【解決手段】リニアフィーダ3は、ワークWが置かれる搬送面31、32を有する上面24と、下面25と、を有する振動部21bと、振動部21bを振動させることで、搬送面31、32に進行波を発生させる進行波生成部22と、を備え、搬送面31、32は、ワークWが搬送される搬送方向において連続的に形成されており、振動部21bの振動の中立軸Nが、上面24と下面25との中心に位置する中心面Cよりも、前記搬送面31、32から遠い側に位置するように構成されている。
前記振動部の、前記搬送方向と直交する断面の図心が、前記中心面よりも前記搬送面から遠い側に位置するように、前記断面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送装置。
前記振動部の内部に、前記中立軸が前記中心面よりも前記搬送面から遠い側に位置するように、中空部分が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のワーク搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような振動体が剥き出しになっていると、スリットや突起にワークが引っかかり、搬送の安定性が損なわれる。そこで、特許文献1には、搬送面の上方に、突起及びスリットを覆うシリコンゴム製のライニングを設ける構成も開示されている。しかしながら、上記構成では、ワークとライニング材とが擦過することによりライニング材が削られ、ゴミが発生するおそれがあるという別の問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、搬送面がスリット加工等されておらず、且つ、搬送面上にライニングがなくとも、ワークを滑らかに搬送し、且つ、ワークの搬送速度を上げることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明のワーク搬送装置は、進行波によってワークを搬送するワーク搬送装置であって、ワークが置かれる搬送面を有する上面と、下面と、を有する振動部と、前記振動部を振動させることで、前記搬送面に進行波を発生させる進行波生成部と、を備え、前記搬送面は、ワークが搬送される搬送方向において連続的に形成されており、前記振動部の振動の中立軸が、前記上面と前記下面との中心に位置する中心面よりも、前記搬送面から遠い側に位置するように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、搬送面が連続的に形成されており、且つ、振動部の振動の中立軸が、中心面よりも搬送面から遠い側に位置する。このため、中立軸が中心面と同じ高さにある場合と比べて、ワークが搬送される搬送方向において、搬送面の楕円運動の変位が大きくなり、ワークの搬送速度が上がる。したがって、搬送面がスリット加工等されておらず、且つ、搬送面上にライニングがなくとも、ワークを滑らかに搬送し、且つ、ワークの搬送速度を上げることができる。さらに、スリット加工等の必要性がないため、加工コストを削減することができる。
【0009】
第2の発明のワーク搬送装置は、前記第1の発明において、前記振動部の、前記搬送方向と直交する断面の図心が、前記中心面よりも前記搬送面から遠い側に位置するように、前記断面が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、振動部の、搬送方向と直交する断面の図心が、中心面よりも搬送面から遠い側に位置する。このため、中立軸を搬送面から遠ざけ、搬送方向において、搬送面の楕円運動の変位を大きくすることができる。また、本発明では、振動部を単一材料で形成することが可能であるため、構成の単純化及びコストの削減ができる。
【0011】
第3の発明のワーク搬送装置は、前記第2の発明において、前記振動部の内部に、前記中立軸が前記中心面よりも前記搬送面から遠い側に位置するように、中空部分が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、中立軸が中心面よりも搬送面から遠い側に位置するように、中空部分が形成されている。このため、搬送方向において、搬送面の楕円運動の変位を大きくすることができる。また、中空部分がない場合と比べて、振動部に使用される材料の量を少なくすることができ、部材の軽量化や材料費の削減ができる。
【0013】
第4の発明のワーク搬送装置は、前記第2又は第3の発明において、前記振動部の、前記搬送方向と直交する断面において、前記中心面から前記上面までの領域の断面積が、前記中心面から前記下面までの領域の断面積よりも小さいことを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、振動部の、搬送方向と直交する断面における図心が搬送面から遠ざかりやすいため、中立軸を搬送面から遠ざけて、搬送方向において、搬送面の楕円運動の変位を大きくすることができる。本発明では、前述した中空部分を振動部に形成しない場合であっても、断面形状を工夫することにより中立軸を搬送面から遠ざけることができる。また、本発明において振動部に中空部分を形成すると、中立軸を搬送面からさらに遠ざけることができる。
【0015】
第5の発明のワーク搬送装置は、前記第1〜第4のいずれかの発明において、前記振動部は、前記搬送面を有する第1振動部分と、前記第1振動部分の下面に接合された第2振動部分と、を有し、前記第1振動部分のヤング率は、前記第2振動部分のヤング率よりも小さいことを特徴とするものである。
【0016】
本発明によれば、振動部は第1振動部分と第2振動部分による多層構造になっており、搬送面を有する第1振動部分のヤング率が、第2振動部分のヤング率よりも小さい。つまり、第1振動部分の方が第2振動よりも伸縮しやすい。このため、中立軸は、比較的伸縮しにくい第2振動部分側に移動し、第1振動部分に形成された搬送面から遠ざかる。したがって、材料の適切な選択により中立軸を搬送面から効果的に遠ざけ、搬送方向において、搬送面の楕円運動の変位を大きくすることができる。
【0017】
第6の発明のワーク搬送装置は、前記第5の発明において、前記第1振動部分の厚みは、前記第2振動部分の厚みよりも大きいことを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、第2振動部分の厚みに対して、比較的伸縮しやすい第1振動部分の厚みの割合が大きい。このため、中立軸を搬送面からさらに遠ざけ、搬送方向において、搬送面の楕円運動の変位をさらに大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について、
図1〜
図7を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、
図1に示す方向を前後左右上下方向とする。
【0021】
(パーツフィーダの概略構成)
まず、本実施形態に係るパーツフィーダ1の概略構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、パーツフィーダ1の斜視図である。パーツフィーダ1は、ワークWを供給するためのボウルフィーダ2と、ボウルフィーダ2の前端部に接続されたリニアフィーダ3とを備える。ボウルフィーダ2及びリニアフィーダ3は、いずれもたわみ進行波を利用してワークWを搬送する。本実施形態では、リニアフィーダ3に対して本発明を適用した場合について説明するが、ボウルフィーダ2に本発明を適用することも勿論可能である。
【0022】
ボウルフィーダ2は、ワークWが収容されるボウル本体11等を有する。ボウル本体11は、上部が開口した略逆円錐台状の部材である。ボウル本体11の内周壁には、底部から螺旋状に上昇するらせんトラック12が形成されている。ボウル本体11は、ボウル駆動手段(不図示)によって振動させられる。ワークWは、らせんトラック12に沿ってリニアフィーダ3に向かって上昇する。
【0023】
リニアフィーダ3は、ボウルフィーダ2から供給されたワークWを前方に搬送するためのものである。リニアフィーダ3は、たわみ進行波が生成される部材である搬送部21と、搬送部21を超音波振動させるための進行波生成部22等を備える。進行波生成部22によって搬送部21を振動させると、搬送部21の上面に形成された搬送面31にたわみ進行波が発生する。このたわみ進行波によって、ワークWは搬送面31に沿って前方に搬送され、次工程に供給される。リニアフィーダ3の詳細については、後述する。
【0024】
(リニアフィーダの詳細構成)
次に、リニアフィーダ3の詳細構成について、
図1〜
図6を用いて説明する。前述したように、リニアフィーダ3は、搬送部21と、進行波生成部22等を有する。
【0025】
搬送部21について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、リニアフィーダ3の平面図である。
図3(a)は、リニアフィーダ3の断面斜視図である。
図3(b)は、リニアフィーダ3の前後方向に直交する断面図である。
【0026】
搬送部21は、例えば金属製の平面視略矩形状の部材である。搬送部21は、長手方向に直交する断面が略凹状になっている(
図3参照)。
図2及び
図3に示すように、搬送部21の平面視中央部には、平面視周辺部よりも厚みが小さい略長円形状の固定部21aが形成されている。また、固定部21aよりも平面視外側に、固定部21aよりも厚みが大きい振動部21bが形成されている。
図3(b)において、一点鎖線で囲まれた部分が固定部21aであり、二点鎖線で囲まれた部分が振動部21bである。固定部21aは、押さえ板38と押さえ板39とによって上下から挟まれ、複数の止着具40によって固定されている。
【0027】
図3(b)に示すように、振動部21bは、断面視で略矩形状であり、上面24と下面25とを有する。振動部21bの上面24には、ワークWが搬送される溝である搬送トラック27が形成されている。
図2において、ハッチングされた部分が搬送トラック27に該当する。搬送トラック27は、メイントラック28とリターントラック29とに分かれている。メイントラック28は、ワークWを次工程の装置へ供給するためのものであり、搬送部21の後端部から前端部に亘って延びた経路である。リターントラック29は、一部のワークWをボウルフィーダ2に戻すためのものであり、平面視略U字状の経路である。すなわち、リターントラック29は、搬送部21の後端部から、メイントラック28と並んで前方に延び、固定部21aの前端部に沿って回り、後方に延びて搬送部21の後端部に戻る経路になっている。メイントラック28は、ワークWが置かれる搬送面31を有する。同様に、リターントラック29は、搬送面32を有する。搬送面31、32の両方が、本発明の「搬送面」に相当する。
【0028】
なお、
図3(a)に示すように、リニアフィーダ3には、選別部49が設けられている。選別部49は、並設されたメイントラック28及びリターントラック29の上方に配置されたセンサ49aと、図示しないエア噴出部と、を有する。センサ49aは、メイントラック28上を搬送されるワークWの姿勢を検出するためのものである。エア噴出部は、メイントラック28上のワークWに横からエアを吹き付けて、ワークWをリターントラック29へ飛ばすためのものである。センサ49aによって、メイントラック28上のワークWの姿勢が正常と異なると検知された場合、エア噴出部がそのワークWをリターントラック29へ吹き飛ばす。これにより、そのワークWはリターントラック29上を搬送され、ボウルフィーダ2へ戻される。また、メイントラック28を搬送されるワークWの姿勢が正常である場合は、エア噴出部は作動しない。つまり、正常な姿勢でメイントラック28を搬送されてくるワークWのみが、そのまま次工程の装置へ供給される。
【0029】
搬送面31、32は、ワークWが搬送される方向において連続的に形成されている(すなわち、スリット加工等がされていない)。また、振動部21bの内部には、中空部分35が形成されている。中空部分35の詳細については、後述する。
【0030】
進行波生成部22について、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、後述する駆動手段23を示す図である。
図4(a)は駆動手段23の平面図であり、
図4(b)は同じく側面図であり、
図4(c)は同じく裏面図である。
図5は、搬送部21の振動部21bと後述する駆動手段23との位置関係を示す模式図である。進行波生成部22は、駆動手段23と、信号発信器41と、アンプ42、43等を有する。
【0031】
駆動手段23は、振動部21bに沿って伸縮することで振動部21bを振動させるためのものである。駆動手段23は、振動部21bのうち、搬送トラック27の直線部分の裏面に貼り付けられている(
図3参照)。駆動手段23は、
図4(a)〜(c)に示すように、4つの圧電素子16を有する。4つの圧電素子16は、矩形の薄板状のセラミックス部17と、セラミックス部17を平面視したときの上面(便宜上、表面とする)に貼り付けられた4つの電極18と、セラミックス部17の下面(同じく、裏面とする)に貼り付けられた電極19と、を有する。
【0032】
セラミックス部17は、電圧を印加されることによりたわむ圧電体セラミックス製の部材である。セラミックス部17は、4つの圧電素子16において共通に用いられる。セラミックス部17には、予め定められた波長(詳細は後述する)をλとして、λ/2の間隔で、極性(+、−)が交互に反転するように分極処理が施されている。4つの電極18は、セラミックス部17の分極した部分の表面に、λ/2の間隔で貼り付けられている。電極19は、セラミックス部17の裏面の電位をコモン電位にするためのものであり、セラミックス部の裏面と同程度の面積を有する。電極19も、4つの圧電素子16において共通に用いられる。これらの構成によって、4つの圧電素子16が、λ/2の間隔で、極性を交互に反転させつつ並べられている。
【0033】
なお、電極19の代わりに、電極18と同程度の面積を有する4つの電極が、セラミックス部17を挟んで電極18と対向するように裏面に貼り付けられているような構成でも良い。その場合、裏面に貼り付けられた4つの電極の電位は、例えばジャンパ線等で共通化される。また、上記では、1つの駆動手段23が4つの圧電素子16を有するものとして説明したが、圧電素子16の数は、これに限られるものではない。
【0034】
図5に示すように、搬送トラック27の一方の直線部分の裏面に駆動手段23aが、固定部21aを挟んで反対側に駆動手段23bが、それぞれ配置されている。駆動手段23aの圧電素子16a及び駆動手段23bの圧電素子16bは、前述したように、λ/2の間隔で、極性を交互に反転させつつ並べられている。また、最も前方の圧電素子16aの中央部と、最も前方の圧電素子16bの中央部との間には、振動部21bに沿って(n+1/4)λ(nは0以上の整数)の隔たりがある。
【0035】
信号発信器41は、20kHz以上の超音波領域の周波数の信号を生成して駆動手段23へ出力することで、振動部21bを加振するためのものである。信号発信器41は、所定の振幅及び周波数を有する第1の信号を駆動手段23aへ出力可能な構成になっている。また、信号発信器41は、第1の信号と位相が90°異なる第2の信号を駆動手段23bへ出力可能な構成になっている。
【0036】
信号発信器41は、生成する信号の波形を選択する波形選択部44と、信号の周波数(すなわち、振動部21bを加振する加振周波数)を調整する加振周波数調整部45と、信号の位相を調整する電気的位相調整部46と、信号の振幅を調整する振幅調整部47、48と、を有する。波形選択部44は、加振周波数調整部45と電気的に接続されている。加振周波数調整部45は、電気的位相調整部46及び振幅調整部47と電気的に並列に接続されている。電気的位相調整部46は、振幅調整部48と電気的に接続されている。
【0037】
第1の信号は、波形選択部44によって選択された波形と、加振周波数調整部45によって調整された加振周波数と、振幅調整部47によって調整された振幅とを有し、アンプ42へ出力される。第2の信号は、波形選択部44によって選択された波形と、加振周波数調整部45によって調整された加振周波数と、電気的位相調整部46によって調整された位相と、振幅調整部48によって調整された振幅とを有し、アンプ43へ出力される。第1の信号と第2の信号とは、位相が互いに90°異なる。なお、第1の信号及び第2の信号は、例えば正弦波信号であるが、矩形波信号や三角波信号等でも良い。
【0038】
アンプ42は、第1の信号を増幅するためのものであり、信号発信器41と駆動手段23aとの間に配置されている。アンプ43は、第2の信号を増幅するためのものであり、信号発信器41と駆動手段23bとの間に配置されている。第1の信号は、アンプ42によって増幅されて駆動手段23aに印加され、第2の信号は、アンプ43によって増幅されて駆動手段23bに印加される。これにより、駆動手段23aと駆動手段23bが伸縮することで、節の位置が互いにλ/4ずれており、且つ、位相が互いに90°異なる2つの定在波が、振動部21b全体に発生する。これらの定在波は、上下方向にのみ振動する波であり、その波長はλである。上記2つの定在波が重なり合うと、搬送面31、32において一方向へ進行する、波長λを有するたわみ進行波が生じ、搬送面31、32の各点が上下方向及び水平方向に振動する。
【0039】
例として、搬送面31に発生するたわみ進行波について、
図6を用いて説明する。
図6は、搬送面31に発生するたわみ進行波を側面から見た図である。たわみ進行波は、
図6(a)において実線の矢印で示す方向(後方)へ、周期Tで進行する。ここでは、振動の中立軸Nが、振動部21bの上下方向の中心と同じ位置にあるものとし、前述した中空部分35については考慮せずに説明する。
【0040】
時刻t=0において、搬送面31上のある質点Zが、最も上昇した状態であるとする(
図6(a)参照)。その後、質点Zは下降するとともに前方に移動し、時刻t=T/4において最も前方に位置する(
図6(b)参照)。また、質点Zは、時刻t=2T/4においては最も下方に位置し(
図6(c)参照)、時刻3T/4においては最も後方にある(
図6(d)参照)。このように、質点Zは、楕円軌道101を描くように上下方向及び前後方向に運動する。楕円軌道101において、質点Zが最も上方にあるとき、搬送面31とワークWとの間の摩擦力による水平方向の推進力が発生し、たわみ進行波の進行方向とは逆方向へワークWが搬送される。ワークWの推進力は、質点Zの前後方向の変位A1が大きいほど大きくなる。
【0041】
本実施形態では、ワークWは、メイントラック28においては前方へ搬送され、リターントラック29においては反時計回りに搬送される(
図2の二点鎖線の矢印参照)。すなわち、振動部21bにおいては、平面視で時計回りにたわみ進行波が発生し、反時計回りにワークWの推進力が発生する。
【0042】
(振動部の詳細構成)
リニアフィーダ3は、ワークWを滑らかに搬送し、且つ、ワークWの搬送速度を大きくするために、振動部21bにおいて以下のような構成を備えている。振動部21bの詳細構成について、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は、搬送部21の平面図である。
図8(a)は、
図7のVIII(a)-VIII(a)断面図であり、搬送面31が見える位置における断面図である。
図8(b)は、
図7のVIII(b)-VIII(b)断面図である。
【0043】
図7において、ワークWが搬送される搬送方向を図示している。なお、
図7及び
図8(b)においては、搬送面31、32の図示を省略している。また、
図8(b)においては、固定部21aの図示を省略し、振動部21bのみを示している。また、本実施形態において、振動部21bは単一の材料で形成されており、ヤング率は一様であるものとする。
【0044】
図8(a)に示すように、搬送面31は、振動部21bの上面24に、搬送方向において連続的に形成されている。すなわち、搬送面31に凹凸が形成されておらず、搬送面31は搬送方向において略平坦になっている。図示は省略するが、搬送面32も同様に、搬送方向において連続的に形成されている。
【0045】
図7及び
図8に示すように、振動部21bの内部には、搬送方向に沿って中空部分35が形成されている。
図8(b)に示すように、中空部分35の、搬送方向と直交する断面の形状は、略矩形である。中空部分35は、下面25よりも上面24に近い側に位置する。これにより、振動部21bの断面の図心36(すなわち、振動部21bの重心)は、上面24と下面25との中心に位置する中心面Cよりも、下方に位置する。上記断面の図心を通る軸が、振動部21bの振動の中立軸Nである。
図8(b)に示すように、振動部21bの振動の中立軸Nは、中心面Cよりも下方、すなわち中心面Cよりも搬送面31、32から遠い側にある。
【0046】
(中立軸の位置と搬送面の楕円運動の変位との関係)
上記のような構成を有する振動部21bにおける、中立軸Nの位置と搬送面31、32の楕円運動の変位との関係について、
図9を用いて説明する。
図9は、
図6と同様に、搬送面31に発生するたわみ進行波を側面から見た図である。
図9は、中立軸Nが中心面Cよりも搬送面31、32から遠い側にあることを考慮に入れた点で、
図6と相違する。
【0047】
中立軸Nから搬送面31までの距離が大きいほど、たわみ進行波によって、搬送面31が前後方向に大きく伸縮する。このため、
図9(a)〜(d)に示すように、質点Zは、
図6の楕円軌道101よりも大きな楕円軌道102を描くように運動する。つまり、楕円軌道102における搬送方向の変位A2は、楕円軌道101における搬送方向の変位A1と比べて大きい。したがって、搬送面31上のワークWの推進力が大きくなり、ひいてはワークWの搬送速度が大きくなる。勿論、搬送面31を搬送面32に置き換えても、同様のことが言える。
【0048】
以上のように、搬送面31、32が連続的に形成されており、且つ、振動部21bの振動の中立軸Nが、中心面Cよりも搬送面31、32から遠い側に位置する。このため、中立軸Nが中心面Cと同じ高さにある場合と比べて、搬送方向において、搬送面31、32の楕円運動の変位が大きくなり、ワークWの搬送速度が上がる。したがって、搬送面31、32がスリット加工等されておらず、且つ、搬送面31、32上にライニングがなくとも、ワークWを滑らかに搬送し、且つ、ワークWの搬送速度を上げることができる。さらに、スリット加工等の必要性がないため、加工コストを削減することができる。
【0049】
また、振動部21bの、搬送方向と直交する断面の図心36が、中心面Cよりも搬送面31、32から遠い側に位置するため、中立軸Nを搬送面31、32から遠ざけ、搬送方向において、搬送面31、32の楕円運動の変位を大きくすることができる。また、振動部21bを単一材料で形成することが可能であるため、構成の単純化及びコストの削減ができる。
【0050】
また、中立軸Nが中心面Cよりも搬送面31、32から遠い側に位置するように、中空部分35が形成されているため、搬送面31、32の楕円運動の、搬送方向の変位を大きくすることができ、ワークWの搬送速度を上げることができる。また、中空部分35がない場合と比べて搬送部21に使用される材料の量を少なくすることができ、部材の軽量化や材料費の削減ができる。
【0051】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。また、以降の変形例においては、搬送面31、32は、前記実施形態と同様に振動部の上面に形成されているため、図示を省略する。
【0052】
(1)前記実施形態においては、一様なヤング率を有する振動部21bに中空部分35を設けることで、中立軸Nを搬送面31、32から遠ざけるようにしたが、振動部21bと異なる構成により、中立軸Nを搬送面31、32から遠ざけても良い。例えば、
図10(a)に示す搬送部51においては、振動部51bの搬送方向と直交する断面が、上辺が下辺よりも短い略台形状になっている。この場合、中心面Cと上面52との間の領域53の断面積が、中心面Cと下面54との間の領域55の断面積よりも小さい。これにより、振動部51bの、搬送方向と直交する断面における図心56が搬送面31、32から遠ざかりやすいため、中立軸Nを搬送面31、32から遠ざけて、搬送方向において、搬送面31、32の楕円運動の変位を大きくすることができる。同様に、
図10(b)に示す搬送部61において、振動部61bの搬送方向と直交する断面が略凸状になっている。この場合も、中心面Cと上面62との間の領域63の断面積が、中心面Cと下面64との間の領域65の断面積よりも小さいため、図心66が搬送面31、32から遠ざかる。このように、振動部51b、61bに中空部分を形成しない場合であっても、断面形状を工夫することにより、中立軸Nを搬送面31、32から遠ざけることができる。また、振動部51b、61bの内部に中空部分を形成すると、中立軸Nを搬送面31、32からさらに遠ざけることができる。なお、この変形例において、断面形状は上記のものに限られない。
【0053】
(2)前述までの実施形態においては、一様なヤング率を有する振動部において中立軸Nを搬送面31、32から遠ざけるようにしたが、別の構成により中立軸Nを搬送面31、32から遠ざけても良い。例えば、
図11に示す搬送部71において、振動部71bは、上面72を有する第1振動部分73と、第1振動部分73の下面に接合された、下面74を有する第2振動部分75と、を有する。第1振動部分73のヤング率は、第2振動部分75のヤング率よりも低い。すなわち、第1振動部分73は第2振動部分75よりも伸縮しやすい。このため、例えば振動部71b全体が単一材料からなる場合と比べると、中立軸Nは、比較的伸縮しにくい第2振動部分75側に移動し、第1振動部分73に形成された搬送面31、32から遠ざかる。したがって、材料の適切な選択により中立軸Nを搬送面31、32から効果的に遠ざけ、搬送方向において、搬送面31、32の楕円運動の変位を大きくすることができる。
【0054】
さらに、第1振動部分73の厚みは、第2振動部分75の厚みよりも大きい。つまり、第2振動部分75の厚みに対して、比較的伸縮しやすい第1振動部分73の厚みの割合が大きい。このため、中立軸Nを搬送面31、32からさらに遠ざけ、搬送方向において、搬送面31、32の楕円運動の変位をさらに大きくすることができる。
【0055】
この変形例において、振動部71bの搬送方向と直交する断面の形状を、略矩形以外の形状にしても良い。また、振動部71bの内部に、中立軸Nが搬送面31、32からさらに遠ざかるように中空部分を形成しても良い。
【0056】
(3)ワークWの搬送速度を上げるために、ワークWと搬送面31、32との間の摩擦力を強めるような構成になっていても良い。上記構成の一例について、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は、前述した振動部21bと同様の中空部分83を有する振動部81bの、搬送方向と直交する断面図である。
図13は、振動部81bを有する搬送部81と、その周辺の構成を示す図である。この変形例におけるリニアフィーダ80には、搬送面31、32上の空気を吸引するための吸引経路91が形成されており、後述する吸引ポンプ95を動作させることによってワークWを搬送面31、32側に引き付けるような構成になっている。
【0057】
搬送部81は、例えば多孔質セラミックス等の多孔質材料で形成されており、内部に複数の微小な孔を有する。上記複数の孔によって、振動部81bの上面82に複数の開口(不図示)が形成されており、搬送面31、32から中空部分35に通じる複数の連通孔(不図示)が形成されている。また、
図13に示すように、中空部分35は、搬送部81の前後方向の端部において、貫通孔92を通じて搬送部81の外側につながっている。搬送部81の前後方向の端部には、貫通孔92と連通する接続部93が設けられている。接続部93にはチューブ94の一端部が取り付けられており、チューブ94の他端部は、ダイヤフラムポンプ等の吸引ポンプ95に取り付けられている。このようにして、吸引経路91が形成される。
【0058】
吸引ポンプ95が動作すると、搬送面31、32の上方の空気が、開口、連通孔、中空部分35、貫通孔92、チューブ94の順に通って吸引される。これにより、開口に負圧が発生することで、開口に搬送面31、32側への吸引力が発生し、ワークWが搬送面31、32側へ引き付けられる。このため、中立軸Nを搬送面31、32から遠ざけるとともに、搬送面31、32とワークWとの間の摩擦力を大きくしてワークWの推進力を大きくすることができ、ワークWの搬送速度をさらに上げることができる。このように中空部分83を利用することで、中立軸Nの下降及び搬送面31、32とワークWとの間の摩擦力の増加という、搬送速度の上昇に寄与する2つの効果が得られる。
【0059】
(4)搬送部21等の形状は、平面視略矩形状に限らず、例えば平面視略長円状などでも良い。