサイプA’,B’を配置した実施例3は、実施例1よりもアイス性能がさらに向上した。おそらくタイヤ幅方向のサイプA’,B’のタイヤ幅方向両端部におけるサイプ角が中央領域のサイプ角に対して変化したことによりタイヤ幅方向両端部におけるサイプのエッジ効果がさらに向上したものと考えられる。
【0064】
タイヤ周方向の両端部に複数のサイプAを配置した実施例2は、比較例1よりもアイス性能は向上するが、サイプA,Bを交互配置した実施例1及びサイプA’,B’を交互配置した実施例3よりアイス性能が低下した。おそらく溝深さが異なるサイプの交互配置によるエッジ角の変化が少なくなったため、エッジ効果の低下によるものと考えられる。
【0065】
比較例2は、タイヤ幅方向に溝深さが変化するサイプAを配置したため、比較例1よりもアイス性能は向上するが、交互配置ではなく、全て同一のサイプAのみを配置しているため実施例1よりアイス性能が低下している。
【0066】
比較例3は、異なる溝深さのサイプC,Dを交互配置したものであるが、タイヤ幅方向に溝深さが変化しないため、交互配置であっても比較例1よりアイス性能が低下している。
【0067】
以上のように、実施例1〜3においては、タイヤ幅方向両端部におけるタイヤ周方向両側部の第1のサイプA,A’の溝深さH2を第2のサイプB,B’の溝深さH4よりも深くしたため路面に対する接地圧が平均化されるのでサイプのエッジを効かせ、旋回性能を向上させる作用が働くことにより、タイヤ幅方向両端部におけるタイヤ周方向両側部の溝深さH3がタイヤ周方向に変化しない比較例1のサイプC及びタイヤ幅方向両端部におけるタイヤ周方向両側部の溝深さH4がタイヤ周方向に変化しない比較例2のサイプB、及び、タイヤ幅方向両端部におけるタイヤ周方向両側部に、そのタイヤ周方向内方に配した溝深さCよりも浅い溝深さH1のサイプDを配した比較例3のサイプC,Dよりもアイス性能が向上した結果となった。
【0068】
(2) 偏摩耗の抑制について
溝深さが変化しないサイプCのみを配置した比較例1に対して、タイヤ幅方向に溝深さが変化し、タイヤ周方向の溝深さが異なる2種類のサイプA,B,A’,B’を配置した実施例1〜3は偏摩耗の抑制効果が向上した。おそらくサイプA,B,A’,B’がタイヤ幅方向に溝深さが変化し、タイヤ周方向にも溝深さが異なるため、タイヤの剛性が分散されて局所的な剛性差をなくすことができたことによるものと考えられる。
【0069】
サイプA,Bを交互配置した実施例1は、複数のサイプAをタイヤ周方向両側部に配置した実施例2よりも偏摩耗の抑制効果が向上した。おそらくサイプA,Bを交互配置したことにより複数のサイプAをタイヤ周方向両側部に配置した実施例2よりもタイヤの剛性がさらに分散されて局所的な剛性差をなくすことができたことによるものと考えられる。
【0070】
タイヤ幅方向の両端部のサイプ幅を広げたサイプA’,B’を交互配置した実施例3は、サイプA,Bを交互配置した実施例1よりも偏摩耗の抑制効果が向上した。おそらくタイヤ幅方向の両端部のサイプ幅を広げたためブロックのタイヤ幅方向両端部におけるタイヤ周方向の剛性が低下したことにより中央領域との剛性差が少なくなり、全体的にタイヤの剛性がよりさらに分散されて局所的な剛性差をなくすことができたことによるものと考えられる。
【0071】
比較例2は、タイヤ幅方向の両端部が浅く、中央領域が深いサイプAのみを配したことによりタイヤ周方向におけるブロック両端部の剛性が高く、ブロック中央領域の剛性が低いために局所的な剛性差が生じたことにより比較例1よりも偏摩耗の抑制効果が低下した。
【0072】
比較例3は溝深さが異なる2種類のサイプC,Dを交互に配置したことにより、比較例1よりも剛性の分散性が向上して偏摩耗の抑制効果が向上しているが、タイヤ幅方向の溝深さが変化していないためタイヤ剛性が分散されずタイヤ幅方向には局所的な剛性差が生じるので、実施例1よりも偏摩耗の抑制効果が低下した。
【0073】
また、実施例1〜3のようにタイヤ幅方向両端部におけるタイヤ周方向両側部の第1のサイプA,A’の溝深さH2を第2のサイプB,B’の溝深さH4よりも深くしたため路面に対する接地圧が平均化され、旋回性能を向上させることも偏摩耗を抑制する要素の1つであることが考えられる。
【0074】
以上の試験結果から、実施例1〜3はアイス性能及び偏摩耗の抑制の両立性が達せられていることが判明し、比較例1〜3はアイス性能及び偏摩耗の抑制のいずれかにおいて実施例1〜3よりも低下しており、アイス性能及び偏摩耗の抑制の両立性が達せられないことが判明した。
【0075】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。