特開2018-95760(P2018-95760A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-95760(P2018-95760A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/10 20060101AFI20180525BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20180525BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20180525BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
   C08L25/10
   C08L21/00
   C08L7/00
   C08L9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-243055(P2016-243055)
(22)【出願日】2016年12月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】由里 貴史
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC01Y
4J002AC03Y
4J002BC05W
4J002BP01X
(57)【要約】
【課題】加硫ゴムとした場合に、WET性能と、耐摩耗性および低燃費性とをバランス良く向上することができるゴム組成物を提供すること。
【解決手段】ゴム成分の全量を100質量部としたとき、末端変性ポリスチレンブタジエンゴムを10〜80質量部、およびJIS K6394に準拠した動的粘弾性試験(温度依存測定10Hz)において、−20〜20℃の範囲にtanδピーク値を示し、そのピーク値が1以上である熱可塑性エラストマーを1〜20質量部含有するゴム組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分の全量を100質量部としたとき、末端変性ポリスチレンブタジエンゴムを10〜80質量部、およびJIS K6394に準拠した動的粘弾性試験(温度依存測定10Hz)において、−20〜20℃の範囲にtanδピーク値を示し、そのピーク値が1以上である熱可塑性エラストマーを1〜20質量部含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
ゴム成分として、さらに天然ゴムおよびポリブタジエンゴムの少なくとも1種を含有する請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
充填材をさらに含有するものであり、かつ前記熱可塑性エラストマーが、前記充填材と反応または相互作用可能な官能基を有するものである請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分の全量を100質量部としたとき、さらに軟化点が90〜160℃であり、かつ数平均分子量が500〜3000である粘着付与樹脂を1〜40質量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
ゴム成分の全量を100質量部としたとき、さらにTgが−40℃以下である液状ゴムを1〜40質量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WET性能と、耐摩耗性および低燃費性とがバランス良く向上した加硫ゴムを製造するための原料として有用なゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは様々な走行環境で使用され、例えば雨の中、湿潤路面でのグリップ性能であるWET性能を改良することが求められる。しかしながら、かかるWET性能の向上を目的としてゴム組成物の配合設計を行った場合、得られる加硫ゴムの耐摩耗性および低燃費性が悪化する場合があるため、これらをバランス良く向上させる技術が求められていた。
【0003】
下記特許文献1では、低転がり抵抗性を示すと共に良好なレベルの湿潤グリップ性を保持しているタイヤトレッドの開発を目的として、トレッド用ゴム組成物中に、少なくとも1種のジエン系エラストマーと、18〜40phrの水素化スチレン熱可塑性エラストマーとを配合する技術が記載されている。
【0004】
下記特許文献2では、操縦安定性、ドライ性能及びウェット性能を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することを目的として、ジエン系ゴムおよびスチレン−ジエン−スチレン共重合体を部分的に水添したエラストマーをゴム組成物中に配合する技術が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献3では、初期グリップ性能、グリップ性能及び耐久性をバランス良く改善できる高性能タイヤ用トレッドゴム組成物を提供することを目的として、ゴム組成物中に水添スチレン系熱可塑性エラストマーを配合する技術が記載されている。
【0006】
さらに、下記特許文献4では、ウェット路面での初期グリップ性能及びグリップ性能と、ドライアップ路面でのグリップ性能及び耐摩耗性能とをバランス良く改善できる高性能ウェットタイヤ用トレッドゴム組成物を提供することを目的として、ゴム組成物中にスチレンブタジエンゴムおよび水添スチレン系熱可塑性エラストマーを配合する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許5687281号公報
【特許文献2】特開2014−189698号公報
【特許文献3】特開2015−110703号公報
【特許文献4】特開2015−110704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ただし、本発明者が鋭意検討したところ、上記先行技術では、タイヤとした場合に、WET性能と、耐摩耗性および低燃費性とをバランス良く向上するためには、さらなる改良の余地があることが判明した。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加硫ゴムとした場合に、WET性能と、耐摩耗性および低燃費性とをバランス良く向上することができるゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は下記構成により解決可能である。すなわち本発明は、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、末端変性ポリスチレンブタジエンゴム(以下、「末端変性SBR」とも言う)を10〜80質量部、およびJIS K6394に準拠した動的粘弾性試験(温度依存測定10Hz)において、−20〜20℃の範囲にtanδピーク値を示し、そのピーク値が1以上である熱可塑性エラストマーを1〜20質量部含有することを特徴とするゴム組成物に関する。本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分の特定量を末端変性SBRで構成し、かつ特定の温度領域にtanδピークを示す熱可塑性エラストマーを含有するため、その加硫ゴムのWET特性を改善することができる。さらに、加硫ゴム中では、熱可塑性エラストマーがカーボンブラックやシリカなどの充填剤が存在しない相(フィラー不在相)を形成するため、加硫ゴム中での応力集中が緩和されることに起因して、加硫ゴムの耐摩耗性および低燃費性が向上する。特に、本発明に係るゴム組成物が充填剤としてシリカを含有する場合、シリカの分散性が向上することに起因して、加硫ゴムのWET性能が向上する。
【0011】
上記ゴム組成物において、ゴム成分として、さらに天然ゴム(以下、「NR」とも言う)およびポリブタジエンゴム(以下、「BR」とも言う)の少なくとも1種を含有することが好ましい。ゴム成分として、末端変性SBRに加えて、NRおよび/またはBRを含有する場合、加硫ゴムのWET性能と、耐摩耗性および低燃費性とをさらにバランス良く向上することができるため好ましい。
【0012】
上記ゴム組成物において、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、さらに軟化点が90〜160℃であり、かつ数平均分子量が500〜3000である粘着付与樹脂を1〜40質量部含有することが好ましく、さらにTgが−40℃以下である液状ゴムを1〜40質量部含有することが好ましい。これらの構成によれば、加硫ゴムのWET性能をさらに向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分として末端変性SBRを特定量含有し、かつ特定の熱可塑性エラストマーを含有する点が特徴である。ゴム成分の全量を100質量部としたとき、末端変性SBRの含有量は10〜80質量部であり、好適には、20〜70質量部である。
【0014】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分として末端変性SBR以外のゴム成分を含有しても良く、特に、NRおよび/またはBRを含有する場合、加硫ゴムのWET性能と、耐摩耗性および低燃費性とをさらにバランス良く向上することができるため好ましい。NRおよびBR以外に含んでも良いジエン系ゴムとしては、例えばポリイソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などが挙げられる。必要に応じて、所望の特性を付与すべく改質したもの(例えば、改質NR)も好適に使用可能である。
【0015】
本発明に係るゴム組成物は、特定の熱可塑性エラストマー、具体的には、JIS K6394に準拠した動的粘弾性試験(温度依存測定10Hz)において、−20〜20℃の範囲にtanδピーク値を示し、そのピーク値が1以上である熱可塑性エラストマーを、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、1〜20質量部含有する。より好ましくは、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、ゴム組成物中、上記特定の熱可塑性エラストマーを1〜15質量部含有する。熱可塑性エラストマーとして、特にスチレン系熱可塑性エラストマーを使用することが好ましい。
【0016】
上記熱可塑性エラストマーとして、充填材と反応または相互作用可能な官能基、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、無水マレイン酸、シラノール基、アルコキシシリル基、エポキシ基、グリシジル基、ポリエーテル、ポリシロキサンなどを有するものを使用した場合、加硫ゴムの耐疲労性が特に向上するため好ましい。かかる効果が得られる理由としては、充填材として下記に例示するシリカおよび/またはカーボンブラックが、水酸基、カルボキシル基、シラノール基などの多くの官能基を有するため、熱可塑性エラストマーが有する官能基と反応または相互作用することにより、充填材の分散性が向上することが考えられる。
【0017】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、さらに軟化点が90〜160℃であり、かつ数平均分子量が500〜3000である粘着付与樹脂を1〜40質量部含有することが好ましく、1〜25質量部含有することがより好ましい。
【0018】
本発明に係るゴム組成物は、さらに液状ゴムを含有する場合、ゴム組成物の加工性と、得られる加硫ゴムのタイヤのWET性能と耐摩耗性とがさらに向上するため好ましい。液状ゴムは、架橋および鎖延長反応によってゴム弾性体となり得る、分子量が数千の鎖状分子であり、流動性を有する。好ましくは、分子末端にアミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、イソシアネート、チオールまたはハロゲンなどの官能基を有する。液状ゴムとしては、ジエンゴム系(1,2−BR、1,4−BR、1,4−IR、SBR、NBR、CR、IIR)、シリコーンゴム系、ウレタンゴム系、および多硫化ゴム系などが挙げられる。ゴム組成物中の液状ゴムの配合量は、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、1〜40質量部であることが好ましく、1〜25質量部であることがより好ましい。
【0019】
本発明に係るゴム組成物は、充填剤としてシリカを含有することが好ましい。シリカとしては、通常のゴム補強に用いられる湿式シリカ、乾式シリカ、ゾル−ゲルシリカ、表面処理シリカなどが用いられる。なかでも、湿式シリカが好ましい。シリカの配合量は、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、20〜120質量部であることが好ましく、40〜100質量部であることがより好ましい。
【0020】
シランカップリング剤としては、分子中に硫黄を含むものであれば特に限定されず、ゴム組成物においてシリカとともに配合される各種のシランカップリング剤を用いることができる。例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜15質量部である。
【0021】
また、充填剤としてカーボンブラックを含有しても良い。カーボンブラックは、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを1〜70質量部配合することが好ましく、5〜60質量部であることがより好ましい。
【0022】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム、特定の熱可塑性エラストマー、粘着付与樹脂、液状ゴム、カーボンブラック、シリカおよびシランカップリング剤に加えて、加硫系配合剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス、やオイルなどの軟化剤、加工助剤などを配合することができる。
【0023】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましい。
【0024】
加硫系配合剤としては、硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などが挙げられる。
【0025】
加硫系配合剤としての硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。加硫後のゴム物性や耐久性などを考慮した場合、ゴム成分100質量部に対する硫黄の配合量は、硫黄分換算で0.1〜20質量部が好ましい。
【0026】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の配合量は、0.1〜20質量部が好ましい。
【0027】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム、特定の熱可塑性エラストマー、粘着付与樹脂、液状ゴム、カーボンブラック、シリカおよびシランカップリング剤に加えて、必要に応じて、カーボンブラック、加硫系配合剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス、やオイルなどの軟化剤、加工助剤などを、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0028】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄系加硫剤、および加硫促進剤などの加硫系配合剤以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は、各ゴム組成物を150℃にて30分間加熱、加硫して得られたゴムサンプルを下記の評価条件に基づいて評価を行った。
【0030】
(1)WET性能(ウェットグリップ)
東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz,静歪10%,同歪1%,温度0℃で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で示した。数値が高いほど、WET性能に優れることを意味する。
【0031】
(2)発熱特性(低発熱性)
東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz,静歪10%,同歪1%,温度60℃で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で示した。数値が低いほど、低発熱性に優れることを意味する。
【0032】
(3)耐摩耗性
JIS K6264に準拠し、岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用いて、荷重40N, スリップ率30%の条件で摩耗減量を測定し、比較例1の値を100とした指数の逆数で示した。数値が高いほど、耐摩耗性に優れることを意味する。
【0033】
(ゴム組成物の調製)
表1の配合処方に従い、実施例1〜8および比較例1〜5のゴム組成物を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練し、ゴム組成物を調整した。表1に記載の各配合剤を以下に示す(表1において、各配合剤の配合量を、ゴム成分100質量部に対する質量部数で示す)。
a)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマー1;旭化成社製「S.O.E. S1605」(スチレン−水添SB−スチレンブロック共重合体、tanδピーク値=1.38、ピーク温度=18℃)
熱可塑性エラストマー2;クラレ社製「ハイブラー7125」(スチレン−水添IP−スチレンブロック共重合体、tanδピーク値=1.84、ピーク温度=−6℃)
熱可塑性エラストマー3;旭化成社製「S.O.E. S1611」(スチレン−水添SB−スチレンブロック共重合体、tanδピーク値=0.83、ピーク温度=9℃)
熱可塑性エラストマー4;旭化成社製「タフテックH1062」(水添SEBS、tanδピーク値=0.86、ピーク温度=−47℃)
ーク値=0.86、ピーク温度=−47℃)
熱可塑性エラストマー5(変性熱可塑性エラストマー);攪拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサン800g、よく脱水したスチレン38gおよびsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液(10wt%)を7.7g加え、50℃で1時間重合反応を行った。次いで、スチレンとブタジエンの混合物(モル比S:B=3:4)127gを加えて1時間重合反応を行い、更にその後スチレンを38g加えて1時間重合反応を行った。その後にクロロトリエトキシシラン2.5gを加え、最後にメタノールを添加して反応を停止した。片末端にエトキシシリル基を有するスチレン−(スチレン/ブタジエン)−スチレン型のブロック共重合体を合成した。反応溶液を減圧蒸留し溶剤を取り除いて熱可塑性エラストマー5を製造した。GPCより求めた数平均分子量は163,000、スチレン含有率は60%であった。tanδピーク値=1.23、ピーク温度=7℃であった。なお、GPCとして、東ソー社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用い、溶媒はテトラヒドロフランを用い、標準ポリスチレン換算により測定を行った。
b)ゴム成分
末端未変性SBR;ランクセス社製「VSL5025−0HM」
末端変性SBR;JSR社製「HPR350」
NR;「RSS#3」
BR;宇部興産社製「BR150B」
c)シリカ;東ソー・シリカ社製「ニップシールAQ」
d)カーボンブラック;三菱化学社製「ダイアブラックN341」
e)シランカップリング剤;エボニック・デグサ社製「Si69」
f)オイル;JOMO社製「プロセスNC140」
g)粘着付与樹脂
粘着付与樹脂1;三井化学社製「FTR6125」(軟化点125℃、分子量1950、スチレン系と脂肪族系モノマーの共重合体)
粘着付与樹脂2;三井化学社製「FMR0150」(軟化点145℃、分子量1190、スチレン系モノマーとインデンの共重合体)
粘着付与樹脂3;日塗化学社製「ニットレジンG90」(軟化点90℃、分子量770、クマロン系樹脂)
h)亜鉛華;三井金属鉱業社製「亜鉛華1号」
i)老化防止剤;住友化学社製「アンチゲン6C」
j)ステアリン酸;花王社製「ルナックS−20」
k)ワックス;日本精鑞社製「OZOACE0355」
l)硫黄;鶴見化学工業社製「5%油入微粉末硫黄」
m)加硫促進剤
加硫促進剤1;住友化学社製「ソクシノールCZ」
加硫促進剤2;大内新興化学工業社製「ノクセラーD」
n)液状ゴム
液状ゴム1;クラレ社製「LBR307」、(Tg−95℃、液状ポリブタジエン)
液状ゴム2;クラレ社製「LIR30」、(Tg−63℃、液状ポリイソプレン)
【0034】
【表1】
【0035】
表1の結果から、実施例1〜8に係るゴム組成物の加硫ゴムは、WET性能と、耐疲労性および耐引裂き力とがバランス良く向上していることが分かる。