【解決手段】天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムと、ガラス転移点が−70〜−20℃のスチレンブタジエンゴムとを含むゴム成分100質量部に対し、式(1)で表される構成単位を有しかつ反応性シリル基を持たない(メタ)アクリレート系重合体からなる、ガラス転移点が−70〜0℃かつ平均粒径が10nm以上100nm未満の微粒子を、1〜30質量部含有するゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤである。式(1)中、R
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係るゴム組成物は、特定のジエン系ゴムからなるゴム成分に、特定の(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子を配合してなるものである。
【0013】
上記ゴム成分として、本実施形態では、天然ゴム(NR)及び/又は合成イソプレンゴム(IR)と、ガラス転移点(Tg)が−70〜−20℃のスチレンブタジエンゴム(SBR)とを用いる(以下、Tgが−70〜−20℃のSBRを、SBR−Aという)。これらのNR、IR及びSBR−Aは、それぞれいずれか1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。好ましくはNRとSBR−Aを用いることである。
【0014】
ゴム成分100質量部中におけるこれらゴムの比率は、特に限定されず、例えば、NR及び/又はIRが20〜70質量部で、SBR−Aが80〜30質量部でもよく、NR及び/又はIRが20〜50質量部で、SBR−Aが80〜50質量部でもよく、NR及び/又はIRが20〜40質量部で、SBR−Aが80〜60質量部でもよい。
【0015】
SBR−Aのガラス転移点は、より好ましくは−60〜−30℃であり、−50〜−30℃でもよい。なお、ガラス転移点は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分にて(測定温度範囲:−150℃〜50℃)測定される値である。
【0016】
上記NR,IR及びSBR−Aとしては、その分子末端又は分子鎖中において、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシシリル基、及びエポキシ基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基が導入されることで、当該官能基により変性された変性ジエン系ゴムを用いてもよい。変性ジエン系ゴムとしては、SBR−Aを変性した変性SBR−Aが好ましく、一実施形態として、アミノ基及び/又はアルコキシシリル基で変性された変性SBR−Aを用いてもよい。一実施形態において、ゴム成分は、未変性のSBR−Aと、変性SBR−Aと、NR及び/又はIRとを含むものでもよく、例えば、ゴム成分100質量部は、10〜40質量部の未変性のSBR−Aと、10〜40質量部の変性SBR−Aと、20〜50質量部のNRとを含むものでもよく、20〜40質量部の未変性のSBR−Aと、20〜40質量部の変性SBR−Aと、20〜40質量部のNRとを含むものでもよい。
【0017】
本実施形態において、ゴム成分は、上記のようにNR及び/又はIRと、SBR−Aとからなるものであるが、効果が損なわれない範囲で、他のジエン系ゴムが含まれてもよい。他のジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、Tgが上記範囲に含まれないSBR等が挙げられる。
【0018】
上記微粒子としては、下記一般式(1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート単位を構成単位(繰り返し単位とも称される。)として有する(メタ)アクリレート系重合体からなるものが用いられる。
【0019】
【化2】
式(1)中、R
1は、水素原子又はメチル基であり、同一分子中に存在するR
1は同一でも異なってもよい。R
2は、炭素数4〜18のアルキル基であり、同一分子中に存在するR
2は同一でも異なってもよい。R
2のアルキル基は直鎖でも分岐していてもよい。R
2は、炭素数6〜16のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数8〜15のアルキル基である。
【0020】
該(メタ)アクリレート系重合体は、1種又は2種以上のアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマーを重合してなるものである。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートのうちの一方又は両方を意味する。また、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸のうちの一方又は両方を意味する。
【0021】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ノニル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ウンデシル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸n−トリデシル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ノニル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ウンデシル、及びメタクリル酸n−ドデシル等の(メタ)アクリル酸n−アルキル; アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸イソヘプチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸イソウンデシル、アクリル酸イソドデシル、アクリル酸イソトリデシル、アクリル酸イソテトラデシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸イソヘキシル、メタクリル酸イソヘプチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸イソウンデシル、メタクリル酸イソドデシル、メタクリル酸イソトリデシル、及びメタクリル酸イソテトラデシル等の(メタ)アクリル酸イソアルキル; アクリル酸2−メチルブチル、アクリル酸2−エチルペンチル、アクリル酸2−メチルヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−エチルヘプチル、メタクリル酸2−メチルペンチル、メタクリル酸2−メチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸2−エチルヘプチルなどが挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
ここで、イソアルキルとは、アルキル鎖端から2番目の炭素原子にメチル側鎖を有するアルキル基をいう。例えば、イソデシルとは、鎖端から2番目の炭素原子にメチル側鎖を持つ炭素数10のアルキル基をいい、8−メチルノニル基だけでなく、2,4,6−トリメチルヘプチル基も含まれる概念である。
【0023】
一実施形態として、(メタ)アクリレート系重合体は、式(1)で表される構成単位として下記一般式(2)で表される構成単位を有する重合体であることが好ましい。
【0024】
【化3】
式(2)中、R
3は、水素原子又はメチル基であり(好ましくはメチル基)、同一分子中のR
3は同一でも異なってもよい。Zは、炭素数1〜15のアルキレン基(即ち、アルカンジイル基)であり、同一分子中のZは同一でも異なってもよい。Zは直鎖でも分岐していてもよい。
【0025】
式(2)の構成単位は、式(1)中のR
2が下記一般式(2A)で表される場合である。
【0026】
【化4】
式(2A)中のZは、式(2)のZと同じである。
【0027】
このような構成単位を生じる(メタ)アクリレートとしては、上記の(メタ)アクリル酸イソアルキルが挙げられる。かかるイソアルキル基を有する(メタ)アクリレート(より好ましくは、メタクリレート)を用いることにより、本実施形態による効果を高めることができる。式(2)及び(2A)中のZは、炭素数5〜12のアルキレン基であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜10のアルキレン基である。特に好ましくは、炭素数7のアルキレン基であり、一例として、(メタ)アクリレート系重合体は、メタクリル酸イソデシルを含むモノマーの重合体であることが好ましい。
【0028】
他の実施形態において、上記(メタ)アクリレート系重合体は、式(1)で表される構成単位として、下記一般式(3)で表される構成単位を有する、重合体でもよく、あるいはまた、式(2)で表される構成単位と式(3)で表される構成単位を有する、重合体でもよい。後者の場合、両構成単位の付加形態は、ランダム付加でもブロック付加でもよく、好ましくはランダム付加である。
【0029】
【化5】
式(3)中、R
4は、水素原子又はメチル基であり(好ましくはメチル基)、同一分子中のR
4は同一でも異なってもよい。Q
1は、炭素数1〜6(より好ましくは1〜3)のアルキレン基(即ち、アルカンジイル基)であり、直鎖でも分岐でもよく(好ましくは直鎖)、同一分子中のQ
1は同一でも異なってもよい。Q
2は、メチル基又はエチル基であり(好ましくはエチル基)、同一分子中のQ
2は同一でも異なっていてもよい。
【0030】
式(3)の構成単位は、式(1)中のR
2が下記一般式(3A)で表される場合である。
【0031】
【化6】
式(3A)中、Q
1及びQ
2は、それぞれ式(3)のQ
1及びQ
2と同じである。
【0032】
ここで、該共重合体において、式(2)の構成単位を生じる(メタ)アクリレートの具体例としては、上記の(メタ)アクリル酸イソアルキルが挙げられ、特に好ましくは、メタクリル酸イソデシルである。また、式(3)の構成単位を生じる(メタ)アクリレートの具体例としては、上記列挙のアルキル(メタ)アクリレートのうち、(メタ)アクリル酸n−アルキルおよび(メタ)アクリル酸イソアルキルを除くものが挙げられ、特に好ましくは、メタクリル酸2−エチルヘキシルである。
【0033】
このような共重合体の場合、式(2)の構成単位と式(3)の構成単位の比率(共重合比)は、特に限定されない。例えば、式(2)の構成単位/式(3)の構成単位のモル比で、30/70〜90/10でもよく、40/60〜85/15でもよい。
【0034】
本実施形態に係る微粒子を構成する(メタ)アクリレート系重合体は、上記のアルキル(メタ)アクリレートのみの重合体でもよいが、より好ましい実施形態によれば、アルキル(メタ)アクリレートを、多官能ビニルモノマーの存在によって架橋してなる架橋構造の重合体である。すなわち、好ましい実施形態において、(メタ)アクリレート系重合体は、式(1)で表される構成単位とともに、多官能ビニルモノマーに由来する構成単位を含み、該多官能ビニルモノマーに由来する構成単位を架橋点とする架橋構造を有する。
【0035】
多官能ビニルモノマーとしては、フリーラジカル重合によって重合可能な少なくとも2個のビニル基を有する化合物が挙げられ、例えば、ジオールまたはトリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなど)のジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート; メチレンビス−アクリルアミドなどのアルキレンジ(メタ)アクリルアミド; ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの少なくとも2個のビニル基を持つビニル芳香族化合物などが挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
(メタ)アクリレート系重合体は、基本的には式(1)の構成単位からなり、即ち式(1)の構成単位を主成分とするが、効果を損なわない範囲で他のビニル系化合物を併用してもよい。特に限定するものではないが、(メタ)アクリレート系重合体を構成する全構成単位(全繰り返し単位)に対する式(1)の構成単位のモル比が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上である。式(1)の構成単位のモル比の上限は、特に限定しないが、例えば上記の多官能ビニルモノマーを添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。多官能ビニルモノマーに基づく構成単位のモル比は、0.5〜20モル%でもよく、1〜10モル%でもよく、1〜5モル%でもよい。
【0037】
一実施形態において、(メタ)アクリレート系重合体が式(2)の構成単位を有する重合体である場合、当該重合体の全構成単位に対する式(2)の構成単位のモル比は25モル%以上であることが好ましく、より好ましくは35モル%以上であり、50モル%以上でもよく、80モル%以上でもよい。当該モル比の上限は、特に限定しないが、例えば多官能ビニルモノマーを上記のモル比で添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。
【0038】
一実施形態において、(メタ)アクリレート系重合体が式(3)の構成単位を有する重合体である場合、当該重合体の全構成単位に対する式(3)の構成単位のモル比は25モル%以上であることが好ましく、より好ましくは35モル%以上であり、50モル%以上でもよく、80モル%以上でもよい。当該モル比の上限は、特に限定しないが、例えば多官能ビニルモノマーを上記のモル比で添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。
【0039】
また、他の実施形態において、(メタ)アクリレート系重合体が式(2)の構成単位と式(3)の構成単位の共重合体である場合、当該共重合体の全構成単位に対する式(2)の構成単位のモル比が25〜90モル%で、式(3)の構成単位のモル比が5〜60モル%でもよく、式(2)の構成単位のモル比が35〜85モル%で、式(3)の構成単位のモル比が8〜55モル%でもよい。また、式(2)の構成単位と式(3)の構成単位のモル比の合計で80モル%以上でもよく、90モル%以上でもよく、またその上限は、例えば多官能ビニルモノマーを上記のモル比で添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。
【0040】
本実施形態では、上記(メタ)アクリレート系重合体として、反応性シリル基を持たないものを用いる。すなわち、本実施形態において、微粒子はシリカを代替する補強性充填剤として配合するものではないので、該微粒子を構成する(メタ)アクリレート系重合体の分子末端又は分子鎖中に反応性シリル基を有していないものを用いる。これにより、操縦安定性の低下を抑えながら、ウェットグリップ性能を改良するとの本実施形態の効果を有効に発揮することができると考えられる。ここで、反応性シリル基とは、式≡Si−Xで表される官能基(式中、Xはヒドロキシルまたは加水分解可能な基である。)であり、1〜3個のヒドロキシル基又は加水分解可能な1価の基が4価のケイ素原子に結合した構造を有する基である。Xとしては、ヒドロキシル基、アルコキシル基、及びハロゲン原子が挙げられる。
【0041】
本実施形態において、上記(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子のガラス転移点(Tg)は−70〜0℃の範囲内に設定される。ガラス転移点の設定は、(メタ)アクリレート系重合体を構成するモノマー組成等により行うことができる。ガラス転移点が0℃以下であることにより、操縦安定性の低下をより効果的に抑えることができる。また、ガラス転移点が−70℃以上であることにより、ウェットグリップ性能の改善効果を高めることができる。微粒子のガラス転移点は、−50〜−10℃であることが好ましく、より好ましくは−40〜−20℃である。
【0042】
本実施形態において、上記微粒子の平均粒径は10nm以上100nm未満である。上記特定の構成単位を含む(メタ)アクリレート系重合体を、このような微細な粒子としてジエン系ゴム中に添加することにより、操縦安定性の低下を抑えながら、ウェットグリップ性能を向上するという効果を高めることができる。該微粒子の平均粒径は、より好ましくは20〜90nmであり、更に好ましくは30〜80nmである。
【0043】
上記微粒子の製造方法は、特に限定されず、例えば、公知の乳化重合を利用して合成することができる。好ましい一例を挙げれば次の通りである。すなわち、(メタ)アクリレートを、架橋剤としての多官能ビニルモノマーとともに、乳化剤を溶解した水等の水性媒体に分散させ、得られたエマルションに水溶性のラジカル重合開始剤(例えば、過硫酸カリウムなどの過酸化物)を添加してラジカル重合させることにより、水性媒体中に(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子が生成されるので、該水性媒体と分離することで微粒子が得られる。その他の微粒子の製造方法として、公知の懸濁重合や分散重合、沈殿重合、ミニエマルション重合、ソープフリー乳化重合(無乳化剤乳化重合)およびマイクロエマルション重合などの重合方法を利用することができる。
【0044】
本実施形態に係るゴム組成物において、上記(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子の配合量は、ゴム成分100質量部に対して1〜30質量部であり、より好ましくは5〜25質量部であり、更に好ましくは8〜20質量部である。
【0045】
本実施形態に係るゴム組成物には、シリカ及びカーボンブラックを配合することが好ましい。
【0046】
シリカとしては、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカのBET比表面積(JIS K6430に記載のBET法に準じて測定)は、特に限定されず、例えば90〜250m
2/gでもよく、150〜220m
2/gでもよい。シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して20〜150質量部であることが好ましく、より好ましくは30〜100質量部であり、50〜100質量部でもよい。
【0047】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、窒素吸着比表面積(N
2SA)(JIS K6217−2)が30〜120m
2/gであるものを用いてもよく、具体的には、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)、GPF級(N600番台)(ともにASTMグレード)が挙げられる。カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して1〜70質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜40質量部である。
【0048】
本実施形態に係るゴム組成物において、補強性充填剤としては、シリカを主成分とすることが好ましく、すなわち、補強性充填剤の50質量%超がシリカであることが好ましく、より好ましくは補強性充填剤の60質量%以上がシリカである。
【0049】
本実施形態に係るゴム組成物には、スルフィドシランやメルカプトシラン等のシランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、シリカ質量の2〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは4〜15質量%である。
【0050】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、オイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0051】
上記加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0052】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階で、ゴム成分に対し、上記微粒子とともに、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0053】
このようにして得られたゴム組成物は、タイヤに用いられることが好ましく、乗用車用タイヤ、トラックやバスの大型タイヤなど各種用途、各種サイズの空気入りタイヤのトレッド部、サイドウォール部などタイヤの各部位に適用することができる。一実施形態に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物からなるゴム部分を備えるものである。より好ましくは、空気入りタイヤの接地面を構成するトレッドゴムに用いること、即ちタイヤトレッド用ゴム組成物である。該ゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせてグリーンタイヤを作製した後、例えば140〜180℃でグリーンタイヤを加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
[平均粒径の測定方法]
微粒子の平均粒径は、動的光散乱法(DLS)により測定される粒度分布における積算値50%での粒径(50%径:D50)であり、大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計「DLS-8000」を用いた光子相関法(JIS Z8826準拠)により測定した(入射光と検出器との角度90°)。
【0056】
[Tgの測定方法]
微粒子のTgは、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分にて測定した(測定温度範囲:−150℃〜150℃)。
【0057】
[合成例1:微粒子1]
15.0gのメタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル、0.394gのエチレングリコールジメタクリレート、1.91gのドデシル硫酸ナトリウム、120gの水および13.5gのエタノールを混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.179gの過硫酸カリウムを添加した後、1時間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で8時間保持した。得られた溶液中へのメタノール添加による凝析により、14.5gの微粒子1を得た(重合転化率(生成量/仕込量):94%)。微粒子1の平均粒径は60nm、Tgは−37℃であった。
【0058】
微粒子1について、
13C−NMRにより、重合体の化学構造を分析したところ、メタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル由来の式(2)の構成単位とともに、エチレングリコールジメタクリレート由来の構成単位(以下、EGDM構成単位)を有し、各構成単位のモル比は、式(2)の構成単位が97モル%、EGDM構成単位が3.0モル%であった。
【0059】
[合成例2:微粒子2]
15.0gのメタクリル酸2−エチルヘキシル、0.450gのエチレングリコールジメタクリレート、2.18gのドデシル硫酸ナトリウム、0.205gの過硫酸カリウム、120gの水および13.5gのエタノールを用い、合成例1と同様の手法により、14.2gの微粒子2を得た(重合転化率:92%)。微粒子2の平均粒径は58nm、Tgは−10℃であった。微粒子2についての
13C−NMR分析の結果、メタクリル酸2−エチルヘキシル由来の式(3)の構成単位が97モル%、EGDM構成単位が3.0モル%であった。
【0060】
[合成例3:微粒子3]
15.0gのメタクリル酸n−ドデシル、0.351gのエチレングリコールジメタクリレート、1.70gのドデシル硫酸ナトリウム、0.159gの過硫酸カリウム、120gの水および13.5gのエタノールを用い、合成例1と同様の手法により、13.8gの微粒子3を得た(重合転化率:90%)。微粒子3の平均粒径は62nm、Tgは−65℃であった。微粒子3についての
13C−NMR分析の結果、メタクリル酸n−ドデシル由来の式(1)の構成単位が97モル%、EGDM構成単位が3.0モル%であった。
【0061】
[合成例4:微粒子4]
8.0gのメタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル、7.0gのメタクリル酸2−エチルヘキシル(ここで、メタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル/メタクリル酸2−エチルヘキシル=50/50(モル比))、0.420gのエチレングリコールジメタクリレート、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、120gの水および13.5gのエタノールを混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.191gの過硫酸カリウムを添加した後、1時間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で8時間保持した。得られた溶液中へのメタノール添加による凝析により、微粒子4を得た(重合転化率:94%)。微粒子4の平均粒径は60nm、Tgは−24℃であった。微粒子4についての
13C−NMR分析の結果、メタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル由来の式(2)の構成単位が49モル%、メタクリル酸2−エチルヘキシル由来の式(3)の構成単位が48モル%、EGDM構成単位が3.0モル%であった。
【0062】
[ゴム組成物及びタイヤの作製及び評価]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0063】
・SBR1:未変性SBR、Tg=−40℃、JSR(株)製「JSR0122」
・SBR2:アルコキシシリル基及びアミノ基末端変性溶液重合SBR、Tg=−33℃、JSR(株)製「HPR350」
・SBR3:未変性SBR、Tg=−53℃、JSR(株)製「JSR1723」
・SBR4:未変性SBR、Tg=−4℃、住友化学(株)製「SE−6529」
・NR:RSS#3
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」(BET:205m
2/g)
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」(N
2SA:79m
2/g)
・オイル:JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスNC140」
・微粒子1〜4:合成例1〜4による合成品
・石油樹脂:東ソー(株)製「ペトロタック90」
・架橋ゴム粒子:ランクセス社製「Nanoprene BM350H」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニック社製「Si69」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
・加硫促進剤2:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」。
【0064】
得られた各ゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従い加硫成型することにより空気入りラジアルタイヤ(タイヤサイズ:215/45ZR17)を作製した。得られたタイヤについて、操縦安定性とウェットグリップ性能を評価した。各測定・評価方法は以下の通りである。
【0065】
・操縦安定性:試験タイヤ4本を自動車に装着し、テストドライバーが乾燥路面上を走行することにより操縦安定性の官能評価(フィーリング)評価を行った。比較例1における操縦安定性評価を100とした指数で表示し、指数が大きいほど操縦安定性が良好であることを示す。
【0066】
・ウェットグリップ性能:試験タイヤ4本を自動車に装着し、2〜3mmの水深で水をまいた路面上を走行した。100km/hにて摩擦係数を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど摩擦係数が高く、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0067】
【表1】
【0068】
結果は表1に示す通りである。比較例1に対し、石油樹脂を配合した比較例2ではウェットグリップ性能は向上したものの、操縦安定性が低下した。また、架橋ゴム粒子を配合した比較例3ではウェットグリップ性能の向上効果が小さかった。SBRとしてTgが高いものを用いた比較例4では、比較例1に対して、ウェットグリップ性能の向上効果が小さく、操縦安定性も劣っていた。比較例5では、特定の(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子1を配合したものの、Tgが高いSBRと組み合わせたため、比較例1に対して操縦安定性が劣っていた。
【0069】
これに対し、特定のTgを持つSBRとNRからなるゴム成分に、特定の(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子1〜4を配合した実施例1〜11であると、操縦安定性を維持しつつ、ウェットグリップ性能を顕著に向上することができた。
【0070】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。