【解決手段】棒状の樹脂粒子を含む樹脂粒子群であって、前記棒状の樹脂粒子がその長手方向に沿った一部の領域において短手方向に膨らんだ形状の膨らみ部を有し、平均アスペクト比が0.85以下であり、粒子の平均最大長径が1〜500μmである、樹脂粒子群。前記樹脂粒子が、好ましくは熱可塑性樹脂であり、より好ましくは、ポリエステル系樹脂であり、更に好ましいのは、生分解性樹脂であり、特に好ましいのは、ポリブチレンサクシネート又はポリヒドロキシアルカン酸である、樹脂粒子群。
棒状の樹脂粒子を含む樹脂粒子群であって、前記棒状の樹脂粒子がその長手方向に沿った一部の領域において短手方向に膨らんだ形状の膨らみ部を有し、平均アスペクト比が0.85以下であり、粒子の平均最大長径が1〜500μmである、樹脂粒子群。
請求項1〜10のいずれか1つに記載の樹脂粒子群の製造方法であって、グリコールエーテル系溶媒と水とを含む溶媒中に、分散安定剤の存在下、100℃以上の温度で樹脂を乳化して分散させる乳化分散工程、及び前記乳化分散工程で得られた溶液を冷却して樹脂粒子を析出させる冷却工程を含み、前記グリコールエーテル系溶媒の含有量が、全溶媒中、5〜30質量%である、製造方法。
前記グリコールエーテル系溶媒が、3−アルコキシ−3−メチル−1−ブタノール及び/又は3−アルコキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート(但し、アルコキシ基の炭素数は1〜5個)である、請求項13に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発明者等は、樹脂粒子の形状を棒状とし、その長手方向に沿った一部の領域において短手方向に膨らんだ形状の膨らみ部を有することで、前記の課題を解決可能であることを見出し、本発明に至った。このメカニズムは定かではないが、かかる形状とすることで、樹脂粒子が、膨らみ部において短手方向への適度な転がり性を有するとともに長手方向への転がりが抑制され異方性を示すことで、過度の転がりが抑制されるためと推定される。単純な楕円球形状の場合、短手方向への適度な転がり性を有するとともに、ある程度の長手方向への転がり性を有するため、上記のような転がり性の異方性を示すまでの違いが出にくく、所望の効果が得られにくい。また、樹脂粒子の形状を棒状とし、その長手方向に沿った一部の領域において短手方向に膨らんだ形状の膨らみ部を有する粒子に比較して体積が大きくなるため、同等の効果を得るために加えなければならない重量が増えてしまう。
【0011】
本発明の樹脂粒子群は、棒状の樹脂粒子を含む。
【0012】
本発明にかかる棒状の樹脂粒子は、その長手方向に沿った一部の領域において短手方向に膨らんだ形状の膨らみ部を有する。ここで、一部の領域とは、本発明の要旨を逸脱しない範囲において限定されるものではないが、樹脂粒子の長手方向の長さをLとすると0.01L〜0.99Lの領域長とすることができる。また、一部の領域は、樹脂粒子の長手方向の中央近傍にあることが好ましいが、端であってもよい。膨らみ部は、適度な転がり性を保持する観点から、略球形であることが好ましく、複数あっても良い。膨らみ部以外の径と比較して1.1〜30倍の膨らみであることが好ましい。
【0013】
図1〜4に本発明にかかる棒状の樹脂粒子の態様を示す。
図1〜4はFPIAで撮影された樹脂粒子の写真である。
図1(最大長径285μm、アスペクト比0.24)は、樹脂粒子の長手方向の中央に膨らみ部があり、両側が棒状となっている。
図2(最大長径175μm、アスペクト比0.255)は、樹脂粒子の長手方向の端部に膨らみ部があり、片側が棒状となっている。
図3(最大長径105μm、アスペクト比0.252)、及び
図4(最大長径106μm、アスペクト比0.201)は、膨らみ部が2箇所あり、膨らみ部以外の箇所が棒状となっている。
【0014】
本発明にかかる棒状の樹脂粒子は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0015】
熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、常温では樹脂を溶解しないので再利用が可能の観点から、後述する製造方法の欄に記載する特定溶媒に対して、高温で溶解又は可塑化するが、常温では溶解しない樹脂であることが好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルのエステル成分は、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクタム、ポリヒドロキシアルカン酸等が挙げられる。ポリヒドロキシアルカン酸としては、好ましくは、一般式(1)[−CH(R)−CH
2CO−O−](ただし、式中Rは−C
nH
2n+1で表されるアルキル基であり、nは1〜15の整数)で示される繰り返し単位からなるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)ホモポリマーまたはコポリマーである。より具体的には、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシナノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシテトラデカノエート、3−ヒドロキシヘキサデカノエート、3−ヒドロキシオクタデカノエート、4−ヒドロキシブチレート、4−ヒドロキシバレレート、5−ヒドロキシバレレート、及び6−ヒドロキシヘキサノエートからなる群から選ばれる、少なくとも1種のモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを使用できる。具体的なポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)ホモポリマーまたはコポリマーとしては、前記3−ヒドロキシアルカノエートのホモポリマー、又はnの異なる2種以上の3−ヒドロキシアルカノエートからなるコポリマー、前記ホモポリマー及び前記コポリマーの群より選ばれる2種以上をブレンドした混合体が挙げられる。なかでも、n=1の3−ヒドロキシブチレート単位、n=2の3−ヒドロキシバレレート単位、n=3の3−ヒドロキシヘキサノエート単位、n=5の3−ヒドロキシオクタノエート単位、およびn=15の3−ヒドロキシオクタデカノエート単位からなる群から選ばれた1種以上のモノマー単位より構成されるホモポリマー、コポリマー及び混合物が好ましく、3−ヒドロキシブチレート単位と、3−ヒドロキシバレレート単位、3−ヒドロキシヘキサノエート単位、及び3−ヒドロキシオクタノエート単位からなる群より選ばれる少なくとも1つのモノマー単位とからなるコポリマーがより好ましい。最も好ましくは、3−ヒドロキシブチレート単位と3−ヒドロキシヘキサノエート単位からなるコポリマーであるポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)などが挙げられる。ポリエーテル系樹脂としては、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン12、ナイロン6等が挙げられる。これら例示樹脂のうち、環境に配慮する観点から、生分解性の熱可塑性樹脂が好ましい。生分解性の熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカン酸などが挙げられ、これらの中では、ポリブチレンサクシネート、及びポリヒドロキシアルカン酸が好ましい。これら例示樹脂は、1種のみで使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
【0016】
本発明にかかる棒状の樹脂粒子は、必要に応じて、さらに公知の流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料(例えば、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料等)、染料等を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の樹脂粒子群のアスペクト比は、過度な転がりを抑制する観点から、平均値が、0.85以下であり、好ましくは0.83以下であり、また、適度な転がり性を保持する観点から、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは0.20以上である。アスペクト比の測定法は、実施例の欄に記載する。
【0018】
本発明の樹脂粒子群は、過度な転がりを抑制する観点から、アスペクト比が0.90以上である割合が、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下である。
【0019】
本発明の樹脂粒子群のアスペクト比のCV値は、肌表面の凹凸の個人差に対応できる観点から、好ましくは20%以上であり、また、最終製品の性能の安定の観点から、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。CV値の測定法は、実施例の欄に記載する。
【0020】
本発明の樹脂粒子群の粒子の平均最大長径は、1〜500μmであり、用途に応じて様々な粒子径のものを使用することができる。例えば、ファンデーション用途の場合は3〜50μm、スクラブ剤の場合は、200〜500μm、塗料用途の場合は3〜100μm等、用途に応じて適宜選択することができる。粒子の最大長径の測定法は、実施例の欄に記載する。
【0021】
本発明の樹脂粒子群のアマニ油吸油量は、化粧料等に配合する場合においては、化粧もちを良くする観点から、好ましくは30mL/100g以上であり、より好ましくは60mL/100g以上であり、さらに好ましくは80mL/100g以上であり、ハンドリング性の観点から、好ましくは150mL/100g以下であり、より好ましくは145mL/100g以下であり、さらに好ましくは140mL/100g以下である。アマニ油吸油量の測定法は、実施例の欄に記載する。
【0022】
以下、本発明の樹脂粒子群の製造方法の態様を説明する。
【0023】
本発明の樹脂粒子群の製造方法は、特に限定されるものではないが、生産性や環境に配慮する観点から、後述する特定溶媒と水とを含む溶媒中に、分散安定剤の存在下、100℃以上の温度で樹脂を乳化して分散させる乳化分散工程、及び前記乳化分散工程で得られた溶液を冷却して樹脂粒子を析出させる冷却工程とを含む製造方法が好ましい。
【0024】
(a)乳化分散工程
(i)溶媒
溶媒は、常温での樹脂の溶解性は低いが、高温での樹脂の溶解性が高い、特定の構造の安全性の高い溶媒(以下、特定溶媒とも称する)及び水を含む。特定溶媒と水の合計量が溶媒中に占める割合は、50質量%以上が好ましく。70質量%以上がより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。特定溶媒及び水以外の使用可能溶媒としては、メタノール、エタノール等の低級アルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶剤が挙げられる。
【0025】
使用する樹脂は、前記した樹脂を使用することができる。
【0026】
特定溶媒としては、グリコールエーテル系溶媒が好ましい。グリコールエーテル系溶媒としては、3−アルコキシ−3−メチル−1−ブタノール及び/又は3−アルコキシ−3−メチル−1−ブチルアセテートが好ましく、溶解性を良くする観点から、アルコキシ基の炭素数は1〜5個であることが好ましい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基などが挙げられる。プロポキシ基、ブトキシ基及びペンチルオキシ基には、直鎖状だけではなく、取り得る構造異性体も含まれる。好ましいアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基である。
【0027】
特定溶媒としては、クラレ社製からソルフィットの商品名で市販されている溶媒も使用できる。また、3−アルコキシ−3−メチル−1−ブタノールは、例えば、国際公開WO2013/146370号に記載の方法により製造できる。
【0028】
水の使用量は、樹脂100質量部に対して、撹拌混合を容易とする観点から、好ましくは180質量部以上であり、より好ましくは220質量部以上であり、さらに好ましくは250質量部以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは1200質量部以下であり、より好ましくは800質量部以下であり、さらに好ましくは500質量部以下である。
【0029】
特定溶媒の含有量は、全溶媒中、粒子形状制御の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは12質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは28質量%以下であり、さらに好ましくは26質量%以下である。
【0030】
溶媒の使用量は、樹脂100質量部に対して、撹拌混合を容易とする観点から、好ましくは100質量部以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは1200質量部以下であり、より好ましくは800質量部以下であり、さらに好ましくは400質量部以下である。
【0031】
(ii)分散安定剤
分散安定剤としては、疎水化処理した無機微粒子が好適に使用できる。具体例としては、疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製;商品名 AEROSIL(R:登録商標)R972、AEROSIL(R) R974、AEROSIL(R) R976S、AEROSIL(R)R104、AEROSIL(R) R106、AEROSIL(R) R202、AEROSIL(R)R805、AEROSIL(R) R812、AEROSIL(R) R812S、AEROSIL(R) R816、AEROSIL(R) R7200、AEROSIL(R) R8200、AEROSIL(R) R9200、AEROSIL(R) R711、AEROSIL(R)RY50、AEROSIL (R) NY50、AEROSIL (R) RY200、AEROSIL (R) RY200S、AEROSIL (R) RX50、AEROSIL (R) NAX50、AEROSIL (R) RX200、AEROSIL (R) RX300、AEROSIL (R) R504)、疎水性アルミナ(日本アエロジル社製;商品名 AEROXIDO(R) Alu C)、疎水性酸化チタン(日本アエロジル社製;商品名AEROXIDE (R) TiO2 T805:チタン工業社製;商品名 超微粒子酸化チタンSTシリーズ、ST−455、STV−455、ST−557SA、ST−457EC、ST−457EC、ST−605EC:堺化学工業社製;商品名 超微粒子酸化チタンSTRシリーズ、STR−100C−LP、STR−60c−LP、STR−100W−LP、STR−100C−LF)等が挙げられる。また、分散安定剤として、第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製;商品名 TCP−10・U等)等のヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ(日産化学社製:商品名 スノーテックスシリーズ スノーテックス40、スノーテックスS、スノーテックスXS等)等の親水性の難水溶性無機化合物等を用いることもできる。上記の中でも、目的とする樹脂粒子を安定して得ることができるという点において、第三リン酸カルシウム等のヒドロキシアパタイト、及びコロイダルシリカが好ましい。ちなみにアパタイトは、一般化学式M
10(ZO
4)
6X
2で表される物質群であり、Ca、Pb、Ba、Sr、Cd、Zn、Ni、Mg、Na、K、Fe、Al等の元素の中から少なくとも1種がMとして含まれており、F、OH、Cl、Br、O等の元素もしくは原子団の中から少なくとも1種がXとして含まれている。また、P、As、V、Si、C等の元素の中のいずれか1種がZとして含まれている。
【0032】
分散安定剤の樹脂100質量部に対する添加量は、0.5〜15質量部が好ましい。
【0033】
また、本発明の方法では、上記の分散安定剤に加えて、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を併用することも可能である。
【0034】
アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等がある。カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等がある。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等がある。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等がある。
【0035】
界面活性剤の添加量は、水100質量部に対して0.01〜0.5質量部が好ましい。
【0036】
これら分散安定剤や界面活性剤は、得られる樹脂粒子の粒子径及び分散安定性を考慮して、それらの選択や組合せ、使用量等を適宜調整して使用される。
【0037】
(iii)乳化分散工程
樹脂の乳化分散は、100℃以上の温度下で撹拌しながら行うことが好ましい。温度は、樹脂を軟化させる観点から、100℃以上であり、好ましくは110℃以上である。上限温度は、特に限定されるものではないが、180℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。加熱や撹拌は、通常、大気圧下で行われるが、必要に応じて、減圧下又は加圧下で行ってもよい。
【0038】
撹拌は、公知の方法を用いることができ、撹拌羽根による液相撹拌法、ホモジナイザーによる混合法、超音波照射等の方法で行うことができる。撹拌の速度及び時間は、樹脂が溶媒に溶解又は溶媒中に均一に分散できさえすれば特に限定されず、適宜選択するのが好ましい。
【0039】
(b)冷却工程
樹脂を棒状の粒子として析出させるために、樹脂を含む溶媒を、加熱撹拌後、冷却する。冷却温度は、常温(約25℃)が好ましい。加熱撹拌時の温度から冷却温度に達する時間はできるだけ早いことが好ましい。また、冷却は、自然冷却の他、冷水などと接触させることによる急速冷却など公知の冷却手段を用いることができ、撹拌しつつ行うことが好ましい。撹拌速度は、乳化分散工程時の撹拌速度と同様の範囲とすることができる。
【0040】
分散安定剤としてヒドロキシアパタイトを使用した場合において、樹脂粒子(ヒドロキシアパタイトの被覆なし)は、例えば、酸により上記乳化分散液を酸性条件に保ち、ヒドロキシアパタイトを溶解させることで得られる。必要によりアルカリによる中和をおこなうことができる。酸の種類は特に限定されず、塩酸、硝酸等の無機酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸など選択することが可能である。
【0041】
冷却後、必要に応じて、ろ過、洗浄、脱水、乾燥を経て、溶媒から樹脂粒子を取り出すことができる。ろ過、洗浄、脱水、乾燥は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0042】
本発明の樹脂粒子群は、適度な転がり性を保ちながらも、過度の転がりを抑制し得るため、ファンデーション、制汗剤、スクラブ剤等の化粧料用の配合剤、塗料用艶消し剤、レオロジー改質剤、ブロッキング防止剤、滑り性付与剤、光拡散剤、導電剤、医療用診断検査剤等の各種剤、自動車材料、建築材料等の成形品への添加剤などに好適に使用することができる。特に、ファンデーションや塗料に使用した場合、塗り拡がり方の異方性を発現でき、洗顔剤などのスクラブ剤として使用した場合、転がる効果に加えて汚れを掻き出す効果が期待できる。
【0043】
本発明にかかる棒状の樹脂粒子は、導電素材で表面が被覆されていてもよい。用いられる導電素材や被覆方法は公知の素材や方法を利用することができる。導電素材としては、例えば、カーボン、金属、含窒素複素環式芳香族化合物などが挙げられる。なお、樹脂粒子が導電素材以外に、他の素材でも被覆された多層構造となる場合においては、導電素材の被覆が最外層であることが好ましい。
【0044】
カーボンは複合粒子への分散性の観点から好ましく、カーボンとしては導電性が高いカーボンナノチューブやカーボンブラック、中空シェル構造を有するケッチェンブラックなどが挙げられる。
【0045】
金属としては金、銀、白金等の貴金属類やパラジウム、銅、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステンなどが挙げられる。
【0046】
含窒素複素環式芳香族化合物としては、ピロール、インドール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン及びこれらのアルキル置換体(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基での置換体)、ハロゲン置換体(例えば、フロロ、クロロ、ブロム等のハロゲン基での置換体)、ニトリル置換体といった誘導体が挙げられる。より均一な被覆膜が形成されやすいことから、ピロールおよびピロールの誘導体の重合体が好ましい。
【0047】
被覆方法としては公知の方法を使用することができ、蒸着法、スパッタ法、メカノケミカル法、ハイブリダイゼーション処理を利用する等の乾式法、電解めっき法、無電解めっき法等の湿式法、あるいはこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。以下に、導電性樹脂粒子の製造方法の具体例を示す。
【0048】
(導電性樹脂粒子の製造方法の例示)
導電性樹脂粒子を調製する場合には、例えば、本発明の方法によって得られた樹脂粒子を、無機過酸のアルカリ金属塩を含む水性媒体中で、単量体として含窒素複素環式芳香族化合物を任意の量添加して、酸化重合することにより得られる。含窒素複素環式芳香族化合物は、酸化重合により黒色に着色された導電性を有する重合体となる化合物である。
【0049】
(1)含窒素複素環式芳香族化合物
含窒素複素環式芳香族化合物としては前記したものを単独で使用して、単独重合体とすることができ、あるいは2種類以上を併用して、共重合体とすることもできる。
【0050】
含窒素複素環式芳香族化合物の量は、樹脂粒子100質量部に対し1〜30質量部の範囲が好ましい。より好ましくは、3〜20質量部である。1質量部より少ないと、樹脂粒子の表面全体が均一に含窒素複素環式芳香族化合物の重合体で被覆されず、所望の導電性を得られない場合がある。一方、30質量部より多いと、添加した含窒素複素環式芳香族化合物が単独で重合し、目的とする被覆粒子以外のものができてしまう場合がある。
【0051】
(2)無機過酸のアルカリ金属塩(酸化剤)
無機過酸のアルカリ金属塩は、含窒素複素環式芳香族化合物の酸化剤として作用する化合物である。具体的には過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0052】
無機過酸のアルカリ金属塩の使用量は、含窒素複素環式芳香族化合物全量に対して0.5〜2.0モル当量が好ましい。0.5モル当量未満であると、樹脂粒子の表面全体が均一に含窒素複素環式芳香族化合物の重合体で被覆されず、所望の導電性を得られない場合がある。一方、2.0モル当量を超えると、添加した含窒素複素環式芳香族化合物が単独で重合し、目的とする被覆粒子以外のものができてしまう場合がある。より好ましくは、1〜1.5モル当量である。
【0053】
(3)水性媒体
無機過酸のアルカリ金属塩は、水性媒体に添加され、所定のpHの水性媒体として用いられる。水性媒体は、含窒素複素環式芳香族化合物を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、水又は、水と、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、メチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類との混合媒体が挙げられる。
【0054】
無機過酸のアルカリ金属塩が添加された水性媒体は、3以上のpHを有することが好ましい。pHが3未満だと、樹脂粒子の表面全体が均一に含窒素複素環式芳香族化合物の重合体で被覆されず、所望の導電性を得られないことがある。
【0055】
(4)界面活性剤
また、水性媒体には界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をいずれも使用できる。
【0056】
また、水性媒体には界面活性剤以外に高分子分散安定剤が添加されてもよい。高分子分散安定剤としては、例えば、ポリアクリル酸、その共重合体およびこれらの中和物ならびにポリメタクリル酸、その共重合体およびこれらの中和物、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコールおよびその誘導体等が挙げられる。高分子分散安定剤は、上述の界面活性剤と併用してもよい。
【0057】
(5)酸化重合
樹脂粒子表面が含窒素複素環式芳香族化合物の重合体で被覆された導電性樹脂粒子は、例えば、樹脂粒子をイソプロパノール/水に分散した乳化液(懸濁液)及び含窒素複素環式芳香族化合物を、無機過酸のアルカリ金属塩を含む水性媒体に添加して混合物を得、その混合物を好ましくは−20〜40℃の温度において、0.5〜10時間攪拌することにより、得ることができる。
なお、導電性樹脂粒子が分散された乳化液は、必要に応じて遠心分離されて水性媒体が除去され、水や溶剤等で洗浄された後、乾燥、単離される。
【0058】
(導電性樹脂粒子)
上記の酸化重合により得られた導電性樹脂粒子は、表面全体が均一に含窒素複素環式芳香族化合物の重合体からなる被覆層で覆われているため、優れた導電性を有し、異方性を有する導電性塗膜、導電性成形体を構成する材料として使用することができる。
【0059】
本発明にかかる棒状の樹脂粒子の表面を導電素材で被覆した場合は、粒子間の接触性が向上するため導電性の安定化を図ることが出来る。したがって、エポキシ樹脂、硬化剤、さらに必要により各種添加剤を配合し、必要により有機溶媒中で混合することにより導電材として、ICチップ等の電子部品や回路基板の電極接続に対し、好適に使用することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0061】
(粒子の写真撮影、最大長径、アスペクト比の測定)
フロー式粒子像分析装置(商品名「FPIA(登録商標)−3000S」、シスメックス社製)を用いて測定する。
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mLに、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩0.05gを加えて界面活性剤水溶液を得る。その後、上記界面活性剤水溶液に、測定対象の樹脂粒子群0.2gを加え、分散機としてBRANSON社製の超音波分散機「BRANSON SONIFIER 450」(出力400W、周波数20kHz)を用いて超音波を5分間照射して、樹脂粒子群を界面活性剤水溶液中に分散させる分散処理を行い、測定用の分散液を得る。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した上記フロー式粒子像分析装置を用い、上記フロー式粒子像分析装置に使用するシース液としては、パーティクルシース(商品名「PSE−900A」、シスメックス社製)を使用する。上記手順に従い調整した測定用の分散液を上記フロー式粒子像分析装置に導入し、下記測定条件にて測定する。
【0062】
測定モード:LPFもしくはHPF測定モード(粒径により適宜選択する。目安として8μm以下の粒径の場合はHPF測定モード、8μm以上の粒径の場合はLPF測定モードを選択する。)
今回の測定は全てLPF測定モードを使用した。
粒子の測定個数:10000個
測定にあたっては、測定開始前に標準ポリマー粒子群の懸濁液(例えば、Thermo Fisher Scientific社製の「5200A」(標準ポリスチレン粒子群をイオン交換水で希釈したもの))を用いて上記フロー式粒子像分析装置の自動焦点調整を行う。
データ分析に当たり、次の範囲を設定して測定を行った。
粒子の最大長径の測定範囲:5μm〜300μm
粒子のアスペクト比の測定範囲:0〜1.00
【0063】
アスペクト比は、最大長垂直長を最大長で除したものである。つまり、最大値は1.0(真円)で、最小値は0に限りに無く近似する。粒子の最大長は粒子画像の輪郭上の2点における最大の長さである。最大長垂直長は最大長に平行な2本の直線で画像を挟んだ時、2直線間を垂直に結ぶ最短の長さである。平均アスペクト比は個々の粒子のアスペクト比の合計を頻度の合計で除した値である。アスペクト比が0.90以上の粒子の個数の割合については、上記測定により測定された0.010の間隔(例えば0.980以上0.990未満)における頻度のデータから算出した。
【0064】
(CV値)
樹脂粒子の各測定項目の変動係数(CV値)を、以下の数式によって算出する。各測定項目の変動係数=(各測定結果の標準偏差÷各測定結果の平均値)×100
【0065】
(アマニ油吸油量の測定)
樹脂粒子のアマニ油吸油量は、JIS K 5101−13−2−2004の測定方法を参考にして、煮アマニ油に代えて精製アマニ油を使用し、終点の判断基準を変更した(「測定板を立てて、試料が流動し始める」時点に変更した)方法によって、測定する。アマニ油吸油量の測定の詳細は、以下の通りである。
(A)装置及び器具
測定板:300×400×5mmより大きい平滑なガラス板
パレットナイフ(ヘラ):鋼製又はステンレス製の刃を持った柄つきのもの
化学はかり(計量器):10mgオーダーまで計れるもの
ビュレット:JIS R 3505−1994に規定する容量10mLのもの
(B)試薬
精製アマニ油:ISO 150−1980に規定するもの(今回は一級アマニ油(和光純薬工業社製)を用いる)
【0066】
(C)測定方法
(1)樹脂粒子1gを測定板上の中央部に取り、精製アマニ油をビュレットから一回に4、5滴ずつ、徐々に樹脂粒子の中央に滴下し、その都度、樹脂粒子及び精製アマニ油の全体をパレットナイフで充分練り合わせる。
(2)上記の滴下及び練り合わせを繰り返し、樹脂粒子及び精製アマニ油の全体が固いパテ状の塊になったら1滴ごとに練り合わせて、精製アマニ油の最後の1滴の滴下によりペースト(樹脂粒子及び精製アマニ油の混練物)が急激に軟らかくなり、流動を始める点を終点とする。
(3)流動の判定
精製アマニ油の最後の1滴の滴下により、ペーストが急激に軟らかくなり、測定板を垂直に立てた時にペーストが動いた場合に、ペーストが流動していると判定する。測定板を垂直に立てた時もペーストが動かない場合には、更に精製アマニ油を1滴加える。
(4)終点に達したときの精製アマニ油の消費量をビュレット内の液量の減少分として読み取る。
(5)1回の測定時間は7〜15分以内に終了するように実施し、測定時間が15分を超えた場合は再測定し、規定の時間内で測定を終了した時の数値を採用する。
【0067】
(D)アマニ油吸油量の計算
下記式により試料100g当たりのアマニ油吸油量を計算する。
O=(V/m)×100
ここで、O:アマニ油吸油量(mL/100g)、m:樹脂粒子の質量(g)、V:消費した精製アマニ油の容積(mL)
【0068】
実施例1
1500mLオートクレーブに樹脂としてポリブチレンサクシネート(PBS、三菱化学社製BioPBS(R)品番:FZ71)を240g、特定溶媒として3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)120g、イオン交換水600g、分散安定剤として10%第三リン酸カルシウム水溶液(ヒドロキシアパタイト)(太平化学産業社製 TCP−10・U)240g、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.48gを投入し、反応温度(加熱撹拌温度)120℃、撹拌回転数600rpmにて90分撹拌した。その後、撹拌回転数を維持したまま設定温度を変更して急冷(25℃まで 30分間)した後、内容物を取り出した。内容物に20%塩酸を20g添加し、粒子表面に被覆したヒドロキシアパタイトを除去した後、脱水・ろ過・乾燥に付すことで実施例1の樹脂粒子群を得た。
【0069】
実施例2
特定溶媒を240g、イオン交換水を480gとした以外は実施例1と同様に調製して、実施例2の樹脂粒子群を得た。
【0070】
実施例3
塩酸を添加せず、粒子表面に被覆したヒドロキシアパタイトを除去しない以外は実施例1と同様に調製して、実施例3の樹脂粒子群を得た。
【0071】
実施例4
塩酸を添加せず、粒子表面に被覆したヒドロキシアパタイトを除去しない以外は実施例2と同様に調製して、実施例4の樹脂粒子群を得た。
【0072】
比較例1
特定溶媒を360g、イオン交換水を360gとした以外は実施例1と同様に調製して、比較例1の樹脂粒子群を得た。
【0073】
比較例2
塩酸を添加せず、粒子表面に被覆したヒドロキシアパタイトを除去しない以外は比較例1と同様に調製して、比較例2の樹脂粒子群を得た。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
処方例1(化粧料、パウダーファンデーション)
表3に示す組成のパウダーファンデーションを製造した。それぞれの粉体成分をヘンシェルミキサー(三井三池社製)にて撹拌混合し、トリエチルヘキサノイン、防腐剤の加熱混合物を加えて更に混合し、均一にした。これをアトマイザー(東京アトマイザー社製)で処理し、ふるいを通した後、金皿中に圧縮成型して、パウダーファンデーションを得た。
【0077】
【表3】
【0078】
実施例1、2を使用したパウダーファンデーションを皮膚に塗布したところ、適度に塗り拡げることができ、使用感が良好であった。一方、比較例1、2を使用したパウダーファンデーションでは、実施例1、2を使用した場合と比べて塗り拡がり過ぎてしまうことがわかった。また、アパタイトで被覆された実施例3、4粒子を使用したパウダーファンデーションを皮膚に塗布したところ、適度に塗り拡げることができるのみならず、さらっとした触感がさらに増加し、使用感がさらに良好であった。これは人間の皮脂成分のうち肌に悪影響を及ぼす皮脂老廃物である遊離脂肪酸を有効に吸着して除去するという油脂吸着能が現れたためである。
【0079】
処方例2(導電性樹脂粒子)
実施例1で得られた樹脂粒子群2.5gに対し、イソプロパノール(和光純薬社製)を2.5g添加し、分散させた。これにあらかじめ30gのイオン交換水に1.0gのKPS(過硫酸カリウム)を溶解させた水溶液を加え、よく攪拌して粒子を分散させた。該水溶液を攪拌させたままピロール(東京化成工業株式会社製)0.25gを添加し、6時間攪拌を続けて、酸化重合により粒子表面にポリピロールが被覆した粒子を得た。温度はすべて25℃の室温にて実施した。その後、No.110(アドバンテック社製)のろ紙にてろ過を行い、500gのイオン交換水にて洗浄後、65℃オーブンで48時間乾燥し、粒子を得た。
【0080】
処方例2の粒子は、表面全体が均一に含窒素複素環式芳香族化合物の重合体からなる被覆層で覆われており、優れた導電性を有した。
【0081】
処方例3(塗料)
市販水系塗料(カンペハピオ スーパーヒットクロ)10gと実施例1で得られた樹脂粒子群 1gを混合し、2mm厚みの黒色ABS板上にウェット厚50μmで塗布し、室温で24時間乾燥させて塗膜を作製した。該塗膜は艶消し状となり、本発明の粒子が塗料の艶消し用途に有用であることを確認した。