特開2018-95587(P2018-95587A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本合成化学工業株式会社の特許一覧
特開2018-95587スズキレート錯体、その製造方法、およびスズキレート錯体から形成されてなる透明導電膜
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-95587(P2018-95587A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】スズキレート錯体、その製造方法、およびスズキレート錯体から形成されてなる透明導電膜
(51)【国際特許分類】
   C07C 215/08 20060101AFI20180525BHJP
   C07C 215/10 20060101ALI20180525BHJP
   C07F 7/22 20060101ALN20180525BHJP
【FI】
   C07C215/08CSP
   C07C215/10
   C07F7/22 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-240984(P2016-240984)
(22)【出願日】2016年12月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000004101
【氏名又は名称】日本合成化学工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区小松原町2番4号
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
【住所又は居所】山形県山形市小白川町1丁目4−12
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】畠山 卓也
【住所又は居所】大阪府大阪市北区小松原町2番4号 日本合成化学工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】栗原 正人
【住所又は居所】山形県山形市小白川町一丁目4−12 国立大学法人山形大学内
(72)【発明者】
【氏名】金井塚 勝彦
【住所又は居所】山形県山形市小白川町一丁目4−12 国立大学法人山形大学内
【テーマコード(参考)】
4H006
4H049
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB82
4H049VN03
4H049VP01
4H049VQ35
4H049VQ91
4H049VR42
4H049VR52
4H049VU24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】種々の溶媒への溶解性、溶液の透明性、更に経時安定性に優れ、酸化スズ膜等の透明導電膜の形成材料として有用なスズキレート錯体、及びその製造方法の提供。
【解決手段】ジエタノールアミン、プロパノールアミン等に代表される、分子中にアミノ基および/またはイミノ基ならびに水酸基を有する二座以上の配位子がスズに配位したスズキレート錯体。さらに水酸化スズと上記の二座配位子との反応によるスズキレート錯体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されることを特徴とするスズキレート錯体。
【化1】
(式中、Rは主鎖の原子数が1〜20の結合鎖、Rは水素原子または有機基である。)
【請求項2】
アミノ基および/またはイミノ基ならびに水酸基を有する二座以上の配位子(B)がスズに配位されたことを特徴とする請求項1記載のスズキレート錯体。
【請求項3】
前記二座以上の配位子(B)の分子量が500以下であることを特徴とする請求項2記載のスズキレート錯体。
【請求項4】
前記二座以上の配位子(B)の沸点が300℃以下であることを特徴とする請求項2または3記載のスズキレート錯体。
【請求項5】
水酸化スズ(A)を用いることを特徴とする、下記一般式(1)で示されるスズキレート錯体の製造方法。
【化1】
(式中、Rは主鎖の原子数が1〜20の結合鎖、Rは水素原子または有機基である。)
【請求項6】
水酸化スズ(A)と、アミノ基および/またはイミノ基ならびに水酸基を有する二座以上の配位子(B)とを反応させてキレート構造を形成することを特徴とする、請求項5記載のスズキレート錯体の製造方法。
【請求項7】
水酸化スズ(A)が、塩化スズ(IV)より得られることを特徴とする請求項5または6記載のスズキレート錯体の製造方法。
【請求項8】
水酸化スズ(A)と、アミノ基および/またはイミノ基ならびに水酸基を有する二座以上の配位子(B)とを温度20〜300℃で反応させることを特徴とする請求項6または7記載のスズキレート錯体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4いずれか記載のスズキレート錯体から形成されてなることを特徴とする透明導電膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズキレート錯体、その製造方法、およびスズキレート錯体から形成されてなる透明導電膜に関するものであり、更に詳しくは、種々の溶媒への溶解性、溶液の透明性、更に経時安定性に優れ、酸化スズ膜等の透明導電膜の形成材料として有用なスズキレート錯体、その製造方法、およびスズキレート錯体から形成されてなる透明導電膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、透明導電膜の利用が高まっており、例えば、ディスプレイの大型化、太陽電池の高性能化、タッチパネル搭載電子機器の増加に伴って、透明導電膜が益々利用されている。金属酸化物系の透明導電膜としては、ITO、FTO、GZO、IGZO、AZO、ATO、BZO、ZnO、SnO等が用いられるが、中でも耐熱性や耐酸・塩基性の点から酸化スズ系が有利であり、例えば、薄膜シリコン太陽電池、色素増感太陽電池、ペロブスカイト型太陽電池などで検討が進んでいる。
【0003】
通常、酸化スズ膜はスパッタリングやパルスレーザー堆積法(PLD法)などの真空条件を必要とする方法(乾式法)で製膜されているため、サイズ制限やロールtoロールでの製膜が困難とされている。そこで、ロールtoロールでの製膜のために、金属源含有溶液を使う製膜法(湿式法)での酸化スズ膜の製膜が求められている。
【0004】
現在、湿式法での酸化スズ膜作製には、酸化スズナノ微粒子溶液を用いた製膜が主に行われているが、酸化スズナノ微粒子を利用すると膜の機能発現のための他の元素の添加が難しくなるため、高機能な酸化スズ膜を製膜するにあたり、スズ溶液を出発原料とする酸化スズ膜作製が必要であり、これに適応するスズ化合物が必要となる。
湿式法の酸化スズ膜の製造においては、アルコールや水等の溶媒に溶解できるなどの理由のため、通常は塩化スズが出発原料として用いられ、塩化スズ以外のスズ化合物ではアルコールや水等への溶解が難しく、酸化スズ膜を形成するのに良好な原料とはならないのである(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−189346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり、スズ溶液を用いた酸化スズ膜の製造においては、アルコールや水等の溶媒に溶解できることから通常、塩化スズ(IV)を出発原料として用いられるが、使用する溶媒の種類によっては溶液の安定性が劣る場合があり、経時的に溶液が白濁することがある。従って、使用する溶媒の種類が制限されると、薄膜作製の工程において加工温度や目的物により溶媒を使い分けることなどが困難となり、薄膜作製の工程が制限されるおそれがある。
また、製膜後の酸化スズ膜中に塩素が残留してしまい、素子作製時に金属電極の腐食や性能悪化が危惧される。
【0007】
そこで、本発明はこのような背景下において、種々の溶媒への溶解性、溶液の透明性、更に経時安定性に優れ、酸化スズ膜等の透明導電膜の形成材料として有用なスズキレート錯体の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに、本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、スズ溶液を作製するにあたり、水酸化スズに二座以上の配位子を反応させて、キレート構造を有するスズキレート錯体を形成することにより、種々の極性プロトン性溶媒(アルコール、水、酢酸等)に溶解可能であり、溶液の透明性に優れ、更に溶液が経時的に安定であり、透明導電膜の形成に有用な材料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、下記一般式(1)で示されることを特徴とするスズキレート錯体である。
【化1】
(式中、Rは主鎖の原子数が1〜20の結合鎖、Rは水素原子または有機基である。)
【0010】
また、本発明は、水酸化スズ(A)を用いることを特徴とする、上記一般式(1)で示されるスズキレート錯体の製造方法にも関するものである。更に、本発明は、上記スズキレート錯体から形成されてなることを特徴とする透明導電膜にも関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスズキレート錯体は、種々の溶媒への溶解性、溶液の透明性、更に経時安定性に優れ、酸化スズ膜等の透明導電膜の形成材料として有用である。また本発明のスズキレート錯体から形成されてなる透明導電膜は膜の均質性に優れる。更に、本発明のスズキレート錯体の製造方法によれば、本発明のスズキレート錯体を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
【0013】
<スズキレート錯体>
本発明のスズキレート錯体は下記一般式(1)で示されるスズキレート錯体である。
【化1】
【0014】
式中、Rはヘテロ環中のNとOを結合する結合鎖である。結合鎖の主鎖の原子数は1〜20であり、好ましくは1〜15、特に好ましくは1〜10である。かかる原子数が多すぎると、キレート構造を形成し難くなる傾向がある。
かかる結合鎖を構成する原子としては、例えば、炭素、水素、酸素、窒素の各原子が挙げられる。原子数が1〜20の結合鎖としては、例えば、炭素原子が1、水素原子が2で、原子数が3のメチレン基、炭素原子が2、水素原子が4で、原子数が6のエチレン基などが挙げられる。
の結合鎖は側鎖を有していても良い。かかる側鎖としては、例えば、下記Rの説明で記載されている有機基と同様の有機基等が挙げられ、当該有機基等のうち特に原子数が10以下のものが好適に挙げられる。
【0015】
式中、Rは水素原子または有機基であり、かかる有機基としては、特に限定しないが、例えば、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ニトロ基、シアノ基、チオシアン酸基、イソチオシアン酸基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールオキシ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルカルボニル基(アシル基)、アリールカルボニル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸エステル基、フタルイミドメチル基等が挙げられる。
【0016】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基である。
【0017】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クオーターフェニリル基、o−、m−、およびp−トリル基、キシリル基、o−、m−、およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられる。
【0018】
複素環基としては、例えば、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2, 3−b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基等が挙げられる。
【0019】
アルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソペンチルオキシ基等が挙げられる。
【0020】
アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、イソプロピルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、イソペンチルチオ基等が挙げられる。
【0021】
アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、9−アンスリルチオ基、9−フェナントリルチオ基が挙げられる。
【0022】
モノアルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、イソブチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、sec−ペンチルアミノ基、tert−ペンチルアミノ基、tert−オクチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、シクロオクチルアミノ基、シクロドデシルアミノ基、1−アダマンタミノ基、2−アダマンタミノ基等が挙げられる。
【0023】
ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジオクタデシルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、メチルイソブチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基等が挙げられる。
【0024】
アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、クオーターフェニリルオキシ基、o−、m−、およびp−トリルオキシ基、キシリルオキシ基、o−、m−、およびp−クメニルオキシ基、メシチルオキシ基、ペンタレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビナフタレニルオキシ基、ターナフタレニルオキシ基、クオーターナフタレニルオキシ基、アズレニルオキシ基、ヘプタレニルオキシ基、ビフェニレニルオキシ基、インダセニルオキシ基、フルオランテニルオキシ基、アセナフチレニルオキシ基、アセアントリレニルオキシ基、フェナレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、アントリルオキシ基、ビアントラセニルオキシ基、ターアントラセニルオキシ基、クオーターアントラセニルオキシ基、アントラキノリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、トリフェニレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、クリセニルオキシ基、ナフタセニルオキシ基、プレイアデニルオキシ基、ピセニルオキシ基、ペリレニルオキシ基、ペンタフェニルオキシ基、ペンタセニルオキシ基、テトラフェニレニルオキシ基、ヘキサフェニルオキシ基、ヘキサセニルオキシ基、ルビセニルオキシ基、コロネニルオキシ基、トリナフチレニルオキシ基、ヘプタフェニルオキシ基、ヘプタセニルオキシ基、ピラントレニルオキシ基、オバレニルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
モノアリールアミノ基としては、例えば、N−アリールアミノ基、アニリノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、o−トルイジノ基、m−トルイジノ基、p−トルイジノ基、2−ビフェニルアミノ基、3−ビフェニルアミノ基、4−ビフェニルアミノ基、1−フルオレンアミノ基、2−フルオレンアミノ基、2−チアゾールアミノ基、p−ターフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0026】
ジアリールアミノ基としては、例えば、ジアリールアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−フェニル−1−ナフチルアミノ基、N−フェニル−2−ナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0027】
アルキルカルボニル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基等が挙げられる。
【0028】
アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、シンナモイル基、3−フロイル基、2−テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、9−アンスロイル基、5−ナフタセノイル基等が挙げられる。
【0029】
上記の有機基の各々は、2以上の有機基が複合したものであってもよく、また二重結合を有する基を有していてもよい。二重結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アリル基、2−メチルアリル基、クロチル基、イソクロチル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基等が挙げられる。
【0030】
上記一般式(1)で示されるスズキレート錯体としては、例えば、アミノ基および/またはイミノ基ならびに水酸基を有する二座以上の配位子(B)がスズに配位されたスズキレート錯体が挙げられる。
【0031】
かかる二座以上の配位子(B)としては、好ましくは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、グリセリン、ヒドロキシキノール、フロログルシノール、ピロガロールなどの多価アルコール;エタノールアミン、ヘプタミノール、イソエタリン、1−アミノ−2−プロパノール、プスフィンゴシン、メタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、2,2´−イミノジエタノールなどのアミノ基および/またはイミノ基ならびに水酸基を含有する化合物などが挙げられ、キレート化の収率の点で、アミノ基および/またはイミノ基ならびに水酸基を含有する化合物が特に好ましく、入手の容易さの点で、更に1−アミノ−2−プロパノール、2,2´−イミノジエタノールが好ましい。
【0032】
上記二座以上の配位子(B)の分子量は、キレート錯体の形成のしやすさの点で、500以下が好ましく、特に450以下が好ましく、更に400以下が好ましい。二座以上の配位子(B)の分子量が高すぎると、サイズが大きすぎて1分子で金属に二座以上配位したキレート錯体になり難くなる傾向がある。なお、分子量の下限は通常40であり、好ましくは50である。
【0033】
また、上記二座以上の配位子(B)の沸点は、製膜条件の低温化の点で、300℃以下が好ましく、特に250℃以下が好ましく、更に200℃以下が好ましい。沸点の低い配位子(B)を用いることにより低温加熱で製膜することができるため、省エネルギーで製膜可能である。なお、沸点の下限は通常25℃であり、好ましくは50℃である。
【0034】
<スズキレート錯体の製造方法>
一般式(1)で示されるスズキレート錯体は、例えば、水酸化スズ(A)を用いることによって製造することができる。
水酸化スズ(A)は、塩化スズ(IV)より得ることができ、例えば、塩化スズ(IV)と塩基性化合物を反応させて得ることができる。
また、水酸化スズ(A)は、塩化スズ(IV)以外からも得ることができ、例えば、スズ(IV)の硫酸溶液に大量の水を加えることで生成させることができる。
【0035】
水酸化スズ(A)を用いて一般式(1)で示されるスズキレート錯体を製造する方法としては、例えば、水酸化スズ(A)とアミノ基及び水酸基を有する二座以上の配位子(B)とを反応させてキレート構造を形成する方法が挙げられる。
水酸化スズ(A)と二座以上の配位子(B)とを反応させるに際しては、水酸化スズ(A)1モルに対して、二座以上の配位子(B)を通常2〜200モル、好ましくは5〜100モル、特に好ましくは10〜20モルを反応させる。
反応時の温度は、好ましくは20〜300℃、更に好ましくは50〜280℃、特に好ましくは70〜250℃、殊に好ましくは100〜200℃である。反応時間は、好ましくは1〜1440分間、特に好ましくは10〜1000分間、更に好ましくは20〜500分間である。
反応温度が低すぎる場合は反応が進行しない傾向があり,高すぎる場合は配位子(B)が揮発する傾向がある。また、反応時間が短すぎる場合は反応が進行しない傾向があり,長すぎる場合は着色する傾向がある。
【0036】
以上の製造方法によって、常温下、目視で無色透明な液体である本発明のスズキレート錯体が得られる。本発明のスズキレート錯体は、種々の溶媒に容易に溶解することができ、例えばメタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒、蒸留水などの水、酢酸などのカルボン酸系溶媒などの溶媒に混和させた場合に、経時的に白濁することもなく安定に存在することかできる。
【0037】
本発明のスズキレート錯体の分解温度は、300℃以下が好ましく、特に250℃以下が好ましく、更に200℃以下が好ましい。分解温度の低いスズキレート錯体を用いることによって、基材上に透明導電膜を製膜する際の加熱温度を低くすることができ、省エネルギーで製膜可能である。なお、分解温度の下限は通常180℃であり、好ましくは100℃である。
【0038】
本発明のスズキレート錯体は、種々の溶媒への溶解性、溶液の透明性、更に経時安定性に優れているため、湿式法による酸化スズ膜の製造に好適に使用することができる。
以下に、本発明のスズキレート錯体から本発明の透明導電膜を形成する方法について説明する。
【0039】
<透明導電膜>
本発明の透明導電膜は、本発明のスズキレート錯体から形成され、例えば、本発明のスズキレート錯体を含有する酸化スズ膜製膜用液を基材上に塗布し、加熱することにより形成される。
【0040】
本発明で用いられる酸化スズ膜製膜用液は、本発明のスズキレート錯体を含有するペーストまたは溶液である。
かかるペーストまたは溶液に用いられる溶媒としては、例えば、蒸留水、イオン交換水などの水;エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒;酢酸などのカルボン酸系溶媒:アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、サクサンブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;炭酸ジエチル、炭酸プロピレン等の炭酸エステル系溶媒;ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭水化物系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1, 3−ジメチルイミダゾリノン、Nメチルピロリドンなどが挙げられ、これら溶媒のうち二種類以上の溶媒を混合して用いることができる。好ましくは、メタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒溶剤、蒸留水などの水、酢酸などのカルボン酸系溶媒である。
【0041】
本発明のスズキレート錯体を含有するペーストを用いる場合、ペースト中のスズキレート錯体の含有量は、固形分にて、好ましくは0.1〜90重量%であり、特に好ましくは20〜80重量%、更に好ましくは50〜70重量%である。スズキレート錯体の含有量が少なすぎると製膜が困難になる傾向があり、含有量が多すぎるとペーストとして分散させるのが困難になる傾向がある。
かかるペーストを基材上に塗布する方法としては、例えば、スピンコーターによる塗布方法、スクリーン印刷法、スキージーを用いた塗布方法、ディップ法、吹き付け法、ローラー法などが挙げられる。
【0042】
本発明のスズキレート錯体を含有する溶液を用いる場合、溶液中のスズキレート錯体の含有量は、固形分にて、好ましくは0.001〜30重量%であり、特に好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.02〜2重量%である。スズキレート錯体の含有量が少なすぎると製膜が困難になる傾向があり、含有量が多すぎると、透明度の低い薄膜になる傾向がある。
かかる溶液を基材上に塗布する方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、スピンコーティング法、インクジェット印刷、グラビア印刷などが挙げられる。
【0043】
本発明のスズキレート錯体を含有するペーストまたは溶液は、必要に応じて、増粘成分としてのバインダー樹脂を含有していてもよい。
バインダー樹脂としては、例えば、セルロース系、ポリエチレングリコール系、アクリル系、ウレタン系、ポリオール系、ポリエチレン系、ポリアミド系などが挙げられる。
本発明のスズキレート錯体を含有するペーストまたは溶液中のバインダー樹脂の含有量は、固形分にて、好ましくは1〜50重量%である。
また、本発明のスズキレート錯体を含有するペーストまたは溶液は、ペーストや溶液の保存安定性、乾燥性、基材密着性、成膜適正等の性質を向上させる目的で、種々の添加剤を含有していてもよい。
【0044】
本発明のスズキレート錯体を含有する酸化スズ膜製膜用液を塗布する基材としては、例えば、石英、ソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス等のガラス基材;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、塩化ビニル等の樹脂基材が挙げられる。
【0045】
基材上に透明導電膜を製膜するに際しては、加熱後の膜厚が通常10〜2000nm、好ましくは50〜400nmになるように、スズキレート錯体を含有する酸化スズ膜製膜用液を基材上に塗布した後、加熱を行なう。加熱温度は、スズキレート錯体が分解する温度以上で、かつ基材の変形温度以下であり、例えば、通常50〜500℃、好ましくは100〜400℃である。加熱時間は、例えば、1分間〜数時間である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中の「%」とあるのは重量基準を意味する。
【0047】
<実施例1>
(配位子(B):2,2´−イミノジエタノール(ジエタノールアミン))
塩化スズ(IV)五水和物(3mmol)を蒸留水5mlに溶解させ、この水溶液に28%アンモニア水(5.4ml)を加え、白色沈殿(水酸化スズ)を生じさせた。この白色沈殿に対し、トミー精工製、遠心分離装置「MX−307」を用い、遠心分離(15000rpm,10分間)を行い、上澄みを廃棄し、沈殿に蒸留水10mlを加え超音波を印加した。この水洗作業を2回行ったところ、Sn:Cl=1:0.09(mol)となり、塩素の残留量が低減されたことが分かる。
水洗後の沈殿(水酸化スズ)にジエタノールアミン(30mmol)を加え、130℃で60分間、加熱攪拌して、スズキレート錯体を得た。
得られたスズキレート錯体は、一般式(1)において、Rがエチレン基であり、Rがヒドロキシエキル基である。
なお、ジエタノールアミンの分子量は75.1g/mol、沸点は160℃である。
【0048】
<実施例2>
(配位子(B):1−アミノ−2−プロパノール)
塩化スズ(IV)五水和物(3mmol)を蒸留水5mlに溶解させ、この水溶液に28%アンモニア水(5.4ml)を加え、白色沈殿(水酸化スズ)を生じさせた。この白色沈殿に対し、実施例1と同様に、遠心分離(15000rpm,10分間)を行い、上澄みを廃棄し、沈殿に蒸留水10mlを加え超音波を印加した。この水洗作業を2回行った。
水洗後の沈殿(水酸化スズ)に1−アミノ−2−プロパノール(30mmol)を加え、110℃で90分間、加熱攪拌して、スズキレート錯体を得た。
得られたスズキレート錯体は、一般式(1)において、Rがプロピレン基であり、Rが水素原子である。
なお、1−アミノ−2−プロパノールの分子量は105.1g/mol、沸点は280℃である。
【0049】
<比較例1>
(配位子:酢酸)
塩化スズ(IV)五水和物(3mmol)を蒸留水5mlに溶解させ、この水溶液に28%アンモニア水(5.4ml)を加え、白色沈殿(水酸化スズ)を生じさせた。この白色沈殿に対し、実施例1と同様に、遠心分離(15000rpm,10分間)を行い、上澄みを廃棄し、沈殿に蒸留水10mlを加え超音波を印加した。この水洗作業を2回行った。
水洗後の沈殿(水酸化スズ)に酢酸(30mmol)を加え、110℃で90分間、加熱攪拌して、スズキレート錯体を得た。
【0050】
<実験例>
実施例および比較例のスズキレート錯体を用いて、下記の評価を行なった。
(透明性:表1)
容量10mLのサンプル瓶に、スズキレート錯体溶液(500μl)と各種溶媒(5ml)を重量比で1:10(体積比)で混和させたものを入れ、その直後に目視で濁り具合を評価した。
○:透明である。
×:白濁しており、瓶の向こう側が見えない。
(経時安定性:表2)
上記サンプル瓶を1日放置し、同様の評価を行った。
○:透明である。
×:白濁しており、瓶の向こう側が見えない。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1および表2に示す結果から、本発明に係る実施例1および2のスズキレート錯体は蒸留水、酢酸、メタノール、エタノール、プロパノールの各溶媒に対して、溶解性、溶液の透明性、および経時安定性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のスズキレート錯体は、種々の溶媒への溶解性、溶液の透明性、更に経時安定性に優れていることから、湿式法による酸化スズ膜の製膜に好適に利用することができ、例えば、ディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどに用いられる透明導電膜の製造に利用することができる。