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特開2018-95778タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-95778(P2018-95778A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20180525BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20180525BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
   C08L9/06
   C08L21/00
   B60C1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-243410(P2016-243410)
(22)【出願日】2016年12月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】中村 文彦
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC012
4J002AC032
4J002AC062
4J002AC081
4J002AC082
4J002AC111
4J002FD012
4J002FD071
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】耐オゾン性と外観性を両立することができる、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むゴム成分を含有し、化学的老化防止剤を実質含まないことを特徴とする、タイヤ用ゴム組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むゴム成分を含有し、
化学的老化防止剤を実質含まないことを特徴とする、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
ゴム成分中の前記水添共重合体の含有割合が、80質量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
サイドウォール用であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製された、空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、長期間の使用中に、大気中の酸素やオゾンなどの影響により劣化することで、サイドウォール部やトレッド部の溝底に亀裂が生じ、これが耐久性を悪化させる原因となる。耐オゾン性を改善するために、化学的老化防止剤を配合することがあるが、化学的老化防止剤は、タイヤの加硫ゴム表面に過剰に析出し、ブルーミングが生じたり、タイヤ表面を変色させたりして、外観性を損なうという問題がある。
【0003】
特許文献1〜4には、ゴム成分として芳香族ビニル及び共役ジエンの共重合体の共役ジエン部が水素添加された水添共重合体を使用することが開示されているが、いずれにおいても化学的老化防止剤が使用されており、水添共重合体を用いたゴム組成物においても、外観性に改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−253051号公報
【特許文献2】特開2015−110705号公報
【特許文献3】特開2016−56349号公報
【特許文献4】特開2016−56350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、耐オゾン性と外観性を両立することができるタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は、上記課題を解決するために、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むゴム成分を含有し、化学的老化防止剤を実質含まないことを特徴とする。
【0007】
ゴム成分中の上記水添共重合体の含有割合は、80質量%以上であることが好ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は、サイドウォール用として好適に用いることができる。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤは、上記のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製されたものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によれば、耐オゾン性と外観性を両立した空気入りタイヤを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むゴム成分を含有し、化学的老化防止剤を実質含まないものとする。
【0013】
本実施形態に係るゴム組成物において用いられるゴム成分は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むものである。ここで、本明細書において、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量とは、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてTHFを用い、測定温度を40℃、流量を1.0mL/min、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出した値とする。また、水素添加率は、H−NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算した値とする。
【0014】
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を構成する芳香族ビニルとしては、特に限定されないが、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を構成する共役ジエンとしては、特に限定されないが、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、特に限定されないが、スチレン及び1,3−ブタジエンの共重合体(スチレンブタジエン共重合体)であることが好ましい。従って、水添共重合体としては、水添スチレンブタジエン共重合体であることが好ましい。また、水添共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、交互共重合体であってもよい。
【0017】
上記水添共重合体は、例えば、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を合成し、水素添加処理を行うことで合成することができる。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の合成方法は、特に限定されないが、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法等を挙げることができ、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は市販のものを使用することも可能である。
【0018】
水素添加の方法は、特に限定されず、公知の方法、公知の条件で水素添加すればよい。通常は、20〜150℃、0.1〜10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で実施される。なお、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、反応時間等を変えることにより、任意に選定することができる。水添触媒として、通常は、元素周期表4〜11族金属のいずれかを含む化合物を用いることができる。例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を水添触媒として用いることができる。より具体的な水添触媒としては、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物;Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体;水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。
【0019】
水添共重合体の水素添加率(芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の共役ジエン部に対して水素添加された割合)は80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上である。
【0020】
水添共重合体の重量平均分子量は、30万以上であれば特に限定されないが、30万〜200万であることが好ましく、30万〜100万であることがより好ましく、30万〜60万であることがさらに好ましい。
【0021】
上記ゴム成分には、上記水添共重合体以外のジエン系ゴムが含まれていても良く、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらジエン系ゴムは、いずれか1種単独で、又は2種以上ブレンドして用いることができる。
【0022】
ゴム成分中の上記水添共重合体の含有割合は、特に限定されないが、80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましい。80質量%以上であることにより、耐オゾン性に優れる。
【0023】
本実施形態に係るゴム組成物は、化学的老化防止剤を実質含まないものである。ここで化学的老化防止剤とは、化学的作用、すなわち分子レベルでの変化を生じることにより老化防止効果を奏するものいう。従って、加硫後のゴム表面にブルームし、ゴム表面に被膜を形成することで、オゾンを遮断してゴムを保護するワックスなどは化学的老化防止剤に含まれず、本実施形態に係るゴム組成物に含まれていてもよい。また、本明細書において「実質含まれない」とは、その含有によって有意な作用効果が認められない範囲の含有量であることをいい、化学的老化防止剤の種類等によっても異なるが、通常は、ゴム成分100質量部に対して1質量部未満であり、0.1質量部未満であることが好ましい。
【0024】
化学的老化防止剤の具体例としては、例えば、キノリン系老化防止剤、芳香族第2級アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、亜リン酸エステル系老化防止剤などが挙げられる。
【0025】
キノリン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロ−キノリン(ETMDQ)などが挙げられる。
【0026】
芳香族第2級アミン系老化防止剤としては、例えば、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)などが挙げられる。
【0027】
フェノール系老化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(DTBMP)、スチレン化フェノール(SP)などのモノフェノール系老化防止剤; 2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBMBP)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBETB)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BBMTBP)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(TBMTBP)などのビスフェノール系老化防止剤; 2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン(DBHQ)、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン(DAHQ)などのハイドロキノン系老化防止剤が挙げられる。
【0028】
硫黄系老化防止剤としては、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩などのベンズイミダゾール系老化防止剤; ジブチルジチオカルバミン酸ニッケルなどのジチオカルバミン酸塩系老化防止剤; 1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素、トリブチルチオ尿素などのチオウレア系老化防止剤; チオジプロピオン酸ジラウリルなどの有機チオ酸系などが挙げられ、亜リン酸エステル系老化防止剤としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0029】
本実施形態に係るゴム組成物には、補強性充填剤として、カーボンブラック及び/又はシリカを用いることができる。すなわち、補強性充填剤は、カーボンブラック単独でも、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカの併用でもよい。好ましくは、カーボンブラック、又はカーボンブラックとシリカの併用である。補強性充填剤の含有量は、特に限定されず、例えばゴム成分100質量部に対して、10〜150質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜100質量部であり、さらに好ましくは30〜80質量部である。
【0030】
上記カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜70質量部である。
【0031】
シリカとしても、特に限定されないが、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカを含有する場合、その含有量は、ゴムのtanδのバランスや補強性などの観点からゴム成分100質量部に対して、1〜70質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜60質量部である。
【0032】
シリカを含有する場合、スルフィドシラン、メルカプトシランなどのシランカップリング剤をさらに含有してもよい。シランカップリング剤を含有する場合、その含有量はシリカ含有量に対して2〜20質量%であることが好ましい。
【0033】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記した各成分に加え、通常のゴム工業で使用されているプロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などの配合薬品類を通常の範囲内で適宜配合することができる。
【0034】
上記加硫剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられ、特に限定するものではないが、その含有量はゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0035】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練して作製することができる。すなわち、第一混合段階で、ゴム成分に対し、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0036】
このようにして得られるゴム組成物は、特に限定されないが、サイドウォール部に好ましく用いられる。例えば、上記ゴム組成物をサイドウォール部に対応した所定の断面形状に押出成形したり、あるいはまた、上記ゴム組成物からなるリボン状のゴムストリップをドラム上で螺旋状に巻回してサイドウォール部に対応した断面形状に形成したりすることで、未加硫のサイドウォール部材が得られる。かかるサイドウォール部材は、インナーライナー、カーカス、ベルト、ビードコア、ビードフィラー及びトレッドなどのタイヤを構成する他のタイヤ部材とともに、常法に従って、タイヤ形状に組み立てられてグリーンタイヤ(未加硫タイヤ)が得られる。そして、得られたグリーンタイヤを、常法に従い、例えば140〜180℃で加硫成型することにより、上記サイドウォール部材を備えた空気入りタイヤが得られる。
【0037】
本実施形態に係る空気入りタイヤの種類としては、特に限定されず、乗用車用タイヤ、トラックやバスなどに用いられる重荷重用タイヤなどの各種のタイヤが挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
〈水添共重合体の合成例1〉
窒素置換された耐熱反応容器に、シクロヘキサンを2.5L、テトラヒドロフランを50g、n−ブチルリチウムを0.12g、スチレンを100g、1,3−ブタジエンを400g入れ、反応温度50℃で重合を行った。重合が完了した後にN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシランを1.7g加えて、1時間反応させた後、水素ガスを0.4MPa−ゲージの圧力で供給し、20分間撹拌し反応させ、ポリマー末端を水素化リチウムとした。次いで、水素ガス供給圧力を0.7MPa−ゲージ、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主とした触媒を用いて目的の水素添加率となるまで反応させ、溶媒を除去することにより、水添共重合体1を得た。
【0040】
得られた水添共重合体の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製「LC−10A」を用い、カラムとしてPolymer Laboratories社製「PLgel−MIXED−C」を、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてTHFを用い、測定温度を40℃、流量を1.0mL/min、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとして測定し、標準ポリスチレンによるポリスチレン換算で35万であった。結合スチレン量は20質量%であり、ブタジエン部の水素添加率は90モル%であった。なお、結合スチレン量はH−NMRを用いて、スチレン単位に基づくプロトンと、ブタジエン単位(水素添加部を含む)に基づくプロトンとのスペクトル強度比から求めた。
【0041】
〈水添共重合体の合成例2〉
水素添加を行う反応時間を変更し、目的の水素添加率を変更した以外、合成例1と同様の方法によって水添共重合体2を得た。得られた水添共重合体2の重量平均分子量は標準ポリスチレンによるポリスチレン換算で35万、結合スチレン量20質量%であり、ブタジエン部の水素添加率は80モル%であった。
【0042】
〈実施例及び比較例〉
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、加硫促進剤及び硫黄を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で、加硫促進剤及び硫黄を添加混合して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。
【0043】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・水添SBR1:上記合成例1に従い作製した水添共重合体1
・水添SBR2:上記合成例2に従い作製した水添共重合体2
・NR:RSS#3
・BR:宇部興産(株)製「BR150B」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・オイル:JXエネルギー(株)製「プロセスNC140」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・化学的老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラ−NS−P」
【0044】
得られた各ゴム組成物について、160℃で30分間加硫した厚さ2mmの試験片を用いて、外観性(茶色変色性及び黄色変色性)と耐オゾン性を評価した。評価方法は次の通りである。
【0045】
・外観性:試験片を屋外で日光に照射させ、照射前(屋外曝露0日)、40日後(屋外曝露40日)における試験片の表面を目視により観察して、次の5段階の基準で外観性を評価した。
【0046】
5:表面が黒く、ほとんど変色なし
4:わずかに茶色または黄色に変色している
3:全体の半分未満が茶色または黄色に変色している
2:全体の半分以上が茶色または黄色に変色している
1:全体的に茶褐色または黄色に変色している
【0047】
・耐オゾン性:試験片を25%伸長した条件下でオゾンウェザーメーター装置中に設置し、オゾン濃度100pphm、温度50℃の環境下で24時間放置し、その後、クラックの発生状態を目視および10倍の拡大鏡により観察し、次の4段階の基準で耐オゾン性を評価した。
【0048】
4:クラック発生なし
3:肉眼では確認できないが10倍の拡大鏡では確認できるクラックが発生している
2:1mm以下のクラックが発生している
1:1mmを超えるクラックが発生している
【0049】
【表1】
【0050】
結果は、表1に示す通りであり、比較例1〜3と実施例1〜4との対比より、所定の水添SBRを含むゴム組成物は、化学的老化防止剤を実質含まないことにより、耐オゾン性と外観性とを両立できることが認められた。
【0051】
比較例1と比較例2との対比より、化学的老化防止剤を増量することにより、外観性が悪化することが分かる。
【0052】
また、比較例1と比較例3との対比からは、所定の水添SBRを含まないゴム組成物において、化学的老化防止剤を配合しないと耐オゾン性が悪化することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、乗用車、ライトトラック・バス等の各種タイヤに用いることができる。