【解決手段】 空気入りタイヤにおいては、第1周溝のタイヤ幅方向の一方側に連接される第1陸溝のタイヤ幅方向の他方側の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きと、第1周溝のタイヤ幅方向の他方側に連接される第2陸溝のタイヤ幅方向の一方側の端部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きとは、同じ向きであり、第1陸溝の屈曲部は、第1陸部のタイヤ幅方向の他方側の端部領域に配置され、第3陸溝の屈曲部は、第1陸部のタイヤ幅方向の一方側の端部領域に配置され、第1陸溝と第3陸溝とは、タイヤ周方向で重なっている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、
図1〜
図5を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0013】
図1(以下の図も同様)において、第1の方向D1は、タイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ回転軸周りの方向であるタイヤ周方向D2である。なお、タイヤ幅方向D1の一方向(
図1の右方向)は、第1幅方向D11といい、他方向(
図1の左方向)は、第2幅方向D12という。また、タイヤ周方向D2の一方向(
図1の上方向)は、第1周方向D21といい、他方向(
図1の下方向)は、第2周方向D22という。
【0014】
そして、タイヤ径方向は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の直径方向である。また、タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ幅方向D1の中心に位置する面であり、タイヤ子午面は、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード部(図示していない)と、各ビード部からタイヤ径方向の外側に延びるサイドウォール部(図示していない)と、一対のサイドウォール部のタイヤ径方向の外端部に連接され、外表面がトレッド面を構成するトレッド部2とを備えている。なお、タイヤ1は、リム(図示していない)に装着されており、タイヤ1の内部は、空気により加圧されている。
【0016】
トレッド部2は、タイヤ周方向D2に沿って延びる複数の周溝3,4と、複数の周溝3,4に区画される複数の陸部5,6とを備えている。本実施形態においては、周溝3,4は、三つ備えられており、陸部5,6は、四つ備えられている。なお、周溝3,4及び陸部5,6の数量は、斯かる構成に限られない。また、周溝3,4は、タイヤ周方向D2に沿って延びる溝であって、路面に接地する接地面に配置される溝である。
【0017】
タイヤ幅方向D1の最外側に配置される周溝3は、ショルダー周溝3といい、ショルダー周溝3よりもタイヤ幅方向D1の内側に配置される周溝4は、センター周溝4という。また、ショルダー周溝3よりもタイヤ幅方向D1の外側に配置される陸部5は、ショルダー陸部5といい、ショルダー周溝3及びセンター周溝4の間に配置される陸部6は、センター陸部6という。なお、本実施形態においては、センター周溝4は、タイヤ赤道面S1上に配置されている。
【0018】
陸部5,6は、タイヤ周方向D2と交差するように延びる複数の陸溝7を備えている。陸溝7は、周溝3,4よりも幅狭である細溝と、細溝よりも幅狭であるサイプとを備えている。例えば、細溝は、幅が1.0mm以上である凹状部のことであり、サイプは、幅が1.0mm未満である凹状部のことである。このように、多数の陸溝7が備えられているため、タイヤ1のスノー操縦安定性能が優れている。
【0019】
ここで、周溝3,4及び陸部5,6に対する陸溝7の構成について、説明する。まず、センター周溝4及びセンター陸部6,6について、
図2〜
図4を参照しながら、説明する。
【0020】
図2に示すように、センター陸部6は、タイヤ幅方向D1の外側に配置される端部領域A1,A2と、端部領域A1,A2の間に配置される中央領域A3と、に区画される。なお、端部領域A1,A2及び中央領域A3は、タイヤ幅方向D1で均等に(1/3ずつに)区画されている。なお、タイヤ幅方向D1の内側の端部領域A1は、内側端部領域A1といい、タイヤ幅方向D1の外側の端部領域A2は、外側端部領域A2という。
【0021】
周溝3,4間に配置されるセンター陸部6に備えられる陸溝7においては、一端部は、周溝3,4に連接しており、他端部は、周溝4,3から離れている。即ち、陸溝7は、センター陸部6のタイヤ幅方向D1の一部に配置されている。そして、陸溝7の一端部が周溝3,4に連接されることで、陸溝7は、溝としての機能(例えば、排水機能、エッジ機能)を発揮する。
【0022】
ところで、陸溝7の一端部が周溝3,4と連接されることで、陸溝7の一端部側の剛性が小さくなる。そこで、陸溝7は、周溝3,4に連接されている一端部側に、屈曲部7aを一つ備えている。これにより、陸溝7の一端部側の剛性が小さくなることを抑制している。したがって、センター陸部6のタイヤ幅方向D1において、陸溝7に起因する剛性差が生じることを抑制することができている。
【0023】
陸溝7の屈曲部7aは、湾曲状(曲線状)に形成されており、陸溝7は、屈曲部7aのタイヤ幅方向D1の両側に直線状に延びる直線部7b,7cを備えている。なお、周溝3,4に連接する直線部7bは、第1直線部7bといい、周溝4,3から離れている直線部7cは、第2直線部7cという。
【0024】
陸溝7の屈曲部7aは、センター陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置されている。具体的には、ショルダー周溝3に連接されている陸溝7の屈曲部7aは、外側端部領域A2に配置され、センター周溝4に連接されている陸溝7の屈曲部7aは、内側端部領域A1に配置されている。そして、第2直線部7cの端部は、タイヤ幅方向D1において、端部領域A1,A2まで延びている。
【0025】
このように、屈曲部7aが、センター陸部6の両方の端部領域A1,A2に配置されている。これにより、センター陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2の剛性が大きくなると共に、センター陸部6のタイヤ幅方向D1における剛性差が生じることを抑制することができている。
【0026】
なお、屈曲部7aのタイヤ幅方向D1の位置は、屈曲点7dの位置とする。該屈曲点7dは、屈曲部7aが湾曲形状である場合には、陸溝7のうち、凸状の内側となる端縁上の位置で、且つ、屈曲部7aのうち、タイヤ周方向D2の最端位置の点である。また、屈曲点7dは、屈曲部7aが屈折形状(直線が折れ曲った形状)である場合には、陸溝7の凸状の内側となる端縁上の屈折位置(二つの直線の連結位置)の点である。
【0027】
また、センター周溝4のタイヤ幅方向D1の一方側(即ち、第1幅方向D11側の端縁)に連接される陸溝7の屈曲部7aは、第2周方向D22側に向けて凸状となるように形成されている。また、センター周溝4のタイヤ幅方向D1の他方側(即ち、第2幅方向D12側の端縁)に連接される陸溝7の屈曲部7aは、第1周方向D21側に向けて凸状となるように形成されている。
【0028】
したがって、センター周溝4の第1幅方向D11側の近傍に配置される屈曲部7aと、センター周溝4の第2幅方向D12側の近傍に配置される屈曲部7aとは、反対側に向けて凸状となるように形成されている。これにより、タイヤ周方向D2の特定の方向の力に対して、センター周溝4の剛性が小さくなることを抑制することができる。
【0029】
また、センター周溝4の第1幅方向D11側の端縁に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3と、センター周溝4の第2幅方向D12側の端縁に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD4とは、同じ向きである。具体的には、
図2の破線で示しているように、それぞれの傾斜する向きD3,D4は、
図2において、左上がり(右下がり)の向きである。なお、「傾斜する向きが同じ」とは、タイヤ幅方向D1に対する傾斜角度が異なっていても、同じ向きであれば含まれる。
【0030】
ここで、斯かる構成の作用について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
【0031】
まず、
図3に示すように、比較例に係るタイヤにおいては、
図3の破線で示しているように、センター周溝4に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD5,D6は、異なっている。具体的には、第1幅方向D11側の陸溝7の端部の傾斜する向きD5は、左上がりの向きであり、第2幅方向D12側の陸溝7の端部の傾斜する向きD6は、右上がりの向きである。
【0032】
そして、例えば、比較例に係るタイヤが、ドライ路面に対して制動する時に、タイヤ回転方向と反対側である第1周方向D21の力を受けると、陸溝7は、センター周溝4の幅を広げるように(
図3における二点鎖線矢印の方向に)変形する。これにより、ドライ制動性能が低下してしまう。
【0033】
それに対して、
図4に示すように、本実施形態に係るタイヤ1においては、センター周溝4に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きは、それぞれ同じである。そして、同様に、本実施形態に係るタイヤ1が、ドライ路面に対して制動する時に、第1周方向D21の力を受けると、陸溝7は、センター周溝4の幅を維持するように(
図4における二点鎖線矢印の方向に)変形する。これにより、比較例に対して、ドライ制動性能を向上させることができる。
【0034】
次に、第1幅方向D11側のショルダー周溝3及び陸部5,6に対する陸溝7の構成について、
図5を参照しながら、説明する。
【0035】
図5に示すように、ショルダー陸部5に備えられる陸溝7においては、タイヤ幅方向D1の内側に配置される一端部は、ショルダー周溝3に連接している。そして、陸溝7の一端部がショルダー周溝3に連接されることで、陸溝7は、溝としての機能(例えば、排水機能、エッジ機能)を発揮する。
【0036】
そして、ショルダー周溝3に連接されるショルダー陸部5の陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD7と、ショルダー周溝3に連接されるセンター陸部6の陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD8とは、同じ向きである。具体的には、
図5の破線で示しているように、それぞれの傾斜する向きD7,D8は、
図2において、左上がり(右下がり)の向きである。
【0037】
これにより、タイヤ1がドライ路面に対して制動する時に、ショルダー周溝3が幅を広げるように変形することを抑制することができる。これにより、ドライ制動性能を向上させることができる。なお、ショルダー周溝3がドライ路面の旋回時にも影響するため、ドライ旋回性能も向上させることができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、センター周溝4に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3,D4と、ショルダー周溝3に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD7,D8とは、同じ向きである。即ち、各周溝3,4に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3,D4,D7,D8は、全て同じ向きである。
【0039】
また、ショルダー周溝3に連接されるショルダー陸部5の陸溝7の屈曲部7aは、第2周方向D22側に向けて凸状となるように形成されている。また、ショルダー周溝3に連接されるセンター陸部6の陸溝7の屈曲部7aは、第1周方向D21側に向けて凸状となるように形成されている。
【0040】
したがって、ショルダー陸部5の屈曲部7aと、センター陸部6の屈曲部7aとは、反対側に向けて凸状となるように形成されている。これにより、タイヤ周方向D2の特定の方向の力に対して、ショルダー周溝3の剛性が小さくなることを抑制することができる。
【0041】
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向D2に沿って延びる複数の周溝3,4と前記複数の周溝3,4に区画される複数の陸部5,6とを有するトレッド部2を備え、前記陸部6は、両端部のうち一端部のみが前記周溝3,4に連接する陸溝7を備え、少なくとも一つの前記周溝3,4の一方側に連接される前記陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3,D7と、当該周溝3,4の他方側に連接される前記陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD4,D8とは、同じ向きである。
【0042】
斯かる構成によれば、少なくとも一つの周溝3,4の一方側に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3,D7と、当該周溝3,4の他方側に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD4,D8とは、同じ向きである。これにより、タイヤ回転方向に関わらず、ドライ路面の制動時に、周溝3,4の幅が広がるように変形することを抑制することができる。
【0043】
しかも、陸溝7の両端部のうち一端部のみが周溝3,4に連接しているため、周溝3,4間に配置される陸部6においては、タイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2の剛性が大きくなる。したがって、ドライ路面の制動時に、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2が変形することを抑制することができることも起因して、タイヤ1のドライ制動性能を向上させることができる。なお、陸溝7の一端部が、周溝3,4に連接しているため、陸溝7は、溝としての機能(排水機能、エッジ機能)を発揮することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記陸溝7は、一端部側に、屈曲部7aを一つ有するように形成される、という構成である。
【0045】
斯かる構成によれば、陸溝7の一端部が周溝3,4に連接することで、剛性が小さくなることに対して、陸溝7は、該一端部側に、屈曲部7aを一つ有している。これにより、屈曲部7aの剛性が大きいため、陸溝7の一端部側の剛性が小さくなることを抑制することができる。したがって、周溝3,4の剛性が小さくなることを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記周溝3,4の一方D11側に連接される前記陸溝7の前記屈曲部7aは、タイヤ周方向D2の一方D22側に向けて凸状となるように形成され、当該周溝3,4の他方D12側に連接される前記陸溝7の前記屈曲部7aは、タイヤ周方向D2の他方D21側に向けて凸状となるように形成される、という構成である。
【0047】
斯かる構成によれば、周溝3,4の一方D11側に連接される陸溝7の屈曲部7aは、タイヤ周方向D2の一方D22側に向けて凸状となるように形成され、当該周溝3,4の他方D12側に連接される陸溝7の屈曲部7aは、タイヤ周方向D2の他方D21側、即ち、反対側に向けて凸状となるように形成されている。これにより、タイヤ周方向D2の特定の方向の力に対して、周溝3,4の剛性が小さくなることを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記周溝3,4間に配置される前記陸部6に配置される前記陸溝7の前記屈曲部7aは、前記陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置される、という構成である。
【0049】
斯かる構成によれば、陸溝7の屈曲部7aが、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置されているため、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2の剛性が大きくなる。これにより、周溝3,4の剛性が小さくなることをさらに抑制することができる。
【0050】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0051】
上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、陸溝7は、屈曲部7aを一つ有するように形成される、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、陸溝7は、屈曲部7aを複数備えている、という構成でもよい。また、例えば、陸溝7は、屈曲部7aを備えず、直線部のみからなる、という構成でもよい。
【0052】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、周溝3,4の一方側に連接される陸溝7の屈曲部7aと他方側に連接される陸溝7の屈曲部7aは、タイヤ周方向D2で異なる方向に向けて凸状となるように形成される、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、周溝3,4の一方側に連接される陸溝7の屈曲部7aと他方側に連接される陸溝7の屈曲部7aは、タイヤ周方向D2で同じ方向に向けて凸状となるように形成される、という構成でもよい。
【0053】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、陸溝7の屈曲部7aは、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置される、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、陸溝7の屈曲部7aは、陸部6のタイヤ幅方向D1の中央領域A3に配置される、という構成でもよい。
【0054】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1は、全ての周溝3,4において、周溝3,4の一方側に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD3,D7と、当該周溝3,4の他方側に連接される陸溝7の端部がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する向きD4,D8とは、同じ向きである、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、一つの周溝3,4のみが、斯かる構成であってもよい。